(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162846
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20241114BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/15 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078781
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】有木 大悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 廣人
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081AB01
3L081FA01
3L081HA08
3L081HB01
3L081HB02
3L211BA34
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】一対のフィンを中立位置に位置させたときの圧力損失を低減する。
【解決手段】空調用レジスタ10は、リテーナ11における通風路21のうち、吹出口16よりも上流に配置された下流フィン31,41(一対のフィン)と、両下流フィン31,41を中立位置及び傾斜位置の間で作動させる作動機構M1とを備える。両下流フィン31,41により変更される流れ方向のうち、両下流フィン31,41間に流入する直前の空調用空気A1の流れ方向を流入方向とする。作動機構M1は、中立位置では、両下流フィン31,41を、流入方向に沿って延びる状態で、同流入方向に対し直交する方向(図の上下方向)に対向させる。作動機構M1は、傾斜位置では、両下流フィン31,41を、中立位置から上流へ離れた箇所と下流へ離れた箇所とにそれぞれ位置するように移動させ、かつそれぞれ下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の流れ方向の下流端に吹出口を有する通風路が形成されたリテーナと、前記通風路のうち、前記吹出口よりも上流に配置された一対のフィンと、を備え、
両フィンにより変更される前記流れ方向のうち、両フィン間に流入する直前の前記空調用空気の前記流れ方向を流入方向とし、前記空調用空気を前記吹出口から前記流入方向に沿う方向へ吹き出させるための両フィンの位置を中立位置とし、前記空調用空気を前記吹出口から前記流入方向に対し傾斜する方向へ吹き出させるための両フィンの位置を傾斜位置とした場合、
両フィンを、前記中立位置及び前記傾斜位置の間で作動させる作動機構が設けられ、
前記作動機構は、前記中立位置では、両フィンを、前記流入方向に沿って延びる状態で前記流入方向に対し直交する方向に対向させ、かつ前記傾斜位置では、両フィンを、前記中立位置から上流へ離れた箇所と下流へ離れた箇所とにそれぞれ位置するように移動させ、かつそれぞれ下流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜させる空調用レジスタ。
【請求項2】
各フィンは、長手方向に延びる板状部と、前記板状部から前記長手方向へ延びる上流軸と、前記上流軸よりも下流で前記板状部から前記長手方向へ延びる下流軸と、を備え、
前記作動機構は、前記上流軸が回転及び移動可能に係合される上流カム溝と、前記下流軸が回転及び移動可能に係合される下流カム溝と、を備え、
両フィンは、前記作動機構により、前記上流カム溝における前記上流軸の位置が変更され、かつ前記下流カム溝における前記下流軸の位置が変更されることで、前記中立位置及び前記傾斜位置の間で作動させられる請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記上流カム溝は、前記流入方向に沿って延びており、
前記下流カム溝のうち、前記流入方向における中間部よりも上流部分は、上流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜し、
前記下流カム溝のうち、前記流入方向における前記中間部よりも下流部分は、下流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜し、
前記中立位置では、前記作動機構により、前記下流軸が前記下流カム溝の前記中間部に位置させられる請求項2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
各フィンは、長手方向に延びる板状部を備え、
前記吹出口は、それぞれ前記長手方向に延び、かつ互いに対向する一対の辺部を有し、
前記リテーナの前記吹出口よりも上流であって、前記吹出口に対し、両辺部が対向する方向の外方には、それぞれ収容室が設けられ、
両フィンが前記中立位置に位置するときには、前記フィン毎の前記板状部の厚み方向における前記フィンの少なくとも一部が前記収容室に収容される請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記作動機構は、前記長手方向へ延びる支軸部により回転可能に支持されるリンク部材をさらに備え、
前記リンク部材は、一方の前記フィンにおける前記下流軸と、他方の前記フィンにおける前記下流軸とに対し、動力伝達可能に連結されている請求項3に記載の空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて吹出口から吹き出される空調用空気の向きをフィンにより変更等する空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、空調装置から送られてきて吹出口から車室内に吹き出される空調用空気の向きを変更等するための空調用レジスタが組み込まれている。
この空調用レジスタの一形態として、空調用空気の通風路を有するリテーナと、通風路に配置された一対のフィンとを備えるものが、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。通風路は、空調用空気の流れ方向の下流端に吹出口を有する。一対のフィンは、通風路のうち、吹出口よりも上流に配置される。
【0003】
ここで、両フィンにより変更される流れ方向のうち、両フィン間に流入する直前の空調用空気の流れ方向を流入方向とする。空調用空気を吹出口から上記流入方向に沿う方向へ吹き出させるための両フィンの位置を、中立位置とする。空調用空気を吹出口から上記流入方向に対し傾斜する方向へ吹き出させるための両フィンの位置を、傾斜位置とする。
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2の空調用レジスタ(以下、従来の空調用レジスタという)における両フィンは、下流ほど通風路の内方に位置するように流入方向に対し常に傾斜する傾斜部をそれぞれ有している。
【0005】
上記従来の空調用レジスタには、両フィンを、上記中立位置及び上記傾斜位置の間で作動させる作動機構が設けられている。
両傾斜部は、中立位置では、作動機構により、上記流入方向に対し直交する方向に対向させられる。このときには、各フィンの近くを流れる空調用空気は、フィン毎の傾斜部に沿って流れることで、通風路の内方へ流れ方向を変えられる。両傾斜部は、流入方向における下流ほど両傾斜部の間隔が狭くなるように、互いに反対方向に傾斜している。そのため、空調用空気は、両フィン間の中央部に収束されながら両傾斜部間を通過する。
【0006】
一方の傾斜部は、上記傾斜位置では、上記中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。他方のフィンは、上記傾斜位置では、中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。
【0007】
上記のように下流側に位置するフィンの近くを流れる空調用空気は、そのフィンの傾斜部に沿って流れることで、通風路の内方へ流れ方向を変えられる。また、上流側に位置するフィンの近くを流れる空調用空気は、そのフィンの傾斜部に沿って流れることで、通風路の内方へ流れ方向を変えられる。この空調用空気は、下流側に位置するフィンの傾斜部に当り、その傾斜部に沿って流れることで流れ方向を変えられる。
【0008】
従って、上流側に位置するフィンの傾斜部によって流れ方向を変えられた空調用空気が加わる分、下流側に位置するフィンの傾斜部に沿って流れた後に吹出口から吹き出される空調用空気の量が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-322981号公報
