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特開2024-162860光硬化性組成物及びその硬化物、部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162860
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光硬化性組成物及びその硬化物、部材
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/38 20060101AFI20241114BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08F220/38
C08F220/20
C08F220/28
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078799
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】592019589
【氏名又は名称】ダイセル・オルネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 喜一
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL09S
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100AM21Q
4J100BA02P
4J100BA03Q
4J100BA06P
4J100BA16Q
4J100BA55R
4J100BA56R
4J100BA64Q
4J100CA03
4J100CA06
4J100CA23
4J100DA36
4J100DA62
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA18
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】内装用建材、水回り部材などへの応用が可能な光硬化性組成物であって、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善することができる光硬化性組成物及びその硬化物と、硬化物を備える部材の提供。
【解決手段】硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む、光硬化性組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)を含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化性成分が(D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化性成分の総量に対する、前記(B)成分の割合が0.01~20質量%である、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の平均官能基数が2~4である、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が酸変性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記(B)成分における水酸基含有(メタ)アクリルアミドが、ヒドロキシエチルアクリルアミドである、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光硬化性組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を備える、部材。
【請求項10】
内装用部材又は水回り部材である、請求項9に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、光硬化性組成物及びその硬化物、部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内装用部材、水回り部材などにおいて、硬化性組成物に対するエネルギー線硬化により、部材上の塗膜表面を親水化することが行われている。
【特許文献1】特開2013-71118号公報
【発明の概要】
【0003】
そこで本開示の課題は、内装用部材、水回り部材などへの応用が可能な光硬化性組成物であって、硬化塗膜の外観不良をより改善することができる光硬化性組成物及びその硬化物と、硬化物を備える部材の提供とする。
【0004】
本願発明者らは鋭意検討した結果、光硬化性組成物において、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む硬化性成分を用いることより、前述の課題を解決できることを見出した。
更に、この光硬化性組成物は、防滑性を悪化することが知られてるフッ素やシリコーン、耐薬品性を悪化することが知られてる界面活性剤を使用することなく硬化塗膜に親水性を付与することができるため、硬化塗膜表面に防汚性、耐薬品性、防滑性、易清掃性を付与することができ、内装用部材、水回り部材などに好適に用いることができる。
又、この光硬化性組成物は、硬化塗膜のヘイズを抑えることが可能である(すなわち、透明性が高い)ため、内装用部材、水回り部材に用いられる意匠を施した基材にも広く応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
すなわち、本実施形態は以下の態様を有する。
[1]硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む、光硬化性組成物。
[2]前記(A)成分が、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)を含む、[1]に記載の光硬化性組成物。
[3]前記硬化性成分が(D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、[1]又は[2]に記載の光硬化性組成物。
[4]前記硬化性成分の総量に対する、前記(B)成分の割合が0.01~20質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[5]前記(A)成分の平均官能基数が2~4である、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[6]前記(B)成分が酸変性(メタ)アクリレートモノマーを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[7]前記(B)成分における水酸基含有(メタ)アクリルアミドが、ヒドロキシエチルアクリルアミドである、[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の光硬化性組成物の硬化物。
[9][8]に記載の硬化物を備える、部材。
[10]内装用部材又は水回り部材である、[9]に記載の部材。
【0006】
従来の防汚性、耐薬品性、防滑性、又は易清掃性を付与する方法では、硬化塗膜の外観不良が伴うことが多い。
