(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162795
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】演算装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20241114BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H02M3/00 H
G01K1/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078701
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良尚
(72)【発明者】
【氏名】仲 寛徳
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB81
5H730EE59
5H730FD61
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】省電力モードにおける消費電力を低減しつつ温度検出を適切に継続するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る演算装置は、温度検出部を備え、該温度検出部の検出結果を演算する演算装置であって、第1電圧に基づいて演算処理を行う第1処理部と、第2電圧に基づいて演算処理を行う第2処理部とを備えると共に、動作モードとして、前記第1電圧および前記第2電圧の双方が供給される第1モードと、該第1電圧の供給が抑制される第2モードとを含み、前記温度検出部は、前記第1モードにおいて検出結果を前記第1処理部に出力し且つ前記第2モードにおいて検出結果を前記第2処理部に出力するセレクタを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出部を備え、該温度検出部の検出結果を演算する演算装置であって、
第1電圧に基づいて演算処理を行う第1処理部と、第2電圧に基づいて演算処理を行う第2処理部とを備えると共に、動作モードとして、前記第1電圧および前記第2電圧の双方が供給される第1モードと、該第1電圧の供給が抑制される第2モードとを含み、
前記温度検出部は、前記第1モードにおいて検出結果を前記第1処理部に出力し且つ前記第2モードにおいて検出結果を前記第2処理部に出力するセレクタを含む
ことを特徴とする演算装置。
【請求項2】
前記第2電圧は、前記第1電圧より小さい
ことを特徴とする請求項1記載の演算装置。
【請求項3】
前記第1処理部は、アナログ回路で構成された割合が前記第2処理部より大きい
ことを特徴とする請求項2記載の演算装置。
【請求項4】
前記第1処理部および前記第2処理部は相互に通信可能であり、
前記第1処理部および前記第2処理部の一方は、他方が前記セレクタから受け取った検出結果に基づいて、該一方が前記セレクタから受け取った検出結果を補正する
ことを特徴とする請求項1記載の演算装置。
【請求項5】
前記第1モードおよび前記第2モードを切り替えるための操作入力を受け付ける操作入力部を更に備え、
前記第1処理部および前記第2処理部は相互に通信可能であり、
前記第1モードから前記第2モードに移行するための操作入力を前記操作入力部が受け付けた場合、前記セレクタは該移行の前に前記第2処理部に検出結果を出力し、前記第1処理部は、前記第1処理部が前記セレクタから受け取った検出結果と、前記第2処理部が前記セレクタから受け取った検出結果との差が基準以上のときには該移行を抑制する
ことを特徴とする請求項1記載の演算装置。
【請求項6】
前記差が前記基準以上のときには所定の通知を出力する通知部を更に備える
ことを特徴とする請求項5記載の演算装置。
【請求項7】
前記温度検出部は、前記第1電圧を受ける第1抵抗素子と、前記第2電圧を受ける第2抵抗素子と、それらの双方に対して直列に接続された電気素子とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の演算装置。
【請求項8】
前記電気素子は、第3抵抗素子である
ことを特徴とする請求項7記載の演算装置。
【請求項9】
前記電気素子は、整流素子である
ことを特徴とする請求項7記載の演算装置。
【請求項10】
前記セレクタは、前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子の其々と、前記電気素子との間の電気経路に配置される
