IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電源装置 図1
  • 特開-電源装置 図2
  • 特開-電源装置 図3
  • 特開-電源装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162780
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/02 20060101AFI20241114BHJP
   H01H 47/00 20060101ALI20241114BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241114BHJP
   H02H 7/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H02H9/02 D
H01H47/00 C
B60L3/00 J
B60L3/00 N
H02H7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078669
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直之
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐哉
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
5H125
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA17
5G013BA01
5G013CA05
5G053AA01
5G053AA05
5G053BA04
5G053CA04
5G053EC01
5G053FA05
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125DD05
5H125EE13
(57)【要約】
【課題】各端子の接点の抵抗の増加を抑制する。
【解決手段】システムを起動するときには、正極側リレーおよび負極側リレーのうちプリチャージリレーおよび制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に正極側リレーおよび負極側リレーのうち他方のリレーおよびプリチャージリレーをオンにしてコンデンサのプリチャージを開始し、プリチャージの開始後コンデンサの電圧が電源の電圧より低い所定電圧を超えたときに、一方のリレーをオンする所定処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
前記正極側リレーと前記負極側リレーと前記プリチャージリレーとを制御する制御装置と、
を備え、負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記制御装置は、システム起動時において、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの開始後前記コンデンサの電圧が前記電源の電圧より低い所定電圧を超えたときに、前記一方のリレーをオンする所定処理を実行する
電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記負荷が所定時間以上動作していない場合の前記システム起動時であって前記プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、1組の前記正極側端子および1組の前記負極側端子のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加が検出された場合の前記システム起動時であって前記プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、前記システム起動時に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えた場合において前記システム起動の複数回に一回の頻度で、前記所定処理を実行する
電源装置。
【請求項3】
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの完了後に、前記一方のリレーをオンにすると共に前記プリチャージリレーをオフにしてシステム起動状態にする制御装置と、
を備え、負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記リレー装置は、追加プリチャージリレーおよび前記制限抵抗より抵抗値が小さい追加制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路を有し、
前記制御装置は、所定時に、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするほうのリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスしないほうのリレーおよび前記追加プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサの追加プリチャージを開始し、前記追加プリチャージの開始後前記コンデンサの電圧が前記電源の電圧より低い所定電圧を超えたときに、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするリレーをオンする所定処理を実行する
電源装置。
【請求項4】
請求項3記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記負荷が所定時間以上動作していない場合の前記所定時であって前記追加プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、1組の前記正極側端子および1組の前記負極側端子のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加が検出された場合の前記所定時であって前記追加プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、前記所定時に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えた場合においてシステム起動の複数回に一回の頻度で、前記所定処理を実行する
