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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162801
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】インバータ制御装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078707
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】楠本 将大
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ24
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL44
(57)【要約】
【課題】特定のスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制できるインバータ制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】3レベルのインバータ30の制御装置50は、所定条件を満たすインバータ30のスイッチングモードを設定し、設定したスイッチングモードに基づいて、インバータ30のスイッチング制御を行う。所定条件は、Hレベルモード、Lレベルモード、2レベルモード及び中間レベルモードが1制御周期に含まれるとともに、各相の出力電圧レベルが中間電圧レベルとなるMレベルモードが1制御周期に含まれないとの条件である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各相に対応して設けられるスイッチであって、直列接続された複数の蓄電部(21,22)と回転電機(10)の電機子巻線(11U~11W)とに電気的に接続されるスイッチ(SUH~SWL,QU~QW)を備えるマルチレベルのインバータ(30)に適用され、
複数の前記蓄電部の直列接続体から出力可能な複数の電圧レベルのうちいずれかの電圧レベルを出力するように前記スイッチのスイッチング制御を行うインバータ制御装置(50)において、
所定条件を満たす前記インバータのスイッチングモードを設定する設定部と、
設定された前記スイッチングモードに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定条件は、
各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最高電圧レベルとなるHレベルモード(HHH)、及び各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最低電圧レベルとなるLレベルモード(LLL)のうち、少なくとも一方のモードと、
各相の出力電圧レベルが、前記最高電圧レベル及び前記最低電圧レベルの組からなる2レベルモード(HHL,HLL)と、
各相のうち一部の相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち中間電圧レベルとなる中間レベルモード(HHM,HML,MLL)と、が1制御周期に含まれるとの条件である、インバータ制御装置。
【請求項2】
前記所定条件は、第1条件であり、
前記設定部は、前記第1条件、第2条件及び第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定し、
前記第1条件は、前記Hレベルモード、前記Lレベルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが1制御周期に含まれるとともに、各相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるMレベルモード(MMM)が1制御周期に含まれないとの条件であり、
前記第2条件は、前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードのうち、一方を1制御周期における最初のモードとし、他方を1制御周期における最後のモードとし、1制御周期において前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードの間に前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが出現するとの条件であり、
前記第3条件は、出力電圧レベルの切り替える場合、各相のうち1相のみの出力電圧レベルを切り替えるとの条件である、請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記インバータは、3レベルのインバータであり、
前記Hレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるモードであり、
前記2レベルモード及び前記中間レベルモードは、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなる第1モード(HHM)と、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第2モード(HHL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第3モード(HML)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第4モード(HLL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第5モード(MLL)と、である、請求項2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記第1モード、前記第3モード及び前記第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を、1制御周期の長さの1/3未満の期間に設定する、請求項3に記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、
前記第5モード(MLL)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第5モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vas|)を乗算した値が、前記第4モード(HLL)の1制御周期における出現期間に前記第4モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vam|)を乗算した値以下になるとの条件と、
前記第1モード(HHM)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第1モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcs|)を乗算した値が、前記第2モード(HHL)の1制御周期における出現期間に前記第2モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcm|)を乗算した値以下になるとの条件と、
を満たすように、前記第1~第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を設定する、請求項4に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードの1制御周期における合計出現期間を、1制御周期の長さから、前記第1~第5モードの1制御周期における合計出現期間を差し引いた期間に設定する、請求項5に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
前記所定条件は、第1条件であり、
前記設定部は、前記第1条件、第2条件及び第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定し、
前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードのうち、一方のモードを第1ゼロベクトルモードとし、他方のモードを第2ゼロベクトルモードとし、
前記第1条件は、
