(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162786
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電動弁用コイル、電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078680
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB21
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
3H062FF41
3H062GG04
3H062HH04
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】本発明は、所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイル、電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】電動弁用コイル2は、内部に巻線22を収容するコイルケース30を備え、軸線Lを中心とする嵌挿孔33を介して装着対象としての電動弁本体1に装着される。電動弁用コイル2は、コイルケース30に固定される防水キャップ40を備え、コイルケース30および防水キャップ40には、互いに係合して互いの軸線Lまわりの周方向の位置を位置決めする位置決め部Aが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に巻線を収容するコイルケースを備え、軸線を中心とする嵌挿孔を介して装着対象に装着される電動弁用コイルであって、
前記コイルケースに固定される防水キャップを備え、
前記コイルケースおよび前記防水キャップには、互いに係合して互いの前記軸線まわりの周方向の位置を位置決めする位置決め部が設けられていることを特徴とする電動弁用コイル。
【請求項2】
前記コイルケースは、前記周方向に延びて前記巻線を収容する周壁部と、前記周壁部の上端部に連続する環状の上壁部と、を備え、前記上壁部には、前記嵌挿孔に連続する貫通孔が設けられ、
前記防水キャップは、有底筒状のキャップ本体を備え、
前記位置決め部は、前記貫通孔の周縁または前記キャップ本体のうち一方に設けられる少なくとも1個の凹部と、前記貫通孔の周縁または前記キャップ本体のうち他方に設けられる少なくとも1個の凸部と、を備え、
前記凸部と前記凹部とが嵌合した状態で前記防水キャップが前記上壁部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁用コイル。
【請求項3】
前記防水キャップは、前記凸部と前記凹部との嵌合のみによって前記上壁部に固定されるか、または、前記凸部と前記凹部との嵌合に加えて接着あるいは溶着により前記上壁部に固定されることを特徴とする請求項2に記載の電動弁用コイル。
【請求項4】
前記防水キャップは、前記キャップ本体の開口端縁から前記軸線に直交する径方向に延びる鍔状のフランジ部を備え、
前記凸部は、前記フランジ部の底面、または、前記上壁部の上面から突出して前記周方向に均等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁用コイル。
【請求項5】
前記凹部は、前記上壁部、または、前記フランジ部の底面において前記周方向に均等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電動弁用コイル。
【請求項6】
前記上壁部は、前記フランジ部の底面に当接する上面部を有し、
前記フランジ部の底面および前記上面部のうち少なくとも一方には、前記径方向に延びて前記防水キャップの内外を連通する通気路が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電動弁用コイル。
【請求項7】
前記通気路は、1または複数の凹溝あるいは孔から構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電動弁用コイル。
【請求項8】
前記通気路が設けられた箇所における前記軸線の中心から前記フランジ部の外周端までの半径寸法L1は、前記通気路が設けられた箇所における前記軸線の中心から前記上面部の外周端までの半径寸法L2よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の電動弁用コイル。
【請求項9】
前記防水キャップは、樹脂製またはゴム製であることを特徴とする請求項8に記載の電動弁用コイル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電動弁用コイルと、前記装着対象としての電動弁本体と、を備えた電動弁。
【請求項11】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項10に記載の電動弁が、膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁用コイル、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動弁のケース(キャン)内部に設けられたマグネットロータとともに駆動部としてのステッピングモータを構成するステータコイル(電動弁用コイル)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のステータコイルは、樹脂製のボビンに巻装されたコイルと、ボビンに組み付けられたステータヨーク(継鉄)と、これらを囲んで収容するコイルケースと、コイルケース内部に充填されてコイルおよびステータヨークを覆う注型樹脂と、を備えている。ステータコイルには、中央に軸線を中心とする貫通孔が設けられ、貫通孔には電動弁のケースが挿通される。ステータコイルには、防水用のカバーが取り付けられており、カバーは、コイルケースを覆う略円筒状のカバー本体部と、カバー本体部の上部に形成されて貫通孔を塞ぐキャップ部と、によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステータコイルでは、カバーは、カバー本体部と、キャップ部が一体にゴムで成形されていたため、カバーをコイルに組み付けるのが難しかった。具体的には、ゴム製のカバーの装着時には、カバーの開口部を引き延ばして、当該開口部にコイルを嵌め込む必要があるが、カバーの装着後に防水性を確保する観点から、カバーは、全体的にコイルより小さめに作ってある為、開口部にコイルを嵌め込む作業が大変であり、その分工数が増加していた。