【特許文献2】特開2022-152633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記従来の空調用レジスタでは、フィン毎の傾斜部が、傾斜位置にとどまらず中立位置でも、下流ほど通風路の内方に位置するように流入方向に対し、常に傾斜している。両傾斜部が流入方向に対し直交する方向に対向する中立位置では、両傾斜部の間隔が下流ほど狭くなるため、圧力損失が増大する。
【0011】
従って、中立位置での圧力損失を低減して空調性能の向上を図る点で、上記従来の空調用レジスタには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための空調用レジスタの各態様を記載する。
[態様1]空調用空気の流れ方向の下流端に吹出口を有する通風路が形成されたリテーナと、前記通風路のうち、前記吹出口よりも上流に配置された一対のフィンと、を備え、両フィンにより変更される前記流れ方向のうち、両フィン間に流入する直前の前記空調用空気の前記流れ方向を流入方向とし、前記空調用空気を前記吹出口から前記流入方向に沿う方向へ吹き出させるための両フィンの位置を中立位置とし、前記空調用空気を前記吹出口から前記流入方向に対し傾斜する方向へ吹き出させるための両フィンの位置を傾斜位置とした場合、両フィンを、前記中立位置及び前記傾斜位置の間で作動させる作動機構が設けられ、前記作動機構は、前記中立位置では、両フィンを、前記流入方向に沿って延びる状態で前記流入方向に対し直交する方向に対向させ、かつ前記傾斜位置では、両フィンを、前記中立位置から上流へ離れた箇所と下流へ離れた箇所とにそれぞれ位置するように移動させ、かつそれぞれ下流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜させる空調用レジスタ。
【0013】
上記の構成によれば、両フィンは、中立位置では作動機構により、流入方向に沿って延びる姿勢で、同流入方向に対し直交する方向に対向させられる。各フィンの近くの空調用空気は、そのフィンに沿って流れることで、流れ方向として、流入方向に沿う方向を維持する。空調用空気は、吹出口から、流入方向に沿う方向へ吹き出される。
【0014】
また、上記中立位置では、両フィンの間隔は、上記流れ方向におけるどこの箇所でも一定又は略一定である。従って、両フィンがそれぞれ傾斜部を有し、かつそれらの傾斜部が、下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し常に傾斜する従来の空調用レジスタに比べ、両フィンの下流端での間隔が広くなる。通風抵抗が小さくなるため、圧力損失が小さくなる。
【0015】
一方のフィンは、傾斜位置では作動機構により、中立位置から上流へ離れた箇所に位置するように移動させられ、かつ下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。他方のフィンは、傾斜位置では作動機構により、中立位置から下流へ離れた箇所に位置するように移動させられ、かつ下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。
【0016】
下流側に位置するフィンの近くを流れる空調用空気は、そのフィンに沿って流れることで、通風路の内方へ流れ方向を変えられる。空調用空気は、吹出口から、流入方向に対し傾斜する方向へ吹き出される。
【0017】
また、上流側に位置するフィンの近くを流れる空調用空気は、そのフィンに沿って流れることで、通風路の内方へ流れ方向を変えられる。上流側に位置するフィンに沿って流れた空調用空気の一部は、下流側に位置するフィンに当り、同下流側に位置するフィンに沿って流れることで流れ方向を変えられる。
【0018】
従って、上流側に位置するフィンによって流れ方向を変えられた空調用空気が加わる分、下流側に位置するフィンに沿って流れた後に吹出口から吹き出される空調用空気の量が多くなる。
【0019】
[態様2]各フィンは、長手方向に延びる板状部と、前記板状部から前記長手方向へ延びる上流軸と、前記上流軸よりも下流で前記板状部から前記長手方向へ延びる下流軸と、を備え、前記作動機構は、前記上流軸が回転及び移動可能に係合される上流カム溝と、前記下流軸が回転及び移動可能に係合される下流カム溝と、を備え、両フィンは、前記作動機構により、前記上流カム溝における前記上流軸の位置が変更され、かつ前記下流カム溝における前記下流軸の位置が変更されることで、前記中立位置及び前記傾斜位置の間で作動させられる[態様1]に記載の空調用レジスタ。
【0020】
上記の構成によれば、フィン毎の上流軸は、係合された上流カム溝内でのみ回転及び移動が可能である。フィン毎の下流軸は、係合された下流カム溝内でのみ回転及び移動が可能である。下流カム溝内における下流軸の係合位置が決定されると、上流カム溝における上流軸の係合位置も決定される。これとは逆に、上流カム溝における上流軸の係合位置が決定されると、下流カム溝内における下流軸の係合位置も決定される。上記のように上流軸及び下流軸の各係合位置が決定されると、フィンの位置及び傾きが決定される。
【0021】
また、作動機構により、上流軸を上流カム溝に沿って回転及び移動させ、かつ下流軸を下流カム溝に沿って回転及び移動させることで、両フィンを中立位置及び傾斜位置の間で作動させることが可能である。
【0022】
[態様3]前記上流カム溝は、前記流入方向に沿って延びており、前記下流カム溝のうち、前記流入方向における中間部よりも上流部分は、上流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜し、前記下流カム溝のうち、前記流入方向における前記中間部よりも下流部分は、下流ほど前記通風路の内方に位置するように、前記流入方向に対し傾斜し、前記中立位置では、前記作動機構により、前記下流軸が前記下流カム溝の前記中間部に位置させられる[態様2]に記載の空調用レジスタ。
【0023】
上記の構成によれば、フィン毎の上流軸は、上流カム溝に沿って回転及び移動することで、上記流入方向に対し直交する方向における位置を維持しつつ、流入方向における位置を変える。
【0024】
これに対し、フィン毎の下流軸は、下流カム溝のうち中間部よりも上流部分に沿って回転及び移動することで、又は中間部よりも下流部分に沿って回転及び移動することで、流入方向に対し直交する方向における位置を変えつつ、流入方向における位置を変える。
【0025】
そして、作動機構により、下流軸が下流カム溝の中間部に位置させられると、フィンは中立位置に位置させられる。
下流軸が、作動機構により、下流カム溝のうち、中間部よりも上流部分で回転及び移動させられると、フィンは、中立位置から上流へ離れた箇所に位置するように移動させられ、かつ下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。
【0026】
下流軸が、作動機構により、下流カム溝のうち、中間部よりも下流部分で回転及び移動させられると、フィンは、中立位置から下流へ離れた箇所に位置するように移動させられ、かつ下流ほど通風路の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。
【0027】
[態様4]各フィンは、長手方向に延びる板状部を備え、前記吹出口は、それぞれ前記長手方向に延び、かつ互いに対向する一対の辺部を有し、前記リテーナの前記吹出口よりも上流であって、前記吹出口に対し、両辺部が対向する方向の外方には、それぞれ収容室が設けられ、両フィンが前記中立位置に位置するときには、前記フィン毎の前記板状部の厚み方向における前記フィンの少なくとも一部が前記収容室に収容される[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の空調用レジスタ。
【0028】
上記の構成によれば、各フィンが中立位置に位置するとき、そのフィンが、上記の要件を満たす態様で収容室に収容されることにより、板状部の厚み方向におけるフィンの少なくとも一部が吹出口に対し、両辺部が対向する方向の外方の上流に位置する。
【0029】
従って、フィンのうち、吹出口における両辺部間の上流に位置する部分は、板状部の厚み方向における全体が位置する場合よりも少なくなる。その分、フィンが吹出口の実開口面積に及ぼす影響が小さくなる。実開口面積は、吹出口において上記流れ方向に直交する面を投影面とした場合、その投影面において空調用レジスタの各種部品や各部が投影されていない箇所の面積である。一般に、実開口面積が小さくなるに従い通風抵抗が大きくなる。この点、上記の構成によれば、板状部の厚み方向におけるフィンの少なくとも一部が収容室に収容されることから、フィンにより吹出口の実開口面積が小さくなることが抑制される。フィンに起因する通風抵抗がさらに小さくなる。
【0030】
[態様5]前記作動機構は、前記長手方向へ延びる支軸部により回転可能に支持されるリンク部材をさらに備え、前記リンク部材は、一方の前記フィンにおける前記下流軸と、他方の前記フィンにおける前記下流軸とに対し、動力伝達可能に連結されている[態様3]に記載の空調用レジスタ。
