(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162818
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】濃縮システム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/00 20060101AFI20241114BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20241114BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B01D61/00 500
B01D61/58
B01D69/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078738
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 要二
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA14
4D006HA61
4D006JA58Z
4D006JA59Z
4D006JA63A
4D006KA02
4D006KA03
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4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
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4D006KB11
4D006KB12
4D006KD08
4D006KD19
4D006KD24
4D006KE07Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA06
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4D006MB06
4D006MC11
4D006MC18
4D006MC46
4D006MC54
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA02
4D006PB08
4D006PB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の半透膜モジュールを含む多段式の膜分離システムを用いて、ブラインコンセントレーションにより、対象溶液から水を分離して濃縮する際に、対象溶液中に含まれる対象成分の回収率を高める濃縮システムを提供する。
【解決手段】濃縮システムは、複数の半透膜モジュール1~4を備え、該モジュールの第1室11,21,31,41が接続されてなる濃縮流路が設けられ、複数の半透膜モジュールの第2室12,22,32,42が接続されてなる希釈流路が設けられ、濃縮流路に対象溶液が流され、希釈流路に浸透圧を有する補助溶液が流され、対象溶液が補助溶液より高い圧力を有することにより、対象溶液が濃縮され、濃縮流路および希釈流路の少なくともいずれかにおいて、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに対象溶液および補助溶液の少なくともいずれかを流さないように流路を切り替える切替器50a,50b,51a,51b等を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象成分を含む対象溶液から溶媒を分離することで、前記対象成分が濃縮された濃縮液を得るための濃縮システムであって、
複数の半透膜モジュールを備え、
前記複数の半透膜モジュールの各々は、半透膜と、該半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、
前記複数の半透膜モジュールの前記第1室が接続されてなる濃縮流路が設けられ、
前記複数の半透膜モジュールの前記第2室が接続されてなる希釈流路が設けられ、
前記濃縮流路に、前記対象溶液が流され、
前記希釈流路に、浸透圧を有する補助溶液が流され、
前記対象溶液が前記補助溶液より高い圧力を有することにより、前記複数の半透膜モジュールの各々において、前記第1室内の前記対象溶液に含まれる溶媒が前記半透膜を介して前記第2室内の前記補助溶液に移行し、前記対象溶液が濃縮されることで、前記濃縮液が得られ、
前記濃縮流路および前記希釈流路の少なくともいずれかにおいて、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに前記対象溶液および前記補助溶液を流さないように流路を切り替えるための切替器をさらに備える、
濃縮システム。
【請求項2】
前記濃縮流路および前記希釈流路の少なくともいずれかにおいて、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの上流側と下流側とを直接接続するバイパス流路が設けられ、
前記切替器は、流路を該バイパス流路に切り替えるための切替器である、
