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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162870
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20241114BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241114BHJP
   A47C 7/68 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N2/90
A47C7/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078818
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC02
3B087DE00
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】他のシート又は自身の車体に対する位置が変化しても、様々な物又は体の一部を載せることが可能な支持部を乗員が利用し易い状態にでき、乗員の腕を疲れ難くできるとともに、必要に応じて支持部を乗員に煩わしさを感じさせない位置へ移動させられる車両用シートを得る。
【解決手段】シートバック17にシート左右方向に延びる第1回転軸20回りに回転可能に接続され、先端部がシートバックの前面より前方に位置する使用位置と、使用位置より後方の格納位置と、の間を回転可能な左右一対の回転アーム22と、一対の回転アームの間に設けられ、回転アームが使用位置にあるときシートバックの前面より前方に位置し、回転アームが格納位置にあるときシートバックの上端より上方又はシートバックより後方に位置する支持部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに接続されたシートバックと、
前記シートバックにシート左右方向に延びる第1回転軸回りに回転可能に接続され、先端部が前記シートバックの前面より前方に位置する使用位置と、前記使用位置より後方の格納位置と、の間を回転可能な左右一対の回転アームと、
一対の前記回転アームの間に設けられ、前記回転アームが前記使用位置にあるとき前記シートバックの前面より前方に位置し、前記回転アームが前記格納位置にあるとき前記シートバックの上端より上方又は前記シートバックより後方に位置する支持部と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
一対の前記回転アームが前記支持部を、シート左右方向に延びる第2回転軸回りに回転可能に支持する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記支持部の厚み方向の一方側の面と、前記厚み方向の他方側の面と、が異なる材料によって構成されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
一対の前記回転アームの回転動作を同期させるように、一対の前記回転アームを連係させる連係機構を備える請求項2に記載の車両用シート。
【請求項5】
一対の前記回転アームが、
前記第1回転軸に接続された第1アームと、
前記支持部が設けられた第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとを、シート左右方向に延びる第3回転軸回りに回転可能に接続するヒンジ機構と、
を備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートバックの上端部に接続されたヘッドレストを備え、
前記回転アームが前記格納位置にあるとき、前記第2アームに設けられた前記支持部が前記ヘッドレストの後方に位置する請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記第1アームが、前記第1回転軸回りに前端位置と、前記前端位置より後方の後端位置と、の間を回転可能であり、
前記第2アームが前記第1アームに対して、離間位置と、前記第2アームの先端部が前記離間位置よりも前記第1アームに接近する接近位置と、の間を回転可能であり、
前記第1アームが前記前端位置に位置し且つ前記第2アームが前記離間位置に位置するときの前記回転アームの位置が前記使用位置であり、
前記第1アームが前記後端位置に位置し且つ前記第2アームが前記接近位置に位置するときの前記回転アームの位置が前記格納位置であり、
