(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162769
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
H04W 36/32 20090101AFI20241114BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241114BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20241114BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W84/12
H04W36/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078651
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067BB41
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】制御装置と移動中の搬送車との通信状態を良好に維持する。
【解決手段】搬送車は、経路8を移動しながら接続先のアクセスポイントAPを切り替えて、制御装置と通信するように構成されている。制御装置は、搬送車が移動すべき移動経路Rを示す移動経路情報と、移動経路Rを移動中の搬送車がアクセスポイントAPの切り替えを行うべき切替位置Psを示す切替位置情報とを、搬送車に送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記制御装置は、前記搬送車が移動すべき移動経路を示す移動経路情報と、前記移動経路を移動中の前記搬送車が前記アクセスポイントの切り替えを行うべき切替位置を示す切替位置情報とを、前記搬送車に送信する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記切替位置情報には、前記移動経路中の全ての前記切替位置の情報が含まれる、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御装置は、更に、前記移動経路を移動中の前記搬送車が順次接続すべき複数の前記アクセスポイントを示した接続ポイント情報を、前記搬送車に送信する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記搬送車の移動中に前記移動経路を変更する場合、変更後の新たな前記移動経路を示す前記移動経路情報と、当該新たな前記移動経路に対応した前記切替位置の情報を示す前記切替位置情報と、を前記搬送車に送信する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、特開2011-166671号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に記載された設備では、サーバ等の制御装置(18,20)と複数の搬送車(12)とが、無線LANを介して接続され、相互に通信するように構成されている。制御装置(18,20)と搬送車(12)との通信は、アクセスポイント(8)を介して行われる。この設備では、搬送車(12)の走行ルートが複数のアクセスポイント(8)毎にエリア(10)で区切られている。搬送車(12)は、これらのエリア(10)が示されたマップを記憶しており、エリア(10)の境界に近づくと、接続先のアクセスポイント(8)を切り替えるように構成されている。これにより、搬送車(12)は、自らが進入するエリア(10)のアクセスポイント(8)に対する接続を順次行いながら走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、搬送車(12)とアクセスポイント(8)との通信強度は、搬送車(12)の移動方向や、搬送車(12)に搭載された無線通信機による電波の受信範囲などの影響を受け易い。従って、単に複数のアクセスポイント(8)毎に区切られたエリア(10)に基づいてアクセスポイント(8)の切り替えを行う構成、すなわち、アクセスポイント(8)の切替位置がエリア(10)によって定められた態様では、制御装置(18,20)と搬送車(12)との通信状態を良好に維持できない場合がある。
【0006】
上記実状に鑑みて、制御装置と移動中の搬送車との通信状態を良好に維持することが可能な物品搬送設備の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記制御装置は、前記搬送車が移動すべき移動経路を示す移動経路情報と、前記移動経路を移動中の前記搬送車が前記アクセスポイントの切り替えを行うべき切替位置を示す切替位置情報とを、前記搬送車に送信する。
【0008】
