(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162782
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20241114BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20241114BHJP
B21B 1/09 20060101ALI20241114BHJP
B21D 3/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01B11/24 M
B21C51/00 L
B21B1/09
B21D3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078672
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十君 信治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 凌太
(72)【発明者】
【氏名】安部 祐司
(72)【発明者】
【氏名】市川 拓人
【テーマコード(参考)】
2F065
4E002
【Fターム(参考)】
2F065AA46
2F065CC07
2F065GG04
2F065JJ01
2F065JJ05
2F065JJ08
2F065KK02
2F065MM03
2F065PP12
2F065PP22
4E002AC07
4E002CA15
(57)【要約】
【課題】形鋼の種類によらず曲がり量を測定することができる形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の形鋼曲がり量測定装置は、形鋼の幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ配置し、形鋼の上方に少なくとも1つ配置した、5つ以上の距離センサを1組として長手方向と直交する同一座標平面上に備えた距離計測部と、各距離センサから形鋼の表面までの距離情報と、各距離センサの位置に関する情報とから、形鋼の断面形状における表面上の複数の計測位置座標を算出する計測位置算出部と、複数の計測位置座標を用いて、形鋼の断面形状における複数の特徴点座標を算出する特徴点算出部と、複数の特徴点座標を用いて形鋼の断面形状における重心位置の位置座標を算出し、長手方向の3箇所以上で重心位置の位置座標を比較して形鋼の曲がり量を算出する曲がり量算出部と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形鋼の長手方向の曲がり量を測定する曲がり量測定装置であって、
前記形鋼の長手方向と直交する幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ配置し、前記形鋼の上方に少なくとも1つ配置した、5つ以上の距離センサを1組として前記長手方向と直交する同一座標平面上に備えた距離計測部と、
前記距離計測部によって計測された各距離センサから前記形鋼の表面までの距離情報と、各距離センサの位置に関する情報とから、前記形鋼の断面形状における表面上の複数の計測位置座標を算出する計測位置算出部と、
前記計測位置算出部によって算出した複数の前記計測位置座標を用いて、前記形鋼の断面形状における複数の特徴点座標を算出する特徴点算出部と、
前記特徴点算出部によって算出した前記複数の特徴点座標を用いて前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標を算出し、前記長手方向の3箇所以上で前記重心位置の位置座標を比較して前記形鋼の曲がり量を算出する曲がり量算出部と、
を有する、形鋼曲がり量測定装置。
【請求項2】
前記形鋼は不等辺山形鋼であって上下左右非対称な山形の状態で載置されており、
前記距離計測部は、
前記不等辺山形鋼の短辺部の表面に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記短辺部側に配置された第1距離センサと、
前記短辺部の表面における前記第1距離センサのレーザー光の照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記短辺部側であって前記第1距離センサよりも下に配置された第2距離センサと、
前記不等辺山形鋼の長辺部の表面に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記長辺部側に配置された第3距離センサと、
前記長辺部の表面における前記第3距離センサのレーザー光の照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記長辺部側であって前記第3距離センサよりも下に配置された第4距離センサと、
前記長辺部の表面における前記第3距離センサのレーザー光の照射位置よりも上の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記長辺部の上方に配置された第5距離センサと、
を有する、請求項1に記載の形鋼曲がり量測定装置。
【請求項3】
前記距離計測部を前記長手方向に所定の間隔をあけて3つ配置した、請求項1または2に記載の形鋼曲がり量測定装置。
【請求項4】
形鋼の長手方向の曲がり量を測定する形鋼の曲がり量測定方法であって、
前記形鋼の長手方向と直交する幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ配置し、前記形鋼の上方に少なくとも1つ配置した、5つ以上の距離センサを1組として前記長手方向と直交する同一座標平面上に備えた距離計測部によって、各距離センサから前記形鋼の表面までの距離を計測する距離計測工程と、
前記距離計測工程で各距離センサによって計測された距離情報と、各距離センサの位置に関する情報とから、前記形鋼の断面形状における表面上の複数の計測位置座標を算出する計測位置座標算出工程と、
前記計測位置座標算出工程で算出した複数の前記計測位置座標を用いて、前記形鋼の断面形状における複数の特徴点座標を算出する特徴点座標算出工程と、
前記特徴点座標算出工程で算出した前記複数の特徴点座標を用いて前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標を算出し、前記長手方向の3箇所以上で前記重心位置の位置座標を比較して前記形鋼の曲がり量を算出する曲がり量算出工程と、
