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特開2024-162856情報処理装置、情報処理方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162856
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20241114BHJP
【FI】
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078793
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達也
(72)【発明者】
【氏名】野口 栄実
(72)【発明者】
【氏名】安部 淳一
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA13
5J084BA03
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA32
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】三次元点群データから精度よくノイズを除去することが困難であること。
【解決手段】本開示の情報処理装置100は、所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類する分類部と、分類したクラスタに含まれる三次元点群データの距離値の分布に基づいて、採用するクラスタを決定する決定部と、を備える。
【選択図】図10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類する分類部と、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する決定部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値のヒストグラムに基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、前記ヒストグラムの形状がガウス分布形状である前記クラスタを、採用する前記クラスタとして決定する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の度数に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の度数が予め設定された閾値以上である前記クラスタを、採用する前記クラスタとして決定する、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、採用する前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値に基づいて当該距離値の代表値を算出する、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記分類部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、当該クラスタに含まれる前記三次元点群データを複数の前記クラスタに再分類し、
前記決定部は、再分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
【請求項9】
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理方法。
【請求項10】
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection And Ranging)で取得される三次元点群には、ノイズ点群が含まれていることが一般に知られている。ノイズ点群の発生原因としては、LiDAR装置の測距精度に起因するものや、計測中に移動する物体、金属表面での反射やガラス面での透過、LiDAR装置から送信された光パルスが対象物体から反射し受信する際の光強度が小さい等の要因により、ノイズ信号を反射パルスと認識することによる誤測距が挙げられる。
【0003】
特に、受信光強度が小さい場合には以下のような過程にて誤測距が生じると考えられる。LiDAR装置では、受信する反射光パルスは装置内部の光受信器によって光電変換され、電気信号として処理される。LiDAR装置の演算部では、この電気信号より対象物体との距離を計算する。しかしながら、反射光の受信強度が小さい場合では、小さな信号波形に対して装置や外的要因由来のノイズ信号が加算されることで信号波形が乱されるため、誤測距や測距精度の低下の原因となりうる。
【0004】
一方で、このようなノイズ点群は、孤立点除去フィルタ等の点群処理方式によって除去されうる。例えば、特許文献1では、点群データに対して近傍点とのユークリッド距離が閾値以上の点をノイズ点として除去する手法が提案されている。また、レーザー反射強度のばらつきに基づき点群をクラスタリングし、目標対象物以外の反射点について分離・除去をする手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018―173749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した先行技術文献に記載の技術では、ノイズ点群が多く生じやすい領域においてノイズ点群同士が連続的かつ密集する状況では、かかるノイズ点群を除去しきれずに残存するという問題が生じる。また、レーザーの反射強度によるクラスタリング手法では、LiDAR装置の測距精度に起因するノイズ点群について判別が困難であり、また遠方物体の測定の場合では物体からの反射信号とノイズ信号はともに微弱であるため、両者の分類は困難である。このように、先行技術文献の技術では、三次元点群データから精度よくノイズを除去することが困難である、という問題がある。