請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項3】
前記濃縮流路および前記希釈流路の両方において、前記バイパス流路が設けられる、
請求項2に記載の濃縮システム。
【請求項4】
逆浸透膜と、逆浸透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有する逆浸透モジュールをさらに備え、
前記逆浸透モジュールにおいて、前記対象溶液が前記第1室に前記第2室よりも高い圧力で供給され、前記第1室の前記対象溶液に含まれる溶媒が前記逆浸透膜を介して前記第2室へ透過すると共に前記対象溶液が濃縮され、濃縮された前記対象溶液が前記第1室から排出され、前記逆浸透膜を透過した溶媒である透過液が前記第2室から排出され、
前記逆浸透モジュールで濃縮された前記対象溶液が前記濃縮流路に供給され、
前記切替器は、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに前記透過液を流すように流路を切り替えるための切替器である、
請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項5】
前記補助溶液として、前記濃縮液の一部が使用される、請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項6】
前記対象溶液を前記補助溶液よりも高い圧力に加圧するための加圧器具を備える、請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項7】
前記半透膜は、中空糸膜である、請求項1に記載の濃縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透(RO)法を用いた淡水化処理に必要なエネルギーを低下させること等を目的として、半透膜と、該半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有する半透膜モジュールの第1室に高圧の対象溶液を流し、第2室に低圧の対象溶液を流して、第1室内の対象溶液に含まれる溶媒(水など)を半透膜を介して第2室内の対象溶液に移行させることで、第1室から濃縮された対象溶液(濃縮液)を排出し、第2室から希釈された対象溶液(希釈液)を排出する膜分離方法(ブラインコンセントレーション)が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開第2018/084246号)、特許文献2(特開2019-188330号公報)、特許文献3(特表2018-515340号公報)には、複数の半透膜モジュールが直列的に連結されてなる多段式の膜分離システムをブラインコンセントレーション(BC)に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/084246号
【特許文献2】特開2019-188330号公報
【特許文献3】特表2018-515340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような複数の半透膜モジュールを含む多段式の膜分離(濃縮)システムにおいては、複数の半透膜モジュールに対して、半透膜の目詰まり等を防止するために定期的に洗浄を行う必要がある。また、洗浄でも半透膜の性能を回復することが困難になった場合は、半透膜モジュールを交換する必要がある。
【0006】
ここで、半透膜モジュールの洗浄や交換を行うためには、濃縮システムの運転を停止したり、半透膜モジュールを濃縮システムから取り外したりする必要がある。このため、濃縮システムの運転効率が低下したり、操作に手間がかかったりするという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、ブラインコンセントレーション(BC)により対象溶液から水を分離して濃縮するために用いられる複数の半透膜モジュールを含む多段式の濃縮システム(膜分離システム)において、半透膜モジュールの洗浄や交換を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 対象成分を含む対象溶液から溶媒を分離することで、前記対象成分が濃縮された濃縮液を得るための濃縮システムであって、
複数の半透膜モジュールを備え、
前記複数の半透膜モジュールの各々は、半透膜と、該半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、
前記複数の半透膜モジュールの前記第1室が接続されてなる濃縮流路が設けられ、
前記複数の半透膜モジュールの前記第2室が接続されてなる希釈流路が設けられ、
前記濃縮流路に、前記対象溶液が流され、
前記希釈流路に、浸透圧を有する補助溶液が流され、
前記対象溶液が前記補助溶液より高い圧力を有することにより、前記複数の半透膜モジュールの各々において、前記第1室内の前記対象溶液に含まれる溶媒が前記半透膜を介して前記第2室内の前記補助溶液に移行し、前記対象溶液が濃縮されることで、前記濃縮液が得られ、
