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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162829
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/28 20220101AFI20241114BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20241114BHJP
【FI】
B60R1/28 200
B60R1/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078749
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】井上 嘉亮
(57)【要約】
【課題】周辺監視用のバックカメラを後方監視にも用いつつ、違和感のない画像を表示させることができる。
【解決手段】本開示にかかる車両用制御装置は、車両の後部に設けられ広角レンズを有するカメラによる車両の後方画像からそれぞれ一部領域を切り出して、所定の表示装置に表示させる第1の画像と第2の画像とを生成する生成部と、を備え、生成部は、第1の画像を生成する場合には、カメラの取り付け高さにおいて車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある後方画像内の位置を、後方画像の垂直方向における切り出し中心と一致させるとともに、広角レンズによる後方画像の歪みを補正し、第2の画像を生成する場合には、カメラの取り付け高さにおいて車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある後方画像内の位置が、後方画像の垂直方向における切り出し中心より上方に位置することとなるよう一部領域を切り出す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設けられ広角レンズを有するカメラから、前記車両の後方画像が入力される入力部と、
前記後方画像からそれぞれ一部領域を切り出して、所定の表示装置に表示させる第1の画像と第2の画像とを生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、
前記第1の画像を生成する場合には、前記カメラの取り付け高さにおいて前記車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある前記後方画像内の位置を、前記後方画像の垂直方向における切り出し中心と一致させるとともに、前記広角レンズによる前記後方画像の歪みを補正し、
前記第2の画像を生成する場合には、前記カメラの取り付け高さにおいて前記車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある前記後方画像内の位置が、前記後方画像の垂直方向における切り出し中心より上方に位置することとなるよう前記一部領域を切り出す、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の画像を前記所定の表示装置に出力する出力部を更に備え、
前記入力部には、
前記車両が備えるシフトセンサからのシフト位置の検出結果、及び車輪速センサからの車輪速の検出結果が入力されるよう構成されており、
前記出力部は、
前記車両が所定速度以上で走行中の場合には前記第1の画像を出力し、
前記車両のシフト位置がリバースに変更されたこと、または、前記車両が前記所定速度未満となったことが検出された場合には前記第2の画像を出力する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記所定の表示装置は、電子インナミラーおよび車内モニタを含み、
所定画像の表示先を指定するスイッチを更に備え、
前記出力部は、
前記第1の画像を少なくとも前記電子インナミラーに出力し、前記スイッチが操作された場合には、前記第2の画像よりも優先的に前記第1の画像を前記車内モニタに出力する、
請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の後方確認用のルームミラー等に替えて、カメラ画像を表示可能な電子インナミラーが開発されている。また、車両の後方を含む周辺監視用に複数台のカメラが車両に搭載される場合がある。この場合、電子インナミラー用のカメラと周辺監視用のバックカメラとを併用する必要があり、コストが増大してしまう。
【0003】
例えば、1台のバックカメラの画角を切り替えて、至近距離での後方監視と、遠距離での後方監視とを行う技術がある(例えば特許文献1)。このような技術を適用することで、後方監視と周辺監視とで1台のカメラを共用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-301010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バックカメラ等の周辺監視用のカメラには通常、広角レンズが用いられている。このため、単にカメラの画角を切り替えただけでは、電子インナミラーに表示される画像が実際に肉眼で見た感覚とは異なり、運転者に違和感を与えてしまう。
