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2024-162784バルーンカテーテル用パリソンの製造方法とバルーンカテーテルの製造方法およびバルーンカテーテル用パリソンの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162784
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用パリソンの製造方法とバルーンカテーテルの製造方法およびバルーンカテーテル用パリソンの製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20241114BHJP
【FI】
A61M25/10 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078676
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】片平 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】石井 慎悟
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB28
4C267CC07
4C267CC09
4C267FF01
(57)【要約】
【課題】チューブの加熱温度を低くしてパリソンの形状を安定的に形成できるバルーンカテーテル用パリソンの製造方法とバルーンカテーテルの製造方法およびバルーンカテーテル用パリソンの製造装置を提供する。
【解決手段】長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブ30を、一対の固定領域31、31で固定する固定工程と、一対の固定領域31、31の間に位置する一対の加熱領域32、32を加熱する加熱工程と、加熱工程の際に、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域の少なくとも一部を冷却する冷却工程と、チューブ30を一対の固定領域31、31が離隔する方向に引っ張り、一対の加熱領域32、32を延伸する延伸工程と、を備え、延伸工程により延伸された一対の加熱領域32、32の間に延伸された部分より外径の大きい太径部21を形成するバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテル用パリソンを製造する方法であって、
長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブを、前記長軸方向において離隔する一対の固定領域で固定する固定工程と、
前記チューブの前記一対の固定領域の間であって前記長軸方向において離隔する一対の加熱領域を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の際に、前記チューブの前記一対の加熱領域の間の領域の少なくとも一部を冷却する冷却工程と、
前記チューブを前記一対の固定領域が離隔する方向に引っ張り、前記チューブの前記加熱工程により加熱された前記一対の加熱領域を延伸する延伸工程と、
を備え、
前記延伸工程により延伸された前記一対の加熱領域の間に前記延伸された部分より外径の大きい太径部を形成する、バルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記チューブの表面に冷却手段の少なくとも一部が接触する、請求項1に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項3】
前記冷却工程において、前記長軸方向と直交する平面で切断した断面形状が方形状の壁面に囲まれた空間を冷却手段が冷却する、請求項1に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程において、前記一対の加熱領域の間の領域の表面を前記チューブのガラス転移点温度未満に維持する、請求項1に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程において、前記加熱領域の表面を前記チューブのガラス転移点温度より高い温度に維持する、請求項4に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程における前記チューブの表面温度と、前記冷却工程における前記チューブの表面温度との差は、50℃以上140℃以下である、請求項1に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程において、前記チューブの冷却開始の温度から前記チューブのガラス転移点温度未満に維持する状態までの時間は、5秒以上45秒以下である、請求項4に記載のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法で製造された前記バルーンカテーテル用パリソンを二軸延伸してバルーンを形成し、該形成されたバルーンにシャフトを設置する、バルーンカテーテルの製造方法。
【請求項9】
バルーンカテーテル用パリソンの製造装置であって、
長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブを、前記長軸方向において離隔する一対の固定領域で固定する固定機構部と、
前記チューブの前記一対の固定領域の間であって前記長軸方向において離隔する一対の加熱領域を加熱する加熱機構部と、