前記濃縮流路および前記希釈流路の少なくともいずれかにおいて、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに前記対象溶液および前記補助溶液を流さないように流路を切り替えるための切替器をさらに備える、
濃縮システム。
【0009】
[2] 前記濃縮流路および前記希釈流路の少なくともいずれかにおいて、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの上流側と下流側とを直接接続するバイパス流路が設けられ、
前記切替器は、流路を該バイパス流路に切り替えるための切替器である、
[1]に記載の濃縮システム。
【0010】
[3] 前記濃縮流路および前記希釈流路の両方において、前記バイパス流路が設けられる、
[2]に記載の濃縮システム。
【0011】
[4] 逆浸透膜と、逆浸透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有する逆浸透モジュールをさらに備え、
前記逆浸透モジュールにおいて、前記対象溶液が前記第1室に前記第2室よりも高い圧力で供給され、前記第1室の前記対象溶液に含まれる溶媒が前記逆浸透膜を介して前記第2室へ透過すると共に前記対象溶液が濃縮され、濃縮された前記対象溶液が前記第1室から排出され、前記逆浸透膜を透過した溶媒である透過液が前記第2室から排出され、
前記逆浸透モジュールで濃縮された前記対象溶液が前記濃縮流路に供給され、
前記切替器は、前記複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに前記透過液を流すように流路を切り替えるための切替器である、
[1]~[3]のいずれかに記載の濃縮システム。
【0012】
[5] 前記補助溶液として、前記濃縮液の一部が使用される、[1]~[4]のいずれかに記載の濃縮システム。
【0013】
[6] 前記対象溶液を前記補助溶液よりも高い圧力に加圧するための加圧器具を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の濃縮システム。
【0014】
[7] 前記半透膜は、中空糸膜である、[1]~[6]のいずれかに記載の濃縮システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブラインコンセントレーション(BC)により対象溶液から水を分離して濃縮するために用いられる複数の半透膜モジュールを含む多段式の濃縮システム(膜分離システム)において、半透膜モジュールの洗浄や交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の濃縮システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す濃縮システムの別の状態を示す模式図である。
【
図3】実施形態の濃縮システムの変形例を示す模式図である。
【
図4】実施形態の濃縮システムの別の変形例を示す模式図である。
【
図5】実施形態の濃縮システムの別の一例を示す模式図である。
【
図6】
図5に示す濃縮システムの別の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表す。
【0018】
<濃縮システム>
本実施形態の濃縮システムは、対象成分を含む対象溶液から溶媒を分離することで、対象成分が濃縮された濃縮液を得るためのシステムである。
【0019】
図1および
図2を参照して、本実施形態の濃縮システムは、複数の半透膜モジュール1,2,3,4を備えた、多段式の濃縮システム(膜分離システム)である。
図1は、対象溶液の濃縮が行われる通常の運転状態を示す図であり、
図2は、半透膜モジュールの洗浄または交換が行われる一時的な状態を示す図である。同様に、
図5は、対象溶液の濃縮が行われる通常の運転状態を示す図であり、
図6は、半透膜モジュール等の洗浄が行われる一時的な状態を示す図である。
図1、
図2、
図5および
図6において、点線で示される流路は、液が流れていない流路であることを示す。
なお、
図1においては、「複数の半透膜モジュール」として、4つの半透膜モジュール1,2,3,4が描かれているが、「複数の半透膜モジュール」は、例えば、2以上の任意の数の半透膜モジュールであり得る。
【0020】
複数の半透膜モジュール1,2,3,4の各々は、半透膜10,20,30,40と、該半透膜で仕切られた第1室11,21,31,41および第2室12,22,32,42と、を有する。
【0021】
複数の半透膜モジュール1,2,3,4の第1室11,21、31,41が接続されてなる濃縮流路が設けられている。すなわち、濃縮流路は、第1室11,21,31,41と、それらを接続する流路と、からなる。複数の半透膜モジュールの少なくとも一部において、第1室は直列的に接続されていることが好ましい。複数の半透膜モジュールの一部において、第1室は並列的に接続されていてもよい。
【0022】