前記第1アームが前記前端位置と前記後端位置との間の所定位置より前記前端位置側に位置するとき、前記第2アームが前記接近位置に位置するのを規制し、且つ、前記第1アームが前記所定位置に位置するか又は前記所定位置より前記後端位置側に位置するとき、前記第2アームが前記接近位置に位置するのを許容する回転制御機構を備える請求項5に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、前席である車両用シートが開示されている。この車両用シートのシートバックの後面には、ディスプレイ装置が回転可能に設けられている。ディスプレイ装置が所定の回転位置にあるとき、ディスプレイ装置の一つの面がテーブル面として利用可能になる。そのため後席の乗員は、このテーブル面に様々な物又は自分の手を載せることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-212648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、前席(車両用シート)の車体に対する位置が変化したり、後席の車体に対する位置が変化したりすると、後席の乗員がテーブル面を利用し難くなるおそれがある。
【0005】
また、後席の乗員は、特許文献1のテーブル面に肘を載せるのが難しい。そのためテーブル面を利用している乗員の腕が疲れやすい。
【0006】
さらに上記特許文献1では、後席の乗員がディスプレイ装置を利用しないときも、ディスプレイ装置が後席の乗員の目の前に位置する。そのため、ディスプレイ装置が後席の乗員に煩わしさを感じさせるおそれがある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、他のシート又は自身の車体に対する位置が変化しても、様々な物又は体の一部を載せることが可能な支持部を乗員が利用し易い状態にでき、乗員の腕を疲れ難くできるとともに、必要に応じて支持部を乗員に煩わしさを感じさせない位置へ移動させられる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッションに接続されたシートバックと、前記シートバックにシート左右方向に延びる第1回転軸回りに回転可能に接続され、先端部が前記シートバックの前面より前方に位置する使用位置と、前記使用位置より後方の格納位置と、の間を回転可能な左右一対の回転アームと、一対の前記回転アームの間に設けられ、前記回転アームが前記使用位置にあるとき前記シートバックの前面より前方に位置し、前記回転アームが前記格納位置にあるとき前記シートバックの上端より上方又は前記シートバックより後方に位置する支持部と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の車両用シートは、先端部がシートバックの前面より前方に位置する使用位置と、使用位置より後方の格納位置と、の間を回転可能な左右一対の回転アームを備える。さらに一対の回転アームの間に支持部が設けられている。回転アームが使用位置にあるとき、支持部はシートバックの前面より前方に位置する。そのため回転アームが使用位置にあるとき、乗員は、様々な物又は自分の体の一部を支持部に載せることが可能である。さらに回転アーム及び支持部はシートバックに設けられている。従って、請求項1に記載の車両用シートは、他のシート又は自身の車体に対する位置が変化しても、支持部を乗員が利用し易い状態にできる。
【0010】
さらに、例えば回転アームが使用位置にあるとき、乗員は肘を回転アームに載せられる。そのため、請求項1に記載の車両用シートは、乗員の腕を疲れ難くすることが可能である。
【0011】
さらに回転アームが格納位置にあるとき、支持部がシートバックの上端より上方又はシートバックより後方に位置する。従って、請求項1に記載の車両用シートは、回転アームが格納位置にあるとき、支持部によって乗員に煩わしさを感じさせるおそれが小さい。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、一対の前記回転アームが前記支持部を、シート左右方向に延びる第2回転軸回りに回転可能に支持する。
【0013】
請求項2に記載の車両用シートでは、一対の回転アームが、支持部をシート左右方向に延びる第2回転軸回りに回転可能に支持する。従って、請求項2に記載の車両用シートは、支持部の回転アームに対する回転位置を変化させられるので、支持部を乗員がより利用し易い状態にできる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記支持部の厚み方向の一方側の面と、前記厚み方向の他方側の面と、が異なる材料によって構成されている。
【0015】
請求項3に記載の車両用シートでは、支持部の回転アームに対する回転位置を変化させることにより、支持部の厚み方向の一方側の面又は他方側の面を乗員側に向けることが可能になる。従って、請求項3に記載の車両用シートは、乗員による支持部の使い勝手を向上させられる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、一対の前記回転アームの回転動作を同期させるように、一対の前記回転アームを連係させる連係機構を備える。