【0006】
本開示は、周辺監視用のバックカメラを後方監視にも用いつつ、違和感のない画像を表示させることができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる車両用制御装置は、車両の後部に設けられ広角レンズを有するカメラから、前記車両の後方画像が入力される入力部と、前記後方画像からそれぞれ一部領域を切り出して、所定の表示装置に表示させる第1の画像と第2の画像とを生成する生成部と、を備え、前記生成部は、前記第1の画像を生成する場合には、前記カメラの取り付け高さにおいて前記車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある前記後方画像内の位置を、前記後方画像の垂直方向における切り出し中心と一致させるとともに、前記広角レンズによる前記後方画像の歪みを補正し、前記第2の画像を生成する場合には、前記カメラの取り付け高さにおいて前記車両の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある前記後方画像内の位置が、前記後方画像の垂直方向における切り出し中心より上方に位置することとなるよう前記一部領域を切り出す。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる車両用制御装置によれば、周辺監視用のバックカメラを後方監視にも用いつつ、違和感のない画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかるECUを備える車両の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態にかかるECUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかるECUが後方監視用の画像を生成する際にバックカメラの画角から切り出す画角の範囲について説明する図である。
図4図4は、実施形態にかかるECUが周辺監視用の画像および後方監視用の画像をそれぞれ生成する様子を示す図である。
図5図5は、実施形態にかかるECUによる画像生成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示にかかる車両用制御装置の実施形態について説明する。
【0011】
(ECUの構成例)
図1は、実施形態にかかるECU(Electronic Control Unit)20を備える車両10の構成の一例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態の車両10は、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、バックカメラ11B、電子インナミラー12M、車内モニタ12C、車輪速センサ13、舵角センサ14、シフトセンサ15、ターンスイッチ16、イグニッションスイッチ17、及びECU20を備える。
【0013】
ECU20と、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、バックカメラ11B、電子インナミラー12M、及び車内モニタ12Cとは、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)ケーブル等のディスプレイケーブルで接続されている。これにより、例えばフロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、バックカメラ11Bが撮影した画像等をデジタル信号に変換して伝送することができる。
【0014】
ECU20と、車輪速センサ13、舵角センサ14、シフトセンサ15、ターンスイッチ16、及びイグニッションスイッチ17とは、例えばCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークで接続されている。これにより、ECU20は、後述するように、例えば車輪速センサ13、シフトセンサ15、及びイグニッションスイッチ17等からの信号を受信することができる。
【0015】
フロントカメラ11Fは、例えばフロントバンパ等の車両10の前部に設けられ、車両10の前方画像を撮影する。サイドカメラ11Rは、運転席から見て例えば右側のドアミラー等の車両10の右側部に設けられ、車両10の右側方画像を撮影する。サイドカメラ11Lは、運転席から見て例えば左側のドアミラー等の車両10の左側部に設けられ、車両10の左側方画像を撮影する。バックカメラ11Bは、例えばリヤバンパ等の車両10の後部に設けられ、車両10の後方画像を撮影する。
【0016】
これらのフロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bが撮影した周辺画像は、例えば駐車または出車の際などに車両10の周辺監視に用いられる。このため、死角を極力減らすことを目的として、これらのフロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bには例えば魚眼レンズなどの広角レンズが用いられる。