また、複数の半透膜モジュール1,2,3,4の第2室12,22,32,42が接続されてなる希釈流路が設けられている。すなわち、希釈流路は、第2室12,22,32,42と、それらを接続する流路と、からなる。複数の半透膜モジュールの少なくとも一部において、第2室は直列的に接続されていることが好ましい。複数の半透膜モジュールの一部において、第2室は並列的に接続されていてもよい。
【0023】
上記の濃縮流路には、対象溶液が流される。対象溶液は、半透膜モジュール1の第1室11、半透膜モジュール2の第1室21、半透膜モジュール3の第1室31、半透膜モジュール4の第1室41の順に流れる。
【0024】
図1において、希釈流路には、浸透圧を有する補助溶液が流される。補助溶液は、半透膜モジュール4の第2室42、半透膜モジュール3の第2室32、半透膜モジュール2の第2室22、半透膜モジュール1の第2室12の順に流れる。すなわち、補助溶液は、半透膜モジュールの連結において対象溶液とは逆の順に流される。
ただし、補助溶液は、
図1に示す態様に限られず、半透膜モジュール1の第2室12、半透膜モジュール2の第2室22、半透膜モジュール3の第2室32、半透膜モジュール4の第2室42の順に流れてもよい。
【0025】
なお、個々の半透膜モジュールにおいては、半透膜の両側で(第1室と第2室とで)液の流れ方向は、互いにどのような方向であってもよく、対向する方向(対向流方式)であってもよく、並行する方向(並行流方式)であってもよい。
【0026】
対象溶液は、補助溶液より高い圧力(静水圧)を有する。すなわち、複数の半透膜モジュールの各々において、第1室内の液(対象溶液)は、第2室内の液(補助溶液)よりも高い圧力を有している。
【0027】
なお、対象溶液は、加圧器具等により昇圧される。加圧器具としては、例えば、対象溶液を加圧しつつ第1室に送り込むことのできる高圧ポンプ(図示せず)などが挙げられる。なお、加圧器具は、ポンプ以外の器具であってもよく、例えば、半透膜モジュールの外部から第1室内の液を加圧する器具であってもよい。
【0028】
対象溶液が補助溶液より高い圧力を有することにより、複数の半透膜モジュールの各々において、第1室内の対象溶液に含まれる溶媒(水など)が半透膜を介して第2室内の補助溶液に移行し、第1室から濃縮液が排出され、第2室から希釈液が排出される。
【0029】
(切替器)
本実施形態の濃縮システムは、濃縮流路および希釈流路の少なくともいずれかにおいて、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つに対象溶液および補助溶液のいずれかも流さないように流路を切り替えることができる切替器をさらに備える。
すなわち、濃縮流路においては、切替器によって、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの第1室に対象溶液を流さないように、対象溶液の流路を切り替えることができる。また、希釈流路においては、切替器によって、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの第2室に補助溶液を流さないように、補助溶液の流路を切り替えることができる。
【0030】
かかる特徴を有する本実施形態の濃縮システムによれば、ブラインコンセントレーション(BC)により対象溶液から水を分離して濃縮するために用いられる複数の半透膜モジュールを含む多段式の濃縮システム(膜分離システム)において、半透膜モジュールの洗浄や交換を容易に行うことができる。
【0031】
濃縮システムは、濃縮流路または希釈流路の一方のみに切替器を備えていてもよい。この場合は、切替器が備えられた濃縮流路または希釈流路の一方のみの洗浄を容易に行うことができる。
濃縮流路および希釈流路の両方の洗浄を行いたい場合や、半透膜モジュールの交換を行いたい場合、濃縮システムは、濃縮流路および希釈流路の両方に切替器を備えていることが好ましい。
【0032】
本実施形態の一例として、濃縮流路および希釈流路の少なくともいずれかにおいて、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの上流側と下流側とを直接(半透膜モジュールを介さずに)接続するバイパス流路(
図1の点線部参照)が設けられてもよい。この場合、上記の切替器は、流路を該バイパス流路に切り替えるための切替器(
図1のS:符号50a~57b)であってもよい。
この場合、バイパス流路に流路を切り替えることにより、濃縮流路(対象溶液)および希釈流路(補助溶液)の少なくともいずれかの流れを止めずに、複数の半透膜モジュールの少なくとも1つの洗浄や交換を行うことができる。
【0033】
例えば、
図1に示されるように、全ての半透膜モジュールについて、濃縮流路および希釈流路の両方にバイパス流路(点線部)が設けられていてもよい。ここで、上述の切替器は、流路を該バイパス流路に切り替えるための切替器である。
この場合、流路をバイパス流路に切り替えることにより、濃縮流路および希釈流路の両方の流れを止めずに、複数の半透膜モジュールうちの任意の半透膜モジュールに対して、必要に応じて容易に洗浄や交換を行うことができる。
