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特開2024-162797半導体デバイス、通信装置および撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162797
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】半導体デバイス、通信装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20241114BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20241114BHJP
   H01Q 3/38 20060101ALI20241114BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01Q23/00
H01Q3/38
H01Q21/06
H01L27/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078703
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村尾 竜耶
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰史
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 潤
【テーマコード(参考)】
5F038
5J021
【Fターム(参考)】
5F038BH16
5F038CA16
5F038EZ01
5F038EZ02
5F038EZ20
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB03
5J021DB05
5J021EA04
(57)【要約】
【課題】デバイスの温度上昇の抑制に有利な技術を提供する。
【解決手段】電磁波を発振または受信するための半導体素子およびアンテナが配された第1半導体基板を含む第1構造体と、前記半導体素子を制御するための制御回路が配された第2半導体基板を含む第2構造体と、前記第1構造体に接合された第1接合面および前記第2構造体に接合された第2接合面を有する第3構造体と、が積層された半導体デバイスであって、前記第1構造体には、前記半導体素子に電気的に接続され、かつ、前記第1接合面に達する第1導体プラグが配され、前記第3構造体は、互いに積層された基材層と導体層とを含み、前記第3構造体は、前記第1構造体および前記第2構造体よりも熱伝導率が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発振または受信するための半導体素子およびアンテナが配された第1半導体基板を含む第1構造体と、前記半導体素子を制御するための制御回路が配された第2半導体基板を含む第2構造体と、前記第1構造体に接合された第1接合面および前記第2構造体に接合された第2接合面を有する第3構造体と、が積層された半導体デバイスであって、
前記第1構造体には、前記半導体素子に電気的に接続され、かつ、前記第1接合面に達する第1導体プラグが配され、
前記第3構造体は、互いに積層された基材層と導体層とを含み、
前記第3構造体は、前記第1構造体および前記第2構造体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
前記電磁波が、テラヘルツ波を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第3構造体の厚さが、前記第1半導体基板の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第3構造体の厚さが、100μm以上かつ1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記基材層は、セラミックを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記基材層は、窒化アルミニウムおよびグラファイトのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記第3構造体の熱伝導率が、100W/m・K以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記基材層が、前記第1構造体と前記導体層との間に配された第1基材層と、前記導体層と前記第2構造体との間に配された第2基材層と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記第1導体プラグが、前記第1基材層を貫通し、前記導体層に電気的に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記第1構造体は、前記半導体素子および前記アンテナをそれぞれ含む複数のアクティブアンテナが配されたアクティブアンテナアレイを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記第1構造体は、第1配線層と、前記第1配線層と前記第3構造体との間に配された第2配線層と、を含み、
前記アンテナは、前記第1配線層に配され、かつ、前記半導体素子に電気的に接続された第1導体パターンを含み、
前記第2配線層には、前記第1接合面に対する正射影において前記第1導体パターンよりも面積が大きく、かつ、前記半導体素子に電気的に接続された第2導体パターンが配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記半導体デバイスが動作中の熱平衡状態において、前記第3構造体の温度が、前記第1接合面に対する正射影において、前記第3構造体の中央から外縁に向かい低くなる勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記第2半導体基板と前記第3構造体との間に、熱伝導率が1W/m・K未満の断熱層が配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記第1半導体基板および前記第2半導体基板のうち少なくとも一方に、比熱が0.9kJ/kg・K以上の蓄熱層が配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記第3構造体の外縁に接し、かつ、導体を用いた放熱体が配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
支持基板をさらに備え、
前記支持基板と前記第3構造体との間に前記第2構造体が配され、
前記放熱体は、前記支持基板に固定されており、かつ、前記アンテナよりも前記支持基板の側に配されていることをと特徴とする請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
前記半導体素子は、負性抵抗素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項18】
前記負性抵抗素子は、共鳴トンネルダイオードを含むことを特徴とする請求項17に記載の半導体デバイス。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1項に記載の半導体デバイスと、
前記電磁波を放射する発信部と、
前記電磁波を検出する受信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項20】
請求項1乃至18の何れか1項に記載の半導体デバイスと、
被写体によって反射または放射された前記電磁波を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、通信装置および撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やテラヘルツ帯などの高周波領域では利用する波長に応じてアンテナのサイズが小さくなり、周辺回路などもアンテナサイズに応じて高密度化される。さらに、伝送線路による損失が大きくなることから、アンテナ回路と制御回路とを積層し伝送線路を短縮して損失を低減しつつ、小型のパッケージに集約したモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)が広く開発されている。特許文献1には、CMOS-ICとパッチアンテナとを重ねて配置することによって、小型化を実現したミリ波無線装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-097526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波化が進むにつれて回路の高密度化や損失の増加によって、消費電力や発熱量が増加する。発熱量の増加によるデバイス温度の上昇は、デバイスの動作安定性の低下や素子寿命の低下の原因になりうる。
【0005】
本発明は、デバイスの温度上昇の抑制に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る半導体デバイスは、電磁波を発振または受信するための半導体素子およびアンテナが配された第1半導体基板を含む第1構造体と、前記半導体素子を制御するための制御回路が配された第2半導体基板を含む第2構造体と、前記第1構造体に接合された第1接合面および前記第2構造体に接合された第2接合面を有する第3構造体と、が積層された半導体デバイスであって、前記第1構造体には、前記半導体素子に電気的に接続され、かつ、前記第1接合面に達する第1導体プラグが配され、前記第3構造体は、互いに積層された基材層と導体層とを含み、前記第3構造体は、前記第1構造体および前記第2構造体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デバイスの温度上昇の抑制に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の半導体デバイスの構成例を示す断面図。
図2図1の半導体デバイスの構成例を示す平面図。
図3図1の半導体デバイスの画素の構成例を示す図。
図4図1の半導体デバイスの実装例を示す断面図。
図5図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図6図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図7図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図8図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図9図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図10図1の半導体デバイスの変形例を示す断面図。
図11図1の半導体デバイスの構成例を示す平面図。
図12図1の半導体デバイスを用いた撮像システムの構成例を示す図。
図13図1の半導体デバイスを用いた通信装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1(a)~図13を参照して、本開示の実施形態による半導体デバイスについて説明する。以下の説明において、本実施形態の半導体デバイス100を、主にテラヘルツ波を放射する発振装置として用いる場合について説明を行う。しかしながら、これに限られることはなく、半導体デバイス100は、テラヘルツ波を受信する検出装置として用いることも可能である。ここで、テラヘルツ波とは、10GHz以上100THz以下の周波数範囲内の電磁波を示す。また、テラヘルツ波は、30GHz以上30THz以下の周波数範囲内の電磁波を示していてもよい。しかしながら、これに限られることはなく、半導体デバイス100は、他の周波数の電磁波の発振(放射)や受信(検出)に用いられてもよい。
【0011】
