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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162773
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】無人フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B66F9/16 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078656
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中辻 佳祐
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333BB05
3F333FD08
3F333FE04
(57)【要約】
【課題】床面に起因して車体が前後に傾いているとき一対のフォークを水平にでき、左右に傾いているとき一対のフォークの先端の高さを揃える。
【解決手段】無人フォークリフトは、フォーク4Rをフォーク4Lとは独立してティルトさせるティルト装置5Rと、フォーク4Lをフォーク4Rとは独立してティルトさせるティルト装置5Lと、車体前後方向におけるフォーク4Rの傾斜角度を計測する前後傾斜センサ14Rと、車体前後方向におけるフォーク4Lの傾斜角度を計測する前後傾斜センサ14Lと、車体左右方向Yにおける車体の傾斜角度を計測する左右傾斜センサと、を備える。制御装置は、前後傾斜センサ14R、前後傾斜センサ14Lおよび左右傾斜センサに基づいてティルト装置5R,5Lを制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業位置へ走行して当該作業位置にて荷役作業を行う無人フォーリフトであって、
床面を走行可能な車体と、
前記車体の前方に設けられたマスト装置と、
車体左右方向に延在するティルトシャフトを有し、前記マスト装置によって昇降されるように設けられたリフトブラケットと、
前記ティルトシャフトに互いに独立して揺動可能に支持され、互いに前記車体左右方向に間隔をあけて設けられ、前記車体の前方に延在する第1フォークおよび第2フォークと、
前記第1フォークを前記第2フォークとは独立して前記ティルトシャフトを中心にティルトさせる第1ティルト装置と、
前記第2フォークを前記第1フォークとは独立して前記ティルトシャフトを中心にティルトさせる第2ティルト装置と、
車体前後方向における前記第1フォークの傾斜角度を計測する第1前後傾斜センサと、
前記車体前後方向における前記第2フォークの傾斜角度を計測する第2前後傾斜センサと、
前記車体左右方向における前記車体の傾斜角度を計測する左右傾斜センサと、
前記第1ティルト装置および前記第2ティルト装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて前記第1ティルト装置を制御して、前記第1フォークを前記車体前後方向において水平にし、
前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて前記第2ティルト装置を制御して、前記第2フォークを前記車体前後方向において水平にし、および、
前記左右傾斜センサの計測に基づいて前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃えるように構成されている、
無人フォークリフト。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記左右傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体左右方向に傾いていると判定すると、前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃えるよう構成されている、
