(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162816
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法及び溶融炉
(51)【国際特許分類】
C03B 5/43 20060101AFI20241114BHJP
C03B 5/027 20060101ALI20241114BHJP
C03B 5/425 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C03B5/43
C03B5/027
C03B5/425
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078732
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】保田 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 恵一
(72)【発明者】
【氏名】清原 大
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文弘
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AC01
4G014AD00
(57)【要約】
【課題】溶融炉におけるサイドブロックの損耗を抑制する。
【解決手段】ガラス物品の製造方法は、溶融炉1内でガラス原料Fを加熱溶融して溶融ガラスGMを生成する溶融工程S2を備える。溶融炉1は、クロム煉瓦からなるサイドブロック9と、サイドブロック9の上部の表面9a2に設けられる被覆層11と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉内でガラス原料を加熱溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程を備えるガラス物品の製造方法であって、
前記溶融炉は、クロム煉瓦からなるサイドブロックと、サイドブロックの上部の表面に設けられる被覆層と、を備えることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記被覆層は、前記溶融ガラスから形成されるガラス部を含む請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記被覆層は、泡層から形成される多孔質部を含む請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記被覆層は、ガラス原料から形成される粒子部を含む請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記被覆層は、前記サイドブロックの上面を覆う耐火物を含む請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記溶融炉は、電極のみによって前記溶融ガラスを生成する全電気溶融方式である請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項7】
ガラス原料を加熱溶融して溶融ガラスを生成する溶融炉であって、
クロム煉瓦からなるサイドブロックと、前記サイドブロックの上部の表面に設けられる被覆層と、を備えることを特徴とする溶融炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造方法及び溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板、ガラス管、ガラス繊維等に代表されるガラス物品は、ガラス原料を溶解させて生成した溶融ガラスを所定の形状に成形することにより製造される。
【0003】
ガラス物品を製造する方法としては、溶融炉内で溶融ガラスを連続生成する工程を備えるものが公知である(例えば特許文献1参照)。この方法では、溶融炉内に貯留された溶融ガラスを電極により通電加熱しつつ、溶融ガラス上に連続供給したガラス原料を溶解させて新たな溶融ガラスを連続生成すると共に、溶融ガラスを溶融炉の流出口から炉外に流出させる(同文献の請求項1参照)。
【0004】
溶融ガラスの生成に使用される溶融炉は、電極が設けられた底壁と、底壁の周囲に設けられる側壁と、天井壁と、を有する(同文献の段落0036参照)。底壁及び側壁は、耐火ブロックとしてのボトムブロック及びサイドブロックにより構成されている。
【0005】
ボトムブロック及びサイドブロックは、例えばアルミナ又はジルコニアを含む耐火性セラミック材料等の耐火性材料から形成できるが、この耐火性セラミック材料は、イットリウム、ジルコン若しくはアルミナジルコニアシリカ、又は酸化クロムといった他の耐火性材料を含むことができる(例えば特許文献2の段落0049参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/004138号