図1(a)~1(c)は、テラヘルツ波を放射する発振装置に適用可能な半導体デバイス100の断面図である。図2(a)~2(c)は、半導体デバイス100の平面図である。図1(a)、1(b)、1(c)は、それぞれ図2(a)に示される半導体デバイス100の上面のA-A’間、B-B’間、C-C’間の断面を表している。図3(a)~3(d)は、半導体デバイス100の概略を示すための図である。
【0012】
図1(a)~1(c)に示されるように、半導体デバイス100は、構造体151と、構造体152と、構造体153と、が積層されている所謂、積層チップである。構造体151は、テラヘルツ波などの電磁波を発振するための半導体素子101およびアンテナが配された半導体基板131を含む。構造体151は、化合物半導体基板である半導体基板131上に配されたアンテナアレイを備え、アンテナ基板と呼ばれる場合がある。構造体152は、半導体素子101を制御するための制御回路が配された半導体基板134を含む。構造体152は、例えば、半導体基板134としてシリコン基板を用いたシリコン集積回路基板である。構造体153は、構造体151に接合された接合面BS1および構造体152に接合された接合面BS2を有する。構造体153は、構造体151と構造体152との間に存在するよう積層される。構造体153は、構造体151と構造体152とを接続し、熱伝導に優れた材料で構成されたインターポーザ基板である。これら3つの構造体151、152、153を既知の半導体積層技術を用いて積層することによって、半導体デバイス100が実現される。
【0013】
図3(a)には、本実施形態の半導体デバイス100の概念となる構成を示すブロック図が示されている。図3(b)は、半導体デバイス100を構成する構造体151を上面から見た模式図である。図3(c)は、半導体デバイス100を構成する構造体153を上部から見た場合(例えば、接合面BS1)の模式図の一例である。図3(d)は、半導体デバイス100を構成する構造体152を上部から見た場合(例えば、構造体153との接合面)の概念図である。
【0014】
まず、構造体151に形成されたアクティブアンテナアレイ11について説明する。図3(a)に示されるように、構造体151には、アレイ状に複数のアクティブアンテナAAが配され、アクティブアンテナアレイ11を構成している。アクティブアンテナAAは、テラヘルツ波を送受信するための半導体素子101およびアンテナとして機能する導体パターン102とを含む。導体パターン102が配される配線層は、アンテナ層とも呼ばれる。アクティブアンテナアレイ11は、図3(a)、3(b)に示されるように、縦m個、横n個のm×n(m≧1、n≧1)のマトリクス状にアンテナを配置したアンテナアレイを指す。ここで、半導体デバイス100の中央部とは、図3(b)におけるアクティブアンテナアレイ11を囲う枠の内側の領域と重なる領域を示しており、外周部とは枠の外側の領域と重なる領域を示している。
【0015】
構造体152は、アクティブアンテナAAを個別に制御するための制御回路165を備える。制御回路165は、複数の制御素子ACを備える。本実施形態において、制御素子ACは、アクティブアンテナAAに対して1対1の関係で接続され、アクティブアンテナAAと同様にマトリクス状に配されうる。そのため、制御回路165は、構造体152の中央部に配されうる。構造体152に配される制御素子ACは、構造体151に配される対応するアクティブアンテナAAの直下の領域に配されていてもよい。その場合、対応するアクティブアンテナAAと制御素子ACとの間の配線長が最短になり、また、それぞれのアクティブアンテナAAと制御素子ACとを結合する配線長が略等しくなる。そのため、配線インダクタンスを低減することができる。制御回路165は、アクティブアンテナAAのON/OFFスイッチ、半導体素子101にバイアス信号を供給するバイアス制御回路として機能するトランジスタ、アンテナに出力される電磁波の位相を制御する位相制御回路として機能するトランジスタなどが配された集積回路である。さらに、構造体152には、例えば、図3(d)に示されるように、制御回路165と協働するバイアス回路12、位相制御集積回路13、ベースバンド集積回路17、アナログ-デジタル変換回路/デジタル-アナログ変換回路16などが配されていてもよい。
【0016】
構造体152の構成は、図3(d)に示されるマトリクス状の制御素子ACの配置に限られるものではない。例えば、ライン駆動回路のように列や行ごとに、アクティブアンテナAAを制御するような構成であってもよい。その場合、制御素子ACの列や行を指定する水平シフトレジスタや垂直シフトレジスタが、構造体152の外周部に配される。また、制御回路165には、シフトレジスタからの信号で制御されるマトリクスを切り替えるスイッチなどが設けられる。構造体151に配されたアクティブアンテナAAが制御可能であれば、構造体152に配される制御回路は、適当な構成を有していればよい。また、アクティブアンテナAAをテラヘルツ波などの電磁波を受信する検出装置として用いる場合には、制御回路165に、プリアンプやローノイズアンプ、フィルタ回路などが配されうる。
【0017】
制御回路165は、シリコン基板などの半導体基板134上に設けられたトランジスタをベースとした電子集積回路でありうる。そのようなシリコン(Si)デバイスであれば、CMOSプロセスおよびFinFET(FinField-Effect Transistor)プロセスを随意に用いて、制御回路165などの構造体152の各構成を形成することができる。また、構造体152には、テラヘルツ波帯で動作する化合物半導体デバイスであるシリコンゲルマニウム(SiGe)-BiCMOS、SiGe-HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)/リン化インジウム(InP)-高電子移動度トランジスタ(HEMT)、nGaAs/InP-HBT、窒化ガリウム(GaN)-HEMTのトランジスタをベースとしたいずれの電子集積回路も用いることができる。その場合、半導体基板134には、SiGe基板や、InP基板、GaAs基板などの化合物半導体基板が用いられうる。ここで、BiCMOSは、バイポーラ回路とCMOS回路とを組み合わせた半導体回路である。なお、以降の実施形態は、トランジスタとしてSi MOSFET(MISFET)を用いた場合について説明するが、上述のように、これに限られることはない。
【0018】
図3(c)には、インターポーザ基板である構造体153の平面の概略図が示されている。構造体153は、構造体151と構造体152とを貫通ビアを通過する導体プラグを利用して電気的に接続するインターポーザ基板である。また、後述するように、構造体153は、半導体デバイス100において放熱を補助する役割を備える。構造体153は、互いに積層された基材層145a、145bと導体層144とを含む。導体層144には、構造体151に配された半導体素子101に電気的に接続された導体プラグ141が接続されている。また、導体層144には、複数の開口部142が配され、開口部142には、導体層144と同じ層に配された導体パターン143が配され、構造体151と構造体152とを電気的に接続する導体プラグに接続されている。図3(c)には、矩形の開口部142が示されているが、図2(b)や図3(a)に示されるように円形であってもよい。また、開口部142は、導体層144のうち導体パターン143以外の導体が配されていない部分を示し、例えば、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)などの絶縁体が埋め込まれていてもよい。また、開口部142は、空隙を有していてもよい。
【0019】
導体層144は、構造体153の外周部166へと延び、構造体153の外縁に熱的に露出するような構造となっている。また、構造体153は、構造体153に伝わる熱を基材層145a、145bおよび導体層144を介して構造体153の周囲方向へと拡散させる役割を持つ。そのため、構造体153は、全体として熱伝導性に優れた材料で構成される。例えば、構造体のうち基材層145(145a、145b)には、AlNなどのセラミックスが使用されてもよい。AlNの熱伝導率は、約150W/m・K以上であり熱伝導率が高い。例えば、構造体151の半導体基板131として用いられるInPの熱伝導率は、68W/m・K程度である。また、AlNの熱膨張係数は約4.6ppm/Kであり、InPの熱膨張係数である4.5ppm/Kとも近い値のため、熱膨張などによる半導体プロセスへの影響も少ない。
【0020】
しかしながら、基材層145の材料は、AlNなどのセラミックスに限られることはない。例えば、基材層145にグラファイトなどの炭素系材料が用いられてもよい。グラファイトの熱伝導率は、AlNの熱伝導率よりも、さらに1桁ほど高い。
【0021】
また、導体層144には、アルミニウムや銅、金などの各種の金属材料が用いられうる。これらの金属材料も、高い熱伝導率を有する。それによって、構造体153は、構造体153内での熱の移動が起こりやすく、半導体デバイス100における放熱を促進する。例えば、構造体153の全体での熱伝導率が、100W/m・K以上であってもよい。さらに、構造体153の全体での熱伝導率が、150W/m・K以上であってもよい。構造体151、152には、配線層間を絶縁するための酸化シリコンなどを用いた層間絶縁膜など、比較的、熱伝導率が低い材料が多く用いられる。そのため、構造体153は、構造体151および構造体152よりも熱伝導率が高くなる。それによって、構造体151や構造体152に配される素子から発せられる熱が、構造体153を介して放散される。
【0022】
構造体153の厚さは、100μm以上かつ1mm以下程度に調整されていてもよい。例えば、導体層144の厚さは、0.25μmから1μm程度である。そのため、基材層145(例えば、基材層145aと基材層145bとの合計)の厚さが、実質的に、100μm以上かつ1mm以下になりうる。構造体153は、熱伝導を行うための基板であるため、薄くすると断面積が小さくなり、熱抵抗が増加することで熱伝導性が低下する。そのため、構造体153の厚さが、構造体151に配される半導体基板131の厚さよりも厚くてもよい。構造体153を厚くすることによって、構造体151よりも熱抵抗が低い構造体153が実現されることから、上述のように構造体153は、100μm以上の厚さを有していてもよい。また、基材層145(例えば、基材層145aと基材層145bとの合計)が、100μm以上の厚さを備えていてもよい。一方、構造体153の厚さが厚くなることによって、構造体151と構造体152とを電気的に接続するために構造体153を貫通する導体プラグを通すための貫通ビアの径が大きくなりうる。その場合に、構造体151に配されるアクティブアンテナAAや構造体152に配される制御素子ACなどにおいて配線パターンが配される配線領域の自由度が低下する可能性がある。そのため、構造体153の最大の厚みは1mm程度に抑えてもよい。また、基材層145(例えば、基材層145aと基材層145bとの合計)の厚さが、1mm程度以下であってもよい。
【0023】
図2(a)は、構造体151の上面を示した図である。図2(b)は、構造体153のうち導体層144の基材層145aと接する面を示した図である。図2(a)に示されるように、アンテナとして用いられる導体パターン102は、方形パッチアンテナである。図2(a)では、9個のパッチアンテナが3×3のマトリクス状に配置されている。アクティブアンテナAAは、発振または検出するテラヘルツ波の波長以下、または、当該波長の整数倍のピッチ(間隔)で配することができる。アクティブアンテナAAは、パッチアンテナの上導体である導体パターン102(導体パターン102が配された配線層は、アンテナ層、上導体層とも呼ばれうる。)と、GND層かつリフレクタ層として機能する導体パターンである導体層109と、その間に配された半導体素子101と、を少なくとも有する。それによって、アクティブアンテナAAは、発振周波数fTHzのテラヘルツ波を半導体基板131の主面に対して垂直方向に放射する。
【0024】