【0031】
上記の構成によれば、リンク部材が支軸部を中心として回転されると、その回転が、両方のフィンの下流軸に対し、伝達される。両方のフィンの下流軸が、対応する下流カム溝内で回転及び移動する。これに伴い、両方のフィンの上流軸が、対応する上流カム溝内で回転及び移動する。その結果、両方のフィンが中立位置と傾斜位置との間で、同期した状態で作動させられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、一対のフィンを中立位置に位置させたときの圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態において、両下流フィンが上傾斜位置に位置する空調用レジスタを下流側から見た正面図である。
【
図2】上記実施形態において、両下流フィンが中立位置に位置するときの空調用レジスタを示す図であり、リンク部材と左側の縦壁部との間に設定された鉛直面における側断面図である。
【
図3】
図2からリンク部材、操作ノブ、上流伝達機構等の図示を省略した空調用レジスタの側断面図である。
【
図4】上記実施形態において、両下流フィンが中立位置に位置するときの上流カム溝及び上流軸の位置関係と、下流カム溝及び下流軸の位置関係とを説明する説明図である。
【
図5】上記実施形態において、両下流フィンが中立位置に位置するときの空調用レジスタを示す図であり、操作ノブを通る鉛直面における側断面図(端面図)である。
【
図6】上記実施形態における両下流フィン及び操作ノブの斜視図である。
【
図7】上記実施形態における両下流フィン、リンク部材、操作ノブ等の斜視図である。
【
図8】
図2に対応する図であり、両下流フィンが上傾斜位置に位置するときの空調用レジスタの側断面図である。
【
図9】
図3に対応する図であり、
図8からリンク部材、操作ノブ、上流伝達機構等の図示を省略した空調用レジスタの側断面図である。
【
図10】
図4に対応する図であり、両下流フィンが上傾斜位置に位置するときの上流カム溝及び上流軸の位置関係と、下流カム溝及び下流軸の位置関係とを説明する説明図である。
【
図11】
図5に対応する図であり、両下流フィンが上傾斜位置に位置するときの空調用レジスタの側断面図(端面図)である。
【
図12】
図2に対応する図であり、両下流フィンが下傾斜位置に位置するときの空調用レジスタの側断面図である。
【
図13】
図3に対応する図であり、
図12からリンク部材、操作ノブ、上流伝達機構等の図示を省略した空調用レジスタの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、かつ後進方向を後方とし、かつ高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0035】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられている。インストルメントパネルの左右方向における中央部、側部等には、
図1に示す空調用レジスタ10が組み込まれている。この空調用レジスタ10の主な機能は、空調装置から送られてきて車室内に吹き出される空調用空気A1(
図3、
図9、
図13参照)の向きを変更すること等である。
【0036】
図1~
図3に示すように、空調用レジスタ10は、リテーナ11、一対の下流フィン31,41、複数の上流フィン47、操作ノブ51、作動機構M1及び上流伝達機構90を備えている。次に、空調用レジスタ10を構成する各部について説明する。
【0037】
<リテーナ11>
図2及び
図3に示すように、リテーナ11は、いずれも図示しない空調装置の通風ダクトと、インストルメントパネルに設けられた開口とを繋ぐためのものである。リテーナ11は、外リテーナ12、内リテーナ13及びベゼル14を備えている。リテーナ11は、空調用空気A1が流れる流路である通風路21を有している。
【0038】
通風路21は、リテーナ11の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、左右方向に互いに対向する一対の縦壁部22と、上下方向に互いに対向する一対の横壁部23とからなる。
【0039】
ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近づく方向を「上流」等といい、同空調装置から遠ざかる方向を「下流」等という。また、空調用レジスタ10の各部の位置関係を説明するに当たり、リテーナ11における縦壁部22及び横壁部23の各厚み方向のうち、通風路21に近づく方向を「内方」、「内」等という。上記厚み方向のうち、通風路21から遠ざかる方向を「外方」、「外」等というものとする。
【0040】
外リテーナ12及び内リテーナ13のそれぞれは、上流端及び下流端が開放され、かつ左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも大きな筒状をなしている。内リテーナ13は、外リテーナ12の下流部の内部に配置されている。
【0041】
ベゼル14は、外リテーナ12の下流端及び内リテーナ13の下流端に対し装着されている。ベゼル14の下流端面は、空調用レジスタ10の意匠面15を構成している(
図1参照)。ベゼル14には、上記通風路21の下流端を構成する吹出口16が形成されている。吹出口16の形状については後述する。
【0042】
<下流フィン31,41>
図3、
図5及び
図6に示すように、一対の下流フィン31,41は、吹出口16から吹き出される空調用空気A1の上下方向の向きを変更するためのものである。一対の下流フィン31,41は、特許請求の範囲における一対のフィンに該当する。両下流フィン31,41は、通風路21のうち、吹出口16よりも上流であり、かつ互いに上下方向に異なる箇所に配置されている。
【0043】
上側の下流フィン31は、板状部32、膨出部33、複数のリブ34、一対の上流軸35及び一対の下流軸36を備えている。板状部32は、内リテーナ13内で、長手方向としての左右方向、及び上記流れ方向へ延びている。膨出部33は、板状部32の下流端部から上方へ膨出している。膨出部33は、板状部32の左右方向における全長にわたって形成されている。各リブ34は板状をなしている。複数のリブ34は、板状部32の上面であって、左右方向に互いに離間した箇所に形成されている。これらのリブ34は、板状部32の剛性を高める等の目的で設けられている。
【0044】
一対の上流軸35は、左右方向における板状部32の両端面の上流端部から、左右方向のうち互いに遠ざかる側へ延びている。一対の下流軸36は、左右方向における板状部32の両端面の下流端部から、左右方向のうち互いに遠ざかる側へ延びている。左右方向のうち、同じ側の上流軸35及び下流軸36は、互いに上記流れ方向に離間している。
【0045】
上側の下流フィン31は、左側の上流軸35及び左側の下流軸36により、内リテーナ13における左側の縦壁部22の上部に支持されている。また、上側の下流フィン31は、右側の上流軸35及び右側の下流軸36により、内リテーナ13における右側の縦壁部22の上部に支持されている。詳細については後述する。
【0046】
下側の下流フィン41は、板状部42、膨出部43、複数のリブ(図示略)、一対の上流軸45及び一対の下流軸46を備えている。板状部42は、内リテーナ13内で、長手方向としての左右方向、及び上記流れ方向へ延びている。膨出部43は、板状部42の下流端部から下方へ膨出している。膨出部43は、板状部42の左右方向における全長にわたって形成されている。各リブは板状をなしている。複数のリブは、板状部42の下面であって、左右方向に互いに離間した箇所に形成されている。これらのリブは、板状部42の剛性を高める等の目的で設けられている。
【0047】
一対の上流軸45は、左右方向における板状部42の両端面の上流端部から、左右方向のうち互いに遠ざかる側へ延びている。一対の下流軸46は、左右方向における板状部42の両端面の下流端部から、左右方向のうち互いに遠ざかる側へ延びている。
【0048】
下側の下流フィン41は、左側の上流軸45及び左側の下流軸46により、内リテーナ13における左側の縦壁部22の下部に支持されている。また、下側の下流フィン41は、右側の上流軸45及び右側の下流軸46により、内リテーナ13における右側の縦壁部22の下部に支持されている。詳細については後述する。
【0049】
[流入方向]
ここで、
図3に示すように、両下流フィン31,41により変更される流れ方向(上下方向)のうち、両下流フィン31,41間に流入する直前の空調用空気A1の流れ方向を、流入方向とする。
図3では、左から右へ向かう方向が流入方向となる。
【0050】
[中立位置及び傾斜位置]