を有する、形鋼の曲がり量測定方法。
【請求項5】
前記形鋼は不等辺山形鋼であって上下左右非対称な山形の状態で載置されており、
前記計測位置座標算出工程では、
前記幅方向で前記不等辺山形鋼の短辺部側に配置された第1距離センサによる、前記短辺部の表面上における第1距離計測位置の位置座標を算出し、
前記幅方向で前記短辺部側であって前記第1距離センサよりも下に配置された第2距離センサによる、前記短辺部の表面上における前記第1距離計測位置よりも下の第2距離計測位置の位置座標を算出し、
前記幅方向で前記不等辺山形鋼の長辺部側に配置された第3距離センサによる、前記長辺部の表面上における第3距離計測位置の位置座標を算出し、
前記幅方向で前記長辺部側であって前記第3距離センサよりも下に配置された第4距離センサによる、前記長辺部の表面上における前記第3距離計測位置よりも下の第4距離計測位置の位置座標を算出し、
前記長辺部の上方に配置された第5距離センサによる、前記長辺部の表面上における前記第3距離計測位置よりも上の第5距離計測位置の位置座標を算出する、
請求項4に記載の形鋼の曲がり量測定方法。
【請求項6】
前記特徴点座標算出工程では、
前記第1距離計測位置と前記第2距離計測位置とを通る第1直線と、前記第3距離計測位置と前記第4距離計測位置と前記第5距離計測位置とを通る第2直線とを算出して、前記第1直線と前記第2直線との交点である第1特徴点の位置座標を算出し、
前記第1直線上において前記第1特徴点から前記短辺部の長さ分だけ下の位置の第2特徴点の位置座標を算出し、
前記第2直線上において前記第1特徴点から前記長辺部の長さ分だけ下の位置の第3特徴点の位置座標を算出する、
請求項5に記載の形鋼の曲がり量測定方法。
【請求項7】
前記曲がり量算出工程では、
前記長手方向と直交する座標平面上において、前記第1特徴点と前記第2特徴点と前記第3特徴点とを頂点とする三角形に対して、前記第1特徴点と前記第2特徴点と前記第3特徴点との位置座標の平均をとり、前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標として前記三角形の重心位置の位置座標を算出する、
請求項6に記載の形鋼の曲がり量測定方法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の形鋼の曲がり量測定方法を用いて、形鋼を矯正する、形鋼の矯正方法。
【請求項9】
請求項8に記載の形鋼の矯正方法を用いて形鋼を矯正する工程を備える、形鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形鋼は、H形鋼及び不等辺山形鋼などの様々な特徴的な形状を有する鋼材であり、形状は長尺で長さが20[m]以上にもなる製品も存在する。長尺物であるから、製品として出荷する場合には、真直度が重要視され、例えば、H形鋼の場合、JIS規定で長手方向1[m]あたり幅方向1[mm]までのズレ量(長さ比0.1[%])が許容されている。熱間圧延により製造された形鋼には曲がりが生じるため、曲がり量を許容範囲内に矯正するためにも、曲がり量を定量的に測定することが重要である。従来、長尺物の長手方向の曲がり量測定に関して、以下の方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、静止状態のH形鋼の曲がり状態を判定する方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、静止状態のH形鋼の長手方向に沿って走行可能な距離センサを設置し、距離センサを長手方向に走行させて連続的に距離情報を計測することによって、その計測した距離情報を元にH形鋼の曲がり状態を測定する。
【0004】
特許文献2には、圧延ライン走行中のH形鋼の形状を測定する方法が開示されている。特許文献2に開示された方法では、H形鋼の上下方向で1対の距離センサと、左右方向で1対の距離センサとを用いて、幅方向及びZ方向の形鋼形状を長手方向に連続的に計測して、H形鋼の曲げ量及び反り量を算出する。
【0005】
特許文献3には、圧延ライン走行中のH形鋼の形状を測定する方法が開示されている。特許文献3に開示された方法では、H形鋼の幅方向で片側から2対の距離センサ3組と、Z方向から1つの距離センサとの計7つの距離センサを用いて計測を行い、得られた距離情報を元にして長手方向のH形鋼形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-228325号公報
【特許文献2】特開2006-234540号公報
【特許文献3】特開2018-159561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、形鋼が静止状態での計測のみに限られ、搬送ライン上で計測を行うことができない。また、距離計を形鋼の長さに合わせて数十[m]走行させる機構が必要になるため、高額となる問題があった。
【0008】
特許文献2に開示された方法では、搬送ライン上で計測は可能であるが、搬送中の形鋼が斜行する影響や形鋼が振動する影響などを受けやすいという課題があった。形鋼は、搬送ライン上で上方向に数[cm]ほど振動することが確認されている。
【0009】
特許文献3に開示された方法では、特許文献2に開示された方法に対して、搬送中のH形鋼の斜行や振動の影響を低減して曲がり量を計測できる技術となっている。ところが、特許文献3に開示された方法はH形鋼のみに限定された技術であり、その他の形鋼種、例えば、断面が直角三角形の形鋼である不等辺山形鋼の曲がり量を計測することはできない。
【0010】
図1(a)に示すように、長辺部100aと短辺部100bとを有する不等辺山形鋼100は、製造工程上、上下左右非対称な山形の状態で形鋼搬送装置60上に載置されて搬送される。特許文献3に開示された方法では、例えば、
図1(a)に示すように、不等辺山形鋼100の搬送方向と直交する幅方向に配置された距離センサ21から照射されたレーザー光22が、不等辺山形鋼100の長辺部100aの外表面である長辺外面101aに対して斜めに当たる。
図1(a)では、搬送時の振動によって上方向に不等辺山形鋼100が跳ねておらず、長辺外面101a上におけるレーザー光22の照射位置は、長辺外面101aのほぼ中央の点P11の位置である。一方、
図1(b)に示すように搬送時の振動によって不等辺山形鋼100が上方向に跳ねた場合には、距離センサ21からの長辺外面101a上におけるレーザー光22の照射位置は、