【0017】
電子インナミラー12Mは、ルームミラー型の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等であり、例えば車室内のフロントガラス上端部中央付近に設けられている。電子インナミラー12Mは、例えばバックカメラ11Bにより撮影された車両10の後方画像等を表示することが可能に構成されている。
【0018】
車内モニタ12Cは、LCD等であり、例えばインストルメントパネル中央付近に設けられたセンターインフォメーションディスプレイ(CID:Center Information Display)等である。車内モニタ12Cは、例えばフロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bにより撮影された車両10の周辺画像を表示したり、これらの周辺画像を合成して得られる俯瞰画像を表示したりすることが可能に構成されている。車内モニタ12Cが、ナビゲーションシステムに供用されることにより、ナビゲーション画面を表示可能に構成されていてもよい。
【0019】
なお、電子インナミラー12Mと車内モニタ12Cとは所定の表示装置の一例である。
【0020】
車内モニタ12Cには、例えば車内モニタ12Cの表示を開始し、表示内容を変更し、あるいは、電子インナミラー12Mに加えて車内モニタ12Cを表示先に指定する等の各種操作に用いられる機能スイッチ12sが設けられている。
【0021】
車輪速センサ13は、例えばホール素子などを用いて構成され、車両10が備える車輪の回転量または単位時間当たりの回転数等から、車輪速を表す車輪速パルスを検出結果として出力する。
【0022】
舵角センサ14は、ステアリングホイールの角度を検出し、舵角信号を検出結果として出力する。
【0023】
シフトセンサ15は、例えば変位センサ等を含んで構成され、車両10の変速操作を行うためのレバー、アーム、またはボタン等の位置を検出し、シフト位置を表す信号を検出結果として出力する。
【0024】
ターンスイッチ16は、車両10の右左折等の進路変更の際に方向指示灯を点滅させるためのレバー、アーム、またはボタン等であり、これらの操作が行われると方向指示灯を点灯させるための制御信号を出力する。
【0025】
イグニッションスイッチ17は、エンジンもしくはモータ並びに電気系統を始動させるスイッチであり、エンジンキーによりキーシリンダが回転され、または、ボタンが押下されること等により作動する。イグニッションスイッチ17は、スイッチ操作が行われるとエンジン等を始動させるための制御信号を出力する。
【0026】
ECU20は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成され、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11B等から取得した周辺画像から各種加工を施した画像を生成し、電子インナミラー12M及び車内モニタ12Cに適宜出力する。このとき、ECU20は、例えばイグニッションスイッチ17からの信号に基づいて画像の加工等を開始し、また、車輪速センサ13及びシフトセンサ15からの信号に基づいて、画像の加工内容および出力先を変更する。
【0027】
このように、ECU20は、各種の周辺画像を加工して電子インナミラー12M及び車内モニタ12Cに出力する車両用制御装置として構成されている。
【0028】
なお、ECU20が、カメラECU及び表示ECU等の複数のECUから構成されていてもよい。カメラECUは、例えばフロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11B等を制御し、これらから取得した周辺画像に対して各種加工を施す。表示ECUは、電子インナミラー12M及び車内モニタ12Cを制御して、カメラECUにより加工された画像を含む各種情報を、これらの電子インナミラー12M及び車内モニタ12Cに表示させる。
【0029】
また、ECU20が、各種センサからの信号を駆動ECU及びブレーキECU等の他のECUを介して取得してもよい。駆動ECUは、エンジンまたはモータ等の駆動源を制御して、駆動源の出力を調整し、また、車両10の変速を行う。ブレーキECUは、例えば車輪速センサ13の車速パルスをカウントすることによって車両10の車速を求め、また、各車輪に設けられたブレーキによって駆動輪を含む車輪に制動をかける。
【0030】
図2は、実施形態にかかるECU20の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、ECU20は、機能構成として、入力部21、判定部22、生成部23、出力部24、及び記憶部25を備える。これらの機能部は、例えばECU20が備える図示しないCPUが、ROM等に格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行することで実現される。