時間的に隣り合う2つの制御周期のうち、最初の制御周期に、前記第1ゼロベクトルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが含まれるとともに、次の制御周期に、前記第2ゼロベクトルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが含まれ、かつ、各相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるMレベルモード(MMM)が1制御周期に含まれないとの条件であり、
前記第2条件は、前記最初の制御周期における最初のモードを前記第1ゼロベクトルモードとし、前記最初の制御周期における最後のモードを前記中間レベルモードとし、前記次の制御周期における最初のモードを前記第2ゼロベクトルモードとし、前記次の制御周期における最後のモードを前記中間レベルモードにするとの条件であり、
前記第3条件は、出力電圧レベルの切り替える場合、各相のうち1相のみの出力電圧レベルを切り替えるとの条件である、請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項8】
前記インバータは、3レベルのインバータであり、
前記Hレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるモードであり、
前記2レベルモード及び前記中間レベルモードは、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなる第1モード(HHM)と、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第2モード(HHL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第3モード(HML)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第4モード(HLL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第5モード(MLL)と、である、請求項7に記載のインバータ制御装置。
【請求項9】
前記設定部は、前記第1モード、前記第3モード及び前記第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を、1制御周期の長さの1/3未満の期間に設定する、請求項8に記載のインバータ制御装置。
【請求項10】
前記設定部は、
前記第5モード(MLL)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第5モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vas|)を乗算した値が、前記第4モード(HLL)の1制御周期における出現期間に前記第4モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vam|)を乗算した値以下になるとの条件と、
前記第1モード(HHM)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第1モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcs|)を乗算した値が、前記第2モード(HHL)の1制御周期における出現期間に前記第2モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcm|)を乗算した値以下になるとの条件と、
を満たすように、前記第1~第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を設定する、請求項9に記載のインバータ制御装置。
【請求項11】
前記設定部は、
前記第1ゼロベクトルモードの前記最初の制御周期における出現期間を、1制御周期から、前記第1~第5モードの合計出現期間を差し引いた期間に設定し、
前記第2ゼロベクトルモードの前記次の制御周期における出現期間を、1制御周期の長さから、前記第1~第5モードの合計出現期間を差し引いた期間に設定する、請求項10に記載のインバータ制御装置。
【請求項12】
前記設定部は、
2つの前記蓄電部の電圧差が閾値を超えているか否かを判定し、
前記電圧差が前記閾値を超えていると判定した場合、前記電圧差が前記閾値以下になるように、前記第1,第3,第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を調整する、請求項3~6,8~11のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項13】
前記設定部は、
前記インバータが過熱状態であるか否かを判定し、
前記インバータが過熱状態であると判定したことを条件として、前記第1条件、前記第2条件及び前記第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定する、請求項2~11のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項14】
前記インバータは、前記スイッチとして、
各相に対応して設けられた上,下アームスイッチ(SUH~SWL)と、
各相に対応して設けられたミドルスイッチ(QU~QW)と、
を備え、
前記Hレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記上アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第1モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、2相の前記上アームスイッチ及び残り1相の前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第2モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、2相の前記上アームスイッチ及び残り1相の前記下アームスイッチがオンされるモードであり、
前記第3モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、互いに異なる相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第4モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、1相の前記上アームスイッチ及び残り2相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第5モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、1相の前記ミドルスイッチ及び残り2相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードである、請求項3~6,8~11のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【請求項15】
各相に対応して設けられるスイッチであって、直列接続された複数の蓄電部(21,22)と回転電機(10)の電機子巻線(11U~11W)とに電気的に接続されるスイッチ(SUH~SWL,QU~QW)を備えるマルチレベルのインバータ(30)に適用されるプログラムにおいて、
前記インバータにおいて、複数の前記蓄電部の直列接続体から出力可能な複数の電圧レベルのうちいずれかの電圧レベルを出力するように前記スイッチのスイッチング制御が行われ、
コンピュータ(51)に、
所定条件を満たす前記インバータのスイッチングモードを設定する処理と、
設定された前記スイッチングモードに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う処理と、を実行させ、
前記所定条件は、
各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最高電圧レベルとなるHレベルモード(HHH)、及び各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最低電圧レベルとなるLレベルモード(LLL)のうち、少なくとも一方のモードと、
各相の出力電圧レベルが、前記最高電圧レベル及び前記最低電圧レベルの組からなる2レベルモード(HHL,HLL)と、