ことを特徴とする請求項7記載の演算装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れか1項記載の演算装置と、
前記温度検出部の検出結果についての演算結果に基づいて駆動制御を行う駆動装置と、を備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度制御ないし温度管理を要する電子機器には、対象の温度を検出するための温度検出装置が一般に設けられうる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電力系統に基づいて動作する電子機器のなかには、一部の電力系統が抑制された省電力モードにおいても温度検出の継続が求められるものもある。よって、省電力モードにおいて消費電力を低減しつつ温度検出を適切に継続する技術が一般に求められうる。
【0005】
本発明は、発明者による上記課題の認識を契機として為されたものであり、省電力モードにおける消費電力を低減しつつ温度検出を適切に継続するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は演算装置にかかり、前記演算装置は、
温度検出部を備え、該温度検出部の検出結果を演算する演算装置であって、
第1電圧に基づいて演算処理を行う第1処理部と、第2電圧に基づいて演算処理を行う第2処理部とを備えると共に、動作モードとして、前記第1電圧および前記第2電圧の双方が供給される第1モードと、該第1電圧の供給が抑制される第2モードとを含み、
前記温度検出部は、前記第1モードにおいて検出結果を前記第1処理部に出力し且つ前記第2モードにおいて検出結果を前記第2処理部に出力するセレクタを含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、省電力モードにおける消費電力を低減しつつ温度検出を適切に継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】通常モードから省電力モードに移行する際の制御内容を示すフローチャート。
【
図3】省電力モードにおいて温度検出処理を実行するためのフローチャート。
【
図4】省電力モードから通常モードに移行する際の制御内容を示すフローチャート。
【
図5】通常モードから省電力モードに移行する際の制御内容を示すフローチャート。
【
図6】省電力モードから通常モードに移行する際の制御内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る演算装置10の構成例を示す。演算装置10は、詳細については後述とするが、温度の検出結果について演算処理を行う。演算装置10は、該演算結果に基づいて駆動制御を行う駆動装置を備える多様な電子機器に適用可能であり、例えば、電気熱変換素子を用いて熱エネルギーによりインクを吐出可能なインクジェットプリンタに適用されうる。
【0011】
演算装置10は、第1処理部11、第2処理部12、PMIC(電力管理集積回路)13、温度検出部14、不揮発性メモリ15、パワーキー16、及び、外部電源接続部25を備える。処理部11には、ASIC(特定用途向け集積回路)が用いられるものとし、電圧VDD1に基づいて所定の演算処理を行う。処理部12には、MCU(マイクロコントロールユニット)が用いられるものとし、電圧VDD1より小さい電圧VDD2に基づいて他の演算処理を行う。
【0012】
処理部11は、CPU(中央演算装置)18および検出結果取得部17を含む。処理部12は、CPU19、検出結果取得部20、メモリ21、PMIC制御部22、セレクタ制御部23および操作入力検出部24を含む。詳細については後述とするが、処理部12及び12は、それぞれ、検出結果取得部17及び20により温度検出部14から受け取った検出結果に基づいてCPU18及び19により所定の演算処理を行う。
【0013】
処理部11及び12は、所定の対象を駆動ないし制御するための演算処理を行うこともできる。処理部11は、アナログ回路で構成された割合が処理部12より大きく、処理部11では比較的大電力が一般に消費されうる。以下では、処理部11をASIC11と示し、処理部12をMCU12と示すが、処理部11及び12の其々は、駆動部、制御部などと表現されてもよいし、付随的に第1、第2、メイン、サブ等が付されて区別されてもよい。
ASIC11およびMCU12は、例えばI2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)等の公知の方式により相互通信可能とする。
【0014】