【0007】
このため、本開示の目的は、上述した課題である、三次元点群データから精度よくノイズを除去することが困難である、ことを解決することができる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態である情報処理装置は、
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類する分類部と、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する決定部と、
を備えた、
という構成をとる。
【0009】
また、本開示の一形態である情報処理方法は、
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
という構成をとる。
【0010】
また、本開示の一形態であるプログラムは、
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
処理をコンピュータに実行させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、以上のように構成されることにより、三次元点群データから精度よくノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】三次元点群データを取得する様子を示す図である。
図2】三次元点群データを取得する様子を示す図である。
図3】本開示の実施形態1における点群処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図3に開示した点群処理装置による処理の様子を示す図である。
図5図3に開示した点群処理装置による処理の様子を示す図である。
図6図3に開示した点群処理装置の動作を示すフローチャートである。
図7】本開示の実施形態2における点群処理装置による処理の様子を示す図である。
図8】本開示の実施形態2における点群処理装置の動作を示すフローチャートである。
図9】本開示の実施形態3における情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】本開示の実施形態3における情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本開示の第1の実施形態を、図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図2は、三次元点群データを取得する様子を説明するための図である。図3は、点群処理装置の構成を説明するための図であり、図4乃至図6は、点群処理装置の処理動作を説明するための図である。
【0014】
本開示における点群処理装置は、LiDAR(Light Detection And Ranging)などの計測技術を用いて取得した対象物までの距離値を含む三次元点群データから、ノイズ点群と判定し得る点群を除去するために用いるものである。ここで、LiDARは、対象物に対してレーザー光を照射して、その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形状などを計測する技術である。このため、LiDARを用いて、対象物の表面に位置する各点までの距離値を含む三次元点群データを取得することができ、地形や建物等の構造物の形状を把握することに利用できる。但し、三次元点群データは、LiDARで取得することに限らず、いかなる計測装置で計測して取得してもよい。
【0015】
ここで、図1図2を参照して、LiDAR装置を用いて三次元点群データを取得する様子を説明すると共に、三次元点群データを取得する際にノイズ点群の発生しやすい状況を説明する。
【0016】
図1に示すように、LiDAR装置A1より照射するレーザー光は、有限のビーム径を有しており、LiDARによるスキャンの方向によっては、物体のエッジ部分等に位置する異なる距離の物体に対してレーザー光が照射される状況が生じる。ここで、図1に示す符号T1と符号T2とにそれぞれ示す箇所は、計測対象物の手前側と奥側とに位置する測定対象物を示している。
【0017】
そして、LiDAR装置A1は、対象物T1およびT2に対して測距パルスレーザーを照射する。ここで、図1における符号B1およびB2は、それぞれ対象物T1,T2に対して、LiDar装置A1から照射される測距パルスレーザーによって照らされる領域を示している。このとき、図1に示す符号T3の面は、LiDAR装置A1のレーザー光の照射方向である視線方向とほぼ平行であり、LiDAR装置A1からは死角となるため、LiDAR装置A1の測距による点群は本来得られない領域であるとする。なお、図1に示す符号B3は、符号T3に示す面上の領域であり、手前側および奥側の測定対象物T1,T2との距離の差が生じている領域となっている。
【0018】
図1に示すような状況では、それぞれの対象物T1,T2,T3から独立に反射パルス光がLiDAR装置A1へと入射されるため、受信光強度が低下する。そして、受信パルスの光強度が低下することにより測距精度が低下するため、特に対象物T3の符号B3に示す領域周辺は、ノイズ点群の生じやすい領域となっている。また、一般的にLiDAR装置A1からの距離が大きくなるほど測距パルスのビーム径は大きくなるため、遠距離の測距をするほどノイズ点群の出現割合は大きくなる。ここで、図2に、LiDAR装置A1によって得られる点群を例示する。このとき、図2に示す符号P1,P2,P3は、それぞれ測定対象物T1,T2,T3の点群の模式図である。そして、図2に示す符号C1は、LiDAR装置A1を頂点とするレーザー光の形状を示しており、円錐状の領域を示す。本実施形態では、以下に説明するように、円錐状領域内の点群についての距離値の分布を用いて、三次ノイズ点群と判定し得る点群を除去することとする。
