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特開2024-162796通信装置及びその制御方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162796
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】通信装置及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0457 20230101AFI20241114BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241114BHJP
【FI】
H04W72/0457 110
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078702
(22)【出願日】2023-05-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】猪膝 裕彦
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067CC02
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の通信インタフェースを並列に動作させる場合に、各リンクで使用する周波数チャネルをより効率的に決定するするマルチリンク通信を実行可能な通信装置及びその制御方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】無線デバイス(WD)101は、それぞれ異なる対向装置(通信装置AP)102、通信装置(STA)103と通信するために使用可能な通信IFである第1通信IF(STA機能)及び第2通信IF(AP機能)を備え、マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得し、STA機能の起動後にAP機能が起動される場合に、周波数分離情報に基づいて、AP機能のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる周波数チャネルを介して確立される並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能な通信装置であって、
それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信インタフェースである第1及び第2インタフェースと、
前記マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する取得手段と、
前記第1インタフェースの起動後に前記第2インタフェースが起動される場合に、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する選択手段と、
を備える、通信装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記第1インタフェースのリンクから前記周波数分離が行われ、かつ、前記第2インタフェースのリンク間で前記周波数分離が行われるように、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する第1判定と、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する際に、前記第2インタフェースのリンク間で前記周波数分離が可能か否かを判定する第2判定と、を行い、
前記第1判定及び前記第2判定における判定結果に従って、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記第1判定において、前記第1インタフェースの全てのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースの複数のリンク間で前記周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースの前記一部のリンク間で前記周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより前記一部のリンクに加えて更なるリンクを確立するための、前記周波数分離が可能ではない周波数チャネルを更に選択する
請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項9】
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより複数のリンクを確立するための、前記周波数分離が可能ではない複数の周波数チャネルを選択する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項10】
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルによらず、前記通信装置が使用可能な周波数帯において任意の周波数チャネルを選択する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項11】
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちの一部を切断し、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルの選択を再び行う、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項12】
前記選択手段は、前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能となるように、前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちで切断するリンクを決定する、
請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
前記選択手段は、
前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能である、又は、前記最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちの一部を切断し、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルの選択を再び行う、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項14】
前記第1インタフェースは、前記通信装置を、外部のアクセスポイントに接続するステーションとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースは、前記通信装置を、外部のステーションからの接続を受け付けるアクセスポイントとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースの起動後に、前記選択手段によって選択された周波数チャネルを介して対向装置からの接続を受け付けるよう前記第2インタフェースを制御する制御手段を更に備える、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項15】
前記第1インタフェースは、前記通信装置を、外部のステーションからの接続を受け付けるアクセスポイントとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースは、前記通信装置を、外部のアクセスポイントに接続するステーションとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースの起動後に、前記選択手段によって選択された周波数チャネルを介して、対向装置とのリンクを確立するよう前記第2インタフェースを制御する制御手段を更に備える、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項16】
前記通信装置は、IEEE802.11規格に準拠したマルチリンク通信を実行可能である、請求項1に記載の通信装置。
【請求項17】
それぞれ異なる周波数チャネルを介して確立される並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能であり、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信インタフェースである第1及び第2インタフェースを備える通信装置の制御方法と、
前記マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する工程と、
前記第1インタフェースの起動後に前記第2インタフェースが起動される場合に、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する工程と、
を含む、制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載の制御方法の各工程を、通信装置のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能な通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気電子技術者協会)が策定している無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN又はWLAN)通信規格として、IEEE802.11シリーズ規格が知られている。IEEE802.11シリーズ規格には、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格等の規格がある。例えば、IEEE802.11ax規格では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access、直交周波数分割多元接続)を用いて、最大で毎秒9.6ギガビット(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度を向上させる技術が規格化されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、IEEEでは、更なるスループットの向上及び周波数利用効率の改善のため、IEEE802.11be規格の策定が進められている。IEEE802.11be規格では、マルチリンク通信技術の導入が検討されている。マルチリンク通信技術は、1台のアクセスポイント(AP)側の通信装置(マルチリンクデバイス(MLD))が、1台のステーション(STA)側の通信装置(MLD)と、それぞれ異なる複数の周波数チャネルを介して並列の複数のリンクを確立して通信する技術である。
【0004】
通信装置がマルチリンク通信を行う場合、複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR(Simultaneous Transmit and Receive)動作を行うことで、通信効率の向上が可能である。しかし、マルチリンク通信で使用される複数のリンク間で周波数チャネルが近いと、リンク間で干渉が生じ、リンクごとに独立した通信を行えなくなりうる。この場合、通信装置は、マルチリンク通信においてそれらのリンクを用いてSTR動作を行うことができなくなりうる。通信装置によるSTR動作を可能にするためには、複数のリンクでそれぞれ使用される周波数チャネルを分離する(周波数領域において、使用する周波数チャネルをリンク間で離す)周波数分離を行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような通信装置において、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な複数の通信インタフェース(例えば、通信装置をアクセスポイント(AP)として動作させる通信インタフェースと、通信装置をステーション(STA)として動作させる通信インタフェース)を並列に動作させ、それぞれの通信インタフェースがマルチリンク通信を行う場合がありうる。このような場合に、各通信インタフェース用のリンクが、他の通信インタフェース用のリンクに対して干渉等の悪影響を与えず、複数のリンクを用いたSTR動作が可能になるように、各リンクで使用する周波数チャネルを決定できることが求められうる。