本実施形態によれば、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善することができる光硬化性組成物及びその硬化物と、硬化物を備える部材を提供できる。
【0007】
以下、本実施形態の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本実施形態の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本実施形態は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本実施形態において数値範囲についての「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
【0008】
[光硬化性組成物]
本実施形態における第1の実施形態は、
硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む、光硬化性組成物に関する。第1の実施形態によれば、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善することができる光硬化性組成物を提供できる。
【0009】
<硬化性成分>
第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む硬化性成分を含む。
【0010】
((A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー)
硬化性成分は、(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(A)成分としての(メタ)アクリレートモノマーは、アクリレート及びメタクリレートの両方を含み得る。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(A)成分としての(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、「2官能以上の」とは、成分(A)に含まれる官能基数の平均値(平均官能基数)が2以上であることを指す。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、「官能基」とは、光重合可能な官能基を意味する。
一実施形態において、(A)成分の平均官能基数は、2~6であってもよく、2~5であってもよく、2~4であってもよく、3~4であってもよい。平均官能基数が前記範囲内であれば、硬化塗膜の外観の仕上がりがより改善し易い。
【0011】
一実施形態において、(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの原子量換算の分子量(g/mol)は、100~600であることが好ましく、より好ましくは150~600、更に好ましくは150~500、特に好ましくは150~400である。
【0012】
上記(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、2官能(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、4,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレートなどが挙げられる。
【0013】
上記(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、3官能(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0014】
上記(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、4官能(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
上記(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、5官能(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
上記(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーのうち、6官能(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
一実施形態において、(A)成分としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びエトキシ化グリセリントリアクリレートからなる群から選択される一以上の2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。
【0018】
第1の実施形態に係る光硬化性組成物における(A)成分は、硬化性成分総量を100質量%として、40~99.9質量%であってよく、50~99.9質量%であってよく、60~99.9質量%であってよく、70~99.9質量%であってよく、80~99.9質量%であってよく、90~99.9質量%であってよい。
【0019】
一実施形態において、硬化塗膜の外観の仕上がりの観点から、(A)成分は、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)を含むことが好ましい。水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)における水酸基の数は特に限定されず、1~10であってもよく、1~5であってもよい。
一実施形態において、(A)成分に含まれる2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一実施形態において、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)は、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の水酸基含有2官能(メタ)アクリレート系化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート等の多官能の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物からなる群から選択される一以上の2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)が好ましい。
一実施形態において、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、又はこれらの混合物であることが好ましく、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物であることがより好ましい。
【0020】