本構成によれば、搬送車は、移動経路情報と切替位置情報とを制御装置から受け取ることができる。移動経路情報は、搬送車が移動すべき移動経路を示す情報であり、切替位置情報は、搬送車が、指定された移動経路を移動中にアクセスポイントの切り替えを行うべき切替位置を示す情報である。この切替位置は、搬送車の移動経路に基づいて設定されるため、例えば、搬送車の移動方向や、移動中の搬送車による電波の受信範囲などを考慮したものとすることができる。そのため、アクセスポイントの切替位置を、状況に応じて適切な位置に設定することが可能である。従来のように複数のアクセスポイント毎に区切られたエリアに基づいてアクセスポイントの切り替えを行う構成では、搬送車の移動方向によっては、搬送車はエリアへの進入直後に当該エリアを退出する場合などがあり、この場合にはアクセスポイントの切り替えが不必要に行われ得る。しかしながら、本構成によれば、エリアによらず、各搬送車の進行方向に応じてアクセスポイントの切替位置を柔軟に設定でき、移動中の搬送車に適切なタイミングでアクセスポイントの切り替えを行わせることができる。従って、本構成によれば、搬送車の移動中であっても、制御装置と搬送車との通信状態を良好に維持することが可能となる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】制御装置から搬送車に送信される各種情報を示す図
【
図5】経路における各地点と当該各地点において接続すべきアクセスポイントとの対応表
【
図6】各アクセスポイントと経路における各地点との相対距離を示した相対距離表
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、物品搬送設備の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、物品搬送設備100は、規定の経路8を移動して物品(不図示)を搬送する搬送車1と、搬送車1を制御する制御装置2(
図2等参照)と、を備えている。
【0013】
図3に示すように、本実施形態では、経路8は、天井付近に設置されたレール80を用いて構成されている。そして、搬送車1は、このようなレール80に支持されながら走行する、いわゆる天井搬送車として構成されている。本実施形態では、搬送車1は、本体部10と、レール80に沿って走行する走行部11と、物品を保持する保持部12と、を備えている。本体部10は、保持部12及び保持部12に保持された物品を収容可能に構成されている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、物品搬送設備100は、経路8に沿って設けられた複数の移載対象箇所9を備えている。移載対象箇所9は、経路8よりも下方に配置されている。本例では、経路8は、インターベイと、インターベイに接続された複数のイントラベイと、を備えている。各イントラベイに、複数の移載対象箇所9が設けられている。インターベイは、搬送車1が主に移動を行うための移動エリアと言い換えることができる。イントラベイは、搬送車1が主に物品の移載作業を行うための移載エリアと言い換えることができる。搬送車1は、保持部12(
図3参照)を昇降させることにより、移載対象箇所9との間で物品を移載するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車1を複数備えている。複数の搬送車1のそれぞれは、制御装置2(
図2等参照)から搬送指令を受けて、当該搬送指令に応じたタスクを実行するように構成されている。例えば搬送指令には、物品の搬送元と搬送先との情報が含まれる。搬送指令を受けた搬送車1は、搬送元から搬送先まで物品を搬送する。搬送元や搬送先には、移載対象箇所9が含まれる。
【0016】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。本例では、物品搬送設備100は、半導体製造工場に用いられる。そのため、基板(ウェハやパネル等)を収容する基板収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車1は、基板収容容器やレチクル収容容器などの物品を、経路8に沿って各工程間に亘って搬送する。
【0017】
本実施形態では、移載対象箇所9は、物品に対する処理を行う処理装置90と、処理装置90に隣接して配置された載置台91と、を備えている。本明細書において「物品に対する処理」とは、収容容器としての物品に収容された被収容物(基板やレチクル)に対する処理を意味する。搬送車1は、処理装置90による処理を終えた物品を載置台91から受け取り、又は、処理装置90による処理が済んでいない物品を載置台91に引き渡す。なお、処理装置90は、例えば、薄膜形成、フォトリソグラフィー、エッチングなどの種々の処理を行う。
【0018】
図2に示すように、物品搬送設備100は、それぞれが搬送車1との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントAP(