【0031】
入力部21は、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bから、上述のディスプレイケーブル等を介して、これらにより撮影された周辺画像を取得する。また、入力部21は、車輪速センサ13、シフトセンサ15、及びイグニッションスイッチ17から、上述の車載ネットワーク等を介して、車輪速の検出結果、シフト位置の検出結果、及びエンジン等の始動開始の制御信号をそれぞれ取得する。また、入力部21は、機能スイッチ12sによる画像の出力先指定操作が行われると、機能スイッチ12sから車内モニタ12Cの本体を介して、出力先指定操作が行われたことを示す制御信号を取得する。
【0032】
判定部22は、車輪速センサ13の検出結果に基づいて、そのときの車両10の速度が所定速度未満であるか否かを判定する。判定部22が判定に用いる車両10の上記所定速度は、例えば10km/h~15km/h未満のごく低速とすることができる。
【0033】
また、判定部22は、シフトセンサ15の検出結果に基づいて、車両10のシフト位置がリバースとなっているか否かを判定する。また、判定部22は、イグニッションスイッチ17によって車両10のエンジンの始動が開始されたか否かを判定する。また、判定部22は、車内モニタ12Cに設けられた機能スイッチ12sによって画像の出力先を指定する操作が行われたか否かを判定する。
【0034】
生成部23は、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bが撮影した画像に基づいて、車両10の周辺監視用の画像、後方監視用の画像、及び俯瞰画像等を生成する。
【0035】
第2の画像としての周辺監視用の画像は、上述のように、例えば駐車または出車の際などに、車両10の周囲に存在する障害物または歩行者等、車両10の周辺の様子を運転者に示すための画像である。俯瞰画像は、自車アイコンを中心に置く車両10の周囲360°を示す合成画像であり、例えば駐車または出車の際の運転支援等に用いられる。第1の画像としての後方監視用の画像は、例えば車両10が通常走行を行っている際に、後続車等を含む車両10の後方の様子を運転者に示すための画像である。
【0036】
生成部23は、判定部22が判定した車両10の各種状態に応じて適宜、生成すべき画像を決定する。
【0037】
より具体的には、生成部23は、車両10のエンジンの始動が開始されると、例えば後方監視用の画像を生成する。また、生成部23は、車両10の速度が所定速度未満の場合、または、シフト位置がリバースとなっている場合等には、例えば周辺監視用の画像を生成する。車内モニタ12Cの機能スイッチ12sによって駐車または出車の支援制御が開始された場合等には、生成部23が、周辺監視用の画像に加えて俯瞰画像等を生成してもよい。
【0038】
出力部24は、生成部23が生成した周辺監視用の画像、後方監視用の画像、及び俯瞰画像等を、上述のディスプレイケーブル等を介して適宜、電子インナミラー12Mまたは車内モニタ12Cに出力する。このとき、周辺監視用の画像および俯瞰画像は、例えば車内モニタ12Cに出力される。また、後方監視用の画像は、原則として電子インナミラー12Mに出力される。ただし、車内モニタ12Cの機能スイッチ12s等によって、画像の表示先を指定する操作が行われた場合には、後方監視用の画像が、電子インナミラー12Mに加えて車内モニタ12Cに出力されてもよい。
【0039】
ECU20の出力部24から出力された各種画像は、車両10の時々の状況に即して、電子インナミラー12Mまたは車内モニタ12Cに表示される。
【0040】
記憶部25は、ECU20の各種機能の実現に用いられる制御パラメータ及び制御プログラムを記憶する。記憶部25が、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bから取得した周辺画像を記憶していてもよい。また、記憶部25が、生成部23により生成された周辺監視用の画像、後方監視用の画像、及び俯瞰画像等を記憶していてもよい。
【0041】
(ECUの機能例)
次に、図3及び図4を用いて、実施形態のECU20の詳細の機能例について説明する。
【0042】
図3は、実施形態にかかるECU20が後方監視用の画像を生成する際にバックカメラ11Bの画角から切り出す画角の範囲について説明する図である。より詳細には、図3(a)は車両10の上面から見た切り出し画角を示し、図3(b)は車両10の側面から見た切り出し画角を示している。
【0043】
図3に示すように、バックカメラ11Bは、例えば車両10のリヤバンパにおける、車両10の左右端の中央部分であって、画角を若干下方に向けて取り付けられている。バックカメラ11Bを含む周辺監視用のカメラには、上述のように、例えば広角レンズが用いられている。このため、バックカメラ11Bにより撮影される車両10の後方画像を含めた周辺画像には、例えばヒトの視野よりも広い範囲が含まれている。
【0044】
図3(a)に示すように、バックカメラ11Bの水平方向の画角VAhは例えば190°程度であり、バックカメラ11Bの光軸VXは、水平方向において、車両10の左右端を結ぶ線に対して垂直な線上を車両10の後方に向かって延びている。