【0005】
本発明は、所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイル、電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の電動弁用コイルは、内部に巻線を収容するコイルケースを備え、軸線を中心とする嵌挿孔を介して装着対象に装着される電動弁用コイルであって、前記コイルケースに固定される防水キャップを備え、前記コイルケースおよび前記防水キャップには、互いに係合して互いの前記軸線まわりの周方向の位置を位置決めする位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、コイルケースおよび防水キャップにそれぞれ設けられた位置決め部を互いに係合させ、防水キャップをコイルケースに固定することができるので、防水キャップのコイルケースへの組付けを容易にすることができる。また、位置決め部同士の係合によって、コイルケースおよび防水キャップの互いの軸線まわりの周方向の位置が決まることから、防水キャップのコイルケースに対する周方向および径方向の位置ずれを抑制することができ、防水キャップの防水機能を維持することができる。したがって、所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイルを提供することができる。
【0008】
また、この際、前記コイルケースは、前記周方向に延びて前記巻線を収容する周壁部と、前記周壁部の上端部に連続する環状の上壁部と、を備え、前記上壁部には、前記嵌挿孔に連続する貫通孔が設けられ、前記防水キャップは、有底筒状のキャップ本体を備え、前記位置決め部は、前記貫通孔の周縁または前記キャップ本体のうち一方に設けられる少なくとも1個の凹部と、前記貫通孔の周縁または前記キャップ本体のうち他方に設けられる少なくとも1個の凸部と、を備え、前記凸部と前記凹部とが嵌合した状態で前記防水キャップが前記上壁部に固定されることが好ましい。このような構成によれば、凹部と凸部とを嵌合させることで防水キャップを簡易にコイルケースの上壁部に組付けることができる。また、凹部と凸部との嵌合により、コイルケースおよび防水キャップの互いの軸線まわりの周方向の位置が決まることから、防水キャップのコイルケースに対する周方向および径方向の位置ずれを抑制することができる。
【0009】
また、前記防水キャップは、前記凸部と前記凹部との嵌合のみによって前記上壁部に固定されるか、または、前記凸部と前記凹部との嵌合に加えて接着あるいは溶着により前記上壁部に固定されることが好ましい。このような構成によれば、防水キャップが凸部と凹部との嵌合のみによって上壁部に固定されることで、上述のように、防水キャップの位置ずれを抑制しつつ、組付け性を向上することができる。また、凸部と凹部との嵌合に加えて接着あるいは溶着により防水キャップが上壁部に固定されることで、より強固に防水キャップをコイルケースに固定することができる。また、この場合、凸部と凹部とを嵌合した状態で接着あるいは溶着が行われる。これによれば、凸部と凹部とがない面同士の接着あるいは溶着と比較して、凹凸があることで、接着される部分の面積が増えることから、より強固に防水キャップをコイルケースに固定することができる。
【0010】
また、前記防水キャップは、前記キャップ本体の開口端縁から前記軸線に直交する径方向に延びる鍔状のフランジ部を備え、前記凸部は、前記フランジ部の底面、または、前記上壁部の上面から突出して前記周方向に均等間隔で複数設けられていることが好ましい。このような構成によれば、凸部を周方向に均等間隔で複数設けたことで、コイルケースに対する防水キャップの周方向および径方向の変位を複数個所で抑制することができる。これにより、防水キャップのコイルケースに対する周方向および径方向の位置ずれをより一層抑制することができる。
【0011】
また、前記凹部は、前記上壁部、または、前記フランジ部の底面において前記周方向に均等間隔で複数設けられていることが好ましい。このような構成によれば、凹部を周方向に均等間隔で複数設けたことで、コイルケースに対する防水キャップの周方向および径方向の変位を複数個所で抑制することができる。これにより、防水キャップのコイルケースに対する周方向および径方向の位置ずれをより一層抑制することができる。
【0012】
また、前記上壁部は、前記フランジ部の底面に当接する上面部を有し、前記フランジ部の底面および前記上面部のうち少なくとも一方には、前記径方向に延びて前記防水キャップの内外を連通する通気路が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、例えば、結露等により生じたコイルケース内の水分を通気路を介して蒸発させやすくすることができる。
【0013】
また、前記通気路は、1または複数の凹溝あるいは孔から構成されていてもよい。このような構成によれば、通気路は1または複数の凹溝や、孔で構成することができるので、通気路の個数や形状について、水のかかり易さ、水の溜まり易さ、内部水分の蒸発し易さ等、対象となる課題に対応できるように選択の幅を増やすことができる。
【0014】
また、前記通気路が設けられた箇所における前記軸線の中心から前記フランジ部の外周端までの半径寸法L1は、前記通気路が設けられた箇所における前記軸線の中心から前記上面部の外周端までの半径寸法L2よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、防水キャップが固定された状態のコイルケースを軸線方向から見た場合に、フランジ部の外周端が、上面部の外周端よりも径方向外方に突出することとなる。このため、通気路付近でコイルケースの上面部が上面方向から見て露出しないので、防水キャップの上部に配置された配管等に付着した結露水等の水滴の落下等により、当該上面部に水等の液体が溜まることがなく、例えば、フランジ部の底面に通気路が形成されていた場合に、上面部を介して通気路に液体が侵入することを防ぐことができる。また、例えば、上面部に通気路が形成されていた場合に、当該通気路が上面部に露出することを防ぐことができ、上面部を介して通気路に液体が侵入することを防ぐことができる。したがって、フランジ部の底面およびコイルケースの上面部のいずれに通気路が形成されていた場合にも、フランジ部の上側部分を通気路を覆う傘のように機能させ、外部から通気路に液体が侵入することを抑制することができる。これにより、水などの液体が防水キャップの頂部から下側に流れたとしても、当該液体が通気路を介してコイルケース内に侵入することを抑制することができる。