【0017】
請求項4に記載の車両用シートは、一対の回転アームの回転動作を同期させられる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、一対の前記回転アームが、前記第1回転軸に接続された第1アームと、前記支持部が設けられた第2アームと、前記第1アームと前記第2アームとを、シート左右方向に延びる第3回転軸回りに回転可能に接続するヒンジ機構と、を備える。
【0019】
請求項5に記載の車両用シートの回転アームは、ヒンジ機構を介して接続された第1アームと第2アームを有する。従って、請求項5に記載の車両用シートは、回転アームがヒンジ機構を備えない場合と比べて、格納位置にある回転アームをコンパクトな状態にできる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックの上端部に接続されたヘッドレストを備え、前記回転アームが前記格納位置にあるとき、前記第2アームに設けられた前記支持部が前記ヘッドレストの後方に位置する。
【0021】
請求項6に記載の車両用シートは、回転アームが格納位置にあるとき、第2アームに設けられた支持部をヘッドレストの後方に位置させる。従って、請求項6に記載の車両用シートは、回転アームが格納位置にあるとき、支持部によって乗員に煩わしさを感じさせるおそれが小さい。
【0022】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記第1アームが、前記第1回転軸回りに前端位置と、前記前端位置より後方の後端位置と、の間を回転可能であり、前記第2アームが前記第1アームに対して、離間位置と、前記第2アームの先端部が前記離間位置よりも前記第1アームに接近する接近位置と、の間を回転可能であり、前記第1アームが前記前端位置に位置し且つ前記第2アームが前記離間位置に位置するときの前記回転アームの位置が前記使用位置であり、前記第1アームが前記後端位置に位置し且つ前記第2アームが前記接近位置に位置するときの前記回転アームの位置が前記格納位置であり、前記第1アームが前記前端位置と前記後端位置との間の所定位置より前記前端位置側に位置するとき、前記第2アームが前記接近位置に位置するのを規制し、且つ、前記第1アームが前記所定位置に位置するか又は前記所定位置より前記後端位置側に位置するとき、前記第2アームが前記接近位置に位置するのを許容する回転制御機構を備える。
【0023】
請求項7に記載の車両用シートは、回転アームが使用位置から格納位置側へ移動するときの回転アームの移動軌跡を、乗員にとって好ましい移動軌跡に設定することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートは、他のシート又は自身の車体に対する位置が変化しても、様々な物又は体の一部を載せることが可能な支持部を乗員が利用し易い状態にでき、乗員の腕を疲れ難くできるとともに、必要に応じて支持部を乗員に煩わしさを感じさせない位置へ移動させられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シート及び乗員の側面図である。
図2】第1実施形態に係る車両用シートの回転アームが使用位置にあるときの斜視図である。
図3】第1実施形態に係る車両用シートの回転アームが格納位置にあるときの斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る車両用シート及び乗員の側面図である。
図5】第2実施形態に係る車両用シートの支持部の側面図である。
図6】第2実施形態に係る車両用シートの回転アームが使用位置にあるときの斜視図である。
図7】第2実施形態に係る車両用シートの支持部の回転位置が図6とは異なるときの斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る車両用シート及び乗員の側面図である。
図9】回転アームの回転位置が変化するときの第3実施形態に係る車両用シート及び乗員の側面図である。
図10】第3実施形態の変形例に係る車両用シートの回転アームが格納位置にあるときの斜視図である。
図11】第1実施形態の変形例に係る車両用シートの図2と同様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図3を用いて本発明の第1実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前後方向(シート前後方向)の前方向を示し、矢印UPは車両上下方向(シート上下方向)の上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(シート左右方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(車両幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示す。