【0045】
図3(b)に示すように、バックカメラ11Bの垂直方向の画角VAvは例えば160°程度であり、バックカメラ11Bの光軸VXは、垂直方向において、バックカメラ11Bの取り付け高さにおいて車両10の前後端を結ぶ線上の斜め下方に向けられている。
【0046】
これに対して、後方監視用の画像を生成する際には、ECU20の生成部23は、上記画角内から所定範囲の領域を切り出して、例えばヒトの安定注視視野と同程度の画角範囲内を捉えた画像とする。これにより、例えば電子インナミラー12Mに後方監視用画像を表示した場合、運転者が、あたかも通常の鏡を用いた光学ミラーを通して見るように、違和感なく後方監視を行うことができる。
【0047】
図3(a)に示すように、バックカメラ11Bの後方画像から所定範囲を切り出す際、生成部23は、一例として、切り出し範囲の水平方向の画角FAhを60°以上110°以下とし、切り出し範囲における中心軸FXを、水平方向においては、車両10の左右端を結ぶ線に対して垂直な線上に一致させる。
【0048】
図3(b)に示すように、生成部23は、切り出し範囲の垂直方向の画角FAvを45°以上70°以下とし、切り出し範囲における中心軸FXを、垂直方向においては、バックカメラ11Bの取り付け高さ位置において車両10の前後端を結ぶ線上に一致させる。
【0049】
なお、生成部23が、バックカメラ11Bの後方画像から周辺監視用の画像を生成する際にも、後方画像の画角内から所定範囲の領域を切り出してもよい。
【0050】
この場合、切り出し範囲の水平方向の画角および中心軸を、例えば後方監視用画像を生成するときの画角および中心軸と同様とすることができる。
【0051】
一方、切り出し範囲の垂直方向の画角を、例えば後方監視用画像を生成するときと同様、45°以上70°以下としつつ、周辺監視用画像の中心軸が、バックカメラ11Bの取り付け高さ位置において車両10の前後端を結ぶ線より下方に位置するよう、画像の切り出しを行うことができる。このとき、周辺監視用画像の中心軸を、例えばバックカメラ11Bの光軸VXと一致させてもよい。
【0052】
上記の場合、バックカメラ11Bの取り付け高さ位置において車両10の前後端を結ぶ線上にある後方画像内の位置が、切り出し範囲における垂直方向の中心位置より上方に位置することとなる。一例として、生成部23は、車両10の前後端を結ぶ線上の後方画像内の位置を、周辺監視用画像の上端部から10%以上20%以下の領域に配置することができる。
【0053】
図4は、実施形態にかかるECU20が周辺監視用の画像および後方監視用の画像をそれぞれ生成する様子を示す図である。
【0054】
図4(a)は、バックカメラ11Bにより撮影された車両10の後方画像の一例である。図4(a)の例では、後方画像に、路上を走行中の車両10後方の自車線と、後続車両が映る様子を示す。図4(a)に示すように、未処理の後方画像には、例えばヒトの視野よりも広い範囲が含まれるとともに、広角レンズによる歪みが生じている。
【0055】
図4(b)~図4(c)は、図4(a)の後方画像から周辺監視用画像が生成される様子を示している。
【0056】
図4(b)は、バックカメラ11Bによる後方画像における、周辺監視用の画像に用いる切り出し領域CAsを示している。
【0057】
図4(b)に示すように、ECU20の生成部23は、周辺監視用画像に用いる切り出し領域CAsとして、水平方向および垂直方向ともに、例えばバックカメラ11Bによる後方画像全体よりも狭い範囲を切り出す。また、車両10の前後端を結ぶ線上の後方画像内の位置が、周辺監視用画像の上端部から10%以上20%以下の領域に配置されることとなるよう、生成部23は、周辺監視用画像に用いる切り出し領域CAsとして、バックカメラ11Bによる後方画像中、下方寄りの領域を切り出す。
【0058】
図4(c)は、生成部23が、バックカメラ11Bの後方画像から生成した周辺監視用画像の一例である。図4(c)に示すように、図4(b)の切り出し領域CAsが、そのまま周辺監視用画像に用いられている。
【0059】
図4(d)~図4(f)は、図4(a)の後方画像から後方監視用画像が生成される様子を示している。
【0060】
図4(d)は、バックカメラ11Bによる後方画像における、後方監視用の画像に用いる切り出し領域CAbを示している。
【0061】
図4(d)に示すように、生成部23は、後方監視用画像に用いる切り出し領域CAbとして、水平方向および垂直方向ともに、例えばバックカメラ11Bによる後方画像全体よりも狭い範囲を切り出す。また、車両10の前後端を結ぶ線上の後方画像内の位置が、後方監視用画像の垂直方向の中心位置と一致することとなるよう、生成部23は、後方監視用画像に用いる切り出し領域CAbとして、バックカメラ11Bによる後方画像中、上方寄りの領域を切り出す。
【0062】
図4(e)は、生成部23が、後方監視用画像に用いる切り出し領域CAbにおける広角レンズによる歪みを補正する様子を示している。
【0063】