各相のうち一部の相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち中間電圧レベルとなる中間レベルモード(HHM,HHL,HML,HLL,MLL)と、が1制御周期に含まれるとの条件である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチレベルのインバータの制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直列接続された2つのコンデンサと、コンデンサと回転電機の電機子巻線とに電気的に接続されるスイッチとを備える3レベルのインバータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/179112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各相に対応して設けられたスイッチの信頼性の低下を抑制する上では、各スイッチのうち特定のスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制することが望まれる。
【0005】
本開示は、特定のスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制できるインバータ制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、各相に対応して設けられるスイッチであって、直列接続された複数の蓄電部と回転電機の電機子巻線とに電気的に接続されるスイッチと、
を備えるマルチレベルのインバータに適用され、
複数の前記蓄電部の直列接続体から出力可能な複数の電圧レベルのうちいずれかの電圧レベルを出力するように前記スイッチのスイッチング制御を行うインバータ制御装置において、
所定条件を満たす前記インバータのスイッチングモードを設定する設定部と、
設定された前記スイッチングモードに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定条件は、
各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最高電圧レベルとなるHレベルモード、及び各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最低電圧レベルとなるLレベルモードのうち、少なくとも一方のモードと、
各相の出力電圧レベルが、前記最高電圧レベル及び前記最低電圧レベルの組からなる2レベルモードと、
各相のうち一部の相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち中間電圧レベルとなる中間レベルモードと、が1制御周期に含まれるとの条件である。
【0007】
本開示によれば、中間電圧レベルに対応するスイッチに負荷を分散させることができるため、最高電圧,最低電圧レベルに対応するスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】制御装置が実行するトルク制御処理の機能ブロック図。
図3】通常制御におけるベクトル空間を示す図。
図4】通常制御における第1セクタを示す図。
図5】熱分散制御におけるベクトル空間を示す図。
図6】熱分散制御において第1セクタで用いられるスイッチングモードを示す図。
図7】熱分散制御におけるスイッチングモードを示す図。
図8】熱分散制御におけるスイッチングモードを示す図。
図9】熱分散制御における第1セクタを示す図。
図10】熱分散制御における第1セクタを示す図。
図11】熱分散制御における第1セクタを示す図。
図12】通常制御及び熱分散制御の選択処理手順を示すフローチャート。
図13】熱分散制御の処理手順を示すフローチャート。
図14】第2実施形態に係る熱分散制御の処理手順を示すフローチャート。
図15】第3実施形態に係る熱分散制御において第1セクタで用いられるスイッチングモードを示す図。
図16】熱分散制御において第1セクタで用いられるスイッチングモードを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、制御装置は、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されている。
【0011】
図1に示すように、車載システムは、回転電機10、蓄電池20及びインバータ30を備えている。回転電機10は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態の回転電機10は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU相巻線11U、V相巻線11V、W相巻線11Wを備えている。各相巻線11U,11V,11Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機10は、例えば永久磁石同期機である。
【0012】
蓄電池20は、インバータ30を介して回転電機10に電気的に接続されている。蓄電池20は、例えば、電池セルの直列接続体を備える組電池である。蓄電池20は、充放電可能な2次電池であり、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0013】
インバータ30は、スイッチング制御により、蓄電池20から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、変換した交流電力を回転電機10へと供給する電力変換回路である。システムは、インバータ30の入力側に、蓄電部としての第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22を備えている。第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22は、直列接続されている。第1,第2コンデンサ21,22の直列接続体には、蓄電池20が並列接続されている。本実施形態では、第1コンデンサ21の静電容量と、第2コンデンサ22の静電容量とが同一の値とされている。なお、第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22は、インバータ30の外部に設けられてもよいし、インバータ30に内蔵されていてもよい。
【0014】
インバータ30は、T型の3レベルインバータであり、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと、下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を3相分備えている。各スイッチSUH~SWLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはIGBTである。各スイッチSUH~SWLにおいて、高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSUH,SVH,SWH,SUL,SVL,SWLは、フリーホイールダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0015】
U相上アームスイッチSUHのエミッタは、U相下アームスイッチSULのコレクタに接続されている。U相上アームスイッチSUHとU相下アームスイッチSULとの接続点は、U相巻線11Uの第1端に接続されている。V相上アームスイッチSVHのエミッタは、V相下アームスイッチSVLのコレクタに接続されている。V相上アームスイッチSVHとV相下アームスイッチSVLとの接続点は、V相巻線11Vの第1端に接続されている。W相上アームスイッチSWHのエミッタは、W相下アームスイッチSWLのコレクタに接続されている。W相上アームスイッチSWHとW相下アームスイッチSWLとの接続点は、W相巻線11Wの第1端に接続されている。各相巻線11U,11V,11Wの第2端は中性点において互いに接続されている。
【0016】
各上アームスイッチSUH~SWHのコレクタは、バスバー等の導電部材である正極側母線31により接続されている。正極側母線31は、蓄電池20の正極端子及び第1コンデンサ21の第1端に接続されている。第1コンデンサ21の第2端は、コンデンサ中性点Oを介して第2コンデンサ22の第1端に接続されている。各下アームスイッチSUL~SWLのエミッタは、バスバー等の導電部材である負極側母線32により接続されている。負極側母線32は、蓄電池20の負極端子及び第2コンデンサ22の第2端に接続されている。