【0007】
本開示は、マルチリンク通信を実行可能な通信装置において複数の通信インタフェースを並列に動作させる場合に、各リンクで使用する周波数チャネルをより効率的に決定することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る通信装置は、それぞれ異なる周波数チャネルを介して確立される並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能な通信装置であって、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信インタフェースである第1及び第2インタフェースと、前記マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する取得手段と、前記第1インタフェースの起動後に前記第2インタフェースが起動される場合に、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する選択手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、マルチリンク通信を実行可能な通信装置において複数の通信インタフェースを並列に動作させる場合に、各リンクで使用する周波数チャネルをより効率的に決定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ネットワークの構成例を示す図
図2】通信装置のハードウェア構成例を示すブロック図
図3】通信装置の機能構成例を示すブロック図
図4】AP機能用の動作チャネルの決定処理を示すフローチャート(実施例1)。
図5】決定処理(図4)による処理結果の例を示す図(実施例1)。
図6】STA機能用の動作チャネルの決定処理を示すフローチャート(実施例2)。
図7】決定処理(図6)による処理結果の例を示す図(実施例2)。
図8】AP機能用の動作チャネルの決定処理を示すフローチャート(実施例3)。
図9】決定処理(図8)による処理結果の例を示す図(実施例3)。
図10】ユーザインタフェース(UI)画面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一又は同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<ネットワーク構成>
図1は、本開示の実施形態に係る無線ネットワークの構成例を示す。図1に示す通信装置101~103は、外部装置と無線通信を行う無線通信機能を有する無線デバイス(WD)である。
【0013】
通信装置101は、無線ネットワークを構築する役割を有するアクセスポイント(AP:Access Point)として動作可能である。通信装置101は更に、他のAPによって構築される無線ネットワークに参加する役割を有するステーション(STA:Station)としても動作可能である。即ち、通信装置101は、通信装置101をAPとして動作させるためのAP機能と、通信装置101をSTAとして動作させるためのSTA機能とを有する無線デバイスとして構成される。また、通信装置102は、AP機能を有する無線デバイスとして構成され、通信装置102は、STA機能を有する無線デバイスとして構成される。以下では、通信装置101をWD101、通信装置102をAP102、通信装置103をSTA103とも称する。なお、AP102及びSTA103は、図1の例では個別の通信装置として示されているが、同じ通信装置にAP機能及びSTA機能として実装されてもよい。
【0014】
図1の例では、WD101は、STA機能により、STAとしてAP102に無線接続を行うことで、AP102によって構築される無線ネットワークに参加する。また、WD101は、AP機能により無線ネットワークを構築する。STA103は、STAとしてWD101に無線接続を行うことで、WD101のAP機能によって構築される無線ネットワークに参加する。このため、WD101がSTAとして送受信する信号により、WD101とAP102との間で無線通信が行われる。また、WD101がAPとして送受信する信号により、WD101とSTA103との間で無線通信が行われる。
【0015】
通信装置101~103(WD101、AP102及びSTA103)は、無線LAN通信規格として、IEEE802.11ax(HE:High Efficiency)規格の後継規格であるIEEE802.11be(EHT:Extremely High Throughput又はExtreme High Throughput)規格に対応している。各通信装置は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行可能である。また、各通信装置は、複数の周波数帯(本実施形態では、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯)において無線通信を行うことができるように構成されている。各通信装置が使用可能な周波数帯はこれに限定されず、例えば60GHz帯等の、異なる周波数を使用可能であってもよい。また、各通信装置は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、及び320MHz等の帯域幅を使用して通信することができるように構成される。各通信装置が使用可能な帯域幅はこれに限定されず、例えば240MHz及び4MHz等の、異なる帯域幅を使用可能であってもよい。
【0016】
本実施形態では、通信装置101~103は、IEEE802.11規格シリーズのうち、少なくともIEEE802.11be規格に対応している。通信装置101~103は更に、IEEE802.11be規格より以前のIEEE802.11規格であるレガシー規格の少なくとも1つに対応していてもよい。レガシー規格とは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格である。
【0017】
また、通信装置101~103は、IEEE802.11規格シリーズに加えて、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、UWB(Ultra Wide Band)、Zigbee、MBOA(Multi Band OFDM Alliance)等の、他の通信規格に対応していてもよい。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、Winet等が含まれる。また、通信装置101~103は更に、有線LAN等の有線通信の通信規格に対応していてもよい。
【0018】
通信装置101~103は、複数の周波数チャネルをそれぞれ介して複数のリンク(伝送路)を確立して通信するマルチリンク通信を実行する機能を有する、マルチリンクデバイス(MLD)である。マルチリンク通信を行うAPは、AP MLDとも称され、マルチリンク通信を行うSTAは、Non-AP(非AP)MLD又はSTA MLDとも称される。マルチリンク通信では、AP MLDとSTA MLDとの間で、複数のリンクを確立して使用する。
【0019】
マルチリンク通信において、通信装置間(AP MLDとSTA MLDとの間)に確立される複数のリンクは、それぞれ異なる周波数チャネルで確立される。また、当該複数のリンクがそれぞれ確立される周波数チャネルのチャネル間隔は、少なくとも20MHzより大きくなりうる。ここで、周波数チャネルとは、IEEE802.11規格シリーズに定義された周波数チャネルであり、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信を実行できる周波数チャネルを指す。IEEE802.11規格シリーズでは、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、及び60GHz帯の各周波数帯に複数の周波数チャネルが定義されている。また、IEEE802.11規格シリーズでは、各周波数チャネルの帯域幅は20MHzとして定義されている。なお、1つの周波数チャネルと隣接する周波数チャネルとをボンディングすることで、1つの周波数チャネルにおいて40MHz以上の帯域幅を利用してもよい。
【0020】
図1の例では、WD101とAP102との間に2つのリンクL1及びL2が並列に確立されている。また、WD101とSTA103との間に2つのリンクL3及びL4が並列に確立されている。例えば、WD101は、5GHz帯の第1の周波数チャネルを介したリンクをリンクL1として確立し、5GHz帯の第2の周波数チャネルを介したリンクをリンクL2として確立する。これにより、WD101は、リンクL1及びL2との両方のリンクを介してAP102と通信できる。この場合、WD101は、第1の周波数チャネルを介したリンクL1と並行して、第2の周波数チャネルを介したリンクL2を維持する。
【0021】
このように、WD101は、複数の周波数チャネルをそれぞれ介した複数のリンクをAP102との間で確立してマルチリンク通信を行うことで、AP102との通信におけるスループットを向上させることができる。同様に、WD101は、複数の周波数チャネルをそれぞれ介した複数のリンク(図1の例ではリンクL3及びL4)をSTA103との間で確立してマルチリンク通信を行うことで、STA103との通信におけるスループットを向上させることができる。
【0022】
なお、通信装置間にマルチリンク通信のために確立される複数のリンクとして、それぞれ異なる周波数帯を介する複数のリンク(例えば、5GHz帯のリンク及び6GHz帯のリンク)が確立されてもよい。あるいは、同じ周波数帯に含まれる複数の異なるチャネルをそれぞれ介して、複数のリンクが確立されてもよい。例えば、6GHz帯における7ch及び207chをそれぞれ介する2つのリンクが確立されてもよい。
【0023】
また、マルチリンク通信のために確立される複数のリンクとして、同じ周波数帯における複数のリンクと、異なる周波数帯におけるリンクとが混在していてもよい。例えば、5Ghz帯における36ch及び149chをそれぞれ介する2つのリンクと、6GHz帯における15chを介する1つのリンクとが確立されてもよい。このように、通信装置間で異なる周波数帯を介する複数のリンクを確立することで、ある周波数帯が混雑している場合であっても、他の周波数帯で確立したリンクを介した通信により、スループットの低下及び通信遅延を防ぐことが可能になる。
【0024】
通信装置101~103(WD101、AP102及びSTA103)は、例えば、無線LANルータ、パーソナルコンピュータ(PC)、カメラ、タブレット端末、PC、スマートフォン、携帯電話、ヘッドセット又はビデオカメラ等でありうるが、これらに限定されない。また、通信装置101~103は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行可能な無線チップ等を備える情報処理装置であってもよい。なお、図1は、一例として、WD101はプリンタであり、AP102は無線LANルータであり、STA103はスマートフォンである例を示している。
【0025】
<通信装置のハードウェア構成>
図2に、通信装置101(WD101)のハードウェア構成例を示すブロック図である。WD101は、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206及び1つ以上のアンテナ207を有する。なお、AP102及びSTA103は、WD101と同様のハードウェア構成を有しうる。
【0026】