【0015】
また、前記防水キャップは、樹脂製またはゴム製であることが好ましい。このような構成によれば、防水キャップを樹脂製またはゴム製とすることで防水キャップの防水性能を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の電動弁は、上記いずれかに記載の電動弁用コイルと、前記装着対象としての電動弁本体と、を備えた電動弁であることを特徴とする。このような構成によれば、上述したように所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイルを用いて、電動弁を得ることができる。
【0017】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電動弁が、膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような構成によれば、上述したように所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイルを用いて、冷凍サイクルシステムを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイル、電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁の断面図。
【
図2】電動弁を構成する
図1の電動弁用コイルの要部拡大断面図。
【
図3】防水キャップを取り外した状態のコイルケースの平面図。
【
図4】(A)は、防水キャップの底面図であり、(B)は、
図4(A)のa-a線矢視断面図。
【
図5】(A)、(B)は、第1実施形態の防水キャップおよびコイルケースの一例を示す図。
【
図6】(A)、(B)は、第1実施形態の防水キャップおよびコイルケースの
図5に示す形態とは異なる一例を示す図。
【
図8】第2実施形態の電動弁を構成する
図7の電動弁用コイルの要部拡大断面図。
【
図9】(A)は、第2実施形態の防水キャップの底面図であり、(B)は、
図9(A)のb-b線矢視断面図。
【
図10】(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップの一例を示す図。
【
図11】コイルケースと、
図10に示す防水キャップと、の組合わせ図。
【
図12】(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップの
図10に示す形態とは異なる一例を示す図。
【
図13】コイルケースと、
図12(B)に示す防水キャップと、の組合せ図
【
図14】(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップの
図10、
図12に示す形態とは異なる一例を示す図。
【
図15】コイルユニットと、
図14(B)に示す防水キャップと、の組合わせ図。
【
図16】(A)は、第1変形例の防水キャップの底面図であり、(B)は、
図16(A)のd-d線矢視断面図であり、(C)は、第1変形例のコイルケースの平面図。
【
図17】
図16(A)、(B)に示す防水キャップと、
図16(C)に示すコイルケースと、の組合わせ図。
【
図18】(A)は、第2変形例の防水キャップの底面図であり、(B)は、
図18(A)のe-e線矢視断面図であり、(C)は、第2変形例のコイルケースの平面図。
【
図19】
図18(A)、(B)に示す防水キャップと、
図18(C)に示すコイルケースと、の組合せ図。
【
図20】本発明に係る冷凍サイクルシステムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を
図1~6に基づいて説明する。なお、以降の説明では、「上下」の概念は
図1における上下に対応する。また、後述するケース13の軸線Lの軸方向を軸線L方向とし、軸線Lまわりの周方向を単に「周方向」とする。また、軸線Lまわりの仮想円の径方向のうち一の方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向とする。これはあくまでも説明の便宜のためであり、本発明の実際の製造時、使用時における各方向と一致するとは限らず、当該各方向を限定するものではない。本発明にかかる電動弁100は、電動弁本体1と、電動弁用コイル2と、を備えている。
【0021】
電動弁本体1は、電動弁用コイル2の装着対象となる弁装置である。電動弁本体1は、例えばステンレス等の金属材料を用いて円筒状に形成されたハウジング10を備え、ハウジング10内部の弁室には、不図示の弁部材や弁部材によって開度が変更される弁ポート等が収容されている。ハウジング10の側壁には第1継手管11が接続されて弁室に連通し、ハウジング10の底壁には第2継手管12が接続されて弁室に連通している。ハウジング10の上端開口端縁には、有底筒状に形成されたケース13が、溶接などによって気密に組付けられている。ケース13内部には、駆動部としてのステッピングモータMを構成する不図示のマグネットロータや、マグネットロータの回転力を上述した弁部材に伝達し、軸線L方向への変位に変換する機構等が収容されている。これにより、ステッピングモータを駆動することにより、弁部材が弁ポートの開度を変化させ、弁室を介して第1継手管11と第2継手管12との間を流れる流体の流量が制御される。
【0022】
電動弁用コイル2は、上述したマグネットロータとともにステッピングモータMを構成するものであり、本発明における電動弁用コイルを構成している。電動弁用コイル2は、コイルユニット20と、コイルユニット20を収容するコイルケース30と、防水キャップ40と、を備えている。コイルユニット20は、樹脂製の材料を用いて略円筒状に形成されたボビン21と、ボビン21に巻きつけられる巻線22と、ボビン21にモールド成形等で一体に組み付けられる継鉄23と、を備えている。ボビン21の外周面には、径方向内方に凹む巻線積層部24が上下に並んで1対形成されている。巻線22は、1対の巻線積層部24のそれぞれに巻き付けられている。継鉄23は、ボビン21の内周面に沿う磁極歯25を備え、磁極歯25は、後述する嵌挿孔33の内周面の一部を構成している。
【0023】