アクティブアンテナAAを構成する半導体素子101は、テラヘルツ波を発振または検出するための半導体構造を含む。半導体素子101は、負性抵抗素子でありうる。ここでは共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いた例について説明する。RTDは、テラヘルツ波の周波数帯で電磁波利得を有する典型的な半導体構造であり、活性層とも呼ばれる。半導体素子101は、電磁波の発振または検出を行う半導体素子であればよく、RTDやアクティブアンテナの構成に限定されるものではなく、CCDやCMOSイメージセンサなどの半導体構造なども含まれる。図3(d)に示されるバイアス回路12は、半導体素子101に印加するバイアス信号を制御するための電源であり、制御回路165を介して、半導体素子101と電気的に接続される。
【0025】
また、半導体素子101として機能するRTDは、面積によって内部の寄生容量が変化し、調整することでテラヘルツ帯などの高周波発振が可能な素子として作用するが、テラヘルツ帯で利用する際のRTDの面積は小さくなることが多い。面積が小さくなるにつれて電流密度が高くなり、半導体デバイス100の駆動時の発熱が局所的に集中する。駆動するための通電によって集中したRTDの発熱は、金属などの電極部におけるエレクトロマイグレーションや熱膨張などの機械的ストレスに影響する。また、この発熱は、半導体デバイス100の寿命劣化や発振性能の変動など、部品の信頼性にも影響を及ぼす。さらに、半導体デバイス100は、RTDを搭載した構造体151の他に、RTDの制御や信号処理を行う構造体152を有しており、構造体152においても駆動によって熱が生じる。半導体デバイス100の構造体151および構造体152の駆動による熱を効率的に半導体デバイス100の外部に排熱することで、安定性の向上や寿命の延長など信頼性の向上に寄与することができる。すなわち、構造体153は、構造体151、152で生じる熱を放散するための排熱機構を備えるインターポーザ基板となる。
【0026】
構造体151には、アクティブアンテナアレイ11のアンテナ利得の増加を目的として、複数のアクティブアンテナAAをアレイ配置することが考えられている。それぞれのアクティブアンテナAAには、上述のようにRTDを含む半導体素子101が配されており、それぞれのアクティブアンテナAA間において相互注入同期させることで、アンテナ利得が増大する。
【0027】
各アクティブアンテナAA間は、伝送線である結合パターンCLで結ばれており、電気的に接続される。結合パターンCLは、導体によって形成されたマイクロストリップラインであり、アクティブアンテナAA間を周波数fTHzで相互注入同期することができる。図2(a)に示される3×3アレイの例であれば、アクティブアンテナAA間を水平方向(図2(a)の横方向)で同期するために、水平方向に互いに隣り合うアクティブアンテナAA同士は、2本の結合パターンCLで電気的に接続される。また、垂直方向(図2(a)の縦方向)の同期をとるために、垂直方向に互いに隣り合うアクティブアンテナAA同士は、1本の結合パターンCLで電気的に接続される。複数のアクティブアンテナAA間を同期するためには、隣接するアクティブアンテナAA間を結合する結合パターンCLが必要である。アクティブアンテナAAと結合パターンCLとは容量結合によって接続される。結合パターンCLの長さは、互いに隣り合うアクティブアンテナAA間を結合線で接続する場合に、横方向(磁界方向・H方向)および縦方向(電界方向・E方向)の何れか、または、両方で位相整合条件を満たすように設計される。
【0028】
本実施形態は、上述のような水平・垂直偏波を放射するアンテナだけでなく円偏波を放射するアンテナにも適用可能である。例えば、パッチアンテナである導体パターン102を正方形ではない方形とし、切り欠きを形成することで、円偏波を放射することができる。また、例えば、導体パターン102として、パッチアンテナとは異なる円偏波を放射するアンテナを適用してもよい。本実施形態では、結合パターンCLを用いたアクティブアンテナAAの同期構成を用いたアクティブアンテナアレイ11を示しているが、結合パターンCLの構成は、必須ではなく、この限りではない。
【0029】
一例において、結合パターンCLは、互いに隣り合うアクティブアンテナAAのRTD間の電気長が2π(1波長)の整数倍となるような長さに設計される。例えば、水平方向に延びる結合パターンCLの長さは、アクティブアンテナAA間の半導体素子101間における電気長が4πとなる長さである。また、垂直方向に延びる結合パターンCLの長さは、アクティブアンテナAA間の半導体素子101間における電気長が2πとなる長さである。ここで、電気長とは、結合パターンCL内を伝搬する高周波の伝搬速度を考慮した配線長である。つまり、結合パターンCLの長さは、電磁波の結合パターンCLにおける波長に基づき設定される。このような設計を用いることによって、それぞれのアクティブアンテナAAの半導体素子101は、正位相で相互注入同期される。ここで、結合パターンCLの長さの範囲の誤差は、±1/4π程度であってもよい。
【0030】
次いで、図1(a)~1(c)を用いて、本実施形態の半導体デバイス100の積層構造について説明する。構造体151に配された半導体素子101は、図1(a)に示されるように、導体層109側から電極層164、半導体構造162、電極層163の順で積層されて、これらは電気的に接続されている。半導体構造162は、テラヘルツ波に対する電磁波の利得または非線形性を有する半導体構造であり、本実施形態では、上述したようにRTDを用いている。また、電極層163と電極層164とは、半導体構造162に電位差または電流を印加するために、半導体構造162の上下のコンタクト電極(オーミック電極やショットキー電極)と上下の配線層に配された導体パターンとを接続するための電極層を兼ねた構造である。電極層163と電極層164は、オーミック電極やショットキー電極として知られる金属材料(Ti・Pd・Au・Cr・Pt・AuGe・Ni・TiW・Mo・ErAsなど)や不純物をドーピングした半導体から構成されうる。例えば、半導体基板131(InP基板)/導体層109(n-InGaAs)/電極層164(n-InGaAs)/半導体構造162(AlAs/InGaAs/AlAs)/電極層163(n-InGaAs)のような積層構造を有していてもよい。
【0031】
化合物半導体を集積した構造体151の半導体基板131として、化合物半導体を結晶成長した化合物半導体基板である半絶縁性のInP基板が用いられてもよい。InP基板は、例えば、4インチ程度の直径を有しうる。ここで、配線インダクタンス低減の観点から、InPなどを用いた半導体基板131の厚みは、100μm以下であってもよい。さらに、半導体基板131は、10μm以下まで薄化されていてもよい。半導体基板131の厚さは、動作させるテラヘルツ波の波長の1/10以下の範囲で設計されうる。一例では、半導体基板131の厚さは、動作させるテラヘルツ波の波長の1/20以下である。
【0032】
構造体151は、さらに、アンテナとして機能する導体パターン102、半導体素子101、導体層109(リフレクタ層)、誘電体層105、106、導体パターン102と半導体素子101とを接続する導体プラグ104を含む。また、半導体素子101に制御信号を印加するために、図1(b)、1(c)に示されるようにバイアス用の導体パターン103、導体プラグ107、金属-絶縁体-金属(MIM)構造の容量素子126、抵抗素子127が、アクティブアンテナAAに接続される。容量素子126は、バイアス制御回路に起因した低周波の寄生発振を抑制するために配される。容量素子126は、導体層113とGND層である導体層109とを用いて、誘電体層106の一部を挟んだ構造を使用している。アクティブアンテナAAは、アンテナとして機能する導体パターン102間をテラヘルツの周波数で同期するため、導体パターン111を用いた結合パターンCLで電気的に接続されている。
【0033】
アクティブアンテナアレイ11と化合物半導体を集積したアンテナ基板である構造体151の下面は、インターポーザ基板である構造体153の接合面BS1に接合されている。さらに、構造体153の接合面BS2は、集積回路基板である構造体152に接合されている。ここで、「接合する」とは、構造体151が、構造体153と接合面BS1を共有し、構造体152が、構造体153と接合面BS2を共有していると定義されてもよい。
【0034】
構造体151と構造体153との接合、構造体152と構造体153との接合には、それぞれCu-Cu接合などの金属接合、SiO/SiO接合などの絶縁体接合、ベンゾシクロブテン(BCB)などの接着剤を使用した接着剤接合、および、これらの組み合わせとなるハイブリット接合などが用いられる。接着剤接合の場合、接着剤は、構造体151、152に含まれうる。他にも、基板上に形成された金(Au)などの金属で形成された金属バンプを利用して接続するフリップチップ接合などが用いられる。接合プロセスとして、プラズマ活性化を用いた低温接合や、熱圧着、フリップチップ接合の場合は超音波圧着などが用いられる。また、接合には同サイズの半導体ウェーハ同士の接合、異なるサイズの半導体ウェーハ同士の接合、ウェーハに半導体チップを離間して複数接合する方式(タイリング)などが用いられる。
【0035】
図1(a)、1(b)、1(c)は、上述したように図2(a)のA-A’間、B-B’間、C-C’間の断面図である。構造体151には、構造体153の接合面BS1から順に、絶縁体層148、半導体基板131、導体層109、誘電体層106、105、112が積層されている。誘電体層106、105、112には、導体プラグ104、107、117と、導体パターン102、103、111がそれぞれ配される。アクティブアンテナアレイ11において、半導体素子101のメサ構造は、誘電体層106で周囲を覆うように埋め込まれている。半導体基板131には、半導体基板131を貫通するように形成された貫通ビアに導体プラグ137が配される。導体プラグ137には、銅や金、タングステン、チタンなどが用いられる。構造体151と構造体153との接合用の絶縁体層148および電極パターン138は、接合面BS1に接するように平坦化されており、平坦な構造体151の下面と構造体153の接合面BS1とが露出する状態で、接合プロセスが実施される。構造体151に配される誘電体層105、106、絶縁体層148として、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン(SiON)、炭素含有酸化シリコン(SiOC)、炭化シリコン(SiC)などの無機絶縁材料が用いられる。
【0036】
図2(c)は、図2(a)に示されるアンテナ領域および周辺領域を説明する図である。図2(c)に示されるように、アクティブアンテナアレイ11は、アンテナが設けられたアンテナ領域52(パッチアンテナの上導体である導体パターン102の中の領域)と、バイアス配線や結合パターンCLが設けられるアンテナ領域外の周辺領域51とを含み構成される。アンテナ領域52は、図3(b)、3(c)、3(d)に示される構造体151、152、153の積層方向において、パッチアンテナの上導体である導体パターン102と重なる領域を指す。周辺領域51は、構造体151、152、153の積層方向において、パッチアンテナの上導体である導体パターン102と重ならない領域を指す。一例では、周辺領域51は、パッチアンテナの上導体である導体パターン102と重ならない領域であって、導体パターン102とテラヘルツ波の1/10波長以上離れた領域を指す。すなわち、アンテナ領域52は、テラヘルツ波の近傍界を含む領域であり、周辺領域51はテラヘルツ波の近傍界を含まない領域であるといえる。
【0037】
構造体153は、上述のように基材層145と導体層144とを含む、半導体デバイス100のうち熱伝導率が高い領域である。図1(a)~1(c)に示される構成において、構造体153は、構造体151と導体層144との間に配された基材層145aと、導体層144と構造体152との間に配された基材層145bと、を含む。基材層145aの接合面BS1の側には、構造体151との接合用の電極パターン139が配されている。電極パターン139は、基材層145aを貫通する導体プラグ141aに接続されている。基材層145aおよび電極パターン139は、接合面BS1において平坦化されており、平坦な構造体151の下面と構造体153の接合面BS1とが露出する状態で、接合プロセスが実施される。したがって、接合面BS1は、導体層109と構造体153との間に設けられるともいえる。