図2では1つのアクセスポイントAPのみを示す。)を備えている。
図1に示される複数の円形範囲のそれぞれの中央に、アクセスポイントAPが配置されている。これらの円形範囲は、各アクセスポイントAPの通信可能範囲の目安を示している。但し、これはあくまでも目安であり、円形範囲外であっても通信可能な場合がある。
【0019】
制御装置2と搬送車1とは、複数のアクセスポイントAPのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成されている。搬送車1は、経路8を移動しながら接続先のアクセスポイントAPを切り替えて、制御装置2と通信するように構成されている。
【0020】
本実施形態では、制御装置2は、搬送車1に対して設定周期で確認信号Scを繰り返し送信するように構成されている。搬送車1は、確認信号Scを受信したことに応じて、制御装置2に対して受領信号Srを送信するように構成されている。このような構成により、制御装置2は、搬送車1との通信状態を定期的に確認することができる。
【0021】
本実施形態では、制御装置2は、処理部20と記憶部21とを備えている。処理部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。記憶部21は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の当該演算処理装置が参照可能な記憶装置を用いて構成されている。そして、記憶部21に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置2の各機能部が機能する。制御装置2が備える処理部20は、各プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0022】
本実施形態では、搬送車1は、搬送車制御部13を備えている。搬送車制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。
【0023】
本実施形態では、搬送車1は、アクセスポイントAPとの間で通信を行う無線通信機14を備えている。本例では、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPのそれぞれと無線で通信するように構成され、複数のアクセスポイントAPのそれぞれは、制御装置2と有線で通信するように構成されている。すなわち、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPの何れかを介して、制御装置2と通信することが可能に構成されている。
図3に示すように、本実施形態では、無線通信機14は、搬送車1の前方部分に設置されている。具体的には、無線通信機14は、搬送車1の本体部10における前方部分に設置されている。これにより、無線通信機14の電波の受信範囲を、搬送車1の進行方向に向かって広がるようにし易い。
【0024】
図3に示すように、制御装置2は、操作端末に接続されている。作業者は、操作端末を操作することによって各種指令を制御装置2に入力することができ、また、操作端末を用いて制御状況を参照することができる。
【0025】
アクセスポイントAPは、無線アクセスポイント機器を用いて構成されている。アクセスポイントAPは、無線の電波を発するように構成されている。アクセスポイントAPと搬送車1との通信強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)で表される。その単位は、例えばデシベルミリワット(dBm)とされる。
【0026】
制御装置2は、アクセスポイントAPを介して、搬送車1に各種の情報Ifを送信するように構成されている。搬送車1は、制御装置2から受信した情報Ifに基づいて、経路8を移動する。
【0027】
図4に示すように、制御装置2は、搬送車1が移動すべき移動経路Rを示す移動経路情報と、移動経路Rを移動中の搬送車1がアクセスポイントAPの切り替えを行うべき切替位置Psを示す切替位置情報とを、搬送車1に送信する。すなわち、制御装置2から搬送車1に送信される「各種の情報If」には、少なくとも、移動経路情報と切替位置情報とが含まれる。
【0028】
本実施形態では、移動経路情報には、搬送車1に指定された出発点Sから到着点Tまでの移動経路Rが示されている。移動経路情報には、移動経路Rに沿う各地点のアドレスが示されている。移動経路情報には、経路8の分岐点において進むべき進行方向が示されている。
【0029】
詳細な図示は省略するが、アドレス情報を保持した複数の情報保持体が、経路8の延在方向に沿って間隔を空けて設置されている。また、情報保持体は、出発点S及び到着点T、並びに、経路8の分岐点や合流点に設置されている。各情報保持体は、自らが設置されている地点のアドレス情報を保持している。搬送車1は、情報保持体からアドレス情報を読み取る読取装置を備えており、各情報保持体のアドレス情報を読み取りながら経路8を走行する。例えば、情報保持体として、1次元コード又は2次元コードを用い、読取装置として、1次元コードリーダ又は2次元コードリーダを用いることができる。
