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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162819
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078739
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐太
(72)【発明者】
【氏名】神保 祐太朗
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA05
4C099CA03
4C099EA05
4C099GA02
4C099JA02
4C099NA02
4C099PA01
4C099PA08
(57)【要約】
【課題】利用者の装着状態を安定させる。
【解決手段】身体温冷装置は、利用者の頚部まわりにわたって装着される首掛け部材を有して熱媒体を用いて頚部を加熱または冷却する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部とを接続し、熱媒体が流れるチューブ部材と、を備える。首掛け部材を装着した利用者の後頚部側に位置する、首掛け部材の後方外側の背面には、この背面における上部から後方外側に膨出する膨出部が形成されている。チューブ部材は、膨出部の下面から下方へ延ばされて熱交換部と接続される。首掛け部材の背面とチューブ部材との間には、利用者が首掛け部材を装着したときに膨出部の背面の下方から利用者の着衣の襟が進入可能な空間部が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の頚部まわりにわたって装着される首掛け部材を有し、熱媒体を用いて前記頚部を加熱または冷却する温調部と、
熱交換部と、
前記温調部と前記熱交換部とを接続し、前記熱媒体が流れるチューブ部材と、を備える身体温冷装置であって、
前記首掛け部材を装着した利用者の後頚部側に位置する、前記首掛け部材の後方外側の背面には、当該背面における上部から前記後方外側に膨出する膨出部が形成され、
前記チューブ部材は、前記膨出部の下面から下方へ延ばされて前記熱交換部と接続され、
前記首掛け部材の背面と前記チューブ部材との間には、利用者が前記首掛け部材を装着したときに前記背面の下方から利用者の着衣の襟が進入可能な空間部が形成されている、身体温冷装置。
【請求項2】
前記温調部は、前記頚部に接する複数のプレートと、前記複数のプレートをそれぞれ冷却または加熱する複数のペルチェ素子と、を有し、
前記首掛け部材は、前記頚部の前方側に接する前記プレートが配置された一対の前方側接触部と、前記頚部の後方側に接する前記プレートが配置された後方側接触部と、前記一対の前方側接触部の各々と前記後方側接触部とを連結するU字状の連結部と、を有し、
前記連結部は、前記後方側接触部から前記前方側接触部の下端側に向かって延ばされ、前記前方側接触部の上端側が前記連結部から上方に突出するように前記前方側接触部の前記下端側に連結されている、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項3】
前記膨出部の上端面は、前記背面側から離れるに従って下がるように傾斜している、
請求項1または2に記載の身体温冷装置。
【請求項4】
前記後方側接触部の前記プレートは、前記ペルチェ素子が配置される第1領域と、当該第1領域の周囲から前記前方側接触部側に向かって延ばされた第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域に対して前記頚部側に突出している、
請求項2に記載の身体温冷装置。
【請求項5】
前記首掛け部材は、前記前方側接触部と前記後方側接触部との間の長さを調節可能な調節部を有する、
請求項2に記載の身体温冷装置。
【請求項6】
前記調節部は、前記前方側接触部と前記後方側接触部とを連結するように設けられた蛇腹部材を有し、
前記蛇腹部材は、前記前方側接触部を前記頚部側へ付勢するように形成されている、
請求項5に記載の身体温冷装置。
【請求項7】
前記調節部は、前記蛇腹部材を支持する支持部材を有し、
前記支持部材は、前記蛇腹部材の伸縮方向に沿って前記蛇腹部材の内部に配置され、前記前方側接触部を前記頚部側へ付勢するように形成されている、
請求項6に記載の身体温冷装置。
【請求項8】
前記チューブ部材は、前記温調部から前記熱交換部へ前記熱媒体を送るチューブを有し、
前記チューブは、前記温調部から前記熱交換部に向かって延びる第1部分と、当該第1部分から前記熱交換部まで延びる第2部分と、前記第1部分の一端と前記第2部分の一端とを着脱可能に接続する接続部と、を有する、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項9】
前記チューブ部材を覆うカバー部材を更に備え、
前記カバー部材は、前記接続部を前記カバー部材の外側へ引き出すためのファスナ部を有する、
請求項8に記載の身体温冷装置。
【請求項10】
前記熱交換部は、熱交換器と、前記熱交換器に風を送る送風機と、前記熱交換器及び前記送風機を内部に収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、対向する両面のうちの一方の面における、前記熱交換器の放熱フィンと対向する第1対向領域の全域に形成された吸い込み口と、他方の面における、前記送風機のファンと対向する第2対向領域の全域に形成された吹き出し口と、を有する、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項11】
前記熱交換器は、前記熱交換器の上端部に配置された上ヘッダと、前記熱交換器の下端部に配置された下ヘッダと、を有し、
前記筐体は、前記筐体の内部に入った液体を外部に排出する排出口を有し、
前記排出口は、前記吸い込み口の下端と隣り合って前記下ヘッダの長手方向に沿って延びて形成され、前記吸い込み口の下端よりも下方に位置する、
請求項10に記載の身体温冷装置。
【請求項12】
前記熱交換部は、前記熱交換器に前記熱媒体を送るポンプを有し、
前記ポンプは、前記筐体内における下部に沿って配置されている、
請求項11に記載の身体温冷装置。
【請求項13】
前記身体温冷装置を作動させるための第1電源スイッチ及び第2電源スイッチを更に備え、
前記第1電源スイッチは、前記温調部に設けられ、