図1(a)に示した点P11よりも幅方向で距離センサ21側の点P12の位置となる。そのため、長辺外面101Aの照射位置(計測位置)に幅方向で変位ズレがあると計測センサによって計測されてしまい、誤った曲がり量が測定されてしまう。
【0011】
また、特許文献3に開示された方法では、H形鋼の搬送時の振動による影響を考慮して距離センサから照射されたレーザー光が、H形鋼のウェブ上面に当たるようにH形鋼の上方に距離センサが設置されている。ところが、H形鋼の上方に設置された距離センサからのレーザー光も不等辺山形鋼に対して斜めに入射する。そのため、レーザー光で計測されたH形鋼のウェブ上面の変位が、不等辺山形鋼の振動影響によるものなのか、不等辺山形鋼が幅方向に移動した影響なのかを切り分けができない。そのため、特許文献3に開示された方法を用いて不等辺山形鋼の曲がり量を測定した場合には、測定された曲がり量が曲がっていることによる曲がり量なのか振動による影響なのかが分からず、特許文献3に開示された方法はH形鋼のみでしか適用できない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、形鋼の種類によらず曲がり量を測定することができる形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、
(1)本発明に係る形鋼曲がり量測定装置は、形鋼の長手方向の曲がり量を測定する曲がり量測定装置であって、前記形鋼の長手方向と直交する幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ配置し、前記形鋼の上方に少なくとも1つ配置した、5つ以上の距離センサを1組として前記長手方向と直交する同一座標平面上に備えた距離計測部と、前記距離計測部によって計測された各距離センサから前記形鋼の表面までの距離情報と、各距離センサの位置に関する情報とから、前記形鋼の断面形状における表面上の複数の計測位置座標を算出する計測位置算出部と、前記計測位置算出部によって算出した複数の前記計測位置座標を用いて、前記形鋼の断面形状における複数の特徴点座標を算出する特徴点算出部と、前記特徴点算出部によって算出した前記複数の特徴点座標を用いて前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標を算出し、前記長手方向の3箇所以上で前記重心位置の位置座標を比較して前記形鋼の曲がり量を算出する曲がり量算出部と、を有する。
【0014】
(2)本発明に係る形鋼曲がり量測定装置は、上記(1)の発明において、前記形鋼は不等辺山形鋼であって上下左右非対称な山形の状態で載置されており、前記距離計測部は、前記不等辺山形鋼の短辺部の表面に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記短辺部側に配置された第1距離センサと、前記短辺部の表面における前記第1距離センサのレーザー光の照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記短辺部側であって前記第1距離センサよりも下に配置された第2距離センサと、前記不等辺山形鋼の長辺部の表面に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記長辺部側に配置された第3距離センサと、前記長辺部の表面における前記第3距離センサのレーザー光の照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記幅方向で前記長辺部側であって前記第3距離センサよりも下に配置された第4距離センサと、前記長辺部の表面における前記第3距離センサのレーザー光の照射位置よりも上の位置に向けてレーザー光を照射するように、前記長辺部の上方に配置された第5距離センサと、を有する。
【0015】
(3)本発明に係る形鋼曲がり量測定装置は、上記(1)または(2)の発明において、前記距離計測部を前記長手方向に所定の間隔をあけて3つ配置した。
【0016】
(4)本発明に係る形鋼の曲がり量測定方法は、形鋼の長手方向の曲がり量を測定する形鋼の曲がり量測定方法であって、前記形鋼の長手方向と直交する幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ配置し、前記形鋼の上方に少なくとも1つ配置した、5つ以上の距離センサを1組として前記長手方向と直交する同一座標平面上に備えた距離計測部によって、各距離センサから前記形鋼の表面までの距離を計測する距離計測工程と、前記距離計測工程で各距離センサによって計測された距離情報と、各距離センサの位置に関する情報とから、前記形鋼の断面形状における表面上の複数の計測位置座標を算出する計測位置座標算出工程と、前記計測位置座標算出工程で算出した複数の前記計測位置座標を用いて、前記形鋼の断面形状における複数の特徴点座標を算出する特徴点座標算出工程と、前記特徴点座標算出工程で算出した前記複数の特徴点座標を用いて前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標を算出し、前記長手方向の3箇所以上で前記重心位置の位置座標を比較して前記形鋼の曲がり量を算出する曲がり量算出工程と、を有する。
【0017】
(5)本発明に係る形鋼の曲がり量測定方法は、上記(4)の発明において、前記形鋼は不等辺山形鋼であって上下左右非対称な山形の状態で載置されており、前記計測位置座標算出工程では、前記幅方向で前記不等辺山形鋼の短辺部側に配置された第1距離センサによる、前記短辺部の表面上における第1距離計測位置の位置座標を算出し、前記幅方向で前記短辺部側であって前記第1距離センサよりも下に配置された第2距離センサによる、前記短辺部の表面上における前記第1距離計測位置よりも下の第2距離計測位置の位置座標を算出し、前記幅方向で前記不等辺山形鋼の長辺部側に配置された第3距離センサによる、前記長辺部の表面上における第3距離計測位置の位置座標を算出し、前記幅方向で前記長辺部側であって前記第3距離センサよりも下に配置された第4距離センサによる、前記長辺部の表面上における前記第3距離計測位置よりも下の第4距離計測位置の位置座標を算出し、前記長辺部の上方に配置された第5距離センサによる、前記長辺部の表面上における前記第3距離計測位置よりも上の第5距離計測位置の位置座標を算出する。
【0018】
