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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162822
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A47J27/00 103P
A47J27/00 103N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078742
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 智彦
(72)【発明者】
【氏名】田国 健人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武志
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA37
4B055CA36
4B055CA82
4B055CA83
4B055CC33
(57)【要約】
【課題】本発明は、操作部の操作と蓋体の開き操作を一連の動作としてスムーズに行なえる調理器を提供する。
【解決手段】本発明に係る調理器10は、上面に開口部21を有する調理器本体20と、前記調理器本体の前記開口部を開閉可能に覆い、後端が前記調理器本体に回動可能に装着される蓋体30と、を具え、前記蓋体の前端に設けられ、前記蓋体の閉じ状態で前後にスライド可能な操作部41と、前記操作部の後方で前記蓋体に傾動可能に支持されるラッチレバー42であって、前記操作部のスライド移行路上に突出する当り部421と、下端から後方に向けて屈曲したラッチ爪425と、を有するラッチレバーと、前記ラッチレバーの前記ラッチ爪を後方に向けて付勢する付勢手段43と、前記調理器本体に形成され、前記ラッチレバーの前記ラッチ爪が後方に移動したときに前記ラッチ爪と係合して前記蓋体を閉じ状態でロックするラッチ穴26と、を具える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する調理器本体と、
前記調理器本体の前記開口部を開閉可能に覆い、後端が前記調理器本体に回動可能に装着される蓋体と、
を具える調理器であって、
前記蓋体の前端に設けられ、前記蓋体の閉じ状態で前後にスライド可能な操作部と、
前記操作部の後方で前記蓋体に傾動可能に支持されるラッチレバーであって、前記操作部のスライド移行路上に突出する当り部と、下端から後方に向けて屈曲したラッチ爪と、を有するラッチレバーと、
前記ラッチレバーの前記ラッチ爪を後方に向けて付勢する付勢手段と、
前記調理器本体に形成され、前記ラッチレバーの前記ラッチ爪が後方に移動したときに前記ラッチ爪と係合して前記蓋体を閉じ状態でロックするラッチ穴と、
を具える、
調理器。
【請求項2】
前記操作部は、前端にユーザーが押す指掛け部を有し、
前記蓋体は、前記調理器本体の後端にヒンジ軸により回動可能に装着されるものであって、
前記指掛け部は、前記ヒンジ軸よりも上側に設けられている、
請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記ヒンジ軸は、前記蓋体を開き方向に付勢するヒンジスプリングを有し、前記ヒンジスプリングは、前記ラッチ爪が前記ラッチ穴から外れて前記蓋体のロックが解除されたときに、前記蓋体が完全には開ききらないバネ強さである、
請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記蓋体は、
前記ラッチレバーの傾動に連動して前後にスライド可能なスライド部材と、
前記調理器本体の開口部内を加圧モードと非加圧モードに切替可能な加圧機構と、を有しており、
前記スライド部材は、前記加圧機構が加圧位置にあるときに前記加圧機構が干渉して後方にスライド不能となり、
前記ラッチ爪が前記ラッチ爪から外れることを阻止する、
請求項3に記載の調理器。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記スライド部材を前方に向けて付勢することで、前記ラッチ爪を後方に付勢する、
請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記指掛け部は、前端の上側が前方に突出した形状である、
請求項5に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体を調理器本体に回動可能に装着した調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気圧力鍋や炊飯器などの加熱調理器や圧力加熱調理器等の調理器は、開口部を有する調理器本体に内釜などを内装しており、開口部は、調理器本体の後端にヒンジ接続された蓋体によって塞がれる。蓋体には、蓋体の開閉の際に操作する操作部を有し、操作部に連動して作動する爪片によるロックを調理器本体から外すことで蓋体が開放する。
【0003】
特許文献1には、ユーザーが指を掛けて手前に引き操作する操作部を蓋体に設けた調理器が開示されている。また、特許文献2では、蓋体の上面に操作部を設け、操作部をユーザーが指で斜め前方に引き上げることで蓋体の開き動作を行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-447号公報
【特許文献2】特許第3963841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調理中は、多くの調理作業を並行して行なう必要があるため、各々の操作はスムーズに行なえる一連の動作であることが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記調理器では、操作部を手前に引く動作でロックが解除されるのに対し、蓋体に手を添えて蓋体を開く操作は、斜め上に向けて円弧状に蓋体を回動させる動作である。すなわち、操作部の操作方向と蓋体の開き操作方向が一致しておらず、改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、操作部の操作と蓋体の開き操作を一連の操作としてスムーズに行なうことができる調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の調理器は、
上面に開口部を有する調理器本体と、
前記調理器本体の前記開口部を開閉可能に覆い、後端が前記調理器本体に回動可能に装着される蓋体と、
を具える調理器であって、