例えば、
図2に示されるように、半透膜モジュール3の第1室31側の流路を切替器52a,52bによって濃縮流路からバイパス流路に切り替え、同様に、半透膜モジュール3の第2室32側の流路を切替器55a,55bによって希釈流路からバイパス流路に切り替えることで、システム全体として濃縮流路および希釈流路の両方の流れを止めずに、複数の半透膜モジュールうちの半透膜モジュール3のみに対して容易に洗浄や交換を行うことができる。
【0034】
なお、例えば、
図3に示されるように、半透膜モジュール1,2,3,4の各々の第一室11,21,31,41を個別に洗浄できるように、洗浄液(後述の透過液など)の流路(切替バルブ72が設けられた図中に細線で示す流路)を設けておいてもよい。
図3において、切替バルブ72により、洗浄液の流路が個別に開閉可能である。
洗浄液は後述の透過液以外に、水道水、純水、薬品洗浄液などでも良い。従って、タンク7に透過液以外の洗浄液を別途調合したり、貯留しても良いし。タンク7以外の供給先から洗浄液を供給しても良い。
また、例えば、
図4に示されるように、半透膜モジュール1,2,3,4の各々の第一室11,21,31,41を個別に洗浄できるように、洗浄液(後述の透過液など)の流路(切替バルブ72が設けられた図中に細線で示す流路)を設けておいてもよい。
図4において、切替バルブ72により、洗浄液の流路が個別に開閉可能である。
なお、任意の半透膜モジュールに対して濃縮流路および希釈流路をバイパス流路(図中に点線で示す流路)に切り替え、代わりに切替バルブ72を開放して洗浄液を流通させる経路に切替えることで、任意の半透膜モジュール内に洗浄液のみを供給することができる。半透膜モジュールから排出された洗浄液の排出先は特に限定されないが、適宜、産業廃棄物として処理しても良いし、対象溶液として再利用してもよい。
図3および
図4に示される洗浄液の流路の両方を設けてもよい。
このような洗浄液の流路を設けることにより、濃縮システムを運転しながら、任意の半透膜モジュールの洗浄を容易に行うことができる。
【0035】
本実施形態の別の一例として、
図5に示す濃縮システムは、逆浸透膜90と、逆浸透膜90で仕切られた第1室91および第2室92と、を有する逆浸透モジュール9をさらに備える。
逆浸透モジュール9において、対象溶液が第1室91に第2室92よりも高い圧力で供給され、第1室91の対象溶液に含まれる溶媒(水など)が逆浸透膜90を介して第2室92へ透過すると共に対象溶液が濃縮され、濃縮された対象溶液が第1室91から排出され、逆浸透膜を透過した溶媒である透過液が第2室92から排出される。
逆浸透モジュール9で濃縮された対象溶液は、上記の濃縮流路(半透膜モジュール1の第1室11)に供給される。
図5に示す濃縮システムは、複数の半透膜モジュール1,2の濃縮流路および希釈流路に、逆浸透モジュール9の第2室92から排出された透過液を流すように流路を切り替えるための切替器61,62,63と、そのための流路(
図5の点線部)と、を備える。
これにより、濃縮流路および希釈流路に透過液を流すように流路を切り替える(すなわち、
図6に示されるように流路を切り替える)ことで、透過液を用いて濃縮流路および希釈流路(半透膜の第1室側および第2室側)を洗浄することができる。
なお、
図5に示される形態に限定されず、濃縮流路または希釈流路の一方のみを洗浄することができるように、切替器等が設置されてもよい。例えば、特に半透膜の汚染が生じやすい濃縮流路(半透膜の第1室側)のみを洗浄するように、切替器等が設置されてもよい。
【0036】
ここで、
図5に示される切替器のうち、切替器62,63は、複数の半透膜モジュール1,2に対象溶液および補助溶液を流さないように流路を切り替える切替器である。
【0037】
また、逆浸透モジュール9の第1室91(逆浸透膜90の第1室91側)を洗浄したい場合は、
図5に示されるように、透過液を逆浸透モジュール9の第1室91に流すように流路を切り替えるための切替器61,62,63と、そのための流路(
図5の点線部:切替器61と切替器64との間の流路)とを設ければよい。なお、透過液を逆浸透モジュール9の第1室91に流す際は、透過液の圧力を高める必要はない。
【0038】
なお、
図5に示す濃縮システムにおいて、透過液は、一旦タンク7に貯留され、タンク7に貯留された透過液がポンプ8によって濃縮流路および希釈流路に供給される。これにより、
図6の状態で、逆浸透モジュール9の第2室92から透過液が排出されなくても、タンク7に貯留された透過液を用いて上記の洗浄を実施することができる。
【0039】
透過液を用いた洗浄の際、洗浄効果を高めるために、薬液タンク71内の薬液を透過液に混合してもよい。
【0040】
以上で説明した切替器は、上記の機能を有するものであれば特に限定されない。切替器としては、例えば、三方バルブ等の切替バルブが挙げられる。
また、切替器は、制御装置等により自動化されてもよい。この場合、切替器は、制御装置(図示せず)等に電気的に接続される。
【0041】
(対象液および補助溶液)