(6)本発明に係る形鋼の曲がり量測定方法は、上記(5)の発明において、前記特徴点座標算出工程では、前記第1距離計測位置と前記第2距離計測位置とを通る第1直線と、前記第3距離計測位置と前記第4距離計測位置と前記第5距離計測位置とを通る第2直線とを算出して、前記第1直線と前記第2直線との交点である第1特徴点の位置座標を算出し、前記第1直線上において前記第1特徴点から前記短辺部の長さ分だけ下の位置の第2特徴点の位置座標を算出し、前記第2直線上において前記第1特徴点から前記長辺部の長さ分だけ下の位置の第3特徴点の位置座標を算出する。
【0019】
(7)本発明に係る形鋼の曲がり量測定方法は、上記(6)の発明において、前記曲がり量算出工程では、前記長手方向と直交する座標平面上において、前記第1特徴点と前記第2特徴点と前記第3特徴点とを頂点とする三角形に対して、前記第1特徴点と前記第2特徴点と前記第3特徴点との位置座標の平均をとり、前記形鋼の断面形状における重心位置の位置座標として前記三角形の重心位置の位置座標を算出する。
【0020】
(8)本発明に係る形鋼の矯正方法は、上記(4)乃至(7)のいずれか1つの発明の形鋼の曲がり量測定方法を用いて、形鋼を矯正する。
【0021】
(9)本発明に係る形鋼の製造方法は、上記(8)の発明の形鋼の矯正方法を用いて形鋼を矯正する工程を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法は、形鋼の種類によらず曲がり量を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、不等辺山形鋼の振動影響について説明する図である。
【
図2】
図2は、形鋼搬送装置で搬送される不等辺山形鋼を示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る不等辺山形鋼の概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置において、不等辺山形鋼の搬送方向に距離計測部を3つ配置した構成を示した図である。
【
図6】
図6は、形鋼搬送装置上の不等辺山形鋼に対する距離センサの位置を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置における曲がり量算出の制御の一例を示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、演算部による不等辺山形鋼の断面形状の算出方法を示す図である。
【
図9】
図9は、不等辺山形鋼の断面形状における特徴点及び重心位置から曲がり量を算出する方法を示す図である。
【
図10】
図10は、形鋼搬送装置上のH形鋼に対する距離センサの位置を示す図である。
【
図11】
図11は、演算部によるH形鋼の断面形状の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る形鋼曲がり量測定装置、形鋼の曲がり量測定方法、及び、形鋼の矯正方法、及び、形鋼の製造方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0025】
図2は、形鋼搬送装置60で搬送される不等辺山形鋼100を示した図である。
図3は、実施形態に係る不等辺山形鋼100の概略構成を示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態において曲がり量の測定対象の鋼材としての形鋼である不等辺山形鋼100は、上下左右非対称な山形の状態で形鋼搬送装置60上に載置されて搬送される。形鋼搬送装置60は、不等辺山形鋼100などの形鋼を長手方向に沿って搬送するための装置である。形鋼搬送装置60には、搬送方向に沿って配列した複数の搬送ローラが設けられており、複数の搬送ローラによって不等辺山形鋼を下側から支持して、不等辺山形鋼100を長手方向に向けて搬送可能となっている。不等辺山形鋼100は、長辺部(ウェブ部)100a及び短辺部(フランジ部)100bを有している。また、
図3に示すように、長辺部100aの長さL1は、短辺部100bの長さL2よりも長い。不等辺山形鋼100としては、長辺部100aの厚さと短辺部100bの厚さとが等しい不等辺等厚山形鋼と、長辺部100aの厚さと短辺部100bの厚さとが異なる不等辺不等厚山形鋼とのどちらでもよい。
【0027】
図4は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0028】
図4に示すように、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、距離計測部2、操業条件取得部3、演算部4、及び、表示部5などを備えている。
【0029】
距離計測部2は、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、第4距離センサ21d、及び、第5距離センサ21eを、1組のセンサセットとして備える。なお、以下の説明において、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、第4距離センサ21d、及び、第5距離センサ21eを特に区別しない場合には、単に距離センサ21とも記す。また、本実施形態では、距離センサ21にレーザー距離計を使用した場合で説明するが、その限りではない。
【0030】
操業条件取得部3は、計測対象の形鋼の製品仕様情報や距離計測部2の各距離センサ21の位置に関する情報などを含む操業条件に関する情報を取得する。距離センサ21の位置に関する情報としては、例えば、形鋼の搬送方向と直交する2次元座標平面上における位置座標である。本実施形態においては、形鋼の搬送方向をx軸方向としたとき、このz軸方向と直交する形鋼の幅方向をy軸方向とし、x軸方向とy軸方向とに直交する形鋼の高さ方向をz軸方向とする。そして、距離センサ21の位置に関する情報としては、x軸での所定の位置座標において、y軸とz軸とを備える2次元座標平面上における位置座標を取得する。
【0031】
演算部4は、計測位置算出部41、特徴点算出部42、曲がり量算出部43、プロファイル算出部44、及び、記憶部45を備えている。
【0032】
計測位置算出部41は、5つの距離センサ21a~21eのそれぞれから出力されたデータをもとに、不等辺山形鋼100の表面上における距離センサ21からのレーザー光の照射位置と、距離センサ21との間の距離を各距離センサ21a~21eについて求める。そして、計測位置算出部41は、求めたて距離と距離センサ21の位置に関する情報とから、2次元座標平面上であって、不等辺山形鋼100の断面形状における表面上の計測位置座標を、5つの距離センサ21a~21eごとについて算出する。