コイルケース30は、内部にコイルユニット20を収容し、電動弁用コイル2の外殻を構成するものであり、例えば、樹脂材料等を用いて略円筒状に形成されている。コイルケース30は、周方向に延びてコイルユニット20を収容する周壁部31と、周壁部31の上端部に連続する環状の上壁部32と、軸線Lを中心として上下方向に貫通する嵌挿孔33と、を備えている。周壁部31は、その内径寸法が、コイルユニット20の外径寸法よりも大きく形成され、その軸線L方向の寸法がコイルユニット20の軸線L方向の寸法よりも大きく形成されている。周壁部31の内周面とコイルユニット20の外周面との間には、電動弁用コイル2の製造前の状態で隙間が形成されており、この隙間には、モールド樹脂Rが注入されることとなっている。
【0024】
上壁部32の中央部は、上方に突出する台座34を構成している。台座34は、
図3に示すように、その外形が平面視で角丸ひし形状に形成され、その上面は、後述する防水キャップ40のフランジ部42の底面43に当接する上面部35となっている。上面部35の中心、すなわち上壁部32の中心には、軸線Lと同軸で嵌挿孔33に連通する貫通孔36が形成されている。実際、図面において、コイルケース30の上部の孔のことを貫通孔36とし、ボビン21の内周部分の孔のことを嵌挿孔33としているが、この貫通孔36と嵌挿孔33とは、同一中心軸Lで、同一内径寸法に形成されている。このため、貫通孔36と嵌挿孔33は、一体の孔ではないが軸線L方向に連続している孔である。貫通孔36の周縁部には、下方に凹む凹部37が、Y方向に対向して合計2個形成されている。すなわち、凹部37は、上面部35(上壁部32)において周方向に均等間隔で複数設けられている。凹部37は、例えば、
図1、
図2、
図3に示すように、貫通孔36の上端を切り欠いて形成した上面部35を貫通する切欠きであってもよく、また、貫通しない切欠きであってもよい。また、図示はしないが、貫通孔36の上端を切り欠かず、上面部35を貫通する孔(後述する防水キャップ40の凸部44が嵌合可能なように、凸部44と同様な長方形形状の孔等)でもよい。
【0025】
このような複数の切欠きや孔で凹部37を形成することで、以下のように、コイルケース30内部の構造に影響を与え難くすることができる。すなわち、一般的に、コイルケース(本実施形態のコイルケース30に相当)に防水キャップ(本実施形態の防水キャップ40に相当)を取り付ける場合、コイルケース上部の貫通孔(本実施形態の貫通孔36に相当)の径を嵌挿孔(本実施形態の嵌挿孔33に相当)よりも大きくして段付き孔とすることが想定され、この大径化した貫通孔に対し、防水キャップ側に設けられた周方向に配置される凸部を嵌合させることが想定される。しかしながら、この場合、コイルユニット(本実施形態のコイルユニット20に相当)の上面を構成する継鉄部分(本実施形態の継鉄23に相当)とボビン部分(本実施形態のボビン21に相当)の全周が、大径化した貫通孔によって露出した状態となり、結露水等の液体(水分等)が継鉄部分とボビン部分の隙間から侵入し易くなり、絶縁劣化するおそれがある。これに対し、数箇所の凹部37の形成により、上記継鉄部分とボビン部分の露出が全周ではなくなり、当該部分の露出面積が小さくなるため、結露水等の液体(水分等)が継鉄部分とボビン部分の隙間から侵入し難くなり、絶縁劣化するリスクが少なくなる。このため、複数の切欠きや孔で凹部37を形成することがより好ましい。このように形成された凹部37は、後述する防水キャップ40の凸部44と互いに係合することで、コイルケース30および防水キャップ40互いの軸線Lまわりの周方向の位置を位置決めする位置決め部Aを構成している。嵌挿孔33は、上述した装着対象としての電動弁本体1のケース13を挿通させる部分であり、軸線L方向に延びて形成されている。嵌挿孔33は、上端開口が上述した貫通孔36の下端開口に連通し、下端開口が下方に開口している。
【0026】
防水キャップ40は、コイルケース30に固定される蓋部材であり、樹脂製またはゴム製の材料を用いて形成されている。防水キャップ40は、有底筒状のキャップ本体41を備えている。キャップ本体41は、その底壁(
図1に示すように、コイルケース30に取り付けられた状態では、上側の壁部となる部分)が中心に向かうに従って底側に凸となるように傾斜して形成されている。
図4に示すように、キャップ本体41の開口縁部には、径方向に延びる鍔状のフランジ部42が形成されている。フランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44が、フランジ部42の内周縁部に沿って合計2個形成され、Y方向に対向している。すなわち、凸部44は、フランジ部42の底面43から突出して周方向に均等間隔で複数設けられている。凸部44は、軸線L方向から見て長方形形状に形成されている。凸部44は、上述した凹部37とともに位置決め部Aを構成している。このように構成された防水キャップ40は、コイルケース30の上壁部32に固定される。
【0027】
防水キャップ40をコイルケース30に取り付ける際には、
図2に示すように、フランジ部42の底面43をコイルケース30の上面部35とを軸線L方向に対向させるとともに、凸部44と凹部37とを軸線L方向に対向させた状態で、防水キャップ40とコイルケース30とを互いに近づけていく。これにより、凸部44が凹部37に嵌合するとともに、フランジ部42の底面43が上面部35に当接する。これにより、防水キャップ40はコイルケース30に固定される。この際、位置決め部A同士(凸部44および凹部37)の係合によって、コイルケース30および防水キャップ40の互いの軸線Lまわりの周方向の位置が決まる。なお、この際、防水キャップ40は、凸部44と凹部37との嵌合のみによって上壁部32に固定されてもよいが、凸部44と凹部37との嵌合に加えて接着あるいは溶着により上壁部32に固定されてもよい。
【0028】
そして、このように構成した電動弁用コイル2は、電動弁本体1に装着される。この際、電動弁本体1のケース13を下側から上側に向かって嵌挿孔33に挿入し、嵌挿孔33に挿通させる。この状態の電動弁本体1と電動弁用コイル2との固定方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、ブラケットのような部材を電動弁本体1と電動弁用コイル2との間に介在させて電動弁本体1と電動弁用コイル2とを固定してもよいし、ケース13に形成されたディンプル14(
図1に図示)に係合する突起等をコイルケース30に設け、これらの係合によって電動弁本体1と電動弁用コイル2とを固定してもよい。
【0029】
なお、実施形態では、凹部37をコイルケース30の上壁部32に2個形成し、凸部44を防水キャップ40のフランジ部42の底面43に2個形成して位置決め部Aを構成したが、位置決め部Aの構成はこれらに限られない。
