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2024-162844原料ガスの加熱器、および加熱器の異常診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162844
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】原料ガスの加熱器、および加熱器の異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C01B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078778
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】葛西 潤
(72)【発明者】
【氏名】中拂 博之
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】堂本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】北田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大記
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB03
(57)【要約】
【課題】ラジアントヒータの耐圧よりも加熱器内の圧力を高めることができるようにした加熱器を提供する。
【解決手段】加熱器は、原料ガスを反応器に供給するのに先立って原料ガスを加熱する。反応器は、原料ガスを用いて生成ガスを生成するように構成されている。加熱器は、ラジアントヒータ、および、さや管を備えている。ラジアントヒータは、燃料を燃焼させることによって生成される熱によって加熱器内を加熱するように構成されている。さや管は、加熱器内においてラジアントヒータを覆っている。さや管の内部の圧力は、加熱器内にあってさや管の外部の圧力よりも低く設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを反応器に供給するのに先立って前記原料ガスを加熱する加熱器であって、
前記反応器は、原料ガスを用いて生成ガスを生成するように構成され、
ラジアントヒータ、および、さや管を備え、
前記ラジアントヒータは、燃料を燃焼させることによって生成される熱によって前記加熱器内を加熱するように構成されており、
前記さや管は、前記加熱器内において前記ラジアントヒータを覆っており、
前記さや管の内部の圧力は、前記加熱器内にあって前記さや管の外部の圧力よりも低く設定されている原料ガスの加熱器。
【請求項2】
前記さや管の外周には、フィンが形成されている請求項1記載の原料ガスの加熱器。
【請求項3】
前記ラジアントヒータを複数備え、
複数の前記ラジアントヒータの出力は、下流の前記ラジアントヒータの出力が上流の前記ラジアントヒータの出力以下となる条件で、上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更されている請求項1記載の原料ガスの加熱器。
【請求項4】
当該加熱器の流路断面積は、下流の前記流路断面積が上流の前記流路断面積以下となる条件で、上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更されている請求項1記載の原料ガスの加熱器。
【請求項5】
請求項1記載の原料ガスの加熱器に適用され、
取得処理、および異常判定処理を実行するように構成され、
取得処理は、前記さや管と前記ラジアントヒータとの間の圧力の検出値を取得する処理であり、
前記異常判定処理は、前記検出値が上昇することに基づき前記さや管に異常が生じたと判定する処理である加熱器の異常診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の原料ガスの加熱器に適用され、
取得処理、および異常判定処理を実行するように構成され、
取得処理は、前記さや管と前記ラジアントヒータとの間の温度の検出値を取得する処理であり、
前記異常判定処理は、前記検出値が低下することに基づき前記さや管に異常が生じたと判定する処理である加熱器の異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスの加熱器、および加熱器の異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、触媒を介してメタン等の炭化水素ガスを熱分解させることによって、水素を取り出す装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-24997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化水素ガスを反応器において熱分解するうえでは、炭化水素ガスを反応器に供給するのに先立って加熱することが望ましい。炭化水素ガスの加熱には、ラジアントヒータを用いることが考えられる。