演算装置10は、動作モードとして、通常モード(第1モード)および省電力モード(第2モード)を含む。通常モードでは、ASIC11は電圧VDD1に基づいて動作し且つMCU12は電圧VDD2に基づいて動作し、省電力モードでは、ASIC11はスリープ状態となるのに対してMCU12は電圧VDD2に基づく動作を継続する。
尚、「電圧」は、接地電位に対する相対的な電位を示しうるが、上記動作モードの趣旨を考慮し、電流供給量を更に包含して「電力」と換言されてもよい。
【0015】
PMIC13は、第1電圧生成部(VDD1生成部)26および第2電圧生成部(VDD2生成部)27を含む。電圧生成部26及び27は、外部電源接続部25を介して供給された外部電圧に基づいて、電圧VDD1及びVDD2をそれぞれ生成する。即ち、PMIC13においては、通常モードでは電圧VDD1及びVDD2の双方が生成され、省電力モードでは電圧VDD2は生成される一方で電圧VDD1の生成が抑制される。
また、PMIC13は、上記生成された電圧VDD1及びVDD2の其々について電力供給の実行または停止を制御するための電圧生成制御部28を更に含む。本実施形態においては、電圧生成制御部28は、MCU12のPMIC制御部22から受け取った制御信号に基づいて電圧生成部26及び27の其々を制御可能とする。
【0016】
尚、ここでは理解の容易化のため、省電力モードにおいては、電圧VDD1が生成されないものとして説明するが、ASIC11は通常モードより小さい電力で部分的に動作してもよい。
【0017】
温度検出部14は、セレクタ30、抵抗素子31及び32、並びに、電気素子29を含む。セレクタ30にはマルチプレクサが用いられ、本実施形態では、出力B1及びB2並びに入力Sを含むものとする。抵抗素子31は、一端側にて電圧VDD1に接続され、他端側にてセレクタ30の出力B1に接続される。抵抗素子32は、一端側にて電圧VDD2に接続され、他端側にてセレクタ30の出力B2に接続される。抵抗素子31及び32は、本構成においてはプルアップ抵抗とも表現されうる。
また、電気素子29は、温度変化によって抵抗値が変動するように構成されればよく、その例としては抵抗素子、整流素子などが挙げられ、典型的にはサーミスタが用いられうる。電気素子29は、一端側にてセレクタ30の入力Sに接続され、他端側にて接地線に接続される(接地される。)。例えば、電気素子29は、整流素子の場合、アノード側にてセレクタ30の入力Sに接続され、カソード側にて接地線に接続される。
【0018】
セレクタ30は、セレクタ制御部23からの制御信号に基づいて入力Sを出力B1及びB2の一方に接続する。例えば、セレクタ30は、入力S及び出力B1が接続されている場合、素子29及び31の抵抗比に基づく電圧VDD1の分圧値(即ち、電気素子29に発生した電圧Vf)を、温度検出結果としてASIC11の検出結果取得部17に出力する。また、セレクタ30は、入力S及び出力B2が接続されている場合、素子29及び32の抵抗比に基づく電圧VDD2の分圧値Vfを、温度検出結果としてMCU12の検出結果取得部20に出力する。
【0019】
ASIC11において、検出結果取得部17は、このようにして温度検出部14から受け取った検出結果をアナログデジタル変換し、CPU18は、このようにして得られた検出結果をデジタル信号として信号処理する。同様に、MCU12において、検出結果取得部20は、このようにして温度検出部14から受け取った検出結果をアナログデジタル変換し、CPU19は、このようにして得られた検出結果をデジタル信号として信号処理する。これらの信号処理は、以下の説明において単に「温度検出処理」と表現されうる。
ここで、同一環境下においても、ASIC11の検出結果取得部17に入力される分圧値Vfと、MCU12の検出結果取得部20に入力される分圧値Vfとの間には、誤差が生じうる。これは、例えば、PMIC13により生成される電圧VDD1及びVDD2のズレ、抵抗素子31及び32の製造ばらつきに伴う抵抗値のズレ等に起因する。
【0020】
不揮発性メモリ15は、通常モードにおいて電圧VDD1に基づいて情報ないしデータの書込み/読出しが可能となっており、省電力モードから通常モードに復帰した後においても不揮発性メモリ15を活用可能である。不揮発性メモリ15には、フラッシュメモリ等、公知の記憶装置が用いられればよい。
【0021】
パワーキー16は、上記動作モードを切り替えるための操作入力部として機能する。例えば、通常モードの間にパワーキー16が押圧された場合には省電力モードに移行し、省電力モードの間にパワーキー16が押圧された場合には通常モードに移行する。詳細については後述とするが、MCU12は、操作入力検出部24によりパワーキー16に対する押圧の有無を検出し、それに応答して温度検出処理を行う。