請求項1に記載の無人フォークリフト。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて、前記第1フォークが鉛直方向に対して水平でないと判定すると、前記第1ティルト装置を前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて制御して、前記第1フォークを鉛直方向に対して水平にし、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて、前記第2フォークが鉛直方向に対して水平でないと判定すると、前記第2ティルト装置を前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて制御して、前記第2フォークを鉛直方向に対して水平にするように構成されている、
請求項1に記載の無人フォークリフト。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記左右傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体左右方向に傾いていると判定し、かつ、前記第1または第2前後傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体前後方向に傾いていると判定すると、
前記左右傾斜センサによって計測された傾斜角度および前記第1または第2前後傾斜センサによって計測された傾斜角度に基づいて、前記車体左右方向の傾斜または前記車体前後方向の傾斜のどちらに対処するかを決定し、
前記車体左右方向の傾斜に対処すると決定すると、前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃え、
前記車体前後方向の傾斜に対処すると決定すると、前記第1ティルト装置および前記第2ティルト装置を制御して、前記第1フォークおよび前記第2フォークを鉛直方向に対して水平にするように構成されている、
請求項1に記載の無人フォークリフト。
【請求項5】
前記第1ティルト装置は、
前記ティルトシャフトを中心に揺動するように設けられて前記第1フォークの後面に当接する伝達部材と、
リフト側ローラおよびティルト側ローラを有するローラ群と、
前記リフトブラケットに取り付けられ、前記ローラ群を前記リフトブラケットの昇降方向に直動させるための直動機構と、
前記直動機構を作動させるための駆動源と、
前記リフトブラケットに設けられた後方ローラ受けと、
前記伝達部材に設けられた前方ローラ受けと、を備え、
前記後方ローラ受けは、前記リフト側ローラが転動可能に当接する平行面であって、前記ローラ群の昇降方向に平行な平行面を有し、
前記前方ローラ受けは、前記ティルト側ローラが転動可能に当接する傾斜面であって、下方に向かって次第に前記後方ローラ受けの前記平行面に近づくように傾斜する傾斜面を有する、
請求項1に記載の無人フォークリフト。
【請求項6】
前記第2ティルト装置は、
前記ティルトシャフトを中心に揺動するように設けられて前記第2フォークの後面に当接する伝達部材と、
リフト側ローラおよびティルト側ローラを有するローラ群と、
前記リフトブラケットに取り付けられ、前記ローラ群を前記リフトブラケットの昇降方向に直動させるための直動機構と、
前記直動機構を作動させるための駆動源と、
前記リフトブラケットに設けられた後方ローラ受けと、
前記伝達部材に設けられた前方ローラ受けと、を備え、
前記後方ローラ受けは、前記リフト側ローラが転動可能に当接する平行面であって、前記ローラ群の昇降方向に平行な平行面を有し、
前記前方ローラ受けは、前記ティルト側ローラが転動可能に当接する傾斜面であって、下方に向かって次第に前記後方ローラ受けの前記平行面に近づくように傾斜する傾斜面を有する、
請求項1に記載の無人フォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、フォークの傾きを調整するためのティルト装置を有する無人フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトには、一対のフォークを前後に傾倒させてフォークの傾きを調整するティルト装置を備えたものがある(例えば、特許文献1-3等)。ティルト装置によって、フォークリフトは、荷物(パレット)をフォーク上に支持しているときに、荷物が一対のフォークから落下しないように一対のフォークを後傾させることができる。また、フォークリフトは、床面が前後に傾斜しているときでも一対のフォークを鉛直方向に対して水平に調整することができる。
【0003】
ところで、無人フォークリフトは、光学センサ等を用いて、周囲の物体との距離を計測し、自己の位置を特定し、自己と荷物(パレット)との位置関係を特定し、自動で走行しかつ荷役作業をする。
【0004】