前記チューブの前記一対の加熱領域の間の領域を冷却する冷却機構部と、
前記固定機構部を前記チューブの前記一対の固定領域間の距離が広がる方向に移動させる引っ張り機構部と、
を備える、バルーンカテーテル用パリソンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルが有するバルーンの製造時中間品であるパリソンを製造する方法とバルーンカテーテルの製造方法およびバルーンカテーテル用パリソンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)改善のため、バルーンカテーテルが広く用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なシャフトと、このシャフトの先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えており、収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
【0003】
バルーンカテーテルの主な構成要素は、前述のようにバルーンとシャフトである。バルーンは、押出成形などにより形成されたチューブをパリソンと呼ばれる製造時中間品に加工し、パリソンを径方向と軸方向に二軸延伸加工することで、最終的にバルーンが形成される。形成されたバルーンは、シャフトに取付けられて組み立てられる。チューブからパリソンを経てバルーンに加工される製造方法については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/141382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チューブからパリソンへの加工は、チューブの長軸方向一部をバルーンに加工される部分として元の径に維持しつつ、バルーンに加工される部分の長軸方向両側の部分を長軸方向に延伸することでなされる。パリソンにおいてチューブの長軸方向に延伸された部分は、配向されて強度が大きくなる。このため、パリソンを二軸延伸加工する際に、チューブの長軸方向に延伸された部分は拡張せず、チューブの元の径が維持された部分のみが拡張して、バルーンが形成される。
【0006】
パリソンを製造する際、チューブのうちバルーンに加工される部分の長軸方向両側の部分は、加熱されて長軸方向に延伸される。チューブの加熱は、加熱対象となる部分を、内部に空間を有する加熱手段の加熱面に囲まれるように配置して行われる。しかし、チューブのうち加熱手段により部分から加熱されていない部分に伝熱されることにより、加熱部分と非加熱部分との境界が曖昧になり、形成されるパリソンの形状が不安定となることがあった。パリソンの形状が不安定であると、パリソンから形成されるバルーンの形状にも影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、チューブの加熱部分と非加熱部分との温度差を明確にして、パリソンの形状を安定的に形成できるバルーンカテーテル用パリソンの製造方法とバルーンカテーテルの製造方法およびバルーンカテーテル用パリソンの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する(1)バルーンカテーテル用パリソンの製造方法は、バルーンカテーテル用パリソンを製造する方法であって、長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブを、前記長軸方向において離隔する一対の固定領域で固定する固定工程と、前記チューブの前記一対の固定領域の間であって前記長軸方向において離隔する一対の加熱領域を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の際に、前記チューブの前記一対の加熱領域の間の領域の少なくとも一部を冷却する冷却工程と、前記チューブを前記一対の固定領域が離隔する方向に引っ張り、前記チューブの前記加熱工程により加熱された前記一対の加熱領域を延伸する延伸工程と、を備え、前記延伸工程により延伸された前記一対の加熱領域の間に前記延伸された部分より外径の大きい太径部を形成する。
【0009】
上記目的を達成する(9)バルーンカテーテル用パリソンの製造装置は、バルーンカテーテル用パリソンの製造装置であって、長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブを、前記長軸方向において離隔する一対の固定領域で固定する固定機構部と、前記チューブの前記一対の固定領域の間であって前記長軸方向において離隔する一対の加熱領域を加熱する加熱機構部と、前記チューブの前記一対の加熱領域の間の領域を冷却する冷却機構部と、前記固定機構部を前記チューブの前記一対の固定領域間の距離が広がる方向に移動させる引っ張り機構部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したバルーンカテーテル用パリソンの製造方法は、チューブを加熱する際、チューブのうち一対の加熱領域の間の領域と加熱領域との温度差を明確につけることができる。このため、延伸工程においてパリソンの形状を安定的に形成できる。
【0011】
(2)上記(1)のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記冷却工程において、前記チューブの表面に冷却手段の少なくとも一部が接触するようにしてもよい。これにより、チューブを熱伝導により安定的に冷却することができる。