図4(e)に示すように、生成部23は、例えばワーピング等の画像処理技術を用いて、切り出し領域CAbにおける画像の歪みを補正する。例えばワーピング処理により画像の歪みを補正する場合には、生成部23は、切り出し領域CAbの画像をメッシュ状に分割し、メッシュの各交点に存在する複数の特徴点FPをそれぞれ所定の座標に移動させる。このとき、個々の特徴点FPの移動距離を適宜異ならせることで、切り出し領域CAbにおける画像の歪みが補正される。
【0064】
図4(f)は、生成部23が、バックカメラ11Bの後方画像から生成した後方監視用画像の一例である。図4(f)に示すように、図4(c)の切り出し領域CAbの範囲が歪み補正された状態で、後方監視用画像が生成される。
【0065】
上述のように、例えば車輪速センサ13の検出結果から車両10が所定の速度以上で走行中であると判定部22が判定した場合等には、生成部23は、例えば図4(f)等に示す後方監視用画像を生成し、出力部24は、それを電子インナミラー12Mに出力して表示させる。ただし、例えば車内モニタ12Cの機能スイッチ12s等により、表示先を指定する操作が行われた場合には、出力部24は、生成部23が生成した後方監視用画像を車内モニタ12Cに出力して表示させてもよい。
【0066】
また、例えば車輪速センサ13の検出結果から車両10が所定の速度未満に減速したと判定部22が判定した場合、あるいは、シフトセンサ15の検出結果から車両10のシフト位置がリバースに切り替えられたと判定部22が判定した場合等には、生成部23は、例えば図4(c)等に示す周辺監視用画像を生成し、出力部24は、それを車内モニタ12Cに出力して表示させる。
【0067】
(ECUの処理例)
次に、図5を用いて、実施形態のECU20による処理例について説明する。図5は、実施形態にかかるECU20による画像生成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0068】
図5に示すように、ECU20の入力部21は、イグニッションスイッチ17からエンジン等の始動を示す信号を取得し、判定部22が、イグニッションがオンされたものと判定する(ステップS101)。これにより、ECU20による画像生成処理が開始される。
【0069】
すなわち、入力部21は、フロントカメラ11F、サイドカメラ11R,11L、及びバックカメラ11Bが撮影した周辺画像の取得を開始する(ステップS102)。
【0070】
また、判定部22は、入力部21に入力されたシフトセンサ15の検出結果から、車両10のシフト位置がリバースとなっているか否かを判定する(ステップS103)。車両10のシフト位置がリバースとなっていなかった場合(ステップS103:No)、判定部22は、入力部21に入力された車輪速センサ13の検出結果から、車両10の速度が所定速度未満であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0071】
車両10の速度が所定速度未満ではなかった場合(ステップS104:No)、生成部23は、バックカメラ11Bが撮影した後方画像から後方監視用画像を生成する(ステップS105)。すなわち、生成部23は、上述のように、バックカメラ11Bの後方画像から、後方監視用画像に用いる切り出し領域CAbを切り出し、切り出し領域CAbにおける画像の歪みを補正する。
【0072】
判定部22は、車内モニタ12Cに設けられた機能スイッチ12sから、画像の表示先を指定する操作を示す信号が入力部21に入力されていないかどうかを判定する(ステップS106)。
【0073】
表示先を指定する指示が行われていない場合には(ステップS106:No)、出力部24は、生成部23が生成した後方監視用画像を電子インナミラー12Mに出力する(ステップS107)。表示先を指定する指示が行われていた場合には(ステップS106:Yes)、出力部24は、生成部23が生成した後方監視用画像を、電子インナミラー12Mと車内モニタ12Cとの両方に出力する(ステップS108)。
【0074】
一方、判定部22が、車両10のシフト位置がリバースとなっていると判定した場合(ステップS103:Yes)、または、車両10の速度が所定速度未満であると判定した場合には(ステップS104:Yes)、生成部23は、バックカメラ11Bが撮影した後方画像から周辺監視用画像を生成する(ステップS109)。
【0075】
すなわち、生成部23は、上述のように、バックカメラ11Bの後方画像から、周辺監視用画像に用いる切り出し領域CAsを切り出して、周辺監視用画像を生成する。
【0076】
出力部24は、生成部23が生成した周辺監視用画像を車内モニタ12Cに出力する(ステップS110)。
【0077】
判定部22は、イグニッションスイッチ17からエンジン等の停止を示す信号が入力部21に入力されたか否かを判定する(ステップS111)。イグニッションがオンの状態が維持されている間(ステップS111:No)、イグニッションがオフされたものと判定されるまで(ステップS111:Yes)、ECU20は、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0078】