【特許文献2】特表2022-502334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の製造方法によってガラス物品を製造する場合、溶融炉内の溶融ガラスは、底壁及び側壁によって区画された空間に貯留される。この場合において、溶融ガラスがこの空間内に確実に貯留されるように、溶融ガラスの液面がサイドブロックの上部よりも下方に位置するように調整する必要がある。このため、サイドブロックの上部の表面は、溶融ガラスの液面から露出した状態となっている。
【0008】
クロム煉瓦からなるサイドブロックを用いる場合、溶融ガラスの液面から露出したサイドブロックの上部の表面は、溶融炉内の高温雰囲気に曝されることで昇華するおそれがあった。サイドブロックの上部が昇華により損耗すると、側壁からの溶融ガラスの漏出を招くおそれがあり、溶融炉の保守及び点検を頻繁に行う必要があった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、溶融炉におけるサイドブロックの損耗を抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、溶融炉内でガラス原料を加熱溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程を備えるガラス物品の製造方法であって、前記溶融炉は、クロム煉瓦からなるサイドブロックと、サイドブロックの上部の表面に設けられる被覆層と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、被覆層によってサイドブロックの上部の表面を覆うことで、この表面が溶融炉内の高温雰囲気と接触することを防止できる。これにより、サイドブロックの上部の昇華を低減することで、その損耗を抑制することが可能となる。
【0012】
(2) 上記(1)に記載のガラス物品の製造方法において、前記被覆層は、前記溶融ガラスから形成されるガラス部を含んでもよい。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のガラス物品の製造方法において、前記被覆層は、泡層から形成される多孔質部を含んでもよい。
【0014】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかに記載のガラス物品の製造方法において、前記被覆層は、ガラス原料から形成される粒子部を含んでもよい。
【0015】
(5) 上記(1)から(4)のいずれかに記載のガラス物品の製造方法において、前記被覆層は、前記サイドブロックの上面を覆う耐火物を含んでもよい。
【0016】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス物品の製造方法において、前記溶融炉は、電極のみによって前記溶融ガラスを生成する全電気溶融方式であってもよい。
【0017】
かかる構成によれば、溶融炉を全電気溶融方式とすることで、溶融炉における上部空間の雰囲気温度を低下させることができる。これによりサイドブロックの上部の昇華をさらに抑制することが可能となる。
【0018】
(7) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス原料を加熱溶融して溶融ガラスを生成する溶融炉であって、クロム煉瓦からなるサイドブロックと、前記サイドブロックの上部の表面に設けられる被覆層と、を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、被覆層によってサイドブロックの上部の表面を覆うことで、サイドブロックが溶融炉内の高温雰囲気と接触することを防止できる。これにより、サイドブロックの上部の昇華を低減し、その損耗を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶融炉におけるサイドブロックの損耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1のII-II矢視線に係る断面図である。
【
図7】ガラス物品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係るガラス物品の製造方法及び溶融炉の一実施形態を示す。
【0023】
図1及び
図2は、本方法に使用されるガラス物品の製造装置を示す。製造装置は、溶融炉1と、フィーダ2と、図示省略の成形装置と、を備える。
【0024】
溶融炉1は、ガラス原料Fを供給し、このガラス原料Fを加熱により溶解して溶融ガラスGMを生成する。ガラス原料Fは、天然原料、化成原料に加えて、カレットを含んでもよい。ガラス物品がガラス繊維である場合、溶融ガラスGMは、Eガラス、NEガラス、Cガラス、Sガラス、Tガラス、Dガラスとすることができ、このうち、Eガラスがより好ましい。
【0025】
また、ガラス物品がディスプレイ用のガラス基板やガラス管である場合、溶融ガラスGMは、無アルカリガラスとすることができる。ガラス物品がディスプレイ等のカバーガラスである場合、化学強化用のアルミノシリケートガラスとすることができる。
【0026】