電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気部品が2つの端子(雄型コネクタ端子および雌型コネクタ端子)により接続されるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この2つの端子を嵌合させる際に2つの端子うちの一方を他方に摺動させるワインピングを行なうときには、2つの端子のうち一方が他方に対して摺動される摺動距離と、2つの端子の接点の間に印加される接触荷重とを調整して、2つの端子の接点の抵抗値を所定値以下としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5742791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電源と、第1電力ラインの正極側ラインと負極側ラインとに取り付けられるコンデンサと、第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が正極側リレーまたは負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、第1電力ラインの正極側ラインと第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、第1電力ラインの負極側ラインと第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、を備える電源装置では、各端子の接点に被膜が形成されることがある。接点に被膜が形成されると、接点の抵抗が増加してしまう。
【0005】
本発明の電源装置は、各端子の接点の抵抗の増加を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の電源装置は、
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
前記正極側リレーと前記負極側リレーと前記プリチャージリレーとを制御する制御装置と、
を備え、負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記制御装置は、システム起動時において、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの開始後前記コンデンサの電圧が前記電源の電圧より低い所定電圧を超えたときに、前記一方のリレーをオンする所定処理を実行する
ことを要旨とする。
【0008】
こうした本発明の第1の電源装置において、前記制御装置は、 前記制御装置は、前記負荷が所定時間以上動作していない場合の前記システム起動時であって前記プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、1組の前記正極側端子および1組の前記負極側端子のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加が検出された場合の前記システム起動時であって前記プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、前記システム起動時に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えた場合において前記システム起動の複数回に一回の頻度で、前記所定処理を実行してもよい。こうすれば、所定処理が頻繁に実行されることを抑制できる。ここで、「所定時間」としては、各接点に接点抵抗が有意に低下する厚さの被膜が形成されるのに要する時間などを挙げることができる。
【0009】
本発明の第2の電源装置は、
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの完了後に、前記一方のリレーをオンにすると共に前記プリチャージリレーをオフにしてシステム起動状態にする制御装置と、
を備え、負荷に電力を供給する電源装置であって、
前記リレー装置は、追加プリチャージリレーおよび前記制限抵抗より抵抗値が小さい追加制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路を有し、
前記制御装置は、所定時に、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするほうのリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスしないほうのリレーおよび前記追加プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサの追加プリチャージを開始し、前記追加プリチャージの開始後前記コンデンサの電圧が前記電源の電圧より低い所定電圧を超えたときに、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするリレーをオンする所定処理を実行する
ことを要旨とする。
【0010】
こうした本発明の第2の電源装置において、前記制御装置は、前記負荷が所定時間以上動作していない場合の前記所定時であって前記追加プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、1組の前記正極側端子および1組の前記負極側端子のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加が検出された場合の前記所定時であって前記追加プリチャージの開始後に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えたときに、または、前記所定時に前記コンデンサの電圧が前記所定電圧を超えた場合においてシステム起動の複数回に一回の頻度で、前記所定処理を実行してもよい。こうすれば、所定処理が頻繁に実行されることを抑制できる。ここで、「所定時間」としては、各接点に接点抵抗が有意に低下する厚さの被膜が形成されるのに要する時間などを挙げることができる。
【0011】
また、本発明の第1、第2の電源装置において、前記正極側端子および前記負極側端子は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有してもよい。こうすれば、各端子の接点に形成される被膜を破壊することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としての電源装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】電子制御ユニット50により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】プリチャージを開始してからのコンデンサ35の電圧Vc、バッテリ36の電流Ib、プリチャージリレーSPの状態、負極側リレーSGの状態の時間変化の一例を説明するための説明図である。
図4】変形例の電源装置を搭載する電気自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0014】