一方、発明者は、反応器内の圧力を高圧状態とすることを検討した。その場合、ラジアントヒータの耐圧が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.原料ガスを反応器に供給するのに先立って前記原料ガスを加熱する加熱器であって、前記反応器は、原料ガスを用いて生成ガスを生成するように構成され、ラジアントヒータ、および、さや管を備え、前記ラジアントヒータは、燃料を燃焼させることによって生成される熱によって前記加熱器内を加熱するように構成されており、前記さや管は、前記加熱器内において前記ラジアントヒータを覆っており、前記さや管の内部の圧力は、前記加熱器内にあって前記さや管の外部の圧力よりも低く設定されている原料ガスの加熱器。
【0006】
上記構成では、ラジアントヒータがさや管によって覆われて且つ、さや管の内部の圧力を加熱器内におけるさや管の外部の圧力よりも低く設定した。これにより、ラジアントヒータの耐圧よりも加熱器内の圧力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態にかかる可燃性ガス生成システムの構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態にかかる加熱器の構成を示す断面図である。
図3】同実施形態にかかるラジアントヒータの構成を示す断面図である。
図4】同実施形態にかかる加熱器の構成を示す断面図である。
図5】同実施形態にかかる加熱器内の位置に応じたラジアントヒータの出力と各種温度との関係を例示するグラフである。
図6】同実施形態にかかる異常診断に関する処理の手順を示す流れ図である。
図7】同実施形態にかかるさや管の技術的意義を示すグラフである。
図8】第2の実施形態にかかる異常診断に関する処理の手順を示す流れ図である。
図9】第3の実施形態にかかる加熱器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「システム構成」
図1に、本実施形態にかかる燃焼ガスの生成システムを示す。同システムは、システムに供給されるメタンから水素を生成するシステムである。
【0009】
反応器10は、メタンを水素と炭素とに熱分解する装置である。反応器10には、触媒が設けられている。触媒は、一例として鉄である。触媒の状態は、たとえば、流動床の状態とされてもよい。反応器内の温度は、たとえば700~1000°Cであってもよい。また反応器10内の圧力は、たとえば数ata~数十ataであってもよい。
【0010】
反応器10からは、熱分解によって生じた水素と炭素と、メタンとが流出する。それら反応器10から流出する物質は、熱交換器12に流入する。熱交換器12は、システムに供給されたメタンに上記反応器10から流出した物質の熱を与えることによって、反応器10に供給されるメタンを加熱するように構成されている。
【0011】
熱交換器12によって加熱されたメタンは、加熱器20によってさらに加熱された後、反応器10に供給される。
「加熱器の構成」
図2に、加熱器20の構成を示す。図2に示すz軸方向は、一例として鉛直方向である。詳しくは、z軸の正方向は、鉛直上方向である。x軸方向およびy軸方向は、一例として水平方向である。本実施形態では、x軸の負の方向における端部にメタンの入口があって且つ、x軸の正の方向における端部に熱分解によって生成された物質の出口があることを想定している。
【0012】
加熱器20は、区隔壁22によって区画された空間内に、ラジアントヒータ30を備える。ラジアントヒータ30は、さや管24によって覆われることによって、加熱器20に供給されるメタンに触れないようになっている。さや管24は、金属製である。具体的には、さや管24の材料は、たとえば、オーステナイト系ステンレス鋼等の、ステンレス鋼であってもよい。またたとえば、さや管24の材料は、ニッケル基合金であってもよい。またたとえば、さや管24の材料は、オーステナイト系耐熱鋼であってもよい。またたとえば、さや管24の材料は、FeCrAl合金であってもよい。さや管24には、フィン26が設けられている。フィン26の材料は、さや管24の材料と同じであってよい。
【0013】
図3に、ラジアントヒータ30の構成を示す。ラジアントヒータ30は、ラジアントチューブ32によって外周が構成されている。ラジアントチューブ32は、一例としてSiCによって構成されてもよい。ラジアントチューブ32によって区画された空間内には、空気管34が設けられている。
【0014】
空気管34内には、燃料管38が設けられている。空気管34の内壁と燃料管38の外壁とによって区画される空間は、導入路36に連通している。導入路36から供給される空気は、空気管34の内壁と燃料管38の外壁とによって区画される空間へと流入する。
【0015】
燃料管38には、燃料であるメタンが供給される。燃料管38に供給されたメタンは、導入路36から供給される空気中の酸素による酸化反応によって、燃焼する。燃焼によって生じた排気は、ラジアントチューブ32の内壁と空気管34の外壁とによって区画される通路を介して排気通路40へと排出される。