前記蓋体の前端に設けられ、前記蓋体の閉じ状態で前後にスライド可能な操作部と、
前記操作部の後方で前記蓋体に傾動可能に支持されるラッチレバーであって、前記操作部のスライド移行路上に突出する当り部と、下端から後方に向けて屈曲したラッチ爪と、を有するラッチレバーと、
前記ラッチレバーの前記ラッチ爪を後方に向けて付勢する付勢手段と、
前記調理器本体に形成され、前記ラッチレバーの前記ラッチ爪が後方に移動したときに前記ラッチ爪と係合して前記蓋体を閉じ状態でロックするラッチ穴と、
を具える。
【0009】
前記操作部は、前端にユーザーが押す指掛け部を有し、
前記蓋体は、前記調理器本体の後端にヒンジ軸により回動可能に装着されるものであって、
前記指掛け部は、前記ヒンジ軸よりも上側に設けることができる。
【0010】
前記ヒンジ軸は、前記蓋体を開き方向に付勢するヒンジスプリングを有し、前記ヒンジスプリングは、前記ラッチ爪が前記ラッチ穴から外れて前記蓋体のロックが解除されたときに、前記蓋体が完全には開ききらないバネ強さとすることができる。
【0011】
前記蓋体は、
前記ラッチレバーの傾動に連動して前後にスライド可能なスライド部材と、
前記調理器本体の開口部内を加圧モードと非加圧モードに切替可能な加圧機構と、を有しており、
前記スライド部材は、前記加圧機構が加圧位置にあるときに前記加圧機構が干渉して後方にスライド不能となり、
前記ラッチ爪が前記ラッチ爪から外れることを阻止する構成とすることができる。
【0012】
前記付勢手段は、前記スライド部材を前方に向けて付勢することで、前記ラッチ爪を後方に付勢する構成とすることができる。
【0013】
前記指掛け部は、前端の上側が前方に突出した形状とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調理器は、操作部をユーザーが後方に押し込むことでラッチ爪が調理器本体から外れて蓋体のロックが解除される。そして、この操作部の押し込み動作の延長で、手を添えたまま蓋体を斜め上に持ち上げることによって蓋体を開くことができる。これにより、操作部の押し込み動作から蓋体の持ち上げ操作を連続してスムーズに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る圧力鍋の蓋体が閉じ状態の斜視図である。
図2図2は、蓋体が閉じ状態の圧力鍋の正面図である。
図3図3は、蓋体が閉じ状態の圧力鍋の左側面図である。
図4図4は、蓋体が閉じ状態の圧力鍋の平面図である。
図5図5は、図4の線A-Aに沿う断面図である。
図6図6は、蓋体が半開き状態の圧力鍋の斜視図である。
図7図7は、蓋体が半開き状態の圧力鍋の右側面図である。
図8図8は、蓋体が全開状態の圧力鍋の斜視図である。
図9図9は、蓋体が全開状態の圧力鍋の右側面図である。
図10図10は、蓋カバーを外した圧力鍋の平面図である。
図11図11は、蓋カバーを外した圧力鍋を斜め後方から見た斜視図である。
図12図12は、蓋体開閉手段の主要部品の斜視図である。
図13図13は、図4の線A-Aに沿う蓋体の断面図であって、蓋体開閉手段がロック位置にあり、加圧機構が非加圧モードの蓋体の断面図である。
図14図14は、図4の線A-Aに沿う蓋体の断面図であって、蓋体開閉手段がアンロック位置にあり、加圧機構が非加圧モードの蓋体の断面図である。
図15図15は、図4の線A’-A’に沿う蓋体近傍の断面図であって、ラッチ爪がラッチ穴に嵌まったロック状態を示す断面図である。
図16図16は、図4の線A’-A’に沿う蓋体近傍の断面図であって、ラッチ爪がラッチ穴から外れたアンロック状態を示す断面図である。
図17図17は、内蓋の分解図であって、斜め上方から見た斜視図である。
図18図18は、内蓋の分解図であって、斜め下方から見た斜視図である。
図19図19は、弁本体の(a)底面図、(b)斜め上方から見た斜視図、(c)斜め下方から見た斜視図である。
図20図20は、蓋カバーを取り外した蓋体の斜視図であって、加圧操作部を分解した状態を示している。
図21図21は、加圧操作部が加圧位置に移動した状態を示す斜視図である。
図22図22は、加圧操作部が非加圧位置に移動した状態を示す斜視図である。
図23図23は、蓋体を閉じたときに、蓋体が完全に閉じきらず、ラッチ爪がラッチガイド上に残った半ロック状態を示す斜視図である。
図24図24は、図4の線A-Aに沿う断面図であって、半ロック状態のスライド部材の位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
調理器として、本発明を加熱加圧型の調理器(電気圧力鍋)に適用した実施形態について説明を行なう。実施形態の調理器は、加圧加熱型の調理器であるが、本発明は、加圧機能のみ、加熱機能又は保温機能のみの調理器にも適用できる。それら調理器として、炊飯器、保温釜、スープジャー、フードプロセッサー、ミキサー、ブレンダーなどのキッチン電化製品を例示できる。
【0017】
図1乃至図4は本発明の一実施形態に係る圧力鍋10の蓋体30を閉じた状態、図5図4の線A-Aに沿う断面図、図6図7は蓋体30の半開き状態、図8図9は蓋体30を全開した状態を示している。圧力鍋10は、調理器本体となる圧力鍋本体20の上部に蓋体30を装着して構成される。圧力鍋本体20の内部には、図5図8に示すように、開口部21が形成されており、開口部21には内釜11が着脱可能に収容される。
【0018】
圧力鍋本体20には、図5に示すように、内釜11を加熱するヒーター22を内装しており、蓋体30で開口部21を塞いだ状態で内釜11を加熱することで、内釜11内に投入された調理物の加熱調理、加熱加圧調理、加圧調理、又は、保温などを行なう。
【0019】
圧力鍋10には、図1等に示すように、圧力鍋本体20の前面に調理メニューや現在時刻、炊き上がり時刻などを表示する表示部23と、圧力鍋10の各種操作を行なう操作ボタン231を具える。なお、表示部23や操作ボタン231は蓋体30に配置することもでき、これらの形状、大きさは図示の実施形態に限定されるものではない。たとえば、操作ボタン231は図示ではダイヤル式であるが、プッシュ式、タッチ式等であってもよい。
【0020】
ヒーター22や表示部23、操作ボタン231は、圧力鍋本体20の適所、図5では表示部23と開口部21との間に配置された制御部24に電気的に接続されている。制御部24は、圧力鍋10を所定のプログラムに沿って作動させるマイコン制御ユニットやメモリ等を具え、ヒーター22等を制御する。
【0021】
<蓋体30>