【0038】
さらに、構造体153の導体層144には、図1(b)に示されるように、開口部142が配され、基材層145aに配された導体プラグ141aに接続された導体パターン143が存在する。導体パターン143は、基材層145bに配された導体プラグ141bに接続され、構造体151と構造体152とを電気的に接続する。導体パターン143は、導体層144から形成されうるが、半導体デバイス100において、導体層144とは電気的に絶縁されている。
【0039】
基材層145bの接合面BS2の側には、構造体152との接合用の電極パターン146が配されている。電極パターン146は、基材層145bを貫通する導体プラグ141bに接続されている。基材層145bおよび電極パターン146は、接合面BS2において平坦化されており、平坦な構造体152の上面と構造体153の接合面BS2とが露出する状態で、接合プロセスが実施される。
【0040】
構造体152には、半導体基板134から順番に、絶縁体層133、導体パターン140、絶縁体層132、絶縁体層149が積層されている。絶縁体層132には、導体プラグ150、絶縁体層149には、構造体152との接合用の電極パターン147が形成される。構造体152と構造体153との接合用の絶縁体層149および電極パターン146は、接合面BS1に接するように平坦化されており、平坦な構造体152の上面と構造体153の接合面BS2とが露出する状態で、接合プロセスが実施される。図1(a)~1(c)に示される構成は、構造体151に配されたアンテナとして機能する導体パターン102と構造体152に配された制御回路165とが離れる。そのため、テラヘルツの周波数で動作するアクティブアンテナアレイAAと、RF周波数で動作する制御回路165などの各回路と、の電波干渉によるノイズ低減が可能となる。絶縁体層132、133、149には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭素含有酸化シリコン、炭化シリコンなどの無機絶縁材料が用いられうる。
【0041】
化合物半導体を集積した構造体151のリフレクタである導体層109は、半導体基板131に設けた導体プラグ137および接合用の電極パターン138を介して、構造体152の接合面BS1に電気的に接続される。ここで、導体プラグ137および電極パターン138を構造体151に配された1つの部材としての導体プラグとして定義すると、構造体151には、半導体素子101に電気的に接続され、かつ、構造体152の接合面BS1に達する導体プラグが配されているともいえる。また、構造体153の導体層144と接合面BS1との間には、基材層145aに配された導体プラグ141aと接合用の電極パターン139が配される。電極パターン138と電極パターン139は、接合面BS1で電気的に接続されることによって、構造体151に配された導体層109の電位と構造体153に配された導体層144の電位とが共有される。ここで、導体プラグ137、電極パターン138、電極パターン139および導体プラグ141aを構造体151、153に配された1つの部材としての導体プラグとして定義すると、半導体素子101に電気的に接続され、かつ、構造体152の接合面BS1に達する導体プラグは、さらに、基材層145aを貫通し、導体層144に電気的に接続されているともいえる。
【0042】
構造体151と構造体153との接合強度を高めるために、接合面BS1に構造体151と構造体152との間で信号の授受を行わないダミーの電極パターン138d、139dが配されていてもよい。構造体151と構造体152との間の信号の授受を行うための電極パターン138、139が不要な領域に、ダミーの電極パターン138d、130dを広く配置することによって、金属接合時の接合強度を高めることができ、歩留まりと信頼性を改善することができる。
【0043】
構造体153の導体層144と構造体152の導体パターン140とは、基材層145bに配された導体プラグ141bおよび電極パターン146、絶縁体層132に配された導体プラグ150および電極パターン147を介して電気的に接続される。それによって、構造体151と構造体152との電位が共有される。一例として、構造体152の導体パターン140をGND層として、半導体デバイス100全体のGND電位が共有可能である。
【0044】
構造体151と構造体153との接合強度を高めるために、接合面BS2においても、上述と同様にダミーの電極パターン146d、146e、147d、147eなどが設けられていてもよい。また、図1(b)に示されるように、ダミーの電極パターン146eが、導体層144に電気的に接続されていてもよい。これらのダミーの電極パターンは、構造体151や構造体152で発生した熱を構造体153に効率よく伝えるための部材として適宜、用いられる。他にも、これらの構成は、構造体151のアクティブアンテナAAへの構造体152の集積回路に起因する電磁波ノイズの影響を低減しうる。
【0045】
構造体151は、アンテナとして機能する導体パターン102が配された配線層と、導体パターン102が配された配線層と構造体153との間に配された配線層である導体層109と、を含む。導体パターン102は、上述のように、半導体素子101に電気的に接続される。また、導体層109は、接合面BS1に対する正射影において導体パターン102よりも面積が大きく、かつ、半導体素子101に電気的に接続された導体パターンである。これらの構成によって、導体パターン102とGND層として動作する導体層109とは、テラヘルツ波と共振するパッチアンテナとして機能する。また、GND層およびリフレクタ層として機能する導体層109とは別に、構造体152に配された導体パターン140もGNDパターンとして機能し、さらに、2つのGND層、GNDパターンの中間に導体層144をGND層として配置できる。それによって、テラヘルツの周波数で動作するアクティブアンテナアレイ11と、RF周波数で動作する制御回路165などの構造体152に配された集積回路と、の電波干渉によるノイズ低減が可能となる。ノイズ低減の効果を高めるためには、GND層、GNDパターンとして機能する導体層109、144、導体パターン140は、それぞれ、半導体層131、基材層145、半導体層134のうち大きな面積を覆うようなベタパターンであってもよい。構造体151の結合パターンCLを含む導体パターン111は、誘電体層112上に形成され、導体パターン102のアンテナの上導体同士を電気的に接続させる。
【0046】
構造体151の半導体素子101と接続されたバイアス用の配線パターンを形成する導体パターン103は、構造体152に配される集積回路に設けられたバイアス制御回路を構成するトランジスタTRに電気的に接続される。トランジスタTRは、バイアス制御回路以外にも構造体152に配された集積回路をそれぞれ構成するために、構造体152の基材である半導体基板134の表面近傍に形成される。導体パターン103は、誘電体層106に配された導体プラグ117、導体層109の開口部136に設けた導体パターン135、半導体基板131に配された導体プラグ137、接合用の電極パターン138の順で電気的に接続され、接合面BS1へと到達する。同様に構造体152に配されたトランジスタTRは、絶縁体層132に配された導体プラグ150、接合用の電極パターン147の順で電気的に接続され、接合面BS2に到達する。構造体153において、導体層144に設けられた開口部142に配された導体パターン143から接合面BS1まで導体プラグ141aおよび接合用の電極パターン139が電気的に接続される。また、導体パターン143から接合面BS2まで導体プラグ141bおよび接合用の電極パターン146が電気的に接続される。それによって、構造体153において、接合面BS1に配された電極パターン139と接合面BS2に配された電極パターン146とは、電気的に接続されている。さらに、構造体151に配された電極パターン138と構造体153に配された電極パターン139とが電気的に接続され、構造体153に配された電極パターン146と構造体152に配された電極パターン147とが電気的に接続される。それによって、構造体151の電極パターン138と構造体152の電極パターン147とを電気的に接続することができ、アクティブアンテナAAのバイアス用の導体パターン103と構造体152に配されたトランジスタTRとが導通し、各アクティブアンテナAAのバイアス制御が可能になる。図1(b)では、導体プラグ141aと導体プラグ141bとが、接合面BS1に対する正射影において、同じ位置に配されているが、導体パターン143を介して異なる位置に配されていてもよい。それによって、構造体152から構造体151への配線経路が延長され、構造体152から構造体151への熱の移動が抑制されうる。
【0047】
ここで、開口部136と、構造体151と構造体153とを電気的につなぐ各導体(導体パターン135、導体プラグ137、電極パターン138)の配置を工夫することによって、放射効率やノイズの対策効果が期待される。具体的には、リフレクタとして機能する導体層109に設けられる開口部136は、アンテナ領域52とは重ならない周辺領域51に配してもよい。しかしながら、そのような配置は、必ずしも必要ではない。例えば、開口部136、導体パターン135および導体プラグ137に伝搬することが想定される電磁波の電気長に比べて、導体パターン135および導体プラグ137の幅が十分小さい(典型的には電気長λの1/10以下)場合であれば、アクティブアンテナAAへの影響は無視できる。この場合、開口部136、導体パターン135および導体プラグ137は、アンテナ領域52内に配されていてもよい。
【0048】
図1(c)に示されるように、導体パターン102は、導体プラグ107を介して配線パターン108に電気的に接続されている。配線パターン108は、抵抗素子127を介して導体パターン103へと接続し、さらに、容量素子126に接続される導体プラグ114へと電気的に接続される。アンテナとして機能する導体パターン102に接続される導体プラグ107は、アクティブアンテナAA上に形成される共振電界の節の位置において、アクティブアンテナAAと接続されるよう位置が設定される。さらに、上述した導体パターン103は、半導体素子101へバイアスを供給するパターンであり、抵抗素子127と容量素子126とは、そのバイアスラインに接続されているといえる。これによって、周波数fTHz以外の高周波がACショートされ、高周波におけるインピーダンスを低減し、アクティブアンテナアレイ11におけるマルチモード発振を抑制する効果が期待できる。
【0049】
図1(c)に示されるように、構造体152にはGND層である導体パターン140へと接続する経路が図示されている。図1(a)では、導体パターン140と構造体153の導体層144とを電気的に接続するよう構成していた。しかしながら、半導体デバイス100の他の場所において、図1(c)に示されるように、構造体153の導体層144に設けられた開口部142に配された導体パターン143を介して、導体パターン140は、構造体151のGND層である導体層109と直接接続する形態をとってもよい。これらの構成は、熱の移動や配線のインピーダンス制御などのパラメータを決定するうえで適宜設定されるものとなり、これらに限られることはない。
【0050】