前記第2電源スイッチは、前記熱交換部に設けられている、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項14】
利用者が体に装着する装着具を更に備え、
前記装着具は、前記熱交換部を保持する保持部を有し、
前記熱交換部は、熱交換器と、前記熱交換器に風を送る送風機と、前記熱交換器及び前記送風機を内部に収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、吸い込み口と、当該吸い込み口とは反対側に設けられた吹き出し口と、を有し、
前記保持部は、前記吸い込み口を利用者側に向けた状態の前記熱交換部を保持し、前記保持部に保持された前記熱交換部の前記吸い込み口側に空隙をあけるスペーサ部材を有する、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項15】
前記保持部は、前記保持部に保持された前記熱交換部の前記吹き出し口と対向する位置に複数の通気孔が設けられている、
請求項14に記載の身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱することにより、利用者の体温を調節する身体温冷装置が知られている。この種の身体温冷装置としては、ペルチェ素子を有する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部との間でチューブ部材を介して水を循環させるポンプ部と、を備える装置がある(特許文献1)。温調部は、利用者の頚部に接するプレートと、プレートを冷却または加熱するペルチェ素子と、プレート及びペルチェ素子が設けられて頸部まわりにわたって装着される首掛け部材と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-136884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した身体温冷装置を利用者が装着した状態では、温調部から熱交換部まで延びるチューブ部材が、利用者の背中側に配置されている。チューブ部材は、首掛け部材の背面(利用者の頚部に接しない側の面)から利用者の後方に向けて引き出されると共に下方に延ばされることで熱交換部と接続されている。このため、チューブ部材には、首掛け部材の背面側の上端部近傍に湾曲部分が形成されている。
【0005】
このような身体温冷装置では、例えば、チューブ部材が下向きに湾曲する部分が頚部から離れた個所となるため、首掛け部材の背面にかかる下向きの力が大きくなり、首掛け部材が引っ張られるように利用者が感じることがある。このような場合、身体温冷装置は、首掛け部材と一緒に頚部が後方や下方へ引っ張られる不快感を利用者に与える問題があった。また、チューブ部材によって首掛け部材が引っ張られることで、首掛け部材が装着位置からずれる等して利用者の装着状態が不安定になり、例えば、頚部の頸動脈とプレートとの接触位置がずれるおそれもあった。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者の装着状態を安定させる身体温冷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する身体温冷装置の一態様は、利用者の頚部まわりにわたって装着される首掛け部材を有し、熱媒体を用いて頚部を加熱または冷却する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部とを接続し、熱媒体が流れるチューブ部材と、を備える身体温冷装置であって、首掛け部材を装着した利用者の後頚部側に位置する、首掛け部材の後方外側の背面には、この背面における上部から後方外側に膨出する膨出部が形成されている。チューブ部材は、膨出部の下面から下方へ延ばされて熱交換部と接続される。首掛け部材の背面とチューブ部材との間には、利用者が首掛け部材を装着したときに背面の下方から利用者の着衣の襟が進入可能な空間部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する身体温冷装置の一態様によれば、利用者の装着状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例の身体温冷装置の装着状態を示す外観図である。
図2図2は、実施例の身体温冷装置を示す模式図である。
図3図3は、実施例の身体温冷装置における温調部の首掛け部材を前方から示す斜視図である。
図4図4は、実施例の身体温冷装置における温調部の首掛け部材を示す側面図である。
図5図5は、実施例の身体温冷装置における温調部の首掛け部材を後方から示す斜視図である。
図6図6は、実施例における首掛け部材の膨出部を拡大して示す側面図である。
図7図7は、実施例における首掛け部材の膨出部を示す下面図である。
図8図8は、実施例の身体温冷装置の熱交換部を示す斜視図である。
図9図9は、実施例における熱交換部の筐体の吸い込み口を示す側面図である。
図10図10は、実施例における熱交換部の筐体の吹き出し口を示す側面図である。
図11図11は、実施例における熱交換部の内部を示す部分断面図である。
図12図12は、実施例の身体温冷装置のチューブ部材の要部を示す模式図である。
図13図13は、身体温冷装置が備える装着具の一例を模式的に示す斜視図である。
図14図14は、身体温冷装置が備える装着具の他の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する身体温冷装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する身体温冷装置が限定されるものではない。
【実施例0011】
(身体温冷装置の構成)
図1は、実施例の身体温冷装置の装着状態を示す外観図である。図2は、実施例の身体温冷装置を示す模式図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、実施例の身体温冷装置1は、熱媒体を用いて利用者の頚部(以下、単に頚部ということがある)を加熱または冷却する温調部5と、熱交換部6と、温調部5と熱交換部6とを接続して熱媒体が流れるチューブ部材7と、温調部5及び熱交換部6に電力を供給する電源部8と、を備える。
【0013】
温調部5は、利用者の頚部まわりにわたって装着される首掛け部材11を有する。身体温冷装置1は、首掛け部材11が利用者の右側頚部及び左側頚部から後頚部にわたって装着されることで、利用者の左右の各頸動脈を流れる血液及び後頚部を加熱または冷却する。以下、本実施例では、身体温冷装置1が利用者の左右の各頸動脈を流れる血液及び後頚部を冷却する場合について説明するが、身体温冷装置1がそれらを加熱してもよい。熱媒体としては、水が用いられるが、水に限定されず、オイル等の他の熱媒体として作動する液体が用いられてもよい。以下では熱媒体を冷却水として説明する。