【0012】
(3)上記(1)のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記冷却工程において、前記長軸方向と直交する平面で切断した断面形状が方形状の壁面に囲まれた空間を冷却手段が冷却するようにしてもよい。これにより、放射熱と対流熱伝達とを組み合わせてチューブを安定的に冷却することができる。
【0013】
(4)上記(2)または(3)のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記冷却工程において、前記一対の加熱領域の間の領域の表面を前記チューブのガラス転移点温度未満に維持するようにしてもよい。これにより、チューブの太径部となる部分の温度上昇を抑え、製造されるパリソンの肩部の形状を明瞭に形成することができる。
【0014】
(5)上記(2)~(4)のいずれかのバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記加熱工程において、前記加熱領域の表面を前記チューブのガラス転移点温度より高い温度に維持するようにしてもよい。これにより、チューブの加熱領域を延伸工程により確実に延伸させて強度を大きくすることができる。
【0015】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つのバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記加熱工程における前記チューブの表面温度と、前記冷却工程における前記チューブの表面温度との差は、50℃以上140℃以下とすることができる。これにより、チューブの加熱する領域と冷却する領域との温度差を充分につけて、チューブの太径部の形状を安定的に形成することができる。
【0016】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つのバルーンカテーテル用パリソンの製造方法において、前記冷却工程において、前記チューブの冷却開始の温度から前記チューブのガラス転移点温度未満に維持する状態までの時間は、5秒以上45秒以下であってもよい。これにより、チューブの加熱時間に合わせてチューブの非加熱部分を確実に冷却できる。
【0017】
(8)バルーンカテーテルの製造方法は、上記(1)~(7)のいずれかの製造方法で製造された前記バルーンカテーテル用パリソンを二軸延伸してバルーンを形成し、該形成されたバルーンにシャフトを設置する。バルーンカテーテル用パリソンの形状が上記(1)~(10)のいずれかの製造方法により安定的に形成されているので、安定的な形状を有するバルーンを有するバルーンカテーテルを製造することができる。
【0018】
上記のように構成したバルーンカテーテル用パリソンの製造装置は、チューブを加熱する際、チューブのうち一対の加熱領域の間の領域と加熱領域との温度差を明確につけることができて、パリソンの形状を安定的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】バルーンカテーテルの全体正面図である。
図2】パリソンの全体正面図である。
図3】パリソンのうち中央部付近の拡大断面図である。
図4】パリソンの製造装置の正面図であって、固定機構部にチューブを固定した状態を表した図である。
図5】パリソンの製造装置の正面図であって、加熱機構部と冷却機構部が閉じた状態を表した図である。
図6】チューブを配置した熱型の開いた状態の断面図である。
図7】チューブを配置した熱型の閉じた状態の断面図である。
図8】チューブを配置した冷却型の開いた状態の断面図である。
図9】チューブを配置した冷却型の閉じた状態の断面図である。
図10】パリソンの製造装置の正面図であって、引っ張り機構部でチューブを延伸している状態を表した図である。
図11】パリソンの二軸延伸加工前における中央部付近の拡大断面図(a)と、パリソンの二軸延伸加工後における中央部付近の拡大断面図(b)である。
図12】製造したバルーンにシャフトを設置した状態のバルーン付近拡大断面図である。
図13】複数のチューブを配置した熱型の断面図である。
図14】複数のチューブを配置した冷却型の断面図である。
図15】チューブを配置した変形例に係る熱型の開いた状態の断面図である。
図16】チューブを配置した変形例に係る熱型の閉じた状態の断面図である。
図17】チューブを配置した変形例に係る冷却型の開いた状態の断面図である。
図18】チューブを配置した変形例に係る冷却型の閉じた状態の断面図である。
図19】複数のチューブを配置した変形例に係る熱型の閉じた状態の断面図である。
図20】複数のチューブを配置した変形例に係る冷却型の閉じた状態の断面図である。
図21】チューブを配置した第2変形例に係る熱型の閉じた状態の断面図である。
図22】チューブを配置した第2変形例に係る冷却型の閉じた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0021】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用パリソンの製造方法は、熱可塑性の材料で形成されたチューブ30の一部を加熱し、延伸加工することで、チューブ30の非加熱部分を太径部21に、チューブ30の加熱部分を細径部22に、それぞれ形成したパリソン20を製造する。このパリソン20からバルーン12が形成され、バルーン12をシャフト11に設置することで、バルーンカテーテル10が製造される。