各下流フィン31,41は、中立位置と傾斜位置との間で、回転及び移動することが可能である。中立位置は、空調用空気A1を吹出口16から上記流入方向に沿う方向へ吹き出させる際に、両下流フィン31,41が採る位置である。両下流フィン31,41は、中立位置では、それぞれ流入方向に沿って延びる状態で、同流入方向に対し直交する方向である上下方向に対向する。
【0051】
図9及び
図13に示すように、傾斜位置は、空調用空気A1を吹出口16から上記流入方向に対し傾斜する方向へ吹き出させる際に、両下流フィン31,41が採る位置である。傾斜位置には、空調用空気A1を吹出口16から斜め後上方へ吹き出させる際に、両下流フィン31,41が採る上傾斜位置(
図9)と、斜め後下方へ吹き出させる際に、両下流フィン31,41が採る下傾斜位置(
図13)とがある。なお、上傾斜位置と下傾斜位置とを区別する必要がない場合には、単に傾斜位置という場合がある。
【0052】
上傾斜位置では、
図9に示すように、上側の下流フィン31が、上記中立位置(
図3)から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。また、下側の下流フィン41が、上記中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。
【0053】
下傾斜位置では、
図13に示すように、上側の下流フィン31が、上記中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。また、下側の下流フィン41が、上記中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。
【0054】
[吹出口16]
図1~
図3に示すように、吹出口16は、互いに対向する一対の辺部を備えている。各辺部は、板状部32,42の延びる方向である長手方向と同じ方向、ここでは左右方向へ延びている。吹出口16は、各辺部が、両辺部の間隔よりも長い形状をなしている。
【0055】
本実施形態では、吹出口16は、上下方向よりも左右方向に細長い横長の長方形状をなしている。吹出口16は、左右方向に互いに対向する一対の短辺部17と、両短辺部17が対向する方向に対し直交する方向である上下方向に互いに対向し、かつ各短辺部17よりも長い一対の長辺部18とからなる。ここでは、一対の長辺部18が、上記一対の辺部に該当する。
【0056】
[収容室24,25]
図2及び
図3に示すように、リテーナ11の吹出口16よりも上流であり、かつ吹出口16に対し、両長辺部18が対向する方向の外方には、収容室24,25が設けられている。収容室24は、リテーナ11の吹出口16よりも上流であり、かつ吹出口16よりも上方に設けられている。収容室25は、リテーナ11の吹出口16よりも上流であり、かつ吹出口16よりも下方に設けられている。
【0057】
[下流フィン31,41と収容室24,25との位置関係]
下流フィン31,41の上下方向の位置は、次の要件1を満たす箇所に設定されている。
【0058】
要件1:
図3及び
図5に示すように、下流フィン31,41が、中立位置に位置するときには、板状部32,42の厚み方向である上下方向における下流フィン31,41の少なくとも一部が収容室24,25に収容されること。
【0059】
上側の下流フィン31の場合、その下流フィン31の少なくとも上部が、上側の収容室24に収容されること。
下側の下流フィン41の場合、その下流フィン41の少なくとも下部が、下側の収容室25に収容されること。
【0060】
本実施形態では、上側の下流フィン31が中立位置に位置するときに、その下流フィン31の全体が上側の収容室24に収容されるように、下流フィン31の上下方向の位置が設定されている。また、下側の下流フィン41が中立位置に位置するときに、その下流フィン41の全体が下側の収容室25に収容されるように、下流フィン41の上下方向の位置が設定されている。
【0061】
<上流フィン47>
図1~
図3に示すように、複数の上流フィン47は、吹出口16から吹き出される空調用空気A1の左右方向の向きを変更等するためのものである。複数の上流フィン47は、通風路21の上記下流フィン31,41よりも上流に配置されている。複数の上流フィン47は、左右方向には、等間隔で互いに平行に離間した状態で配置されている。
【0062】
各上流フィン47は、板状部48及び一対のフィン軸49を備えている。上流フィン47毎の板状部48は、通風路21で上下方向及び上記流れ方向へ延びている。上流フィン47毎の一対のフィン軸49は、上下方向における板状部48の両端面から、同方向のうち、互いに遠ざかる側へ延びている。各フィン軸49は、内リテーナ13において、対応する横壁部23に支持されている。各上流フィン47は、両フィン軸49を中心として、左右方向に傾動可能である。
【0063】
<操作ノブ51>
図2、
図6及び
図7に示すように、操作ノブ51は、吹出口16からの空調用空気A1の吹き出し方向を変更等する際に乗員によって操作される部材である。操作ノブ51は、基部52、シャフト部55及び把持部56を備えている。基部52は、円板状をなし、かつ上下方向へ延びる一対の軸部53(
図5参照)を有している。把持部56は、乗員によって把持される箇所であり、かつベゼル14よりも下流に配置されている。シャフト部55は、吹出口16を介して、ベゼル14よりも上流と下流とに跨がった状態で配置され、かつ、基部52及び把持部56を連結している。
【0064】
操作ノブ51は、吹き出し方向を上下方向に変更する際には、同方向へ操作される。操作ノブ51は、吹き出し方向を左右方向に変更する際には、同方向へ操作される。
<作動機構M1>
作動機構M1は、両下流フィン31,41を上記中立位置と上記傾斜位置との間で作動させるための機構である。作動機構M1は、上記中立位置では、
図3に示すように、両下流フィン31,41を、流入方向に沿って延びる状態で、同流入方向に対し直交する方向に対向させる。作動機構M1は、上記上傾斜位置では、
図9に示すように、上側の下流フィン31を、中立位置から上流へ離れた箇所に位置するように移動させ、かつ下流ほど低くなるように、流入方向に対し傾斜させる。作動機構M1は、上記上傾斜位置では、下側の下流フィン41を、上記中立位置から下流へ離れた箇所に位置するように移動させ、かつ下流ほど高くなるように、流入方向に対し傾斜させる。
【0065】
作動機構M1は、下傾斜位置では、
図13に示すように、上側の下流フィン31を、中立位置から下流へ離れた箇所に位置するように移動させ、かつ下流ほど低くなるように、流入方向に対し傾斜させる。作動機構M1は、上記下傾斜位置では、下側の下流フィン41を、上記中立位置から上流へ離れた箇所に位置するように移動させ、かつ下流ほど高くなるように、流入方向に対し傾斜させる。
【0066】
図3及び
図4に示すように、作動機構M1は、上流カム溝及び下流カム溝の組み合わせを、上下方向に2組備えている。上側の組み合わせは、上側の上流カム溝61と、上側の下流カム溝62とからなる。下側の組み合わせは、下側の上流カム溝71と、下側の下流カム溝72とからなる。上側の組み合わせと、下側の組み合わせとは、左右一対の縦壁部22毎に設けられている。
【0067】
[上側の上流カム溝61及び上側の下流カム溝62]
上流カム溝61及び下流カム溝62は、内リテーナ13における左右の両方の縦壁部22の上部にそれぞれ形成され、かつ通風路21に面して開口されている。上流カム溝61は、ベゼル14から上流へ離れた箇所において、上記流入方向に直線状に延びている。上流カム溝61は、上下方向については、吹出口16の上側の長辺部18よりも高い箇所に形成されている。上流カム溝61は、上流軸35の直径よりも僅かに広い溝幅を有している。ここで、僅かに広い溝幅とは、上流軸35が上流カム溝61内でがたつかない状態、又はそれに近い状態で、回転しながら移動できる大きさの溝幅である。
【0068】
なお、上記の溝幅に関する事項は、後述する下流カム溝62,72の溝幅、及び上流カム溝71の溝幅の説明に際し、僅かに広い溝幅という場合も同様である。また、上記の溝幅に関する事項は、後述する長孔86の幅について、僅かに広い幅という場合も同様である。
【0069】
下流カム溝62は、流入方向における中間部63よりも上流部分を構成する上流傾斜部64と、同中間部63よりも下流部分を構成する下流傾斜部65とを備えている。中間部63は、上記上流カム溝61よりも下流であり、かつ上流カム溝61よりも通風路21の内方である下方に位置している。上流傾斜部64は、上流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜している。上流傾斜部64の上流部は、上流カム溝61の下流部の下方に位置している。下流傾斜部65は、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜している。
【0070】