アクティブアンテナAAは、テラヘルツ波などの電磁波を共振する共振器と、電磁波を発振または検出する放射器を兼ねている。アクティブアンテナAAは、導体パターン102と半導体素子101との接続のための導体プラグ104と結合パターンCLとを含む。また、バイアス用の配線を形成する導体パターン103は、導体プラグ107を介して導体パターン102と接続している。導体パターン103には、ACショートを構成する抵抗素子127、容量素子126、構造体152へとつながるバイアス供給用の導体プラグ117がそれぞれ接続されている。導体プラグ117は、構造体152に配される集積回路と、導体パターン102が配された配線層と導体層109が配された配線層との間の配線層に配された導体パターン103と、を電気的に接続するために配されるともいえる。接合面BS1に対する正射影において、図1(b)に示されるように、導体パターン102と導体プラグ117とは、重ならないように配されうる。
【0051】
構造体152の導体プラグ141aは、構造体151のGND層である導体層109と導体層144とを電気的および熱的に接続している。半導体素子101から発生する熱は、主に、構造体151のGND層として機能する導体層109、導体プラグ137、電極パターン138を介して構造体153に流れる。さらに、熱は、電極パターン139、導体プラグ141aを介して導体層144へと流れる。そのため、排熱用の導体層144に接続する導体プラグ141aは、構造体153の導体パターン143に接続する導体プラグ141aと比較して幅が大きく設定されていてもよい。構造体153に流れた熱は、構造体153の中央から温度が低い外縁へと移動し、半導体デバイス100の外部へと放散される。半導体デバイス100が動作中の熱平衡状態において、構造体153の温度が、接合面BS1に対する正射影において、構造体153の中央から外縁に向かい低くなる勾配を有するように、半導体デバイス100は動作しうる。また、構造体153を構成する基材層145a、145bも、熱伝導率が高い窒化アルミニウムやグラフェンなどの材料を用いて構成されることによって、より円滑な熱の移動を行うことが可能となる。
【0052】
さらに、構造体153の導体パターン143は、導体層144の開口部142に配されており、導体層144とは電気的に絶縁されている。必要に応じて、導体層144に開口部142を形成し、構造体151と構造体152との間の電気経路を配することが可能である。この場合に、図3(b)、3(c)に示されるように、アクティブアンテナアレイ11と重複する導体層144の領域167の内部は、縦横に通る配線ライン(導体層144)を形成し、開口部142をその間の空間に設けてもよいし、導体層144の縦横の配線ラインを導体層144全体に配してもよく、導体層144のパターン構成は、図2(b)や図3(c)に示される限りではない。構造体153のうち基材層145の熱伝導率を向上させることによって、相対的に薄い層で熱抵抗が大きくなる導体層144は、熱伝導に与える影響が小さくなりうる。そこで、熱伝導だけでなく、導体層144のGND層としての機能や、構造体151と構造体152との間の電気経路に応じて、導体層144は、適当なパターン構成を有していればよい。
【0053】
また、例えば、構造体152の半導体基板134と構造体153の接合面BS2との間に、構造体152から構造体153への熱の移動を妨げるように熱抵抗が高い断熱層が設けられていてもよい。断熱層とは、例えば、酸化シリコンなどよりも熱伝導率が低い、熱伝導率が1W/m・K未満の層でありうる。また、例えば、構造体151、152に配される層において、放熱による温度低下と駆動時の温度の上昇とのバランスをとるために、所定の温度を維持したまま安定化させることなどを目的として、熱容量が大きな材料や構造を利用した蓄熱層が配されていてもよい。蓄熱層とは、例えば、酸化シリコンなどよりも比熱が大きい、比熱が0.9kJ/kg・K以上の層でありうる。
【0054】
図2(a)に示されるようなアクティブアンテナAAを備える半導体デバイス100は、例えば、0.3~0.6THzの周波数帯域で電磁波を放射可能であり、複数のアクティブアンテナAAは、同一の周波数帯域で単一モード発振が可能である。半導体基板131は、例えば、半絶縁性のInP基板である。半導体素子101の半導体構造162は、上述したように、半導体基板131上に格子整合したInGaAs/AlAsによる多重量子井戸構造から構成され、例えば、二重障壁構造のRTDが用いられてもよい。これは、RTDの半導体ヘテロ構造ともいう。RTDの電流電圧特性は、一例では、ピーク電流密度が9mA/μmであり、単位面積当たりの微分負性コンダクタンスが10mS/μmである。半導体素子101は、例えば、メサ構造に形成されていてもよい。アクティブアンテナAAは、上導体である導体パターン102の一辺が、例えば、150μmの正方形パッチアンテナであり、アンテナの共振器長(L)は150μmである。半導体素子101は、導体パターン102と導体層109との間に、導体パターン102と重なる位置に配されている。
【0055】
半導体素子101とアンテナである導体パターン102とを接続する導体プラグ104の幅は、共振電界に干渉しない程度の寸法でありうる。典型的には、導体プラグ104の幅は、アクティブアンテナAAの発振周波数fTHzの1/10以下に設定される。導体プラグ104の幅は、アンテナが発振または受信する電磁波の波長の1/10以下であるともいえる。ここで、導体プラグ104の幅とは、接合面BS1に対する正射影において、最も長い部分の長さである。導体プラグ104の幅は、導体プラグ104が円柱構造の場合、円柱構造の直径でありうり、直方体の場合は、対角線の長さでありうる。また、導体プラグ104の幅は、直列抵抗を増やさない程度に小さくてもよく、目安としては表皮深さの2倍程度まで縮小できる。直列抵抗が1Ωを超えない程度まで小さくすることを考えると、導体プラグ104の幅は、典型的には0.1μm以上かつ20μm以下の範囲であってもよい。一例では、導体プラグ104は、直径10μmの円柱構造である。導体プラグ107、114、137なども同様である。
【0056】
半導体素子101を駆動し、10mW程度の放射強度を有するテラヘルツ波の放射を行うために必要な電力は、半導体素子101に印加するバイアス電圧および流れる電流から、1W程度である。放射効率は1%程度、理想的にも数%程度であるので、残りの90%以上は主に熱へと変換され、構造体151内で消費される。そのため、構造体151は発熱し、その熱量は0.9W相当となる。本開示の半導体デバイス100は、構造体151を安定的に駆動させるために、0.9W相当の熱源を半導体デバイス100の外部へと継続的に放熱し、半導体素子101の温度を適切に制御することが必要になる。しかしながら、チップ外部に高性能な放熱部材を用いたとしても、半導体デバイス100内の半導体素子101から半導体デバイス100外部までの熱経路における熱抵抗が大きいと、熱の移動が阻害され、半導体素子101の温度を下げることが難しくなる。そのため、半導体デバイス100内部の熱の移動を効率よく行う構成が必要となる。
【0057】
本実施形態における半導体デバイス100の実装および熱の移動に伴う主な熱経路について、図4を用いて説明を行う。図4は、図3(c)に示した半導体デバイス100(構造体153)の外周部166に着目し、構造体151、153、152と支持基板170(パッケージ基板や回路基板などでありうる。)との接続形態を表した模式図である。
【0058】
構造体151の表面にはアクティブアンテナAAが形成され、テラヘルツ波の送受信を行う。構造体151の外周部166の表層には、ワイヤボンディング用の複数の電極が配されたPAD部200が設けられている。PAD部には、構造体151や構造体152に配された回路に必要な信号のうち外部からの制御が必要な信号や電源などの授受に使用される。PAD部200に配された電極は、ボンディングワイヤ201によって支持基板170の電極パッド171へと電気的に接続される。ボンディングワイヤ201には、金(Au)などの金属が用いられる。構造体151、153、152は、構造体152の下面および支持基板170の少なくとも一方に施された金属の接着層172を用いて、支持基板170へ固定(ダイボンディング)されている。接着層172には、金属だけではなく、樹脂などが用いられてもよい。支持基板170の接着層172と接触する面には、ダイボンディング用の金属パッド173が形成され、構造体152と熱的に接続されている。
【0059】
さらに、支持基板170には、構造体153と熱的に接続される放熱体202が配されている。より具体的には、放熱体202は、構造体153の外縁に接している。放熱体202は、半田や金属加工物など熱伝導率の高い導体で形成されうる。放熱体202は、支持基板170の表面の金属パッド173に固定されており、熱的に支持基板170に接続される。また、支持基板170の内部には、金属などの導体で形成された放熱体174が配される。放熱体174は、放熱体202の熱を支持基板170の構造体151、153、152から離れた領域、例えば、支持基板170の構造体152と対向する面とは反対側の裏面の側などへと伝える役割を持つ。それによって、構造体153の外縁(外周部166)から熱を構造体153の外部へと伝えることができ、支持基板170から放熱を行うことができる。放熱体202は、構造体151による電磁波の発信や受信に影響を与えないように、アンテナとして機能する導体パターン102よりも支持基板170の側に配されていてもよい。
【0060】
駆動に応じて構造体151の半導体素子101で発生した熱は、構造体151の各要素を伝わり拡散する。しかしながら、誘電体層105、106、半導体基板131は、熱伝導率が導体層109や導体プラグ137よりも低い。そのため、半導体素子101で発生した熱は、図4の下方向へと、主に導体層109、導体プラグ137、電極パターン138を含む熱経路180を通り、構造体153に伝わる。熱経路180は、構造体153において熱伝導率が高い基材層145a、145bおよび導体層144を含む熱経路181へ接続されている。熱経路181は、構造体153の厚さ方向に交差し、構造体の中央からが異変に向かう方向、すなわち、図4における左方向に延在する。熱経路181は、構造体153の外周部166の外縁まで延び、露出部183において熱的に露出する構成になっている。露出部183は、構造体153の外縁の全周にわたって露出する構成でもよいし、一部のみ露出する構成になってもよい。露出した露出部183は、放熱体202と熱的に接続する。図中の矢印182は、半導体素子101で発生した熱が、構造体151、153、152の外部へと伝わる熱経路を示している。半導体素子101で発生した熱は、主に熱経路180から熱経路181へと伝わり、露出部183に到達することで半導体素子101の熱を効率的に放散する構造としている。一方、半導体素子101を駆動する電流は、構造体152から構造体153を介して構造体151へ、すなわち、図4の縦方向に流れる。つまり、構造体153において、熱は、主に図4の横方向へと流れるのに対して、電流は、縦方向に流れる構成を有している。
【0061】
テラヘルツ波などの電磁波を発振または受信するアクティブアンテナアレイ11において、それぞれのアクティブアンテナAAを個別に制御するためには、半導体素子101にバイアスを供給するバイアス線、アクティブアンテナAA間の同期を制御する結合パターンCL、アクティブアンテナAAにベースバンド信号を注入する制御線など、複数の電気経路が必要になる。一方、アンテナ利得の向上にはアンテナ数を増やす必要があるが、アクティブアンテナAAの数の増加とともにレイアウト起因による配線インダクタンスが増大し、高周波化が阻害されうる。これに対して、本実施形態では、アクティブアンテナアレイ11を含む構造体151と構造体153とアクティブアンテナアレイ11を制御する集積回路基板である構造体152とを半導体接合技術により積層している。それによって、アクティブアンテナアレイ11の制御に必要な周辺回路を、構造体151の半導体基板131上に集積することや、半導体デバイス100の外部から接続する実装形態をとる必要がなくなる。これは、配線パターン(電気経路)の引き回しに起因するインダクタンスの増大を抑制し、典型的には1nH以下に抑制することができるため、1GHz以上の高周波で変調制御されるベースバンド信号の信号ロスや信号遅延を抑制することができる。構造体151における信号の損失は、主に熱へと変換されるため、構造体151内部の発熱につながる。積層による信号ロスの低減は、信号の損失を減らし、発熱を抑えることにもつながる。