【0033】
特徴点算出部42は、プロファイル算出部44が算出した断面プロファイルにおいて、計測位置算出部41によって算出された距離センサ21a~21eによる計測位置座標を用いて、不等辺山形鋼100の断面形状における複数の特徴点の位置座標を算出する。
【0034】
曲がり量算出部43は、特徴点算出部42によって算出された不等辺山形鋼100の断面形状における複数の特徴点の位置座標を用いて、不等辺山形鋼100の曲がり量を算出する。
【0035】
プロファイル算出部44は、計測位置算出部41によって算出された複数の計測位置の情報に基づいて、搬送される形鋼の搬送方向と直交する断面の表面形状(断面形状)を表した断面プロファイルを算出する。例えば、プロファイル算出部44は、計測位置算出部41によって算出された5つの距離センサ21a~21eによるの各計測位置座標を5つの二次元プロファイルとして取得する。そして、プロファイル算出部44は、不等辺山形鋼100の同一断面における5つの二次元プロファイルを合成し、不等辺山形鋼100の同一断面(同一の2次元座標平面上)における表面形状の情報として、1つの断面プロファイルを算出する。
【0036】
記憶部45は、距離計測部2によって計測された距離情報や、操業条件取得部3によって取得された操業条件情報など、不等辺山形鋼100の曲がり量の算出に用いる各種情報を記憶する。
【0037】
表示部5は、演算部4によって算出された不等辺山形鋼100の曲がり量などをディスプレイに表示する。
【0038】
図5は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1において、不等辺山形鋼の搬送方向に距離計測部2を3つ配置した構成を示した図である。なお、本実施形態では、
図5に示すように、形鋼搬送装置60によって不等辺山形鋼100を搬送する状態で、不等辺山形鋼100の搬送方向をx軸とし、不等辺山形鋼100の幅方向をy軸とし、不等辺山形鋼100の高さ方向をz軸とする。
【0039】
図5に示すように、距離計測部2においては、不等辺山形鋼100の幅方向に左右それぞれに上下2箇所の位置を測距できるように、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、及び、第4距離センサ21dを配置している。これに加え、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、不等辺山形鋼100の上方に第5距離センサ21eを配置している。
【0040】
第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、及び、第4距離センサ21dのそれぞれからは、不等辺山形鋼100の幅方向に沿ってレーザー光22a,22b,22c,22dが照射される。第5距離センサ21eからは、不等辺山形鋼100の高さ方向に沿ってレーザー光22eが照射される。
【0041】
第1距離センサ21aは、不等辺山形鋼100の短辺部100bの外表面である短辺外面101bに向けてレーザー光22aを照射するように、不等辺山形鋼100の幅方向で短辺部100b側に配置されている。第2距離センサ21bは、短辺外面101bにおけるレーザー光22aの照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光22bを照射するように、不等辺山形鋼100の幅方向で短辺部100b側であって第1距離センサ21aよりも下に配置されている。第3距離センサ21cは、不等辺山形鋼100の長辺部100aの外表面である長辺外面101aに向けてレーザー光22cを照射するように、不等辺山形鋼100の幅方向で長辺部100a側に配置されている。第4距離センサ21dは、長辺外面101aにおけるレーザー光22cの照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光22dを照射するように、不等辺山形鋼100の幅方向で長辺部100a側であって第3距離センサ21cよりも下に配置されている。第5距離センサ21eは、長辺外面101aにおけるレーザー光22cの照射位置よりも上の位置に向けてレーザー光22eを照射するように、不等辺山形鋼100の高さ方向で長辺部100aの上方に配置されている。
【0042】
なお、最低限5つの距離センサ21を1組として距離計測部2が備えていれば、不等辺山形鋼100の曲がり量を算出するための要求を満たせるが、距離計測部2が備える1組の距離センサ21の数については、5つに限定されるものではない。すなわち、距離計測部2は、不等辺山形鋼100の幅方向で左右のそれぞれに少なくとも2つずつ距離センサ21を配置し、不等辺山形鋼100の上方に少なくとも1つの距離センサ21を配置して、5つ以上の距離センサ21を1組として備えればよい。
【0043】
なお、不等辺山形鋼100の正確な曲がり量を算出するためには、距離計測部2が備える全ての距離センサ21の光軸が同一平面上にあることが好ましい。そのため、距離センサ21の数を増やすほど、距離計測部2が備える全ての距離センサ21の光軸が同一平面上に位置するように距離センサ21を配置する作業が煩雑になる傾向にある。また、保全上、距離計測部2が備える全ての距離センサ21は、数年に一度の頻度で入れ替えることになる。このように距離センサ21を入れ替える際には、工場のラインを止める状態が発生するため、距離センサ21の入れ替えに要する時間を可能な限り短くすることが望まれる。そのため、距離センサ21の入れ替えに要する時間の短縮化を図るためにも、距離計測部2が備える1組の距離センサ21の数は、可能な限り少ないほうが好ましい。また、距離計測部2が備える1組の距離センサ21の数が多くなるほど、高コスト化を招く。これらの理由から、距離計測部2は、5つの距離センサ21を1組として備えることが好ましい。
【0044】
そして、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1においては、
図5に示すように、不等辺山形鋼100の長手方向(搬送方向)に一定の間隔をあけて、3つの距離計測部2を設置している。なお、不等辺山形鋼100の長手方向に設置する距離計測部2の数については、3つに限定されるものではない。
【0045】