(A)成分は、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)を含む場合、(A)成分総量を100質量%として、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)が、40~99.9質量%であってよく、50~99.9質量%であってよく、60~99.9質量%であってよく、70~99.9質量%であってよく、80~99.9質量%であってよく、90~99.9質量%であってもよく、100質量%であってもよい。
【0021】
((B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド)
硬化性成分は、(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミドを含む。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(B)成分としての水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーは、アクリレート及びメタクリレートの両方を含み得る。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(B)成分としての酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び水酸基含有(メタ)アクリルアミドは、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマーは、酸変性部分が塩の形態になっているものは含まない。
一実施形態において、(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマーの酸価(mgKOH/g)は、80~800が好ましく、より好ましくは200~500、特に好ましくは250~400である。
一実施形態において、(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、カルボン酸変性(メタ)アクリレート、リン酸変性(メタ)アクリレート、多塩基酸(コハク酸、フタル酸等)変性(メタ)アクリレート、及びスルホン酸変性(メタ)アクリレートからなる群から選択される一以上の酸変性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
一実施形態において、(B)成分:水酸基含有(メタ)アクリルアミドの非限定的な例としては、アルキル基の炭素数が1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及び8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される一以上の水酸基含有(メタ)アクリルアミドが好ましい。
一実施形態において、(B)成分は、1種以上の酸変性(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一実施形態において、(B)成分としては、酸成分が、カルボン酸、リン酸、及びコハク酸から選択される一以上である酸変性(メタ)アクリレートモノマー、及び/又は、アルキル基の炭素数が1~5のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドであることが好ましく、β-カルボキシエチルアクリレート、リン酸変性メタクリレート、リン酸変性アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、及びヒドロキシエチルアクリルアミドからなる群から選択される一以上の酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミドであることがより好ましく、β-カルボキシエチルアクリレート、リン酸変性メタクリレート、リン酸変性アクリレート、及び2-アクリロイルオキシエチルコハク酸からなる群から選択される一以上の酸変性(メタ)アクリレートモノマーであることが特に好ましい。
【0022】
第1の実施形態に係る光硬化性組成物における(B)成分は、硬化性成分総量を100質量%として、0.01~40質量%であってよく、0.01~35質量%であってよく、0.01~30質量%であってよく、0.01~25質量%であってよく、0.01~20質量%であってよく、0.01~15質量%であってよく、0.01~10質量%であってよい。
一実施形態において、(B)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部配合することが好ましく、0.1~15質量部がより好ましく、1~15質量部がさらに好ましく、1~10質量部が特に好ましい。
【0023】
((C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩)
硬化性成分は、(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩を含む。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(C)としての(メタ)アクリル変性スルホン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物において、(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩は、酸変性部分が塩の形態である。
一実施形態において、(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩の非限定的な例としては、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム、メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸のナトリウムまたはカリウム塩からなる群から選択される一以上の(メタ)アクリル変性スルホン酸塩が好ましい。
一実施形態において、(C)成分としては、アクリル酸3-スルホプロピルカリウム、メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される一以上の(メタ)アクリル変性スルホン酸塩であることがより好ましい。
【0024】
第1の実施形態に係る光硬化性組成物における(C)成分は、硬化性成分総量を100質量%として、0.01~5質量%であってよく、0.01~4質量%であってよく、0.01~3質量%であってよく、0.01~2.5質量%であってよく、0.01~2質量%であってよく、0.01~1.5質量%であってよく、0.01~1質量%であってよい。
一実施形態において、(C)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部配合することが好ましく、0.1~3質量部がより好ましく、0.5~2質量部がさらに好ましく、0.5~1.5質量部が特に好ましい。
【0025】
((D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー)