【0019】
[構成]
本実施形態における点群処理装置1は、演算装置と記憶装置とを備えた1台又は複数台の情報処理装置にて構成される。そして、点群処理装置1は、図3に示すように、点群切り出し手段11、点群分類手段12、点群生成手段13、を備える。点群切り出し手段11、点群分類手段12、点群生成手段13の各機能は、演算装置が記憶装置に格納された各機能を実現するためのプログラムを実行することにより実現することができる。以下、各構成について詳述する。
【0020】
点群切り出し手段11は、図示しない点群入力装置から点群データの入力を受け、指定した三次元領域内の点群について切り出し、抽出する機能を有する。なお、入力される点群データは、図1及び図2を参照して説明したように、LiDAR装置A1などの計測装置を用いて計測した対象物までの距離値を含む三次元点群データである。点群切り出し手段11は、例えば、LiDAR装置A1を頂点とするある立体角を持つ円錐領域のような錐体状の領域を指定し、点群の切り出しを行うこととする。なお、指定する領域の形状は任意であり、距離方向に無限長の直方体領域や球状の領域で指定してもよい。
【0021】
点群分類手段12(分類部)は、点群切り出し手段11から点群を受け取り、その点群に対しクラスタリングを行い、各点群についていずれかのクラスタに属するよう少なくとも一つ以上のクラスタに分類する。クラスタリングの手法は、例えば、k-means法のような分類手法を用いて点群の分類を行う。より具体的に、分類手法としては、例えば、点群の三次元の位置情報を用いたユークリッド距離に基づいた分類手法としてもよく、LiDAR装置A1を基準とする視線方向の距離による分類手法でもよい。特に、本実施形態では、LiDAR装置A1を基準とした点群の距離値のヒストグラムをもとに点群の分布の様子に基づいた分類手法を用いることとする。
【0022】
ここで、図4に、点群の距離値のヒストグラムの一例を示す。図4のヒストグラムは、図2における円錐状領域C1によって切り出される点群P1,P2,P3の距離値のヒストグラムを示している。点群分類手段12は、距離値のヒストグラムを用いて、距離値に応じて点群のクラスタを設定する。例えば、距離値が相互に所定の範囲内に位置する点群や、距離値が連続して存在している点群を、それぞれ1つのクラスタとして設定する。図4の例では、頻度が0となる距離値を境として、点群がそれぞれ符号H11,H12,H13に示すクラスタに分類されることとなる。図2に示す例では、対象物T1,T2,T3までの距離がそれぞれ異なり、各点群の距離値が各対象物までの距離付近に密集することとなるため、図4に示すように各クラスタH11,H12,H13に分類することができる。なお、クラスタH11は対象物T1、クラスタH12は対象物T2、クラスタH13は対象物T3、にそれぞれ対応しうる。
【0023】
点群生成手段13(決定部)は、点群分類手段12から各クラスタに分類された点群を受け取り、それぞれのクラスタに属する点群の採用および不採用の判別を行う。つまり、点群生成手段13は、クラスタに属する点群を対象物の点群として採用するか、あるいは、ノイズ点群として不採用つまり除去するか、を判定する。また、点群生成手段13は、クラスタを採用する場合には、その点群の三次元位置情報等について再計算を行い、新たに点群を生成してもよい。
【0024】
具体的に、点群生成手段13は、例えば、入力されたクラスタの点群の距離値の分布の仕方に応じて、クラスタに属する点群の採用不採用を判断する。ここで、点群の距離値は、LiDAR装置A1の測距精度やその他の測定条件に起因するばらつきを示し、点群の距離値のヒストグラムの形状は、通常は測定対象物までの距離値を中心としたガウス分布形状を示すこととなる。一方で、ノイズ信号から測距結果の算出を行った場合には、距離値はランダムな分布を示すこととなるため、点群の距離値のヒストグラムの形状は、距離に寄らず一定の頻度分布を示す。このため、点群の距離値のヒストグラムの形状から、対象物の点群として採用、あるいは、ノイズ点群として不採用、を判定することが可能である。
【0025】
そして、図4において、クラスタH11,H12における距離値のヒストグラムの形状は、ピークのあるガウシアンによる近似曲線を示す。このため、点群生成手段13は、距離値のヒストグラムにおいてガウス分布形状であるクラスタH11,H12は、対象物の点群のクラスタであると判断し、かかるクラスタH11,H12の点群を採用する。一方で、図4において、クラスタH13における距離値のヒストグラムは、一定の頻度分布形状である。このため、点群生成手段13は、クラスタH13はノイズ点群のクラスタであると判断し、かかるクラスタH13の点群は不採用とする。
【0026】
また、点群生成手段13は、例えば、クラスタの点群数つまり距離値の度数が閾値以上であるか否かに応じて、クラスタに属する点群の採用不採用を判断してもよい。ここで、対象物のクラスタと分類される点群数の方が、ノイズ点群のクラスタと分類される点群よりも多いと想定される。このため、点群生成手段13は、クラスタに含まれる点群数が、予め設定されたる閾値Th1以上であるという条件を満たした場合に、かかるクラスタの点群を採用してもよい。また、図4に示すような点群の距離値のヒストグラムにおいて、対象物のクラスタの点群は、特定の距離値において度数のピークを示すこととなる。このため、点群生成手段13は、各クラスタの距離値のヒストグラムにおいて、クラスタ内における所定の距離値の範囲を示す幅dRに含まれる点群数が、閾値Th2以上であるという条件を満たす場合に、かかるクラスタの点群を採用してもよい。