【0017】
インバータ30は、双方向での電流の導通及び遮断を行うミドルスイッチQU,QV,QWを備えている。本実施形態の各ミドルスイッチQU~QWを構成するスイッチは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはIGBTである。各ミドルスイッチQU~QWを構成するスイッチには、フリーホイールダイオードDU,DV,DWが逆並列に接続されている。
【0018】
具体的には、U相を例に説明すると、U相ミドルスイッチQUを構成する2つのスイッチは、互いのエミッタが接続されている。U相ミドルスイッチQUを構成する各スイッチのうち、一方のコレクタは、U相上アームスイッチSUHとU相下アームスイッチSULとの接続点に接続され、他方のコレクタは、コンデンサ中性点Oに接続されている。なお、U,V,W相ミドルスイッチQU~QWは、オンされている場合に双方向の電流の流通を許容し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。U,V,W相ミドルスイッチQU~QWは、互いのコレクタが接続されて構成されてもよい。U,V,W相ミドルスイッチQU~QWとして、逆阻止IGBT(RB-IGBT)が用いられてもよい。
【0019】
モータ制御システムは、第1電圧センサ41、第2電圧センサ42、相電流センサ43及び回転角センサ44を備えている。第1電圧センサ41は、第1コンデンサ21の端子電圧を検出する。第2電圧センサ42は、第2コンデンサ22の端子電圧を検出する。相電流センサ43は、各相巻線11U,11V,11Wに流れるU,V,W相電流を検出する。なお、相電流センサ43は、3相の電流のうち少なくとも2相の電流を検出できればよい。回転角センサ44は、例えばレゾルバであり、回転電機10の電気角を検出する。
【0020】
温度センサ45は、インバータ30を冷却する冷却水の温度、及びインバータ30の温度のうち、少なくとも一方を検出する。各センサ41~45の検出値は、システムが備える制御装置50に入力される。
【0021】
制御装置50は、マイコン51を主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。マイコン51は、CPU(Central Processing Unit)を備えている。マイコン51が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン51がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン51は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図12等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0022】
制御装置50は、回転電機10の制御量を指令値に制御するための制御であって、インバータ30の各スイッチSUH~SWL,QU~QWのスイッチング制御を行う。図2を用いて、制御装置50のスイッチング制御について説明する。図2に示す例では、スイッチング制御において、電流フィードバック制御が行われる。制御量は、回転電機10のトルクであり、指令値は、上位の制御装置から入力される指令トルクTrq*である。
【0023】
制御装置50において、指令電流設定部60は、指令トルクTrq*に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。例えば、指令電流設定部60は、指令トルクTrq*と、d,q軸指令電流Id*,Iq*とが関係付けられたマップ情報又は数式情報に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定すればよい。
【0024】
2相変換部61は、相電流センサ43の検出値と、回転角センサ44により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
【0025】
d軸偏差算出部62aは、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部62bは、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
【0026】
d軸指令電圧算出部63aは、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vdを算出する。q軸指令電圧算出部63bは、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vqを算出する。なお、d軸指令電圧算出部63a及びq軸指令電圧算出部63bで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0027】
固定座標変換部64は、d,q軸指令電圧算出部63a,63bから出力されたd,q軸指令電圧Vd,Vq及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸指令電圧Vd,Vqを、2相固定座標系におけるα,β軸指令電圧Vα,Vβに変換する。
【0028】
変調部65は、α,β軸指令電圧Vα,Vβにより定まる指令電圧ベクトルVαβを算出する。指令電圧ベクトルVαβは、回転電機10の制御量を指令値に制御するための電圧ベクトルである。
【0029】
変調部65は、特定の実行条件が成立していないと判定した場合に通常制御を行い、実行条件が成立していると判定した場合に熱分散制御を行う。実行条件は、インバータ30が熱的に厳しい状況か否かを判定するための条件である。熱的に厳しい状況において、通常制御から熱分散制御に切り替えられることにより、インバータ30のスイッチング制御を極力継続し、ひいては車両の走行を極力継続できるようにする。
【0030】
まず、通常制御について説明する。
【0031】
変調部65は、ベクトル空間において原点から延びる指令電圧ベクトルVαβの先端が存在するセクタを特定する。セクタは、指令電圧ベクトルVαβが存在し得るベクトル空間を、指令電圧ベクトルVαβの偏角に関して6つに分割するものである。指令電圧ベクトルVαβの偏角は、指令電圧ベクトルVαβとU相軸線とがなす角度であり、具体的には電気角θeである。電気角θeの符号は、左回り(反時計回り)を正とする。図3に、ベクトル空間を6つに分割する第1~第6セクタを示す。ベクトル空間では、U,V,W相の軸線が、電気角で120°ずつずれて配置されている。各セクタは、互いに60度の電気角差を有する2相の軸線に挟まれた領域である。図3では、第1セクタを示す範囲に、ドットハッチを施している。
【0032】
第1~第6セクタは、さらに4つの領域に分けられる。詳しくは、各セクタを区画する2相の軸線のうち偏角が小さい方の第1軸線L1におけるセクタの端点を第1端点とし、偏角が大きい方の第2軸線L2におけるセクタの端点を第2端点とする。また、ベクトル空間の原点及び第1端点の中間点を第1中間点とし、原点及び第2端点の中間点を第2中間点とし、第1端点及び第2端点の中間点を中間端点とする。この場合、第1領域R1は、原点、第1中間点及び第2中間点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第2領域R2は、第1中間点、第2中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第3領域R3は、第2端点、第2中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。第4領域R4は、第1端点、第1中間点及び中間端点を頂点とする三角形によって囲まれる領域である。図4に、第1セクタを例にして、第1~第4領域R1~R4を示す。第1セクタにおいて、第1端点は「HLL」であり、第2端点は「HHL」であり、第1中間点は「MLL」であり、第2中間点は「HHM」であり、中間端点は「HML」である。
【0033】
上述した「HML」等の記号の意味について説明する。各スイッチSUH~SWL,QU~QWの駆動状態は各相の出力電圧レベルにより表され、各相の出力電圧レベルは3段階の電圧レベルH,M,Lにより表される。レベルHの相電圧は、対象となる相において、上アームスイッチがオンされるとともに、下アームスイッチ及びミドルスイッチがオフされることにより出力される電圧である。レベルMの相電圧は、対象となる相において、ミドルスイッチがオンされるとともに、上,下アームスイッチがオフされることにより出力される電圧である。レベルLの相電圧は、対象となる相において、下アームスイッチがオンされるとともに、上アームスイッチ及びミドルスイッチがオフされることにより出力される電圧である。