尚、上記動作モードを切り替えるための操作入力は、パワーキー16の押圧に限られるものではなく、他の態様により行われてもよい。
【0022】
また、演算装置10は、所定の通知を行うための通知部91を更に備える。通知部91は、光源であってもよいし、音源であってもよいし、ディスプレイに画像を出力するための信号であってもよい。
【0023】
ところで、通常モードにおいてはASIC11では一般に比較的大電力が消費されることとなるが、動作周波数の増大、回路規模の増大等に伴い、電力消費量は更に大きくなりうる。温度検出処理は、例えば温度を高精度に検出すること等の目的により、電圧VDD1に基づいて動作するASIC11により行われるとよい。一方、省電力モードにおいては、ASIC11には電圧VDD1が供給されないため、及び/又は、ASIC11を無用に活性化させることを防止するため、本実施形態では温度検出処理はMCU12により行われる。これにより、省電力モードにおいても温度検出処理を継続的に実行可能となっている。
【0024】
図2は、通常モードから省電力モードに移行する際の制御内容を示すフローチャートである。移行前においては、セレクタ30において入力S及び出力B1が接続されており(出力B1が選択されており)、温度検出部14による温度の検出結果はASIC11(の検出結果取得部17)に出力される。
【0025】
ステップS101(以下、単に「S101」と示す。後述の他のステップについても同様とする。)では、操作入力検知部24がパワーキー16の押下を検出したことに応答して省電力モードへの移行が開始される。
S102では、パワーキー16に対する押下を検出に応答して、MCU12は、省電力モードへの移行が開始されることをASIC11に対して通知する。
S103では、該通知に応答して、ASIC11は、検出結果取得部17によりセレクタ30の出力B1の電圧Vfに基づいて温度検出処理を実行し、S104にて、その結果を検出温度として不揮発性メモリ15に格納する。
S105では、ASIC11は、省電力モードへの移行命令をMCU12に対して出力する。
S106では、移行命令に応答して、MCU12は、セレクタ制御部23によりセレクタ30の入力Sの接続先を出力B2に切り替え、それにより電圧VDD2に基づく分圧値Vfを出力B2に発生させる。
S107では、入力Sの接続先が切り替えられたことに応答して、MCU12は、検出結果取得部20によりセレクタ30の出力B2の電圧Vfに基づいて温度検出処理を実行し、S108にて、その結果を検出温度としてASIC11に出力する。
【0026】
S109では、ASIC11は、S103にて得られた検出温度と、S108にてMCU12から受け取った検出温度との差を算出し、その差が基準を満たすか否か(例えば、許容範囲内か否か)を判定する。該差が基準を満たす場合にはS111に進み、該差が基準以上の場合にはS110に進む。
【0027】
S110では、ASIC11での検出温度と、MCU12での検出温度との差が基準以上であったものとして、通知部91により所定の通知を行う。この通知は、ユーザに対して通知するものであってもよいが、演算装置10をシャットダウンないしリブートするものであってもよい。その後、S113にて本フローチャートは終了となり、即ち、省電力モードへの移行は抑制されることとなる。
【0028】
S111では、ASIC11での検出温度と、MCU12での検出温度との差が基準を満たすものとして、ASIC11は、その差を示す情報を差分情報として不揮発性メモリ15に格納する。
S112では、MCU12は、PMIC制御部22により電圧生成部26を非活性化するための制御信号(休止信号)を出力し、電源制御部28により電圧VDD1の生成を抑制する。その後、S113にて本フローチャートは終了となり、即ち、省電力モードへの移行が完了となる。
【0029】
図3は、省電力モードにおいて温度検出処理を行うためのフローチャートである。移行後においては、セレクタ30において入力S及び出力B2が接続されており(出力B2が選択されており)、温度検出部14による温度の検出結果はMCU12(の検出結果取得部20)に出力される。
S201では、省電力モードに移行した後、MCU12は温度検出処理を開始する。
S202では、検出結果取得部20により検出結果を取得し、S203にて、それにより取得された検出温度をメモリ21に格納する。
S204では、所定時間(例えば1分)だけ待機する。
【0030】
S205では、省電力モードから通常モードへの復帰を示すパワーキー16に対する押下の有無を判定する。パワーキー16に対する押下があった場合にはS206に進み、通常モードに復帰して本フローチャートは終了となる。一方、パワーキー16に対する押下がない場合にはS202に戻り、即ち、MCU12による温度検出処理は所定周期で実行される。