【0027】
また、採用する点群の判別において、LiDARの原理上、測定対象物の後方は死角領域となり、その領域内に存在する物体の点群は取得できない。このことから、点群生成手段13は、上述したように採用と判定したクラスタのうち、LiDAR装置A1から一番近いクラスタのみを抽出する、こととしてもよい。
【0028】
このように、点群生成手段13は、点群データの距離値のヒストグラムや、距離値の度数を利用して、クラスタごとの点群の採用不採用を判定している。つまり、点群生成手段13では、クラスタごとにおける距離値に分布に基づいて点群が対象物であるかノイズであるかを判定しており、その判定が容易となる。
【0029】
また、点群生成手段13は、採用すると判定したクラスタの点群から、新たに点群を生成してもよい。例えば、点群生成手段13は、クラスタの重心を代表点として抽出し、新たな点群として生成してもよい。ここで、LiDARによって取得される点群は、その測距精度により実際に対象物が存在する距離の前後に点が生成される場合がある。この点群の距離値の分布は、無作為に抽出した場合には物体の存在する距離を中心とした通常ガウス分布を示すため、点群生成手段13によって距離の再計算をする場合には、抽出されたクラスタに対して距離値の平均値や点群の重心、回帰分析によって得られるガウシアン中心位置を採用するなどが考えられる。このようにして、点群の分布に対する回帰分析や、平均値等の代表値の抽出により、採用する点群の座標を計算することで、LiDARで得られた点群データの精度を高められることが期待できる。これにより、例えば、図4に示す採用するクラスタH11,H12の近似曲線L11,L12は、点群の再生成により図5に示す近似曲線L21,L22のような分散の小さいガウシアン分布を示すことが期待される。
【0030】
[動作]
次に、上述した点群処理装置1の動作を、主に図6のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、点群切り出し手段11は、図示しない入力装置から点群データの入力を受ける(ステップS1)。なお、ステップS1で入力される点群データは、LiDAR装置A1の視点情報を保有するものとする。
【0032】
点群切り出し手段11は、入力された点群データから点群を切り出す領域を指定する(ステップS2)。そして、点群切り出し手段11は、指定した領域内に存在する点群について抽出し、点群分類手段12へ出力する(ステップS3)。例えば、点群切り出し手段11は、図2に示すように、LiDAR装置A1を頂点とする錐体状の領域C1を指定し、かかる領域C1内の点群を抽出する。
【0033】
点群分類手段12は、点群切り出し手段11から入力された点群を、少なくとも一つ以上のクラスタへと分類し、点群生成手段13に出力する(ステップS4)。このとき、点群分類手段12は、例えば、距離値のヒストグラムを用いて、距離値に応じて点群のクラスタを設定する。これにより、図4に示すように、点群を各クラスタH11,H12,H13に分類することができる。
【0034】
点群生成手段13は、点群分類手段12から入力されたクラスタリングされた点群について、各クラスタの点群の採用か不採用の判別を行う。例えば、点群生成手段13は、入力されたクラスタの点群の距離値の分布の仕方に応じて、クラスタに属する点群の採用不採用を判断する。一例として、点群の距離値が図4に示すようなヒストグラムの場合には、クラスタH11,H12はガウス分布形状であるため、対象物の点群のクラスタであると判断し、かかるクラスタH11,H12の点群を採用する。一方で、クラスタH13は一定の頻度分布形状であるため、クラスタH13はノイズ点群のクラスタであると判断し、かかるクラスタH13の点群は不採用とする。そして、点群生成手段13は、採用するクラスタの点群について代表点の計算を行い、新たな点群として生成し、生成した点群を図示しない出力装置に出力する(ステップS5)。
【0035】
以上のように、本実施形態における点群処理装置1によると、点群切り出し手段11によって抽出された領域内の点群について、点群が密集している場合であっても、ノイズ点群と判別される点群データを精度よく除去することができる。また、点群生成手段13によって採用された点群データに対して位置情報の算出を行うことで、測距精度を高めることができる。
【0036】
<実施形態2>
次に、本開示の第2の実施形態を、図7乃至図8を参照して説明する。図7乃至図8は、点群処理装置の処理動作を説明するための図である。なお、本実施形態における点群処理装置1は、上述した実施形態1で説明したものとほぼ同様の構成を有しているため、以下では、主に図8のフローチャートを参照して、上述した実施形態1と異なる点群処理装置1の機能について説明する。
【0037】
本実施形態における点群処理装置1は、実施形態1で説明したある特定領域に対しての処理を、点群の各部に適用することによって点群全体に対しノイズ除去を行うこととしている。具体的に、上述した実施形態1と同様に、まず点群切り出し手段11は、点群データの入力を受け(ステップS1)、入力された点群データから点群を切り出す領域を指定し(ステップS2)、指定した領域内に存在する点群について抽出する(ステップS3)。
【0038】