図1は、本発明の一実施例としての電源装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。図中、インダクタLwhp、Lwhn、抵抗Rwhp、Rwhnは、ワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインの寄生インダクタンス、寄生抵抗である。抵抗Rbは、バッテリ36の内部抵抗である。インダクタLc、抵抗Rcは、コンデンサ35の等価直列インダクタンスと等価直列抵抗である。実施例の電気自動車20は、図示するように、モータ32と、パワーコントロールユニットPCUと、電池パックBPと、電子制御ユニット(制御装置)50と、を備える。パワーコントロールユニットPCUと電池パックBPは、ワイヤハーネスWHを介して接続されている。ここで、実施例の電源装置としては、パワーコントロールユニットPCUのコンデンサ35と、電池パックBPと、第1正極側端子Tp1、Twhp1と、第2正極側端子Tp2、Twhp2と、第1負極側端子Tn1、Twhn1と、第2負極側端子Tn2、Twhn2と、電子制御ユニット50と、が相当する。
【0015】
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。このモータ32の回転子は、駆動輪22a、22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。
【0016】
パワーコントロールユニットPCUは、インバータ34と、コンデンサ35と、を備える。
【0017】
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられると共に第1電力ライン42に接続されている。このインバータ34は、6つのトランジスタT11~T16と、トランジスタT11~T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11~D16と、を有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ第1電力ライン42の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。トランジスタT11~T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータ32の三相コイル(U相、V相、W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、電子制御ユニット50によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。
【0018】
コンデンサ35は、第1電力ライン42の正極側ライン、負極側ラインに取り付けられている。第1電力ライン42の正極側ライン、負極側ラインには、第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1が接続されている。第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1は、金属部がワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインに接続された第1正極側、第1負極側端子Twhp1、Twhn1の金属部に接続されている。第1正極型端子、第1負極側端子Twhp1、Twhn1の金属部は、銅にメッキ処理が施されて形成されている。第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1と接点には、接点抵抗Rcp1、Rcn1が形成されている。
【0019】
電池パックBPは、バッテリ36と、リレー装置48と、を備える。
【0020】
バッテリ36は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、第2電力ライン44に接続されている。
【0021】
リレー装置48は、第2電力ライン44に設けられている。このリレー装置48は、第2電力ライン44の正極側ラインに設けられた正極側リレーSB(他方のリレー)と、第2電力ライン44の負極側ラインに設けられた負極側リレーSG(一方のリレー)と、プリチャージリレーSPおよび制限抵抗SRが負極側リレーSGをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路SCと、を備える。ここで、プリチャージ回路SCは、バッテリ36からインバータ34側に電力を供給する際に、正極側リレーSBおよび負極側リレーSGをオンにする前にコンデンサ35を充電する(プリチャージを行なう)ための回路である。リレー装置48は、電子制御ユニット50によってオンオフ制御されることにより、バッテリ36側とコンデンサ35側との接続および接続の解除を行なう。第2電力ライン44には、第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2が接続されている。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2は、金属部がワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインに接続された第2正極型端子、第2負極側端子Twhp2、Twhn2の金属部に接続されている。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2の金属部は、銅にメッキ処理が施されて形成されている。第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点には、接点抵抗Rcp2、Rcn2が形成される。なお、制限抵抗SRの抵抗値は、抵抗Rwhp、Rwhn、Rc、接点抵抗Rcp1、Rcp2、Rcn1、Rcn2に比して大きく設定されており、例えば、数10Ω程度に設定されている。
【0022】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に、処理プログラムを記憶するROM54やデータを一時的に記憶するRAM56、入出力ポートを備える。電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmや、モータ32の各相に流れる電流を検出する電流センサからのモータ32に流れる相電流Iu、Ivを挙げることができる。また、バッテリ36の端子間に取り付けられた電圧センサからのバッテリ36の電圧Vbや、バッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサからのバッテリ36の電流Ibも挙げることができる。さらに、コンデンサ35の端子間に取り付けられた電圧センサ35aからのコンデンサ35(第1電力ライン42)の電圧Vcも挙げることができる。加えて、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSHも挙げることができる。また、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションB、車速センサ68からの車速Vも挙げることができる。電子制御ユニット50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50から出力される信号としては、例えば、インバータ34のトランジスタT11~T16へのスイッチング制御信号を挙げることができる。電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmに基づいてモータ32の電気角θeや回転数Nmを演算している。