蓋体30は、図5図8に示すように、外装となる蓋カバー31と蓋カバー31の内部に蓋フレーム32(図21も参照)を有し、蓋フレーム32の下面には、内釜11を気密に塞ぐ内蓋33が着脱可能に配備される。蓋体30は、図1乃至図5に示すように閉じた状態から、後端を中心に回動し、図6図7に示す半開き状態を経て、図8図9に示すように全開状態を採る。
【0022】
蓋体30は、圧力鍋本体20に回動可能に装着される。具体的実施形態として、蓋体30は、ヒンジ機構36により圧力鍋本体20に装着される。ヒンジ機構36は、蓋カバー31を取り外した平面図と斜視図である図10図11などに示すように、蓋フレーム32から内向きにヒンジ軸取付筒361(図21も参照)に、ヒンジ軸362が装着されている。ヒンジ軸362は、圧力鍋本体20の後端に設けられたブラケット25に枢支され、蓋体30は、ヒンジ軸362を中心として、圧力鍋本体20に対して図1乃至図9に示すように回動可能となっている。
【0023】
蓋体30は、以下で説明する蓋体開閉手段40によって圧力鍋本体20に対して閉じ状態と開き状態を採る。蓋体30の開閉は、蓋体開閉手段40の操作部41をユーザーが押し込み操作することで行なわれる。蓋体30が圧力鍋本体20にロックされた状態から、操作部41の操作によりロックを解除したときに、蓋体30を開けやすくするために、ヒンジ軸362にはヒンジスプリング363を装着している。ヒンジスプリング363は、図11に示すように、一端364が蓋フレーム32、他端365が圧力鍋本体20に掛けられており、蓋体30を開き方向に付勢する。
【0024】
蓋体30は、ヒンジスプリング363のバネ強さを調整することで、開き角度や開く勢いを調整することができる。具体的には、ヒンジスプリング363のバネ強さを強くすれば、ヒンジスプリング363のみの力で図8図9に示すように蓋体30を全開(約105°)まで開くことができる。しかしながら、ヒンジスプリング363のみの力で全開まで開く構成とすると、蓋体30は勢いよく開くから、内蓋33などに付着した露などが、開き動作の反動で飛び散ってしまうことがある。また、蓋体30を閉じるときは、ヒンジスプリング363の付勢力に抗してユーザーが手で押さえる必要があるが、ヒンジスプリング363のバネ強さが強すぎると、蓋体30を閉じるのに強い力が必要になり、操作性に劣る。そこで、たとえばヒンジスプリング363以外にダンパーやトルク調整機能を追加することで、蓋体30の開く勢いや閉じる際に必要な力を調整することもできるが、追加の部品が必要であって、構造の複雑化を招く。
【0025】
このため、蓋体30を全開させるのではなく、図6図7に示すように、蓋体30が開ききらずに5~20°に半開きする程度のバネ強さにすることが望ましい。蓋体30を半開き(図では約10°)とすることで、半開きから全開までの開き操作はユーザーが手で行なう必要があるが、蓋体30の開く勢いを抑えることができ、露などの飛び散りを防止できる。また、蓋体30の閉じ操作に強い力は不要であり、操作性にすぐれる。この場合、ヒンジスプリング363のみで蓋体30の半開きを行なうことができ、ダンパーやトルク調整機能は不要であるから構成の簡略化を図ることができる。
【0026】
<蓋体開閉手段40>
蓋体30の開閉は、操作部41を含む蓋体開閉手段40によって行なうことができる。蓋体開閉手段40は、図1図12乃至図14に示すように、ユーザーが押し込み操作する操作部41と、図7図8等に示すように、蓋体30の前端を圧力鍋本体20に開き不能にロックし、操作部41によってロックを開放するラッチレバー42と、図13図14等に示すように、ラッチレバー42をロック方向に付勢する付勢手段43を含む。なお、図12は、蓋体開閉手段40の操作部41とラッチレバー42、また、内釜11内を加圧モードで操作部41の操作を阻止するスライド部材44を取り出して示す斜視図である。図13はラッチレバー42がロック位置にある蓋体30の断面図、図14は、ラッチレバー42がロック解除位置にある蓋体30の断面図である。
【0027】
操作部41は、蓋フレーム32の前方側に配置され、図13図14に矢印Dで示すように前後方向にスライド可能となっている。操作部41には、ユーザーが指で押し込む指掛け部412を有する。望ましくは、操作部41、より詳細には指掛け部412は、蓋体30と圧力鍋本体20の回動中心となるヒンジ軸362よりも上側に配置する。これにより、後述するとおり、操作部41を後方に押し込む矢印Dの押し込み力を蓋体30の開き動作を補助する力として利用することができ、蓋体30をスムーズに全開させることができる。
【0028】
操作部41の前端は、蓋カバー31から臨出している。操作部41は、ユーザーが押し込み操作し易いように、左右方向に幅広の形態とすることができる。操作部41の前端は、上側が下側よりも前方に向けて突出した指掛け部412を有する構成とすることができる。また、操作部41の側面には、図12に示すように、蓋フレーム32にスライド可能に嵌まるガイド411が形成されている。
【0029】
操作部41は、図13等に示すように後端が開口した中空の構造とすることができる。操作部41の下面には、ラッチレバー42の当り部421が挿通する溝413が開設されている。操作部41の内面には、当り部421が当接する押し片414が下方に膨らんだ形状で設けられている。
【0030】
ラッチレバー42は、操作部41の後方に、図13図14に矢印Eで示すように、前後方向に傾動可能となるように配置される。ラッチレバー42の上端は、操作部41のスライド移行路、より詳細には、押し片414のスライド移行路に突き出た当り部421(図12も参照)を有する。ラッチレバー42は、当り部421の下方で蓋フレーム32に前後方向に傾動可能に枢支423されている。
【0031】
また、ラッチレバー42の下端は、図12乃至図14、或いは、図4の線A’-A’の断面図である図15図16に示すように、蓋フレーム32から下方に突出しており、下端には後方に向けて屈曲するラッチ爪425が形成されている。具体的な形態として、図12に示すように、ラッチレバー42は、左右に枢軸423が突設された幅広のラッチレバープレート422と、ラッチレバープレート422の中央から上向きに突出する当り部421と、ラッチレバープレート422から左右離れた位置に下向きに突設されたラッチプレート424と、ラッチプレート424の下端から後方に向けて屈曲して延びるラッチ爪425を具える。ラッチ爪425は、図15に示すように、圧力鍋本体20の前方に形成されたラッチ穴26に係合可能となっている。なお、ラッチレバー42の形状は、これに限るものではない。
【0032】