例えば、長さ10[m]の不等辺山形鋼100の曲がり量を長手方向で1[m]ピッチで計測して算出する場合には、不等辺山形鋼100の長手方向に1[m]間隔で距離計測部2を1組ずつ配置し、計11組の距離計測部2を配置することになる。また、例えば、形鋼搬送装置60上での不等辺山形鋼100の幅方向の移動量とz軸回転量とが著しく小さい場合には、距離計測部2を1組のみ用いて、不等辺山形鋼100の搬送1[m]ごとに距離計測部2で測定を行う。そして、搬送終了後に計測データを合算することによって、1組の距離計測部2により不等辺山形鋼100の曲がり量を算出することができる。また、例えば、不等辺山形鋼100を搬送せずに静的に曲がり量を算出する場合や、不等辺山形鋼100の搬送速度が遅く振動やZ軸回転の影響が限りなく小さい場合には、距離計測部2を1組のみ配置して不等辺山形鋼100の曲がり量を計測してもよい。その場合には、例えば、距離計測部2を不等辺山形鋼100の長手方向に走査させて1[m]ごとに測定を行う。
【0046】
図6は、形鋼搬送装置60上の不等辺山形鋼100に対する距離センサ21の位置を示す図である。
【0047】
図6に示すように、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、第4距離センサ21d、及び、第5距離センサ21eと、それぞれの距離センサ21による距離計測位置P1,P2,P3,P4,P5とは、同一yz座標平面上にある。距離計測位置P1,P2,P3,P4,P5は、不等辺山形鋼100の断面形状における表面上に、距離センサ21a~21eから照射されたレーザー光22a~22eの照射位置である。距離センサ21a~21eから照射されるレーザー光22a~22eのyz座標平面上における傾きについては、特に制約はない。一方で、計算の都合上、第1距離センサ21a~第4距離センサ21dのレーザー光22a~22dはy軸と平行とし、第5距離センサ21eのレーザー光22eはz軸と平行とするのが好ましい。
【0048】
ここで、本実施形態においては、yz座標平面上における第n距離センサの位置座標を(yn,zn)とする。距離センサ21a~21eのレーザー光22a~22eが、計測対象とする不等辺山形鋼100の外表面(長辺外面101a及び短辺外面101b)のどこかに当たればよい。
【0049】
そのため、第1距離センサ21aと第2距離センサ21bとは、y軸方向(幅方向)の位置が同じ位置座標(y1=y2)である必要はない。また、第3距離センサ21cと第4距離センサ21dとは、y軸方向(幅方向)の位置が同じ位置座標(y3=y4)である必要はない。また、第1距離センサ21aと第3距離センサ21cとは、z軸方向(高さ方向)の位置が同じ位置座標(z1=z3)である必要はない。また、また、第2距離センサ21bと第4距離センサ21dとは、z軸方向(高さ方向)の位置が同じ位置座標(z2=z4)である必要はない。
【0050】
一方で、計算の都合上、第1距離センサ21aと第2距離センサ21bとは、y軸方向(幅方向)の位置が同じ位置座標(y1=y2)であるのが好ましい。また、同様に、第3距離センサ21cと第4距離センサ21dとは、y軸方向(幅方向)の位置が同じ位置座標(y3=y4)であるのが好ましい。また、同様に、第1距離センサ21aと第3距離センサ21cとは、z軸方向(高さ方向)の位置が同じ位置座標(z1=z3)であるのが好ましい。また、同様に、第2距離センサ21bと第4距離センサ21dとは、z軸方向(高さ方向)の位置が同じ位置座標(z2=z4)であるのが好ましい。
【0051】
また、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、第4距離センサ21d、及び、第5距離センサ21eのそれぞれのz軸方向(高さ方向)の位置は、不等辺山形鋼100の最大上方向振動量よりも大きい必要がある。例えば、第5距離センサ21eのz軸方向(高さ方向)の位置は、不等辺山形鋼100と接触しない距離以上である必要がある。なお、第5距離センサ21eのy軸方向(幅方向)の位置は、計測対象とする不等辺山形鋼100の外表面のどこかにレーザー光22eが当たりさえすれば、特に制約はない。また、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、及び、第4距離センサ21dのそれぞれのy軸方向(幅方向)の位置は、計測対象とする不等辺山形鋼100と接触しない位置である必要がある。
【0052】
また、不等辺山形鋼100の長手方向に複数組の距離計測部2を配置した場合、距離計測部2ごとの各距離センサ21の位置関係は、各距離センサ21のyz座標平面上での相対位置座標が分かればよい。一方で、計算の都合上、y座標とz座標とが同じ位置座標であることが好ましい。例えば、x軸方向(搬送方向)の位置座標がx=10となる位置に設置した距離計測部2の第1距離センサ21aの位置座標が(10,20,30)の場合には、x軸方向(搬送方向)の位置座標がx=20となる位置に設置した距離計測部2の第1距離センサ21aの位置座標が(20,20,30)であることが好ましい。また、x軸方向(搬送方向)の位置座標がx=10となる位置に設置した距離計測部2の第5距離センサ21eの位置座標が(10,30,60)の場合には、x軸方向(搬送方向)の位置座標がx=20となる位置に設置した距離計測部2の第5距離センサ21eの位置座標が(20,30,60)であることが好ましい。
【0053】
図7は、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1における曲がり量算出の制御の一例を示したフローチャートである。
【0054】
なお、
図7に示した曲がり量算出フローは、曲がり量の計測対象である不等辺山形鋼100が形鋼搬送装置60によって搬送され、例えば、距離計測部2によって計測された距離の値が閾値を超えて、演算部4で形鋼あり判定がなされたら開始する。また、
図7に示した曲がり量選出フローでは、操業条件として距離センサ21の位置に関する情報を予め操業条件取得手段によって取得済みとする。
【0055】