【0030】
本実施形態では、切替位置Psは、移動経路Rにおける各地点のアドレスを用いて示される。本例では、切替位置情報には、移動経路R中の全ての切替位置Psの情報が含まれる。すなわち本例では、移動経路情報と共に、移動経路R中の全ての切替位置Psの情報が、制御装置2から搬送車1に送信される。
図4に示す例では、それぞれが切替位置Psとされるアドレス105、アドレス702、アドレス703、アドレス704、及びアドレス601が、切替位置情報に含まれている。搬送車1は、アドレス105、アドレス702、アドレス703、アドレス704、及びアドレス601のそれぞれにおいて、アクセスポイントAPの切り替えを行う。
【0031】
本実施形態では、制御装置2は、更に、移動経路Rを移動中の搬送車1が順次接続すべき複数のアクセスポイントAPを示した接続ポイント情報を、搬送車1に送信する。すなわち本実施形態では、制御装置2から搬送車1に送信される「各種の情報If」には、移動経路情報と切替位置情報とに加えて、接続ポイント情報が含まれる。
【0032】
本実施形態では、各切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPは、移動経路Rにおける搬送車1の進行方向に基づいて定められる。搬送車1の進行方向を基準として、切替位置Psよりも前方にあるアクセスポイントAPが、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPとして設定される。複数のアクセスポイントAPが切替位置Psよりも前方にある場合には、切替位置Psよりも前方にある複数のアクセスポイントAPのうちの切替位置Psに最も近いアクセスポイントAPが、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPとして設定されるとよい。
【0033】
上述のように、本実施形態では、無線通信機14は、電波の受信範囲が搬送車1の進行方向に広がるようにするため、搬送車1の前方部分に設置されている。そのため、本実施形態のように、切替位置Psよりも前方に、すなわち切替位置Psに到達した搬送車1よりも前方に、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPが存在していると、自らの前方の範囲のアクセスポイントAPを探索しながら移動する搬送車1が、アクセスポイントAPへの接続を円滑に行い易くなる。
【0034】
切替位置情報と接続ポイント情報とは、互いに紐づけられた状態で送信される。すなわち、アドレスにより示される切替位置Psと、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPとが、互いに紐づけられている。
図4に示す例では、切替位置Psとしてのアドレス105において、アクセスポイントAP15に切り替えることが情報として示されている。同様に、アドレス702においてアクセスポイントAP72に切り替えること、アドレス703においてアクセスポイントAP73に切り替えること、アドレス704においてアクセスポイントAP74に切り替えること、アドレス601においてアクセスポイントAP61に切り替えることが、それぞれ情報として示されている。搬送車1は、これらの情報に従って、各アドレスにおいて、アドレス毎に設定されたアクセスポイントAPに接続する。
【0035】
このようにして、制御装置2から移動経路情報及び切替位置情報を受け取った搬送車1、本実施形態ではこれらの情報に加えて接続ポイント情報を受け取った搬送車1は、アクセスポイントAPの切り替えを繰り返しながら、移動経路Rに沿って移動する。
【0036】
本実施形態では、制御装置2は、搬送車1の移動中に移動経路Rを変更する場合、変更後の新たな移動経路Rを示す移動経路情報と、当該新たな移動経路Rに対応した切替位置Psの情報を示す切替位置情報と、を搬送車1に送信する。制御装置2は、例えば、渋滞等の時間的に変化する経路8の状況に応じて、移動経路Rを変更する。このように、搬送車1の移動経路Rが移動中に変更された場合であっても、変更後の新たな移動経路Rに基づいて移動経路情報と切替位置情報とが制御装置2によって作成され、それらの情報が搬送車1に送信される。本実施形態では、制御装置2は、搬送車1の移動中に移動経路Rを変更する場合には、移動経路情報と切替位置情報とに加えて、新たな移動経路Rに対応した接続ポイント情報も搬送車1に送信する。
【0037】