【0023】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、以下の走行制御を行なう。走行制御では、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸26に要求される要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定し、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16のスイッチング制御を行なう。
【0024】
次に、こうして構成された実施例での電気自動車20の動作、特に、システム起動時の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、システム起動操作(イグニッションスイッチ60のオン操作)が行なわれたときに、実行される。なお、図2の処理ルーチンの実行開始時には、リレー装置48のリレーの全て(正極側リレーSB、負極側リレーSG、プリチャージリレーSP)がオフになっている。
【0025】
本ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始する(ステップS100)。こうしたプリチャージによりコンデンサ35の電圧が上昇を開始する。
【0026】
続いて、電圧センサ35aからのコンデンサ35の電圧Vcを入力し(ステップS110)、電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えているか否かを判定する(ステップS120)。所定電圧Vcrefは、バッテリ36の電圧Vbより低い電圧であって、ステップS130で負極側リレーSGをオンしたときに、コンデンサ35や正極側リレーSB、負極側リレーSGの定格電流の範囲内で突入電流Irを流すことができる電圧である。所定電圧Vcrefは、バッテリ36の電圧Vbより100V~数100V程度低い値などを用いることができる。
【0027】
電圧Vcが所定電圧Vcref以下のときには、ステップS110に戻り、電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えるまで、ステップS110、S120を繰り返す。
【0028】
電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えると、負極側リレーSGをオンする所定処理を実行する(ステップS130)。上述したように、所定電圧Vcrefは、負極側リレーSGをオンしたときに、コンデンサ35の定格電流の範囲内で電流Ibが突入電流となる電圧に設定されている。このときの突入電流Irは、次式(1)を用いて算出できる。式(1)中、「Vb」はバッテリ36の電圧、「Vc」はコンデンサ35の電圧、「SR」、「Rwhp」、「Rwhn」、「Rcp」、「Rcn」、「Rc」、「Rb」は、それぞれ制限抵抗SR、抵抗Rwhp、Rwhn、正極側端子同士の接点(第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点)の合成抵抗(=Rcp1+Rcp2)、負極側端子同士の接点(第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との接点、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点)の合成抵抗(=Rcn1+Rcn2)、抵抗Rc、抵抗Rbの抵抗値である。制限抵抗SRの抵抗値は、抵抗Rwhp、Rwhn、正極側端子同士の接点の合成抵抗、負極側端子同士の接点の合成抵抗、抵抗Rc、Rbの抵抗値に比して大きいことから、負極側リレーSGをオンすると、バッテリ36の電流の大部分がプリチャージ回路SCを介さずに、負極側リレーSGを介して流れることになる。つまり、式(1)中の「SR」が値0に近づき、突入電流Irが増大する。
【0029】
Ir=(Vb-Vc)/(SR+Rb+Rcp+Rwhp+Rc+Rcn+Rwhn) ・・・(1)
【0030】
図3は、プリチャージを開始してからのコンデンサ35の電圧Vc、バッテリ36の電流Ib、プリチャージリレーSPの状態、負極側リレーSGの状態の時間変化の一例を説明するための説明図である。プリチャージが開始されると(時刻t0)、電圧Vcが値0から上昇を開始する。プリチャージが開始された直後は、電流Ibが急上昇するが、その後徐々に減少する。電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えると(時刻t1)、負極側リレーSGがオンになり、バッテリ36の電流が急増し、端子間(第1正極側端子Tp1と第2正極側端子Tp2との間および第1負極側端子Tn1と第2負極側端子Tn2との間)に突入電流Irが流れる。端子間に突入電流Irが流れると、端子同士の接点の温度上昇が促進される。こうした端子同士の接点の温度上昇により、各接点に形成されている被膜の少なくとも一部を破壊することができ、各端子の接点の抵抗の増加を抑制できる。また、所定電圧Vcrefは、負極側リレーSGをオンしたときに、コンデンサ35や正極側リレーSB、負極側リレーSGの定格電流の範囲内で突入電流を流すことができる電圧であることから、コンデンサ35や正極側リレーSB、負極側リレーSGを保護しつつ突入電流Irを流すことができる。
【0031】
続いて、コンデンサ35のプリチャージが完了したか否かを判定する(ステップS150)。ここで、コンデンサ35のプリチャージが完了したか否かは、例えば、電圧センサ35aからのコンデンサ35の電圧Vcがプリチャージを完了してよい閾値Vref以上に至ったか否かを判定することにより行なうことができる。閾値Vrefは、所定電圧Vcrefより高く、バッテリ36の電圧Vbよりも数V~数十V程度低い値などを用いることができる。
【0032】
コンデンサ35のプリチャージが完了していないときには、プリチャージが完了するまで待ち(ステップS140)、コンデンサ35のプリチャージが完了したときには、プリチャージリレーSPをオフして(ステップS150)、レディオン即ちシステム起動状態(モータ32およびインバータ34を駆動可能な状態)にして、本ルーチンを終了する。こうした処理により、コンデンサ35や正極側リレーSB、負極側リレーSGを保護しつつ、レディオン即ちシステム起動状態へ移行できる。
【0033】
以上説明した実施例の電源装置を搭載する電気自動車20によれば、システムを起動するときには、負極側リレーSGをオフすると共に正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始し、プリチャージの開始後コンデンサ35の電圧Vcがバッテリ36の電圧Vbより低い所定電圧Vcrefを超えたときに、負極側リレーSGをオンする所定処理を実行することにより、各端子の接点の抵抗の増加を抑制できる。
【0034】