このように、下流カム溝62では、上流傾斜部64と下流傾斜部65とが、流入方向に対し、互いに反対方向に傾斜し、かつ中間部63において繋がっている。各下流カム溝62は、下流軸36の直径よりも僅かに広い溝幅を有している。
【0071】
そして、上流カム溝61に対し、上流軸35が回転可能及び移動可能に係合されている。下流カム溝62に対し、下流軸36が回転可能及び移動可能に係合されている。
[下側の上流カム溝71及び下側の下流カム溝72]
上流カム溝71及び下流カム溝72は、内リテーナ13における左右の両方の縦壁部22の下部にそれぞれ形成され、かつ通風路21に面して開口されている。上流カム溝71は、ベゼル14から上流へ離れた箇所において、上記流入方向に直線状に延びている。上流カム溝71は、上下方向については、吹出口16の下側の長辺部18よりも低い箇所に形成されている。上流カム溝71は、上流軸45の直径よりも僅かに広い溝幅を有している。
【0072】
下流カム溝72は、流入方向における中間部73よりも上流に位置する上流傾斜部74と、同中間部73よりも下流に位置する下流傾斜部75とを備えている。中間部73は、上記上流カム溝71よりも下流であり、かつ上流カム溝71よりも通風路21の内方である上方に位置している。上流傾斜部74は、上流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜している。上流傾斜部74の上流部は、上流カム溝71の下流部の上方に位置している。下流傾斜部75は、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜している。
【0073】
このように、下流カム溝72では、上流傾斜部74と下流傾斜部75とが、流入方向に対し互いに反対方向に傾斜し、かつ中間部73において繋がっている。各下流カム溝72は、下流軸46の直径よりも僅かに広い溝幅を有している。
【0074】
そして、上流カム溝71に対し、上流軸45が回転可能及び移動可能に係合されている。下流カム溝72に対し、下流軸46が回転可能及び移動可能に係合されている。
[上流軸35,45及び下流軸36,46の各位置と、下流フィン31,41の位置及び傾きとの関係]
そして、上流軸35,45が、流入方向における上流カム溝61,71の中間部分に位置させられ、かつ下流軸36,46が下流カム溝62,72の中間部63,73に位置させられることにより、下流フィン31,41が中立位置に位置させられる。
【0075】
図9及び
図13に示すように、下流軸36,46が、流入方向における上流傾斜部64,74の中間部分に位置させられ、かつ上流軸35,45が、流入方向における上流カム溝61,71の上記中間部分よりも上流に位置させられる。すると、下流フィン31,41が、上記中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。下流軸36,46が上流傾斜部64,74の上流端に位置させられ、かつ上流軸35,45が上流カム溝61,71の上流端に位置させられることにより、下流フィン31,41が傾斜位置に位置させられる。
【0076】
下流軸36,46が、流入方向における下流傾斜部65,75の中間部分に位置させられ、かつ上流軸35,45が、流入方向における上流カム溝61,71の上記中間部分よりも下流に位置させられる。すると、下流フィン31,41が、上記中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させられる。下流軸36,46が下流傾斜部65,75の下流端に位置させられ、かつ上流軸35,45が上流カム溝61,71の下流端に位置させられることにより、下流フィン31,41が傾斜位置に位置させられる。
【0077】
作動機構M1は、さらに、操作ノブ51の動きを両下流フィン31,41に伝達する下流伝達機構部80を備えている。
[下流伝達機構部80]
図7に示すように、下流伝達機構部80は、リンク部材81及び一対の支持板部87を備えている。
【0078】
リンク部材81は、一対の回転部82と、一対の架け渡し部83と、回転部82毎の支軸部84とを備えている。なお、
図7では、支軸部84が片方のみ図示されている。各回転部82は、下流フィン31,41と、内リテーナ13における左右一対の縦壁部22のうち、下流フィン31,41に対し隣り合うものとの間に配置されている。各回転部82は、支軸部84から径方向のうち、互いに反対方向へ延びる一対の延出部85を有している。
【0079】
図5及び
図7に示すように、各架け渡し部83は、下流フィン31,41と、内リテーナ13における上下一対の横壁部23のうち、下流フィン31,41に対し隣り合うものとの間で、左右方向へ延びている。各架け渡し部83は、左側の各延出部85のうち、支軸部84から最も遠い箇所と、右側の各延出部85のうち、支軸部84から最も遠い箇所との間に架け渡されている。
【0080】
図2及び
図7に示すように、一対の支軸部84は、各回転部82の中心部から、左右方向のうち、互いに遠ざかる側へ延びている。回転部82毎の支軸部84は、内リテーナ13の縦壁部22に対し回転可能に支持されている。縦壁部22に対する支軸部84の支持箇所は、上下方向については中央部に設定されている。上記支持箇所は、上記流れ方向については、上記下流カム溝62,72の中間部63,73の位置と同一又は、その位置を含む一定の領域に設定されている。
【0081】
各延出部85において、支軸部84から一定距離離れた箇所には、同支軸部84を中心とする径方向へ延びる長孔86が、左右方向へ貫通した状態で形成されている。各長孔86は幅及び長さを有している。ここでの長さとは、長孔86が延びる方向の寸法である。幅とは、長孔86が延びる方向に対し直交する方向の寸法である。各長孔86の幅は、下流軸36,46の直径よりも僅かに広い幅に設定されている。各長孔86の長さは、下流フィン31,41が中立位置及び傾斜位置の間で作動させられたときに、下流カム溝62,72での下流軸36,46の動きを妨げない長さに設定されている。
【0082】
下流フィン31,41毎の下流軸36,46は、上記長孔86に挿通された状態で、下流カム溝62,72に係合されている。このようにして、上側の下流フィン31における下流軸36と、下側の下流フィン41における下流軸46とが、リンク部材81によって動力伝達可能に連結されている。
【0083】
図5及び
図7に示すように、一対の支持板部87は、互いに平行に離間した状態で、左側の回転部82から右側の回転部82へ向けて延びている。両支持板部87は、操作ノブ51の上記基部52を上下方向における両側から挟み込んでいる。そして、基部52における一対の軸部53がそれぞれ支持板部87に対し、回転可能に支持されている。
【0084】
<上流伝達機構90>
図2及び
図5に示すように、上流伝達機構90は、操作ノブ51の左右方向の動き、すなわち、両軸部53を中心とする左右方向の回転運動を、複数の上流フィン47にそれぞれ伝達する機構である。上流伝達機構90は、上記伝達により、全ての上流フィン47を、同期させた状態で左右方向へ傾動させる。
【0085】
上流伝達機構90に採用される機構部は、上記の目的を達成できる機構部であればよく、特に制約はない。こうした機構部としては、例えば、複数のギヤの組み合わせであってもよい。
図2及び
図5では、上流伝達機構90における一部のギヤの組み合わせが図示されている。基部52には、複数の歯が軸部53を中心とする円弧に沿って配列されてなる駆動ギヤ部91(
図6参照)が形成されている。
【0086】
両支持板部87の上流には、上下方向に延びる軸部92が配置されている。軸部92の上下方向の各端部は、内リテーナ13における上下の各横壁部23に対し回転可能に支持されている。上下方向における軸部92の中間部分には、扇状をなす従動ギヤ部93が形成されている。従動ギヤ部93の各歯は、軸部92を中心とする円弧に沿って配列されている。
【0087】
そして、駆動ギヤ部91が従動ギヤ部93に噛み合わされている。駆動ギヤ部91が回転されると、その回転が従動ギヤ部93に伝達され、軸部92が回転されるように構成されている。
【0088】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
作用の説明に際し、ここでは、一例として、
図2及び
図5に示すように、操作ノブ51のシャフト部55及び各上流フィン47の板状部48が、縦壁部22に対し、平行な状態にされているものとする。リテーナ11に流入した空調用空気A1は、両下流フィン31,41よりも上流では、各上流フィン47及び縦壁部22に沿って流れる。空調用空気A1は、流れ方向を左右方向へ変更されることなく、真っ直ぐ流れる。
【0089】
<下流フィン31,41の位置及び傾き>
図2~