図5(A)、(B)は、第1実施形態の防水キャップ40およびコイルケース30の一例を示す図である。
図6(A)、(B)は、第1実施形態の防水キャップ40およびコイルケース30の
図5に示す形態とは異なる一例を示す図である。
図5に示す構成では、上壁部32における貫通孔36の周縁に、下方に凹む凹部37aが、Y方向に対向して合計2個形成されるとともに、X方向に対向して合計2個形成されている(すなわち、合計4個形成されている)。そして、防水キャップ40におけるフランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44aが形成されている。凸部44aは、Y方向に対向する2個と、X方向に対向する2個とが、フランジ部42の内周縁部に沿って合計4個形成されている。凸部44aは、軸線L方向から見て長方形形状に形成されている。凹部37aおよび凸部44aは、互いに位置決め部Aを構成している。
【0030】
図6に示す構成では、上壁部32における貫通孔36の周縁に、下方に凹む凹部37bが、貫通孔36周縁に沿って周方向に合計12個形成されている。そして、防水キャップ40におけるフランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44bが形成されている。凸部44bは、フランジ部42の内周縁部に沿って周方向に12個形成されている。前述の第一実施形態や、
図5に示す一例の構成では、凸部44、44aの形状は、軸線L方向から見て長方形形状に形成されていたが、
図6に示す一例の構成では、凸部44bの形状は、軸線L方向から見てフランジ部42の外周に沿うように長方形が湾曲した形状となっている。凹部37bおよび凸部44bは、互いに位置決め部Aを構成している。なお、凹部37、37a、37bおよび凸部44、44a、44bの配置は逆になっていてもよい。すなわち、コイルケース30の上壁部32に凸部44、44a、44bを形成し、防水キャップ40のフランジ部42の底面43に凹部37、37a、37bを形成してもよい。このように、位置決め部Aは、貫通孔36の周縁またはフランジ部42(キャップ本体41)のうち一方に設けられる少なくとも1個の凹部37と、貫通孔36の周縁またはフランジ部42のうち他方に設けられる少なくとも1個の凸部44と、を備えている。
【0031】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図20に基づいて説明する。
図20は、本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
図20において、符号100は上記電動弁100を用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は、室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100(膨張弁)、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0032】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、
図20に実線の矢印で示すように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁としての電動弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。一方、暖房運転時には、
図20に破線の矢印で示すように、圧縮機500で圧縮された冷媒は、流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁としての電動弁100、室外熱交換器200、そして、圧縮機500の順に循環し、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。
【0033】
このような本発明によれば、コイルケース30および防水キャップ40にそれぞれ設けられた位置決め部Aを互いに係合させ、防水キャップ40をコイルケース30に固定することができるので、防水キャップ40のコイルケース30への組付けを容易にすることができる。また、位置決め部A同士の係合によって、コイルケース30および防水キャップ40の互いの軸線Lまわりの周方向の位置が決まることから、防水キャップ40のコイルケース30に対する周方向および径方向の位置ずれを抑制することができ、防水キャップ40の防水機能を維持することができる。したがって、所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイル2を提供することができる。
【0034】
また、このような構成によれば、凹部37と凸部44とを嵌合させることで防水キャップ40を簡易にコイルケース30の上壁部32に組付けることができる。また、凹部37と凸部44との嵌合により、コイルケース30および防水キャップ40の互いの軸線Lまわりの周方向の位置が決まることから、防水キャップ40のコイルケース30に対する周方向および径方向の位置ずれを抑制することができる。
【0035】
また、上記構成によれば、凸部44と凹部37との嵌合に加えて接着あるいは溶着により防水キャップ40を上壁部32に固定することができることで、より強固に防水キャップ40をコイルケース30に固定することができる。また、この場合、凸部44と凹部37とを嵌合した状態で上記接着あるいは溶着が行われる。これによれば、凸部44と凹部37とがない面同士の接着あるいは溶着と比較して凹凸があることで、接着される部分の面積が増えることから、より強固に防水キャップ40をコイルケース30に固定することができる。
【0036】
また、凸部44および凹部37は、貫通孔36の周縁部に沿って周方向に均等間隔で複数設けることができるので、コイルケース30に対する防水キャップ40の周方向および径方向の変位を複数個所で抑制することができる。これにより、防水キャップ40のコイルケース30に対する周方向および径方向の位置ずれをより一層抑制することができる。
【0037】
また、防水キャップ40を樹脂製またはゴム製とすることで、防水キャップ40の防水性能を向上させることができる。
【0038】
そして、このように所定の防水性能を確保しつつ組付けを容易にすることができる電動弁用コイル2を用いて、電動弁100を得ることができ、この電動弁100を膨張弁として用いて、冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態を
図7~15に基づいて説明する。