【0014】
首掛け部材11を示す各図において、利用者が直立した状態の左右方向をX方向、前後方向をY方向、高さ方向をZ方向としてそれぞれ示す。本実施例において身体温冷装置1を説明する際の左右方向、前後方向、高さ方向も、これらX方向、Y方向、Z方向を示す。一例として、身体温冷装置1は、図1に示すように、利用者が身に着けたバックパック3に設けられたポケット4に、熱交換部6及び電源部8が収容されて使用される。図示しないが、熱交換部6及び電源部8は、後述する装着具101(102)に保持されて利用者の腰のベルト等に装着されてもよい。
【0015】
(温調部)
図3は、実施例の身体温冷装置1における温調部5の首掛け部材11を前方から示す斜視図である。図4は、実施例の身体温冷装置1における温調部5の首掛け部材11を示す側面図である。図5は、実施例の身体温冷装置1における温調部5の首掛け部材11を後方から示す斜視図である。
【0016】
図3図4及び図5に示すように、温調部5は、頚部の前方側(右頸動脈及び左頸動脈)に接する一対の前方側プレート12と、頚部の後方側、すなわち後頚部に接する後方側プレート13と、一対の前方側プレート12及び後方側プレート13(以下、各プレート12、13とも称する。)を冷却または加熱する各ペルチェ素子14と、各プレート12、13及び各ペルチェ素子14が設けられた首掛け部材11と、を有する。首掛け部材11は頚部を囲む環状に形成されている。
【0017】
各プレート12、13は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されており、首掛け部材11の内周部に配置されている。各ペルチェ素子14は、各プレート12、13に接触して設けられており、電源ケーブル55を介して電源部8と電気的に接続されている。ペルチェ素子14によって各プレート12、13を冷却するときに、ペルチェ素子14近傍に配置されたチューブ部材7を流れる冷却水によって、通電時にペルチェ素子14が発生する熱を吸収して放熱させることで、ペルチェ素子14を冷却素子として動作させる。
【0018】
図3に示すように、後方側プレート13は、ペルチェ素子14が配置される第1領域13Aと、この第1領域13Aの周囲から後述する前方側接触部16側に向かって延ばされた第2領域13Bと、を有する。第1領域13Aは、利用者が身体温冷装置1を装着したときに利用者の後頚部における頚部まわりの中央(以下、後頚部の中央とも称する。)に接するように形成されている。第2領域13Bは、第1領域13Aの上側に第1領域13Aと隣り合って形成されると共に、X方向における第1領域13Aの両側から、前方側接触部16側に向かって延ばされている。後方側プレート13は、後述する調節部30の蛇腹部材31の一端まで延ばされており、第2領域13Bは首掛け部材11の内周部における第1領域13Aと蛇腹部材31との間に形成されている(図3参照)。
【0019】
第1領域13Aは、第2領域13Bに対して前方(Y方向、利用者の後頚部側)に突出、すなわち首掛け部材11の内周面から突出している。これにより、利用者が身体温冷装置1を装着したとき、第1領域13Aを後頚部に容易に接触させることができる。また、第2領域13Bは、第1領域13Aから利用者の頚部を囲むように延ばされて形成されているので、第1領域13Aとの伝熱により冷却される。このため、後方側プレート13は、主に第1領域13Aによって後頚部の中央を冷却すると共に、第2領域13Bによって後頚部の中央の両側も補助的に冷却することで、利用者の冷感を高めることができる。
【0020】
ここで、後方側プレート13が第1領域13A及び第2領域13Bを有する実施例の構造と、第1領域のみを有する後方側プレートの周囲に、首掛け部材を形成する樹脂材料が配置される比較例の構造とを比較する。実施例における後方側プレート13は、第1領域13Aの周囲の第2領域13Bが第1領域13Aとの伝熱により冷却されることで、比較例の構造と比べて、首掛け部材11の内部に延ばされたチューブ部材7を流れる冷却水が発する熱が吸収されて、第1領域13Aの周囲に伝わることが抑制される。このため、身体温冷装置1を用いた冷却時に、チューブ部材7を流れる冷却水から伝わる熱の影響で後頚部の中央の両側が温かくなり、後方側プレート13による冷感が低下することを防げる。
【0021】
図3図4及び図5に示すように、首掛け部材11は、前方側プレート12が配置された一対の前方側接触部16と、後方側プレート13が配置された後方側接触部17と、一対の前方側接触部16の各々と後方側接触部17とを連結するU字状の連結部18と、を有する。首掛け部材11は、例えば、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の樹脂材料によって形成されている。
【0022】
図6は、実施例における首掛け部材11の膨出部を拡大して示す側面図である。図7は、実施例における首掛け部材11の膨出部を示す下面図である。
【0023】
図5図6及び図7に示すように、首掛け部材11を装着した利用者の後頚部側に位置する、首掛け部材11の後方外側(負のY方向側)の面である背面11aには、この背面11aにおける上部から後方に膨出する膨出部20が形成されている。言い換えると、首掛け部材11の後方側接触部17と反対側の背面11aには、利用者が身体温冷装置1を装着したときに、この背面11aから利用者の後方側に向かって膨出する膨出部20が形成されている。
【0024】
膨出部20の上端面20Uは、首掛け部材11の背面11a側から離れるに従って下がるように傾斜している。上端面20Uは、図中のX-Y平面に対して、例えば、30度程度下方に傾斜している。これにより、ヘルメット等を被った利用者が上方を向いたときなどに、ヘルメット等の後縁が膨出部20の上端面20Uに接触し難くなるので、ヘルメット等を被った利用者が頭を傾けた際の頭の動きの自由度を確保すると共に、ヘルメット等の後縁が膨出部20の上端面20Uに接触して身体冷温装置1が装着位置からずれて適正な冷却作用が得られなくなったり、装着状態が不安定になったりすることを抑制し、利用者の装着状態を安定させることができる。また、膨出部20の下端面20Lは、首掛け部材11の背面11aから後方に延ばされている。
【0025】