ラッチ穴26は、図8図15図16に示すように、圧力鍋本体20の前方側に形成され、ラッチ爪425が嵌まって蓋体30をロックする凹みである。図15は、ラッチ爪425がラッチ穴26に嵌まったロック状態、図16は、ラッチ爪425がラッチ穴26から外れたアンロック状態を示す。
【0033】
ラッチ穴26には、図15に示すように、蓋体30を閉じる際に、ラッチ爪425をラッチ穴26に案内するラッチガイド27が形成されている。ラッチガイド27は、図示では下方が斜め前方に向けて傾斜し、ラッチ穴26に繋がる傾斜面である。ラッチガイド27は、蓋体30を閉じ方向に移動させたときに、次に説明する付勢手段43によって後方に向けて付勢されたラッチ爪425を前方に向けて押し出し、ラッチ穴26に嵌まるように案内する。
【0034】
付勢手段43は、ラッチレバー42を付勢する。付勢手段43は、ラッチ爪425が、ラッチ穴26に嵌まる向き、すなわち、図13図14の矢印Eとは逆向きに付勢する。付勢手段43により、ラッチレバー42は、ラッチレバープレート422が略垂直になるように付勢される。付勢手段43は、たとえば圧縮コイルバネ、引張コイルバネを採用し、ラッチレバー42を、枢軸423よりも下側で後方に向けて付勢する構成、或いは、枢軸423よりも上側で前方に向けて付勢する構成とすることができる。また、付勢手段43は、枢軸423に装着されるヒンジスプリングとし、ラッチレバー42を後傾するよう付勢する構成としてもよい。
【0035】
本実施形態では、付勢手段43は、ラッチレバー42を直接付勢するのではなく、図13図14に示すように、スライド部材44を介してラッチレバー42を付勢している。スライド部材44は、ラッチレバー42の当り部421の後方で前後方向にスライド可能に配置された部材である。スライド部材44の機能については後述するが、スライド部材44を前方に向けて付勢手段(圧縮コイルバネ)43により付勢することで、ラッチレバー42が前傾方向、操作部41が前方に向けて付勢される。
【0036】
より詳細には、スライド部材44は、図12乃至図16に示すように、蓋フレーム32に前後スライド可能に支持される前後に長い部材である。スライド部材44は、下面側に前方が塞がり後方が開口するバネ収容部441を有する。バネ収容部441には、図15に示すように、付勢手段43が、前端をスライド部材44、後端を蓋フレーム32から上向きに突設されたバネ受け323に当接させた状態で収容され、スライド部材44を常時前方に向けて付勢している。
【0037】
スライド部材44は、図15に示すようにラッチレバー42がロック位置にあるときに、前端442がラッチレバー42の枢軸423よりも上側に、本実施形態では当り部421に当接し、後端443が次に説明する加圧機構50の邪魔板633の上下のスライド移行路に飛び出さず、図16に示すようにラッチレバー42が後傾してアンロック位置に移動したときに、後端443が邪魔板633のスライド移行路に飛び出す長さを有している。
【0038】
<加圧機構50>
蓋体30は、内釜11を気密に塞ぐが、図5に示すように、蓋体30内には、内釜11と外部とを連通する空気通路321が形成されている。空気通路321は、図5に示すように内釜11側にて内蓋33に形成された排気口34(図18も参照)で開口しており、他方は蓋カバー31に形成された蒸気口311と連通している。排気口34は、加圧モードにおいて加圧調理を行なう際には、図5に示すように圧力弁51で塞がれ、内釜11内を気密に維持する。逆に、非加圧モードにおいて非加圧調理を行なう際には、図13に示すように圧力弁51が内蓋33から離間して、排気口34を開放させる。排気口34が開放することで、内釜11(図13には示さず)は、排気口34、空気通路321、蒸気口311を通じて矢印Cに示すように、外部と連通する。
【0039】
この加圧モード、非加圧モードを切り替える手段が、加圧機構50である。加圧機構50は、排気口34を開閉する圧力弁51と、圧力弁51をメカ的に操作する加圧操作部60を含んでおり、圧力弁51を内蓋33、加圧操作部60を蓋体30側に設けている。
【0040】
圧力弁51は、排気口34を下側から塞ぐ構成としており、図5に矢印Fで示すように圧力弁51が上移動することで排気口34を塞いで加圧状態を採る。また、圧力弁51が、図13に矢印Fで示すように下移動することで排気口34を開き、矢印Cに示すように空気通路321、蒸気口311を介して内釜11を大気と連通させる非加圧状態を採る。
【0041】
加圧機構50の具体的実施形態について説明する。図17図18は、内蓋33の分解斜視図であって、内蓋33の略中央には排気口34が貫通開設されている。排気口34には、圧力弁51を上下にスライド可能に支持する支持台35が設けられている。支持台35には、図18に示すように、圧力弁51の弁軸522が貫通する軸孔351と圧力弁51の抜止め523が貫通する排気孔352が開設されている。排気孔352は、抜止め523よりも大きく形成され、圧力弁51が非加圧モードにあるときに、抜止め523との隙間から内釜11内の空気が空気通路321の外に流出することを許容する。また、支持台35には、上側に圧力弁51を上下にスライド可能に案内する支持筒353が形成されている。なお、図17中、符号331は、吹きこぼれなどを防止する調圧ユニットである。
【0042】
圧力弁51は、図5図13乃至図18に示すように、弁パッキン54と弁本体52、弁蓋53から構成することができる。弁パッキン54は、有底円筒状であり、上端に拡径したシールリング541を有する。弁パッキン54には、弁本体52が嵌まる。
【0043】
図19に示すように、弁本体52は、弁パッキン54に嵌まり、弁板となる円形の円盤部521と、円盤部521の中央から突設された弁軸522、弁軸522の外周に突設された4本の抜止め523を有する。抜止め523の先端は外向きに屈曲した係合爪524を有する。
【0044】
円盤部521は、図19に示すように、空気孔525が開設している。空気孔525は、円盤部521と弁パッキン54の間に侵入する空気や水の排出孔となり、空気や水がこれらの間で膨張してしまい、弁パッキン54が膨れることを防止する。これにより、弁パッキン54の膨張によるシール性の低下や劣化、弁パッキン54の外れなどを防止でき、弁パッキン54の長寿命化を達成する。
【0045】
また、円盤部521には、図19に示すように、弁パッキン54と円盤部521の間に侵入した空気や水を好適に空気孔525に効率的に導いて、弁パッキン54と円盤部521の間が陰圧となって、弁パッキン54が円盤部521に吸着してしまうことを防ぐ必要がある。このため、円盤部521が弁パッキン54と当接する下面側には、円環状の溝部526を形成している。そして、溝部526には補強用の立壁527を設け、立壁527で区画された各室が空気孔525と連通するように、立壁527には横孔528を形成している。これにより、溝部526に侵入した空気や水は、膨張しても横孔528を通って空気孔525から排出されるから、上記と同様、弁パッキン54の膨張によるシール性の低下や劣化、弁パッキン54の外れなどを防止でき、弁パッキン54の長寿命化を達成できる。