図4に示すように、各下流フィン31,41の上流軸35,45は、係合された上流カム溝61,71内でのみ、回転及び移動することが可能である。各下流フィン31,41の下流軸36,46は、係合された下流カム溝62,72内でのみ、回転及び移動することが可能である。下流カム溝62,72内における下流軸36,46の係合位置が決定されると、上流カム溝61,71における上流軸35,45の係合位置も決定される。これに伴い、下流フィン31,41の位置及び傾きが決定される。
【0090】
<下流フィン31,41の作動>
下流フィン31,41毎の上流軸35,45は、上流カム溝61,71に沿って回転及び移動することで、流入方向に対し直交する方向である上下方向における位置を維持しつつ、流入方向における位置を変える。下流軸36,46が下流カム溝62,72の中間部63,73に位置させられるときには、上流軸35,45は、流入方向における上流カム溝61,71の中間部分に位置させられる。このとき、下流フィン31,41は中立位置に位置させられる。
【0091】
下流フィン31,41毎の下流軸36,46は、上記中間部63,73から、上流傾斜部64,74に沿って回転及び移動することで、上下方向における位置を変えつつ、流入方向における位置を変える。下流フィン31,41は、中立位置から上流へ離れた箇所に位置するように移動し、かつ下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。
【0092】
また、上記下流軸36,46は、上記中間部63,73から、下流傾斜部65,75に沿って回転及び移動することで、上下方向における位置を変えつつ、流入方向における位置を変える。下流フィン31,41は、中立位置から下流へ離れた箇所に位置するように移動し、かつ下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜する。
【0093】
一方、
図7に示すリンク部材81は、両支軸部84を中心として回転可能である。リンク部材81の上記回転は、操作ノブ51の上下方向の操作に応じてなされる。リンク部材81の上記回転は、両方の下流フィン31,41の下流軸36,46に伝達される。
【0094】
下流軸36,46は、長孔86及び下流カム溝62,72の両者に挿通されている。下流軸36,46は、長孔86と下流カム溝62,72とが重なる箇所に位置する。下流カム溝62,72は移動しないが、各長孔86は、リンク部材81の上記回転に伴い、支軸部84を中心とする円弧に沿って移動する。長孔86の移動に伴い、下流カム溝62,72において長孔86と重なる箇所、ひいては下流軸36,46の位置が変化する。なお、下流軸36,46が下流カム溝62,72を移動する際には回転を伴う。
【0095】
下流カム溝62,72における下流軸36,46の位置が変化すると、その変化に伴い、上流カム溝61,71における上流軸35,45の位置が変化し、下流フィン31,41の位置及び傾きが変化する。上流軸35,45が上流カム溝61,71を移動する際には回転を伴う。そのため、一対の下流フィン31,41を中立位置、上傾斜位置及び下傾斜位置のいずれかに位置させることが可能である。
【0096】
ここで、上記長孔86は、回転部82毎に一対ずつ設けられている。そして、下流フィン31,41毎の下流軸36,46が各長孔86に挿通されている。そのため、両方の下流フィン31,41について、上記の位置及び傾きの変化が同期した状態で行なわれる。
【0097】
また、上流軸35,45を上流カム溝61,71に沿って回転及び移動させ、かつ下流軸36,46を下流カム溝62,72に沿って回転及び移動させることで、両下流フィン31,41を中立位置及び上傾斜位置の間で作動させることが可能である。また、両下流フィン31,41を中立位置及び下傾斜位置の間で作動させることが可能である。両下流フィン31,41を、中立位置及び上傾斜位置の中間の位置に位置させることも、中立位置及び下傾斜位置の中間の位置に位置させることも可能である。
【0098】
<両下流フィン31,41が中立位置に位置するとき>
図2~
図7は、操作ノブ51のシャフト部55が横壁部23に対し平行な状態にされた場合を示している。リンク部材81は傾斜せず、各回転部82は上下方向へ延びる状態となる。
【0099】
このとき、上側の下流カム溝62は、中間部63において上側の長孔86の上端部と重なる。また、下側の下流カム溝72は、中間部73において下側の長孔86の下端部と重なる(
図2参照)。
【0100】
そのため、下流フィン31,41毎の下流軸36,46は、下流カム溝62,72の中間部63,73に保持される。下流フィン31,41毎の上流軸35,45は、流入方向における上流カム溝61,71の中間部分に保持される。その結果、両方の下流フィン31,41は、ともに中立位置に保持される。両下流フィン31,41は、中立位置では、流入方向に沿って延びる姿勢で、同流入方向に対し直交する方向に対向させられる。
【0101】
各下流フィン31,41の近くの空調用空気A1は、下流フィン31,41に沿って流れることで、流れ方向として、流入方向に沿う方向を維持する。空調用空気A1が両下流フィン31,41間を流れる際に、流れ方向を大きく変更されることはない。空調用空気A1は、吹出口16から、流入方向に沿う方向へ吹き出される。
【0102】
ここで、
図3に示すように、中立位置では、両下流フィン31,41の間隔D1は、流入方向におけるどこの箇所でも一定又は略一定となる。従って、フィンが傾斜部を有し、かつその傾斜部が、下流ほど通風路の内方に位置するように流入方向に対し、常に傾斜する従来の空調用レジスタに比べ、両下流フィン31,41の下流端での間隔D1が広くなる。
【0103】
図5に示すように、中立位置では、上側の下流フィン31の厚み方向における全体が上側の収容室24に収容される。また、中立位置では、下側の下流フィン41の厚み方向における全体が下側の収容室25に収容される。上記収容により、各下流フィン31,41の厚み方向における全体が吹出口16に対し、上下方向の両外方の上流に位置する。
【0104】
<両下流フィン31,41が上傾斜位置に位置するとき>
図1、
図8~
図11は、操作ノブ51が上記
図2~
図7の状態から上方へ操作されて、シャフト部55が下流ほど高くなるように、横壁部23に対し傾斜させられた場合を示している。
【0105】
図8及び
図11に示すように、リンク部材81は、上側ほど上流に位置するように傾斜した状態となる。各長孔86についても同様である。
このとき、
図8及び
図10に示すように、上側の下流カム溝62は、上流傾斜部64の上流端部において、上側の長孔86の上下方向における中間部分と重なる。上側の下流フィン31の下流軸36は、上流傾斜部64の上流端部に保持される。上側の下流フィン31の上流軸35は、上流カム溝61の上流端部に保持される。
図9及び
図11に示すように、上側の下流フィン31は、上記中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、この場合、下流ほど低くなるように、流入方向に対し傾斜する。
【0106】
また、
図8及び
図10に示すように、下側の下流カム溝72は、下流傾斜部75の下流端部において、下側の長孔86の上端部と重なる。下側の下流フィン41の下流軸46は、下流傾斜部75の下流端部に保持される。下側の下流フィン41の上流軸45は、上流カム溝71の下流端部に保持される。
図9及び
図11に示すように、下側の下流フィン41は、上記中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、この場合、下流ほど高くなるように、流入方向に対し傾斜する。
【0107】
上記のように、上傾斜位置では、一対の下流フィン31,41がいずれも傾斜状態となるが、上側の下流フィン31が、下側の下流フィン41よりも上流で傾斜状態になる。しかも、上側の下流フィン31は、下側の下流フィン41とは反対方向へ傾斜する。
【0108】
下流側に位置する下側の下流フィン41の近くを流れる空調用空気A1は、その下流フィン41に沿って流れることで、通風路21の内方、この場合、斜め後上方へ流れ方向を変えられる。空調用空気A1は、吹出口16から斜め後上方へ吹き出される。
【0109】
また、上流側に位置する上側の下流フィン31の近くを流れる空調用空気A1は、その下流フィン31に沿って流れることで、通風路21の内方、この場合、斜め後下方へ流れ方向を変えられる。下流フィン31に沿って流れた空調用空気A1の一部は、下流フィン41に当り、同下流フィン41に沿って流れることで、流れ方向を、斜め後上方へ変えられる。
【0110】
従って、下流フィン31によって流れ方向を変えられた空調用空気A1が加わる分、下流フィン41に沿って流れた後に吹出口16から斜め後上方へ吹き出される空調用空気A1の量が多くなる。
【0111】
<両下流フィン31,41が下傾斜位置に位置するとき>
図12及び
図13は、操作ノブ51が上記