一実施形態において、耐薬品性の向上の観点から、硬化性成分は、前記(A)~(C)成分に加え、(D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。(D)成分における水酸基の数は特に限定されず、1~10であってもよく、1~5であってもよい。
一実施形態において、(D)成分としての1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物であってもよい。
一実施形態において、(D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルモノ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート及びそれらを水添したもの等の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一以上の1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
一実施形態において、(D)成分としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される一以上の1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。
【0026】
一実施形態において、光硬化性組成物が(D)成分を含む場合、(D)成分は、硬化性成分総量を100質量%として、0.01~50質量%であってよく、0.01~30質量%であってよく、0.01~25質量%であってよく、0.01~20質量%であってよく、0.01~15質量%であってよく、0.01~1質量%であってよい。
一実施形態において、光硬化性組成物が(D)成分を含む場合(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、5~30質量部配合することが好ましく、5~25質量部がより好ましく、5~20質量部がさらに好ましく、10~20質量部が特に好ましい。
【0027】
<光重合開始剤>
第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、さらに光重合開始剤を含む。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(例えば、日本化薬(株)製、商品名「KAYACURE(登録商標) EPA」等)、2,4-ジエチルチオキサンソン(例えば、日本化薬(株)製、商品名「KAYACURE DETX」等)、2-メチル-1-[4-(メチル)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1(例えば、チバガイギ-(株)製、商品名「イルガキュア(登録商標) 907」等)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、IGM社製、商品名「Omn184」等)、2-ジメチルアミノ-2-(4-モルホリノ)ベンゾイル-1-フェニルプロパン等の2-アミノ-2-ベンゾイル-1-フェニルアルカン化合物、テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノベンゼン誘導体、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾ-ル(例えば、保土谷化学(株)製、商品名「B-CIM」等)等のイミダゾール化合物、2,6-ビス(トリクロロメチル)-4-(4-メトキシナフタレン-1-イル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル化トリアジン化合物、2-トリクロロメチル-5-(2-ベンゾフラン2-イル-エテニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、光増感剤を加えてもよい。
【0028】
光硬化性組成物中の光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の総質量に対して、1~5質量%であることが好ましく、より好ましくは2.5~5質量%であり、さらに好ましくは4~5質量%である。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることにより、後述する紫外線等により、本実施形態に係る硬化性組成物を適度に硬化することができる。
【0029】
(その他の添加剤)
本実施形態に係る光硬化性組成物には、硬化性成分、光重合開始剤以外の任意の成分(その他の添加剤)を含むことができる。その他の添加剤としては特に限定されず、光硬化性組成物及び/又は熱光硬化性組成物に配合可能な、任意の添加剤を配合できる。例えば、光重合開始剤以外のラジカル重合開始剤、紫外線吸収剤、反応促進剤、光安定剤、表面調整剤等を配合してもよい。
【0030】
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、公知乃至慣用のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、シアノアクリレート系、ジヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0031】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノー3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノー3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)-フェニルメタノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ターシャリーブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノルキシ)エトキシ]フェノール、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-(2’エチル)ヘキシル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ等が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルメタノンが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
・光安定剤