【0027】
図1に示されたように車両10の車室の床面12には車両用シート15が設けられている。車両用シート15は、床面12にスライドレール12A及び支持部材12Bを介して固定されたシートクッション16と、シートクッション16の後端部に下端部がリクライニング機構(図示省略)を介して回転可能に接続されたシートバック17と、シートバック17の上端部に設けられたヘッドレスト18を有する。スライドレール12Aは、シートクッション16の床面12に対する前後方向位置を調整可能である。
【0028】
シートバック17の左右両側面には、左右方向に延びる2つの第1回転軸20が、それぞれ固定されている。即ち、シートバック17の内部を第1回転軸20が左右方向に貫通していない。一般的にシートバック17の内部には様々な部材が設けられている。これらの部材には、例えばランバーサポート機構が含まれる。しかしシートバック17の内部を第1回転軸20が左右方向に貫通していないので、シートバック17の内部において第1回転軸20がこれらの部材と干渉することがない。即ち、ランバーサポート機構等の影響によりシートバック17の内部において第1回転軸20を設けるための十部なスペースを確保するのが難しい場合においても、左右の第1回転軸20をシートバック17に設けることが可能である。
【0029】
さらに左右の第1回転軸20には、左右一対の回転アーム22が回転可能に支持されている。左右の回転アーム22は、例えば、樹脂又は金属によって構成される。各回転アーム22の側面形状は略V字形である。即ち、回転アーム22は、第1構成部23、第2構成部24及び第3構成部25を一体的に有する。第1構成部23の長手方向の一方の端部が、第1回転軸20を介してシートバック17に支持されている。回転アーム22は第1回転軸20を中心に、図1に実線で示された使用位置と、図1に仮想線で示された格納位置と、の間をシートバック17に対して相対回転可能である。さらに第1回転軸20と回転アーム22との間には第1ストッパ機構(図示省略)が設けられている。第1ストッパ機構は、回転アーム22が使用位置より前方に回転すること、及び、回転アーム22が格納位置より後方に回転することを規制する。
【0030】
左右の第3構成部25の対向面にはテーブル(支持部)28の左右両端部がそれぞれ固定されている。テーブル28は、板状部材であり、その厚み方向に見たときの形状は略長方形である。
【0031】
回転アーム22及びテーブル28の自重に起因して、第1回転軸20には回転トルクが発生する。そのため、回転アーム22又はテーブル28に所定値以上の大きさの外力が及ばない限り、回転アーム22の第1回転軸20回りの回転位置は変化しない。換言すると、乗員PSが回転アーム22を回転させるために回転アーム22又はテーブル28に意図的に外力を付与したときは、回転アーム22の第1回転軸20に対する回転位置が変化する。
【0032】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
車両用シート15の回転アーム22は、使用位置と、使用位置より後方の格納位置と、の間を回転可能である。回転アーム22が使用位置にあるとき、回転アーム22の先端部(テーブル28)がシートバック17の前面より前方に位置する。そのため回転アーム22が使用位置にあるとき、例えば乗員PSは、図1に示されたように、肘PS1を第2構成部24に載せ且つ手PS2を第3構成部25に載せた状態で、手PS2でスマートフォン30を持つことが可能である。このときのスマートフォン30の上下方向の位置(高さ)は、乗員PSのほぼ水平方向を向いている頭部PS3の顎とほぼ同じ高さになる。即ち、乗員PSは水平方向より大幅に下側を向いた状態でスマートフォン30を見ない。そのため乗員PSは、車両の窓ガラス(図示省略)を通して車外の風景を認識しながらスマートフォン30を操作できるので、乗り物酔いを起こし難い。
【0034】
なお乗員PSが車両10の運転者の場合は、車両10がSAE(Society of Automotive Engineers)(アメリカ自動車技術会)が定めるレベル4又は5の運転レベルの運転支援制御を実行しているときに乗員PSは回転アーム22及びテーブル28を利用してスマートフォン30を操作することが許容される。一方、乗員PSが運転者ではない場合は、乗員PSは常に回転アーム22及びテーブル28を利用してスマートフォン30を操作することが許容される。
【0035】
