(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162781
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02H 9/02 20060101AFI20241114BHJP
H01H 47/00 20060101ALI20241114BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241114BHJP
H02H 7/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H02H9/02 D
H01H47/00 C
B60L3/00 N
H02H7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078670
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直之
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐哉
【テーマコード(参考)】
5G013
5G053
5H125
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA17
5G013BA01
5G013CA05
5G053AA01
5G053AA05
5G053BA01
5G053EC01
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125DD05
5H125EE12
(57)【要約】
【課題】端子間を接続した後に端子間の接点抵抗の増加を判定する。
【解決手段】システムを起動するときには、正極側リレーおよび負極側リレーのうちプリチャージリレーおよび制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に正極側リレーおよび負極側リレーのうち他方のリレーおよびプリチャージリレーをオンにしてコンデンサのプリチャージが開始されるように正極側リレーと負極側リレーとプリチャージリレーとを制御する電源装置において、プリチャージを開始してからの電源の電流に基づいて、1組の正極側端子間の接点である第1接点および1組の負極側端子間の接点である第2接点のうち少なくとも一方の接点抵抗が増加しているか否かを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージが開始されるように前記正極側リレーと前記負極側リレーと前記プリチャージリレーとを制御する制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記制御装置は、前記プリチャージを開始してからの前記電源の電流に基づいて、1組の前記正極側端子間の接点である第1接点および1組の前記負極側端子間の接点である第2接点のうち少なくとも一方の接点抵抗が増加しているか否を判定する
電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記プリチャージを開始してから所定時間経過したときに前記一方のリレーをオンし、前記一方のリレーをオンしたときの前記電源の電流の最大値の低下量に基づいて、前記接点抵抗が増加しているか否かを判定する
電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記プリチャージを開始してから所定時間経過したときに前記一方のリレーをオンし、前記一方のリレーをオンした後の前記電源の電流が所定閾値未満になったときには、前記接点抵抗が増加していると判定する
電源装置。
【請求項4】
請求項1記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記プリチャージを開始したときの前記電源の電流の最大値の低下量に基づいて、前記接点抵抗が増加しているか否かを判定する
電源装置。
【請求項5】
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの完了後に、前記一方のリレーをオンにすると共に前記プリチャージリレーをオフにしてシステム起動状態にする制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記リレー装置は、追加プリチャージリレーおよび前記制限抵抗より抵抗値が小さい追加制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路を有し、
前記制御装置は、所定時に、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするほうのリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスしないほうのリレーおよび前記追加プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサの追加プリチャージを開始し、前記追加プリチャージの開始後の前記電源の電流に基づいて、1組の前記正極側端子間の接点である第1接点および1組の前記負極側端子間の接点である第2接点のうち少なくとも一方の接点抵抗が増加しているか否かを判定する
電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄型コネクタ端子と雌型コネクタ端子とを有する端子対において雄型コネクタ端子と雌型コネクタ端子とを嵌合する際に、2つの端子のうち一方の端子を他方の端子に摺動させるワイピングを行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この端子対では、ワイピング後に計測した2つの端子の接点抵抗(接触抵抗値)が基準接触抵抗値以下となるように、ワイピングを行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の端子対では、ワイピング後、即ち、2つの端子の接続後に、2つの端子のうち一方の端子が他方の端子に摺動することがある。この場合、時間の経過と共に2つの端子の接点抵抗が増加することがある。そのため、端子間を接続した後でも、端子間の接点抵抗の増加を判定することが望まれている。