続いて、点群分類手段12は、点群切り出し手段11から入力された点群を少なくとも一つ以上のクラスタへと分類する(ステップS4)。ここで、点群分類手段12によってクラスタリングされる点群については、少なくとも1回以上クラスタリングされる。点群分類手段12によってクラスタリングされた点群が距離的に複数領域に分離している等の状況である場合、さらに詳細にクラスタリングを行ってもよい。
【0039】
ここで、図7に、2回以上のクラスタリングが必要となる場合の距離値のヒストグラムの例を示す。図7では、点群が3つのクラスタH31,H32,H33に分類された場合を示している。このとき、LiDAR装置A1に近い側である手前側に存在する対象物が複雑な構造を示すような場合には、多数のガウス分布が重なったような分布を示すことが想定される。このため、手前側に位置するクラスタH31は、ヒストグラムの分布形状つまり近似曲線が、それぞれL311,L312,L313に示すように複数のガウス分布が重なった形状となっている。また、クラスタH32は、奥側に存在する物体の点群に対応し、距離値のヒストグラムの近似曲線がL32に示すようになる。なお、クラスタH33は、ノイズ点群に対応する。
【0040】
上述したような状況において、さらに詳細にクラスタリングをする必要があるかどうかの判断については、LiDARの測距精度に基づく点群のばらつきから判断が可能である。これは、対象物からの反射によって得られる点群が示す各ガウス分布は、測距精度に対応する分散を示すためである。このため、点群分類手段12は、ステップS4によって分類された各クラスタについて、クラスタの分散が閾値以上となる場合については、さらに詳細にクラスタリングによる分類を行う。このように、点群分類手段12は、分類したクラスタに含まれる点群の距離値の分布に基づいて再分類が必要と判断した場合には、かかるクラスタの点群をさらに詳細に複数のクラスタに再分類する。
【0041】
図7の例では、点群分類手段12は、クラスタH31については、ヒストグラムにおける分散が閾値以上でありさらに詳細にクラスタリングすると判断されて(ステップS4’でYes)、かかるクラスタH31の点群を再度クラスタリングする(ステップS4)。なお、点群分類手段12は、再分類の際には、クラスタリングする基準を変更して行う。例えば、点群分類手段12は、距離値のヒストグラムにおいて、距離値のより狭い範囲内に位置する点群を1つのクラスタに設定する。このようにして、図7に示すクラスタH31は、各近似曲線L311,L312,L313に示される各ガウス分布形状の各クラスタに再分類されることとなる。なお、点群分類手段12は、クラスタリングされた点群の分散の値が閾値未満となり、それ以上クラスタリングを必要としないと判断された場合(ステップS4でNo)、クラスタリングされた点群について点群生成手段13へと出力する。
【0042】
続いて、点群生成手段13は、上述同様に、点群分類手段12から入力されたクラスタリングされた点群について各クラスタの点群の採用か不採用の判別を行い、採用するクラスタの点群を出力する(ステップS5)。
【0043】
その後、点群処理装置1は、ステップS2~S5の一連の動作が終了した際に、その他に点群処理を必要とする領域が残されているかを調べ、残されている場合(ステップS5’でYes)、再度、異なる領域を指定して上述した同様の処理を繰り返すことにより、入力された点群の各部について点群処理を行う。
【0044】
<実施形態3>
次に、本開示の第3の実施形態を、図9乃至図10を参照して説明する。図9乃至図10は、実施形態3における情報処理装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明した点群処理装置の構成の概略を示している。
【0045】
まず、図9を参照して、本実施形態における情報処理装置100のハードウェア構成を説明する。情報処理装置100は、一般的な情報処理装置にて構成されており、一例として、以下のようなハードウェア構成を装備している。
・CPU(Central Processing Unit)101(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)102(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)103(記憶装置)
・RAM103にロードされるプログラム群104
・プログラム群104を格納する記憶装置105
・情報処理装置外部の記憶媒体110の読み書きを行うドライブ装置106
・情報処理装置外部の通信ネットワーク111と接続する通信インタフェース107
・データの入出力を行う入出力インタフェース108
・各構成要素を接続するバス109
【0046】
なお、図9は、情報処理装置100である情報処理装置のハードウェア構成の一例を示しており、情報処理装置のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、情報処理装置は、ドライブ装置106を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。また、情報処理装置は、上述したCPUの代わりに、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(TensorProcessingUnit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0047】