【0034】
例えば、「HML」は、U相電圧が最高電圧レベルのHであり、V相電圧が中間電圧レベルMであり、W相電圧が最低電圧レベルLのモードであることを表す。「HML」では、U相上アームスイッチSUH、V相ミドルスイッチQV及びW相下アームスイッチSWLがオンされるとともに、V,W相上アームスイッチSVH,SWH、U,W相ミドルスイッチQU,QW及びU相,V相下アームスイッチSUL,SVLがオフされる。
【0035】
なお、蓄電池20の電圧をVdcとし、コンデンサ中性点Oの電位を基準電位(0V)とした場合、レベルHの相電圧は「Vdc/2」であり、レベルMの相電圧は「0」であり、レベルLの相電圧は「-Vdc/2」である。
【0036】
「HHH」は、3相全ての出力電圧レベルがHのHレベルモードに相当し、「LLL」は、3相全ての出力電圧レベルがLのLレベルモードに相当し、「MMM」は、3相全ての出力電圧レベルが中間電圧レベルとなるMレベルモードに相当する。
【0037】
先の図2の説明に戻り、変調部65は、電気角θeに基づいて、指令電圧ベクトルVαβの先端が存在するセクタを特定する。例えば、変調部65は、0°≦θe<60°の場合、指令電圧ベクトルVαβの先端が第1セクタに存在すると特定する。
【0038】
変調部65は、指令電圧ベクトルVαβの大きさ及びセクタ内角度αに基づいて、特定したセクタを構成する第1~第4領域のうち、指令電圧ベクトルVαβの先端が存在する領域であるサブ領域を特定する。セクタ内角度αは、対象となるセクタ内において、原点から第1端点へと延びる第1軸線L1と、指令電圧ベクトルVαβとがなす角度である。
【0039】
変調部65は、特定したセクタ及びそのセクタ内のサブ領域に基づいて、1制御周期において使用する出力電圧レベルのグループを選択する。グループは、サブ領域を構成する3つの頂点に対応する出力電圧レベルのグループである。以下、図4に示すように、指令電圧ベクトルVαβの先端が第1セクタの第1領域に存在する場合を例にして説明する。
【0040】
変調部65は、指令電圧ベクトルVαβを、第1軸線L1に沿った第1電圧ベクトルVt1と、第2軸線L2に沿った第2電圧ベクトルVt2とに分解する。第1電圧ベクトルVt1は、「MLL」又は「HMM」から定まる電圧ベクトルがta倍(0<ta<1)されたベクトルである。第2電圧ベクトルVt2は、「MML」又は「HHM」から定まる電圧ベクトルがtb倍(0<tb<1)されたベクトルである。変調部65は、1制御周期において、「MLL」又は「HMM」の出現期間をta×TSに設定し、「MML」又は「HHM」の出現期間をtb×TSに設定する。変調部65は、1制御周期の長さTSから、「ta×TS」及び「tb×TS」を差し引いた期間(=TS-ta×TS-tb×TS)を「HHH」,「MMM」又は「LLL」の出現期間に設定する。なお、1制御周期の長さTSの2倍の期間が、各スイッチSUH~SWL,QU~QWの1スイッチング周期Tswに相当する。
【0041】
変調部65は、1制御周期において、上述した態様で設定したモードが順次出現するように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWのスイッチング制御を行う。これにより、回転電機10のトルクが指令トルクTrq*に制御される。
【0042】
続いて、熱分散制御について説明する。
【0043】
変調部65は、電気角θeに基づいて、6つのセクタのうち、どのセクタに指令電圧ベクトルVαβの先端が存在するかを特定する。
【0044】
変調部65は、特定したセクタに基づいて、各制御周期において用いるスイッチングモードを設定する。詳しくは、変調部65は、Hレベルモード、Lレベルモードに加え、第1~第5モードからなる7つのモードを含むスイッチングモードを設定する。
【0045】
第1モードは、3相のうち、2相の出力電圧レベルがHレベルモードとなり、1相の出力電圧レベルがMレベルとなるモードである。特定されたセクタが第1セクタの場合、第1モードは、図5及び図6に示すように「HHM」である。
【0046】
第2モードは、3相のうち、2相の出力電圧レベルがHレベルとなり、1相の出力電圧レベルがLレベルとなるモードである。特定されたセクタが第1セクタの場合、第2モードは「HHL」である。
【0047】
第3モードは、3相のうち、1相の出力電圧レベルがHレベルとなり、1相の出力電圧レベルがMレベルとなり、1相の出力電圧レベルがLレベルとなるモードである。特定されたセクタが第1セクタの場合、第3モードは「HML」である。
【0048】
第4モードは、3相のうち、1相の出力電圧レベルがHレベルとなり、2相の出力電圧レベルがLレベルとなるモードである。特定されたセクタが第1セクタの場合、第4モードは「HLL」である。
【0049】
第5モードは、3相のうち、1相の出力電圧レベルがMレベルとなり、2相の出力電圧レベルがLレベルとなるモードである。特定されたセクタが第1セクタの場合、第5モードは「MLL」である。なお、第1,第3、第5モードが「中間レベルモード」に相当し、第2、第4モードが「2レベルモード」に相当する。
【0050】
変調部65は、Hレベルモード及びLレベルモードのうち、一方を1制御周期における最初のモードとし、他方を1制御周期における最後のモードとし、1制御周期においてHレベルモード及びLレベルモードの間に第1~第5モードが出現するスイッチングモードを設定する。
【0051】
変調部65は、各制御周期において、出力電圧レベルの切り替える場合、3相のうち1相のみの出力電圧レベルを切り替えるとの条件を課してスイッチングモードを設定する。この設定は、2相以上の同時スイッチングを禁止して1制御周期あたりの合計スイッチング回数を減らし、スイッチング損失を低減するためのものである。ここで、この条件を課しつつ、1制御周期において7つのモードを出現させるために、変調部65は、Mレベルモード「MMM」が用いられることを禁止する。以降、特定されたセクタが第1セクタである場合を例にして説明する。
【0052】
変調部65は、1制御周期において、図6図8に示すように、「HHH」→「HHM」→「HHL」→「HML」→「HLL」→「MLL」→「LLL」となるスイッチングモードを設定する。変調部65は、次の制御周期において、「LLL」→「MLL」→「HLL」→「HML」→「HHL」→「HHM」→「HHH」となるスイッチングモードを設定する。「HHM」,「HML」,「MLL」が用いられることにより、1制御周期においてミドルスイッチに電流を流す期間を長くできる。これにより、特定の上,下アームスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制できる。
【0053】
変調部65は、「HHL」の出現割合τcmと、「HLL」の出現割合τamとを設定する。出現割合は、1制御周期の長さTSに対する各モード(HHL等)の相対的な出現期間の割合である。例えば、「τcm×TS」は、1制御周期における「HHL」の出現期間になる。
【0054】
詳しくは、まず、変調部65は、指令電圧ベクトルVαβを、第1軸線L1に沿った第1電圧ベクトル「ka×Vam」(図9参照)と、第2軸線L2に沿った第2電圧ベクトル「kc×Vcm」(図10参照)とに分解する。第1電圧ベクトル「ka×Vam」は、第4モードである「HLL」から定まる電圧ベクトルVamが第1係数ka倍(0<ka<1)されたベクトルである。第2電圧ベクトルVcmは、第2モードである「HHL」から定まる電圧ベクトルVcmが第2係数kc倍(0<kc<1)されたベクトルである。
【0055】
変調部65は、下式(eq1)に基づいて、「HLL」の出現割合τamを設定する。下式(eq1)において、τasは、「MLL」の出現割合であり、τbsは、「HML」の出現割合である。
【0056】
【数1】
「τas×TS,τbs×TS」は、1制御周期の長さTSの1/3未満の期間に設定されており、例えば、1制御周期の長さTSの1/4未満の期間、又は1制御周期の長さTSの1/5未満の期間に設定されている。本実施形態では、「τas=τbs」に設定されている。
【0057】