【0005】
本発明の電源装置は、端子間を接続した後に端子間の接点抵抗の増加を判定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の電源装置は、
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインと前記第2電力ラインの正極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の正極側端子と、
前記第1電力ラインの負極側ラインと前記第2電力ラインの負極側ラインとを接続するために互いに接続される少なくとも1組の負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージが開始されるように前記正極側リレーと前記負極側リレーと前記プリチャージリレーとを制御する制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記制御装置は、前記プリチャージを開始してからの前記電源の電流に基づいて、1組の前記正極側端子間の接点である第1接点および1組の前記負極側端子間の接点である第2接点のうち少なくとも一方の接点抵抗が増加しているか否を判定する
ことを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の電源装置は、
電源と、
第1電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに取り付けられたコンデンサと、
前記電源からの第2電力ラインの正極側ラインおよび負極側ラインに設けられた正極側リレーおよび負極側リレーと、プリチャージリレーおよび制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路と、を有するリレー装置と、
前記第1電力ラインの正極側ライン、負極側ラインに接続される第1正極側端子、第1負極側端子と、
前記第2電力ラインの正極側ライン、負極側ラインに接続されると共に、前記第1正極側端子、前記第1負極側端子に接続される第2正極側端子、第2負極側端子と、
システムを起動するときには、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記プリチャージリレーおよび前記制限抵抗がバイパスする一方のリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち他方のリレーおよび前記プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサのプリチャージを開始し、前記プリチャージの完了後に、前記一方のリレーをオンにすると共に前記プリチャージリレーをオフにしてシステム起動状態にする制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記リレー装置は、追加プリチャージリレーおよび前記制限抵抗より抵抗値が小さい追加制限抵抗が前記正極側リレーまたは前記負極側リレーをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路を有し、
前記制御装置は、所定時に、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスするほうのリレーをオフすると共に前記正極側リレーおよび前記負極側リレーのうち前記追加プリチャージリレーおよび前記追加制限抵抗がバイパスしないほうのリレーおよび前記追加プリチャージリレーをオンにして前記コンデンサの追加プリチャージを開始し、前記追加プリチャージの開始後の前記電源の電流に基づいて、前記第1正極側端子と前記第2正極側端子との接点である第1接点および前記第1負極側端子と前記第2負極側端子との接点である第2接点のうち少なくとも一方の接点抵抗が増加しているか否かを判定する
ことを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施例の電源装置を搭載する電気自動車20の構成の概略図。
【
図3】プリチャージを開始してからの電圧Vcなどの時間変化の一例の説明図。
【
図4】電流Ibの時間変化と接点抵抗の大きさとの関係の一例を示す説明図。
【
図5】プリチャージを開始した直後の電圧Vcなどの時間変化の一例の説明図。
【
図6】変形例の電源装置を搭載する電気自動車120の構成の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0011】
図1は、本発明の一実施例としての電源装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。図中、インダクタLwhp、Lwhn、抵抗Rwhp、Rwhnは、ワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインの寄生インダクタンス、寄生抵抗である。抵抗Rbは、バッテリ36の内部抵抗である。インダクタLc、抵抗Rcは、コンデンサ35の等価直列インダクタンスと等価直列抵抗である。実施例の電気自動車20は、図示するように、モータ32と、パワーコントロールユニットPCUと、電池パックBPと、電子制御ユニット(制御装置)50と、を備える。パワーコントロールユニットPCUと電池パックBPは、ワイヤハーネスWHを介して接続されている。ここで、実施例の電源装置としては、パワーコントロールユニットPCUのコンデンサ35と、電池パックBPと、第1正極側端子Tp1、Twhp1と、第2正極側端子Tp2、Twhp2と、第1負極側端子Tn1、Twhn1と、第2負極側端子Tn2、Twhn2と、電子制御ユニット50と、が相当する。
【0012】