【0022】
図1に示すように、製造されるバルーンカテーテル10は、長尺なシャフト11の先端部にバルーン12を有し、シャフト11の基端部にはハブ13が設けられる。バルーン12は、ハブ13から注入される拡張用流体により、径方向に拡張することができる。
【0023】
図2に示すように、パリソン20は、長軸方向に沿って延び、長軸方向の中央部には径の大きい太径部21を有し、太径部21の長軸方向両側には太径部21より径の小さい細径部22をそれぞれ有している。
【0024】
図3に示すように、パリソン20は、内部が中空のチューブ状である。パリソン20の太径部21は、長軸方向に沿って径が同じ同径部21aと、同径部21aの長軸方向両端部において、同径部21aと細径部22とをつなぐ傾斜状の肩部21bと、を有している。
【0025】
パリソン20は、熱可塑性の材料によって形成されている。本実施形態においてパリソン20を形成する材料は、ポリアミドである。パリソン20を形成する材料はこれに限られず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0026】
パリソン20の製造装置50および製造方法について説明する。図4に示すように、パリソン20の製造装置50は、チューブ30を固定する固定機構部51と、チューブ30の一部を加熱する加熱機構部52と、チューブ30の別の一部を冷却する冷却機構部55と、固定機構部51を移動させてチューブ30を長軸方向に沿って引っ張る引っ張り機構部53と、加熱機構部52および冷却機構部55を開閉させる移動機構部54と、を有している。
【0027】
固定機構部51は、長軸方向に沿って延びるチューブ30を、長軸方向において離隔する一対の固定領域31、31で固定する。固定機構部51は、チューブ30の両端部を挿通させることができる貫通した空間を有しており、挿通させたチューブ30を径方向に押圧して保持する固定手段を有している。
【0028】
加熱機構部52は、チューブ30の一対の固定領域31の間であって長軸方向において離隔する一対の加熱領域32、32を加熱することができる。加熱機構部52は、チューブ30の径方向両側にそれぞれ配置された熱源である一対の熱型70、70によって構成されている。熱型70、70は、移動機構部54によって、チューブ30の径方向に沿って互いに近接および離隔することで、開閉することができる。図4において熱型70、70は、互いに離隔してチューブ30の加熱領域32を露出させる開いた状態である。
【0029】
冷却機構部55は、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域の少なくとも一部の領域を冷却することができる。冷却機構部55は、チューブ30の径方向両側にそれぞれ配置された冷却手段である一対の冷却型100、100によって構成されている。冷却型100、100は、移動機構部54によって、チューブ30の径方向に沿って互いに近接および離隔することで、開閉することができる。図4において冷却型100、100は、開いた状態である。
【0030】
引っ張り機構部53は、固定機構部51に連結された腕部81と、腕部81を伸縮させる本体部80と、を有している。本体部80が腕部81を伸縮させることにより、固定機構部51をチューブ30の長軸方向に沿って移動させて、固定機構部51に固定されたチューブ30を長軸方向に沿って引っ張ることができる。
【0031】
移動機構部54は、熱型70または冷却型100に連結された腕部91と、腕部91を伸縮させる本体部90と、を有している。本体部90が腕部91を伸縮させることにより、互いに向き合う熱型70、70および冷却型100、100を開閉させるように移動させることができる。
【0032】
パリソン20を製造するには、まず、図4に示すように、チューブ30の固定領域31、31を、それぞれ製造装置50の固定機構部51、51に固定する(固定工程)。次に、図5に示すように、移動機構部54により加熱機構部52の互いに向かい合う熱型70、70を近接させて閉じた状態とし、チューブ30の一対の加熱領域32、32を覆って加熱する(加熱工程)。また、移動機構部54により冷却機構部55の冷却型100、100を近接させて、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域を覆って閉じた状態とし、加熱工程の際に冷却する(冷却工程)。冷却型100を閉じて冷却を開始するタイミングは、加熱機構部52の熱型70を閉じて加熱するタイミングと同時でもよいし、熱型70を閉じる前に冷却型100を閉じて冷却を開始するなど、多少の時間差があってもよい。冷却工程は、加熱工程が行われている間、継続される。
【0033】
図6に示すように、一対の熱型70、70は、互いに向かい合う面に凹状の壁面72、72を有している。また、熱型70は、内部に加熱部71を有している。加熱部71には、ヒーターを用いることができる。ただし、加熱部71は、熱型70の外表面に設けられていてもよく、また、ヒーター以外の加熱手段であってもよい。加熱部71により、熱型70が加熱され、壁面72の温度を上昇させることができる。
【0034】