上式(eq1)の右辺第1項から第2項が差し引かれているのは、回転電機10のトルクが指令トルクTrq*を超える事態の発生を抑制するためである。特定の上,下アームスイッチに負荷が集中する事態の発生を抑制するために、Mレベルを含む「HHM」,「HML」,「MLL」が用いられる。「HHM」,「HML」,「MLL」の影響を差し引くことにより、トルクが指令トルクTrq*を上回ってしまうことを抑制する。
【0058】
変調部65は、下式(eq2)に基づいて、「HHL」の出現割合τcmを設定する。下式(eq2)において、τcsは、「HHM」の出現割合である。
【0059】
【数2】
「τcs×TS」は、1制御周期の長さTSの1/3未満の期間に設定されており、例えば、1制御周期の長さTSの1/4未満の期間、又は1制御周期の長さTSの1/5未満の期間に設定されている。本実施形態では、「τcs=τas=τbs」に設定されている。
【0060】
上式(eq2)の右辺第1項から第2項が差し引かれているのは、上記と同様に、回転電機10のトルクが指令トルクTrq*を超える事態の発生を抑制するためである。
【0061】
変調部65は、下式(eq3)に基づいて、「HHH」,「LLL」の1制御周期における合計出現割合τbmを算出する。
【0062】
【数3】
変調部65は、「HHH」,「LLL」それぞれの出現割合を「τbm/2」に設定する。
【0063】
変調部65は、以下2つの条件を満たすように、「HHM」の出現割合τcs、「HML」の出現割合τbs、及び「MLL」の出現割合τasを設定する。2つの条件は、回転電機10のトルクが指令トルクTrq*を超える事態の発生を抑制するためのものである。
【0064】
1つ目の条件は、「MLL」及び「HML」の1制御周期における合計出現割合「τas+τbs」に「MLL」の電圧ベクトルVasの大きさ|Vas|を乗算した値が、「HLL」の出現割合τamに「HLL」の電圧ベクトルVamの大きさ|Vam|を乗算した値以下になるとの条件である。1つ目の条件は、下式(eq4)で表される。
【0065】
【数4】
図9に示すように、「HLL」に対する「MLL」,「HML」の成分の影響を調整するための条件が上式(eq4)である。ここで、第1軸線L1方向における「HML」の成分は、図11に示すように、「HML」の電圧ベクトルVbmの第1軸線L1に沿った方向の電圧ベクトルVb1であり、この電圧ベクトルVb1は「MLL」の電圧ベクトルVasである。上式(eq4)では、「|Vb1|=|Vas|」であることを利用している。
【0066】
2つ目の条件は、「HHM」及び「HML」の1制御周期における合計出現期間「τcs+τbs」に「HHM」の電圧ベクトルVcsの大きさ|Vcs|を乗算した値が、「HHL」の出現割合τcmに「HHL」の電圧ベクトルVcmの大きさ|Vcm|を乗算した値以下になるとの条件である。2つ目の条件は、下式(eq5)で表される。
【0067】
【数5】
図10に示すように、「HHL」に対する「HHM」,「HML」の成分の影響を調整するための条件が上式(eq5)である。ここで、第2軸線L2方向における「HML」の成分は、図11に示すように、「HML」の電圧ベクトルVbmの第2軸線L2に沿った方向の電圧ベクトルVb2であり、この電圧ベクトルVb2は「HHM」の電圧ベクトルVcsである。上式(eq5)では、「|Vb2|=|Vcs|」であることを利用している。
【0068】
なお、特定されたセクタが例えば第3セクタの場合、第1モードは「MHH」であり、第2モードは「LHH」であり、第3モードは「LHM」であり、第4モード「LHL」であり、第5モードは「LML」である(図5参照)。変調部65は、1制御周期において、「HHH」→「MHH」→「LHH」→「LHM」→「LHL」→「LML」→「LLL」となるスイッチングモードを設定する。変調部65は、次の制御周期において、「LLL」→「LML」→「LHL」→「LHM」→「LHH」→「MHH」→「HHH」となるスイッチングモードを設定する。
【0069】
なお、変調部65は、時間的に隣り合うモードの間に、実際には、「τas×TS,τbs×TS,τcs×TS」それぞれよりも非常に短いデッドタイム期間を設定する。ただし、本実施形態では、説明の便宜上、デッドタイム期間を無視する。
【0070】
図12に、変調部65により実行される通常制御及び熱分散制御の選択処理の手順を示す。ステップS10では、熱分散制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。実行条件は、インバータ30が過熱状態であることを把握できる条件である。実行条件は、例えば、判定パラメータ値が閾値を超えているとの条件である。判定パラメータ値は、例えば、指令トルクTrq*、電気角θeに基づいて算出したロータの回転速度、及び温度センサ45の検出値等に基づいて算出される値である。
【0071】
ステップS10において実行条件が成立していないと判定した場合には、ステップS11に進み、通常制御を行う。一方、ステップにおいて実行条件が成立していると判定した場合には、ステップS12に進み、熱分散制御を行う。
【0072】
図13に、熱分散制御の手順を示す。
【0073】
ステップS20では、電気角θeに基づいて、6つのセクタのうち、どのセクタに指令電圧ベクトルVαβの先端が存在するかを特定する。
【0074】
ステップS21では、特定したセクタに基づいて、上述した態様にて、1制御周期において用いるスイッチングモードを設定する。本実施形態において、ステップS21の処理が「設定部」に相当する。
【0075】
ステップS22では、設定したスイッチングモードを構成するモードが1制御周期において順次出現するように、各スイッチSUH~SWL,QU~QWのスイッチング制御を行う。本実施形態において、ステップS22の処理が「制御部」に相当する。
【0076】
以上説明した熱分散制御によれば、インバータ30が熱的に厳しい状況において、回転電機10のトルクを指令トルクTrq*に制御するインバータ30のスイッチング制御を極力継続できる。
【0077】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、熱分散制御において、コンデンサ中性点Oの電圧変動を抑制する処理が追加されている。本実施形態においても、特定されたセクタが第1セクタである場合を例にして説明する。
【0078】
図14に、熱分散制御の手順を示す。
【0079】
ステップS23では、第1実施形態のステップS21の処理に加え、「MLL」の出現割合τas、「HML」の出現割合τbs、及び「HHM」の出現割合τcsの調整処理を行う。
【0080】
まず、第1電圧センサ41の検出電圧である第1電圧V1rと、第2電圧センサ42の検出電圧である第2電圧V2rとの差である電圧差ΔVを算出する。そして、算出した電圧差ΔVの大きさが判定閾値を超えているか否かを判定する。
【0081】
電圧差ΔVの大きさが判定閾値以下であると判定した場合、調整処理を行わない。一方、電圧差ΔVの大きさが判定閾値を超えていると判定した場合、調整処理を行う。
【0082】
調整処理は、電圧差ΔVの大きさが判定閾値以下になるように各出現割合τas,τbs,τcsを調整する処理であり、具体的には、電圧差ΔVの大きさが0の近づくように各出現割合τas,τbs,τcsを調整する処理である。
【0083】
第2電圧V2rに基づいて算出した第2コンデンサ22の充電電荷量Q2が、第1電圧V1rに基づいて算出した第1コンデンサ21の充電電荷量Q1よりも少ないと判定した場合、「MLL」,「HML」,「HHM」のうち、第2コンデンサ22を充電するモードの出現割合を長くし、第2コンデンサ22から放電するモードの出現割合を短くするように、各出現割合τas,τbs,τcsを調整する。この調整において、調整前後における「τas+τbs+τcs」は変わらないようにする。
【0084】
U,V,W相巻線11U,11V,11WのうちW相巻線11Wに流れる電流が最も大きく、W相巻線11Wを中性点側からインバータ30側に向かって電流が流れる場合を例にして説明する。この場合、「HHM」が第2コンデンサ22を充電するモードとなり、「HML」,「MLL」が第2コンデンサ22を放電するモードとなる。このため、「HHM」の出現割合τcsを長くし、「HML」,「MLL」の出現割合τbs,τasが短くなるように調整する。
【0085】