モータ32は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。このモータ32の回転子は、駆動輪22a、22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。
【0013】
パワーコントロールユニットPCUは、インバータ34と、コンデンサ35と、を備える。
【0014】
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられると共に第1電力ライン42に接続されている。このインバータ34は、6つのトランジスタT11~T16と、トランジスタT11~T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11~D16と、を有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ第1電力ライン42の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。トランジスタT11~T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータ32の三相コイル(U相、V相、W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、電子制御ユニット50によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。
【0015】
コンデンサ35は、第1電力ライン42の正極側ライン、負極側ラインに取り付けられている。第1電力ライン42の正極側ライン、負極側ラインには、第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1が接続されている。第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。第1正極側、第1負極側端子Tp1、Tn1は、金属部がワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインに接続された第1正極側、第1負極側端子Twhp1、Twhn1の金属部に接続されている。第1正極型端子、第1負極側端子Twhp1、Twhn1の金属部は、銅にメッキ処理が施されて形成されている。第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1と接点には、接点抵抗Rcp1、Rcn1が形成されている。
【0016】
電池パックBPは、バッテリ36と、リレー装置48と、を備える。バッテリ36は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、第2電力ライン44に接続されている。リレー装置48は、第2電力ライン44に設けられている。このリレー装置48は、第2電力ライン44の正極側ラインに設けられた正極側リレーSB(他方のリレー)と、第2電力ライン44の負極側ラインに設けられた負極側リレーSG(一方のリレー)と、プリチャージリレーSPおよび制限抵抗SRが負極側リレーSGをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路SCと、を備える。ここで、プリチャージ回路SCは、バッテリ36からインバータ34側に電力を供給する際に、正極側リレーSBおよび負極側リレーSGをオンにする前にコンデンサ35を充電する(プリチャージを行なう)ための回路である。リレー装置48は、電子制御ユニット50によってオンオフ制御されることにより、バッテリ36側とコンデンサ35側との接続および接続の解除を行なう。第2電力ライン44には、第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2が接続されている。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2は、金属部がワイヤハーネスWHの正極側ライン、負極側ラインに接続された第2正極型端子、第2負極側端子Twhp2、Twhn2の金属部に接続されている。第2正極側、第2負極側端子Tp2、Tn2の金属部は、銅にメッキ処理が施されて形成されている。第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点には、接点抵抗Rcp2、Rcn2が形成される。なお、制限抵抗SRの抵抗値は、抵抗Rwhp、Rwhn、Rc、接点抵抗Rcp1、Rcp2、Rcn1、Rcn2に比して大きく設定されており、例えば、数10Ω程度に設定されている。
【0017】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に、処理プログラムを記憶するROM54やデータを記憶する不揮発性メモリ56、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートを備える。電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmや、モータ32の各相に流れる電流を検出する電流センサからのモータ32に流れる相電流Iu、Ivを挙げることができる。また、バッテリ36の端子間に取り付けられた電圧センサからのバッテリ36の電圧Vbや、バッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサからのバッテリ36の電流Ibも挙げることができる。さらに、コンデンサ35の端子間に取り付けられた電圧センサ35aからのコンデンサ35(第1電力ライン42)の電圧Vcも挙げることができる。加えて、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSHも挙げることができる。また、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションB、車速センサ68からの車速Vも挙げることができる。電子制御ユニット50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット50から出力される信号としては、例えば、インバータ34のトランジスタT11~T16へのスイッチング制御信号を挙げることができる。電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θmに基づいてモータ32の電気角θeや回転数Nmを演算している。