膨出部20から引き出されるチューブ部材7の一端部は、各ペルチェ素子14近傍に配置されている。チューブ部材7は、膨出部20の下端面20Lから下方(負のZ方向)へ延ばされて、チューブ部材7の他端部が熱交換部6と接続されている。チューブ部材7は、冷却水が温調部5から熱交換部6に向かって流れる第1チューブ7Aと、冷却水が熱交換部6から温調部5に向かって流れる第2チューブ7Bと、を含む。また、チューブ部材7と同様に、各ペルチェ素子14と電気的に接続された電源ケーブル55も、膨出部20の下端面20Lから下方へ延ばされて熱交換部6と電気的に接続されている。
【0026】
このため、利用者が身体温冷装置1を装着したとき、チューブ部材7及び電源ケーブル55は、首掛け部材11から引き出される部分が人体に近い箇所となるため、首掛け部材11の背面11aにかかる下向きの力を小さくすることができる。また利用者が身体温冷装置1を装着したとき、利用者の後頚部から背中に沿って下方へスムーズに延ばすことができる。これにより、利用者の動作に伴ってチューブ部材7が動いた場合であっても、チューブ部材7によって首掛け部材11が引っ張られることが抑えられ、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態を安定させることができる。
【0027】
首掛け部材11の背面11aとチューブ部材7との間には、利用者が首掛け部材11を頚部に装着したときに、背面11aの下方から上方に向かって利用者の着衣2の後襟2aが進入可能な空間部21が形成されている。空間部21は、首掛け部材11の背面11aと、膨出部20の下端面20Lと、チューブ部材7とで囲まれた空隙であり、上下方向(Z方向)に対して、作業着等の後襟2aが収容できる高さを有する。首掛け部材11の装着時に、空間部21内に後襟2aが進入することで、後襟2aの上に膨出部20の下端面20Lが載せられる。
【0028】
これにより、例えば、チューブ部材7によって首掛け部材11の後方側接触部17が下方へ引っ張られた場合であっても、後襟2aに載せられた膨出部20によって、後方側接触部17が下げられることが規制される。また、後襟2aが空間部21に収容できるので、後方側接触部17と利用者の肩が接するようになり、後方側接触部17が下方に引っ張られても肩が当たって動きが規制される。このため、首掛け部材11の装着状態の変動が抑制され、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態を安定させることができる。
【0029】
また、図4に示すように、首掛け部材11の連結部18は、後方側接触部17から前方側接触部16の下端側16Lに向かって延ばされており、前方側接触部16の上端側16Uが、連結部18の上端面18Uから上方に突出するように前方側接触部16の下端側16Lに連結されている。連結部18の上端面18Uは、後方側接触部17から前方側接触部16に向かって緩やかに下がるように形成されている。同様に、連結部18の下端面18Lは、後方側接触部17から前方側接触部16に向かって緩やかに下がるように形成されている。
【0030】
これにより、首掛け部材11を装着した利用者が頭部を動かしたときに、例えば、首掛け部材11の連結部18の上端面18Uの内周縁部が頚部に食い込んで頚部の動きが妨げられるような不快感を与えることを抑制できる。したがって、上述のように連結部18が形成されることで、頭部を動かす自由度を高められる。加えて、首掛け部材11の連結部18の下端面18Lを、鎖骨の上に配置することができるので、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態を安定させることができる。
【0031】
また、図5及び図6に示すように、首掛け部材11の背面11aには、身体温冷装置1を作動させるための第1電源スイッチ23が設けられている。第1電源スイッチ23は、電源ケーブル55を介して電源部8と電気的に接続されている。
【0032】
また、図3図4及び図5に示すように、首掛け部材11の連結部18は、各前方側接触部16と後方側接触部17との間の長さを調節可能な調節部30を有する。調節部30は、連結部18の長手方向の中途部に設けられている。調節部30は、前方側接触部16と後方側接触部17とを連結し伸縮可能に支持する支持部材32と、支持部材32及びチューブ部材7を覆う蛇腹部材31と、を有する。蛇腹部材31は、前方側接触部16と後方側接触部17とを連結するように設けられている。支持部材32は、蛇腹部材31の伸縮方向(首掛け部材11の連結部18の長手方向)に沿って蛇腹部材31の内部に配置されている。支持部材32は、その長さ方向に複数のネジ穴を設けるなどして前方側接触部16と後方側接触部17との距離が変えられるようになっている。これにより、調節部30を伸縮させることで、前方側接触部16が頸動脈に接するように首掛け部材11を最適な長さに容易に調節することができる。
【0033】
蛇腹部材31は樹脂成型部品であればよく、前方側接触部16を頚部側へ付勢するように形成されていればよい。支持部材32は樹脂製の板または金属板であればよく、前方側接触部16を頚部側へ付勢するように形成されていればよい。これにより、首掛け部材11を頚部まわりに装着したときに、蛇腹部材31の付勢力で前方側接触部16を頚部に接触させながらスムーズに移動させることができるので、前方側接触部16の接触位置を容易に位置決めすることができる。また、蛇腹部材31の付勢力によって頚部に対する前方側接触部16のばたつきを抑えることができる。
【0034】
支持部材32は、例えば、樹脂材料によって板状に形成されており、前方側接触部16を頚部側へ付勢するように湾曲している。これにより、首掛け部材11を頚部に装着したときに、支持部材32の付勢力で前方側接触部16を頚部に接触させながら更にスムーズに移動させることができるので、前方側接触部16の接触位置を容易に位置決めできると共に、前方側接触部16が頚部から離れることを抑えられる。また、支持部材32の付勢力によって頚部の動きに対する前方側接触部16の追従性を高め、首掛け部材11のフィット性を向上できる。
【0035】
また、首掛け部材11は、身体冷温装置1の装着状態を保持するためのバンド部材35を有する。一対の前方側接触部16のうち、一方の前方側接触部16における前方側プレート12とは反対側の外周面には、バンド部材35を固定する固定ピン36が形成されている。他方の前方側接触部16の外周面には、バンド部材35を固定するための磁石部材37が設けられている。バンド部材35には、基端部に、固定ピン36が嵌め込まれる固定穴38が設けられており、先端部に、前方側接触部16側の磁石部材37に固定される磁石部材39が設けられている。