【0062】
また、構造体151と構造体152とを積層することによって、アクティブアンテナAAの周囲にテラヘルツ波の送受信と関係しない回路が存在しない、または、十分に少なくすることができる。そのため、テラヘルツ波の送受信と関係しない回路に起因するノイズが低減され、アンテナの特性を最大限に発揮させることができる。半導体素子101のバイアス信号などをアクティブアンテナAAごとに制御する場合、それぞれに対応するバイアス線を個別に配置する必要がある。これに対し、本実施形態では、アクティブアンテナアレイ11を含む構造体151が、導体プラグ(導体プラグ137など)や構造体153を介して構造体152に配された集積回路と直接接続することができる。アクティブアンテナアレイ11を用いる場合、リフレクタとなる導体層109よりも構造体152の側に、導体プラグ137などの電気経路を配置できる。それによって、レイアウトの影響を受けずにアクティブアンテナアレイ11に含まれるアクティブアンテナAAの数を増加させることができる。レイアウトの自由度が向上することで、信号の伝送線路に適切なクリアランスを確保することができ、伝送線路の損失を抑えることができる。すなわち、損失による発熱を押さえることにつながる。
【0063】
構造体151に形成される導体パターン102などのアンテナの形状や半導体素子101の半導体構造162は、送受信するテラヘルツ波の波長に応じて適宜変更され、多様な周波数をカバーするために複数の種類が存在することも考えられる。また、集積回路を含む構造体152は、従来のCMOS集積回路技術を用いて検出回路や信号処理回路などの複雑な回路を構成することができる。信号処理回路などは周波数に依らず汎用的に使用することが可能な回路も多い。構造体153においても、構造体151と構造体152とをただ単に配線によって接続するだけでなく、そのような複数の種類のアクティブアンテナAAが配された構造体151と汎用的な構造体152との接続を行う。構造体153は、多様化するバリエーションに対応し適切に配線を行うことができる中間の緩衝層として構成や設計の流用性を高めるために最適化されるものである。
【0064】
このようにして構成された構造体151、構造体152、構造体153は、構造体151、152、153が積層された半導体デバイス100の放熱においても優位である。構造体151の半導体素子101で発生した熱が、構造体151、153、152全体へと広がる際、主に、熱伝導率の高い導電性のある導体プラグ137や導体層109を介して構造体153へと伝わる(上述の熱経路180)。さらに、熱経路180から構造体153へと流入した熱は、構造体151よりも熱伝導率が高い構造体153を横方向(構造体151、153、152が積層される方向と交差する方向)へと熱の移動を行う熱経路181へと熱的に接続される。構造体153の熱は、構造体153の外周部166に露出した露出部183から放散される。露出部183は、上述のように放熱体202に接続されていてもよい。放熱体202に移動した熱は、ヒートシンクやファン、ペルチェ素子などで熱交換を行う冷却部によって冷却されてもよい。半導体素子101の発熱は、構造体151、153、152の外部へと続く熱勾配によって熱経路180および熱経路181を介して継続的に排熱され、構造体151、153、152は、冷却されることとなる。それによって、半導体素子101の温度上昇を抑え、動作の安定化や素子の長寿命化を実現することができる。
【0065】
本開示を適用した実施形態として、図5を用いて、Fan Out Wafer Level Package(FOWLP)の半導体デバイス300の例を説明する。図5は、FOWLP形態の半導体デバイス300の断面構造を示す模式図である。構造体152の下側(構造体153とは反対の側)には、再配線層(RDL)301が配され、構造体151、153に配された素子や回路などを外部端子へと接続している。
【0066】
図5に示される構成では、構造体151と構造体152と構造体153のそれぞれの接合面BS1に対する正射影におけるサイズが異なる場合が示されている。例えば、構造体153の接合面BS1の上に個片化された構造体151のタイリングを行う直接接合によって、構造体151と構造体153とは接合される。また、構造体152と構造体153との接合は、フリップチップによる接合である。フリップチップによる接合において、通常、バンプの間は、樹脂などのフィラーで埋められる。樹脂は、熱伝導率が低いものが多く、直接接合を行った構造体151と構造体153との接合とは異なり、構造体152から構造体153への熱の移動量は相対的に低下する。バンプおよびフィラーが配された層は、上述の断熱層に相当しうる。さらに追加の断熱層や、上述し蓄熱層が配されていてもよい。それによって、構造体152に配された制御回路などで発生する熱が、構造体153に伝わり難くなる。結果として、構造体151で発生する熱が、より効率的に構造体153に伝わることになる。
【0067】
構造体151と構造体153との接合、構造体153と構造体152との接合の方法や形態は、本実施形態の説明のための一例である。半導体デバイス300における積層形態は、上述に限られることはなく、適当な方法および形態が用いられればよい。
【0068】
構造体152の周囲には、構造体153に埋め込むように誘電体である樹脂などを用いた誘電体層302が配されている。誘電体層302には、再配線層301に対して構造体153から電気的および熱的に接続を行う導体プラグ303が設けられている。導体プラグ303は、インターコネクト用の銅ピラーなどを利用してもよいが、これに限られることはない。再配線層301の下部には半導体デバイス300を外部の基板に接続するための端子310が配される。端子310には、半田バンプ304が設けられうる。再配線層301内には、構造体151、152に配された素子や回路などを外部の回路などへと接続するための電気経路が配される。再配線層301の内部または表面には、半導体デバイス300を駆動するための信号制御に必要なフィルタやキャパシタなどの受動部品(不図示)などが、適宜、配置されていてもよい。
【0069】
半導体デバイス300は、再配線層301のサイズに応じて全体を封止するため、封止樹脂305に埋め込まれていてもよい。構造体151の表面からはテラヘルツ波の放射または受信を行うため、封止樹脂305は、半導体デバイス300が放射または検出する周波数帯のテラヘルツ波を透過する材料を選択する必要がある。また、構造体151の上面に封止樹脂305を配さなくてもよい。また、例えば、構造体151の上面に配される部分と他の部分とで、封止樹脂305の材料が異なっていてもよい。また、例えば、構造体151の上面に封止樹脂305が配されず、ガラスなどを用いて封止が行われていてもよい。
【0070】
半導体デバイス300は、構造体151、153、152内の熱を外部へ放散する2つの主な経路が配される。1つ目は、構造体151の熱を逃がす経路である。構造体151の熱は、上述した実施形態と同様に、熱伝導理が高い構造体153へと伝わり、構造体153の外周部166へと移動する。構造体153の外周部166へと移動した熱は、構造体152を取り囲むように配された誘電体層302に設けられた熱伝導用の導体プラグ306によって再配線層301へと伝えられる。熱伝導用の導体プラグ306は、導体プラグ303と同様の構造であってもよいが、熱伝導性を高めるために、図5に示されるように、導体プラグ303よりも太くてもよいし、また、より多くの導体プラグ306が配されていてもよい。再配線層301では、熱は、さらに熱伝導を考慮した配線パターンおよび導体プラグ307によって半田バンプ304まで伝えられ、半導体デバイス300の外部へと放熱される。
【0071】
2つ目の経路は、構造体152の熱を逃がす経路である。構造体153と構造体152との間の熱の移動が少ないように構成された半導体デバイス300において、構造体153は、下面(構造体153とは反対側の面)からの放熱経路をとるように構成されている。構造体152の下面には、金属層309などの熱伝導率が高い材料を用いた層を配し、金属層309を熱伝導用の導体プラグ308に接続し、半田バンプ304を介して外部へ放熱する。また、半田バンプ304ではなく、再配線層301の下面において、導体プラグ308と重なる領域に端子310よりも大きく形成された放熱用の端子を設け、放熱用の端子と外部のプリント基板などを直接に半田付けしてもよい。
【0072】
図5に示されるようなテラヘルツ波帯の放射または検出する半導体デバイス300では、半導体デバイス300の外部からの信号を半田バンプ304によって接続する。それによって、ボンディングワイヤなどの配線によるインピーダンス影響を大幅に下げることができる。そのため、高周波領域の信号伝送の安定性などが向上し、半導体デバイス300の動作の安定化や性能向上に寄与することができる。
【0073】
図6は、Wafer Level Chip Size Package(WLCSP)形態によるパッケージングを行った半導体デバイス400の断面構造を示す模式図である。図6に示される構成において、構造体151、153、152は、ウェーハの状態で接合されるプロセス処理によって形成されうる。最終的に、再配線層301を構造体152の下面に接合し、端子310に半田バンプ304を配する。検査などの一連の工程を経た後、ダイシングが行われ、それぞれの半導体デバイス400に個片化される。構造体152に接合された再配線層301は、構造体152に配された制御回路などと端子310とを電気的に接続する。再配線層301には、半導体デバイス400が実装されるプリント基板などの実装基板との機械的接続にあたり、温度変化による膨張・収縮の影響を緩和する緩衝層が設けられていてもよい。
【0074】
構造体151の上面で、テラヘルツ波の放射または検出を行うアンテナとして機能する導体パターン102を配置した部分の上には保護層320が設けられている。保護層320は、上述の誘電体層112の上に配されていてもよいし、誘電体層112を保護層320として使用してもよい。保護層320には、発振または検出を行う周波数帯のテラヘルツ波を透過し、かつ、誘電体損失の低い材料が用いられうる。金属などの導体はテラヘルツ波を透過しないため、保護層320は、ガラスや樹脂などの熱伝導率が低い材料が用いられることが多い。そのため、構造体151に配される半導体素子101などで発生する熱を効率的に構造体151の上面から放散することは難しい。しかしながら、上述したように熱伝導率が高い構造体153を利用することによって、構造体151内で発生する熱を外部へと効率的に移動させることができる。
【0075】
構造体153の外縁は、半導体デバイス400の側壁において熱的に露出する。例えば、半導体デバイス400の外部に配された金属などの熱伝導部品と接触していてもよい。それによって、半導体素子101で発生した熱を半導体デバイス400の外部へと効率的に放熱できる。本実施形態においても、半導体デバイス400は、半導体デバイス400を実装するプリント基板などの実装基板と半導体デバイス400内の構造体152や構造体151への電気経路を短くすることができる。そのため、パッケージングに伴う高周波信号のインピーダンスの影響などを抑え、高周波領域の信号伝送の安定性などが向上し、半導体デバイス400の動作の安定化や性能向上に寄与することができる。
【0076】
図7には、図5に示される半導体デバイス300の変形例である半導体デバイス401が示されている。半導体デバイス401は、半導体デバイス300と同じFOWLP形態のパッケージであるが、構造体151として、構造体151a、構造体151b、構造体151cを備えている。構造体151a~151cは、それぞれ上面にテラヘルツ波の放射または検出するアンテナである導体パターン102および半導体素子101とGND層である導体層109を備えている。構造体151a~151cには、図7に示されるようにそれぞれ1つずつのアクティブアンテナAAが配されていてもよいが、これに限られることはない。構造体151a~151cに、上述したような複数のアクティブアンテナAAを備えるアクティブアンテナアレイ11が配されていてもよい。タイリングの位置やアンテナの配置の制約などに鑑みて、製造できる最適な形状で構造体151の数や、それぞれの構造体151に配されるアクティブアンテナAAの数を決定すればよい。