例えば、無人フォークリフトが作業位置にまで走行して荷役作業をする際にその作業位置にて床面が車体前後方向に傾斜していることがある。この場合、パレットの差込口の高さが小さいと、床面の影響を受けて傾斜したフォークがパレットを突いてしまい、荷役作業に支障が生じる可能性がある。この問題は、ティルト装置でフォークを水平に調整することで対処できる。
【0005】
また、例えば、無人フォークリフトが作業位置にて荷役作業をする際にその作業位置にて床面が車体左右方向に傾斜していることがある。この場合、左右のフォークも車体左右方向に傾いて左右のフォークの先端の高さが揃わないので、同様に、荷取りや荷置きをうまくできない可能性がある。この問題は、通常のティルト装置では対処することができない。というのも、左右のフォークはティルト装置によって一体的に前傾または後傾するだけだからである。
【0006】
なお、特許文献3は、左右のフォークを分離・独立して設け、左右のフォークのそれぞれに対してチルト駆動部を設けた無人フォークリフトを開示している(特許文献3の実施例3参照)。しかし、特許文献3のフォークリフトは、フォークのチルト動作をリフト動作に連動させることでチルト動作専用のアクチュエータを省略し、かつ、左右のフォークの双方を床面の傾きに合わせて接地させることを目的としたものにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-43469号公報
【特許文献2】特開2016-44010号公報
【特許文献3】特開2013-163553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、床面に起因して車体が前後に傾いているとき一対のフォークを水平にでき、左右に傾いているとき一対のフォークの先端の高さを揃えることが可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願では、作業位置へ走行して当該作業位置にて荷役作業を行う無人フォーリフトが提供され、
前記無人フォークリフトは、
床面を走行可能な車体と、
前記車体の前方に設けられたマスト装置と、
車体左右方向に延在するティルトシャフトを有し、前記マスト装置によって昇降されるように設けられたリフトブラケットと、
前記ティルトシャフトに互いに独立して揺動可能に支持され、互いに前記車体左右方向に間隔をあけて設けられ、前記車体の前方に延在する第1フォークおよび第2フォークと、
前記第1フォークを前記第2フォークとは独立して前記ティルトシャフトを中心にティルトさせる第1ティルト装置と、
前記第2フォークを前記第1フォークとは独立して前記ティルトシャフトを中心にティルトさせる第2ティルト装置と、
車体前後方向における前記第1フォークの傾斜角度を計測する第1前後傾斜センサと、
前記車体前後方向における前記第2フォークの傾斜角度を計測する第2前後傾斜センサと、
前記車体左右方向における前記車体の傾斜角度を計測する左右傾斜センサと、
前記第1ティルト装置および前記第2ティルト装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて前記第1ティルト装置を制御して、前記第1フォークを前記車体前後方向において水平にし、
前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて前記第2ティルト装置を制御して、前記第2フォークを前記車体前後方向において水平にし、および、
前記左右傾斜センサの計測に基づいて前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃えるように構成されている。
【0010】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記左右傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体左右方向に傾いていると判定すると、前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃えるよう構成されてよい。
【0011】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて、前記第1フォークが鉛直方向に対して水平でないと判定すると、前記第1ティルト装置を前記第1前後傾斜センサの計測に基づいて制御して、前記第1フォークを鉛直方向に対して水平にし、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて、前記第2フォークが鉛直方向に対して水平でないと判定すると、前記第2ティルト装置を前記第2前後傾斜センサの計測に基づいて制御して、前記第2フォークを鉛直方向に対して水平にするように構成されてよい。