記憶部201は、ROM(Read Only Memory)及び/又はRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリにより構成される。記憶部201は、後述する各種動作を行うためのコンピュータプログラム、及び無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部201を構成する1つ以上のメモリには、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVD等の、他のタイプの記憶媒体が用いられてもよい。また、記憶部201は、複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0027】
制御部202は、CPU(Central Processing Unit)及び/又はMPU(Micro Processing Unit)等の1以上のプロセッサにより構成される。制御部202は、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、WD101全体を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラム及びOS(オペレーティングシステム)との協働により、WD101全体を制御するように構成されてもよい。また、制御部202は、マルチコア等の複数のプロセッサを備え、当該複数のプロセッサによりWD101全体を制御するように構成されてもよい。
【0028】
制御部202は、他の通信装置との通信において送信対象となるデータ又は信号(無線フレーム)を生成する。制御部202は更に、機能部203を制御して、無線通信、撮像、印刷、及び投影等の、所定の処理を実行する。機能部203は、WD101が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0029】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受け付けを行う。出力部205は、モニタ画面又はスピーカーを介して、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、モニタ画面上への表示、スピーカーによる音声出力、及び振動出力等のうちの1つ以上でありうる。入力部204及び出力部205は、タッチパネルディスプレイのように、1つのモジュールとして実現されてもよい。また、入力部204及び出力部205は、それぞれ、WD101と一体として構成されてもよいし、WD101と別に設けられてもよい。
【0030】
通信部206は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信の制御を行う。通信部206は、1つ以上のアンテナ207を制御して、制御部202によって生成された無線通信のための信号の送受信を行う。WD101は、通信部206を介した通信装置102との通信により、画像データ、文書データ、及び映像データ等の各種データを送受信する。
【0031】
なお、通信部206は、IEEE802.11be規格に加えて、他のIEEE802.11規格に準拠した無線通信の制御、及び有線LAN等の有線通信の制御を行うように構成されてもよい。WD101は、IEEE802.11be規格に加えて、NFC規格及びBluetooth規格等に対応している場合、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御も行うように構成されてもよい。また、WD101は、複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できるように構成される場合、異なる通信規格に対応した個別の通信部及びアンテナを有してもよい。
【0032】
1つ以上のアンテナ207は、所定の周波数帯(本実施形態では、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯)における通信が可能なアンテナである。WD101は、周波数帯ごとに個別のアンテナを有していてもよい。また、WD101は、複数のアンテナを有している場合、アンテナごとに対応する通信部206を有していてもよい。なお、アンテナ207は、図2に示すように通信部206と別に設けられてもよいし、通信部206と合わせて1つのモジュールとして構成されていてもよい。
【0033】
本実施形態のWD101において、上述のAP機能及びSTA機能は、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な個別の通信インタフェースとして実装される。通信部206は、そのような複数の通信インタフェースを含むように構成される。
【0034】
<通信装置の機能構成>
図3は、本実施形態における通信装置101(WD101)の機能構成例を示すブロック図である。WD101は、機能ユニットとして、マルチリンク制御部301、UI(ユーザインタフェース)制御部302、IF(インタフェース)制御部303、フレーム生成部304、及びフレーム送受信部305を有する。
【0035】
マルチリンク制御部301は、マルチリンク通信に関連する制御を行う。例えば、マルチリンク制御部301は、STA機能による対向AP(例えば、AP102)との無線通信、又はAP機能による対向STA(例えば、STA103)との無線通信に用いる1以上のリンクを確立するための接続処理を制御する。マルチリンク制御部301は更に、通信開始後のリンクの追加又は削除処理、及び全リンクを削除する通信終了処理を制御する。接続処理は、具体的には、認証(Authentication)処理、アソシエーション(Association)処理、及び4ウェイハンドシェイク(4WHS:4-Way-Hand-Shake)処理を含む。
【0036】
UI制御部302は、入力部204及び出力部205を制御することで、タッチパネル等を介したユーザ操作の受け付け、及びユーザへの情報の出力(画面の表示又は音声出力等)を行う。例えば、UI制御部302は、出力部205によって表示された画面を用いたタッチパネル操作を、入力部204によってユーザから受け付ける。UI制御部302は、受け付けたユーザ操作に従って各種設定を行い、当該設定を示す設定データを記憶部201に保存する。
【0037】
IF制御部303は、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な、個別の通信インタフェース(通信IF)を制御する。例えば、IF制御部303は、各通信IF(AP機能又はSTA機能)の起動及び停止を制御する。また、IF制御部303は、各通信IFで使用するIPアドレスの管理、及びユーザ設定に基づく無線周波数(周波数チャネル)の決定を行う。
【0038】
フレーム生成部304は、Beacon、Probe Request、Probe Response、Authentication Request(認証要求)又はAssociation Request(アソシエーション要求)等の管理フレーム、及びデータフレームを含む、MACフレームを生成する。フレーム送受信部305は、フレーム生成部304によって生成されたMACフレームを含む無線フレームの送信、及び相手装置(対向装置)からの無線フレームの受信を行う。
【0039】
<処理手順>
以下では、上述のWD101によって実行される処理手順の例として、実施例1~3について説明する。実施例1~3では、WD101において、STA機能及びAP機能のうちの一方の機能(通信IF)が先に動作している間に、他方の機能(通信IF)を更に起動する場合の、起動対象の機能用の動作チャネルを決定する処理の例を示している。
【0040】
[実施例1]
実施例1では、STA機能を先に起動した後に、AP機能を起動する例について説明する。このため、本実施例では、STA機能が、先に起動される第1通信IF(第1インタフェース)に相当し、AP機能が、後に起動される第2通信IF(第2インタフェース)に相当する。
【0041】
図4は、実施例1における、WD101が、STA機能を先に起動して、STAとして対向AP(AP101)と接続した後に、更にAP機能を起動する際に、AP機能用の動作チャネルを決定する処理の手順の例を示すフローチャートである。本手順は、例えば、WD101の電源又は無線機能(無線LAN機能)をONにしたことに応じて開始されうる。
【0042】
WD101は、S401で、無線LANの使用開始前に、STA又はAPとして自装置が使用可能な周波数帯を示す情報(周波数帯情報)を取得する。これは、使用可能な電波の周波数帯に関する、国又は地域によって異なる制限に対応するためである。
【0043】
WD101は更に、S402で、マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR(Simultaneous Transmit and Receive)動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する。STRとは、共通の期間におけるリンク1での送信(受信)と並行したリンク2での受信(送信)が可能であることを示す。また、NSTR(Non-STR)とは、共通の期間においてリンク1で送信(受信)が行われる間にリンク2では受信(送信)のみ可能であることを示す。本実施形態において、周波数分離とは、通信装置によるSTR動作が可能になるように、複数のリンクでそれぞれ使用される周波数チャネルを分離する(周波数領域において、使用する周波数チャネルをリンク間で離す)ことに相当する。周波数分離情報は、使用する周波数チャネル(の中心周波数)を2つのリンク間でどの程度離すことによって、当該2つのリンクを用いたSTR動作が可能になるかに関する情報を含む。これにより、周波数分離情報は、マルチリンク通信におけるSTR動作を可能にするために必要となる周波数分離を示す。
【0044】
マルチリンク通信で使用される複数のリンク間で周波数チャネルが近い(周波数チャネルの中心周波数の差が小さい)と、リンク間で干渉が生じ、リンクごとに独立した通信を行えなくなりうる。この場合、通信装置は、マルチリンク通信においてそれらのリンクを用いてSTR動作を行うことができない。即ち、リンク間の周波数チャネルが近いと、通信装置がそれらのリンクを用いてNSTR(Non-STR)動作しか行うことができず、マルチリンク通信の性能を十分に活かすことができなくなりうる。
【0045】
そこで、本実施形態では、WD101は、S402において周波数分離情報を取得し、取得した周波数分離情報に基づいて、AP機能のリンクで使用する周波数チャネルの選択を行う。即ち、WD101は、STA機能(第1通信IF)の起動後にAP機能(第2通信IF)が起動される場合に、周波数分離情報に基づいて、AP機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択(決定)する。より具体的には、WD101は、STA機能(第1通信IF)のリンクから周波数分離が行われ、かつ、AP機能(第2通信IF)のリンク間で周波数分離が行われるように、周波数分離情報に基づいて、AP機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。これにより、より効率的な周波数チャネルの選択を可能にする。
【0046】
周波数分離情報は、一例として、WD101において使用されるハードウェア(無線LANモジュール又はチップ等)の性能又は制限に基づいて取得されうる。例えば、2.4GHz帯において、隣接するチャネル(例:1chと2ch)間では、各チャネルが使用する帯域の一部が重なっているため、リンクごとに独立した通信を行うことができない。このため、使用する周波数チャネル(の中心周波数)をリンク間で最低でも20MHz離す必要がある等の制限がありうる。このような制限に基づいて、周波数分離情報が取得されうる。
【0047】
また、周波数分離情報は、無線LAN規格におけるBeacon、Probe Request、又はProbe Response等の管理(マネジメント)フレームを用いて、他の通信装置から通知されうる。例えば、Non-AP MLDのCapability、NSTR Mobile AP MLDのCapability、MLD Capabilities and OperationsサブフィールドのFrequency Separation For STA、Link info fieldnoPer-STA ProfileサブエレメントのNSTR indication Bitmapフレーム等を用いた通知がありうる。このような通知によって周波数分離情報が取得されることもありうる。