光安定剤としては、公知乃至慣用のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、2,2,6,6-テトラアルキル-4-ピペリジルエステル(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルエステルなど)、4-アルコキシ-2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン[例えば、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の、4-(C1-10アルコキシ)-2,2,6,6-ピペリジン;4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の、4-(C6-10アリールオキシ)-2,2,6,6-ピペリジン;4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の、4-(C6-10アリール)-(C1-4アルキル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等]、ビス(2,2,6,6-テトラアルキル-4-ピペリジルオキシ)アルカン[例えば、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン等のビ、ス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)(C2-6アルカン)等]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及びβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールとの反応生成物等が挙げられる。なお、光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
・反応促進剤
反応促進剤としては、公知乃至慣用のものを使用でき、特に限定されないが、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の第三級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;アルミニウムアセチルアセトン錯体等の金属キレート等が挙げられる。なお、反応促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
従来から、(メタ)アクリロイル基変性のスルホン酸塩と(メタ)アクリロイルモノマー類を組み合わせた組成物が知られているが、前述の通り、硬化塗膜の外観不良が伴うことが多い。本願発明者らは、樹脂組成物とスルホン酸塩の相溶性の悪さから、硬化塗膜の外観不良が発生することを突き止めた。本実施形態に係る光硬化性組成物は、(A)成分及び(C)成分に、(B)成分を組み合わせることで、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善できる。さらに、硬化性成分として比較的低分子量の化合物を含むため粘度が低く、流動性も良好となりやすい。一実施形態において、光硬化性組成物の25℃における粘度は1~1000mPa.sであってもよく、1~500mPa.sであってもよい。光硬化性組成物の粘度が前記範囲内であれば、良好な密着性の成膜、スプレーやカーテンコートでの成膜が可能なり、塗膜の仕上がりが良好となりやすい。
【0035】
<光硬化性組成物の製造方法>
第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、前述の硬化性成分と、光重合開始剤と、必要に応じて前述のその他の添加剤及び溶剤とを混合することにより製造できる。第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、樹脂成分((A)及び(B)成分)と(C)成分の相溶性がより高いため、(C)成分を溶解させるために用いる溶剤の減量、または溶剤を使用せずに組成物とすることが可能である。なお、溶剤を用いる場合、低級アルコールや2-メトキシエタノール等の親水性溶剤を用いることが好ましい。混合の手段としては、公知乃至慣用の手段、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式攪拌装置等を使用できる。混合の際の温度、回転数等の条件は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0036】
第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、光硬化することで、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善することが可能である。このような光硬化性組成物は、例えば、様々な部材、特に内装用部材又は水回り部材として好適に用いることができる。なお、当然のことながら、光硬化性組成物の用途は内装用部材及び水回り部材に限定されない。
【0037】
[硬化物]
本実施形態における第2の実施形態は、第1の実施形態に係る光硬化性組成物の硬化物である。第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、光照射によって、硬化物とすることができる。なお、第2の実施形態に係る硬化物には、前述の光硬化性組成物に後述する紫外線や活性エネルギー線等の光を照射して硬化反応を促進させたもののみならず、完全に硬化させたものも含まれる。また、光硬化性組成物に光照射を行って、流動性が無くなる程度まで硬化させた状態の「半硬化物」も、本実施形態の硬化物に含まれる。
【0038】
本実施形態に係る硬化物は、例えば、第1の実施形態に係る光硬化性組成物を、基材等の対象物に塗工した後、光硬化を行って、硬化塗膜として得ることができる。
【0039】
本発明の光硬化性組成物は、上述のとおり必要に応じて希釈溶剤を用い、塗布液状としてこれを基材上の面に塗布することができる。塗布する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、例えば、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピンコート、などが挙げられる。
【0040】
(光硬化)
光硬化は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して行うことが好ましい。
紫外線照射を行う際の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。紫外線の照射時間は、光源種、光源と塗工面との距離、その他の条件等により、数秒間~数十秒間の間で任意に調整できる。
一方、電子線照射の場合は、例えば、50~1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2~5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80~300W/cm程度の照射源が用いられる。
【0041】
硬化塗膜の厚さは特に限定されず、用途に応じて任意に調整できる。例えば、10~1000μm、好ましくは300~500μmの範囲で調整してもよい。
【0042】
光硬化性組成物を塗工する対象物(被塗工物)は、その形状、材質等は特に限定されないが、材質としては、例えば、樹脂、金属、ガラス、木材、紙等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレンスルファイド、ナイロン-6等、が挙げられる。金属としては、例えば、アルミ、SUS、鉄、銅等が挙げられる。樹脂、ガラス、木材、紙等の表面に金属蒸着を行ったものが被塗工物であっても、被塗工物の塗工面に離型処理等が施されていてもよい。