【0031】
尚、ここでは、通常モードから省電力モードへの移行に対して、省電力モードから通常モードへの移行を復帰と表現するが、何れも移行と表現されてもよい。
【0032】
図4は、演算装置10の省電力モードから通常モードに復帰する際の制御内容を示すフローチャートである。復帰前においては、セレクタ30において入力S及び出力B2が接続されており(出力B2が選択されており)、温度検出部14による温度の検出結果はMCU12(の検出結果取得部20)に出力される。
【0033】
S301では、操作入力検知部24がパワーキー16に対する押下を検出したことに応答して、通常モードへの移行が開始される。
S302では、通常モードへの移行に伴い、MCU12は、PMIC制御部22により電圧生成部26を制御して電圧VDD1の生成を開始させる。
【0034】
S303では、MCU12は、セレクタ制御部23によりセレクト30の入力Sの接続先を出力B1に切り替え、それにより電圧VDD1に基づく分圧値Vfを出力B1に発生させる。即ち、ASIC11は、検出結果取得部17により、出力B1の電圧Vfに基づいて温度検出処理を実行することとなる。
【0035】
S304では、ASIC11は、S201にて取得された省電力モードにおける検出温度の推移を示す情報をMCU12から取得する。
S305では、S304にて得られた省電力モードにおける検出温度の推移と、S111にて不揮発性メモリ15に格納された差分情報とに基づいて、MCU12の検出結果取得部20により取得された検出結果を補正する。これにより、ASIC11での検出温度と、MCU12での検出温度との間に生じうる誤差を解消可能とする。
S306では、ASIC11による温度検出処理を再開することとし、本フローチャートは終了となり、即ち、通常モードへの復帰を完了とする。
【0036】
本実施形態によれば、通常モードにおいてはASIC11にて温度検出処理が行われ、省電力モードに移行する際には、ASIC11及びMCU12間に生じうる検出温度の誤差が差分情報として不揮発性メモリ15に格納される。省電力モードにおいてはMCU12にて温度検出処理が行われ、その結果がメモリ21に格納される。通常モードに復帰する際には、ASIC11は、メモリ21に格納された検出結果をMCU12から受け取り、不揮発性メモリ15に格納された差分情報(上記誤差)に基づいて補正する。これにより、動作モードに関わらず温度検出処理の継続的な実行を適切に実現可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態について、通常モードから省電力モードに移行する際の制御内容の他の例を示すフローチャートである。
S401~S403は、それぞれ、前述の第1実施形態のS101~S103(
図2参照)同様である。
【0038】
S404では、ASIC11は、省電力モードへの移行命令と共に、S403にて検出結果取得部17により取得された温度検出処理の結果を検出温度としてMCU12に送信する。S405では、MCU12は、該送信された検出温度をメモリ21に格納する。
【0039】
S406~S407は、それぞれ、前述の第1実施形態のS106~S107同様である。S408~S409は、それぞれ、前述の第1実施形態のS109~S110同様である。
S410では、MCU12は、ASIC11及びMCU12間での検出温度との差を差分情報としてメモリ21に格納する(即ち、本実施形態は、不揮発性メモリ15に格納するS111とは格納先の観点で異なる。)。
S411~S412は、それぞれ、前述の第1実施形態のS112~S113同様である。
【0040】
即ち、ASIC11及びMCU12間に生じうる検出温度の誤差を解消するための補正を行うのに際して、第1実施形態では不揮発性メモリ15が活用されるのに対して、本実施形態ではメモリ21が活用される、という点で主に異なる。メモリ21には、DRAM等の公知の記憶装置が用いられればよく、メモリ21は、更に、通常モード及び省電力モードにおいてCPU19のワークメモリとしても機能しうる。
本実施形態によれば、比較的安価なメモリ21を用いて且つ不揮発性メモリ15を用いないで前述の第1実施形態同様の効果が得られる。また、上記補正に要する情報をメモリ21にて一括管理可能となるため、比較的簡便に第1実施形態同様の機能を実現可能と謂える。
【0041】
図6は、演算装置10の省電力モードから通常モードに復帰する際の本実施形態に係る制御内容を示すフローチャートである。S501~S504は、それぞれ、前述の第1実施形態のS301~S304(