対象溶液および補助溶液としては、特に限定されないが、例えば、塩水(ブライン、海水、かん水など)、工業排水などを用いることができる。上記の濃縮システムは、特に、対象液がブラインなどの高濃度(高浸透圧)の溶液である場合に、それをさらに濃縮するために好適に用いることができる。
【0042】
なお、対象溶液等に対して、溶液中に含まれる微粒子、微生物、スケール成分等を除去するための前処理を行ってもよい。前処理としては、海水淡水化技術等に用いられる種々公知の前処理を実施することができ、例えば、NF膜、UF膜、MF膜等を用いたろ過、次亜塩素酸ナトリウムの添加、凝集剤添加、活性炭吸着処理、イオン交換樹脂処理などが挙げられる。このような前処理は、対象溶液および補助溶液を半透膜モジュールに供給する前に実施されることが好ましい。
【0043】
第1室(高圧側)に流される対象溶液(濃縮される液)と第2室(低圧側)に流される補助溶液(希釈される液)との浸透圧差(絶対値)が対象溶液の圧力よりも小さければ、理論上、BCによる膜分離は実施可能である。この場合、対象溶液の浸透圧と補助溶液の浸透圧との差は、対象溶液の圧力の30%以下であることが好ましい。
【0044】
補助溶液は、浸透圧を有する液であれば特に限定されないが、複数の半透膜モジュールの濃縮流路で濃縮された対象溶液(濃縮液)の一部が、複数の半透膜モジュールにおける補助溶液として使用されてもよい。例えば、
図1では、半透膜モジュール1,2,3,4の少なくともいずれかの第1室11,21,31,41から排出された対象溶液の一部が、補助溶液として使用され得る。
なお、濃縮液の一部を補助溶液として希釈流路(半透膜モジュールの第2室)に供給するための流路には、液の圧力を低下させる機構(図示せず)が設けられていることが好ましい。このような機構としては、自動調節バルブのように、上流側の圧力を高く保ち下流側の圧力を低下させる装置や、エネルギー回収装置のように圧力を有する供給液体から回収したエネルギーをポンプ等の駆動補助エネルギーに変換する機構を有する装置が挙げられる。
【0045】
また、希釈液を対象溶液と共に濃縮流路に供給してもよい。そして、対象溶液を濃縮することにより得られる濃縮液を補助溶液として用い、その補助溶液を希釈することにより得られた希釈液を対象溶液と共に濃縮流路に供給してもよい。
【0046】
このように、濃縮システムにおいて、対象溶液を循環させた場合、対象溶液からの濃縮液(対象成分)の回収率を高めることができる。
【0047】
(複数の半透膜モジュール)
複数の半透膜モジュールを用いたBCによる濃縮処理(膜分離処理)では、第1室から第2室へ溶媒が移動する方向と反対方向に働く浸透圧が生じ難いため、逆浸透(RO)法よりも低い圧力(ポンプ圧)で濃縮を進行させることができる。このため、主としてBCによる濃縮を行う本実施形態の濃縮システムにおいては、ポンプ等の電力消費量を低減させ、濃縮のエネルギー効率を高めることができる。
【0048】
また、RO法による濃縮では、半透膜の一方側で濃縮された対象液の浸透圧が、ポンプによる押圧力とは反対方向に生じる。このため、濃縮された対象液の浸透圧がポンプの圧力に達すると、ポンプによる押圧力と、それとは反対方向に働く対象液の浸透圧が拮抗し、それ以上は水が半透膜を透過せず、濃縮が進まなくなる。
これに対して、BC法を用いた膜分離処理(濃縮方法)では、半透膜モジュールの各々において、第1室と第2室とに供給される液の濃度差(浸透圧差)が小さく、RO法のような濃縮処理を阻害する浸透圧は生じ難い。このため、BC法を用いた濃縮システムでは、RO法のみを用いた濃縮システムよりも、対象溶液の最終濃度を高めることができる。原理的には、対象溶液を飽和濃度まで濃縮できると考えられる。
【0049】
本実施形態においては、特許文献1(国際公開第2018/084246号)の
図2および特許文献2(特開2019-188330号公報)の
図4に示される多段式の濃縮システムのように、直列的に連結された複数の半透膜モジュール1a,1b,1x,1yの各々に対して、さらに1つ以上の別の半透膜モジュールが並列的に接続されていてもよい。
【0050】
なお、特許文献1の
図2および特許文献2の
図4に示されるように、濃縮流路の上流側(希釈流路の下流側)ほど並列的に接続された半透膜モジュールの数が多いことが好ましい。この場合、希釈流路の下流側は、流路の断面積が増加し、通液抵抗が低減されると考えられる。第2室(希釈流路側)には第1室(濃縮流路側)から半透膜を介して水が移行するため、希釈流路の下流側ほど、通液量が増え、通液抵抗が大きくなる傾向がある。このため、希釈流路の下流側で通液抵抗を低減することは、濃縮システムの全体において希釈流路の通液抵抗を低減する上で有効である。
【0051】
また、本実施形態のような多段式の濃縮システムでは、第1室内(濃縮流路)を流れる対象溶液は複数の半透膜モジュールにおいて順次濃縮され、濃縮が進むにつれて対象溶液の流量は減少する。各半透膜モジュール当りの流量が減少すると濃縮効率が低下してしまう。このような濃縮流路の下流側での対象溶液の流量減少を抑制するためにも、濃縮流路の上流側ほど並列的に接続された半透膜モジュールの数が多いことが好ましい。