【0048】
本実施例では、一例として、WD101によって取得された周波数分離情報は、使用する周波数チャネル(の中心周波数)をリンク間で80MHz離すことによってSTR動作が可能であることを示すものとする。
【0049】
次にS403で、WD101は、周波数帯情報及び周波数分離情報に基づいて、STA機能による対向AP(本例では、AP102)との接続を行う。具体的には、WD101は、自装置が使用可能な周波数帯において、周波数分離情報に基づいてチャネルを選択する。その際、WD101は、STR動作のための周波数分離が確保された複数の周波数チャネルを選択する。そのような周波数チャネルの選択ができない場合、WD101は、単一のリンク用に単一の周波数チャネルを選択する。WD101は、選択した周波数チャネルを用いて、STA機能による対向APとの接続を行う。
【0050】
その後S404~S410において、WD101は、AP機能の起動を試みる。そのためには、AP機能で使用する周波数チャネルの選択が必要になる。この時点においてSTA機能は既に動作している状態である(S403)。この場合に、WD101が、STA機能とAP機能とが、独立した周波数チャネルを使用して独立した動作を行えるように、AP機能で使用する周波数チャネルを選択することが望ましい。
【0051】
本実施例では、WD101は、WD101(通信装置)が使用可能な周波数帯において、STA機能(第1通信IF)のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する第1判定(S404)を行う。WD101は更に、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数帯において、AP機能のリンクで使用する周波数チャネルを選択する際に、AP機能のリンク間で周波数分離が可能か否かを判定する第2判定(S405)を行う。WD101は、第1判定及び第2判定における判定結果に従って、AP機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0052】
まずS404で、WD101は、自装置が使用可能な周波数帯に、STA機能との周波数分離(即ち、STA機能の全てのリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離)が可能な周波数帯があるか否か(周波数チャネルを選択可能か否か)を判定する。この判定は、周波数帯情報(S401)と、周波数分離情報(S402)と、S403でSTA機能用に確立された全リンクの周波数チャネルに関する情報とに基づいて行われる。WD101は、STA機能との周波数分離が可能な周波数帯があると判定した場合には、S405へ処理を進め、ないと判定した場合には、S409へ処理を進める。
【0053】
STA機能との周波数分離が可能な周波数帯がない(STA機能との周波数分離が不可能である)場合、いずれの周波数チャネルをAP機能用に選択したとしてもSTA機能で使用中の周波数チャネルとの干渉が生じる。このため、S409で、WD101は、使用可能な周波数帯において任意の周波数チャネルを選択する。本実施例では、このような場合、AP機能用の周波数チャネルの選択に制限を特に設けないようにしている。
【0054】
このように、WD101は、WD101が使用可能な周波数帯において、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、S409の処理を実行する。S409で、WD101は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルによらず、WD101が使用可能な周波数帯において任意の周波数チャネルを選択する。
【0055】
STA機能との周波数分離が可能な周波数帯がある場合、S405で、WD101は、AP機能で複数のリンクを使用(確立)してマルチリンク通信を行う場合の、AP機能のリンク(APリンク)間における周波数分離の可否に関する判定を行う。具体的には、WD101は、AP機能が確立できる最大リンク数に対する、全てのリンクについて周波数分離が可能であるか、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能であるか、全てのリンクについて周波数分離が不可能であるかを判定する。この判定は、周波数帯情報(S401)と、周波数分離情報(S402)と、STA機能用に確立された全リンクの周波数チャネルに関する情報とに基づいて行われる。なお、AP機能が単一のリンクを使用する場合、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定されてもよい。
【0056】
S405において、WD101は、全てのリンクについて周波数分離が可能であると判定した場合には、S406へ処理を進める。S406で、WD101は、AP機能により確立するリンク用に、周波数分離が確保された複数の周波数チャネル(即ち、STR動作を可能にする複数の周波数チャネル)を選択する。周波数チャネルの選択は、STA機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S406で選択される複数の周波数チャネルをそれぞれ介してAP機能の複数のリンクを確立することにより、STA機能のリンク及びAP機能の全てのリンクの間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0057】
このように、S406の処理は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、AP機能が確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で周波数分離が可能であるとの判定結果に従って実行される。S406では、WD101は、AP機能の複数のリンク間で周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0058】
S405において、WD101は、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能であると判定した場合には、S407へ処理を進める。S407で、WD101は、AP機能により確立する(最大リンク数のリンクのうちの)一部のリンク用に、周波数分離が確保された複数の周波数チャネル(即ち、STR動作を可能にする複数の周波数チャネル)を選択する。周波数チャネルの選択は、STA機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S407で選択される複数の周波数チャネルをそれぞれ介してAP機能の複数のリンクを確立することにより、STA機能のリンク及びAP機能の複数のリンク(最大リンク数のリンクのうちの一部のリンク)の間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0059】
このように、S407の処理は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、AP機能が確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で周波数分離が可能であるとの判定結果に従って実行される。S407では、WD101は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、AP機能の一部のリンク間で周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0060】
あるいは、S407で、WD101は、STR動作を可能にする複数の周波数チャネルに加えて、上記の一部のリンク以外のリンク用に、NSTR動作が適用される周波数チャネル(周波数分離が可能ではない周波数チャネル)を更に選択してもよい。このように、S407で、WD101は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、AP機能により一部のリンクに加えて更なるリンクを確立するための、周波数分離が可能ではない周波数チャネルを更に選択してもよい。
【0061】
S405において、WD101は、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定した場合には、S408へ処理を進める。S408で、WD101は、AP機能により単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する。周波数チャネルの選択は、STA機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S408で選択される単一の周波数チャネルを介してAP機能用の単一のリンクを確立することにより、STA機能用のリンクとAP機能用の単一のリンクとの間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0062】
このように、S408の処理は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、AP機能が確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って実行される。S408で、WD101は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、AP機能により単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する。
【0063】
あるいは、S408で、WD101は、単一の周波数チャネルに代えて、NSTR動作が適用される複数の周波数チャネルを選択してもよい。これにより、STR動作を行うことはできないものの、AP機能用に確立される複数のリンクを用いてNSTR動作によるマルチリンク通信を行える状態となる。このように、WD101は、STA機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、AP機能により複数のリンクを確立するための、周波数分離が可能ではない複数の周波数チャネルを選択してもよい。
【0064】
S406~S409のいずれかにおける周波数チャネルの選択が完了すると、WD101は、S410へ処理を進める。S410で、WD101は、選択された周波数チャネルを動作チャネルとして使用可能な状態でAP機能を起動し、図4の手順による処理を終了する。このような手順により、WD101は、STA機能が先に動作している間に、AP機能用の動作チャネルを適切に決定してAP機能を起動することが可能である。
【0065】
<具体例>
次に図5を参照して、図4の手順による、AP機能用の動作チャネルの決定処理についての具体例を説明する。図5は、AP機能用の動作チャネルの決定処理(図4)による処理結果の例を示す。図5では、周波数帯情報(S401)が示す、使用可能な周波数帯と、STA機能で使用中の周波数チャネルと、AP機能用の動作チャネルとして決定された周波数チャネルと、AP機能の起動後の、STA機能及びAP機能の動作状態とについて、6つのケースを示している。
【0066】
図5の例では、STA及びAP機能の各リンクが、20MHzの帯域幅を有し、周波数分離情報(S402)が、使用する周波数チャネル(の中心周波数)をリンク間で80MHz離すことによってSTR動作が可能であることを示すものとしている。また、STA機能及びAP機能のそれぞれの最大リンク数を、ケース1~5では2、ケース6では4としている。
【0067】
(ケース1)
ケース1では、WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、2412-2462MHz帯と、5660-5700MHz帯とが存在する(S404で「YES」)。
【0068】