まず、形鋼曲がり量測定装置1は、距離計測部2の各距離センサ21によって、各距離センサ21から不等辺山形鋼100までの距離を計測する(ステップS1:距離計測工程)。次に、形鋼曲がり量測定装置1は、各距離センサ21によって計測した不等辺山形鋼100までの距離と、各距離センサ21の位置座標とから、不等辺山形鋼100の計測位置座標を、計測位置算出部41によって算出する(ステップS2:計測位置座標算出工程)。次に、形鋼曲がり量測定装置1は、操業条件取得部3によって不等辺山形鋼100の製品仕様情報などの操業条件を取得する(ステップS3:操業条件取得工程)。次に、形鋼曲がり量測定装置1は、算出された計測位置座標から、不等辺山形鋼100の断面形状における特徴点座標を、不等辺山形鋼100の製品仕様情報などを用いて、特徴点算出部42によって算出する(ステップS4:特徴点座標算出工程)。次に、形鋼曲がり量測定装置1は、算出した複数の特徴点座標から不等辺山形鋼100の曲がり量を、曲がり量算出部43によって算出する(ステップS5:曲がり量算出工程)。次に、形鋼曲がり量測定装置1は、算出した曲がり量の結果を、表示部5へ出力する(ステップS6:表示工程)。その後、形鋼曲がり量測定装置1は、一連の曲がり量算出の制御を終了する。
【0056】
次に、実施形態に係る不等辺山形鋼100の曲がり量の算出方法の詳細について説明する。実施形態に係る不等辺山形鋼100の曲がり量の算出方法では、複数組の距離計測部2によって不等辺山形鋼100の断面形状を算出し、算出した断面形状における複数の特徴点座標を算出する。そして、実施形態に係る不等辺山形鋼100の曲がり量の算出方法では、複数の特徴点座標から求めた重心位置の幅方向位置を、複数組の距離計測部2によってそれぞれ算出した断面形状ごとで比較することによって、不等辺山形鋼100の曲がり量を算出する。
【0057】
図8は、演算部4による不等辺山形鋼100の断面形状の算出方法を示す図である。なお、
図8を用いて説明する不等辺山形鋼100の断面形状の算出方法では、yz座標平面の断面プロファイルをプロファイル算出部44によって算出する。
【0058】
まず、演算部4は、計測位置座標算出工程において、
図8(a)に示すように、距離センサ21a~21eの計測情報などを用いて、不等辺山形鋼100の断面形状における表面上の距離計測位置P1~P5の位置座標を算出する。そして、演算部4は、距離計測位置P1~P5の位置座標を用いて、不等辺山形鋼100の同一座標平面上における表面形状の情報として、不等辺山形鋼100のyz座標平面の断面プロファイルを算出する。
【0059】
次に、演算部4は、特徴点座標算出工程において、
図8(b)に示すように、第1距離計測位置P1と第2距離計測位置P2とを通る第1直線71と、第3距離計測位置P3と第4距離計測位置P4と第5距離計測位置P5とを通る第2直線72とを算出する。そして、演算部4は、算出した第1直線71と第2直線72との交点である第1特徴点としての特徴点Oの位置座標を算出する。
【0060】
ここで、不等辺山形鋼100の製品仕様情報(長辺部100aの長さL1及び短辺部100bの長さL2、並びに、y軸方向(幅方向)の左右のどちらの辺が長辺部100aであるかなど)は、操業条件取得部3によって取得した操業条件情報から予め既知である。
【0061】
そのため、演算部4は、
図8(c)に示すように、第1直線71上において特徴点Oから短辺部100bの長さL2分だけ下の位置の第2特徴点である特徴点Aの位置座標を算出する。また、演算部4は、第2直線72上において特徴点Oから長辺部100aの長さL1分だけ下の位置の第3特徴点である特徴点Bの位置座標を算出する。そして、このように算出した特徴点O,A,Bの位置座標が、不等辺山形鋼100の断面形状における表面上の特徴点座標である。
【0062】
次に、演算部4は、曲がり量算出工程において、
図8(d)に示すように、特徴点Oと特徴点Aと特徴点Bとを頂点とする三角形△OABの重心位置G
△の位置座標を、yz座標平面上における特徴点Oと特徴点Aと特徴点Bとの位置座標を用いて算出する。そして、演算部4は、重心位置G
△の幅方向(y軸方向)の位置座標を用いて、不等辺山形鋼100の曲がり量を算出する。
【0063】
図9は、不等辺山形鋼100の断面形状における特徴点及び重心位置から曲がり量を算出する方法を示す図である。なお、ここでは、不等辺山形鋼100に対して3組の距離計測部2を3組使用した場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0064】
図9(a)に示すように、不等辺山形鋼100の搬送方向(x軸方向)に所定間隔をあけて配置された3組の距離計測部2のそれぞれについて、演算部4は、上記した断面形状の算出方法をもとにして、特徴点A,B及び重心位置G
△の位置座標を算出する。すなわち、演算部4は、搬送方向(x軸方向)で最下流側に配置された距離計測部2について、特徴点A1,B1及び重心位置G1
△の位置座標を算出する。また、演算部4は、搬送方向(x軸方向)で真ん中に配置された距離計測部2について、特徴点A2,B2及び重心位置G2
△の位置座標を算出する。また、演算部4は、搬送方向(x軸方向)で最上流側に配置された距離計測部2について、特徴点A3,B3及び重心位置G3
△の位置座標を算出する。
【0065】
次に、演算部4は、3組の距離計測部2のそれぞれの特徴点A,B及び重心位置G
△を、
図9(b)に示すように、同一xy座標平面上にプロットする。次に演算部4は、搬送方向(x軸方向)で最下流側に配置された距離計測部2の重心位置G1
△と、搬送方向(x軸方向)で最上流側に配置された距離計測部2の重心位置G3
△とを通る直線73を算出する。そして、演算部4は、y軸方向で直線73から各重心位置G1
△,G2
△,G3
△までの距離を算出し、その算出した距離のそれぞれを各長手方向の計測箇所での曲がり量とする。
【0066】
実施形態に係る不等辺山形鋼100の曲がり量測定方法においては、不等辺山形鋼100の長手方向における各計測箇所での曲がり量を、重心位置G1△,G2△,G3△のxy座標を用いて算出している。これにより、実施形態に係る不等辺山形鋼100の曲がり量測定方法では、不等辺山形鋼100の搬送時の振動やz軸回転の影響を抑制しつつ、不等辺山形鋼100の曲がり量を算出することができる。
【0067】
次に、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1によって曲がり量の計測対象である形鋼が、H形鋼の場合について説明する。なお、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1によってH形鋼の曲がり量を測定する方法としては、不等辺山形鋼100の曲がり量を測定する方法と略同様のため、適宜説明は省略する。
【0068】
図10は、形鋼搬送装置60上のH形鋼200に対する距離センサ21の位置を示す図である。
【0069】