図7に示すように、一対の熱型70、70は、互いに近接して閉じた状態となることで、チューブ30を内部に収容する。閉じた状態の熱型70、70は、長軸方向と直交する平面で切断した断面形状が方形状の壁面72に囲まれた空間73を有している。壁面72は、長軸方向と直交する平面で切断した断面形状において、水平方向に延びる長壁72aと、長壁72aと異なる方向である垂直方向に長壁72aより短い長さで延びる短壁72bと、を有している。一対の熱型70、70で形成される空間73に配置されたチューブ30は、壁面72のうち長壁72aと近接する。壁面72とチューブ30との最小距離Yは、長壁72aとチューブ30との距離であって、0<Y≦1.5mmである。
【0035】
加熱部71によって壁面72の温度が上昇することにより、壁面72からの放射熱と、壁面72によって加熱された空間73内の対流熱伝達とが生じ、チューブ30を加熱することができる。チューブ30の加熱は、一定時間に渡って維持される。加熱工程において、熱源である熱型70は、加熱領域32、32の表面をチューブ30のガラス転移点温度より高い温度に維持する。本実施形態において、加熱工程で熱型70は80℃以上160℃以下の温度に加熱される。また、加熱工程は、1秒以上30秒以下に渡って行われる。
【0036】
熱型70の壁面72は、チューブ30と近接しているので、放射熱と対流熱伝達とを組み合わせてチューブ30を安定的に加熱できる。このため、熱型70の加熱温度を低く抑えても、効率的にチューブ30の加熱を行うことができる。加熱工程において、熱型70の加熱温度を低くすることで、チューブ30の加熱領域32以外の領域のいわゆるなりゆき加熱が防止できるので、当該領域の温度上昇を抑えることができる。これによって、製造されるパリソン20の長さを安定的に形成することができる。さらに、パリソン20の肩部21bの形状を明瞭に形成することができるので、検査時の形状識別がしやすくなる。パリソン20の肩部21bの形状が明瞭であることにより、パリソン20の太径部21が延伸されていないと判別できる。以上のことから、パリソン20を安定的に製造できる。
【0037】
なお、本実施形態では、図6、7の熱型70を用いた製造装置50にて説明したが、熱型は従来から用いられているものを使用してもよい。
【0038】
図8に示すように、一対の冷却型100、100は、互いに向かい合う面に凹状の壁面102、102を有している。冷却型100は、内部に冷却部101を有し、この冷却部101によって壁面102の温度を低下させ、空間103内のチューブ30を冷却できる。冷却部101としては、冷却水を流動させる伝熱管とすることができる。ただし、冷却部101は、冷却型100を冷却できる手段であればよく、伝熱管に限られない。
【0039】
図9に示すように、互いに向かい合う冷却型100、100が近接することにより、壁面102、102に囲まれた空間103が形成される。空間103は、長軸方向と直交する平面で切断した断面形状が方形状であり、チューブ30を収容できる。
【0040】
一対の冷却型100、100を閉じた状態における壁面102は、長軸方向と直交する平面で切断した断面形状において、水平方向に延びる長壁102aと、長壁102aと異なる方向である垂直方向に長壁102aより短い長さで延びる短壁102bと、を有している。一対の冷却型100、100で形成される空間103に配置されたチューブ30は、壁面102のうち長壁102aと近接する。
【0041】
冷却部101によって壁面102が冷却されることにより、壁面102への放射冷却と、壁面102によって冷却された空間103内の対流熱伝達とが生じ、チューブ30を冷却することができる。
【0042】
冷却工程において、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域の表面は、チューブ30のガラス転移点温度未満に維持される。冷却工程において、チューブ30の冷却開始の温度からチューブ30のガラス転移点温度未満に維持する状態までの時間は、5秒以上45秒以下である。また、加熱工程におけるチューブ30の表面温度と、冷却工程におけるチューブ30の表面温度との差は、50℃以上140℃以下である。冷却工程により、チューブ30の太径部21となる領域を冷却しながら、延伸工程で延伸される領域を加熱し、両領域の温度差を明確につけることができる。これによって、チューブ30の太径部21となる部分の温度上昇を抑え、製造されるパリソン20の肩部21bの形状を明瞭に形成することができて、パリソン20を安定的に製造できる。
【0043】
冷却工程でチューブ30の一部を冷却しつつ、加熱工程でチューブ30の加熱領域32を加熱したら、チューブ30の加熱および冷却を停止し、図10に示すように、引っ張り機構部53によってチューブ30を一対の固定領域31、31が離隔する方向に引っ張り、チューブ30の加熱工程により加熱された一対の加熱領域32、32を延伸する(延伸工程)。延伸工程の際には、移動機構部54によって熱型70および冷却型100を開くことにより、熱型70および冷却型100をチューブ30の表面から離隔させる工程が行われる。熱型70と冷却型100は、加熱工程の後、延伸工程の開始と同時に開くようにしてもよいし、延伸工程中に開くようにしてもよい。なお、壁面102がチューブ30の表面に近接する冷却型100で冷却工程を行う場合は、冷却工程の後、冷却型100、100を閉じたまま、延伸工程が行われてもよい。
【0044】
延伸工程により、チューブ30の加熱領域32は長軸方向に延伸され、延伸された部分は配向されて強度が大きくなる。延伸工程により、チューブ30には、延伸されて細径部22となった一対の加熱領域32、32の間に、細径部22より外径の大きい太径部21が形成される。
【0045】