実施例の電源装置を搭載する電気自動車20では、システムを起動するときには、負極側リレーSGをオフすると共に正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ356のプリチャージを開始している。しかし、図4の変形例の電気自動車120に例示するように、リレー装置48に、追加プリチャージリレーSPaおよび制限抵抗SRより抵抗値が低い追加制限抵抗SRaが負極側リレーSGをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路SCaを設けてもよい。この場合、例えば、電気自動車20の点検時やメンテナンスを行なうときなどの所定時に、負極側リレーSGをオフすると共に正極側リレーSBおよび追加プリチャージリレーSPaをオンにしてコンデンサ35の追加プリチャージを開始し、プリチャージの開始後コンデンサ35の電圧Vcがバッテリ36の電圧Vbより低い所定電圧Vcrefを超えたときに、負極側リレーSGをオンする所定処理を実行する。こうすれば、所定処理において、突入電流を増加させることができ、各端子の接点の抵抗の増加をより大きく抑制できる。
【0035】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、システム起動時のプリチャージの開始後、または、所定時にコンデンサ35の電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えたときに、所定処理を実行している。しかし、負荷としてのモータ32やインバータ34が所定時間以上動作していない場合のシステムの起動時や所定時にコンデンサ35の電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えたときに、所定処理を実行してもよい。この場合、負荷としてのモータ32やインバータ34が動作していない時間が所定時間未満のときには、プリチャージの開始後所定処理を実行せずに、コンデンサ35のプリチャージが完了するまで待ち、コンデンサ35のプリチャージが完了したときには、プリチャージリレーSPをオフして、レディオン即ちシステム起動状態にすればよい。ここで、「所定時間」は、各接点の接点抵抗Rcp1、Rcp2、Rcn1、Rcn2の抵抗値が有意に増加する厚さの被膜が各接点に形成されるのに要する時間であり、例えば、15日、30日、45日などとすればよい。
【0036】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、システム起動時のプリチャージの開始後、または、所定時にコンデンサ35の電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えたときに、所定処理を実行している。しかし、第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点および第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加や第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との接点および第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点のうち少なくとも一方の接点抵抗の増加が検出された場合のシステム起動時または所定時にコンデンサ35の電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えたときに、所定処理を実行してもよい。この場合、プリチャージを開始したときに上昇したバッテリ36の電流が最大値から低下する際の低下量が所定量未満のときに、接点抵抗が増加していると判定すればよい。また、システム起動時または所定時にコンデンサ35の電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えた場合において、システムの起動の複数回に一回の頻度で、所定処理を実行してもよい。こうすれば、所定処理が頻繁に実行されることを抑制できる。
【0037】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、プリチャージ回路SC、追加プリチャージ回路SCaを負極側リレーSG側に接続しているが、正極側リレーSB側に接続してもよい。この場合、システムを起動するときには、正極側リレーSBをオフすると共に負極側リレーSGおよびプリチャージリレーSPまたは追加プリチャージリレーSPaをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始し、プリチャージの開始後コンデンサ35の電圧Vcがバッテリ36の電圧Vbより低い所定電圧Vcrefを超えたときに、正極側リレーSBをオンにする。そして、コンデンサ35のプリチャージが完了するまで待ち、コンデンサ35のプリチャージが完了したときには、プリチャージリレーSPまたは追加プリチャージリレーSPaをオフして、レディオン即ちシステム起動状態にすればよい。
【0038】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、パワーコントロールユニットPCUと電池パックBPとがワイヤハーネスWHを介して接続されている。しかし、こうしたワイヤハーネスWHを介さずに、パワーコントロールユニットPCUの第1正極側端子Tp1と電池パックBPの第2正極側端子Tp2とが接続され、パワーコントロールユニットPCUの第1負極側端子Tn1と電池パックBPの第2負極側端子Tn2とが接続されていてもよい。
【0039】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、第1正極側端子Tp1、Twhp1、第1負極側端子Tn1、Twhn1、第2正極側端子Tp2、Twhp2、第2負極側端子Tn2、Twhn2は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。しかし、金属部は、銅にメッキ処理が施されたものに限定されるものではなく、銅以外の導電性が比較的高い金属や、メッキ処理が施されていなくてもよい。
【0040】
実施例や変形例では、本発明を電気自動車に搭載される電源装置に適用する場合を例示している。しかし、本発明を、電気自動車とは異なる自動車や列車、飛行機などの移動体や、移動しない電源設備に設置される電源装置などに適用しても構わない。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電源装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20、120 電気自動車、35 コンデンサ、36 バッテリ、48 リレー装置、50 電子制御ユニット、Tn1,Twhn1 第1負極側端子、Tn2,Twhn2 第2負極側端子、Tp1,Twhp1 第1正極側端子、Tp2,Twhp2 第2正極側端子。
図1
図2
図3
図4