【0036】
バンド部材35によって一対の前方側接触部16が所望の位置に固定されるので、各前方側接触部16と頸動脈との接触位置のずれを防ぎ、身体冷温装置1の装着状態を安定させることができる。また、バンド部材35を固定した際に頚部まわりで首掛け部材11が環になるので、利用者が走る等の激しい動作を行った場合であっても、首掛け部材11が頚部から落下することを防げる。
【0037】
(熱交換部)
図8は、実施例の身体温冷装置1の熱交換部6を示す斜視図である。図9は、実施例における熱交換部6の筐体の吸い込み口を示す側面図である。図10は、実施例における熱交換部6の筐体の吹き出し口を示す側面図である。
【0038】
図2図8図9及び図10に示すように、熱交換部6は、いわゆる空冷型ラジエータであって、熱交換器41と、熱交換器41に風を送る送風機42と、熱交換器41と温調部5との間で冷却水を循環させるポンプ43と、送風機42及びポンプ43を制御する制御基板44と、これらの熱交換器41、送風機42、ポンプ43及び制御基板44を内部に収容する筐体45と、を有する。
【0039】
熱交換器41は、冷却水が流れる複数の伝熱管41aと、各伝熱管41aと連結された複数の放熱フィン41bと、熱交換器41の上端部に配置された上ヘッダ41cと、熱交換器41の下端部に配置された下ヘッダ41dと、を有する。送風機42は、ファン42aと、モータ(図示せず)と、を有しており、筐体45の外側から外気を取り込み、熱交換器41を通過させて筐体45の外側に排出する。熱交換器41は筐体45の背面45bに対向するように配置され、送風機42は筐体45の前面45aに対向するように配置され、熱交換器41と送風機42は前後方向(Y方向)に隣り合って配置されている。
【0040】
ポンプ43は、筐体45内における下部に配置されている。これにより、熱交換部6の重心を下げて、利用者が熱交換部6を背中や腰に装着したときの熱交換部6の姿勢を安定させることができる。このため、利用者の動きに伴う熱交換部6の移動を抑えて、チューブ部材7によって首掛け部材11が引っ張られて身体温冷装置1の装着状態が変動することを抑制できる。
【0041】
筐体45は、図9及び図10に示すように、吸い込み口47と、吸い込み口47とは反対側に設けられた吹き出し口48と、を有する。吸い込み口47は、図9に示すように、対向する両面のうちの一方の面としての前面45aにおける、熱交換器41の放熱フィン41bと対向する第1対向領域R1の全域に形成されている。吹き出し口48は、図10に示すように、他方の面としての背面45bにおける、送風機42のファン42aと対向する第2対向領域R2の全域に形成されている。
【0042】
吸い込み口47は、第1対向領域R1に配列された複数の貫通穴によって形成されている。吹き出し口48は、第2対向領域R2に配列された複数の貫通穴によって形成されている。なお、実施例における吸い込み口47は、熱交換器41と対向する対向領域のうち、上ヘッダ41cに対向する領域を除いて形成されているが、熱交換器41全体と対向する対向領域の全域に形成されてもよい。
【0043】
このように筐体45は、第1対向領域R1の全域に形成された吸い込み口47と、第2対向領域R2の全域に形成された吹き出し口48と、を有することにより、筐体45の内部に外気を効率的に取り込んで排出することと、吸い込み口47及び吹き出し口48が形成された筐体45の機械的強度の低下を抑えて筐体45の機械的強度を確保することとを両立できる。
【0044】
図11は、実施例における熱交換部6の内部を示す部分断面図である。図9及び図11に示すように、熱交換部6の筐体45は、例えば、利用者が散水を伴う作業を行う場合などに、筐体45の外部から筐体45の内部に入った液体(水)を外部に排出する排出口49を有する。
【0045】
排出口49は、吸い込み口47の下端47Lと上下方向に隣り合って、熱交換器41の下ヘッダ41dの長手方向に沿って形成されている。排出49口は、複数の貫通穴によって形成されており、吸い込み口47が形成された第1対向領域R1と連続した領域に形成されている。排出口49は、図11に示すように、吹き出し口48の下端48Lよりも下方に位置するように形成されている。
【0046】
これにより、排出口49を筐体45の下部に設けることができるので、筐体45内に入った液体(水)を、排出口49からスムーズに出し切ることが可能になり、筐体45内に液体が残留することが抑えられ、液体によって熱交換器41や送風機42等が損傷することを防げる。
【0047】
また、熱交換部6の筐体45の外周面には、図8に示すように、身体温冷装置1を作動させるための第2電源スイッチ24と、複数のインジケータランプ25と、が設けられている。第2電源スイッチ24は、電源ケーブル55を介して電源部8と電気的に接続されている。
【0048】
利用者は、温調部5の首掛け部材11の背面11aに設けられた第1電源スイッチ23(図5)と、熱交換部6に設けられた第2電源スイッチ24(図8)とのいずれか一方の電源スイッチを操作することで、身体温冷装置1を作動させることができる。これにより利用者は使い勝手のよい方の電源スイッチを操作することが可能となり、身体温冷装置1の取り扱い性を向上できる。
【0049】
各インジケータランプ25は、第2電源スイッチ24の近傍に並んで配置されており、例えば、身体温冷装置1の装着前や電源部8が利用者の腰に装着される場合などに、利用者が第2電源スイッチ24を操作するときに各インジケータランプ25を容易に確認できる。
【0050】
また、熱交換部6は、利用者に作動状態を知らせるスピーカ等の報知部(図示せず)を有する。報知部は、例えば、制御基板44に設けられている。報知部は、身体温冷装置1の各種の作動状態等を、確認音を発する回数等で利用者に知らせる。これにより、利用者は、熱交換部6のインジケータランプ25を確認することなく、身体温冷装置1の作動状態を知ることできる。利用者は、例えば、着衣2の背中のポケット3等に熱交換部6が収容されている場合であっても、ポケット3等から熱交換部6を取り出すことなく、報知部が発する確認音によって身体温冷装置1の作動状態を確認できるので、身体温冷装置1の利便性を高められる。
【0051】
(チューブ部材)