【0077】
ここで、構造体153の上の複数の構造体151が配される領域に、構造体151とは別の、例えば、テラヘルツ波を発振または検出するためのアンテナや半導体素子が配されていない構造体が配されていてもよい。構造体151とは別の構造体には、例えば、高周波信号を処理する増幅器やミキサなどの回路などが配されていてもよい。また、構造体151の周囲の領域に抵抗やキャパシタなどの受動素子が配されていてもよい。構造体151a~151cと構造体153との接合にはタイリングなどの手法が用いられうり、個片化された複数の構造体151a~151cが構造体153の電極パターン139と電気的に結合するよう直接接合されうる。しかしながら、これに限られることはなく、適当な方法で構造体151a~151cと構造体153とが接続されればよい。
【0078】
図7に示される構成では、構造体151a~151cと同様に、複数の構造体152a、152bが配されている。構造体152a、152bは、それぞれアクティブアンテナAAを制御するための制御回路などを含む集積回路基板である。例えば、直上の構造体151を制御するなど、アクティブアンテナアレイ11の領域ごとに異なる構造体152aおよび構造体152bを使い分けてもよい。また、例えば、構造体152aはテラヘルツ波の発振のための制御回路を備え、構造体152bはテラヘルツ波を検出するための制御回路を備えるなど、構造体152a、152bは、機能によって分離された回路構成を有していてもよい。構造体152a、152bと構造体153とは、上述と同様に、フリップチップによる接合が行われ、接合部はフィラーと呼ばれる樹脂などの誘電体層302によって封止されている。再配線層301などの構成は、上述した半導体デバイス300と同様であってもよいため、ここでは説明を省略する。
【0079】
テラヘルツ波などの周波数帯の電磁波を放射または検出するための半導体素子101などは、高周波の信号伝送が必要となるため、安価なSi系の半導体ではなくInPなどのIII―V属の化合物半導体を用いる場合が多い。化合物半導体基板は高価なため、小さく個片化することによって、コストの低減などが可能になる。また、複数の構造体152a、152bのように、インターポーザ基板である構造体153に対して複数の制御IC(構造体152)を誘電体層302に埋め込みつつパッケージングを行うことで、完成した半導体デバイス401の高機能化と小型化を両立することができる。
【0080】
図8は、上述の半導体デバイス100の変形例である半導体デバイス402の断面構造を示す模式図である。半導体デバイス402では導体層109が配されず、アクティブアンテナAAのリフレクタ層として構造体153の導体層144を用いる形態になっている。半導体素子101は、リフレクタとして機能する導体層144とアンテナとして機能する導体パターン102の間に配され、これらがアクティブアンテナAAを構成する。
【0081】
半導体デバイス402の構造体153は、導体層144がリフレクタとして機能するため、半導体デバイス100と比較して、基材層145aの厚さを薄く、基材層145bの厚さを厚くしてもよい。具体的には、基材層145aの厚さを10μm以下、基材層145bの厚さを200μm以上と設定する。それによって、構造体152に配される制御回路などからのノイズの影響を抑制しつつ、導体層144を構造体151のアンテナにおけるリフレクタ層として機能させることができる。また、半導体デバイス100において、接合面BS1に対する正射影において、半導体素子101と重なるように導体プラグ137および電極パターン138を設け、半導体素子101を直線状に構造体153へと接続させている。この構成は、半導体素子101と構造体153との間の熱抵抗を極力下げるためのものである。製造方法などによって、半導体素子101から導体プラグ137を介さずに直接、電極パターン138へと接続するといった形態も考えられる。
【0082】
半導体デバイス402に示される構成によって、半導体素子101から構造体153までの距離を短くすることができる。それによって、半導体素子101が駆動する際に発生する熱は、導体プラグ137などの導体が配されていない部分でも構造体153まで伝搬しやすくなる。つまり、半導体デバイス402は、半導体デバイス100よりも、さらに高効率な放熱が可能になる。
【0083】
図9には、フリップチップPackage On Package(PoP)形態の半導体デバイス403が示されている。アンテナ基板である構造体151とインターポーザ基板である構造体153とは、構造体153の接合面BS1を介して接合され、1つのパッケージとして集積されている。構造体151の周囲に封止樹脂305を配することによって、インターポーザである構造体153の形状にフィットするパッケージ形態になっている。構造体153の接合面BS2には、構造体151と電気的に接続するために、金(Au)などの金属を用いた端子312が配されている。
【0084】
一方、集積回路基板である構造体152は、構造体153と対向する面とは反対側の面に再配線層301が接合されている。構造体152は、樹脂などを用いた誘電体層302に埋め込まれており、誘電体層302は、構造体152を再配線層のサイズに拡張させている。また、誘電体層302には誘電体層302を貫通する導体プラグ303が配されている。導体プラグ303は、銅ピラーの様な金属構造物であってもよい。導体プラグ303は、再配線層301に電気的に接続される。再配線層301の下面には、半田バンプ304が配され、半導体デバイス403が実装されるプリント基板などの実装基板に接続される。誘電体層302の構造体153の接合面BS2に対向する部分には、誘電体層302に配された導体プラグ303に電気的に接続される端子311が配されている。端子311は、構造体153の接合面BS2に配された端子312にフリップチップ接合によって電気的に接続される。この端子311と端子312との接続によって、構造体152の制御回路165などから出力される制御信号が、構造体151に送られる。構造体153の接合面BS2の端子312の存在しない領域は、誘電体層302から物理的に離れた空気層であれば、構造体152の熱を構造体153に伝えることを抑制する上述の断熱層として機能する。また、腐食などの劣化を防ぐために、構造体152と構造体153との間は、樹脂などで埋め込まれていてもよい。その場合であっても、樹脂は熱伝導率が低いため熱の伝播が抑制される。また、例えば、構造体152と構造体153との間に熱容量(比熱)が大きなセラミックスや、シリコーンなど樹脂の層を蓄熱層として配し、半導体デバイス403が放熱によって温度が低下しすぎないように制御してもよい。
【0085】
半導体デバイス403において、構造体151と構造体153とを1つのパッケージ、構造体152をもう1つのパッケージとしてそれぞれ形成し、それらをフリップチップ接合することによって3層の積層を行っている。構造体151が放射するテラヘルツ波の周波数などの仕様が変更されることで、アンテナのサイズや基板のサイズが変更になった場合であっても、構造体152の仕様変更を極力抑えることができる。また、構造体152と構造体153との間で、熱が伝わりにくい構造を有するため、構造体151の発生する熱を、構造体153を介して半導体デバイス403の外部へと効率的に伝えることができる。
【0086】
図10は、半導体デバイス402の変形例である半導体デバイス404の断面構造を示す模式図である。半導体デバイス404は、構造体153の接合面BS1の少なくとも一部が、導体層144によって構成されている。また、基材層145が、導体層144と構造体152との間の1層になっている。構造体151と構造体153とは、電極パターン138と同層に配された導体層と導体層109とのCuCu接合などの金属接合によって接合されていてもよい。上述の電極パターン139と導体層144とも同層の導体層でありうる。したがって、半導体デバイス404の構成によって、構造体153の構造を簡素化することができる。上述のように、導体プラグ137および電極パターン138を構造体151に配された1つの部材としての導体プラグとして定義すると、この導体プラグは、接合面BS1に露出する導体層144に接しているともいえる。
【0087】
構造体153は、1つの基材である基材層145に対して、1つの導体層から形成される導体層144および電極パターン139の形成、基材層145を貫通する導体プラグ141の形成、接合面BS2の電極パターン146の形成によって、作成することができる。また、接合面BS2に導体層を形成し、構造体152との間で金属接合を行ってもよい。
【0088】
半導体デバイス404は、半導体デバイス402と同様に、構造体151に導体層109を配さないことで、構造体151のアンテナの上導体である導体パターン102とリフレクタ層である導体層144との距離を半導体デバイス100よりも大きくとることができる。上導体とリフレクタ層との距離を適切に設定することによって、テラヘルツ波の共振による導体損失とアンテナの放射効率の向上との最適化が可能になる。また、半導体素子101と構造体153との距離が短いため、半導体デバイス402と同様に高効率な放熱が可能になる。
【0089】
次いで、図12を参照して、上述の半導体デバイス100、300、400~404をテラヘルツカメラシステム(撮像システム)に適用した場合について説明する。テラヘルツカメラシステム1100は、テラヘルツ波TWを放射する発信部1101と、テラヘルツ波TWを検出する受信部(検出部)1102とを有する。さらに、テラヘルツカメラシステム1100は、外部からの信号に基づき、発信部1101や受信部1102の動作を制御し、検出したテラヘルツ波に基づく画像を処理し、または、外部へ出力するための制御部1103を有する。発信部1101として上述の半導体デバイス100、300、400~404が用いられてもよいし、受信部1102として上述の半導体デバイス100、300、400~404が用いられてもよい。
【0090】
発信部1101から放射されたテラヘルツ波TWは被写体1105において反射し、受信部1102において検出される。このような発信部1101と受信部1102とを有するカメラシステムは、アクティブ型のカメラシステムとも呼ばれうる。なお、被写体1105によって放射されたテラヘルツ波を検出するような、発信部1101が配されていないパッシブ型カメラシステムにおいても、上述の半導体デバイス100、400、400~404を受信部1102として用いることができる。上述したように、放熱効率のよい半導体デバイス100、300、400~404を適宜システム内に配することによって、安定したテラヘルツ波の発信または検出動作を行うことが可能である。
【0091】
次に、図13を参照して、上述の半導体デバイス100、300、400~404をテラヘルツ通信システム(通信装置)に適用した場合について説明する。通信システムとして、単純なASK変調方式などを用いる形で、スーパーヘテロダイン方式やダイレクトコンバージョン方式などの構成が想定される。スーパーヘテロダイン方式の通信システムは、例えば、アンテナ1200、増幅器1201、ミキサ1202、フィルタ1203、ミキサ1204、変換器1205、デジタルベースバンド変復調器1206、及び局部発振器1207並びに1208を含む。受信器の場合、アンテナ1200を介して受信されたテラヘルツ波TWが、ミキサ1202によって中間周波数の信号に変換され、その後にミキサ1204によってベースバンド帯の信号に変換され、変換器1205においてアナログ波形がデジタル波形に変換される。そして、そのデジタル波形がベースバンドにおいて復調されて通信信号が得られる。送信器の場合、通信信号が変調された後に変換器1205によってデジタル波形からアナログ波形に変換され、その後にミキサ1204及びミキサ1202を介して周波数変換されて、アンテナ1200からテラヘルツ波として出力される。ダイレクトコンバージョン方式の通信システムは、アンテナ1200と、増幅器1211、ミキサ1212、変復調器1213および局部発振器1214を含む。ダイレクトコンバージョン方式では、受信時には、ミキサ1212により、受信されたテラヘルツ波が直接ベースバンド帯の信号に変換され、送信時には、ミキサ1212により、送信対象のベースバンド帯の信号がテラヘルツ帯の信号に変換される。その他の構成はスーパーヘテロダイン方式と同様である。