【0012】
前記制御装置は、
前記車体が前記作業位置にあるときに、前記左右傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体左右方向に傾いていると判定し、かつ、前記第1または第2前後傾斜センサの計測に基づいて、前記車体が前記車体前後方向に傾いていると判定すると、
前記左右傾斜センサによって計測された傾斜角度および前記第1または第2前後傾斜センサによって計測された傾斜角度に基づいて、前記車体左右方向の傾斜または前記車体前後方向の傾斜のどちらに対処するかを決定し、
前記車体左右方向の傾斜に対処すると決定すると、前記第1ティルト装置及び前記第2ティルト装置のうち少なくともいずれか一方を制御して、前記第1フォークの先端の高さと前記第2フォークの先端の高さを揃え、
前記車体前後方向の傾斜に対処すると決定すると、前記第1ティルト装置および前記第2ティルト装置を制御して、前記第1フォークおよび前記第2フォークを鉛直方向に対して水平にするように構成されてよい。
【0013】
前記第1ティルト装置は、
前記ティルトシャフトを中心に揺動するように設けられて前記第1フォークの後面に当接する伝達部材と、
リフト側ローラおよびティルト側ローラを有するローラ群と、
前記リフトブラケットに取り付けられ、前記ローラ群を前記リフトブラケットの昇降方向に直動させるための直動機構と、
前記直動機構を作動させるための駆動源と、
前記リフトブラケットに設けられた後方ローラ受けと、
前記伝達部材に設けられた前方ローラ受けと、を備え、
前記後方ローラ受けは、前記リフト側ローラが転動可能に当接する平行面であって、前記ローラ群の昇降方向に平行な平行面を有し、
前記前方ローラ受けは、前記ティルト側ローラが転動可能に当接する傾斜面であって、下方に向かって次第に前記後方ローラ受けの前記平行面に近づくように傾斜する傾斜面を有してよい。
また、前記第2ティルト装置も、同様の構成を備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、例示の無人フォークリフトの概略側面図である。
図2図2は、荷役作業時の例示の無人フォークリフトの概略側面図である。
図3図3は、フォークのパレットへの差込みを示す図である。
図4図4は、2つの例示のティルト装置の概略背面図である。
図5図5は、図4の概略側面図である。
図6図6A図6Bは、ティルト動作を説明するための概略図である。
図7図7は、フォークの先端の高さを揃える動作を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態が説明される。なお、図面に示される構成要素は、必ずしも正確な寸法や比率ではなく、その機能または動作を表すにすぎない。
【0016】
図1の例示の無人フォークリフトは、車体1と、車体1の前方に設けられたマスト装置2と、マスト装置2によって昇降されるリフトブラケット3と、リフトブラケット3に支持された左右一対のフォーク4とを備える。
【0017】
車体1は、車輪10を有しており、床面8を走行可能である。
【0018】
マスト装置2は、周知の構成が採用されているのでその詳細な説明は省略されているが、リフトシリンダ(図示略)、マスト20などを備える。マスト20は、例えば、アウターマスト200、インナーマスト201(図2)を含む。マスト装置2は、リフトブラケット3および一対のフォーク4を一体的にマスト20に沿って昇降させるように構成されている。すなわち、マスト装置2によってフォーク4のリフト動作が実現される。
【0019】
マスト装置2は、車体1のストラドルレッグ11に沿って車体前後方向Xに移動可能に設けられている。無人フォークリフトは、さらに、図示されないリーチ装置を備える。リーチ装置は、マスト装置2をストラドルレッグ11に沿って車体1に対して車体前後方向Xに移動させるように構成されている。すなわち、リーチ装置によってフォーク4のリーチ動作が実現されている。
【0020】