図2~
図7の状態から下方へ操作されて、シャフト部55が下流ほど低くなるように、横壁部23に対し傾斜させられた場合を示している。
【0112】
リンク部材81は、上側ほど下流に位置するように傾斜した状態となる。各長孔86についても同様である。
このとき、上側の下流カム溝62は、下流傾斜部65の下流端部において上側の長孔86の下端部と重なる。上側の下流フィン31の下流軸36は、下流傾斜部65の下流端部に保持される。上側の下流フィン31の上流軸35は、上流カム溝61の下流端部に保持される。上側の下流フィン31は、上記中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、この場合、下流ほど低くなるように、流入方向に対し傾斜する。
【0113】
また、下側の下流カム溝72は、上流傾斜部74の上流端部において、下側の長孔86の上下方向における中間部分と重なる。下側の下流フィン41の下流軸46は、上流傾斜部74の上流端部に保持される。下側の下流フィン41の上流軸45は、上流カム溝71の上流端部に保持される。下側の下流フィン41は、上記中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、この場合、下流ほど高くなるように、流入方向に対し傾斜する。
【0114】
上記のように、下傾斜位置では、一対の下流フィン31,41がいずれも傾斜状態となるが、下側の下流フィン41が、上側の下流フィン31よりも上流で傾斜状態になる。しかも、下側の下流フィン41は、上側の下流フィン31とは反対方向へ傾斜する。
【0115】
下流側に位置する上側の下流フィン31の近くを流れる空調用空気A1は、その下流フィン31に沿って流れることで、通風路21の内方、この場合、斜め後下方へ流れ方向を変えられる。空調用空気A1は、吹出口16から斜め後下方へ吹き出される。
【0116】
また、上流側に位置する下側の下流フィン41の近くを流れる空調用空気A1は、その下流フィン41に沿って流れることで、通風路21の内方、この場合、斜め後上方へ流れ方向を変えられる。下流フィン41に沿って流れた空調用空気A1の一部は、下流フィン31に当り、下流フィン31に沿って流れることで、流れ方向を、斜め後下方へ変えられる。
【0117】
従って、下流フィン41によって流れ方向を変えられた空調用空気A1が加わる分、下流フィン31に沿って流れた後に吹出口16から斜め後下方へ吹き出される空調用空気A1の量が多くなる。
【0118】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、両下流フィン31,41を、中立位置及び傾斜位置の間で作動させる作動機構M1を設けている。作動機構M1は、
図3に示す中立位置では、両下流フィン31,41を、流入方向に沿って延びる状態で、その流入方向に対し直交する方向に対向させる。
【0119】
そのため、空調用空気A1を吹出口16から流入方向に沿う方向へ吹き出させることができる。また、両下流フィン31,41の間隔D1を、流入方向におけるどこの箇所でも一定又は略一定にできる。従って、上記間隔D1を、従来の空調用レジスタにおける一対のフィンの下流端での間隔よりも広くし、通風抵抗を小さくできる。両下流フィン31,41を中立位置に位置させたときの圧力損失を小さくでき、空調性能の向上を図ることができる。
【0120】
(2)
図5に示すように、中立位置では、上側の下流フィン31の厚み方向における全体を上側の収容室24に収容する。また、下側の下流フィン41の厚み方向における全体を下側の収容室25に収容している。
【0121】
そのため、下流フィン31,41のうち、吹出口16の上流に位置する部分を、下流フィン31,41の全体が位置する場合よりも少なくすることができる。その分、下流フィン31,41により吹出口16の実開口面積が小さくなるのを抑制できる。下流フィン31,41に起因する通風抵抗をさらに小さくできる。
【0122】
(3)本実施形態では、
図9に示す上傾斜位置でも、
図13に示す下傾斜位置でも、両下流フィン31,41を、中立位置から上流へ離れた箇所と下流へ離れた箇所とにそれぞれ位置するように移動させている。しかも、両下流フィン31,41を、それぞれ下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させている。
【0123】
そのため、上流側に位置する下流フィン31(41)によって、空調用空気A1を通風路21の内方へ向けて流れさせ、下流側の下流フィン41(31)に当てることができる。この空調用空気A1を、下流側の下流フィン41(31)に沿って流れさせることで、吹出口16から斜め後上方又は斜め後下方へ吹き出される空調用空気A1の量を多くすることができる。吹出口16から吹き出される空調用空気A1の指向性を高めることができる。この点でも、空調性能の向上を図ることができる。
【0124】
(4)本実施形態では、上記(1)~(3)のように、一対の下流フィン31,41のみで、空調用空気A1の上下方向の吹き出し方向を変更できる。そのため、吹き出し方向について同様の変更を行なうために、上下方向における吹出口16の中間部分の上流に、新たに下流フィンを設けなくてすむ。
【0125】
従って、下流フィン31,41が吹出口16の実開口面積を小さくする度合いを、上下方向における吹出口16の中間部分の上流に下流フィンが新たに設けられた場合よりも小さくできる。下流フィンの追加に伴う圧力損失の増加を抑制できる。
【0126】
(5)本実施形態では、
図6に示すように、下流フィン31,41の軸として、上流軸35,45及び下流軸36,46といった2種類の軸を用いている。
図4及び
図10に示すように、作動機構M1の一部として、上流軸35,45が係合される上流カム溝61,71と、下流軸36,46が係合される下流カム溝62,72とを設けている。
【0127】
そのため、下流カム溝62,72内における下流軸36,46の係合位置を決定することで、上流カム溝61,71における上流軸35,45の係合位置を決定できる。両係合位置の決定により、下流フィン31,41の位置及び傾きを決定できる。
【0128】
また、下流軸36,46を下流カム溝62,72に沿って回転及び移動させ、かつ上流軸35,45を上流カム溝61,71に沿って回転及び移動させることで、両下流フィン31,41を中立位置及び傾斜位置の間で作動させることができる。
【0129】
(6)
図4及び
図10に示すように、本実施形態では、上流カム溝61,71を、流入方向に沿って直線状に延ばしている。下流カム溝62,72の上流傾斜部64,74を、上流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させている。下流カム溝62,72の下流傾斜部65,75を、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させている。
【0130】
そのため、
図3及び
図4に示すように、作動機構M1により、下流軸36,46を下流カム溝62,72の中間部63,73に位置させることで、下流フィン31,41を中立位置に位置させることができる。
【0131】
図9及び
図13に示すように、下流軸36,46を、上流傾斜部64,74で回転及び移動させることにより、下流フィン31,41を、中立位置から上流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させることができる。
【0132】
また、下流軸36,46を、下流傾斜部65,75で回転及び移動させることにより、下流フィン31,41を、中立位置から下流へ離れた箇所で、下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させることができる。
【0133】
(7)上記(4)で説明したように、本実施形態では、上下方向における吹出口16の中間部分の上流に下流フィンが設けられていない。
そのため、
図3に示すように、両下流フィン31,41が中立位置に位置する空調用レジスタ10を下流から見た場合、上下方向における吹出口16の中間部分に下流フィンが見えない。その結果、空調用レジスタ10の外観が良好となる。
【0134】
(8)上記(2)で説明したように、中立位置では、上側の下流フィン31の厚み方向における全体が上側の収容室24に収容される。また、下側の下流フィン41の厚み方向における全体が下側の収容室25に収容される。
【0135】
そのため、空調用レジスタ10を下流から見た場合、両下流フィン31,41が見えない又は見えにくい。その結果、空調用レジスタ10の外観がより一層良好となる。
(9)