次に、各地点において接続されるべきアクセスポイントAPの選定について説明する。この選定は制御装置2によって行われ、選定されたアクセスポイントAPが、接続ポイント情報として搬送車1に送信される。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、制御装置2は、経路8における各地点と当該各地点において接続すべきアクセスポイントAPとの対応表を、データとして保有している。制御装置2は、対応表を参照することで切替位置情報及び接続ポイント情報を作成し、これらの情報を搬送車1に送信する。
【0039】
図5には、経路8におけるアドレス1001~アドレス1017までの各地点が例示されている。また、経路8に沿って互いに隣接するように、第1のアクセスポイントAP1と第2のアクセスポイントAP2と第3のアクセスポイントAP3とが配置されている。アドレス1001~アドレス1017の各地点は、第1のアクセスポイントAP1による通信範囲と第2のアクセスポイントAP2による通信範囲と第3のアクセスポイントAP3による通信範囲の何れかに含まれている。
【0040】
例えば、アドレス1001~アドレス1007の各地点は、第1のアクセスポイントAP1による通信範囲に含まれている。換言すれば、搬送車1が、アドレス1001~アドレス1007の各地点にいる状態では、第1のアクセスポイントAP1への接続が可能である。また、アドレス1006~アドレス1012の各地点は、第2のアクセスポイントAP2による通信範囲に含まれている。換言すれば、搬送車1が、アドレス1006~アドレス1012の各地点にいる状態では、第2のアクセスポイントAP2への接続が可能である。
【0041】
第1のアクセスポイントAP1と第2のアクセスポイントAP2とは、通信範囲が重複している。
図5に示す例では、アドレス1006及びアドレス1007の各地点において、第1のアクセスポイントAP1の通信範囲と第2のアクセスポイントAP2の通信範囲とが重複している。すなわち、アドレス1006及びアドレス1007の各地点では、搬送車1は、第1のアクセスポイントAP1及び第2のアクセスポイントAP2の何れにも接続可能である。
【0042】
上述のように本実施形態では、各切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPは、移動経路Rにおける搬送車1の進行方向に基づいて定められる。
図5に示す例のように、搬送車1がアドレス1001からアドレス1007に向けて移動する場合には、第1のアクセスポイントAP1から第2のアクセスポイントAP2に接続先が切り替えられることになる。この場合には、制御装置2は、第1のアクセスポイントAP1及び第2のアクセスポイントAP2の何れとも接続可能なアドレス1006の地点において、搬送車1が接続すべき接続先を第2のアクセスポイントAP2に選定する。すなわちこの場合、アドレス1006の地点が、切替位置Psとされ、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPが第2のアクセスポイントAP2とされる。同様に、
図5に示す例の場合、アドレス1011の地点が、次の切替位置Psとされ、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPが第3のアクセスポイントAP3とされる。
【0043】
このように本実施形態では、制御装置2は、経路8における各地点と当該各地点において接続すべきアクセスポイントAPとの対応表に基づいて、切替位置情報及び接続ポイント情報を作成する。しかし、制御装置2は、このような対応表に代えて、或いは、これに加えて、各アクセスポイントAPと経路8における各地点との相対距離を示した相対距離表(
図6参照)に基づいて、切替位置情報及び接続ポイント情報を作成してもよい。この場合には、移動経路Rを移動する搬送車1が通る各地点において、最も近いアクセスポイントAPが、搬送車1が接続すべきアクセスポイントAPとして制御装置2によって選定される。
【0044】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について説明する。
【0045】
(1)上記の実施形態では、制御装置2は、移動経路情報と切替位置情報とに加えて、移動経路Rを移動中の搬送車1が順次接続すべき複数のアクセスポイントAPを示した接続ポイント情報を、搬送車1に送信する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御装置2は、接続ポイント情報は搬送車1に送信しなくてもよい。この場合、搬送車1は、切替位置Psまたはその周辺において、接続すべきアクセスポイントAPを自ら探索して決定するとよい。
【0046】
(2)上記の実施形態では、搬送車1の進行方向を基準として、切替位置Psよりも前方にあるアクセスポイントAPが、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPとして設定される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、切替位置Psの周囲何れかにあるアクセスポイントAPが、当該切替位置Psにおいて接続すべきアクセスポイントAPとして設定されればよい。例えば、切替位置Psの周囲360°の範囲において当該切替位置Psに最も近いアクセスポイントAPが、接続すべきアクセスポイントAPとして設定されてもよい。