リフトブラケット3は、マスト装置2によってマスト20に沿って昇降されるように設けられている。例えば、ガイドローラ32(図5にのみ図示)がインナーマスト201の溝に嵌め込まれることで、リフトブラケット3がインナーマスト201に沿って案内される構成が採用されてよい。リフトブラケット3は、一対のフォーク4のティルト動作(後に詳述される)を実現するためにティルトシャフト30を有する。
【0021】
一対のフォーク4は、図2の通り、荷物92を支持するために、より具体的には荷物92が載置されるパレット91を支持するために、車体1の前方に延在している。
【0022】
さらに、無人フォークリフトは、LiDARといった光学センサ12と、車体1の走行やフォーク4の動作を制御するための制御装置13を備える。制御装置13は、光学センサ12を用いて周囲の物体との距離を計測し、それにより自己の位置を特定し、また自己とパレット91・荷物92との位置関係を特定する。これにより、無人フォークリフトは、所定の走行経路に沿って床面8を走行することができ、かつ、荷役作業をすることができる。
【0023】
例えば、無人フォークリフトは、ラック90の前に規定された作業位置にまで走行し、停止する。無人フォークリフトは、作業位置にて、フォーク4の高さをパレット91の差込口に合わせ、フォーク4をパレット91の差込口に差し込み、フォーク4を持ち上げることで、パレット91およびこれに載置された荷物92をフォーク4で支持する。こうして、無人フォークリフトは、ラック90に対して荷取りをすることができる。また、無人フォークリフトは、ラック90に対して荷置きをすることもできる。
【0024】
なお、床面8が作業位置にて傾いていると、作業位置にある無人フォークリフトも傾くこととなる。そのため、図3の通り、無人フォークリフトがフォーク4をパレット91に差し込む際に、床面8の傾きの影響を受けてフォーク4がパレット91を突いてしまい(領域S参照)、荷物92の取合いが困難になるかもしれない。これは、パレット91の差込口の高さが小さいほど起こり得る。そこで、無人フォークリフトは、フォーク4の傾きや、その先端の高さを微修正するために以下の構成を有する。
【0025】
図4図5の通り、一対のフォーク4Rおよびフォーク4Lは、互いに車体左右方向Yに間隔をあけて設けられおり、ティルトシャフト30に互いに独立に揺動可能に支持されている。ティルトシャフト30は、車体左右方向Yに延在している。
【0026】
さらに、無人フォークリフトは、フォーク4Rをフォーク4Lとは独立にティルトシャフト30を中心にティルト(傾倒)させるためのティルト装置5Rと、フォーク4Lをフォーク4Rとは独立にティルトシャフト30を中心にティルトさせるためのティルト装置5Lとを備える。
【0027】
ティルト装置5Rは、ティルトシャフト30に揺動可能に支持されてフォーク4Rの後面に当接する伝達部材(ティルトバー)50を備える。なお、バックレスト51が、伝達部材50に固定されており、伝達部材50と共にティルトシャフト30を中心に揺動可能である。伝達部材50は、後述のローラ群52の昇降動作をフォーク4Rに伝達して、フォーク4Rをティルトさせるためのものである。
【0028】
さらに、ティルト装置5Rは、ローラ群52を備えている。ローラ群52は、実施形態では、リフト側ローラ520とティルト側ローラ521の2つのローラで構成されている。
【0029】
さらに、ティルト装置5Rは、直動機構53、減速機54、および、駆動源としての電動モータ55をさらに備える。これらの構成要素53-55は、リフトブラケット3に支持されている。
【0030】
直動機構53は、ローラ群52を支持しており、ローラ群52をリフトブラケット3の昇降方向に直動させるように配置されている。電動モータ55が、減速機54を介して直動機構53に連結されている。電動モータ55によって直動機構53が作動すると、ローラ群52が上方または下方に(リフトブラケット3の昇降方向)に直動するようになっている。直動機構53は、例えばボールねじ等を含んだものであり、ローラ群52を高い精度で変位させることができる。
【0031】
図5を参照して、ティルト装置5Rは、さらに、リフトブラケット3に設けられた後方ローラ受け56と、伝達部材50に設けられた前方ローラ受け57とを備える。後方ローラ受け56は、例えば、リフトブラケット3のサイドプレート31に支持される。前方ローラ受け57は、例えば、伝達部材50の後面に取り付けられる。
【0032】