図7に示すように、電動弁101は、第1実施形態と同様に電動弁本体1と、電動弁用コイル2と、を備えている。この第2実施形態では、防水キャップ40’とコイルケース30’の構造が第1実施形態と異なっている。
図8に示すように、防水キャップ40’のフランジ部42の底面43には、上方に凹む凹溝状に形成され、防水キャップ40’の組み付け後に径方向に延びる孔となる通気孔45(通気路)が形成されている。なお、通気孔45は、防水キャップ40’の組み付け後に孔となるのに対し、防水キャップ40’の組付け前は凹溝状であるが、以降の記載では、防水キャップ40’単品であっても凹部とは記載せず、通気孔45と表すこととする。
図9に示すように、通気孔45は、フランジ部42の底面43に合計2個形成され、X方向に対向している。通気孔45は、フランジ部42の径方向内縁から径方向外縁に亘って形成され、防水キャップ40’の内外を連通している。通気孔45の形成により、例えば、結露等により生じたコイルケース30’内の水分が、通気孔45を介して蒸発しやすくなっている。そして、第2実施形態では、フランジ部42とコイルケース30’の上面部35’の径方向の大きさが第1実施形態と異なっており、
図8に示すように、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45が設けられた箇所における軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45が設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部35’の外周端35’aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。
【0040】
なお、
図9に示す通気孔45は、凹溝状で合計2個形成したが、通気孔45の形状や個数はこれに限られず、適宜変更してよい。例えば、軸線L方向に肉厚を厚く形成したフランジ部42を径方向に貫通する孔で通気孔45を形成してもよいし、防水キャップ40’のフランジ部42以外の側面に径方向に貫通する孔で通気孔45を形成してもよい。また、通気孔45を1個としてもよいし、通気孔45を3個以上としてもよい。すなわち、通気孔45は、1または複数の凹溝あるいは孔から構成されている。
図10(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップ40’の一例を示す図である。
図10(A)は、防水キャップ40’の底面図を示しており、
図10(B)は、
図10(A)のc-c線矢視断面図を示している。この防水キャップ40’では、
図10(A)に示す底面視で、2個の凸部44を挟んだX方向一方側に、3個の通気孔45aがフランジ部42の内周縁部に沿って周方向に均等間隔で設けられている。また、X方向他方側に3個の通気孔45aがフランジ部42の内周縁部に沿って周方向に均等間隔で設けられている。すなわち、防水キャップ40’には、2個の凸部44と、6個の通気孔45aが形成されている。
【0041】
図11は、コイルケース30’と
図10に示す防水キャップ40’との組合わせ図である。この組合わせ図では、防水キャップ40’をコイルケース30’に固定した状態で、軸線L方向上側から各構成を透過させている。ここで、
図8でも説明したように、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45aが設けられた箇所における軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45aが設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部35’の外周端35’aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。なお、第2実施形態では、通気孔45aは、防水キャップ40’におけるフランジ部42の底面43に形成したが、これに限らず、通気孔45aは、コイルケース30’の上面部35’に形成してもよい。この場合、例えば、上面部35’に、上方に開口し貫通孔36の開口縁部から径方向外方に延びる凹部等を形成し、当該凹部等を、防水キャップ40’の取り付け後に通気孔45aとすることができる。
【0042】
そして、フランジ部42の底面43および上面部35’のいずれに通気孔45aを設けた場合にも、上述したように半径寸法L1>半径寸法L2となるように設定されている。したがって、角丸ひし形状の上面部35’の外周端35’aのうち、防水キャップ40’の外周部からはみ出る部分(例えば、角丸ひし形状の上面部35’のうち、長手方向の一端側や他端側に該当する部分)には、通気孔45が位置しないように、防水キャップ40’の通気孔45が配置されている。このため、防水キャップ40’が固定された状態のコイルケース30’を軸線L方向から見た場合に、フランジ部42の外周端42aが、上面部35’の外周端35’aよりも径方向外方に突出することとなる。このため、通気孔45a付近でコイルケース30’の上面部35’が上面方向から見て露出しないので、コイルケース30の上部に配置された配管等に付着した結露水等の水滴の落下等により、上面部35’に水等の液体が溜まることがなく、上面部35’を介して通気孔45aに液体が侵入することを防ぐことができる。また、これは例えば、上面部35’に通気孔45aが形成されていた場合も同様であり、当該通気孔45aが上面部35’に露出することを防ぐことができ、上面部35’を介して通気孔45aに液体が侵入することを防ぐことができる。
【0043】
したがって、フランジ部42の底面43およびコイルケース30’の上面部35’のいずれに通気孔45aが形成されていた場合にも、フランジ部42の上側部分が通気孔45aを覆う傘のように機能し、外部から通気孔45a内に液体が侵入することが抑制される。なお、この構成によれば、例えば、コイルケース30’の姿勢が変化した場合にも、フランジ部42の外周端42aが、上面部35’の外周端35’aよりも径方向外方に突出していることで、コイルケース30’が水平方向に対して多少傾いた場合にも、フランジ部42の上側部分が上記傘のように機能し好適である。
【0044】
図12(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップ40’の
図10に示す形態とは異なる一例を示す図である。