【0046】
本実施形態の圧力弁51は、蓋体30から取り外しされる内蓋33に設けているため、内蓋33の洗浄の際に圧力弁51に水が侵入する機会が多い。従って、上記のように水などを排出できる構成を採用している。
【0047】
圧力弁51は、弁軸522と抜止め523が、内蓋33の排気口34に取り付けられた支持台35をスライド可能に貫通するように取り付けられる。弁軸522は軸孔351、抜止め523は排気孔352を貫通する。そして、抜止め523の上端の係合爪524は、図5に示すように弁蓋53に係合して、圧力弁51が構成される。弁蓋53は、支持台35に設けられた支持筒353に上下にスライド可能に案内される。
【0048】
本実施形態では、加圧操作部60の操作子61を押下させることで圧力弁51が排気口34を開放し、操作子61が上移動すると、圧力弁51が排気口34を塞ぐ構成としている。圧力弁51は、蓋体30に着脱化能な内蓋33に設けているから、加圧操作部60が上移動したときに、圧力弁51は、加圧操作部60に追従して上移動し、排気口34を塞ぐ必要がある。そこで、弁軸522には、図5図13図17等に示すように、弁蓋53と支持台35との間に弁付勢手段として圧縮コイルバネ(以下「弁バネ」という)を嵌めている。これより、無負荷の状態では、弁バネ55の付勢力によって、弁蓋53が持ち上げられ、図5に示すように圧力弁51が排気口34を塞ぐ。
【0049】
圧力弁51の上下動は、加圧操作部60により行なわれる。具体的には、加圧操作部60は、圧力弁51を押し下げて、排気口34を開放させる。加圧操作部60は、図5図13に示すように、圧力弁51と当接する圧力シャフト63を上位置、下位置で夫々保持する構造であり、その種の保持構造としてノックカム構造を例示できる。ノックカム構造は、図20等に示すように、圧力弁51を下方向に押し下げる圧力シャフト63と、ユーザーが押下操作する操作子61、操作子61と連動する回転子62、圧力シャフト63を上向きに付勢する加圧操作付勢バネ64を含む構成とすることができる。図20は、加圧操作部60の分解図、図21は加圧操作部60が加圧位置に移動した状態、図22は、加圧操作部60が加圧位置に移動した状態を示す斜視図である。
【0050】
加圧操作部60は、蓋フレーム32にビス止め375(図10参照)されたラチェットリング37に上下動可能に配置することができる。ラチェットリング37は、図20に示すように、内面にカム371及び溝372が形成された筒状部373を有する。
【0051】
ラチェットリング37には、図20乃至図22に示すように、検出器取付部374が突設されており、下面に弁位置検出器70が取り付けられている。蓋フレーム32には、弁位置検出器70の下面を支持する検出器受け台322が形成されている。検出器取付部374と検出器受け台322の間には、弁位置検出器70が取り付けられている。弁位置検出器70は、圧力弁51が加圧位置(上位置)にあるか、非加圧位置(下位置)にあるかを判別するスイッチである。弁位置検出器70は、たとえばマイクロスイッチ、タクタイルスイッチであり、下面にアクチュエーター71を有する。アクチュエーター71は、以下で説明する圧力シャフト63の上下動によりオン(図21の丸囲み部K)・オフ(図22の丸囲み部K)に操作される。なお、弁位置検出器70はこれらに限定されるものではない。弁位置検出器70は、検出器取付部374と検出器受け台322との間に挟んで支持することで、アクチュエーター71が下から押されても、浮き上がりや傾きが防止され、検出精度を高めることができる。
【0052】
圧力弁51の状態は、制御部24に送信され、後述するとおり、制御部24は、弁位置検出器70の検出結果を、圧力鍋10の調理メニューの選択や動作制御に利用し、また、加圧操作部60の操作漏れなどを表示部23に表示するために利用する。
【0053】
ラチェットリング37の筒状部373には、図20に示すように、操作子61が嵌まる。操作子61は、上面が閉じ、下面が開口した筒体であり、上面が蓋カバー31から飛び出ており、ユーザーが押圧操作可能となっている。操作子61の開口した下面の縁部には、ギザギザの凹み611が形成されている。操作子61には、周縁に羽根621が形成された筒状の回転子62が嵌まっている。回転子62には、圧力シャフト63が嵌まっている。
【0054】
また、ラチェットリング37には、図5図20等に示すように、スライド部材44のスライド移行路の上側に抑え部材376を突設している。抑え部材376は、スライド部材44が邪魔板633のスライド移行路に侵入した状態で、圧力シャフト63が上昇したときに、スライド部材44が邪魔板633に押されて上向きに持ち上げられてしまうことを防止する部材である。
【0055】
圧力シャフト63は、上端に近い位置に外向きに広がるフランジ状の鍔部631を有し、鍔部631は下向きに屈曲してバネ受け632を構成している。バネ受け632には、蓋フレーム32との間に付勢手段として圧縮コイルバネ64(加圧操作付勢バネ)が嵌まり、加圧操作付勢バネ64は、圧力シャフト63を常時上方向に付勢している。
【0056】
また、鍔部631には、図20に最もよく示されるように、前方に向けて邪魔板633が突設されている。邪魔板633は、圧力シャフト63の上下動により、蓋体開閉手段40の上記したスライド部材44のスライド移行路に出没可能となっている。図5図21は、邪魔板633がスライド部材44のスライド移行路に侵入した状態、図8及び図22は、邪魔板633がスライド部材44のスライド移行路から脱した状態を示している。そして、詳細は後述するが、スライド部材44のスライド移行路に邪魔板633が侵入した状態(加圧モード)では、スライド部材44は邪魔板633と干渉して後退不能、すなわち、操作部41を後方にスライド不能としており、蓋体30の開き動作を行なえないようにしている。
【0057】
圧力シャフト63には、さらに、図20乃至図22に示すように、鍔部631に、弁位置検出器70のアクチュエーター71をオン・オフ操作する押圧子634が形成されている。押圧子634は、アクチュエーター71の鉛直下に突出しており、図21に丸囲み部Kで示すように、圧力シャフト63が上昇したときに、アクチュエーター71を押圧し、弁位置検出器70をオン操作する。逆に、圧力シャフト63が下降したときには、図22に丸囲み部Kで示すようにアクチュエーター71から離間し、弁位置検出器70をオフ操作する。