図6A図6Bを参照して、ローラ520,521とローラ受け56,57の位置関係が説明される。後方ローラ受け56は、リフトブラケット3およびローラ群52の昇降方向に平行な平行面560を有する。前方ローラ受け57は、下方に向かって次第に後方ローラ受け56の平行面560に近づくように傾斜する傾斜面(テーパ面)570を有する。その傾斜角度(テーパ角度)は、例えば3°である。
【0033】
図6Aの通り、リフト側ローラ520は、平行面560を転動可能に平行面560に当接しているが傾斜面570には当接していない。図6Bの通り、ティルト側ローラ521は、傾斜面570を転動可能に傾斜面570に当接しているが平行面560には当接していない。
【0034】
ローラ群52が直動機構53によって下降すると、ティルト側ローラ521が傾斜面570を転動しながら下降し、前方ローラ受け57を押しどける。結果的に、前方ローラ受け57、伝達部材50およびフォーク4Rが(バックレスト51も)、ティルトシャフト30を中心として、フォーク4Rの先端が高くなるようにティルトする。すなわち、ローラ群52が下降することでフォーク4Rがフォーク4Lとは独立に後傾する。
【0035】
一方、ローラ群52が直動機構53によって上昇すると、ティルト側ローラ521が傾斜面570を転動しながら上昇し、その結果、前方ローラ受け57、伝達部材50およびフォーク4Rが(バックレスト51も)、ティルトシャフト30を中心として、フォーク4Rの先端が低くなるようにティルトする。すなわち、ローラ群52が上昇することでフォーク4Rがフォーク4Lとは独立に前傾する。
【0036】
以上のティルト装置5Rによれば、平行面560と傾斜面570とによる楔効果によって倍力が得られるので、必要な推力が少なくなるという利点がある。
【0037】
ティルト装置5Lも、ティルト装置5Rと同様の構成を備えており、フォーク4Lを、フォーク4Rとは独立にティルトシャフト30を中心に前傾および後傾させることができる。ティルト装置5Lについては、ティルト装置5Rと同様の構成要素に同一の符号が付されて、その説明は省略される。
【0038】
このように、フォーク4R,4Lのそれぞれに対して別々にティルト装置5L,5Rが割り当てられている。当然ながら、ティルト装置5Lの伝達部材50とティルト装置5Rの伝達部材50とは互いに独立に揺動可能にティルトシャフト30に支持されている。なお、実施形態のように1つの後方ローラ受け56がティルト装置5Rとティルト装置5Lとで共用されてもよいし(図4の1点鎖線参照)、フォーク4R,4Lに対して別々に設けられてもよい。なお、上記のティルト装置は一例にすぎず、様々なティルト装置の構成が採用されてよい。
【0039】
さらに、無人フォークリフトは、車体前後方向Xにおけるフォーク4Rの傾斜角度を計測する前後傾斜センサ14R(図4)と、車体前後方向Xにおけるフォーク4Lの傾斜角度を計測する前後傾斜センサ14L(図4)と、車体左右方向Yにおける車体1の傾斜角度を計測する左右傾斜センサ15(図1)と、を備える。
【0040】
前後傾斜センサ14Rは、ティルト装置5Rの伝達部材50に取り付けられており、車体前後方向Xにおけるフォーク4Rの水平に対する傾斜角度を計測する。前後傾斜センサ14Rは、フォーク4Rが傾いてなくて鉛直方向に対して水平のとき0を示し、水平に対して前後のどちらか一方に傾いていれば正の値を示し、他方に傾いていれば負の値を示す。
【0041】
同様に、前後傾斜センサ14Lは、ティルト装置5Lの伝達部材50に取り付けらており、車体前後方向Xにおけるフォーク4Rの水平に対する傾斜角度を計測する。前後傾斜センサ14Rは、フォーク4Rが鉛直方向に対して水平のとき0を示し、水平に対して前後のどちらか一方に傾いていれば正の値を示し、他方に傾いていれば負の値を示す。
【0042】
左右傾斜センサ15は、車体1に設けられている。左右傾斜センサ15は、車体左右方向Yにおける車体1(したがって、フォーク4R,4L)の水平に対する傾斜角度を計測するものである。左右傾斜センサ15は、車体1が傾いてなくて鉛直方向に対して水平のとき0を示し、左右のどちらか一方に傾いていれば正の値を示し、他方に傾いていれば負の値を示す。
【0043】
これらのセンサ14R,14L,15およびティルト装置5R,5L(その電動モータ55)は、制御装置13に電気的に接続されている。制御装置13は、センサ14R,14L,15の計測に基づいて、ティルト装置5R,5Lを制御して、フォーク4R,4Lの水平度を調整し、または、フォーク4Rの先端の高さとフォーク4Lの先端の高さを揃えるように構成されている。