【0018】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、以下の走行制御を行なう。走行制御では、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸26に要求される要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定し、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16のスイッチング制御を行なう。また、実施例の電気自動車20では、システム起動操作(イグニッションスイッチ60のオン操作)が行なわれたときにおいて、正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始し、プリチャージの完了後に負極側リレーSGをオンにすると共にプリチャージリレーSPをオフにしてレディオン即ちシステム起動状態(モータ32およびインバータ34を駆動可能な状態)にする。ここで、コンデンサ35のプリチャージが完了したか否かは、例えば、電圧センサ46aからのコンデンサ35の電圧Vcがプリチャージを完了してよい閾値Vref以上に至ったか否かを判定することにより行なうことができる。閾値Vrefは、所定電圧Vcrefより高く、バッテリ36の電圧Vbよりも数V~数十V程度低い値などを用いることができる。以下、この処理を「通常起動処理」と称することがある。
【0019】
次に、こうして構成された実施例での電気自動車20の動作、特に、第1正極側端子Tp1と第2正極側端子Tp2との接点(第1接点)および第1負極側端子Tn1と第2負極側端子Tn2と接点(第2接点)(以下、「端子同士の接点」と称することがある)の接点抵抗の増加を検出する際の動作について説明する。
図2は、電子制御ユニット50により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、電気自動車20の使用を開始してからのシステム起動操作がn回になされたとき、および、システム起動操作がn回になされたとき以降はシステム起動操作がm回(例えば、2回、3回、4回など)なされる毎に1回、上述の通常起動処理に代えて、実行される。ここで、「n回」としては、第1、第2接点の接点抵抗が大きくならないと推定される回数であって、例えば、1回、2回、3回などとすればよい。m回は、第1、第2接点の接点抵抗の増加を検出を適切にできるタイミングであり、例えば、2回、3回、4回などとすればよい。なお、本ルーチンを、システム起動操作が行なわれる毎に実行し、上述の通常起動処理を行なわなくてもよい。
図2の処理ルーチンの実行開始時には、リレー装置48のリレーの全て(正極側リレーSB、負極側リレーSG、プリチャージリレーSP)がオフになっている。
【0020】
本ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始する(ステップS100)。こうしたプリチャージによりコンデンサ35の電圧が上昇を開始する。
【0021】
次に、プリチャージが開始されてからの経過時間t1が判定時間(所定時間)tref1を超えているか否かを判定する(ステップS110)。判定時間tref1は、ステップS120で負極側リレーSGをオンしたときに流れる突入電流Irの最大値Imaxが、正極側リレーSBの定格電流、負極側リレーSGの定格電流、コンデンサ35の定格電流のうち最も小さい定格電流より小さくなる時間として予め定められた時間である。突入電流Irについては後述する。
【0022】
時間t1が判定時間tref1を超えていないときには、時間t1が判定時間tref1を超えるまで待ち、時間t1が判定時間tref1を超えたときに、負極側リレーSGをオンし(ステップS120)、バッテリ36の電流Ibの最大値Imax2を入力する(ステップS130)。
図3は、プリチャージを開始してからのコンデンサ35の電圧Vc、バッテリ36の電流Ib、プリチャージリレーSPの状態、負極側リレーSGの状態の時間変化の一例を説明するための説明図である。プリチャージが開始されると(時刻t0)、電圧Vcが値0から上昇を開始する。プリチャージが開始された直後は、電流Ibが急上昇して最大値Imax1に至るが、その後徐々に減少する。実施例では、電圧Vcが所定電圧Vcrefを超えたときに(時刻t1)、負極側リレーSGをオンにする。これにより、電流Ibが急増し、端子間(第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との間、および、第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との間、および、第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との間、および、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との間)に、極短時間に大きな電流、突入電流Irが流れる。実施例では、この突入電流Irが最大値Imax1以下になるように、所定電圧Vcrefが設定され、負極側リレーSGをオンするタイミングである時刻t1が調整されている。最大値Imax2は、この突入電流Irの最大値であり、負極側リレーSGをオンしてから突入電流Irが流れている時間として予め定められた時間tirにおいてバッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサにより検出されたバッテリ36の電流Ibの最大値が設定される。
【0023】