図4参照)同様である。S505は、前述の第1実施形態のS306同様である。
即ち、本実施形態では、S305の補正を、メモリ21に格納された情報のみに基づいて行うことが可能であり、不揮発性メモリ15を参照する必要がない。そのため、ASIC11及びMCU12間に生じうる検出温度の誤差を解消するための補正を比較的速やかに実行可能となる。
【0042】
第1~第2実施形態では、ASIC11及びMCU12間に生じうる検出温度の誤差を解消するための補正は、省電力モードから通常モードに復帰する際に行われるものとしたが、そのタイミングは本例に限られるものではない。例えば、該補正は、通常モードから省電力モードへの移行の際に行われてもよく、それによっても動作モード間に発生しうる誤差が解消されうる。
【0043】
(その他)
実施形態においては、個々の要素をその主機能に基づく表現で命名したが、実施形態で述べられた機能は副機能であってもよく、その表現に厳密に限定されるものではない。また、その表現は同様の表現に置換え可能とする。同様の趣旨で、「部(unit、pоrtiоn)」という表現は、「ツール(tооl)」、「部品(cоmpоnent)」、「部材(member)」、「構造体(structure)」、「組立体(assembly)」等に置換え可能である。或いは、其れらは省略されてもよいし付されてもよい。
【0044】
実施形態にて説明された幾つかの特徴は次のとおりである:
[1]
温度検出部を備え、該温度検出部の検出結果を演算する演算装置であって、
第1電圧に基づいて演算処理を行う第1処理部と、第2電圧に基づいて演算処理を行う第2処理部とを備えると共に、動作モードとして、前記第1電圧および前記第2電圧の双方が供給される第1モードと、該第1電圧の供給が抑制される第2モードとを含み、
前記温度検出部は、前記第1モードにおいて検出結果を前記第1処理部に出力し且つ前記第2モードにおいて検出結果を前記第2処理部に出力するセレクタを含む
ことを特徴とする演算装置。
[2]
前記第2電圧は、前記第1電圧より小さい
ことを特徴とする[1]記載の演算装置。
[3]
前記第1処理部は、アナログ回路で構成された割合が前記第2処理部より大きい
ことを特徴とする[1]又は[2]記載の演算装置。
[4]
前記第1処理部および前記第2処理部は相互に通信可能であり、
前記第1処理部および前記第2処理部の一方は、他方が前記セレクタから受け取った検出結果に基づいて、該一方が前記セレクタから受け取った検出結果を補正する
ことを特徴とする[1]~[3]の何れか1項記載の演算装置。
[5]
前記第1モードおよび前記第2モードを切り替えるための操作入力を受け付ける操作入力部を更に備え、
前記第1処理部および前記第2処理部は相互に通信可能であり、
前記第1モードから前記第2モードに移行するための操作入力を前記操作入力部が受け付けた場合、前記セレクタは該移行の前に前記第2処理部に検出結果を出力し、前記第1処理部は、前記第1処理部が前記セレクタから受け取った検出結果と、前記第2処理部が前記セレクタから受け取った検出結果との差が基準以上のときには該移行を抑制する
ことを特徴とする[1]~[4]の何れか1項記載の演算装置。
[6]
前記差が前記基準以上のときには所定の通知を出力する通知部を更に備える
ことを特徴とする[5]記載の演算装置。
[7]
前記温度検出部は、前記第1電圧を受ける第1抵抗素子と、前記第2電圧を受ける第2抵抗素子と、それらの双方に対して直列に接続された電気素子とを含む
ことを特徴とする[1]~[6]の何れか1項記載の演算装置。
[8]
前記電気素子は、第3抵抗素子である
ことを特徴とする[7]記載の演算装置。
[9]
前記電気素子は、整流素子である
ことを特徴とする[7]記載の演算装置。
[10]
前記セレクタは、前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子の其々と、前記電気素子との間の電気経路に配置される
ことを特徴とする[7]~[9]の何れか1項記載の演算装置。
[11]
[1]~[10]の何れか1項記載の演算装置と、
前記温度検出部の検出結果についての演算結果に基づいて駆動制御を行う駆動装置と、を備える
ことを特徴とする電子機器。
【0045】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0046】
10:演算装置、VDD1:電圧(第1電圧)、VDD2:電圧(第2電圧)、11:メイン制御部(第1処理部)、12:サブ制御部(第2処理部)、14:温度検出部、30:セレクタ。