【0044】
具体的には、フォーク4Rが車体前後方向Xにおいて鉛直方向に対して水平でないとき前後傾斜センサ14Rは0でない値を示す。したがって、制御装置13は、ティルト装置5Rを制御して、前後傾斜センサ14Rが0の値を示すようにフォーク4Rをティルトさせてその傾きを微調整する。これによって、フォーク4Rが鉛直方向に対して水平になる。
【0045】
同様に、フォーク4Lが車体前後方向Xにおいて鉛直方向に対して水平でないとき前後傾斜センサ14Lは0でない値を示す。したがって、制御装置13は、ティルト装置5Lを制御して、前後傾斜センサ14Lが0の値を示すようにフォーク4Lをティルトさせてフォーク4の傾きを微調整する。これによって、フォーク4Lが鉛直方向に対して水平になる。
【0046】
車体1が車体左右方向Yに傾いているとき、左右傾斜センサ15は0でない値を示す。そして、車体1が傾いていることにより、フォーク4Rの先端の高さとフォーク4Lの先端の高さが揃わない。したがって、制御装置13は、左右傾斜センサ15の計測に基づいてティルト装置5R,5Lのうち少なくともいずれか一方を制御して、両フォーク4R,4Lの先端の高さを揃える。
【0047】
図7は、車体1が車体左右方向Yに傾斜角度αで傾斜してフォーク4Rの先端40Rの高さが、フォーク4Lの先端40Lの高さよりも低い状態を示す。なお、説明のために、傾斜角度αを誇張して示している。
【0048】
例えば、先端40Rの高さを先端40Lの高さに揃えるためには、フォーク4R,4Lの先端間距離をLとして、図7の通り、その先端40Rを鉛直にL×sinαだけ上げればよい。ここで、ティルトシャフト30も傾斜角度αだけ傾くため先端40Rがティルト動作によって図7の矢印Mの方向に動くので、先端40R,40Lの高さを揃えるためには、フォーク4Rを矢印Mのようにティルトさせればよい。これに代えて、先端40R,40Lの高さを揃えるために、フォーク4Lのティルト動作によってその先端40Lを下げてもよい。若しくは、フォーク4R,4Lのティルト動作によって先端40Rを上げかつ先端40Lを下げて、先端40R,40Lの高さを揃えてもよい。
【0049】
制御装置13は、左右傾斜センサ15により計測された傾斜角度αから、先端40R,40Lの高さを揃えるために必要なフォーク4R及び/又は4Lの調整量(実施形態では、ティルト装置5R及び/又は5Lのローラ群52の変位量)を決定する。
【0050】
一例として、制御装置13は、車体左右方向Yにおける傾斜角度αと、この角度αに対応するフォーク4R及び/又は4Lの必要な調整量との関係を示すテーブルを予め記憶し、計測された傾斜角度αに基づき当該テーブルを参照して、必要な調整量を決定してもよい。例えば、このテーブルは、傾斜角度がα[°]のときにはフォーク4R用のローラ群52の変位量は標準位置から上方にZr[mm]であるとか、傾斜角度が-α[°]のときにはフォーク4L用のローラ群52の変位量は標準位置から上方にZl[mm]であるといった対応関係を示すものであり、シミュレーションや実験などによって予め取得されたものでもよい。
【0051】
上記に代えて、制御装置13は、傾斜角度α、距離L、ティルトシャフト30とフォーク4R,4Lとの距離、ティルト装置5の具体的構造などに基づいて、先端40R,40Lの高さを揃えるために必要なフォーク4R/4Lの調整量を演算により決定してもよい。
【0052】
制御装置13は、決定された調整量でフォーク4R及び/又は4Lをティルトさせることで、具体的には、決定された変位量でティルト装置5R及び/又は5Lのローラ群52を上方または下方に変位させることで、先端40R,40Lの高さを揃えることができる。
【0053】
無人フォークリフトが図1のように傾斜のない床面8にありかつフォーク4R,4Lが水平なとき、前後傾斜センサ14R,14Lは0を示す。以下このフォーク4R,4Lの角度位置を基準位置とする。フォーク4R,4Lが基準位置にあるにもかかわらず前後傾斜センサ14R,14Lが0を示していない場合、これは車体1が車体前後方向Xに傾斜していることを、言い換えれば床面8が車体1の位置で車体前後方向Xに傾斜していることを示す。したがって、制御装置13は、フォーク4R/4Lが基準位置にあるときの前後傾斜センサ14R/14Lの計測に基づいて床面8が車体1の位置で傾斜しているかを判定することができる。
【0054】