さらに回転アーム22はシートバック17に設けられている。そのため、車両用シート15の直前に位置する別の車両用シート32(図1の仮想線参照)の床面12に対する前後方向位置が変化したり、スライドレール装置12Aの働きにより車両用シート15の床面12に対する前後方向位置が変化したりしても、シートバック17と回転アーム22の相対位置は変化しない。そのため車両用シート15は、このような変化が生じた場合においても、乗員PSにとってのテーブル28の使い易さを変わらないようにできる。
【0036】
さらに回転アーム22は、使用位置と格納位置との間の任意の回転位置に保持されることが可能である。例えば図1に一点鎖線で示された位置に保持されることが可能である。このように回転アーム22の回転位置を変更すると、テーブル28の高さ及びテーブル28と頭部PS3(眼球)との距離が変化する。そのため回転アーム22の回転位置を適宜所定の位置に変化させることにより、乗員PSの体格の大きさ、及び、シートバック17のシートクッション16に対するリクライニング角度の大きさに拘わらず、テーブル28の高さ及びテーブル28と頭部PS3(眼球)との距離を乗員PSにとって適切な大きさに設定できる。
【0037】
さらに乗員PSは、自身の肘PS1を回転アーム22(第2構成部24)に載せ且つ手PS2を回転アーム22(第3構成部25)又はテーブル28に載せることが可能である。即ち、肘PS1と手PS22が回転アーム22(及びテーブル28)の2か所(2点)によって支持された状態で、乗員PSはスマートフォン30を操作できる。そのため車両用シート15は、スマートフォン30を操作している乗員PSの腕を疲れ難くでき、且つ、スマートフォン30がテーブル28に対して不意に移動することを防止できる。
【0038】
さらに図1の仮想線及び図3に示されたように、回転アーム22が格納位置にあるとき、テーブル28がシートバック17の上端及びヘッドレスト18の上方に位置する。従って、車両用シート15は回転アーム22が格納位置にあるときに、テーブル28によって乗員PSに煩わしさを感じさせるおそれが小さい。
【0039】
続いて、図4図7を用いて本発明の第2実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すにとどめて、その詳細な説明は省略する。
【0040】
左右の回転アーム22の第1回転軸20と反対側の端部の間には、左右方向に延びる1本の第2回転軸34が設けられており、第2回転軸34に支持部36が回転可能に支持されている。第2回転軸34と支持部36の間にストッパ機構は設けられていない。そのため支持部36は第2回転軸34回りに自由に回転可能である。
【0041】
図5図7に示されたように、支持部36は平面視略長方形の板状部材である。図5に示されたように支持部36は、互いに固定され且つ互いに仕様が異なる第1板状部37及び第2板状部38を備える。第1板状部37及び第2板状部38は共に、平面視略長方形の板状部材である。第1板状部37と第2板状部38は互いに異なる材料によって構成されている。第1板状部37の表面は、第2板状部38の表面より柔らかい材質によって構成されている。例えば、第1板状部37を板状の弾性材料の表面を柔らかい表皮材によって覆うことにより構成し、第2板状部38を硬質樹脂材料により構成してもよい。そのため、第1板状部37の表面の一部であり図5において支持部28の上面をなす第1支持面37Aは、第2板状部38の表面の一部であり図5において支持部28の下面をなす第2支持面38Aより柔らかい。さらに図5に示されたように、支持部36の中央部を貫通孔39が左右方向に貫通している。第2回転軸34が貫通孔39に相対回転可能に挿入されている。
【0042】
支持部36の自重に起因して第2回転軸34には回転トルクが発生する。そのため、支持部36に所定値以上の大きさの外力が及ばない限り、支持部36の第2回転軸34回りの回転位置は変化しない。換言すると、乗員PSが支持部36を回転させるために支持部36に意図的に外力を付与したときは、支持部36の回転アーム22に対する回転位置が変化する。
【0043】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
回転アーム22が使用位置にあるとき、例えば乗員PSは図4に示されたように、肘PS1を第2構成部24に載せ且つタブレット型コンピュータ41を支持部36の表面に載せた状態で、手PS2でタブレット型コンピュータ41を操作できる。
【0045】
さらに支持部36が左右の回転アーム22に対して第2回転軸34回りに回転可能である。そのため支持部36の回転アーム22に対する回転角度を変えることにより、頭部PS3に対する支持部36の相対角度が変化する。そのため乗員PSは、目でタブレット型コンピュータ41を視認し易く且つ手PS2でタブレット型コンピュータ41を操作し易くなるように、支持部36の回転アーム22に対する角度を調整可能である。例えば、支持部36の回転アーム22に対する回転角度を変えることにより、支持部36に載せられたタブレット型コンピュータ41を、ほぼ水平方向を向いている頭部PS3の眼球又は顎とほぼ高さに位置させることが可能である。