上記の周波数帯において、中心周波数が互いに80MHz以上離れた、最大リンク数の周波数チャネルを選択可能である(即ち、最大リンク数の全てのリンクについて周波数分離が可能である)。このため、WD101はS405からS406へ処理を進める。本例では、WD101は、周波数分離が可能な1ch(中心周波数:2412MHz)及び140ch(中心周波数:5700MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S406)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能及びAP機能のいずれについても、STR動作が適用されたマルチリンク通信を実行可能となる。
【0069】
(ケース2)
ケース2では、WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、5660-5700MHz帯が存在する(S404で「YES」)。
【0070】
上記の周波数帯においては、中心周波数が互いに80MHz以上離れた複数の周波数チャネルを選択することができない(全てのリンクについて周波数分離が不可能である)。このため、WD101はS405からS408へ処理を進める。本例では、WD101は、NSTR動作が適用される周波数チャネルとして132ch(5660MHz)及び140ch(5700MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S408)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行い、AP機能についてはNSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行うようになる。
【0071】
(ケース3)
ケース3では、WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、2412-2462MHz帯が存在する(S404で「YES」)。
【0072】
上記の周波数帯においては、中心周波数が互いに80MHz以上離れた複数の周波数チャネルを選択することができない(全てのリンクについて周波数分離が不可能である)。このため、WD101はS405からS408へ処理を進める。本例では、WD101は、単一のリンクを用いて動作するための単一の周波数チャネルとして1ch(2412MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S408)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行い、AP機能については単一のリンクを介した通信を行うようになる。
【0073】
(ケース4)
ケース4では、WD101は、単一のリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該単一のリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、5180-5320MHz帯が存在する(S404で「YES」)。
【0074】
上記の周波数帯において、中心周波数が互いに80MHz以上離れた、最大リンク数の周波数チャネルを選択可能である(即ち、最大リンク数の全てのリンクについて周波数分離が可能である)。このため、WD101はS405からS406へ処理を進める。本例では、WD101は、周波数分離が可能な36ch(5180MHz)及び52ch(5260MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S406)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能については単一のリンクで通信を行いながら、AP機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を実行可能となる。
【0075】
(ケース5)
ケース5では、WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯が存在しない(S404で「NO」)。このため、WD101はS404からS409へ処理を進める。
【0076】
WD101は、任意の周波数チャネルとして64ch(5320MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S409)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行いながら、AP機能については単一のリンクで通信を行うようになる。
【0077】
(ケース6)
ケース6では、WD101は、単一のリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該単一のリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、5260-5320MHz帯と、5500-5700MHz帯とが存在する(S404で「YES」)。
【0078】
上述のように、AP機能の最大リンク数が4であるのに対して、上記の周波数帯では、中心周波数が互いに80MHz以上離れた周波数チャネルとして2つの周波数チャネルのみ選択可能である(即ち、最大リンク数に相当する4つのリンクのうちの一部のリンクについてのみ周波数分離が可能である)。このため、WD101はS405からS407へ処理を進める。
【0079】
本例では、WD101は、STR動作のための周波数チャネルとして100ch(5500MHz)及び116ch(5580MHz)を選択する。更にWD101は、NSTR動作のための周波数チャネルとして52ch(5260MHz)及び60ch(5300MHz)を選択する。WD101は、これにより、AP機能用の動作チャネルを決定し(S407)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能については単一のリンクで通信を行いながら、AP機能についてはSTR動作が適用されたリンクとNSTR動作が適用されたリンクとを用いたマルチリンク通信を行うようになる。なお、本例において、STR動作が適用されるリンクのみを有効化してもよい。
【0080】
以上説明したように、本実施例のWD101は、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信IFである第1及び第2通信IF(STA機能及びAP機能)を備えるように構成される。WD101は、マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する。WD101は更に、STA機能(第1通信IF)の起動後にAP機能(第2通信IF)が起動される場合に、周波数分離情報に基づいて、AP機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0081】
このように、本実施例によれば、STA機能を先に起動して、後からAP機能を起動してSTA機能と同時に動作させる場合に、AP機能が使用するチャネルを適切に選択することが可能になる。これにより、WD101によるマルチリンク通信において効率的な通信を実現できる。
【0082】
[実施例2]
実施例1では、STA機能を先に起動して対向APと接続した後に、AP機能を起動してSTA機能と同時に動作させる例を示した。実施例2では、AP機能を先に起動した後に、STA機能を起動して対向APと接続する例について説明する。このため、本実施例では、AP機能が、先に起動される第1通信IF(第1インタフェース)に相当し、STA機能が、後に起動される第2通信IF(第2インタフェース)に相当する。以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
図6は、WD101が、AP機能を先に起動した後に、更にSTA機能を起動して、STAとして対向AP(AP101)と接続する際に、STA機能用の動作チャネルを決定する処理の手順の例を示すフローチャートである。本手順は、実施例1(図4)と同様、例えば、WD101の電源又は無線機能(無線LAN機能)をONにしたことに応じて開始されうる。
【0084】
WD101は、S601で、S401と同様、無線LANの使用開始前に、STA又はAPとして自装置が使用可能な周波数帯を示す周波数帯情報を取得する。WD101は更に、S602で、マルチリンク通信におけるSTR動作のための周波数分離を示す周波数分離情報を取得する。本実施例では、WD101においてAP機能が先に起動されるため、周波数分離情報は、一例として、WD101において使用されるハードウェア(無線LANモジュール又はチップ等)の性能又は制限に基づいて取得されうる。
【0085】
次にS603で、WD101は、周波数帯情報及び周波数分離情報に基づいて、AP機能を起動することで、STAとして動作する他の通信装置(例えば、STA103)からの接続を受け付け可能な状態に移行する。具体的には、WD101は、使用可能な複数の周波数チャネル(自装置が使用可能な周波数帯に含まれる複数の周波数チャネル)から、周波数分離情報に基づいて、STR動作のための周波数分離が確保された複数の周波数チャネルを選択する。
【0086】
なお、WD101は、AP機能が複数のリンクを有しない(マルチリンク通信を行わない)場合、STR動作を考慮せずに、周波数帯情報が示す、使用可能な周波数帯における任意の周波数チャネルを選択してもよい。この場合、WD101は、選択した周波数チャネルを介したリンクで動作するようにAP機能を起動する。
【0087】
AP機能の起動後、S604で、WD101は、STA機能を起動して、APの探索を行うことで、STAとして対向AP(例えば、AP101)と接続するために必要となる、対向APのリンク情報及び周波数分離情報を取得する。APの探索は、例えば、対向APから送信される、Beacon又はProbe Response等の管理フレームを通じて行われる。対向APのリンク情報は、対向APで使用可能なリンク数、リンクで使用される周波数(周波数チャネル)、リンクで使用される周波数帯域幅等の、STA機能で使用可能な周波数チャネルに関連する情報を含む。なお、対向APがAP MLDとして起動している場合、周波数分離が確保された複数の周波数チャネルを使用している状態が想定される。この場合、対向APの周波数分離情報として、例えば、最小値(例えば20MHz)の周波数分離を示す情報が取得されてもよい。このように、WD101は、S604において、WD101のSTA機能による対向APとの通信で使用可能なリンクに関連する情報(リンク情報及び周波数分離情報)を収集する。
【0088】
その後S605~S611において、WD101は、STA機能による対向APとの接続を試みる。S605~S611では、実施例1のS404~S410と同様の処理が行われ、本実施例では対向APのリンク情報が更に考慮される。実施例1では、AP機能が使用可能な複数のチャネル候補から、より望ましいチャネルを選択するのに対して、実施例2では、接続対象の対向APが使用中の複数のチャネルからチャネルを選択する。
【0089】
本実施例では、WD101は、WD101(通信装置)が使用可能な周波数帯において、AP機能(第1通信IF)のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する第1判定(S605)を行う。WD101は更に、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数帯において、STA機能のリンクで使用する周波数チャネルを選択する際に、STA機能のリンク間で周波数分離が可能か否かを判定する第2判定(S405)を行う。WD101は、第1判定及び第2判定における判定結果に従って、STA機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0090】