【0047】
(3)上記の実施形態では、無線通信機14は、搬送車1の前方部分に設置されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、無線通信機14は、搬送車1における何れかの部分に設定されていればよい。例えば、搬送車1の後方部分に無線通信機14が設置されていてもよい。
【0048】
(4)上記の実施形態では、切替位置情報には、移動経路R中の全ての切替位置Psの情報が含まれる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、切替位置情報には、移動経路R中の全ての切替位置Psのうち、一部の切替位置Psの情報のみが含まれていてもよい。この場合、制御装置2は、複数回に亘って切替位置情報を搬送車1に送信することで、移動経路R中の全ての切替位置Psの情報を搬送車1に送信するとよい。
【0049】
(5)上記の実施形態では、経路8が、天井付近に設置されたレール80を用いて構成され、搬送車1が、レール80に支持されながら走行する天井搬送車として構成されている例について説明した。しかしながら、このような例に限定されることなく、搬送車1は、床面を走行する床面搬送車として構成されていてもよい。この場合、経路8は、床面に沿って設けられた磁気テープ等を用いて構成されていてもよいし、或いは、床面に沿って仮想的に設定されたものであってもよい。
【0050】
(6)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0051】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、本実施形態のまとめについて説明する。
【0052】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記制御装置は、前記搬送車が移動すべき移動経路を示す移動経路情報と、前記移動経路を移動中の前記搬送車が前記アクセスポイントの切り替えを行うべき切替位置を示す切替位置情報とを、前記搬送車に送信する。
【0053】
本構成によれば、搬送車は、移動経路情報と切替位置情報とを制御装置から受け取ることができる。移動経路情報は、搬送車が移動すべき移動経路を示す情報であり、切替位置情報は、搬送車が、指定された移動経路を移動中にアクセスポイントの切り替えを行うべき切替位置を示す情報である。この切替位置は、搬送車の移動経路に基づいて設定されるため、例えば、搬送車の移動方向や、移動中の搬送車による電波の受信範囲などを考慮したものとすることができる。そのため、アクセスポイントの切替位置を、状況に応じて適切な位置に設定することが可能である。従って、本構成によれば、搬送車の移動中であっても、制御装置と搬送車との通信状態を良好に維持することが可能となる。
【0054】
前記切替位置情報には、前記移動経路中の全ての前記切替位置の情報が含まれる、と好適である。
【0055】
本構成によれば、少なくとも、指定された移動経路において搬送車が移動を開始してから移動を終了するまでの間、制御装置と搬送車との通信状態を良好に維持することが可能となる。
【0056】
前記制御装置は、更に、前記移動経路を移動中の前記搬送車が順次接続すべき複数の前記アクセスポイントを示した接続ポイント情報を、前記搬送車に送信する、と好適である。
【0057】
本構成によれば、移動経路における各地点において接続すべきアクセスポイントを、搬送車に指示することができる。従って、本構成によれば、制御装置と移動経路を移動中の搬送車との通信状態を、より一層良好に維持し易い。
【0058】
前記制御装置は、前記搬送車の移動中に前記移動経路を変更する場合、変更後の新たな前記移動経路を示す前記移動経路情報と、当該新たな前記移動経路に対応した前記切替位置の情報を示す前記切替位置情報と、を前記搬送車に送信する、と好適である。
【0059】
本構成によれば、搬送車の移動経路が移動中に変更された場合であっても、変更後の新たな移動経路に基づいて移動経路情報と切替位置情報が作成され、それらの情報が搬送車に送信される。従って、本構成によれば、搬送車の移動経路が変更された場合であっても、制御装置と搬送車との通信状態を良好に維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示に係る技術は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 :物品搬送設備
1 :搬送車
14 :無線通信機
2 :制御装置
8 :経路
R :移動経路
AP :アクセスポイント
Ps :切替位置