図12(A)に示す防水キャップ40’では、フランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44aが形成されている。凸部44aは、Y方向に対向する2個と、X方向に対向する2個と、がフランジ部42の内周縁部に沿って合計4個形成されている。凸部44aは、軸線L方向から見て長方形形状に形成されている。そして、フランジ部42の底面43には、通気孔45bが、X方向およびY方向に交差する交差方向に対向して合計2個形成されている。
図12(B)に示す防水キャップ40’では、フランジ部42の底面43の内周縁部には、下方に突出する凸部44aが形成されている。凸部44aは、Y方向に対向する2個と、X方向に対向する2個と、がフランジ部42の内周縁部に沿って合計4個形成されている。凸部44aは、軸線L方向から見て長方形形状に形成されている。そして、フランジ部42の底面43には、通気孔45cが、X方向およびY方向に交差する交差方向に対向して合計4個形成されている。
【0045】
図13は、コイルケース30’と、
図12(B)に示す防水キャップ40’との組合わせ図である。この組合わせ図も、
図11に示す組合わせ図と同様に、防水キャップ40’をコイルケース30’に固定した状態で、軸線L方向上側から各構成を透過させている。
図13に示す防水キャップ40’およびコイルケース30’においても、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45cが設けられた箇所の全てで、軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45cが設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部35の外周端35’aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。
【0046】
図14(A)、(B)は、第2実施形態の防水キャップ40’の
図10、
図12に示す形態とは異なる一例を示す図である。
図14(A)に示す防水キャップ40’では、フランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44bがフランジ部42の内周縁部に沿って、周方向に合計12個形成されている。そして、フランジ部42の底面43には、通気孔45bが、X方向およびY方向に交差する交差方向に対向して合計2個形成されている。
図14(B)に示す防水キャップ40’では、フランジ部42の底面43には、下方に突出する凸部44bがフランジ部42の内周縁に沿って、周方向に合計12個形成されている。そして、フランジ部42の底面43には、通気孔45cが、X方向およびY方向に交差する交差方向に対向して合計4個形成されている。
図14(A)、(B)に示す凸部44bは、上述した
図6に示す一例の凸部44bと同様の形状に形成されている。すなわち、凸部44bの形状は、軸線L方向から見てフランジ部42の外周に沿うように長方形が湾曲した形状となっている。
【0047】
図15は、コイルケース30’と
図14(B)に示す防水キャップ40’との組合わせ図である。この組合わせ図も、上述した組合わせ図と同様に、防水キャップ40’をコイルケース30’に固定した状態で、軸線L方向上側から各構成を透過させている。
図15に示す防水キャップ40’およびコイルケース30’においても、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45cが設けられた箇所の全てで、軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45cが設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部35’の外周端35’aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。
【0048】
このような構成によれば、第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。また、このような構成によれば、例えば、結露等により生じたコイルケース内の水分を通気孔45(通気路)を介して蒸発させやすくすることができる。
【0049】
また、通気孔45は、1または複数の凹溝あるいは孔から構成することができるので、通気孔45の個数や形状について、水のかかり易さ、水の溜まり易さ、内部水分の蒸発し易さ等、対象となる課題に対応できるように選択の幅を増やすことができる。
【0050】
また、第2実施形態では、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45が設けられた箇所における軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45が設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部35’の外周端35’aまでの半径寸法L2よりも大きく設定されていた。このため、防水キャップ40’が固定された状態のコイルケース30’を軸線L方向から見た場合に、フランジ部42の外周端42aが、上面部35’の外周端35’aよりも径方向外方に突出することとなる。このため、通気孔45a付近でコイルケース30’の上面部35’が上面方向から見て露出しないので、コイルケース30の上部に配置された配管等に付着した結露水等の水滴の落下等により、上面部35’に水等の液体が溜まることがなく、例えば、フランジ部42の底面43に通気孔45aが形成されていた場合に、上面部35’を介して通気孔45aに液体が侵入することを防ぐことができる。また、例えば、上面部35’に通気孔45aが形成されていた場合に、通気孔45aが上面部35’に露出することを防ぐことができ、上面部35’を介して通気孔45aに液体が侵入することを防ぐことができる。
【0051】
したがって、フランジ部42の底面43およびコイルケース30’の上面部35’のいずれに通気孔45aが形成されていた場合にも、フランジ部42の上側部分を通気孔45aを覆う傘のように機能させ、外部から通気孔45aに液体が侵入することを抑制することができる。これにより、水などの液体が防水キャップ40’の頂部から下側に流れたとしても、当該液体が通気孔45を介してコイルケース30’内に侵入することを抑制することができる。
【0052】
以上、電動弁100の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0053】
図16(A)は、第1変形例の防水キャップ40’の底面図であり、
図16(B)は、
図16(A)のd-d線矢視断面図であり、