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、上側の下流フィン31における板状部32の下流端部に、上方へ膨出する膨出部33を設けている。また、下側の下流フィン41における板状部42の下流端部に、下方へ膨出する膨出部43を設けている。そのため、これらの膨出部33,43により板状部32,42、ひいては下流フィン31,41の剛性を高めることができる。
【0136】
特に、本実施形態では、下流フィン31,41毎の膨出部33,43を、左右方向における板状部32,42の全長にわたって設けている。そのため、左右方向における板状部32,42のどの箇所でも均等に、剛性を高める上記効果を得ることができる。
【0137】
なお、両膨出部33,43は、上下方向のうち、互いに遠ざかる側へ膨出している。両膨出部33,43は、両下流フィン31,41間へ膨出していない。そのため、膨出部33,43は、両下流フィン31,41間を流れる空調用空気A1の妨げとなりにくい。
【0138】
(10)ここで、
図11に示す上傾斜位置では、下流側に位置する下側の下流フィン41が、吹出口16の下部の上流近くで、下流ほど高くなるように傾斜する。この状態の空調用レジスタ10を下流から見た場合、仮に膨出部43がないと、下側の下流フィン41のうち板状部42の下面に位置するもの、例えばリブ等が見えるおそれがある。
【0139】
また、
図13に示す下傾斜位置では、下流側に位置する上側の下流フィン31が、吹出口16の上部の上流近くで、下流ほど低くなるように傾斜する。この状態の空調用レジスタ10を下流から見た場合、仮に膨出部33がないと、上側の下流フィン31のうち、板状部32の上面に位置するもの、例えばリブ34(
図6、
図7参照)等が見えて、空調用レジスタ10の外観が低下するおそれがある。
【0140】
この点、本実施形態では、上記(9)で記載したように、板状部32,42毎の下流端部に、上下方向のうち、互いに遠ざかる側へ膨出する膨出部33,43を形成している。これらの膨出部33,43は、下流フィン31,41において膨出部33,43よりも上流に位置するものを隠す。そのため、両下流フィン31,41が
図11の上傾斜位置又は
図13の下傾斜位置に位置するときに、下流フィン31,41において膨出部33,43よりも上流に位置するものが見えるのを抑制できる。この点でも、空調用レジスタ10の外観を向上させることができる。
【0141】
ちなみに、
図1は、上傾斜位置で、下流フィン41において膨出部43よりも上流に位置するものが膨出部43によって隠された状態を示している。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0142】
<リテーナ11に関する事項>
・吹出口16は、縦長の長方形をなしていてもよい。この場合、吹出口16の長辺部18が上下方向へ延び、かつ短辺部17が左右方向へ延びることとなる。
【0143】
また、両長辺部18及び両短辺部17が、鉛直面に対し傾斜してもよい。
・吹出口16の形状が、長方形とは異なる四角形に変更されてもよい。また、吹出口16の形状が、四角形以外の多角形、楕円形等に変更されてもよい。
【0144】
・リテーナ11が、外リテーナ12及び内リテーナ13の一方のみによって構成されてもよい。また、リテーナ11が、外リテーナ12及び内リテーナ13に対し、別の部材が加えられることによって構成されてもよい。
【0145】
・吹出口16は、鉛直面に対し平行に設けられてもよいし、傾斜した状態で設けられてもよい。
<下流フィン31,41に関する事項>
・
図3において、上側の下流フィン31は、中立位置に位置するときには、厚み方向における全体に代えて、一部のみ、例えば、上部のみが上側の収容室24に収容されてもよい。
【0146】
また、下側の下流フィン41は、中立位置に位置するときには、厚み方向における全体に代えて、一部のみ、例えば、下部のみが下側の収容室25に収容されてもよい。
上記の場合、下流フィン31,41が収容室24,25から通風路21の内方へ露出する部分が多くなるに従い、吹出口16の実開口面積が小さくなる。
【0147】
ここで、下流フィン31が上側の収容室24から下方へ露出する部分と、下流フィン41が下側の収容室25から上方へ露出する部分とのそれぞれの短辺部17に沿う方向の長さを、「露出部分の長さ」とする。
【0148】
通風抵抗及び圧力損失を許容範囲に収めるうえでは、短辺部17の長さが15mm~23mmの場合、上下の各露出部分の長さが2mm以下であることが好ましい。
・
図6において、上側の下流フィン31からリブ34及び膨出部33の少なくとも一方が省略されてもよい。下側の下流フィン41についても同様であり、リブ及び膨出部43の少なくとも一方が省略されてもよい。
【0149】
・板状部32の長手方向(左右方向)における上流軸35及び下流軸36の各位置が、両端部とは異なる位置に変更されてもよい。同様に、板状部42の長手方向(左右方向)における上流軸45及び下流軸46の各位置が、両端部とは異なる位置に変更されてもよい。
【0150】
・下流フィン31の上流軸35及び下流軸36の上記流れ方向における各位置が、互いに同方向に離間する位置であることを条件に、上記実施形態とは異なる箇所に変更されてもよい。同様に、下流フィン41の上流軸45及び下流軸46の上記流れ方向における各位置が、互いに同方向に離間する位置であることを条件に、上記実施形態とは異なる箇所に変更されてもよい。
【0151】
・上流フィン47が適宜省略されてもよい。
・
図6において、膨出部33,43は、板状部32,42の左右方向における一部にのみ設けられてもよい。
【0152】
・
図6において、膨出部33,43は、板状部32,42の下流端部よりも上流に設けられてもよい。
・板状部32,42は、下流フィン31,41が中立位置に位置するとき、横壁部23に対し傾斜した状態で、流入方向に沿って延びる形状をなしていてもよい。
【0153】
・下流フィン31,41における板状部32,42は、上方又は下方へ湾曲する形状をなしていてもよい。
<操作ノブ51に関する事項>
・
図1において、操作ノブ51が、左右方向における吹出口16の左端部とは異なる箇所、例えば、右端部、中間部等に設けられてもよい。
【0154】
・
図1において、操作ノブ51が、リテーナ11のうち、吹出口16から左右方向や上下方向へ離れた箇所に配置されてもよい。また、操作ノブ51が、リテーナ11の外部に配置されてもよい。この場合、操作ノブ51は、リテーナ11に隣接する箇所に配置されてもよいし、リテーナ11から離れた箇所に配置されてもよい。さらには、操作ノブ51が省略されてもよい。
【0155】
上記いずれの変更例によっても、操作ノブ51が吹出口16の実開口面積に及ぼす影響を、操作ノブ51が吹出口16の内部に配置された上記実施形態よりも小さくできる。従って、この点でも圧力損失を低減することができる。
【0156】
<作動機構M1について>
・作動機構M1は、操作ノブ51の動きを、下流軸36,46に代えて、上流軸35,45に伝達することにより、下流フィン31,41を作動させるものであってもよい。
【0157】
・下記の要件2及び要件3を満たすことを条件に、上流カム溝61,71の形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。同様に、下流カム溝62,72の形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
【0158】
要件2:中立位置では、両下流フィン31,41を、流入方向に沿って延びる状態で流入方向に対し直交する方向に対向させること。
要件3:傾斜位置では、両下流フィン31,41を、中立位置から上流へ離れた箇所と下流へ離れた箇所とに移動させ、かつそれぞれ下流ほど通風路21の内方に位置するように、流入方向に対し傾斜させること。
【0159】
・中立位置及び傾斜位置の間で下流フィン31を作動させる作動機構と、中立位置及び傾斜位置の間で下流フィン41を作動させる作動機構とが別々に設けられてもよい。
<適用箇所に関する事項>
・上記空調用レジスタ10は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所、例えばダッシュボードに設けられる空調用レジスタにも適用可能である。
【0160】
・上記空調用レジスタ10は、空調装置から送られてきて室内に吹き出される空調用空気A1の向きを少なくとも下流フィン31,41によって変更することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0161】
10…空調用レジスタ
11…リテーナ
16…吹出口
18…長辺部(辺部)
21…通風路
24,25…収容室
31,41…下流フィン(フィン)
32,42…板状部
35,45…上流軸
36,46…下流軸
61,71…上流カム溝
62,72…下流カム溝
63,73…中間部
64,74…上流傾斜部
65,75…下流傾斜部
81…リンク部材
84…支軸部
A1…空調用空気
M1…作動機構