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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162876
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/19 20180101AFI20241114BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20241114BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241114BHJP
   H04W 36/08 20090101ALN20241114BHJP
【FI】
H04W76/19
H04W36/38
G05D1/02 P
H04W36/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078831
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】阪本 光翼
【テーマコード(参考)】
5H301
5K067
【Fターム(参考)】
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD16
5H301DD17
5H301DD18
5H301EE02
5H301KK02
5H301KK08
5H301KK09
5H301LL03
5H301MM04
5H301MM09
5H301MM10
5K067AA21
5K067DD24
5K067DD36
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ39
5K067JJ71
(57)【要約】
【課題】制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図ることが可能な物品搬送設備を実現する。
【解決手段】制御装置2と搬送車1とは、複数のアクセスポイントAPのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成されている。制御装置2は、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えた場合に、制御装置2から搬送車1への通信は有効なものとして、搬送車1に対して通信復旧のための指令Cоを送信する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記制御装置と前記搬送車とは、複数の前記アクセスポイントのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成され、
前記制御装置は、前記搬送車から前記制御装置への通信が途絶えた場合に、前記制御装置から前記搬送車への通信は有効なものとして、前記搬送車に対して通信復旧のための指令を送信する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記指令には、前記搬送車に接続先の前記アクセスポイントを切り替えさせるポイント切替指令が含まれる、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記指令には、前記搬送車を現在位置から移動させる移動指令が含まれる、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記搬送車に対して設定周期で確認信号を繰り返し送信するように構成され、
前記搬送車は、前記確認信号を受信したことに応じて、前記制御装置に対して受領信号を送信するように構成され、
前記制御装置は、前記搬送車からの前記受領信号を予め定められた設定期間受け取らなかった場合には、前記設定周期を短く変更する周期変更処理を実行する、請求項1から3の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記搬送車からの前記受領信号を受け取らない状態が、予め定められた認定基準期間継続した場合には、前記搬送車を通信不良車両に認定し、
前記制御装置は、前記通信不良車両に認定した前記搬送車の情報と、認定時の前記搬送車の位置の情報と、を紐づけて記憶する、請求項4に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備の一例が、特開2011-166671号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に記載された設備では、サーバ等の制御装置(18,20)と複数の搬送車(12)とが、無線LANを介して接続され、相互に通信するように構成されている。これにより、制御装置(18,20)は、無線通信によって、搬送車(12)の現在位置を把握したり、搬送車(12)に対して搬送指令などの指令を行ったりすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-166671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された設備では、制御装置(18,20)と搬送車(12)との通信に無線通信を用いているため、通信機器の異常や周囲の環境等によっては通信不良が生じ得る。通信不良の原因を必ずしも特定できるわけではないが、通信不良が生じた場合には、通信状態を良くするための何かしらの措置を講ずることが好ましい。
【0006】
上記実状に鑑みて、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図ることが可能な物品搬送設備の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記制御装置と前記搬送車とは、複数の前記アクセスポイントのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成され、
前記制御装置は、前記搬送車から前記制御装置への通信が途絶えた場合に、前記制御装置から前記搬送車への通信は有効なものとして、前記搬送車に対して通信復旧のための指令を送信する。
【0008】
制御装置と搬送車とが双方向に通信を行う構成において、搬送車から制御装置への通信が途絶えた場合であっても、制御装置から搬送車への通信が不能であるとは限らない。本構成によれば、制御装置は、搬送車から制御装置への通信が途絶えた場合には、制御装置から搬送車への通信は有効なものとして、搬送車に対して通信復旧のための指令を送信する。制御装置から搬送車への通信が有効であれば、制御装置から搬送車への指令は届くため、当該指令によって、通信復旧のための動作を搬送車に行わせることができる。従って、本構成によれば、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図ることが可能となる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】制御ブロック図
図3】通信構成を示す概念図
図4】ポイント切替指令に基づくアクセスポイントの切り替えを示す図
図5】移動指令に基づく搬送車の移動を示す図
図6】確認信号が送信される周期を示す図
図7】通信不良車両が認定された際に記憶される情報を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、物品搬送設備の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、物品搬送設備100は、規定の経路8を移動して物品(不図示)を搬送する搬送車1と、搬送車1を制御する制御装置2(図2等参照)と、を備えている。