続いて、n回目のシステム起動操作であるか否かを判定する(ステップS140)。n回目の起動操作であるときには、最大値Imax2を初期値Imaxinitに設定すると共に不揮発性メモリ56に記憶し(ステップS140)、通常起動処理と同様の処理で、コンデンサ35のプリチャージが完了したか否かを判定し(ステップS200)、コンデンサ35のプリチャージが完了していないときには、プリチャージが完了するまで待ち、コンデンサ35のプリチャージが完了したときには、プリチャージリレーSPをオフして(ステップS210)、レディオン即ちシステム起動状態にして、本ルーチンを終了する。こうした処理により、n回目のシステム起動操作がなされたときの電流Ibの最大値Imaxを初期値Imaxinitとして不揮発性メモリ56に記憶させることができる。
【0024】
ステップS140でn回目のシステム起動操作でないとき、即ち、n回目以降のm回毎のシステム起動操作であるときには、初期位置ImaxinitからステップS130で入力した最大値Imax2を減じて、電流Ibの最大値Imaxの低下量ΔImax(=Imaxinit-Imax)を算出し(ステップS160)、低下量ΔImaxが閾値(所定量)DIref未満であるか否かを判定する(ステップS170)。
【0025】
ここで、低下量ΔImaxを算出する理由について説明する。
図4は、突入電流Irの時間変化と接点抵抗の大きさとの関係の一例を示す説明図である。
図4では、実線、破線、一点鎖線の順で接点抵抗が大きくなる。突入電流Irは、次式(1)を用いて算出できる。式(1)中、「Vb」はバッテリ36の電圧、「Vc」はコンデンサ35の電圧、「SR」、「Rwhp」、「Rwhn」、「Rcp」、「Rcn」、「Rc」、「Rb」は、それぞれ制限抵抗SR、抵抗Rwhp、Rwhn、正極側端子間の接点(第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点)の合成抵抗(=Rcp1+Rcp2)、負極側端子間の接点(第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との接点、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点)の合成抵抗(=Rcn1+Rcn2)、抵抗Rc、抵抗Rbの抵抗値である。制限抵抗SRの抵抗値は、抵抗Rwhp、Rwhn、正極側端子間の接点の合成抵抗、負極側端子間の接点の合成抵抗、抵抗Rc、Rbの抵抗値に比して大きいことから、負極側リレーSGをオンすると、バッテリ36の電流の大部分がプリチャージ回路SCを介さずに、負極側リレーSGを介して流れることになる。つまり、式(1)中の「SR」が値0に近づき、突入電流Irが増大する。突入電流Irは、次式(1)や
図4に示されるように、端子同士の接点の抵抗が大きいときには小さいときに比して小さくなり、突入電流Irの振幅も小さくなる。したがって、最大値Imax2の低下量ΔImaxを調べることで、接続される端子間の接点、つまり、第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、および、第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点、および、第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との接点、および、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点のうちの少なくと一つの接点抵抗が増加しているか否かを判定できる。
【0026】
Ir=(Vb-Vc)/(SR+Rb+Rcp+Rwhp+Rc+Rcn+Rwhn) ・・・(1)
【0027】
ステップS170で閾値DIrefは、接点抵抗が増加しているか否かを判定するための閾値として、実験や解析、機械学習により定められた値である。閾値DIrefを、一定の値としてもよい。また、低下量ΔImaxがコンデンサ35の劣化が進んでいるときには進んでいないときに比して小さくなることから、閾値DIrefを、コンデンサ35の劣化が進んでいるときには進んでいないときに比して小さく設定してもよい。また、コンデンサ35が高温で容量が上昇する(突入電流Irの最大値Imaxが上昇する)ものであるときには、閾値DIrefを、コンデンサ35の温度が高いときには低いときに比して大きく設定してもよい。また、コンデンサ35が高温で容量が低下する(突入電流Irの最大値Imaxが低下する)ものであるときには、閾値DIrefを、コンデンサ35の温度が高いときには低いときに比して小さく設定してもよい。
【0028】
ステップS170で低下量ΔImaxが閾値DIref未満のときには、接点抵抗が増加していると判定し(ステップS180)、低下量ΔImaxが閾値DIref以上のときには、接点抵抗が増加していないと判定する(ステップS190)。このように低下量ΔImaxを用いることで、端子間を接続した後における端子間の接点抵抗の増加を判定できる。
【0029】
続いて、通常起動処理と同様の処理で、コンデンサ35のプリチャージが完了したか否かを判定し(ステップS200)、コンデンサ35のプリチャージが完了していないときには、プリチャージが完了するまで待ち、コンデンサ35のプリチャージが完了したときには、プリチャージリレーSPをオフして(ステップS210)、レディオン即ちシステム起動状態にして、本ルーチンを終了する。こうした処理により、コンデンサ35や正極側リレーSB、負極側リレーSGを保護しつつ、レディオン即ちシステム起動状態へ移行できる。
【0030】
以上説明した実施例の電源装置を搭載する電気自動車20によれば、プリチャージを開始してからのバッテリ36の電流Ibに基づいて、第1正極側端子Tp1と第1正極側端子Twhp1との接点、および、第2正極側端子Tp2と第2正極側端子Twhp2との接点、および、第1負極側端子Tn1と第1負極側端子Twhn1との接点、および、第2負極側端子Tn2と第2負極側端子Twhn2との接点のうちの少なくと一つの接点抵抗が増加しているか否かを判定するから、端子間を接続した後に端子間の接点抵抗の増加を判定できる。