そして、情報処理装置100は、プログラム群104をCPU101が取得して当該CPU101が実行することで、図10に示す分類部121と決定部122とを構築して装備することができる。なお、プログラム群104は、例えば、予め記憶装置105やROM102に格納されており、必要に応じてCPU101がRAM103にロードして実行する。また、プログラム群104は、通信ネットワーク111を介してCPU101に供給されてもよいし、予め記憶媒体110に格納されており、ドライブ装置106が該プログラムを読み出してCPU101に供給してもよい。但し、上述した分類部121と決定部122とは、かかる手段を実現させるための専用の電子回路で構築されるものであってもよい。
【0048】
上記分類部121は、所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類する。上記決定部122は、前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する。
【0049】
本開示は、以上のように構成されることにより、三次元点群データの距離値の分布に基づいて採用するクラスタを決定することで、点群が密集している場合であっても、ノイズ点群と判別される点群データを精度よく除去することができる。
【0050】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0051】
以上、上記実施形態等を参照して本開示を説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、上述した分類部121と決定部122との機能のうちの少なくとも一以上の機能は、ネットワーク上のいかなる場所に設置され接続された情報処理装置で実行されてもよく、つまり、いわゆるクラウドコンピューティングで実行されてもよい。
【0052】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本開示における情報処理装置、情報処理方法、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本開示は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類する分類部と、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する決定部と、
を備えた情報処理装置。
(付記2)
付記1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値のヒストグラムに基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
(付記3)
付記2に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、前記ヒストグラムの形状に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
(付記4)
付記3に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、前記ヒストグラムの形状がガウス分布形状である前記クラスタを、採用する前記クラスタとして決定する、
情報処理装置。
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の度数に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
(付記6)
付記5に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の度数が予め設定された閾値以上である前記クラスタを、採用する前記クラスタとして決定する、
情報処理装置。
(付記7)
付記1乃至6のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、採用する前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値に基づいて当該距離値の代表値を算出する、
情報処理装置。
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記分類部は、分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、当該クラスタに含まれる前記三次元点群データを複数の前記クラスタに再分類し、
前記決定部は、再分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理装置。
(付記9)
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
情報処理方法。
(付記10)
所定領域における対象物までの距離値を含む三次元点群データを、前記距離値に基づいて1つ以上のクラスタに分類し、
分類した前記クラスタに含まれる前記三次元点群データの前記距離値の分布に基づいて、採用する前記クラスタを決定する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0053】
1 点群処理装置
11 点群切り出し手段
12 点群分類手段
13 点群生成手段
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 プログラム群
105 記憶装置
106 ドライブ装置
107 通信インタフェース
108 入出力インタフェース
109 バス
110 記憶媒体
111 通信ネットワーク
121 分類部
122 決定部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10