【0043】
一実施形態において、以下の条件で測定した、厚み20μmの硬化塗膜のヘイズは、1.2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
<ヘイズ測定条件>
光硬化性組成物をPETフイルム基材(例えば、『コスモシャイン(登録商標)A4160』(100μm)、東洋紡(株)製)上に膜厚:20μmとなるように塗布し、UVランプを照射して硬化塗膜を作成する。得られた硬化塗膜をヘイズメーター(例えば、『NDH 4000』、日本電色工業(株)製)を使用し、ヘイズを測定する。
【0044】
[部材]
本実施形態の第3の実施形態は、第2の実施形態に係る硬化物を備える、部材である。このような部材としては特に限定されないが、内装用部材又は水回り部材であることが好ましい。以下、部材の一態様として、内装用部材及び水回り部材の詳細について説明する。
【0045】
<内装用部材>
本実施形態の第3の実施形態において、「内装用部材」とは、壁、床、天井等の製造時に使用され得るすべての部材であり、内装の表面部分を覆う仕上げ材及び仕上げ材を設置するための下地となる下地材であるかを問わない。非限定的な例としては、フローリング、畳、壁紙、タイル、塗り壁、構造用合板等である。
【0046】
<水回り部材>
本実施形態の第3の実施形態において、「水回り部材」とは、風呂場、トイレ、洗面所、プール等、水又は湯を使用する場所で使われ得るすべての部材を意味する。非限定的な例としては、風呂場、トイレ、洗面所及びプール等における天井、壁、シンク、ホース、パイプ、バルブ等である。
【実施例0047】
以下に実施例を示して本実施形態を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0048】
[材料]
実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
<(A)成分>
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(モノマー(a1))の約1:3の混合物(ダイセル・オルネクス(株)製、平均官能基数約5.2)
・PETRA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレート(モノマー(a1))の約2:3の混合物(ダイセル・オルネクス(株)製、平均官能基数3.4)
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、平均官能基数3)
・EBECRYL(登録商標)40:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、平均官能基数4)
・EBECRYL160:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、平均官能基数3)
・NKエステル A-GLY-3E:エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製、平均官能基数3)
<(B)成分>
・β-CEA:β-カルボキシエチルアクリレート(アクリル酸20%含有)(ダイセル・オルネクス(株)製)
・EBECRYL168:リン酸変性メタクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、酸価:290mgKOH/g)
・EBECRYL170:リン酸変性アクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、酸価:300mgKOH/g)
・NKエステル A-SA:2-アクリロイルオキシエチルコハク酸(新中村化学工業(株)製、酸価:260mgKOH/g)
・HEAA:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(KJケミカルズ(株)製)
<(C)成分>
・SPAAK:アクリル酸3-スルホプロピルカリウム(シグマアルドリッチ社製)
・SPMAK:メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム(東京化成工業(株)製)
<(D)成分>
・HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル((株)日本触媒製)
・HPMA:メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル((株)日本触媒製)
・HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
<表面調整剤>
・BYK-UV3535:片末端変性非シリコーン系変性ポリエーテル表面調整剤(BYK,ビッグケミージャパン(株)製)
<光重合開始剤>
・Omnirad(登録商標)127:2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製)
・Benzophenone:ベンゾフェノン(富士フイルム和光純薬(株)製)
<希釈溶剤>
・Methoxyethanol:2-メトキシエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0049】
[実施例1~17及び比較例1~8]
上記材料を用いて、表1~3に示す割合で各成分を褐色スクリュー管瓶に秤量し、70℃で1時間加温した。攪拌脱泡装置(『マゼルスター(登録商標)』、クラボウ(株)製)を用いて攪拌脱泡を行い、目視により溶解を確認し、実施例及び比較例に係る各光硬化性組成物を得た。
実施例及び比較例に係る各光硬化性組成物を以下の工程により光硬化し、硬化塗膜を得た。
(1)塗工工程
ワイヤバーコーターNo.14-18を用いて、各光硬化性組成物をガラス板(70mm×150mm×1.0mm)に塗布した。
(2)乾燥工程
70℃のオーブン内に15分静置し、希釈溶剤(2-Methoxyethanol)の乾燥を行った。
(3)光硬化工程
窒素ガス雰囲気下で、コンベア型紫外線(UV)照射機(光源:高圧水銀灯)を用いて、紫外線強度:300mW/cm、積算光量:1000mJ/cmの条件で光硬化した。
【0050】
実施例及び比較例に係る各光硬化性組成物及び各硬化塗膜について、以下の条件で硬化塗膜外観評価、HAZE測定、水接触角測定及び耐薬品性評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0051】
<硬化塗膜外観評価>
目視により各硬化塗膜の外観を判定した。表1~3中の記号は以下を意味する。
A・・・塩の析出なし、曇りなし、レベリング性に問題なし。
B・・・塩の析出、レベリング性には問題ないが、わずかに曇りがある。
C・・・塩の析出はないが、レベリング性には問題があり、わずかに曇りもある。
D・・・塩の析出が確認され、レベリング性に問題があり、曇りもある。
【0052】
<ヘイズ測定>
ヘイズメーター(『NDH 4000』、日本電色工業(株)製)を使用し、光硬化性組成物をPETフイルム基材(コスモシャインA4160(100μm)、東洋紡(株)製)上に膜厚:20μmとなるように塗布し、UVランプを照射して硬化塗膜を作成した。得られた各硬化塗膜をヘイズメーター(『NDH 4000』、日本電色工業(株)製)を使用し、ヘイズを測定した。