一方、第1コンデンサ21の充電電荷量Q1が第2コンデンサ22の充電電荷量Q2よりも少ないと判定した場合、「MLL」,「HML」,「HHM」のうち、第1コンデンサ21を充電するモードの出現割合を長くし、第1コンデンサ21から放電するモードの出現割合を短くするように、各出現割合τas,τbs,τcsを調整する。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、コンデンサ中性点Oの電圧の変動を抑制できるため、熱分散制御における回転電機10のトルク制御性を高めることができる。
【0087】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、熱分散制御におけるスイッチングモードの設定方法が変更されている。本実施形態においても、特定されたセクタが第1セクタである場合を例にして説明する。
【0088】
変調部65は、時間的に隣り合う2つの制御周期のうち、最初の制御周期に、図15に示すように、「HHH」(「第1ゼロベクトルモード」に相当)→「HHM」→「HHL」→「HML」→「HLL」→「MLL」となるスイッチングモードを設定する。変調部65は、次の制御周期に、図16に示すように、「LLL」(「第2ゼロベクトルモード」に相当)→「MLL」→「HLL」→「HML」→「HHL」→「HHM」となるスイッチングモードを設定する。
【0089】
本実施形態において、変調部65は、最初の制御周期における「HHH」の出現割合を「τbm/2」ではなく「τbm」に設定し、次の制御周期における「LLL」の出現割合を「τbm/2」ではなく「τbm」に設定する。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0092】
・第3実施形態において、第2実施形態と同様に調整処理が実行されてもよい。
【0093】
・マルチレベルインバータとしては、3レベルインバータに限らず、4レベル以上のインバータであってもよい。
【0094】
・変調部65は、Mレベルモードが含まれるスイッチングモードを設定してもよい。
【0095】
・インバータを構成する半導体スイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、NチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。また、各スイッチは、ボディダイオードを有する。
【0096】
・インバータとしては、図1に示したインバータに限らず、例えば、中性点クランプ型等、他のインバータであってもよい。
【0097】
・インバータに接続される蓄電部は、コンデンサに限らず、充放電可能な蓄電池(例えば、小容量の蓄電池)であってもよい。
【0098】
・回転電機としては、各相の巻線が星形結線されるものに限らず、Δ結線されるものであってもよい。
【0099】
・インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、車両に限られず、例えば航空機又は船舶等の移動体であってもよい。移動体が航空機の場合、回転電機は航空機の飛行動力源となり、移動体が船舶の場合、回転電機は船舶の航行動力源となる。また、インバータ、回転電機及び制御装置の搭載先としては、移動体に限られない。
【0100】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0101】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
各相に対応して設けられるスイッチであって、直列接続された複数の蓄電部(21,22)と回転電機(10)の電機子巻線(11U~11W)とに電気的に接続されるスイッチ(SUH~SWL,QU~QW)を備えるマルチレベルのインバータ(30)に適用され、
複数の前記蓄電部の直列接続体から出力可能な複数の電圧レベルのうちいずれかの電圧レベルを出力するように前記スイッチのスイッチング制御を行うインバータ制御装置(50)において、
所定条件を満たす前記インバータのスイッチングモードを設定する設定部と、
設定された前記スイッチングモードに基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定条件は、
各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最高電圧レベルとなるHレベルモード(HHH)、及び各相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち最低電圧レベルとなるLレベルモード(LLL)のうち、少なくとも一方のモードと、
各相の出力電圧レベルが、前記最高電圧レベル及び前記最低電圧レベルの組からなる2レベルモード(HHL,HLL)と、
各相のうち一部の相の出力電圧レベルが、複数の電圧レベルのうち中間電圧レベルとなる中間レベルモード(HHM,HML,MLL)と、が1制御周期(TS)に含まれるとの条件である、インバータ制御装置。
[構成2]
前記所定条件は、第1条件であり、
前記設定部は、前記第1条件、第2条件及び第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定し、
前記第1条件は、前記Hレベルモード、前記Lレベルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが1制御周期に含まれるとともに、各相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるMレベルモード(MMM)が1制御周期に含まれないとの条件であり、
前記第2条件は、前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードのうち、一方を1制御周期における最初のモードとし、他方を1制御周期における最後のモードとし、1制御周期において前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードの間に前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが出現するとの条件であり、
前記第3条件は、出力電圧レベルの切り替える場合、各相のうち1相のみの出力電圧レベルを切り替えるとの条件である、構成1に記載のインバータ制御装置。
[構成3]
前記インバータは、3レベルのインバータであり、
前記Hレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるモードであり、
前記2レベルモード及び前記中間レベルモードは、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなる第1モード(HHM)と、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第2モード(HHL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第3モード(HML)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第4モード(HLL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第5モード(MLL)と、である、構成2に記載のインバータ制御装置。
[構成4]
前記設定部は、前記第1モード、前記第3モード及び前記第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を、1制御周期の長さの1/3未満の期間に設定する、構成3に記載のインバータ制御装置。
[構成5]
前記設定部は、
前記第5モード(MLL)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第5モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vas|)を乗算した値が、前記第4モード(HLL)の1制御周期における出現期間に前記第4モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vam|)を乗算した値以下になるとの条件と、
前記第1モード(HHM)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第1モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcs|)を乗算した値が、前記第2モード(HHL)の1制御周期における出現期間に前記第2モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcm|)を乗算した値以下になるとの条件と、