図16(C)は、第1変形例のコイルケース60の平面図である。防水キャップ40’は、上述した第2実施形態の防水キャップ40’と同様の構成であるため、各構成に同様の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
コイルケース60では、上壁部32の中央部は、上方に突出する台座61を構成している。台座61は、
図16(C)に示すように、その外形が平面視で円形に形成され、その上面は、フランジ部42の底面43に当接する上面部62を構成している。上面部62の中心、すなわち上壁部32の中心には、軸線Lと同軸で嵌挿孔33に連通する貫通孔63が形成されている。貫通孔63の周縁部には、下方に凹む凹部37が、Y方向に対向して合計2個形成されている。
図17は
図16(A)、(B)に示す防水キャップ40’と
図16(C)に示すコイルケース60との組合わせ図である。この組合わせ図では、防水キャップ40’部分のみ、軸線Lに沿って切断された断面図となっている。
図17に示す防水キャップ40’およびコイルケース60においても、防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45が設けられた箇所の全てで、軸線Lの中心からフランジ部42の外周端42aまでの半径寸法L1は、通気孔45が設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部62の外周端62aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。
【0054】
図18(A)は、第2変形例の防水キャップ70の底面図であり、
図18(B)は、
図18(A)のe-e線矢視断面図であり、
図18(C)は、第2変形例のコイルケース80の平面図である。防水キャップ70は、上述した実施形態および変形例の防水キャップ40と比較して径寸法の大きい鍔状の大径フランジ部71を備えている。大径フランジ部71の底面72には、下方に突出する凸部44が、大径フランジ部71の内周縁部に沿って合計2個形成され、Y方向に対向している。また、大径フランジ部71の底面72には、上方に凹む凹溝状に形成され、径方向に延びる通気孔73(通気路)が、合計2個形成され、X方向に対向している。コイルケース80では、上壁部32の中央部は、上方に突出する台座81を構成している。台座81は、外形が平面視で円形に形成されており、大径フランジ部71の全体と当接可能なように、上壁部32の大部分を占めている。
【0055】
台座81の上面は、大径フランジ部71の底面72に当接する上面部82を構成している。上面部82の中心、すなわち上壁部32の中心には、軸線Lと同軸で嵌挿孔33に連通する貫通孔83が形成されている。貫通孔83の周縁部には、下方に凹む凹部37が、Y方向に対向して合計2個形成されている。
図19は
図18(A)、(B)に示す防水キャップ70と
図18(C)に示すコイルケース80との組合わせ図である。この組合わせ図では、防水キャップ70部分のみ、軸線Lに沿って切断された断面図となっている。
図19に示す防水キャップ70およびコイルケース80においても、防水キャップ70の組み付け後の状態において、通気孔73が設けられた箇所の全てで、軸線Lの中心から大径フランジ部71の外周端71aまでの半径寸法L1は、通気孔73が設けられた箇所における軸線Lの中心から上面部82の外周端82aまでの半径寸法L2よりも大きくなるように設定されている。
【0056】
なお、上記の各種実施形態および変形例の説明に限定されるものではなく、防水キャップ40’のフランジ部42の通気孔45のある部分の外周部分は、下向に傾斜していてもよい。この場合、当該傾斜がない場合よりも、更に液体が防水キャップ40’内に侵入し難くなる。また、この場合、フランジ部42の通気孔45のある部分の外周部分は、コイルケース30’の上面部35’の外周端35’aよりも径方向外方に僅かに離れる位置までは平坦に形成され、この平坦に形成された部分よりも径方向外方において下方に傾斜していてもよい。この構成においても、当該傾斜がない構成と比較して、更に液体が防水キャップ40’内に侵入し難くなる同様な効果となる。
【0057】
また、フランジ部42の下端部に設ける凹溝状の凹部(防水キャップ40’の組み付け後の状態において、通気孔45となる部分)は、軸線Lから外周に行くにしたがって下方に傾斜(この場合、凹部の下面は水平とし、凹部の上面が外周に向かうにしたがって下方に傾斜するようにする)していてもよい。この構成においても、当該傾斜がない構成と比較して、更に液体が防水キャップ40’内に侵入し難くなる。また、防水キャップ40’の上部は、平坦状に形成されていてもよいし、内部に空間を備える半球体状(ドーム状)に形成されていてもよい。また、防水キャップ40、40’を位置決めする位置決め部Aとしての凹部37、37a、37b及び、凹部37、37a、37bに嵌合する凸部44、44a、44bの形状としては、上記の各実施形態や変形例で説明のように、軸線L方向から見て長方形形状や、長方形が湾曲した形状に限定するものではなく、凹部37、37a、37bと凸部44、44a、44bが嵌合し、周方向及び径方向の位置ずれを抑制する機能を有していれば、軸線L方向から見て正方形形状や、丸形状や、楕円形状等に形成されていてもよい。
【0058】
なお、上述の各実施形態および変形例では、通気路としての通気孔45aとして機能する凹溝状の凹みは、防水キャップ40におけるフランジ部42の底面43側か、または、コイルケース30’の上面部35’側に形成すると記載したが、この凹みは、フランジ部42の底面43側と、上面部35’側の両方に形成されていてもよい。また、上述の実施形態および変形例では、位置決め部Aは、貫通孔36の周縁、または、キャップ本体41のうちの一方に設けられる凹部37、37a、37bと、他方に設けられる凸部44、44a、44bと、で構成することとしたが、各凹部37、37a、37bと凸部44、44a、44bとが嵌合すれば、貫通孔36の周縁、または、キャップ本体41のうちの一方に凹部37、37a、37bと凸部44、44a、44bの両方を、例えば周方向に互い違いになる等するように配置し、他方にも凹部37、37a、37bと凸部44、44a、44bの両方を、例えば周方向に互い違いになる等するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
A 位置決め部
L 軸線
1 電動弁本体(装着対象)
2 電動弁用コイル
22 巻線
30 コイルケース
33 嵌挿孔
40 防水キャップ