バルーン12は、図11(a)に示すパリソン20の太径部21を二軸延伸加工し、図11(b)に示すように拡張させて形成される。太径部21の二軸延伸加工は、太径部21を長軸方向と径方向の二軸方向にそれぞれ拡張させるように、ブロー成形することによってなされる。二軸延伸加工の際には、チューブ30の延伸されていない太径部21の部分のみが拡張し、中間部12cとその前後に延びる先端部12aおよび基端部12bを形成する。パリソン20を二軸延伸加工したら、先端部12aおよび基端部12bとして所定長さが残るように長軸方向両端側を切断し、バルーン12とすることができる。二軸延伸加工の詳細は、公知の方法を適宜採用可能である。バルーン12の中間部12cは、拡張時に狭窄部等を押し広げる機能を有している。先端部12aおよび基端部12bは、後述するように、それぞれシャフト11に液密に接合される。
【0046】
バルーン12を形成したら、形成したバルーン12にハブ13を有するシャフト11を設置する。具体的には、図12に示すように、バルーン12の先端部12aに内管シャフト11aを融着などの公知の方法で固定し、バルーン12の基端部12bに内管シャフト11aの外側に配置される外管シャフト11bを同様の方法にて固定し、バルーン12にシャフト11を設置することで、バルーンカテーテル10を製造することができる。
【0047】
本実施形態のバルーンカテーテル用パリソンの製造方法は、複数本のチューブ30を一度に加工して複数のパリソン20を製造することもできる。図13に示すように、加熱機構部52の熱型70、70の空間73には、壁面72の長壁72aに沿って複数のチューブ30を配列することができる。空間73に配列された複数のチューブ30は、熱型70、70によって一度に加熱される。
【0048】
熱型70、70の空間73に1本ないし複数本のチューブ30を配置した場合における、チューブ30の長軸方向と直交する平面で切断した空間73の断面積の、チューブ30の長軸方向と直交する平面で切断したチューブ30の合計断面積に対する倍率は、2倍以上10倍未満、好ましくは4倍以上8倍未満である。
【0049】
図14に示すように、冷却機構部55の冷却型100、100の空間103には、壁面102の長壁102aに沿って複数のチューブ30を配列することができる。空間103に配列された複数のチューブ30は、冷却型100、100によって一度に加熱される。
【0050】
次に、変形例に係る熱型110および冷却型120について説明する。図15に示すように、熱型110は、加熱部111を有し、互いに向かい合う面は、平面状の壁面112である。熱型110は、弾性を有する材料で形成されている。
【0051】
図16に示すように、熱型110を閉じると、チューブ30によって壁面112は変形する。このため、加熱工程において、熱源である熱型110を、チューブ30の表面の全周に接触させることができる。熱型110をチューブ30の表面に接触させて加熱することにより、熱型110からチューブ30には、熱伝導により伝熱され、熱型110の加熱温度を低く抑えても、効率的にチューブ30の加熱を行うことができる。
【0052】
図17図18に示すように、冷却型120、120についても、弾性変形可能な材料で形成され、チューブ30の表面に接触してもよい。冷却部121を有する冷却型120は、対向する冷却型120と向かい合う面に壁面122を有し、チューブ30の表面によって弾性変形することで、冷却型120、120を閉じた際にチューブ30の表面の全周に渡って接触する。冷却型120の壁面122がチューブ30の表面に接触することで、冷却型120とチューブ30との間で熱伝導により伝熱がなされ、効率的にチューブ30を冷却できる。
【0053】
熱型110および冷却型120を閉じた状態で加熱工程および冷却工程を行ったら、熱型110および冷却型120を開いてチューブ30の表面から離隔させ、その後、延伸工程が行われる。
【0054】
図19に示すように、チューブ30の表面に接触する熱型110で複数のチューブ30を一度に加熱することができる。また、図20に示すように、チューブ30の表面に接触する冷却型100で複数のチューブ30を一度に加熱することができる。
【0055】
図21に示すように、熱型110は壁面112に凹部113を有していてもよく、熱型110がチューブ30の表面のうち周方向一部に接触するようにしてもよい。この場合、熱型110がチューブ30の表面に接触する面積が、接触しない面積よりも広いことが好ましい。図22に示すように、冷却型120、120は、壁面122に凹部123を有していてもよく、冷却型120、120がチューブ30の表面のうち周方向一部に接触するようにしてもよい。この場合、冷却型120がチューブ30の表面に接触する面積が、接触しない面積よりも広いことが好ましい。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る(1)バルーンカテーテル用パリソン20を製造する方法は、バルーンカテーテル用パリソン20を製造する方法であって、長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブ30を、長軸方向において離隔する一対の固定領域31、31で固定する固定工程と、チューブ30の一対の固定領域31、31の間であって長軸方向において離隔する一対の加熱領域32、32を加熱する加熱工程と、加熱工程の際に、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域の少なくとも一部を冷却する冷却工程と、チューブ30を一対の固定領域31、31が離隔する方向に引っ張り、チューブ30の加熱工程により加熱された一対の加熱領域32、32を延伸する延伸工程と、を備え、延伸工程により延伸された一対の加熱領域32、32の間に延伸された部分より外径の大きい太径部21を形成する。このように構成したバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法は、チューブ30を加熱する際、チューブ30のうち一対の加熱領域32、32の間の領域と加熱領域との温度差を明確につけることができる。このため、延伸工程においてパリソン20の形状を安定的に形成できる。