S605では、実施例1と同様、既に動作しているAP機能と、後から起動されるSTA機能とが、独立した周波数チャネルを使用して独立した動作を行えるように、STA機能で使用する周波数チャネルの選択を行う。具体的には、WD101は、自装置が使用可能な周波数帯のうちで、AP機能との周波数分離(即ち、AP機能の全リンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離)が可能な周波数チャネルをSTA機能用に選択可能か否かを判定する。この判定は、周波数帯情報(S601)と、周波数分離情報(S602)と、S603で起動されたAP機能で使用中の全リンクの周波数チャネルに関する情報と、対向APのリンク情報(S604)とに基づいて行われる。WD101は、AP機能との周波数分離が可能な周波数チャネルをSTA機能用に選択可能であると判定した場合には、S606へ処理を進め、選択可能ではないと判定した場合には、S610へ処理を進める。
【0091】
AP機能との周波数分離が可能な周波数チャネルがない(AP機能との周波数分離が不可能である)場合、いずれの周波数チャネルをSTA機能用に選択したとしてもAP機能で使用中の周波数チャネルとの干渉が生じる。このため、S610で、WD101は、使用可能な周波数帯において、(対向APで使用可能な周波数チャネルから)任意の周波数チャネルを選択する。本実施例では、このような場合、STA機能用の周波数チャネルの選択に制限を特に設けないようにしている。
【0092】
このように、WD101は、WD101が使用可能な周波数帯において、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、S610の処理を実行する。S610で、WD101は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルによらず、WD101が使用可能な周波数帯において任意の周波数チャネルを選択する。
【0093】
AP機能との周波数分離が可能な周波数帯がある場合、S606で、WD101は、STA機能で複数のリンクを使用(確立)してマルチリンク通信を行う場合の、STA機能のリンク(STAリンク)間における周波数分離の可否に関する判定を行う。具体的には、WD101は、STA機能が確立できる最大リンク数に対する、全てのリンクについて周波数分離が可能であるか、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能であるか、全てのリンクについて周波数分離が不可能であるかを判定する。この判定は、周波数帯情報(S601)と、周波数分離情報(S602)と、AP機能で使用中の全リンクの周波数チャネルに関する情報と、対向APのリンク情報(S604)とに基づいて行われる。なお、STA機能が単一リンクを使用する場合、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定されてもよい。
【0094】
S606において、WD101は、全てのリンクについて周波数分離が可能であると判定した場合には、S607へ処理を進める。S607で、WD101は、STA機能により確立するリンク用に、周波数分離が確保された複数の周波数チャネル(即ち、STR動作を可能にする複数の周波数チャネル)を選択する。周波数チャネルの選択は、AP機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S607で選択される複数の周波数チャネルをそれぞれ介してSTA機能用の複数のリンクを確立することにより、AP機能用のリンク及びSTA機能用の全てのリンクの間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0095】
このように、S607の処理は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、STA機能が確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で周波数分離が可能であるとの判定結果に従って実行される。S607では、WD101は、STA機能の複数のリンク間で周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0096】
S606において、WD101は、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能であると判定した場合には、S608へ処理を進める。S608で、WD101は、STA機能により確立する(最大リンク数のリンクのうちの)一部のリンク用に、周波数分離が確保された複数の周波数チャネル(即ち、STR動作を可能にする複数の周波数チャネル)を選択する。周波数チャネルの選択は、AP機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S608で選択される複数の周波数チャネルをそれぞれ介してSTA機能用の複数のリンクを確立することにより、AP機能用のリンク及びSTA機能用の複数のリンク(最大リンク数のリンクのうちの一部のリンク)の間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0097】
このように、S608の処理は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、STA機能が確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で周波数分離が可能であるとの判定結果に従って実行される。S608では、WD101は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、STA機能の一部のリンク間で周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0098】
あるいは、S608で、WD101は、STR動作を可能にする複数の周波数チャネルに加えて、他のリンク用に、NSTR動作が適用される周波数チャネルを更に選択してもよい。このように、S608で、WD101は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、STA機能により一部のリンクに加えて更なるリンクを確立するための、周波数分離が可能ではない周波数チャネルを更に選択してもよい。
【0099】
S606において、WD101は、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定した場合には、S609へ処理を進める。S609で、WD101は、STA機能により単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する。周波数チャネルの選択は、AP機能との周波数分離が可能な周波数帯において行われる。S609で選択される単一の周波数チャネルを介してSTA機能用の単一のリンクを確立することにより、AP機能用のリンク及びSTA機能用の単一のリンクの間で、周波数分離が確保された状態となる。
【0100】
このように、S609の処理は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、STA機能が確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って実行される。S609で、WD101は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、STA機能により単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する。
【0101】
あるいは、S609で、WD101は、単一の周波数チャネルに代えて、NSTR動作が適用される複数の周波数チャネルを選択してもよい。これにより、STR動作を行うことはできないものの、STA機能用に確立される複数のリンクを用いてNSTR動作によるマルチリンク通信を行える状態となる。このように、WD101は、AP機能のリンクで使用中の周波数チャネルからの周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、STA機能により複数のリンクを確立するための、周波数分離が可能ではない複数の周波数チャネルを選択してもよい。
【0102】
S607~S610のいずれかにおける周波数チャネルの選択が完了すると、WD101は、S611へ処理を進める。S611で、WD101は、選択された周波数チャネルを動作チャネルとして使用して、対向APとの接続を行い、図6の手順による処理を終了する。このような手順により、WD101は、AP機能が先に動作している間に、STA機能用の動作チャネルを適切に決定して対向APとの接続を行うことが可能である。
【0103】
<具体例>
次に図7を参照して、図6の手順による、STA機能用の動作チャネルの決定処理についての具体例を説明する。図7は、STA機能用の動作チャネルの決定処理(図6)による処理結果の例を示す。図7では、使用周波数帯情報(S601)が示す、使用可能な周波数帯と、AP機能で使用中の周波数チャネルと、対向APで使用可能な周波数チャネルと、STA機能の起動(対向APとの接続完了)後の、STA機能及びAP機能の動作状態とについて、4つのケースを示している。
【0104】
図7の例では、STA及びAP機能用の各リンクが、20MHzの帯域幅を有し、周波数分離情報(S602)が、使用する周波数チャネル(の中心周波数)をリンク間で80MHz離すことによってSTR動作が可能であることを示すものとしている。また、STA機能及びAP機能のそれぞれの最大リンク数を、ケース1~3では2、ケース4では4としている。
【0105】
(ケース1)
ケース1では、WD101は、2つのリンクを用いてAP機能を起動している状態である(S603)。また、使用可能な周波数帯には、AP機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、2412-2462MHz帯と、5660-5700MHz帯とが存在する。更に、上記周波数帯には、STA機能で使用可能な周波数チャネル(対向APで使用可能な周波数チャネル)として、1ch(2412MHz)及び140ch(5700MHz)が含まれる(S605で「YES」)。
【0106】
STA機能で使用可能な周波数チャネル1ch(2412MHz)及び140ch(5700MHz)は、周波数分離が確保されている(中心周波数が80MHz以上離れている)。即ち、最大リンク数の全てのリンク(2つのリンク)について周波数分離が可能である。このため、WD101は、S606からS607へ処理を進める。本例では、WD101は、1ch(2412MHz)及び140ch(5700MHz)を選択することで、STA機能用の動作チャネルを決定し(S607)、対向APとの接続を行う(S611)。その結果、WD101は、STA機能及びAP機能のいずれについても、STR動作が適用されたマルチリンク通信を実行可能となる。
【0107】
(ケース2)
ケース2では、WD101は、2つのリンクを用いてAP機能を起動している状態である(S603)。また、使用可能な周波数帯には、AP機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、2412-2462MHz帯と、5660-5700MHz帯とが存在する。更に、上記周波数帯には、STA機能で使用可能な周波数チャネルとして、132ch(5660MHz)及び140ch(5700MHz)が含まれる(S605で「YES」)。
【0108】
STA機能で使用可能な周波数チャネル132ch(5660MHz)及び140ch(5700MHz)は、周波数分離が確保されていない(中心周波数が80MHz以上離れていない)。即ち、最大リンク数の全てのリンク(2つのリンク)について周波数分離が不可能である。このため、WD101は、S606からS609へ処理を進める。本例では、WD101は、NSTR動作が適用される周波数チャネルとして132ch(5660MHz)及び140ch(5700MHz)を選択することで、STA機能用の動作チャネルを決定し(S607)、対向APとの接続を行う(S611)。その結果、WD101は、AP機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行い、STA機能についてはNSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行うようになる。