【0058】
<加圧判別機構80>
本実施形態の圧力鍋10は、視覚的に内釜11内が加圧状態にあるかどうかを知ることができる加圧判別機構80を配置している。加圧判別機構80は、たとえば、内釜11が加圧状態にあると、図15に示すように、蓋体30から上向きに飛び出す圧力検知ピン81を含む構成とすることができる。
【0059】
具体的には、内蓋33には、図8図15に示すように、圧力検知用孔332が開設されている。圧力検知用孔332は、図15に示すように、内蓋33を蓋体30に装着した状態で、蓋フレーム32に設けられた圧力検知パッキン82に気密に連通する。圧力検知パッキン82は、下面が圧力検知用孔332と連通する圧力検知開口821が形成され、内蓋33に密着可能なパッキン部822を有する。パッキン部822は、圧力検知開口821以外は気密に構成され、上側には、圧力検知ピン81の下端を上下動可能に支持する蛇腹部823を有する。
【0060】
蛇腹部823の上方には、蓋フレーム32内を貫通する圧力検知筒部83が形成されており、圧力検知筒部83には、上下に摺動可能に圧力検知ピン81が挿入されている。圧力検知ピン81は、下端が蛇腹部823に嵌まり、上端は、圧力検知筒部83の上側に位置する蓋カバー31に開設された出没孔312から出没可能となっている。圧力検知ピン81は、下方に圧力検知筒部83からの抜止めとなる段部811が形成されており、上方には水平方向に広がるフランジ812が形成されている。フランジ812と蓋カバー31の間には圧力検知ピン81を下向きに付勢する検知ピン付勢手段84が嵌装されている。検知ピン付勢手段84の付勢力は、内釜11が所定の圧力となったときに、圧力検知ピン81が上方に移動可能な程度に調整されている。
【0061】
然して、加圧判別機構80は、内蓋33を蓋体30に装着し、蓋体30を閉じた状態で、内釜11内が加圧されると、圧力検知パッキン82内の圧力も高まり、検知ピン付勢手段84の付勢力に抗して圧力検知パッキン82は蛇腹部823が上向きに膨らむ。その結果、圧力検知ピン81は上向き押し上げられて、出没孔312から突出する(図15に点線81aで示す)。ユーザーは、蓋体30から圧力検知ピン81が突出している場合には、内釜11内が高圧であることを視認できる。
【0062】
圧力検知ピン81が突出した状態で蓋体30を開くと、蓋体30が圧縮された空気によって勢いよく開いてしまう虞れがあり、蒸気等の吹き出しや、内蓋33に付着した水滴が飛散してしまうことがある。このため、蓋体30の開閉は、圧力検知ピン81が下がってから行なうことが望ましい。
【0063】
<圧力鍋10の使用方法>
上記構成の圧力鍋10は、図8に示すように、圧力鍋本体20に内釜11を収容し、蓋体30の内側に内蓋33を装着して使用される。内蓋33を蓋体30に装着することで、加圧機構50は、圧力弁51と加圧操作部60が図13に示すように直線状に並ぶ。
【0064】
<蓋体30の開閉操作>
まず、本実施形態の圧力鍋10の蓋体30を開閉手順について説明する。
【0065】
図1等に示すように、蓋体30が圧力鍋本体20の開口部21を閉じた状態から、操作部41を操作することで、蓋体30は開放する。
【0066】
蓋体30の閉じ状態では、図5図8に示すように、蓋体開閉手段40は、付勢手段43の付勢力によりスライド部材44が前方スライドしており、これによって当り部421が前方に押され、操作部41は前端が蓋カバー31から前方に臨出している。ラッチレバー42は、枢軸423を中心に略垂直となっており、下端のラッチ爪425は図15に示すように圧力鍋本体20のラッチ穴26に嵌まっている。
【0067】
この状態からユーザーが操作部41を後方に押し込む。図13の矢印Dに示すように、操作部41を押し込むと、図14に示すように、操作部41は、後方にスライドし、押し片414がラッチレバー42の当り部421を後方に押す。このとき、スライド部材44も後方にスライドする。これにより、ラッチレバー42は、図14図16に矢印Eで示すように、枢軸423を中心に後傾し、ラッチ爪425が斜め前方に移動して、ラッチ穴26から外れる。
【0068】
ラッチ爪425がラッチ穴26から外れると、蓋体30のロックは解除される。蓋体30は、図11に示すように、後端がヒンジ軸362により圧力鍋本体20に支持されており、ヒンジスプリング363により圧力鍋本体20に対して開き方向に付勢されているから、蓋体30のロックが解除されると、蓋体30は、図6及び図7に示すように、ヒンジスプリング363の付勢力によってヒンジ軸362を中心に開き方向に回動する。
【0069】
本実施形態では、ヒンジスプリング363のバネ強さは、蓋体30が図6図7に示すように、半開きする程度としている。従って、操作部41を押しただけでは、蓋体30は、半開き状態で止まる。このため、蓋体30を図8図9に示すように全開させるには、操作部41の指掛け部412を親指で斜め上に持ち上げればよい。ただし、この場合、操作部41の押し操作と、蓋体30を半開きから全開させる操作の2つの操作がユーザーに要求され、動作のスムーズさに欠ける。
【0070】
本実施形態では、図13に示すように、操作部41は、蓋体30と圧力鍋本体20の回動中心となるヒンジ軸362よりも上側に配置している。これにより、操作部41を後方に押し込む矢印Dの押し込み力は、蓋体30を開く方向のベクトル成分を含むことになる。その結果、操作部41の押し込み力を、ラッチ爪425がラッチ穴26から外す力だけでなく、蓋体30の開き動作を補助する力として利用することができ、蓋体30をスムーズに全開させることができる。
【0071】
なお、操作部41の押し込み動作の際に、ユーザーは、指掛け部412に指を掛けて操作部41を押し込んだ後、そのまま指掛け部412を斜め上に押し上げることで、蓋体30を一気に全開させることもできる。これにより、ラッチ爪425がラッチ穴26から外れると共に、ヒンジスプリング363により蓋体30が開き方向に回動するから、蓋体30を一気に図8図9に示すように全開させることができる。このように、操作部41の指掛け部412を斜め下方から後方に向けて斜め上向きに押し込むだけで、操作部41の押し込み動作を行なうと共に、押し込み動作の延長で、手を指掛け部412に添えたまま、斜め上向きに手を移動させるという一連のスムーズな動作により、蓋体30を全開させることができる。
【0072】
ユーザーが、操作部41への押し込み力を解くと、付勢手段43の付勢力により、スライド部材44が前方に付勢され、ラッチレバー42を前傾させることで、操作部41は、図13に示すように、前方にスライドしてロック位置に復帰する。