図1に示すように、溶融ガラスGMにおける液面の一部又は全部は、ガラス原料Fから形成されるバッチ層Gaと、ガラス原料Fの溶解に伴って形成される泡層Gbとによって被覆される。
【0027】
溶融炉1は、溶融ガラスGMを生成する溶融槽3と、溶融槽3の上方に位置する上部構造物4と、を備える。
【0028】
溶融槽3は、底壁5と、側壁6とを備える。溶融炉1は、溶融槽3の底壁5、側壁6、及び上部構造物4によって溶融ガラスGMを収容する内部空間を区画形成する。
【0029】
底壁5は、耐火物により構成される複数のボトムブロックを含む。底壁5は、ボトムブロックを複数の層となるように上下に積層することにより構成される。底壁5の各層は、横方向に並べて配置された複数のボトムブロックにより構成される。ボトムブロックは、例えば高ジルコニア電鋳耐火煉瓦、デンスジルコン焼成煉瓦、クロム煉瓦等の耐火物により、或いは、これらの耐火物を組み合わせることにより構成される。
【0030】
溶融炉1は、底壁5から上方に突出する複数の電極7を有する。電極7は、棒状に構成されるが、板状又はブロック状に構成されてもよい。電極7は、例えばモリブデンで構成されるが、この構成に限定されない。溶融炉1は、側壁6から突出する電極7を有してもよい。
【0031】
本実施形態では、溶融炉1内における溶融ガラスGMの液面よりも上方空間において、ガラス原料Fを溶解するためのバーナ等の燃焼加熱手段は設けられていない。本実施形態は、後述する溶融工程において、電極7による通電加熱のみでガラス原料Fを溶解する、いわゆる全電気溶融方式の溶融炉1を例示する。
【0032】
このような全電気溶融方式の溶融炉1を採用すれば、パーナ等の燃焼加熱手段を用いることがないため、上部構造物4の内部の雰囲気温度を大幅に低下させることができる。これにより、上部構造物4からの放熱を大幅に削減でき、エネルギ効率を上昇させることができる。また、天然ガス等の化石燃料を用いないので、CO2排出量を大幅に削減できる。なお、溶融工程を開始する前の立ち上げ工程(溶融炉1を常温からガラス原料Fを溶解可能な温度まで昇温する工程)では、バーナを用いてもよい。
【0033】
図1及び
図2に示すように、側壁6は、上流側に位置する前壁としての第一側壁6aと、下流側に位置する後壁としての第二側壁6bと、第一側壁6aと第二側壁6bとを連結する、第三側壁6c及び第四側壁6dと、を含む。
【0034】
溶融炉1の第二側壁6bには、溶融ガラスGMを排出するための排出口8が設けられている。排出口8は、フィーダ2に接続されている。これにより、溶融炉1は、溶融ガラスGMが第一側壁6a側から第二側壁6b側に向かって流動するように構成されている。
【0035】
図3に示すように、各側壁6a~6dは、耐火物により構成される複数のサイドブロック9を含む。本実施形態では、サイドブロック9が、上下方向に分割されることなく、一つの長尺状の耐火ブロックで構成される形態を例示するが、これに限らず、上下方向に分割された複数の耐火ブロックで構成してもよい。
【0036】
溶融ガラスGMと接触するサイドブロック9は、クロム煉瓦により構成される。クロム煉瓦は、酸化クロム(Cr2O3)を主成分とする焼成煉瓦である。クロム煉瓦に含まれる酸化クロムは、例えば80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。クロム煉瓦としては、例えばデンスクロム焼成煉瓦、ポーラスクロム焼成煉瓦などを用いることができる。
【0037】
各側壁6a~6dは、サイドブロック9の外側に配置される遮蔽ブロック10を有する。この遮蔽ブロック10としては、例えば電鋳煉瓦または焼成煉瓦が用いられる。電鋳煉瓦としては、例えば、HZFC等の高ジルコニア電鋳煉瓦が挙げられる。高ジルコニア電鋳煉瓦は、例えばジルコニアの含有量が80質量%以上である。焼成煉瓦としては、例えばデンスジルコン焼成煉瓦が挙げられる。
【0038】
サイドブロック9は、内面9aと、上面9bと、上面9bを挟んで内面9aの反対側に位置する外面9cと、を有する。
【0039】
サイドブロック9の内面9aは、溶融槽3内において溶融ガラスGMと接触する面(接触面)である。内面9aは、溶融ガラスGMに接触する接触部9a1と、接触部9a1よりも上方に位置して溶融ガラスと接触しない非接触部9a2と、を有する。接触部9a1及び非接触部9a2の大きさ(面積)は、溶融槽3内で生成される溶融ガラスGMの液面の高さを変えることで、調整することができる。
【0040】
サイドブロック9の上部、具体的には、内面9aの非接触部9a2、及び上面9bは、被覆層11,12によって覆われている。被覆層11,12は、内面9aの非接触部9a2を被覆する第一被覆層11と、上面9bを被覆する第二被覆層12と、を含む。
【0041】
図3乃至
図6は、被覆層11,12の例を示す。
図3に示す例において、第一被覆層11は、溶融炉1の操業中に発生させた泡層Gbにより構成される。この例における第一被覆層11は、気泡を含む泡層Gbにより構成される多孔質部である。多孔質部(非接触部9a2周辺の泡層Gb)は、流動してもよく、流動することなく、停滞してもよい。このような第一被覆層11であれば、事前に第一被覆層11を形成する工程が不要であり、第一被覆層11を効率よく形成可能である。