【0092】
半導体デバイス100、300、400~404は、通信システムのアンテナ1200および局部発振器(1207,1214)や、アンテナ上導体の共振部はミキサ(1202,1212)として機能させることができる。また、構造体151にその他の素子を集積することや、構造体152のSi集積回路を利用することによって、図13に示される通信信号へと変換するすべての処理部を半導体デバイス100、300、400~404に集積することができる。そのため、小型の通信システム用集積ICとして活用できる。また、放熱を効率よく行うことができるため、通信設備による高速・大容量の無線通信を継続的に行うような厳しい駆動条件下においても安定した駆動を行うことができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0094】
例えば、図11(a)~11(c)には、構造体153における導体層144の導体パターンのレイアウトが示されている。導体層144の中央部にはアクティブアンテナアレイ11と重なる領域167があり、複数の導体プラグ141に接続される導体パターン143などの電気経路が通る。図11(a)に示される構成では、開口部142は、導体層144の中央部に大きな1つのパターンとして配されている。図11(a)~11(c)では、導体パターン143の記載は省略されている。構造体151から移動してきた熱は、構造体153の基材層145を通り、一部は導体層144へと伝搬し、構造体153の外縁へと伝わる。また、図11(b)に示される構成では、導体プラグ141に接続される導体パターン143のそれぞれに対応するように開口部142が設けられている。さらに、図11(c)に示される構成では、導体層144をメッシュ状に配置し、その隙間を開口部142として使用している。これら導体層144のレイアウトパターンは、インターポーザ基板である構造体153の構造体151と構造体152との間の電気的に接続するための機能と、熱を構造体153の画家に効率的に拡散させる機能と、を持たせるためのものである。導体層144のレイアウトパターンは、これらの機能に応じて、上述したパターンに限られることはなく、適当な形状が用いられればよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、キャリアが電子である場合を想定して説明しているが、これに限定されるものではなく、正孔(ホール)を用いたものであってもよい。また、基板や誘電体の材料は用途に応じて選定すればよく、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムヒ素、ガリウムリンなどの半導体層や、ガラス、セラミック、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタラートなどの樹脂を用いることができる。
【0096】
また、半導体素子101として、数百から数千層の半導体層多層構造を持つ量子カスケードレーザ構造(Quantum Cascade Laser:QCL)を用いてもよい。この場合、半導体素子101は、QCL構造を含む半導体素子である。また、半導体素子101として、ミリ波帯で用いられるガンダイオードやインパットダイオードのような負性抵抗素子を用いてもよい。また、半導体素子101として、一方の端子を終端したトランジスタなどの高周波素子を用いてもよい。トランジスタとしては、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、化合物半導体層系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT)などが用いられてもよい。また、半導体素子101として、超伝導体層を用いたジョセフソン素子の微分負性抵抗を用いてもよい。
【0097】
図3(a)に示されるアクティブアンテナアレイ11と制御回路165との関係は、以下のような形態であってもよい。アクティブアンテナアレイ11は複数のアクティブアンテナAAを含み、制御回路165は複数の制御素子ACを含む。複数のアクティブアンテナAAのぞれぞれは、複数の制御素子ACのそれぞれからの信号によって制御されていてもよい。つまり、1つの制御素子ACが1つのアクティブアンテナAAを制御してもよい。アンテナの制御の自由度を高めることができる。
【0098】
さらに、複数の制御素子ACが1つのアクティブアンテナAAを制御してもよい。この場合に、タイミングごとに1つのアクティブアンテナAAごとに制御する場合と複数のアクティブアンテナAAを制御する場合など、動作の自由度を高めることができる。また、複雑な動作を行いたい場合には、上記接続方法を任意に組み合わせることもできる。
【0099】
本実施形態ではテラヘルツ帯の電磁波を放射または検出する機能を持つ構造体151として説明を行ったが、本開示を適用する構造体151が対応する電磁波は、これに限定されない。構造体151は、マイクロ波やミリ波、赤外光などの電磁波を放射または検出するために用いられてもよい。また、上述した構造体153を含む積層デバイス構造は、CMOSイメージセンサや単一光子アバランシェダイオード(SPAD)センサなど半導体素子を用いた半導体デバイスにおいても適用することができる。
【0100】
本明細書の開示は、以下の半導体デバイス、通信装置および撮像システムを含む。
【0101】
(項目1)
電磁波を発振または受信するための半導体素子およびアンテナが配された第1半導体基板を含む第1構造体と、前記半導体素子を制御するための制御回路が配された第2半導体基板を含む第2構造体と、前記第1構造体に接合された第1接合面および前記第2構造体に接合された第2接合面を有する第3構造体と、が積層された半導体デバイスであって、
前記第1構造体には、前記半導体素子に電気的に接続され、かつ、前記第1接合面に達する第1導体プラグが配され、
前記第3構造体は、互いに積層された基材層と導体層とを含み、
前記第3構造体は、前記第1構造体および前記第2構造体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする半導体デバイス。
【0102】
(項目2)
前記電磁波が、テラヘルツ波を含むことを特徴とする項目1に記載の半導体デバイス。
【0103】
(項目3)
前記第3構造体の厚さが、前記第1半導体基板の厚さよりも厚いことを特徴とする項目1または2に記載の半導体デバイス。
【0104】
(項目4)
前記第3構造体の厚さが、100μm以上かつ1mm以下であることを特徴とする項目1乃至3の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0105】
(項目5)
前記基材層は、セラミックを含むことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0106】
(項目6)
前記基材層は、窒化アルミニウムおよびグラファイトのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする項目1乃至4の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0107】
(項目7)
前記第3構造体の熱伝導率が、100W/m・K以上であることを特徴とする項目1乃至6の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0108】
(項目8)
前記基材層が、前記第1構造体と前記導体層との間に配された第1基材層と、前記導体層と前記第2構造体との間に配された第2基材層と、を含むことを特徴とする項目1乃至7の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0109】
(項目9)
前記第1導体プラグが、前記第1基材層を貫通し、前記導体層に電気的に接続されていることを特徴とする項目8に記載の半導体デバイス。
【0110】
(項目10)
前記第1構造体は、前記半導体素子および前記アンテナをそれぞれ含む複数のアクティブアンテナが配されたアクティブアンテナアレイを備えることを特徴とする項目1乃至9の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0111】
(項目11)
前記第1構造体は、第1配線層と、前記第1配線層と前記第3構造体との間に配された第2配線層と、を含み、
前記アンテナは、前記第1配線層に配され、かつ、前記半導体素子に電気的に接続された第1導体パターンを含み、
前記第2配線層には、前記第1接合面に対する正射影において前記第1導体パターンよりも面積が大きく、かつ、前記半導体素子に電気的に接続された第2導体パターンが配されていることを特徴とする項目1乃至10の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0112】
(項目12)
前記半導体デバイスが動作中の熱平衡状態において、前記第3構造体の温度が、前記第1接合面に対する正射影において、前記第3構造体の中央から外縁に向かい低くなる勾配を有することを特徴とする項目1乃至11の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0113】
(項目13)
前記第2半導体基板と前記第3構造体との間に、熱伝導率が1W/m・K未満の断熱層が配されていることを特徴とする項目1乃至12の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0114】
(項目14)
前記第1半導体基板および前記第2半導体基板のうち少なくとも一方に、比熱が0.9kJ/kg・K以上の蓄熱層が配されていることを特徴とする項目1乃至13の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0115】
(項目15)
前記第3構造体の外縁に接し、かつ、導体を用いた放熱体が配されていることを特徴とする項目1乃至14の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0116】
(項目16)
支持基板をさらに備え、
前記支持基板と前記第3構造体との間に前記第2構造体が配され、
前記放熱体は、前記支持基板に固定されており、かつ、前記アンテナよりも前記支持基板の側に配されていることをと特徴とする項目15に記載の半導体デバイス。
【0117】
(項目17)
前記半導体素子は、負性抵抗素子を含むことを特徴とする項目1乃至16の何れか1項目に記載の半導体デバイス。
【0118】
(項目18)
前記負性抵抗素子は、共鳴トンネルダイオードを含むことを特徴とする項目17に記載の半導体デバイス。
【0119】
(項目19)
項目1乃至18の何れか1項目に記載の半導体デバイスと、
前記電磁波を放射する発信部と、
前記電磁波を検出する受信部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0120】
(項目20)
項目1乃至18の何れか1項目に記載の半導体デバイスと、
被写体によって反射または放射された前記電磁波を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【0121】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0122】
100,300,400~404:半導体デバイス、101:半導体素子、131,134:半導体基板、144:導体層、145:基材層、151,152,153:構造体、BS1,BS2:接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13