図12は、実施例の身体温冷装置1のチューブ部材7の要部を示す模式図である。図12に示すように、身体温冷装置1は、チューブ部材7及び電源ケーブル55を覆うカバー部材51を備える。カバー部材51は、柔軟性を有する布材等によって筒状に形成されており、温調部5と熱交換部6との間にわたって設けられている。このようにカバー部材51は、チューブ部材7及び電源ケーブル55を保護することでそれぞれの損傷を防ぐことができる。
【0052】
チューブ部材7は、温調部5から熱交換部6に冷却水を送る第1チューブ7Aを有する。この第1チューブ7Aは、温調部5から熱交換部6に向かって延びる第1部分7A1と、第1部分7A1から熱交換部6まで延びる第2部分7A2と、第1部分7A1の一端と第2部分7A2の一端とを着脱可能に接続する接続部53と、を有する。
【0053】
接続部53は、第1部分7A1の一端に設けられた第1接続部材53Aと、第2部分7A2の一端に設けられ第1接続部材53Aと分離可能に係合する第2接続部材53Bと、を有する。係合状態の接続部53は、例えば、第1接続部材53Aと第2接続部材53Bとを互いに捩じるように回すことで係合状態が解除され、第1チューブ7Aを第1部分7A1と第2部分7A2とに容易に分離できる。
【0054】
このように第1チューブ7Aが接続部53で第1部分7A1と第2部分7A2とに分離可能とされることにより、接続部53から温調部5、熱交換部6、チューブ部材7を含む水回路に冷却水を補充する給水を行うことができる。この水回路に給水する場合、第1部分7A1の第1接続部材53Aと、第2部分7A2の第2接続部材53Bとの両方を、例えば、容器(図示せず)に入った給水用の冷却水に浸しながら、熱交換部6のポンプ43を作動させる。これにより、第1部分7A1、容器、第2部分7A2の順に冷却水が流れ、容器内の冷却水を第1チューブ7Aに容易に供給できる。これにより水回路に容易に給水できるので、身体温冷装置1の保守性を高められる。
【0055】
カバー部材51は、接続部53をカバー部材51の外側へ引き出すためのファスナ部52を有する。ファスナ部52は、第1チューブ7Aに隣り合う位置に、第1チューブ7Aの長手方向に沿って形成されている。ファスナ部52としては、例えば、スライダを有するものや、面ファスナが用いられている。カバー部材51の長手方向に対するファスナ部52の位置及び長さは、第1チューブ7Aの第1部分7A1及び第2部分7A2の各々を、給水作業時の第1チューブ7Aの取り扱いを容易にする程度の所定の長さだけカバー部材51から引き出せるように形成されている。このため、第1部分7A1及び第2部分7A2を、ファスナ部52を通して所定の長さだけカバー部材51から引き出すことができるので、第1チューブ7Aの給水作業をスムーズに行える。また、カバー部材51によって第1チューブ7Aの接続部53が保護されるので、接続部53からチューブ部材7に塵埃等が進入することを防げる。
【0056】
(電源部)
図2に示すように、電源部8は、電源ケーブル55を介して熱交換部6の制御基板44と接続されており、電源ケーブル55が制御基板44を経由して温調部5の各ペルチェ素子14とそれぞれ接続されている。電源ケーブル55は、第1チューブ7Aと第2チューブ7Bとの間に沿って配置されており、第1チューブ7Aと第2チューブ7Bとの間で各チューブ7A、7Bを流れる冷却水の熱が伝わることが電源ケーブル55によって抑制される。これにより、冷却水によるペルチェ素子14の冷却作用の低下が抑えられる。
【0057】
(装着具)
身体温冷装置1は、利用者が体に装着する装着具を備える。以下、装着具について説明する。図13は、身体温冷装置1が備える装着具の一例を模式的に示す斜視図であり、装着具の保持部の内部を示す斜視図である。図14は、身体温冷装置1が備える装着具の他の例を模式的に示す斜視図である。
【0058】
図13に示すように、身体温冷装置1の装着具101は、いわゆるワークベスト等の作業着であり、図1に示したポケット4と同様に利用者の背中側に設けられて熱交換部6及び電源部8を保持する保持部105を有する。保持部105の内部には、その上部に熱交換部6が収容され、その下部に電源部8が収容される。また、保持部105は、熱交換部6の筐体45の吸い込み口47を保持部105の内側に向け、筐体45の吹き出し口48を保持部105の外側(利用者の後方側)に向けた状態で熱交換部6を保持する。熱交換部6に接続されたチューブ部材7は、保持部105の上部から引き出されて温調部5まで延ばされる。
【0059】
保持部105は、熱交換部6を固定する固定バンド106と、熱交換部6の吸い込み口47側(吸い込み口47と保持部105の内面との間)に空隙をあけるためのスペーサ部材107と、熱交換部6と電源部8との間に配置される仕切り部材108と、熱交換部6及び電源部8を覆う覆い部材109と、を有する。
【0060】
固定バンド106は、例えば、面ファスナ(図示せず)を有しており、熱交換部6の筐体45の外周面に沿って巻き付けられることで熱交換部6を固定する。
【0061】
スペーサ部材107は、熱交換部6の上部と下部の各々に接するようにように保持部105の内部に設けられている。スペーサ部材107は、例えば、多孔質樹脂等の緩衝性を有する材料によって板状に形成されている。保持部105がスペーサ部材107を有することにより、保持部105の内部において熱交換部6の筐体45の吸い込み口47と保持部105の内面(利用者の背中側)との間に、吸い込み口47に取り込まれる外気が通る空隙を確保できる。
【0062】
仕切り部材108は、保持部105に熱交換部6及び電源部8が収容されたときに熱交換部6の筐体45の下面と電源部8の上面とに接するように配置されている。仕切り部材108は、例えば、多孔質樹脂等の緩衝性を有する材料によって板状に形成されている。これにより、熱交換部6と電源部8との衝突を防ぎ、熱交換部6と電源部8の損傷を防げる。また、仕切り部材108は、熱交換部6と電源部8とを接続する電源ケーブル55の引き回しを妨げないように形成されている。
【0063】
覆い部材109は、ファスナ部111によって保持部105の内部を開放可能に設けられている。覆い部材109は、例えば、網目状の布等で形成されており、保持部105に保持された熱交換部6の吹き出し口48に対向する位置に複数の通気孔112が設けられている。これにより、保持部105の内部に収容された熱交換部6の吹き出し口48の通気性が確保されている。
【0064】
上述のように身体温冷装置1が装着具101を備えることで、利用者が熱交換部6及び電源部8を所定位置に容易に装着できると共に、熱交換部6の吸い込み口47に対する通気性を確保できる。
【0065】