【0073】
図6乃至図9に示す蓋体30が半開き又は全開した状態から、蓋体30を閉じるには、蓋体30を圧力鍋本体20に向けて押し込めばよい。たとえば、蓋カバー31の前端側を指で押すことで、ヒンジスプリング363の付勢力に抗して蓋体30は前向きに回動する。蓋体30は、前端が圧力鍋本体20に当たる直前に、ラッチ爪425が圧力鍋本体20のラッチガイド27に当たり、ラッチレバー42を後傾させながら蓋体30の閉じ動作が進む。そして、ラッチ爪425がラッチ穴26と対面すると、図15に示すようにラッチ爪425は付勢手段43により後方に移動してラッチ穴26に嵌まり、再び蓋体30が圧力鍋本体20にロックされる。
【0074】
上記が、本発明の実施形態に係る圧力鍋10の蓋体30の開閉操作となる。続いて、加圧モードと非加圧モードの切替操作について説明する。
【0075】
<加圧機構50の加圧モード・非加圧モードの切替操作>
加圧機構50は、蓋体30が閉じた状態で、加圧操作部60を操作することで、図5に示すように圧力弁51が排気口34を塞ぐ加圧モードと、図13に示すように圧力弁51が排気口34を開放する非加圧モードを切り替えることができる。
【0076】
ノックカム構造の詳細な動作説明は省略するが、加圧機構50は、操作子61を押し操作することで、回転子62がラチェットリング37の筒状部373内で回転し、加圧操作付勢バネ64により上向きに付勢された圧力シャフト63を上下動させる。
【0077】
<加圧モードへの移行>
圧力弁51は、弁蓋53が弁バネ55に上向きに付勢されている。従って、操作子61の押し操作により、圧力シャフト63が上位置に移動することで、図5に矢印Fで示すように、弁本体52が上移動し、弁パッキン54、より具体的にはシールリング541が排気口34を塞いだ加圧可能な加圧モードとなる。これにより、内釜11は気密に維持されるから、ヒーター22を作動させて内釜11を加熱することで、内釜11内は膨張した空気や水蒸気により加圧され、加圧加熱調理を行なうことができる。
【0078】
圧力シャフト63が上位置に移動する際、圧力シャフト63の押圧子634も上移動して、図21に丸囲み部Kで示すように弁位置検出器70のアクチュエーター71を押してオン操作する。弁位置検出器70は、検出器取付部374と検出器受け台322により固定されているから、浮き上がりや傾きなく検出精度を高めることができる。弁位置検出器70は、オン操作されたことを制御部24に送信し、弁位置が上位置、すなわち、内釜11内が加圧可能な加圧モードであると判断する。
【0079】
内釜11が加圧モードである場合には、たとえば、制御部24は、表示部23に「圧力中」などの表示を行ない、加圧モードであることをユーザーに知らせることができる。また、制御部24は、加圧モードでは、加圧可能な調理メニューを表示部23に表示することができる。たとえば、加圧可能な調理メニューは、非加圧モードの場合よりもヒーター22の火力を抑えて吹きこぼれを抑えた調理メニューを挙げることができる。さらに、ユーザーによる操作ボタン231の操作によって選択された調理メニューが加圧の必要な調理メニューである場合、そのまま調理を進行させることができる。逆に、ユーザーが非加圧モードの調理メニューを選択したにも拘わらず、加圧モードである場合には加圧操作部60を操作して、非加圧モードとするよう警告や注意を表示部23に表示し、または、調理を開始しないなどの制御を行なうことができる。
【0080】
内釜11内が加圧されると、圧力検知パッキン82内の圧力も高まるため、加圧判別機構80は、検知ピン付勢手段84の付勢力に抗して圧力検知ピン81を押し上げる。これにより、圧力検知ピン81は蓋体30の出没孔312から突出する(図15の点線81a)。ユーザーは、圧力検知ピン81の飛び出しを視認することで、内釜11内が加圧状態にあることを判別することができる。
【0081】
内釜11内が加圧された状態、すなわち、圧力弁51が排気口34を塞いでいる状態で、蓋体30の開き操作を行なうと、蓋体30が圧縮された空気によって勢いよく開いてしまう虞れがあり、蒸気等の吹き出しや、内蓋33に付着した水滴が飛散してしまうことがある。このため、ユーザーは、蓋体30を開き操作する際には、圧力検知ピン81が飛び出ていないかどうか確認してから蓋体30の開き操作を行なうことが望ましい。
【0082】
しかしながら、圧力検知ピン81をユーザーが見落として、蓋体30の開き操作をした場合にでも、加圧モードでは、蓋体30の開き操作を行なえないようにすることが望ましい。本実施形態では、上記のとおり、図18に示すように、圧力シャフト63に邪魔板633を設け、加圧モードで圧力シャフト63が上位置にある場合、図5の丸囲み部Gで示すように、邪魔板633がスライド部材44のスライド移行路に侵入する構成としている。
【0083】
これにより、加圧モードにあるときに、ユーザーが蓋体30を開くために、図5中、矢印Hに示すように操作部41を後方にスライドさせようとしても、ラッチレバー42を介して後方にスライドするスライド部材44の後端443が、スライド移行路に侵入した邪魔板633に干渉、衝突する(図5の丸囲み部G)。このため、圧力弁51が加圧位置にあるときには、操作部41を後方スライドすることができず、ラッチレバー42が後傾しないから、蓋体30の開き動作は阻止される。これにより、加圧モードでの蓋体30の開放を防ぐことができる。
【0084】
なお、圧力弁51が加圧位置にある状態で蓋体30を開放するには、加圧操作部60を操作して、非加圧モードに変えればよい。これにより、後述する図13図14に示すように、邪魔板633はスライド部材44のスライド移行路よりも下側に移動しているから、蓋体30を開放できる。
【0085】
一方で、圧力弁51を加圧位置に移動させる際には、蓋体30は圧力鍋本体20に正しくロックされている必要がある。蓋体30のロックが不十分な半ロック状態では、ラッチ爪425はラッチ穴26への掛かりが甘いから(たとえば掛かり代が約1/2)、加圧を行なったときにラッチ爪425が外れて、強制的に蓋体30が開放してしまうことがある。従って、半ロック状態では、加圧操作部60を操作できなくすることが求められる。
【0086】
半ロック状態は、図23に丸囲み部Lで示すようにラッチ爪425がラッチ穴26に嵌まってはいるが、図15に示すように完全にはラッチ爪425が侵入していない状態、或いは、ラッチガイド27の上にあり、ラッチ穴26に嵌まっていない状態である。これら状態では、ラッチレバー42は、やや後傾しており、スライド部材44は、ラッチレバー42に押されて、図24に示すように、僅かに後退した位置にある。