【0109】
(ケース3)
ケース3では、WD101は、2つのリンクを用いてAP機能を起動している状態である(S603)。また、使用可能な周波数帯には、AP機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯が存在しない(S605で「NO」)。このため、WD101はS605からS610へ処理を進める。
【0110】
本例では、WD101は、STA機能で使用可能な周波数チャネル36ch(5180MHz)及び64ch(5320MHz)から、任意の周波数チャネルとして36ch(5180MHz)を選択することで、STA機能用の動作チャネルを決定し(S610)、対向APとの接続を行う(S611)。その結果、WD101は、AP機能についてはSTR動作が適用されたマルチリンク通信を行いながら、STA機能については単一のリンクで通信を行うようになる。
【0111】
(ケース4)
ケース4では、WD101は、単一のリンクを用いてAP機能を起動している状態である(S603)。また、使用可能な周波数帯には、AP機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、5260-5320MHz帯と、5500-5700MHz帯とが存在する。更に、上記周波数帯には、STA機能で使用可能な周波数チャネルとして、52ch(5260ch)、60ch(5300MHz)、100ch(5500MHz)及び116ch(5580MHz)が含まれる(S605で「YES」)。
【0112】
上記の周波数チャネルのうち、52ch(5260ch)と60ch(5300MHz)との間で周波数分離が確保されていない(中心周波数が80MHz以上離れていない)。即ち、上述のように、STA機能の最大リンク数が4であるのに対して、最大リンク数に相当する4つのリンクのうちの一部のリンクについてのみ周波数分離が可能である。このため、WD101はS606からS608へ処理を進める。
【0113】
本例では、WD101は、STR動作のための周波数チャネルとして60ch(5300)、100ch(5500MHz)及び116ch(5580MHz)を選択する。WD101は、これにより、STA機能用の動作チャネルを決定し(S608)、対向APとの接続を行う(S611)。その結果、WD101は、AP機能については単一のリンクで通信を行いながら、STA機能についてはSTR動作が適用されたリンクを用いたマルチリンク通信を行うことが可能になる。
【0114】
以上説明したように、本実施例のWD101は、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信IFである第1及び第2通信IF(AP機能及びSTA機能)を備えるように構成される。WD101は、マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する。WD101は更に、AP機能(第1通信IF)の起動後にSTA機能(第2通信IF)が起動される場合に、周波数分離情報に基づいて、STA機能(第2通信IF)のリンクで使用する周波数チャネルを選択する。
【0115】
このように、本実施例によれば、AP機能が先に起動して、後からSTA機能を起動してAP機能と同時に動作をさせる場合でも、STA機能が使用するチャネルを適切に選択することが可能になる。これにより、WD101によるマルチリンク通信において効率的な通信を実現できる。
【0116】
[実施例3]
実施例1及び2では、STR動作が適用されたマルチリンク通信の実行に関して、AP機能及びSTA機能(第1及び第2通信IF)のうち、先に起動していた機能(通信IF)が優先されている。一方で、例えば、起動順によらず、STA機能よりもAP機能について、STR動作が適用されたマルチリンク通信を行うことを優先させたいケースが考えられる。
【0117】
そこで、実施例3では、AP機能及びSTA機能(第1及び第2通信IF)のうち、後から起動する機能(通信IF)について、STR動作が適用されたマルチリンク通信を行うことを優先させる処理の例について説明する。なお、本実施例では、実施例1と同様にSTA機能及びAP機能の順に起動する場合の処理について説明するが、逆順(AP機能及びSTA機能の順)に起動する場合の処理も同様である。以下では、実施例1及び2と異なる部分を中心に説明する。
【0118】
図8は、実施例3における、WD101が、STA機能を先に起動して、STAとして対向AP(AP101)と接続した後に、更にAP機能を起動する際に、AP機能用の動作チャネルを決定する処理の手順の例を示すフローチャートである。本手順は、例えば、WD101の電源又は無線機能(無線LAN機能)をONにしたことに応じて開始されうる。なお、図8において、実施例1と同様の処理を行うステップについては図4と同一の参照符号を付しており、S801及びS802が追加されている。
【0119】
S401~S410では実施例1と同様の処理が行われる。ただし、本実施例では、STA機能が先に起動した後、S404において、WD101は、自装置が使用可能な周波数帯のうちで、STA機能との周波数分離が可能な周波数帯がないと判定した場合、S801へ処理を進める。
【0120】
S801で、WD101は、先に起動したSTA機能が、複数のリンクを使用している(並列の複数のリンクを介して対向APと接続している)か否かを判定する。WD101は、STA機能が単一のリンクを使用している場合には、S409へ処理を進め、実施例1と同様の処理を行う。一方、WD101は、STA機能が複数のリンクを使用している場合には、S802へ処理を進める。
【0121】
S802で、WD101は、STA機能が使用している複数のリンク(STAリンク)のうちの1つを切断し、S404へ処理を戻す。これにより、STA機能が使用中の周波数チャネルを解放することで、先に起動したSTA機能に優先して、後から起動するAP機能が、STR動作が適用されたマルチリンク通信を行うための周波数チャネルを選択できるようにする。切断対象のSTAリンクは、後から起動するAP機能がSTR動作を行えるように、S401~S403(又はS601~S604)において取得される情報に基づいて選択されうる。1つのSTAリンクの切断が完了すると、S404で、WD101は、実施例1と同様の判定処理を繰り返す。
【0122】
なお、図8では、S404で「NO」の場合にS801へ移行する例を示しているが、これに限定されない。例えば、S405において、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能である、又は、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定された場合に、S801へ移行するように、図8の手順が変更されてもよい。その場合、S801において、STA機能が単一のリンクを使用している場合には、S407又はS408へ処理が進められる。一方、STA機能が複数のリンクを使用している場合には、S802へ処理が進められ、S802の処理の完了後、S404へ処理が戻される。
【0123】
<具体例>
次に図9を参照して、図8の手順による、AP機能用の動作チャネルの決定処理についての具体例を説明する。図9は、AP機能用の動作チャネルの決定処理(図8)による処理結果の例を示す。図9では、周波数帯情報(S401)が示す、使用可能な周波数帯と、STA機能で使用中の周波数チャネルと、1つのSTAリンクの切断後の、STA機能で使用中の周波数チャネルと、AP機能の起動後の、STA機能及びAP機能の動作状態とについて、3つのケースを示している。
【0124】
図9の例では、STA及びAP機能用の各リンクが、20MHzの帯域幅を有し、周波数分離情報(S402)が、使用する周波数チャネル(の中心周波数)をリンク間で80MHz離すことによってSTR動作が可能であることを示すものとしている。また、STA機能及びAP機能のそれぞれの最大リンク数を2としている。
【0125】
(ケース1)
ケース1は、図8の手順(S404で「NO」の場合にS801へ移行)に対応している。ケース1では、WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯が存在しない(S404で「NO」)。このため、WD101はS404からS801へ処理を進める。
【0126】
WD101は、STA機能が、2つの周波数チャネル100ch(5500MHz)及び128ch(5640MHz)に対応する2つのリンクを使用しているため、S801からS802へ処理を進める。WD101は、2つのリンクのうち、128ch(5640MHz)に対応するリンクを切断する(S802)。その結果、WD101は、使用可能な周波数帯のうち、5580-5700MHz帯が、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯となる(S404で「YES」)。
【0127】
本例では、WD101は、上記の周波数帯において、116ch(5580MHz)及び132ch(5660MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定し(S406)、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能について、100ch(5500MHz)を介する単一のリンクで動作する。一方、AP機能については、116ch(5580MHz)及び132ch(5660MHz)をそれぞれ介する2つのリンクでSTR動作を行うことが可能になる。
【0128】
(ケース2)
ケース2は、S405において、一部のリンクについてのみ周波数分離が可能である、又は、全てのリンクについて周波数分離が不可能であると判定された場合に、S801へ移行するように、図8の手順が変更されたものに対応している。WD101は、2つのリンクを用いて対向AP(AP102)と接続し、当該2つのリンクを用いたマルチリンク通信でSTR動作を行っている状態である(S403)。また、使用可能な周波数帯には、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯として、5660-5700MHz帯とが存在する(S404で「YES」)。
【0129】
上記の周波数帯においては、周波数分離が確保された複数の周波数チャネルを選択することができない(全てのリンクについて周波数分離が不可能である)。このため、WD101はS405からS801へ処理を進める。
【0130】
WD101は、STA機能が、2つの周波数チャネル100ch(5500MHz)及び116ch(5580MHz)に対応する2つのリンクを使用しているため、S801からS802へ処理を進める。WD101は、2つのリンクのうち、116ch(5580MHz)に対応するリンクを切断する(S802)。その結果、WD101は、使用可能な周波数帯のうち、5580-5700MHz帯が、STA機能で使用中の周波数チャネル(周波数帯)からの周波数分離が可能な周波数帯となる(S404で「YES」)。
【0131】
本例では、WD101は、上記の周波数帯において、AP機能用の2つのリンク間で周波数分離を確保するように、116ch(5580MHz)及び132ch(5660MHz)を選択することで、AP機能用の動作チャネルを決定する(S406)。更に、WD101は、AP機能を起動する(S410)。その結果、WD101は、STA機能について、100ch(5500MHz)を介する単一のリンクで動作する。一方、AP機能については、116ch(5580MHz)及び132ch(5660MHz)をそれぞれ介する2つのリンクでSTR動作を行うことが可能になる。
【0132】
(ケース3)
ケース3は、ケース2の変形例として、AP機能用の動作チャネルを決定した後に、再度、STA機能がリンクの再接続を行う例である。なお、図9に示すように、ケース3は、STA機能が、5GHz帯の周波数チャネルに加えて2.4GHz帯の周波数チャネルも使用可能である点が、ケース2と異なっている。
【0133】