表1~3において、ヘイズ(%)が1.0より小さい時、硬化塗膜に曇りはなく、ヘイズ(%)が1.0~1.2の時、硬化塗膜にはわずかに曇りがあり、ヘイズ(%)が1.2を超えるとき、硬化塗膜に曇りが観察された。
【0053】
<水接触角測定>
接触角計(『Drop Master DM700』、協和界面科学(株)製)を使用して、硬化塗膜表面への着滴(イオン交換水の液滴(2μl))認識後1秒後の接触角を測定した。
【0054】
<耐薬品性評価>
(1)毛染め液、うがい薬
毛染め液(『ビゲンクリームトーン(登録商標) 7G』、ホーユー(株)製)、うがい薬(『イソジン(登録商標)』、ムンディファーマ(株)製)のそれぞれを各硬化塗膜上に約0.2gをのせた後、23℃、相対湿度50%RHで24時間放置後の汚染の痕を目視で確認した。
表1~3中の数字は以下を意味する。
5・・・汚染痕なし
4・・・わずかに汚染痕あった
3・・・汚染痕あった
2・・・汚染痕が確認され、明確な着色が見られた
1・・・汚染痕が確認され、基材まで浸透していた
(2)油性マジック
油性マジック(『Twin Marker』、(株)パイロットコーポレーション製)を使用して、各硬化塗膜上に約5cmのインク痕を作成し、5分間室温で乾燥させた後、イオン交換水を含ませた脱脂綿で擦り、インク痕の除去が可能かどうかを目視で確認した。
表1~3中の数字は以下を意味する。
5・・・インク痕が残らずに除去可能であった
4・・・わずかにインク痕が残る箇所があった
3・・・インク痕が残る箇所が確認された
2・・・インク痕の除去が可能な箇所があったが、50%以上インク痕が残った
1・・・インク痕の除去ができなかった
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1~3に示されているように、第1の実施形態に係る光硬化性組成物の構成を満たす実施例1~17は、より外観の良好な硬化塗膜を与えた。すなわち、第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、従来よりも硬化塗膜の外観不良を改善することができることが分かった。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物の構成を満たす実施例1~17は、30°未満の水接触角を有する硬化塗膜を与えた。すなわち、第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、防滑性を悪化させることが知られているフッ素やシリコーン、耐薬品性を悪化させることが知られている界面活性剤を使用することなく、親水性を付与することができるため、硬化塗膜表面に防汚性、耐薬品性、防滑性、易清掃性の付与することができる。このような硬化塗膜が得られる光硬化性組成物は、内装用部材、水回り部材などに好適に用いることができる。
表1~3において、ヘイズ(%)が1.0より小さい時、硬化塗膜に曇りはなく、ヘイズ(%)が1.0~1.2の時、硬化塗膜にはわずかに曇りがあり、ヘイズ(%)が1.2を超えるとき、硬化塗膜に曇りが観察された。表1~3に示されているように、第1の実施形態に係る光硬化性組成物の構成を満たす実施例1~17は、よりヘイズが抑えられた硬化塗膜(すなわち、透明性が高い)を与えた。すなわち、第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、意匠を施した基材にもより広く応用できる特性を有することが分かった。
第1の実施形態に係る光硬化性組成物の構成を満たす実施例1~17は、耐薬品性、特に油性マジックに対して、より強い耐薬品性を示した。すなわち、第1の実施形態に係る光硬化性組成物は、より強い耐薬品性を有する硬化塗膜を与えることができることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は水酸基含有(メタ)アクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含み、
前記硬化性成分の総量に対する、前記(A)成分の割合が40~99.9質量%であり、前記(B)成分の割合が0.01~40質量%であり、前記(C)成分の割合が0.01~4質量%である、光硬化性組成物。
【請求項2】
硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:カルボキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含み、
前記硬化性成分の総量に対する、前記(A)成分の割合が40~99.9質量%であり、前記(B)成分の割合が0.01~40質量%であり、前記(C)成分の割合が0.01~5質量%である、光硬化性組成物。
【請求項3】
硬化性成分と、光重合開始剤とを含み、
前記硬化性成分が、
(A)成分:2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(B)成分:酸変性(メタ)アクリレートモノマー及び/又はヒドロキシエチルアクリルアミド、及び
(C)成分:(メタ)アクリル変性スルホン酸塩、
を含む、
前記硬化性成分の総量に対する、前記(A)成分の割合が40~99.9質量%であり、前記(B)成分の割合が0.01~40質量%であり、前記(C)成分の割合が0.01~5質量%である、光硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、2官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(a1)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記硬化性成分が(D)成分:1官能の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性成分の総量に対する、前記(B)成分の割合が0.01~20質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の平均官能基数が2~4である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記(B)成分が酸変性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1又はに記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
前記(B)成分における水酸基含有(メタ)アクリルアミドが、ヒドロキシエチルアクリルアミドである、請求項に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
前記(B)成分が、カルボン酸変性、コハク酸変性又はフタル酸変性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を備える、部材。
【請求項13】
内装用部材又は水回り部材である、請求項12に記載の部材。