図14に示すように、身体温冷装置1の装着具102は、利用者の腰のベルト114に取り付けられる、いわゆるウエストバッグであり、熱交換部6及び電源部8を保持する保持部115を有する。保持部115は、熱交換部6を保持する第1保持部材115Aと、電源部8を保持する第2保持部材115Bと、を有する。
【0066】
第1保持部材115Aと第2保持部材115Bは、利用者の腰まわりに並んで配置されて、面ファスナ等の連結バンド116によって連結される。また、第1保持部材115A及び第2保持部材115Bの各々は、ベルト114が通される吊り下げバンド117を有する。
【0067】
第1保持部材115Aは、熱交換部6の筐体45の吸い込み口47を内側(利用者の腰側)に向け、筐体45の吹き出し口48を外側に向けた状態で熱交換部6を保持する。熱交換部6に接続されたチューブ部材7は、第1保持部材115Aの上部から引き出されて温調部5まで延ばされる。第2保持部材115Bの下部から引き出された電源ケーブル55は、第1保持部材115Aの下部を通って熱交換部6に接続される。
【0068】
第1保持部材115Aは、例えば、網目状の布等で形成されており、第1保持部材115Aに保持された熱交換部6の吸い込み口47及び吹き出し口48にそれぞれ対向する位置に複数の通気孔112が設けられている。これにより、第1保持部材115Aの内部に収容された熱交換部6の吸い込み口47及び吹き出し口48に対する通気性が確保されている。また、第1保持部材115Aは、ベルト114に取り付けられたときに、熱交換部6の吸い込み口が、ベルト114で塞がれないように形成されている。
【0069】
また、第1保持部材115Aの内側(利用者の腰側)の外周面における下部には、熱交換部6の吸い込み口47側(吸い込み口47と利用者の腰との間)に空隙をあけるためのスペーサ部材107が設けられている。スペーサ部材107は、例えば、多孔質樹脂等の緩衝性を有する材料によって板状に形成されている。第1保持部材115Aがスペーサ部材107を有することにより、第1保持部材における吸い込み口47側の通過孔112と利用者の腰との間に、吸い込み口47に取り込まれる外気が通る空隙を確保できる。
【0070】
上述のように身体温冷装置1が装着具102を備えることで、利用者が熱交換部6及び電源部8を所定位置に容易に装着できると共に、熱交換部6の吸い込み口47に対する通気性を確保できる。
【0071】
(実施例の効果)
上述したように実施例の身体温冷装置1は、首掛け部材11の後方外側の背面11aに、背面11aにおける上部から後方外側に膨出する膨出部20が形成されており、チューブ部材7が、膨出部20の下端面20Lから下方へ延ばされて熱交換部6と接続されている。首掛け部材11の背面11aとチューブ部材7との間には、利用者が首掛け部材11を装着したときに背面11aの下方から利用者の着衣2の後襟2aが進入可能な空間部21が形成されている。このようにチューブ部材7が背面11aの膨出部20の下端面20Lから下方に向かって利用者の背中に沿ってスムーズに引き出されるので、チューブ部材7の姿勢を安定させることができる。このため、利用者の動作に伴ってチューブ部材7によって首掛け部材11が引っ張られることが抑制されるので、首掛け部材11の装着時の不快感を防ぐことができる。また、チューブ部材7が熱交換部6側に向かって下方へ引っ張られた場合であっても、首掛け部材11の背面11a側の空間部21と後襟2aが接していることで、首掛け部材11が下方に移動することが抑制されるので、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態を安定させることができる。その結果、頚部と各プレート12、13との接触位置がずれることが抑制されるので、特に前方側プレート12によって頸動脈を適切に冷却できる。
【0072】
また、実施例の身体温冷装置1における首掛け部材11は、一対の前方側接触部16と、後方側接触部17と、一対の前方側接触部16の各々と後方側接触部17とを連結するU字状の連結部18と、を有する。連結部18は、後方側接触部17から前方側接触部16の下端側16Lに向かって延ばされており、前方側接触部16の上端側16Uが連結部18から上方に突出するように前方側接触部16の下端側16Lに連結されている。これにより、利用者が頚部を動かしたときに、例えば、首掛け部材11の連結部18の上端面18Uの内周縁部が頚部に食い込んで頚部の動きが妨げられるような不快感を利用者に与えることを抑制し、頚部の動きの自由度を高められる。加えて、首掛け部材11の連結部18の下端面18Lを、頚部まわりの鎖骨の上に沿って配置することができるので、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態を安定させることができる。
【0073】
また、実施例の身体温冷装置1において、首掛け部材11の膨出部20の上端面20Uは、首掛け部材11の背面11a側から離れるに従って下がるように傾斜している。これにより、ヘルメット等を被った利用者が上方を向いたときなどに、ヘルメット等の後縁が膨出部20の上端面20Uに接触することが抑えられるので、ヘルメット等を被った利用者の頭の移動の自由度を確保すると共に、利用者が身体冷温装置1を装着した際の装着状態の安定性を確保することができる。
【0074】
また、実施例の身体温冷装置1において、首掛け部材11の後方側接触部17の後方側プレート13は、ペルチェ素子14に対向する第1領域13Aと、第1領域13Aの周囲から前方側接触部16側に向かって延ばされた第2領域13Bと、を有しており、第1領域13Aが、第2領域13Bに対して頚部側に突出している。これにより、第1領域13Aを後頚部に容易に接触させることができる。また、後方側プレート13は、第2領域13Bが、第1領域13Aから利用者の頚部まわりに延ばされることで、主に第1領域13Aによって後頚部の中央を冷却すると共に、第2領域13Bによって後頚部の中央の両側も補助的に冷却することで冷感を高めることができる。
【0075】
また、実施例の身体温冷装置1における首掛け部材11は、前方側接触部16と後方側接触部17との間の頚部まわりの長さを調節可能な調節部30を有する。これにより、調節部30を伸縮させることで、前方側接触部16が頸動脈に接するように首掛け部材11を最適な長さに容易に調節することができる。
【0076】
また、実施例の身体温冷装置1における首掛け部材11の調節部30は、前方側接触部16と後方側接触部17とを連結する蛇腹部材31を有しており、蛇腹部材31が、前方側接触部16を頚部側へ付勢するように形成されている。これにより、首掛け部材11を頚部まわりに装着したときに、蛇腹部材31の付勢力で前方側接触部16を頚部に接触させながらスムーズに移動させることができるので、前方側接触部16の接触位置を容易に位置決めすることができる。