ケース3では、ケース2と同様、STA機能が使用していた、116ch(5580MHz)に対応するリンクが切断される。更に、AP機能用の動作チャネルとして、116ch(5580MHz)及び132ch(5660MHz)が選択され、AP機能が起動される。ケース3では更に、WD101は、STA機能用に使用可能な周波数チャネルを探し、切断したリンクにする周波数チャネルとは別の周波数チャネルを介して、対向APとの間に新たなリンクを確立する。この処理は、図6の手順におけるS605以降の処理によって実現される。
【0134】
具体的には、WD101は、S605で、2.4GHz帯の周波数チャネル(1-11ch)と100ch(5500MHz)とが、STA機能用の、AP機能との周波数分離が可能な周波数チャネルとして選択可能であると判定する。これにより、WD101はS606へ処理を進める。WD101は更に、1ch(2412MHz)及び100ch(5500MHz)を選択することで、STA機能用の動作チャネルを決定し(S607)、対向APとの接続を行う(S611)。その結果、STA機能及びAP機能のいずれについても、STR動作が適用されたマルチリンク通信を実行可能となる。
【0135】
本実施例によれば、STA機能及びAP機能を起動する場合に、後から起動した機能に優先的にSTR動作を行わせることが可能になる。
【0136】
[その他の実施形態]
上述の各実施例において、WD101は、AP機能又はSTA機能の動作チャネルの選択を、ユーザインタフェース(UI)を介したユーザ選択に従って実行してもよい。例えば、図10に示すようなUI画面(設定画面)をWD101の出力部205に表示し、入力部204を介してユーザ選択を受け付けてもよい。WD101は、選択可能な複数のチャネル候補のみをUI画面に表示し、ユーザ選択を受け付けてもよい。
【0137】
また、上述の各実施例では、STA機能及びAP機能についての動作チャネルの選択例について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、無線LANの機能として、P2P(Peer to Peer)機能又はNAN(Neighbor Awareness Networking)機能等が知られている。これらの機能の使用時にも、上述の各実施例と同様の処理により、動作チャネルを選択可能である。
【0138】
実施例1~3では、STA機能及びAP機能のうち、先に起動する機能を第1通信IF、後から起動する機能を第2通信IFとしている。例えば、実施例1では、第1通信IがSTA機能、第2通信IFがAP機能で構成され、実施例2では、第1通信IFがAP機能、第2通信IFがSTA機能で構成される。実施例1~3の変形例として、第1通信IF及び第2通信IFが、STA機能、AP機能、P2P機能及びNAN機能のうちの任意の2つの組み合わせで構成されてもよい。例えば、第1通信IFがP2P機能、第2通信IFがAP機能で構成されてもよい。また、第1通信IFがNAN機能、第2通信IFがSTA機能で構成されてもよい。このような構成を採用した場合でも、実施例1~3において同様の処理を実現し、同様の効果を得ることが可能である。
【0139】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0140】
本明細書の開示は、以下の通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを含む。
(項目1)
それぞれ異なる周波数チャネルを介して確立される並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能な通信装置であって、
それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信インタフェースである第1及び第2インタフェースと、
前記マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する取得手段と、
前記第1インタフェースの起動後に前記第2インタフェースが起動される場合に、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する選択手段と、
を備える、通信装置。
(項目2)
前記選択手段は、前記第1インタフェースのリンクから前記周波数分離が行われ、かつ、前記第2インタフェースのリンク間で前記周波数分離が行われるように、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
項目1に記載の通信装置。
(項目3)
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する第1判定と、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する際に、前記第2インタフェースのリンク間で前記周波数分離が可能か否かを判定する第2判定と、を行い、
前記第1判定及び前記第2判定における判定結果に従って、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
項目1又は2に記載の通信装置。
(項目4)
前記選択手段は、前記第1判定において、前記第1インタフェースの全てのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能か否かを判定する、
項目3に記載の通信装置。
(項目5)
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースの複数のリンク間で前記周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
項目3又は4に記載の通信装置。
(項目6)
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースの前記一部のリンク間で前記周波数分離が行われるように、それぞれのリンクで使用する周波数チャネルを選択する、
項目3乃至5のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目7)
前記選択手段は、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより前記一部のリンクに加えて更なるリンクを確立するための、前記周波数分離が可能ではない周波数チャネルを更に選択する
項目6に記載の通信装置。
(項目8)
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより単一のリンクを確立するための、単一の周波数チャネルを選択する、
項目3乃至7のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目9)
前記選択手段は、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能であり、かつ、前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネル又は周波数帯において、前記第2インタフェースにより複数のリンクを確立するための、前記周波数分離が可能ではない複数の周波数チャネルを選択する、
項目3乃至7のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目10)
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルによらず、前記通信装置が使用可能な周波数帯において任意の周波数チャネルを選択する、
項目3乃至9のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目11)
前記選択手段は、
前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能ではないとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちの一部を切断し、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルの選択を再び行う、
項目3乃至9のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目12)
前記選択手段は、前記通信装置が使用可能な周波数帯において、前記第1インタフェースのリンクで使用中の周波数チャネルからの前記周波数分離が可能な周波数チャネルを選択可能となるように、前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちで切断するリンクを決定する、
項目11に記載の通信装置。
(項目13)
前記選択手段は、
前記第2インタフェースが確立できる最大リンク数に対する一部のリンクについて、リンク間で前記周波数分離が可能である、又は、前記最大リンク数に対する全てのリンクについて、リンク間で前記周波数分離が不可能であるとの判定結果に従って、
前記第1インタフェースが使用中の複数のリンクのうちの一部を切断し、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルの選択を再び行う、
項目3乃至12のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目14)
前記第1インタフェースは、前記通信装置を、外部のアクセスポイントに接続するステーションとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースは、前記通信装置を、外部のステーションからの接続を受け付けるアクセスポイントとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースの起動後に、前記選択手段によって選択された周波数チャネルを介して対向装置からの接続を受け付けるよう前記第2インタフェースを制御する制御手段を更に備える、
項目1乃至13のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目15)
前記第1インタフェースは、前記通信装置を、外部のステーションからの接続を受け付けるアクセスポイントとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースは、前記通信装置を、外部のアクセスポイントに接続するステーションとして動作させる機能を有し、
前記第2インタフェースの起動後に、前記選択手段によって選択された周波数チャネルを介して、対向装置とのリンクを確立するよう前記第2インタフェースを制御する制御手段を更に備える、
項目1乃至13のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目16)
前記通信装置は、IEEE802.11規格に準拠したマルチリンク通信を実行可能である、項目1乃至15のいずれか1項目に記載の通信装置。
(項目17)
それぞれ異なる周波数チャネルを介して確立される並列の複数のリンクを用いるマルチリンク通信を実行可能であり、それぞれ異なる対向装置と通信するために使用可能な通信インタフェースである第1及び第2インタフェースを備える通信装置の制御方法と、
前記マルチリンク通信を行う場合に複数のリンクで送信及び受信を同時に行うSTR動作を可能にするための、リンク間の周波数分離を示す周波数分離情報を取得する工程と、
前記第1インタフェースの起動後に前記第2インタフェースが起動される場合に、前記周波数分離情報に基づいて、前記第2インタフェースのリンクで使用する周波数チャネルを選択する工程と、
を含む、制御方法。
(項目18)
項目17に記載の制御方法の各工程を、通信装置のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0141】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0142】
100:ネットワーク、101:通信装置(WD)、102:通信装置(AP)、103:通信装置(STA)、202:制御部、206:通信部
図1
図2
図3
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図10