【0016】
図4に、加熱器20内のラジアントヒータ30の配置を示す。
図4に示すように、ラジアントヒータ30は、x軸の方向に沿って、6個配置されている。また、ラジアントヒータ30は、y軸の方向に沿って、7個配置されている。
【0017】
さや管24の耐圧は、ラジアントヒータ30の耐圧よりも高く設定されている。そしてラジアントヒータ30とさや管24との間の圧力Pは、加熱器20内の圧力よりも低い圧力に設定されている。圧力Pは、大気圧相当であってもよい。なお、ラジアントヒータ30とさや管24との間に充填される物質の状態は、一例として気体の状態である。この気体は、一例として空気であってよい。また、この気体は、一例として、希ガスであってもよい。
【0018】
「制御装置について」
図1に戻り、制御装置60は、加熱器20内のメタンの温度を制御すべく、ラジアントヒータ30を操作する。制御装置60は、PU62および記憶装置64を備えている。PU62は、CPU、GPU、およびTPU等の少なくとも1つを備えるソフトウェア処理装置である。記憶装置64には、メタンの温度制御のための指令を規定するプログラムが記憶されている。
【0019】
制御装置60には、圧力センサ70によって検出される、さや管24とラジアントヒータ30との間の圧力Pが入力される。また、制御装置60には、温度センサ72によって検出される、さや管24とラジアントヒータ30との間の温度Tが入力される。
【0020】
「ヒータの出力制御」
図5は、加熱器20内の各種温度と、加熱器20内のx軸方向における位置との関係を示す。詳しくは、横軸は、x軸方向に沿って配置されている6個のラジアントヒータ30の位置を示す。ここで、最上流のラジアントヒータ30を「1」として最下流のラジアントヒータ30を「6」としている。左側の縦軸は、ラジアントヒータ30の表面温度Th、さや管24の表面温度Ts、およびメタンの温度Tmを示す。右の縦軸は、ラジアントヒータ30の出力Phを示す。
【0021】
図5の左側には、図2図4に例示した構成において、x軸の位置にかかわらず、ラジアントヒータ30の出力Phを一定とした場合を示す。図5の左側に示す例では、ラジアントヒータ30の表面温度Th、さや管24の表面温度Ts、およびメタンの温度Tmが下流に行くほど高くなっている。これは、次の理由による。加熱器20に流入したメタンは、ラジアントヒータ30の熱によって加熱される。詳しくは、ラジアントヒータ30の輻射熱によってさや管24が加熱される。そして対流による伝熱によってさや管24の熱がメタンに伝わる。これにより、メタンが加熱される。メタンの総受熱量は、加熱器20の下流に行くほど大きくなる。そのため、メタンの温度Tmは、下流に行くほど高くなる。
【0022】
メタンの温度Tmが高くなると、さや管24の表面温度Tsとメタンの温度Tmとの差が小さくなる。そのため、下流に配置されたさや管24ほど、放熱量が小さくなる。そのため、さや管24の表面温度Tsは、下流に行くほど高くなる。さや管24の表面温度Tsが高くなると、さや管24の表面温度Tsとラジアントヒータ30の表面温度Thとの差が小さくなる。そのため、下流に配置されたラジアントヒータ30ほど、放熱量が小さくなる。そのため、ラジアントヒータ30の表面温度Thは、下流に行くほど高くなる。
【0023】
さや管24は、メタルによって構成されていることから、たとえば1000°C以上の高温となると、メタンによる腐食が発生するおそれがある。
そこでPU62は、図5の右側に示すように、ラジアントヒータ30の出力Phを下流に行くほど小さくする。これにより、さや管24の表面温度Tsが過度に高くなることを抑制できる。
【0024】
「加熱器20の異常診断」
図6に、加熱器20の異常診断に関する処理の手順を示す。図6に示す処理は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0025】
図6に示す一連の処理において、PU62は、まず、圧力Pを取得する(S10)。次にPU62は、圧力Pが閾値Pth以上であるか否かを判定する(S12)。閾値Pthは、正常時におけるさや管24とラジアントヒータ30との間の圧力よりも高い圧力に設定されている。PU62は、閾値Pth以上であると判定する場合(S12:YES)、さや管24のシール異常であると判定する(S14)。すなわち、さや管24のシール性が正常であるなら、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間の圧力は、加熱器20内の圧力よりも低い。ここで、さや管24のシール性に異常が生じると、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間と加熱器20とさや管24との間の空間とが連通状態となる。これにより、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間の圧力が閾値Pth以上に上昇する。
【0026】