以上により、実施形態のECU20による画像生成処理が終了する。
【0079】
(概括)
近年、車両後部に取り付けたカメラの画像を電子インナミラーに表示して、運転者による後方監視を可能とする技術が用いられてきている。また、車両の後退時等に、車両後部に取り付けたカメラの映像を車内モニタに表示して、車両の駐車または出車等の運転支援が行われることがある。しかしながら、上記の場合、後方監視用のカメラと周辺監視用のカメラとを併設する必要があり、コストが増大してしまう。
【0080】
実施形態のECU20によれば、バックカメラ11Bの後方画像から一部領域を切り出して、電子インナミラー12Mに表示させる後方監視用の画像と、車内モニタ12Cに表示させる周辺監視用の画像とを生成する。このように、周辺監視用のバックカメラ11Bを後方監視にも用いることで、コストを削減することができる。
【0081】
実施形態のECU20によれば、後方監視用画像を生成する場合には、バックカメラ11Bの取り付け高さにおいて車両10の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある後方画像内の位置を、後方画像の垂直方向における切り出し中心と一致させる。このように、垂直方向において、バックカメラ11Bの光軸VXと、後方監視用画像における中心軸FXとをずらすことで、あたかもルームミラー等の光学ミラーを通して見るように後方監視を行うことができる。
【0082】
実施形態のECU20によれば、バックカメラ11Bの後方画像から後方監視用画像を生成する場合には、バックカメラ11Bの広角レンズによる後方画像の歪みを補正する。これにより、後方監視用画像に対する運転者の違和感をいっそう軽減することができる。
【0083】
実施形態のECU20によれば、バックカメラ11Bの後方画像から周辺監視用画像を生成する場合には、バックカメラ11Bの取り付け高さにおいて車両10の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある後方画像内の位置が、後方画像の垂直方向における切り出し中心より上方に位置することとなるよう、後方画像の一部領域を切り出す。これにより、例えば車両10の駐車または出車に際して車両10を後退させる場合などに、運転者が、車両10の後端部近傍の路面を含む後方を確認することが容易となる。
【0084】
実施形態のECU20によれば、後方監視用画像を生成する場合には、後方監視用画像における画角が、垂直方向において45°以上70°以下となり、水平方向において60°以上110°以下となるよう、後方画像の一部領域を切り出す。このように、後方監視用画像の画角をヒトの安定注視視野と合わせることで、運転者がより違和感なく後方確認を行うことができる。
【0085】
実施形態のECU20によれば、周辺監視用画像を生成する場合には、バックカメラ11Bの取り付け高さにおいて車両10の前後端を結ぶ線に対して水平な線上にある後方画像内の位置が、周辺監視用画像の上端部から10%以上20%以下の領域内に位置することとなるよう、後方画像の一部領域を切り出す。これにより、車両10の後退時等に、車両10の後端部近傍の路面を含む画像をより確実に表示することができる。
【0086】
実施形態のECU20によれば、車両10が所定速度以上で通常走行中(例えば前進走行中や後進走行中など)は後方監視用画像を生成し、車両10のシフト位置がリバースに変更されたこと、または、車両10が上記所定速度未満となったことが検出された場合には周辺監視用画像を生成する。このように、車両10の速度またはシフト位置等に応じて、後方監視用と周辺監視用とで生成画像を切り替えることにより、車両10の運転状況に即した画像を運転者に提示することができる。
【0087】
実施形態のECU20によれば、車内モニタ12Cに設けられた機能スイッチ12sが操作された場合には、後方監視用画像を電子インナミラー12Mに加えて車内モニタ12Cに出力する。このように、運転者等の要望に応じて画像の表示先を適宜指定することが可能に構成することで、運転者がより快適に運転をすることができる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、車内モニタ12Cに設けられた機能スイッチ12sが、後方監視用画像の表示先を指示する表示先指定機能を有することとした。しかし、後方監視用画像の表示先を指定するスイッチは、機能スイッチ12sに替えてあるいは加えて、例えばインストルメントパネルの他の部分、または電子インナミラー12M等の、運転者による操作が可能な車室内の他の位置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 車両
11B バックカメラ
11L,11R サイドカメラ
11F フロントカメラ
12C 車内モニタ
12M 電子インナミラー
12s 機能スイッチ
13 車輪速センサ
15 シフトセンサ
17 イグニッションスイッチ
20 ECU
21 入力部
22 判定部
23 生成部
24 出力部
25 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5