【0046】
さらに支持部36の第1板状部37の表面は、第2板状部38の表面より柔らかい材質によって構成されている。そのため、支持部36の第2回転軸34に対する回転位置を調整することにより、第1板状部37の第1支持面37Aを乗員PSの頭部PS3側に向けたり、第2板状部38の第2支持面38Aを頭部PS3側に向けたりすることが可能である。そのため乗員PSは、例えば硬い第2板状部38(第2支持面38A)にタブレット型コンピュータ41を載せながらタブレット型コンピュータ41を操作可能である。また乗員PSは、手PS2でスマートフォン30を把持しながら、手PS2を柔らかい第1板状部37(第1支持面37A)に載せることが可能である。このように車両用シート15Aは、支持部36が第2回転軸34に対して固定されていたり、支持部36全体が同じ材料により構成されていたりする場合と比べて、乗員PSによる支持部36の使い勝手を向上させられる。
【0047】
続いて、図8及び図9を用いて本発明の第3実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同じ部材には同じ符号を付すにとどめて、その詳細な説明は省略する。
【0048】
第3実施形態の車両用シート15Bの回転アーム45は、第1アーム47、第2アーム51及びヒンジ機構(回転制御機構)54を有する。左右の第1アーム47の側面形状は略V字形である。第1アーム47は、第1構成部48及び第2構成部49を一体的に有する。第1構成部48の第2構成部49と反対側の端部が第1回転軸20に回転可能に支持されている。左右の第2アーム51の側面形状は直線形状である。左右の第2アーム51の一方の端部と、対応する第2構成部49の先端部との間にそれぞれヒンジ機構54が設けられている。ヒンジ機構54は、左右方向に延びる第3回転軸53回りに回転可能に第2構成部49と第2アーム51とを接続する。
【0049】
図9に示されたように、第1アーム47は実線で示された前端位置と、仮想線で示された前端位置より後方の後端位置と、の間をシートバック17に対して相対回転可能である。さらに第1回転軸20と第1アーム47との間には第1ストッパ機構が設けられている。第1ストッパ機構は、第1アーム47が前端位置より前方に回転すること、及び、第1アーム47が後端位置より後方に回転することを規制する。
【0050】
図9に示されたように、第2アーム51は実線で示された離間位置と、仮想線で示された離間位置よりも第1アーム47に接近する接近位置と、の間を第1アーム47に対して相対回転可能である。さらに第1アーム47と第2アーム51との間には第2ストッパ機構が設けられている。第2ストッパ機構は、第2アーム51が離間位置よりも第1アーム47に対して前方に回転すること、及び、第2アーム51が第1アーム47に対して接近位置よりも後方に回転することを規制する。
【0051】
図9に実線で示されたように、第1アーム47が前端位置に位置し且つ第2アーム51が離間位置に位置するときの回転アーム45の位置が使用位置である。図9に仮想線で示されたように、第1アーム47が後端位置に位置し且つ第2アーム51が接近位置に位置するときの回転アーム45の位置が格納位置である。さらに図9に一点鎖線で示されたように、第1アーム47及び第2アーム51の回転位置を変化させることにより、回転アーム45を様々な回転位置へ移動させられる。
【0052】
ここで、図9に符号PMで示された第1アーム47のシートバック17に対する回転位置を中間位置(所定位置)と定義する。ヒンジ機構54は、第1アーム47が中間位置より前端位置側に位置するとき、第2アーム51を離間位置に保持する。即ち、ヒンジ機構54は、第1アーム47が中間位置より前端位置側に位置するとき、第2アーム51が離間位置より接近位置側に回転するのを規制する。一方、ヒンジ機構54は、第1アーム47が中間位置に位置するとき、及び、中間位置より後端位置側に位置するとき、第2アーム51が離間位置と接近位置との間を回転することを許容する。
【0053】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0054】
図8に示されたように回転アーム45が使用位置にあるとき、例えば水平状態にある支持部36の第2板状部38の第2支持面38Aにノートパソコン58を載せることが可能である。そのため乗員PSは、手PS2でノートパソコン58を操作できる。
【0055】
回転アーム45が図9に仮想線で示された格納位置にあるとき、回転アーム45が第1実施形態の格納位置にある回転アーム22よりコンパクトな状態になる。