【0031】
また、プリチャージを開始してから判定時間(所定時間)tref1を経過したときには負極側リレーSGをオンし、負極側リレーSGをオンした後の電流Ibの最大値Imax2の低下量ΔImaxに基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定することにより、より精度よく端子間の接点抵抗の増加を判定できる。
【0032】
実施例の電源装置を搭載する電気自動車20では、負極側リレーSGをオンした後の電流Ibの最大値Imax2の低下量ΔImaxに基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定している。しかし、負極側リレーSGをオンした後の電流Ib(突入電流Ir)の最大値Imax2に基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定してもよい。この場合、最大値Imax2が閾値(所定閾値)Ith未満のときに、接点抵抗が増加していると判定すればよい。
【0033】
実施例の電源装置を搭載する電気自動車20では、負極側リレーSGをオンした後の電流Ibの最大値Imax2の低下量ΔImaxに基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定している。しかし、
図5に示すように、プリチャージを開始したときにも突入電流が流れることから、上述の通常起動処理を実行している場合において、プリチャージを開始してから所定時間内での電流Ibの最大値Imax1の低下量ΔImaxp(システム起動操作がn回になされたときにおけるプリチャージを開始してから所定時間内での電流Ibの最大値Imax1としての初期値から、n回目より後のシステム起動操作での最大値Imax1を減じた値)に基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定してもよい。この場合、低下量ΔImaxpが所定値DIrefp未満のときに、接点抵抗が増加していると判定すればよい。
【0034】
実施例の電源装置を搭載する電気自動車20では、システムを起動するときには、負極側リレーSGをオフすると共に正極側リレーSBおよびプリチャージリレーSPをオンにしてコンデンサ356のプリチャージを開始している。しかし、
図6の変形例の電気自動車120に例示するように、リレー装置48に、追加プリチャージリレーSPaおよび制限抵抗SRより抵抗値が低い追加制限抵抗SRaが負極側リレーSGをバイパスするように直列に接続された追加プリチャージ回路SCaを設けてもよい。この場合、例えば、電気自動車20の点検時やメンテナンスを行なうときなどの所定時に、負極側リレーSGをオフすると共に正極側リレーSBおよび追加プリチャージリレーSPaをオンにしてコンデンサ35の追加プリチャージを開始し、追加プリチャージの開始後判定時間tref1を経過したときには負極側リレーSGをオンし、負極側リレーSGをオンした後の電流Ibの最大値Imax2や最大値Imax2の低下量ΔImaxに基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定してもよい。また、追加プリチャージを開始直後の電流Ibの最大値Imax1や最大値Imax1の低下量ΔImaxpに基づいて接点抵抗が増加しているか否かを判定してもよい。追加制限抵抗SRaは、制限抵抗SRより抵抗値が低いことから、追加プリチャージやその後負極側リレーSGをオフしたときには、より大きい突入電流Irが流れる。そのため、電流センサを用いた検出が容易になり、より精度よく接点抵抗が増加しているか否かを判定できる。
【0035】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、プリチャージ回路SC、追加プリチャージ回路SCaを負極側リレーSG側に接続しているが、正極側リレーSB側に接続してもよい。この場合、システムを起動するときには、正極側リレーSBをオフすると共に負極側リレーSGおよびプリチャージリレーSPまたは追加プリチャージリレーSPaをオンにしてコンデンサ35のプリチャージを開始し、プリチャージの開始後判定時間tref1を経過したときには、正極側リレーSBをオンにすればよい。
【0036】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、パワーコントロールユニットPCUと電池パックBPとがワイヤハーネスWHを介して接続されている。しかし、こうしたワイヤハーネスWHを介さずに、パワーコントロールユニットPCUの第1正極側端子Tp1と電池パックBPの第2正極側端子Tp2とが接続され、パワーコントロールユニットPCUの第1負極側端子Tn1と電池パックBPの第2負極側端子Tn2とが接続されていてもよい。
【0037】
実施例や変形例の電源装置を搭載する電気自動車20、120では、第1正極側端子Tp1、Twhp1、第1負極側端子Tn1、Twhn1、第2正極側端子Tp2、Twhp2、第2負極側端子Tn2、Twhn2は、銅にメッキ処理が施されて形成された金属部を有する。しかし、金属部は、銅にメッキ処理が施されたものに限定されるものではなく、銅以外の導電性が比較的高い金属や、メッキ処理が施されていなくてもよい。
【0038】
実施例や変形例では、本発明を電気自動車に搭載される電源装置に適用する場合を例示している。しかし、本発明を、電気自動車とは異なる自動車や列車、飛行機などの移動体や、移動しない電源設備に設置される電源装置などに適用しても構わない。
【0039】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
20、120 電気自動車、35 コンデンサ、36 バッテリ、48 リレー装置、50 電子制御ユニット、Tn1,Twhn1 第1負極側端子、Tn2,Twhn2 第2負極側端子、Tp1,Twhp1 第1正極側端子、Tp2,Twhp2 第2正極側端子。