【0087】
スライド部材44が後退していることで、図24中に丸囲み部Iで示すように、スライド部材44の後端443は、圧力弁51を操作する圧力シャフト63の邪魔板633の昇降移行路に侵入している。このため、本実施形態では、半ロック状態において加圧操作部60を操作しても、圧力シャフト63は、邪魔板633がスライド部材44の後端443に当たって上昇できない。従って、圧力弁51は内蓋33の排気口34を塞がないから、加圧モードにできず、半ロック状態での加圧モードへの移行を阻止でき、蓋体30が加圧により開くことを防止できる。
【0088】
なお、上記状態において、圧力シャフト63を上昇させたときに、邪魔板633によってスライド部材44の後端443が持ち上げられてしまうことが考えられる。このため、本発明では、図10図20に示すように、ラチェットリング37に設けられた抑え部材376を設けている。これにより、半ロック状態で圧力シャフト63が上昇しても、図24に示すように、スライド部材44は抑え部材376の下面に当たって、浮き上がりが防止される。これにより、圧力シャフト63は上移動を防止できる。
【0089】
また、抑え部材376を蓋フレーム32にビス止め375されるラチェットリング37に設けたことで、抑え部材376の高さ調整を容易に行なうことができる。抑え部材376の高さは、圧力シャフト63の邪魔板633とスライド部材44の後端443が当たった状態で、加圧状態とならない、すなわち、シールリング541が内蓋33と接触しないように調整する。スライド部材44と抑え部材376の遊びが大きいと、抑え部部材376を設けたにも拘わらず、スライド部材44が邪魔板633に押されてシールリング541が排気口34を塞ぎ、加圧モードになってしまうためである。
【0090】
もちろん、半ロック状態のときには、加圧モードに移行しないから、弁位置検出器70は、押圧子634がアクチュエーター71によりオン操作されない。このため、加圧が必要な調理が行なわれることはない。
【0091】
<非加圧モードへの移行>
圧力弁51が加圧位置にある状態から、ユーザーが操作子61を押すと、圧力シャフト63が下位置に移動して保持される。これにより、図13に示すように、圧力シャフト63は圧力弁51を押し下げて、排気口34を開放させて非加圧状態を採る。圧力シャフト63が下移動により、圧力シャフト63の押圧子634も下移動するから、図22に丸囲み部Kで示すように弁位置検出器70のアクチュエーター71から離間して、弁位置検出器70をオフ操作する。弁位置検出器70は、オフ操作されたことを制御部24に送信し、弁位置が下位置、すなわち、内釜11内が非加圧モードであると判断する。また、加圧判別機構80は、内釜11内の圧力が下がると、図15に示すように、検知ピン付勢手段84の付勢力により圧力検知ピン81を押し下げる。これにより、ユーザーは視認により内釜11内が加圧されていないことを判別できる。
【0092】
制御部24は、内釜11が非加圧モードである場合と判断すると、たとえば、非加圧モードの調理メニューを表示部23に表示することができる。また、ユーザーによる操作ボタン231の操作によって選択された調理メニューが非加圧モードの調理メニューである場合、そのまま調理を進行させることができる。たとえば、非加圧モードの調理メニューは、加圧モードの場合よりもヒーター22の火力を強くした高タクトの調理メニューを挙げることができる。逆に、ユーザーが加圧モードの調理メニューを選択したにも拘わらず、非加圧モードである場合には加圧操作部60を操作して、加圧モードとするよう警告や注意を表示部23に表示し、または、調理を開始しないなどの制御を行なうことができる。
【0093】
このように、加圧操作部60の操作により、制御部24は、内釜11内を加圧可能な加圧モードと、非加圧モードに切り替えることができ、モードに対応した調理メニューを実行することができる。
【0094】
なお、内釜11内が非加圧モード、すなわち、圧力弁51が排気口34を塞いでいない状態では、図14に示すように、圧力シャフト63は下方に移動している。すなわち、圧力シャフト63の邪魔板633は、図13の丸囲み部Jに示すように、スライド部材44のスライド移行路に侵入していない(図5の加圧モードでは丸囲み部Gに示すように邪魔板633はスライド部材44のスライド移行路に侵入している)。この状態から蓋体30の開き操作を行なった場合、図14に矢印Dで示すように操作部41を後方にスライドさせると、スライド部材44は邪魔板633と干渉することなく後方にスライドできるから、ラッチレバー42を後傾させて、蓋体30を開くことができる。
【0095】
本実施形態では、圧力弁51は、弁本体52の円盤部521に弁パッキン54を装着した構成であり、図19に示すように、円盤部521には空気孔525、また、円盤部521と弁パッキン54との間には、横孔528で連通する溝部526を設けている。これにより、弁パッキン54と円盤部521との間に侵入した空気や水を横孔528、空気孔525を通じて上部に放出することができ、弁パッキン54の膨張によるシール性の低下や劣化、弁パッキン54の外れなどを防止できる。また、弁パッキン54と円盤部521の間が陰圧となって、弁パッキン54が円盤部521に吸着することも防止できる。
【0096】
とくに、本実施形態では、圧力弁51は、蓋体30に着脱可能な内蓋33に取り付けている。蓋体30は、圧力鍋本体20から取り外して水洗いすることができるから、圧力弁51には水が浸入しやすい。しかしながら、上記のとおり、弁本体52に横孔528、空気孔525を設けたことで、たとえ水が弁本体52と弁パッキン54との間に侵入しても、乾燥により水を追い出すことができ、また、調理時の加熱によっても水を蒸発させることができる。
【0097】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0098】
たとえば、上記実施形態では、圧力鍋10の種々の部位に関して図面を参照して説明しているが、すべての態様を具備する必要はないことは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0099】
10 調理器(圧力鍋)
20 調理器本体(圧力鍋本体)
30 蓋体
33 内蓋
40 蓋体開閉手段
41 操作部
42 ラッチレバー
43 付勢手段
44 スライド部材
50 加圧機構
51 圧力弁
60 加圧操作部
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