左右傾斜センサ15は車体1の車体左右方向Yの傾斜角度を示すものであるが、これは床面8の車体1の位置おける傾斜角度に対応する。したがって、制御装置13は、左右傾斜センサ15の計測に基づいて、床面8が車体1の位置において車体左右方向Yに傾斜しているかを判定することができる。
【0055】
これを利用し、フォーク4R,4Lが基準位置にある無人フォークリフトは、作業位置にて荷役作業を開始する前に(例えば、荷取りを開始する前に)、当該作業位置にて車体1が車体前後方向Xおよび車体左右方向Yに傾いているか(言い換えると、作業位置にて床面8が前後および左右に傾いているか)を判定する。
【0056】
制御装置13は、車体1が作業位置にてどちらの方向にも傾いていないと判定すると、上述のフォーク4R,4Lの傾きおよび高さを微調整する必要がないので、これを行わない。
【0057】
制御装置13は、車体1が作業位置にて車体前後方向Xにのみ傾いていると判定すると、上述のように、フォーク4R,4Lを鉛直方向に対して水平にする。
【0058】
制御装置13は、車体1が作業位置にて車体左右方向Yにのみ傾いていると判定すると、上述のように、フォーク4R,4Lの先端40R,40Lの高さを揃える。
【0059】
制御装置13は、車体1が作業位置にて車体前後方向Xおよび車体左右方向Yに傾いていると判定すると、前後傾斜センサ14R/14Lによって計測される傾斜角度および左右傾斜センサ15によって計測される傾斜角度とに基づいて、車体前後方向Xまたは車体左右方向Yのどちらの傾斜に対処するかを決定する。というもの、上記構成では、床面8が前後および左右に傾斜しているとき、フォーク4R,4Lを車体前後方向Xに水平にすることと、その先端40R,40Lの高さを揃えることとを両立できないからである。
【0060】
制御装置13は、例えば、計測された車体左右方向Yの傾斜角度(すなわち、床面の左右の傾斜角度)が、計測された車体前後方向Xの傾斜角度(すなわち、床面の前後の傾斜角度)よりも小さいときには車体前後方向Xの傾斜に対処すると決定し、一方、計測された車体前後方向Xの傾斜角度以上のときには車体左右方向Yの傾斜に対処すると決定してよい。荷物92の取合いに影響が大きい方向の傾斜に対処すると決定することが好ましい。
【0061】
そして、制御装置13は、車体前後方向Xの傾斜に対処すると決定すると、上述のように、両フォーク4R,4Lを車体前後方向Xにおいて水平にする。
【0062】
一方、制御装置13は、車体左右方向Yの傾斜に対処すると決定すると、上述のように、フォーク4R,4Lの先端40R,40Lの高さを揃える。
【0063】
以上の通り、上記の無人フォークリフトは、床面8の精度に起因する車体前後方向Xや車体左右方向Yの傾きに応じて、フォーク4R,4Lの傾きを微修正し、また、その先端40R,40Lの高さを揃えることができる。
【0064】
したがって、無人フォークリフトは、フォーク4R,4Lが図3のようにパレット91の差込口の高さが小さいことによりパレット91を突いてしまうといった問題なく、ラック90に対して荷役作業を行うことができる。
【0065】
実施形態では、1つのティルトシャフト30が2つの伝達部材50によって共用されている。これに代えて、互いに同軸状に2つのティルトシャフトが設けられ、一方の伝達部材50が一方のティルトシャフトに揺動可能に支持されて、他方の伝達部材50が他方のティルトシャフトに揺動可能に支持されてよい。前後傾斜センサ14L,14Rは、伝達部材50に代えて、バックレスト51に取り付けられたり、荷役作業に干渉しないフォーク4L,4Rの特定の箇所に取り付けられたりするなど、フォーク4R,4Lまたはフォーク4R,4Lと共にティルトする部材に設けられればよい。また、左右傾斜センサ15は、車体1に代えて例えばマスト装置2に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車体
13 制御装置
14R,14L 前後傾斜センサ
15 左右傾斜センサ
2 マスト装置
3 リフトブラケット
30 ティルトシャフト
4,4R,4L フォーク
40R,40L フォークの先端
5R,5L ティルト装置
50 伝達部材
52 ローラ群
520 リフト側ローラ
521 ティルト側ローラ
53 直動機構
55 電動モータ(駆動源)
56 後方ローラ受け
560 平行面
57 前方ローラ受け
570 傾斜面
8 床面
X 車体前後方向
Y 車体左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7