なお、PU62は、S14の処理を完了する場合と、S12の処理において否定判定する場合と、には、図6に示した一連の処理を一旦終了する。ちなみに、PU62は、S14の処理を実行する場合、その旨を報知する処理をすることが望ましい。
【0027】
「本実施形態の作用および効果」
(1-1)ラジアントヒータ30をさや管24で覆うことによって、ラジアントヒータ30が加熱器20内の高圧に浸されることを抑制できる。そのため、ラジアントヒータ30が耐圧を超える環境下に置かれることを抑制できる。
【0028】
(1-2)さや管24の表面にフィン26を設けた。これにより、さや管24の表面積を増大させることができる。そのため、さや管24からメタンへの放熱を促進できる。
図7の左側に、図5の左側のグラフを記載して且つ、図7の右側にさや管24にフィン26を設けなかった場合を示す。
【0029】
図7に示すように、さや管24にフィン26を設けない場合、設ける場合と比較して、さや管24の表面温度Tsが過度に高くなる。
(1-3)PU62は、下流に位置するラジアントヒータ30ほど、その出力を小さくした。換言すれば、PU62は、ラジアントヒータ30の出力を、x軸方向に沿って単調強減少させた。これにより、下流のさや管24の表面温度Tsが過度に高くなることを抑制できる。そのため、さや管24がメタンによって腐食することを抑制できる。
【0030】
(1-4)PU62は、圧力Pの上昇に基づきさや管24のシール性の異常を判定した。これにより、異常が生じた場合に、異常に対処することが可能となる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図8に、本実施形態にかかる異常診断に関する処理の手順を示す。図8に示す処理は、記憶装置64に記憶されたプログラムをPU62がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0032】
図8に示す一連の処理において、PU62は、まず、温度Tを取得する(S20)。次にPU62は、温度Tが閾値Tth以下であるか否かを判定する(S22)。閾値Tthは、正常時におけるさや管24とラジアントヒータ30との間の温度よりも低い温度に設定されている。PU62は、閾値Tth以下であると判定する場合(S22:YES)、さや管24のシール異常であると判定する(S24)。すなわち、さや管24のシール性が正常であるなら、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間は密閉されていることから、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間の温度は、加熱器20とさや管24との間の空間の温度よりも高い。ここで、さや管24のシール性に異常が生じると、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間と加熱器20とさや管24との間の空間とが連通状態となる。これにより、さや管24とラジアントヒータ30との間の空間の温度が閾値Tth以下に低下する。
【0033】
なお、PU62は、S24の処理を完了する場合と、S22の処理において否定判定する場合と、には、図6に示した一連の処理を一旦終了する。ちなみに、PU62は、S24の処理を実行する場合、その旨を報知する処理をすることが望ましい。
【0034】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図9に、本実施形態にかかる加熱器20の構成を示す。なお、図9において、図2等に示した部材に対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
図9に示すように、加熱器20は、下流側におけるy軸方向の長さが上流側におけるy軸方向の長さ以下となる条件で、x軸方向の位置に応じてy軸方向の長さが変更されている。本実施形態では、z軸方向の長さについては、一例として、一定としている。したがって、加熱器20の流路断面積は、下流側における流路断面積が上流側における流路断面積以下となる条件で、x軸方向の位置に応じて流路断面積が変更されている。
【0036】
これにより、下流に行くほど、メタンの流速が大きくなる。これにより、下流に行くほどさや管24とメタンとの温度差が小さくなることに起因した熱伝達率の低下を補償する。このため、上流と下流とでラジアントヒータ30の出力Phを同一とすることも可能となる。したがって、加熱器20に要求される出力を最小数のラジアントヒータ30によって満たすことが可能となる。
【0037】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、下記「付記」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「付記」の欄に記載した開示の番号毎に、対応関係を示している。[1]原料ガスは、メタンに対応する。生成ガスは、水素に対応する。[2]図2に示すフィン26に対応する。[3]図5の右側に対応する。[4]図9に対応する。[5]取得処理は、S10の処理に対応する。異常判定処理は、S12,S14の処理に対応する。異常診断装置は、制御装置60に対応する。[6]取得処理は、S20の処理に対応する。異常判定処理は、S22,S24の処理に対応する。異常診断装置は、制御装置60に対応する。