【0042】
図4に示す例において、第一被覆層11は、泡層Gbと、泡層Gbを覆うバッチ層Gaとを含む。溶融炉1に供給されたガラス原料Fが粉体(粒子)状であることから、この例における第一被覆層11(バッチ層Ga)は、ガラス原料Fから形成される粒子部を含むものである。粒子部(非接触部9a2周辺のバッチ層Ga)は、流動してもよく、流動することなく、停滞してもよい。このような第一被覆層11であれば、事前に第一被覆層11を形成する工程が不要であり、第一被覆層11を効率よく形成可能である。
【0043】
図5に示す例において、第一被覆層11は、ガラス部により構成される。このガラス部は、流動しない程度に高粘度のガラスからなる。少なくとも上部の内面9aに予めガラス部(ガラス層)が形成されたサイドブロック9を用いてもよいが、ガラス部は、溶融炉1の操業中に、溶融ガラスGMの一部をサイドブロック9の内面9aにおける非接触部9a2に付着させることにより形成してもよい。
【0044】
すなわち、後述する溶融工程において、溶融槽3に貯留させる溶融ガラスGMの量を増加させることで、サイドブロック9の非接触部9a2に溶融ガラスGMを接触させる。その後、溶融ガラスGMの量を減少させ、溶融ガラスGMの液面を下げることで、非接触部9a2に第一被覆層11であるガラス部を形成することができる。
【0045】
第一被覆層11は、泡層Gbに含まれるガラスが流動しない程度に高粘度となることによって形成される多孔質部により構成されてもよい。このような第一被覆層11は、例えば、ガラス原料に含まれる清澄剤の量を調整することで泡層Gbの厚さを増減させることにより形成できる。或いは、第一被覆層11は、泡層Gbの厚さを一定にした状態で、溶融ガラスGMの量を増減させることで形成できる。
【0046】
第一被覆層11は、ガラス部と、泡層Gbに含まれるガラスが流動しない程度に高粘度となることによって形成される多孔質部とを含んでもよい。また、第一被覆層11は、溶融ガラスGMや泡層Gbに含まれるガラスが流動しない程度に高粘度となる過程で、未溶融のガラス原料が付着したり混入したりすることで形成される粒子部を含んでもよい。
【0047】
このような第一被覆層11であれば、操業条件の変更や季節変動等に伴う溶融ガラスGMの液面の高さや泡層Gbの厚さ、バッチ層Gaの厚さの変動が発生しても、泡層Gbやバッチ層Gaが漏れ出るリスクがなく、溶融炉1を安定して操業することが可能となる。
【0048】
第二被覆層12は、遮蔽ブロック10と同じ材料により構成された耐火物である。第二被覆層12は、遮蔽ブロック10の上部からサイドブロック9に向かって延びる突起部により構成される。突起部の下面は、サイドブロック9の上面9bに接触している。
【0049】
遮蔽ブロック10は、上ブロック10aと、下ブロック10bとに分割されている。上ブロック10aは、上記の第二被覆層12と、サイドブロック9の外側に位置するとともにサイドブロック9の外面9cの上部を覆う被覆部10a1と、を有する。下ブロック10bは、上ブロック10aの被覆部10a1を支持するとともに、サイドブロック9の外面9cの下部を被覆している。
【0050】
第二被覆層12は、上記の構成に限らず、遮蔽ブロック10とは別に構成された板状又はブロック状の耐火部材であってもよい。また、遮蔽ブロック10は、上ブロック10aと下ブロック10bとが一体化されたものであってもよく、上下で3個以上に分割されていてもよい。
【0051】
図6に示す例において、遮蔽ブロック10は、第一被覆層11と第二被覆層12とを一体に有する。この例において、第一被覆層11は、遮蔽ブロック10と同じ耐火物により構成される。第一被覆層11は、第二被覆層12の端部から下方に突出する突起部として構成される。第一被覆層11は、サイドブロック9の内面9aにおける非接触部9a2に接触している。
【0052】
図1に示すように、上部構造物4の一部には、溶融槽3にガラス原料Fを供給するための供給口13が設けられている。供給口13は、スクリューフィーダからなる供給機14によりガラス原料Fを供給する。供給機14としては、スクリューフィーダに限らず、各種フィーダを用いてもよい。
【0053】
図2に示すように、上部構造物4は、溶融槽3の側壁6上に配置された第一受け部15と、第一受け部15上に配置されたブレストウォール16と、ブレストウォール16上に配置された第二受け部17と、中央部が上方に湾曲した天井アーチ18と、を備える。なお、ブレストウォール16は省略してもよい。
【0054】
第一受け部15は、遮蔽ブロック10の第二被覆層12から上方に離れた位置に設けられている。第一受け部15と第二被覆層12との隙間は、モルタルといった不定形耐火物19等で封止されている。
【0055】
ブレストウォール16は、第一受け部15を介して立設されており、第二受け部17を介して天井アーチ18を支持する。天井アーチ18は、迫構造(アーチ構造)を有しており、上部構造物4における天井である。上部構造物4の各部は、耐熱性および耐食性に優れた耐火物(焼成耐火物、電鋳耐火物等)により形成されている。