【0077】
また、実施例の身体温冷装置1における首掛け部材11の調節部30は、蛇腹部材31を支持する支持部材32を有しており、支持部材32が、蛇腹部材31の伸縮方向に沿って蛇腹部材31の内部に配置されて、前方側接触部16を頚部側へ付勢するように形成されている。これにより、首掛け部材11を頚部に装着したときに、支持部材32の付勢力で前方側接触部16を頚部に接触させながら更にスムーズに移動させることができるので、前方側接触部16の接触位置を容易に位置決めできると共に、前方側接触部16が頚部から離れることを抑えられる。また、支持部材32の付勢力によって頚部の動きに対する前方側接触部16の追従性を高め、首掛け部材11のフィット性を向上できる。
【0078】
また、実施例の身体温冷装置1におけるチューブ部材7は、温調部5から熱交換部6へ冷却水を送る第1チューブ7Aを有する。第1チューブ7Aは、温調部5から熱交換部6に向かって延びる第1部分7A1と、第1部分7A1から熱交換部6まで延びる第2部分72と、第1部分7A1の一端と第2部分7A2の一端とを着脱可能に接続する接続部53と、を有する。このように第1チューブ7Aを接続部53で第1部分7A1と第2部分7A2とに分離可能とされることにより、接続部53から第1チューブ7Aに冷却水を補充する等の給水を行うことができる。例えば、第1部分7A1及び第2部分7A2の各端部を容器に入った冷却水に浸しながら身体温冷装置1を作動させることで、冷却水をチューブ部材7に容易に供給できるので、身体温冷装置1の保守性を高められる。
【0079】
また、実施例の身体温冷装置1におけるチューブ部材7を覆うカバー部材51を備えており、カバー部材51が、第1チューブ7Aの接続部53をカバー部材51の外側へ引き出すためのファスナ部52を有する。これにより、ファスナ部52を通して第1チューブ7Aの接続部53をカバー部材51から容易に取り出することができるので、第1チューブ7Aの給水作業をスムーズに行える。また、特に第1チューブ7Aの接続部53がカバー部材51によって保護されるので、接続部53から塵埃等が進入することを防げる。
【0080】
また、実施例の身体温冷装置1における熱交換部6の筐体45は、対向する両面のうちの前面45aにおける、熱交換器41の放熱フィン41bと対向する第1対向領域R1の全域に形成された吸い込み口47と、背面45bにおける、送風機42のファン42aと対向する第2対向領域R2の全域に形成された吹き出し口48と、を有する。これにより、筐体45の内部に外気を効率的に取り込んで排出することと、吸い込み口47及び吹き出し口48が形成された筐体45の機械的強度の低下を抑えて筐体45の機械的強度を確保することとを両立できる。
【0081】
また、実施例の身体温冷装置1における熱交換部6の筐体45は、筐体45の内部に入った液体を外部に排出する排出口49を有しており、排出口49が、吸い込み口47の下端47Lと隣り合って下ヘッダ41dの長手方向に沿って延びて形成されて吹き出し口48の下端48Lよりも下方に位置する。これにより、筐体45内に入った液体を、排出口49からスムーズに出し切ることができるので、筐体45内に液体が残留することが抑えられ、液体によって熱交換器41や送風機42等が損傷することを防げる。
【0082】
また、実施例の身体温冷装置1における熱交換部6のポンプ43は、筐体45内における下部に沿って配置されている。これにより、熱交換部6の重心を下げて、利用者が熱交換部6を背中や腰に装着したときの熱交換部6の姿勢を安定させることができる。このため、利用者の動きに伴う熱交換部6の移動を抑えて、熱交換部6と一緒に揺れるチューブ部材7によって首掛け部材11の装着状態が変動することを抑制できる。
【0083】
また、実施例の身体温冷装置1は、身体温冷装置1を作動させるための第1電源スイッチ23及び第2電源スイッチ24を備えており、第1電源スイッチ23が温調部5に設けられ、第2電源スイッチ24が熱交換部6に設けられている。これにより、いずれか一方の電源スイッチを操作することで、身体温冷装置1を作動させることができるので、身体温冷装置1の取り扱い性を向上できる。
【0084】
また、実施例の身体温冷装置1は、利用者が体に装着する装着具101(102)を更に備えており、装着具101(102)が、熱交換部6を保持する保持部105(115)を有する。保持部105(115)は、吸い込み口47を利用者側に向けた状態の熱交換部6を保持し、保持部105(115)に保持された熱交換部6の吸い込み口47側に空隙をあけるスペーサ部材107を有する。これにより、吸い込み口47に対する通気性を確保できる。
【0085】
また、実施例の身体温冷装置1の装着具101(102)の保持部105は、吹き出し口48と対向して設けられた複数の通気孔112を有する。これにより、吹き出し口48に対する通気性を確保できる。
【符号の説明】
【0086】
1 身体温冷装置
2 着衣
2a 後襟(襟)
5 温調部
6 熱交換部
7 チューブ部材
7A 第1チューブ(チューブ)
7A1 第1部分
7A2 第2部分
7B 第2チューブ
11 首掛け部材
11a 背面
12 前方側プレート(プレート)
13 後方側プレート(プレート)
13A 第1領域
13B 第2領域
14 ペルチェ素子
16 前方側接触部
16U 上端側
16L 下端側
17 後方側接触部
18 連結部
18U 上端面
20 膨出部
20U 上端面
20L 下端面(下面)
21 空間部
23 第1電源スイッチ
24 第2電源スイッチ
30 調節部
31 蛇腹部材
32 支持部材
41 熱交換器
41b 放熱フィン
41c 上ヘッダ
41d 下ヘッダ
42 送風機
42a ファン
43 ポンプ
45 筐体
45a 前面(一方の面)
45b 背面(他方の面)
R1 第1対向領域
R2 第2対向領域
47 吸い込み口
47L 下端
48 吹き出し口
48L 下端
49 排出口
53 接続部
101、102 装着具
105、115 保持部
107 スペーサ部材
109 覆い部材
112 通気孔
図1
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図3
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図5
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