【0038】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
「さや管の配置について」
図2には、さや管24が天井から床に向けて延びて且つ、床に接触しない例を示したが、これに限らない。たとえば、さや管24が床から天井に向かって延びて且つ、天井に接触しない構成であってもよい。またたとえば、さや管24は、天井および床の双方に接触する構成であってもよい。
【0040】
・さや管24が、鉛直方向に沿って延びるように配置されることは必須ではない。
・さや管24の数は、図4および図9に例示した数に限らない。たとえば、図9に代えて、上流から下流に行くにつれてさや管24の数を単調強減少させてもよい。
【0041】
「フィン26について」
・たとえば、フィン26の長さを、加熱器20における上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更してもよい。ここで、下流のフィン26の長さが上流のフィン26の長さ以上となる条件を付けることにより、下流のさや管24の過熱を抑制できる。なお、さや管24の表面積を、下流の表面積が上流の表面積以上となる条件で、加熱器20における上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更する手法としては、これに限らない。たとえば、1つのさや管24に設けられるフィン26の密度を、加熱器20における上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更してもよい。
・さや管24がフィン26を備えることは必須ではない。
【0042】
「ヒータの出力について」
図5の右側には、下流のラジアントヒータ30の出力が上流のラジアントヒータ30の出力よりも小さくなるように設定した。換言すれば、ラジアントヒータ30の出力を上流から下流に行くにつれて単調強減少するように設定した。これに代えて、たとえば、最上流のラジアントヒータ30の出力とその隣のラジアントヒータ30の出力とを同一とするなどしてもよい。要は、下流のラジアントヒータ30の出力が上流のラジアントヒータ30の出力以下となる条件で、ラジアントヒータ30の出力を上流から下流に進む方向の位置に応じて変更すればよい。
【0043】
図4に例示したように、流路断面積を上流から下流へと進む方向における位置にかかわらず一定とする構成において、ラジアントヒータ30の出力を上流と下流とで変更することは必須ではない。すなわち、たとえば上記「フィン26について」の欄に記載したように、フィン26の長さおよび密度の少なくとも一方を上流と下流とで変更することによって、ラジアントヒータ30の出力を一定としてもよい。
【0044】
なお、フィン26の長さおよび密度の少なくとも一方を上流と下流とで変更しつつ、下流のラジアントヒータ30の出力と上流のラジアントヒータ30の出力とを異ならせてもよい。
【0045】
「加熱器20の流路断面積について」
図9においては、流路断面積が、下流へ行くにつれて単調減少して且つ、単調強減少する箇所を設けたが、これに限らない。たとえば、下流に行くにつれて常時単調強減少する構成であってもよい。
【0046】
図9においては、流路断面積の水平方向における長さを上流から下流に進むにつれて変更したが、これに限らない。たとえば、流路断面積の垂直方向における長さを上流から下流に進むにつれて変更してもよい。またたとえば、流路断面積の水平方向における長さと、流路断面積の垂直方向における長さと、の双方を、上流から下流に進むにつれて変更してもよい。
【0047】
・流路断面積が、下流に行くにつれて単調減少することは必須ではない。たとえば、フィン26の長さおよび密度の少なくとも一方を上流と下流とで変更することと、下流のラジアントヒータ30の出力と上流のラジアントヒータ30の出力とを異ならせることとの少なくとも1つを採用して且つ、下流に行くにしたがって流路断面積を単調強増加する構成とすることも可能である。
【0048】
「異常判定処理について」
図6には、圧力Pが閾値Pth以上となることで、ラジアントヒータ30とさや管24との間の圧力Pが上昇したとして、異常である旨判定したが、これに限らない。たとえば、圧力Pの時系列データに基づき、圧力Pの上昇の有無を判定してもよい。
【0049】
図8には、温度Tが閾値Tth以下となることで、ラジアントヒータ30とさや管24との間の温度Tが低下したとして、異常である旨判定したが、これに限らない。たとえば、温度Tの時系列データに基づき、温度Tの低下の有無を判定してもよい。
【0050】
「原料ガスについて」
・原料ガスとしての炭化水素は、メタンに限らない。たとえばプロパンであってもよい。その場合であっても、生成ガスとしての水素を生成できる。また、原料ガスは、炭化水素にも限らない。その際、反応器は、原料ガスを熱分解する装置に限らず、原料ガスから生成ガスを生成する装置であればよい。ここで、生成ガスは、生成対象とされるガスであって、原料ガスとは構造式が異なるガスである。