を満たすように、前記第1~第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を設定する、構成4に記載のインバータ制御装置。
[構成6]
前記設定部は、前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードの1制御周期における合計出現期間を、1制御周期の長さから、前記第1~第5モードの1制御周期における合計出現期間を差し引いた期間に設定する、構成5に記載のインバータ制御装置。
[構成7]
前記所定条件は、第1条件であり、
前記設定部は、前記第1条件、第2条件及び第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定し、
前記Hレベルモード及び前記Lレベルモードのうち、一方のモードを第1ゼロベクトルモードとし、他方のモードを第2ゼロベクトルモードとし、
前記第1条件は、
時間的に隣り合う2つの制御周期のうち、最初の制御周期に、前記第1ゼロベクトルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが含まれるとともに、次の制御周期に、前記第2ゼロベクトルモード、前記2レベルモード及び前記中間レベルモードが含まれ、かつ、各相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるMレベルモード(MMM)が1制御周期に含まれないとの条件であり、
前記第2条件は、前記最初の制御周期における最初のモードを前記第1ゼロベクトルモードとし、前記最初の制御周期における最後のモードを前記中間レベルモードとし、前記次の制御周期における最初のモードを前記第2ゼロベクトルモードとし、前記次の制御周期における最後のモードを前記中間レベルモードにするとの条件であり、
前記第3条件は、出力電圧レベルの切り替える場合、各相のうち1相のみの出力電圧レベルを切り替えるとの条件である、構成1に記載のインバータ制御装置。
[構成8]
前記インバータは、3レベルのインバータであり、
前記Hレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなるモードであり、
前記2レベルモード及び前記中間レベルモードは、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなる第1モード(HHM)と、
3相のうち、2相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第2モード(HHL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、1相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第3モード(HML)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記最高電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第4モード(HLL)と、
3相のうち、1相の出力電圧レベルが前記中間電圧レベルとなり、2相の出力電圧レベルが前記最低電圧レベルとなる第5モード(MLL)と、である、構成7に記載のインバータ制御装置。
[構成9]
前記設定部は、前記第1モード、前記第3モード及び前記第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を、1制御周期の長さの1/3未満の期間に設定する、構成8に記載のインバータ制御装置。
[構成10]
前記設定部は、
前記第5モード(MLL)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第5モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vas|)を乗算した値が、前記第4モード(HLL)の1制御周期における出現期間に前記第4モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vam|)を乗算した値以下になるとの条件と、
前記第1モード(HHM)及び前記第3モード(HML)の1制御周期における合計出現期間に前記第1モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcs|)を乗算した値が、前記第2モード(HHL)の1制御周期における出現期間に前記第2モードの電圧ベクトルの大きさ(|Vcm|)を乗算した値以下になるとの条件と、
を満たすように、前記第1~第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を設定する、構成9に記載のインバータ制御装置。
[構成11]
前記設定部は、
前記第1ゼロベクトルモードの前記最初の制御周期における出現期間を、1制御周期の長さから、前記第1~第5モードの合計出現期間を差し引いた期間に設定し、
前記第2ゼロベクトルモードの前記次の制御周期における出現期間を、1制御周期の長さから、前記第1~第5モードの合計出現期間を差し引いた期間に設定する、構成10に記載のインバータ制御装置。
[構成12]
前記設定部は、
2つの前記蓄電部の電圧差が閾値を超えているか否かを判定し、
前記電圧差が前記閾値を超えていると判定した場合、前記電圧差が前記閾値以下になるように、前記第1,第3,第5モードそれぞれの1制御周期における出現期間を調整する、構成3~6,8~11のいずれか1つに記載のインバータ制御装置。
[構成13]
前記設定部は、
前記インバータが過熱状態であるか否かを判定し、
前記インバータが過熱状態であると判定したことを条件として、前記第1条件、前記第2条件及び前記第3条件を満たす前記スイッチングモードを設定する、構成2~12のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
[構成14]
前記インバータは、前記スイッチとして、
各相に対応して設けられた上,下アームスイッチ(SUH~SWL)と、
各相に対応して設けられたミドルスイッチ(QU~QW)と、
を備え、
前記Hレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記上アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記Lレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記Mレベルモードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、3相の前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第1モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、2相の前記上アームスイッチ及び残り1相の前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第2モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、2相の前記上アームスイッチ及び残り1相の前記下アームスイッチがオンされるモードであり、
前記第3モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、互いに異なる相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第4モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、1相の前記上アームスイッチ及び残り2相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードであり、
前記第5モードは、3相の前記上,下アームスイッチ及び前記ミドルスイッチのうち、1相の前記ミドルスイッチ及び残り2相の前記下アームスイッチのみがオンされるモードである、構成3~6,8~12のいずれか1つに記載のインバータ制御装置。
【符号の説明】
【0102】
10…回転電機、21,22…第1,第2コンデンサ、30…インバータ、50…制御装置。
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