【0057】
(2)上記(1)のバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、冷却工程において、チューブ30の表面に冷却手段の少なくとも一部が接触するようにしてもよい。これにより、チューブ30を熱伝導により安定的に冷却することができる。
【0058】
(3)上記(1)のバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、冷却工程において、長軸方向と直交する平面で切断した断面形状が方形状の壁面102に囲まれた空間103を冷却手段が冷却するようにしてもよい。これにより、放射熱と対流熱伝達とを組み合わせてチューブ30を安定的に冷却することができる。
【0059】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、冷却工程において、一対の加熱領域32、32の間の領域の表面をチューブ30のガラス転移点温度未満に維持するようにしてもよい。これにより、チューブ30の太径部21となる部分の温度上昇を抑え、製造されるパリソン20の肩部の形状を明瞭に形成することができる。
【0060】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、加熱工程において、加熱領域の表面をチューブ30のガラス転移点温度より高い温度に維持するようにしてもよい。これにより、チューブ30の加熱領域を延伸工程により確実に延伸させて強度を大きくすることができる。
【0061】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つのバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、加熱工程におけるチューブ30の表面温度と、冷却工程におけるチューブ30の表面温度との差は、50℃以上140℃以下とすることができる。これにより、チューブ30の加熱する領域と冷却する領域との温度差を充分につけて、チューブ30の太径部21の形状を安定的に形成することができる。
【0062】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つのバルーンカテーテル用パリソン20の製造方法において、冷却工程において、チューブ30の冷却開始の温度からチューブ30のガラス転移点温度未満に維持する状態までの時間は、5秒以上45秒以下であってもよい。これにより、チューブ30の加熱時間に合わせてチューブ30の非加熱部分を確実に冷却できる。
【0063】
(8)本実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法は、上記(1)~(7)のいずれかの製造方法で製造されたバルーンカテーテル用パリソン20を二軸延伸してバルーン12を形成し、該形成されたバルーン12にシャフト11を設置する。バルーンカテーテル用パリソン20の形状が上記(1)~(7)のいずれかの製造方法により安定的に形成されているので、安定的な形状を有するバルーン12を有するバルーンカテーテル10を製造することができる。
【0064】
本実施形態に係る(9)バルーンカテーテル用パリソン20の製造装置50は、バルーンカテーテル用パリソン20の製造装置50であって、長軸方向に沿って延びる熱可塑性のチューブ30を、長軸方向において離隔する一対の固定領域31、31で固定する固定機構部51と、チューブ30の一対の固定領域31、31の間であって長軸方向において離隔する一対の加熱領域32、32を加熱する加熱機構部52と、チューブ30の一対の加熱領域32、32の間の領域を冷却する冷却機構部55と、固定機構部51をチューブ30の一対の固定領域31、31間の距離が広がる方向に移動させる引っ張り機構部53と、を備える。このように構成したバルーンカテーテル用パリソン20の製造装置は、チューブ30を加熱する際、チューブ30のうち一対の加熱領域32、32の間の領域と加熱領域との温度差を明確につけることができて、パリソン20の形状を安定的に形成できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 バルーンカテーテル
11 シャフト
12 バルーン
13 ハブ
20 パリソン
21 太径部
21a 同径部
21b 肩部
22 細径部
30 チューブ
31 固定領域
32 加熱領域
50 製造装置
51 固定機構部
52 加熱機構部
53 引っ張り機構部
54 移動機構部
55 冷却機構部
60 固定部
70 熱型
71 加熱部
72 壁面
72a 長壁
72b 短壁
73 空間
100 冷却型
101 冷却部
102 壁面
102a 長壁
102b 短壁
103 空間部
図1
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