実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、H形鋼200の幅方向に左右それぞれに上下2箇所の位置を測距できるように、第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、及び、第4距離センサ21dを配置している。これに加え、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、H形鋼200の上方に第5距離センサ21eを配置している。
【0070】
第1距離センサ21a、第2距離センサ21b、第3距離センサ21c、及び、第4距離センサ21dのそれぞれからは、H形鋼200の幅方向(y軸方向)に沿ってレーザー光22a,22b,22c,22dが照射される。第5距離センサ21eからは、H形鋼200の高さ方向(z軸方向)に沿ってレーザー光22eが照射される。
【0071】
第1距離センサ21aは、H形鋼200のフランジ部200bの外表面であるフランジ外面201bに向けてレーザー光22aを照射するように、H形鋼200の幅方向でフランジ部200b側に配置されている。第2距離センサ21bは、フランジ外面201bにおけるレーザー光22aの照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光22bを照射するように、H形鋼200の幅方向でフランジ部200b側であって第1距離センサ21aよりも下に配置されている。第3距離センサ21cは、H形鋼200のフランジ部200cの外表面であるフランジ外面201cに向けてレーザー光22cを照射するように、H形鋼200の幅方向でフランジ部200c側に配置されている。第4距離センサ21dは、フランジ外面201cにおけるレーザー光22cの照射位置よりも下の位置に向けてレーザー光22dを照射するように、H形鋼200の幅方向でフランジ部200c側であって第3距離センサ21cよりも下に配置されている。第5距離センサ21eは、ウェブ部200aの外表面であるウェブ外面201aに向けてレーザー光22eを照射するように、H形鋼200の高さ方向でウェブ部200aの上方に配置されている。
【0072】
図10に示すように、距離センサ21a~21eと、距離センサ21a~21eによるH形鋼200の断面形状における表面上の距離計測位置P1,P2,P3,P4,P5とは、同一yz座標平面上にある。
【0073】
図11は、演算部4によるH形鋼200の断面形状の算出方法を示す図である。
【0074】
まず、演算部4は、計測位置座標算出工程において、
図11(a)に示すように、距離センサ21a~21eの計測情報などを用いて、H形鋼200の断面形状における表面上の距離計測位置P1~P5の位置座標を算出する。そして、演算部4は、距離計測位置P1~P5の位置座標を用いて、H形鋼200の同一座標平面上における表面形状の情報として、H形鋼200のyz座標平面の断面プロファイルを算出する。
【0075】
次に、演算部4は、特徴点座標算出工程において、
図11(b)に示すように、第1距離計測位置P1と第2距離計測位置P2とを通る第1直線81と、第3距離計測位置P3と第4距離計測位置P4と通る第2直線82とを算出する。さらに、演算部4は、第5距離計測位置P5を通り、第1直線81と第2直線82との間の距離が最も短くなる線分83を求める。そして、演算部4は、第1直線81と線分83との交点である特徴点Cの位置座標を算出する。また、演算部4は、第2直線82と線分83との交点である特徴点Dの位置座標を算出する。
【0076】
ここで、H形鋼200の製品仕様情報(H形鋼200の左右のフランジ部200b,200cの長さ、フランジ外面201b,201cの幅など)は、操業条件取得部3によって取得した操業条件情報から予め既知である。
【0077】
そのため、演算部4は、フランジ部200bの長さをLとした場合、
図11(c)に示すように、第1直線81上で特徴点Cから上にL/2だけ離れた位置の特徴点Hの位置座標を算出する。また、演算部4は、第1直線81上で特徴点Cから下にL/2だけ離れた位置の特徴点Iの位置座標を算出する。また、演算部4は、フランジ部200cの長さをLとした場合、
図11(c)に示すように、第2直線82上で特徴点Dから上にL/2だけ離れた位置の特徴点Jの位置座標を算出する。また、演算部4は、第2直線82上で特徴点Dから下にL/2だけ離れた位置の特徴点Kの位置座標を算出する。このようにして、算出した算出した特徴点H,I,J,Kの位置座標が、H形鋼200の断面形状における特徴点座標である。
【0078】
次に、
図11(d)に示すように、演算部4は、yz座標平面上における特徴点Hと特徴点Iと特徴点Jと特徴点Kとの位置座標を用いて、H形鋼200の重心位置G
Hの位置座標を算出する。
【0079】
そして、演算部4は、例えば、
図9を用いて説明した不等辺山形鋼100の曲がり量を算出する方法と同様に、複数組の距離計測部2のそれぞれに対応した重心位置G
Hの幅方向(y軸方向)の位置座標を用いて、H形鋼200の曲がり量を算出する。
【0080】
以上、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、不等辺山形鋼100やH形鋼200などの形鋼の種類によらず、同じ装置によって形鋼の曲がり量を測定することができる。よって、実施形態に係る形鋼曲がり量測定装置1は、形鋼の曲がり矯正のために発生する曲がり量の測定や曲がり矯正機のセットアップなどに要する時間の短縮を図ったり、再度矯正するための時間の発生を抑制したりすることができる。
【0081】
また、実施形態に係る形鋼の曲がり量測定方法によって算出した形鋼の曲がり量は、例えば、圧延後または熱処理後の形鋼を矯正する形鋼の矯正方法に利用することができる。これにより、形鋼の矯正方法によって形鋼の曲がりを適切に矯正することができる。また、この形鋼の矯正方法を用いて形鋼を矯正する工程を形鋼の製造方法が備えることによって、精度く形鋼を製造することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 形鋼曲がり量測定装置
2 距離計測部
3 操業条件取得部
4 演算部
5 表示部
21a 第1距離センサ
21b 第2距離センサ
21c 第3距離センサ
21d 第4距離センサ
21e 第5距離センサ
60 形鋼搬送装置
100 不等辺山形鋼
100a 長辺部
100b 短辺部
101a 長辺外面
101b 短辺外面
200 H形鋼
200a ウェブ部
200b,200c フランジ部
201a ウェブ外面
201b,201c フランジ外面