【0056】
回転アーム45が格納位置にあるとき、図9に仮想線で示されたように支持部36及び第2アーム51が、シートバック17より後方且つヘッドレスト18の直後に位置する。そのため車両用シート15Bは、回転アーム45が格納位置にあるときに、支持部36及び第2アーム51によって乗員PSに煩わしさを感じさせるおそれが小さい。
【0057】
さらにヒンジ機構54は、第1アーム47が中間位置より前端位置側に位置するとき、第2アーム51が離間位置より接近位置側に回転するのを規制する一方で、第1アーム47が中間位置に位置するとき及び中間位置より後端位置側に位置するとき、第2アーム51が離間位置より接近位置側に回転するのを許容する。そのため車両用シート15Bでは、回転アーム45が使用位置から格納位置側へ移動するときの回転アーム45の移動軌跡を、乗員PSにとって好ましい移動軌跡に設定することが可能である。即ち、車両用シート15Bは、回転アーム45が使用位置から格納位置側へ移動するときに、第2アーム51又は支持部36が乗員PSに接触するおそれを小さくできる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、図10に示された第3実施形態の変形例のように、支持部36の第1板状部37又は第2板状部38にタブレット型コンピュータ60を固定してもよい。このようにすれば回転アーム45が格納位置にあるときに、車両用シート15Bの直後に設けられた車両用シート(図示省略)に着座した乗員がタブレット型コンピュータ60のディスプレイ61を見たり、ディスプレイ61(タッチパネル)に対して手PS2でタッチ操作したりすることが可能になる。
【0060】
また図11に示された第1実施形態の変形例のように、左右の回転アーム22(第1構成部23)の後端面に平面形状が略U字形をなす連結部材(連係機構)62の左右両端部をそれぞれ固定してもよい。この変形例においても、シートバック17の左右両側面には2つの第1回転軸20がそれぞれ固定されており、シートバック17の内部を第1回転軸20が左右方向に貫通していない。この連結部材62は、左右方向に直線的に延びる直線状部63と、直線状部63の左右両端部にそれぞれ設けられた左右一対の接続部64と、を備える。左側の接続部64が左側の回転アーム22の後端面に固定され、右側の接続部64が右側の回転アーム22の後端面に固定されている。左右の回転アーム22が第1回転軸20回りに回転するとき、連結部材62はシートバック17の後面より後方に位置する。このように連結部材62を左右の回転アーム22に固定すると、連結部材62によって左右の回転アーム22の回転動作が同期させられる。そのためこの変形例によれば、左右の回転アーム22が回転するときに、回転アーム22及びテーブル28が捻じれるおそれが小さくなる。なお、この変形例は第2実施形態及び第3実施形態にも適用可能である。
【0061】
また図示は省略されているが、左右の回転アーム22(第1構成部23)の後端部がシートバック17の後面より後方に位置するように第1実施形態の回転アーム22を設計変更し、この左右の回転アーム22の後端部に直線状部63に相当する部材(連係機構)の左右両端部をそれぞれ固定してもよい。なお、この変形例は第2実施形態及び第3実施形態にも適用可能である。
【0062】
また図示は省略されているが、第1実施形態においてシートバック17を左右方向に貫通する一本の第1回転軸(連係機構)20をシートバック17に回転可能に設けて、この第1回転軸20の左右両端部に左右の回転アーム22をそれぞれ固定してもよい。この変形例の車両用シートは、連結部材62(直線状部63)を具備しないものの、第1回転軸20によって左右の回転アーム22の回転動作を同期させられる。なお、この変形例は第2実施形態及び第3実施形態にも適用可能である。これにより、第2実施形態の左右の回転アーム22の回転動作が同期させられ、第3実施形態の左右の第1アーム47の回転動作が同期させられる。
【0063】
車両用シート15A、15Bに、支持部36の回転アーム22又は第2アーム51に対する回転位置を規制すること、及び、回転位置の規制を解除することが可能なストッパ機構(図示省略)が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0064】
15 15A 15B 車両用シート
16 シートクッション
17 シートバック
18 ヘッドレスト
20 第1回転軸(連係機構)
22 回転アーム
28 テーブル(支持部)
34 第2回転軸
36 支持部
47 第1アーム
51 第2アーム
53 第3回転軸
54 ヒンジ機構(回転制御機構)
62 連結部材(連係機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11