【0056】
上記溶融槽3および上部構造物4は、図示しない支持構造物によって支持されている。例えば、支持構造物は、溶融槽3の底壁5を下方から支持する梁と、上部構造物4を支持するとともに溶融槽3の横方向の移動を規制する支柱とを備える。支柱には、金具等を介して、第一受け部15および第二受け部17がそれぞれ固定されている。また、支柱には、溶融槽3の底壁5及び遮蔽ブロック10を押して横方向の移動を規制する押さえ金具が固定されている。
【0057】
フィーダ2は、溶融炉1で形成された溶融ガラスGMをフィーダ2の下流側の成形装置まで移送するためのものである。フィーダ2は、必要に応じて、溶融ガラスGMを移送するための移送路、溶融ガラスGMに清澄処理を施す清澄室、スターラによって溶融ガラスGMに攪拌処理を施す均質化室(攪拌室)などを含む。
【0058】
図示省略の成形装置は、フィーダ2によって供給される溶融ガラスGMからガラス物品を成形する。本実施形態において、成形装置によって製造されるガラス物品は、ガラス繊維である。
【0059】
以下、上記構成の製造装置を用いてガラス物品としてのガラス繊維を製造する方法について説明する。
【0060】
図7に示すように、本方法は、供給工程S1と、溶融工程S2と、排出工程S3と、移送工程S4と、成形工程S5とを含む。
【0061】
供給工程S1では、溶融炉1の上流側に位置する供給機14は、供給口13からガラス原料Fを溶融炉1内に供給する。ガラス原料Fは、溶融炉1内に収容された溶融ガラスGM上に連続的に供給される。
【0062】
また、供給機14により供給されたガラス原料Fは、電極7により通電加熱される高温の溶融ガラスGM上を第二側壁6b側に向かって流動することでバッチラインを形成する。ガラス原料Fがバッチラインに沿って流動する過程で、ガラス原料Fは、溶融ガラスGMの熱によって昇温しながら下降し、溶融ガラスGMとなる。これにより、溶融ガラスGMが連続的に生成される。
【0063】
ガラス原料Fは、溶融するまでの間、溶融ガラスGMの液面の一部を被覆するバッチ層Gaとなる。溶融ガラスGMにおける液面の一部は、このバッチ層Gaと、ガラス原料Fの溶解に伴って形成される泡層Gbとによって被覆される。バッチ層Gaの一部又は全部は、泡層Gb上に形成されてもよい。
【0064】
泡層Gbは、ガラス原料Fに起因して炭酸ガス(COやCO2)、O2ガス、SO2ガスなどのガスが発生するのに伴って形成される。
【0065】
上記のように、このようにバッチ層Ga及び泡層Gbによって溶融ガラスGMの液面の一部又は全部を覆うことにより、溶融ガラスGMの放熱を抑制できる。その結果、溶融ガラスGMの温度を確実に保持できるため、省エネルギ化を図ることができる。
【0066】
溶融工程S2では、溶融ガラスGMに浸漬された電極7による加熱により、ガラス原料Fを溶解して溶融ガラスGMを得る。この際、溶融ガラスGMの液面に、バッチ層Ga及び泡層Gbが形成されるように、電極7による加熱温度や、溶融炉1内における溶融ガラスGMの液面よりも上方の空間の温度を調整する。
【0067】
排出工程S3では、溶融炉1の下流側で第二側壁6bの排出口8から溶融ガラスGMを連続的に排出し、フィーダ2に溶融ガラスGMを供給する。
【0068】
移送工程S4では、溶融炉1で形成された溶融ガラスGMを、フィーダ2によって成形装置まで移送する。
【0069】
成形工程S5では、成形装置により、溶融ガラスGMからガラス物品としてのガラス繊維を成形する。
【0070】
以上説明した本実施形態に係るガラス物品の製造方法及び溶融炉1によれば、被覆層11,12によってサイドブロック9の上部の表面(非接触部9a2及び上面9b)を被覆することによって、サイドブロック9の上部が溶融炉1内の高温雰囲気と接触することを防止できる。これにより、サイドブロック9の上部の昇華を低減し、その損耗を抑制することが可能となる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0072】
上記の実施形態では、
図3乃至
図6において、サイドブロック9の上部を被覆する被覆層11,12の例を示したが、本発明は、これらの構成に限定されない。例えば、
図3乃至
図6に示した被覆層11,12を適宜組み合わせて使用してもよい。すなわち、
図3又は
図4に示す例と、
図5又は
図6に示す例とを組み合わせてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、全電気溶融方式の溶融炉1を例示したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。溶融炉1は、バーナ等の燃焼加熱手段と、電極とを併用して溶融ガラスを生成するものであってもよく、電極を用いることなく、燃焼加熱手段のみで溶融ガラスを生成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 溶融炉
7 電極
9 サイドブロック
11 第一被覆層
12 第二被覆層
F ガラス原料
Gb 泡層
GM 溶融ガラス
S2 溶融工程