【0051】
「異常診断装置について」
・異常診断装置としては、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行される処理の少なくとも一部を実行するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、異常診断装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成を備える処理回路を含んでいればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶する記憶装置等のプログラム格納装置とを備える処理回路。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える処理回路。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える処理回路。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置は、複数であってもよい。また、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0052】
<付記>
1.原料ガスを反応器に供給するのに先立って前記原料ガスを加熱する加熱器であって、前記反応器は、原料ガスを用いて生成ガスを生成するように構成され、ラジアントヒータ、および、さや管を備え、前記ラジアントヒータは、燃料を燃焼させることによって生成される熱によって前記加熱器内を加熱するように構成されており、前記さや管は、前記加熱器内において前記ラジアントヒータを覆っており、前記さや管の内部の圧力は、前記加熱器内にあって前記さや管の外部の圧力よりも低く設定されている原料ガスの加熱器。
【0053】
上記構成では、ラジアントヒータがさや管によって覆われて且つ、さや管の内部の圧力を加熱器内におけるさや管の外部の圧力よりも低く設定した。これにより、ラジアントヒータの耐圧よりも加熱器内の圧力を高めることができる。
【0054】
2.前記さや管の外周には、フィンが形成されている上記1記載の原料ガスの加熱器。
上記構成では、さや管の外周にフィンを形成することにより、フィンを設けない場合と比較して、さや管の表面積を増大させることができる。したがって、さや管から原料ガスへの放熱を促進できる。
【0055】
3.前記ラジアントヒータを複数備え、複数の前記ラジアントヒータの出力は、下流の前記ラジアントヒータの出力が上流の前記ラジアントヒータの出力以下となる条件で、上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更されている上記1または2記載の原料ガスの加熱器。
【0056】
上記構成では、複数のラジアントヒータの出力を一定とする場合と比較して、下流のさや管の表面温度が過度に高くなることを抑制できる。
4.当該加熱器の流路断面積は、下流の前記流路断面積が上流の前記流路断面積以下となる条件で、上流から下流へと進む方向における位置に応じて変更されている上記1~3のいずれか1つに記載の原料ガスの加熱器。
【0057】
上記構成では、流路断面積を一定とする場合と比較して、下流における原料ガスの流速を大きくすることができる。そのため、流路断面積を一定とする場合と比較して、下流におけるさや管から原料ガスへの熱伝達率を高めることができる。
【0058】
5.上記1~4のいずれか1つに記載の原料ガスの加熱器に適用され、取得処理、および異常判定処理を実行するように構成され、取得処理は、前記さや管と前記ラジアントヒータとの間の圧力の検出値を取得する処理であり、前記異常判定処理は、前記検出値が上昇することに基づき前記さや管に異常が生じたと判定する処理である加熱器の異常診断装置。
【0059】
上記構成では、さや管の内部の圧力を外部の圧力よりも低く設定しているため、さや管のシール性に異常が生じると、さや管の内部の圧力が外部の圧力に向けて上昇する。そのため、上記構成では、圧力の上昇に基づき異常の有無を判定できる。
【0060】
6.上記1~4のいずれか1つに記載の原料ガスの加熱器に適用され、取得処理、および異常判定処理を実行するように構成され、取得処理は、前記さや管と前記ラジアントヒータとの間の温度の検出値を取得する処理であり、前記異常判定処理は、前記検出値が低下することに基づき前記さや管に異常が生じたと判定する処理である加熱器の異常診断装置。
【0061】
上記構成では、さや管の内部の温度が外部の温度よりも高くなる傾向があるため、さや管のシール性に異常が生じると、さや管の内部の温度が低下する。そのため、上記構成では、温度の低下に基づき異常の有無を判定できる。
【符号の説明】
【0062】
10…反応器
12…熱交換器
20…加熱器
22…区隔壁
24…さや管
26…フィン
30…ラジアントヒータ
60…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9