【0052】
また、本実施形態の濃縮システムにおいては、特許第7020512号公報に開示される構成を適用することができる。
【0053】
なお、本実施形態において用いられる半透膜としては、例えば、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)、正浸透膜(FO膜:Forward Osmosis Membrane)、ナノろ過膜(NF膜:Nanofiltration Membrane)、限外ろ過膜(UF膜:Ultrafiltration Membrane)と呼ばれる半透膜が挙げられる。半透膜は、好ましくは逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜である。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第1室内の液(対象溶液)の圧力は、好ましくは0.5~10.0MPaである。
【0054】
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下であり、UF膜の孔径は約2~100nmである。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1~2nmである。半透膜としてRO膜またはFO膜、NF膜を用いる場合、RO膜またはFO膜、NF膜の塩除去率は好ましくは90%以上である。
【0055】
半透膜を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。半透膜は、セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
【0056】
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
【0057】
ポリスルホン系樹脂は、好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂である。ポリエーテルスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホンである。
【0058】
なお、図面においては、半透膜モジュールの半透膜は、簡略化のために平膜のように描かれているが、半透膜の形状は特に限定されない。半透膜は、例えば、スパイラル膜(スパイラル型半透膜)などの平膜であってもよく、中空糸膜(中空糸型半透膜)であってもよいが、好ましくは中空糸膜である。中空糸膜は、平膜に比べて、膜厚が小さく、さらにモジュール当たりの膜面積を大きくすることができ、浸透効率を高めることができる点で有利である。
【0059】
複数の半透膜モジュールの各々において、第1室は中空糸膜の外側であり、第2室は中空糸膜の内側(中空部)であることが好ましい。中空糸膜の内側を流れる溶液を加圧しても、圧力損失が大きくなり加圧が十分に行われ難い場合があり、また、一般的に中空糸膜は外圧に対してその構造を保持しやすいが、内圧が高くなると中空糸膜が損傷を受ける可能性があるからである。
【0060】
具体的な中空糸膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、厚み方向に不均一な膜であってもよい。具体的には、外周表面に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となっており、内周表面側は緻密層よりも密度が低いような膜であってもよい。緻密層は、実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となるため、中空糸膜の外側の溶液が加圧される場合は、中空糸膜の外側表面に緻密層を有している方が、中空糸膜の外側から内側への分子の移動を正確に制御することができる。
【0061】
具体的な中空糸膜の別の例としては、支持層(例えば、ポリフェニレンオキサイドからなる層)の外周表面にポリフェニレン系樹脂(例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン)からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。また、他の例として、支持層(例えば、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンからなる層)の外周表面にポリアミド系樹脂からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4 半透膜モジュール、10,20,30,40 半透膜、11,21,31,41 第1室、12,22,32,42 第2室、50a,50b,51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56a,56b,57a,57b,61,62,63,64,65 切替器、7 タンク、71 薬液タンク、72 切替バルブ、8 ポンプ、9 逆浸透モジュール、90 逆浸透膜、91 第1室、92 第2室。