【0013】
図3に示すように、本実施形態では、経路8は、天井付近に設置されたレール80を用いて構成されている。そして、搬送車1は、このようなレール80に支持されながら走行する、いわゆる天井搬送車として構成されている。本実施形態では、搬送車1は、本体部10と、レール80に沿って走行する走行部11と、物品を保持する保持部12と、を備えている。本体部10は、保持部12及び保持部12に保持された物品を収容可能に構成されている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、物品搬送設備100は、経路8に沿って設けられた複数の移載対象箇所9を備えている。移載対象箇所9は、経路8よりも下方に配置されている。本例では、経路8は、インターベイと、インターベイに接続された複数のイントラベイと、を備えている。各イントラベイに、複数の移載対象箇所9が設けられている。インターベイは、搬送車1が主に移動を行うための移動エリアと言い換えることができる。イントラベイは、搬送車1が主に物品の移載作業を行うための移載エリアと言い換えることができる。搬送車1は、保持部12(図3参照)を昇降させることにより、移載対象箇所9との間で物品を移載するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車1を複数備えている。複数の搬送車1のそれぞれは、制御装置2(図2等参照)から搬送指令を受けて、当該搬送指令に応じたタスクを実行するように構成されている。例えば搬送指令には、物品の搬送元と搬送先との情報が含まれる。搬送指令を受けた搬送車1は、搬送元から搬送先まで物品を搬送する。搬送元や搬送先には、移載対象箇所9が含まれる。
【0016】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。本例では、物品搬送設備100は、半導体製造工場に用いられる。そのため、基板(ウェハやパネル等)を収容する基板収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車1は、基板収容容器やレチクル収容容器などの物品を、経路8に沿って各工程間に亘って搬送する。
【0017】
本実施形態では、移載対象箇所9は、物品に対する処理を行う処理装置90と、処理装置90に隣接して配置された載置台91と、を備えている。本明細書において「物品に対する処理」とは、収容容器としての物品に収容された被収容物(基板やレチクル)に対する処理を意味する。搬送車1は、処理装置90による処理を終えた物品を載置台91から受け取り、又は、処理装置90による処理が済んでいない物品を載置台91に引き渡す。なお、処理装置90は、例えば、薄膜形成、フォトリソグラフィー、エッチングなどの種々の処理を行う。
【0018】
図2に示すように、物品搬送設備100は、それぞれが搬送車1との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントAP(図2では1つのアクセスポイントAPのみを示す。)を備えている。図1に示される複数の円形範囲のそれぞれの中央に、アクセスポイントAPが配置されている。これらの円形範囲は、各アクセスポイントAPの通信可能範囲の目安を示している。但し、これはあくまでも目安であり、円形範囲外であっても通信可能な場合がある。
【0019】
制御装置2と搬送車1とは、複数のアクセスポイントAPのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成されている。詳細は後述するが、制御装置2は、搬送車1に対して設定周期C(図6参照)で確認信号Scを繰り返し送信するように構成されている。搬送車1は、確認信号Scを受信したことに応じて、制御装置2に対して受領信号Srを送信するように構成されている。このような構成により、制御装置2は、搬送車1との通信状態を定期的に確認することができる。
【0020】
本実施形態では、制御装置2は、処理部20と記憶部21とを備えている。処理部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。記憶部21は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の当該演算処理装置が参照可能な記憶装置を用いて構成されている。そして、記憶部21に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置2の各機能部が機能する。制御装置2が備える処理部20は、各プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0021】
本実施形態では、搬送車1は、搬送車制御部13と無線通信機14とを備えている。搬送車制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。無線通信機14は、制御装置2と通信することが可能に構成されている。本例では、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPのそれぞれと無線で通信するように構成されている。そして、複数のアクセスポイントAPのそれぞれは、制御装置2と有線で通信するように構成されている。すなわち、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPの何れかを介して、制御装置2と通信することが可能に構成されている。
【0022】
図3に示すように、制御装置2は、操作端末に接続されている。作業者は、操作端末を操作することによって各種指令を制御装置2に入力することができ、また、操作端末を用いて制御状況を参照することができる。
【0023】
アクセスポイントAPは、無線アクセスポイント機器を用いて構成されている。アクセスポイントAPは、無線の電波を発するように構成されている。アクセスポイントAPと搬送車1との通信強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)で表される。その単位は、例えばデシベルミリワット(dBm)とされる。
【0024】
以上説明したように、本開示に係る物品搬送設備100において制御装置2と搬送車1との通信には、アクセスポイントAPによる無線通信が用いられる。そのため、搬送車1とアクセスポイントAPとの間では通信不良が生じ得る。このような通信不良は、通信機器の異常や周囲の環境等が原因となって生じることがあるが、その原因を速やかに特定することは困難である。また、制御装置2と搬送車1との双方向の通信の何れもが満足にできなければ、通信不良と言える。すなわち、通信不良が生じる場合には、制御装置2から搬送車1への通信のみが不良である場合、搬送車1から制御装置2への通信のみが不良である場合、又は双方向の通信が不良である場合がある。しかしながら、通信不良の詳細を速やかに特定することは困難である。
【0025】
そこで図3に示すように、本開示に係る物品搬送設備100では、制御装置2は、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えた場合に、制御装置2から搬送車1への通信は有効なものとして、搬送車1に対して通信復旧のための指令Cоを送信する。説明を加えると、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えた場合には、制御装置2は、搬送車1からの応答を確認することができない。そのため制御装置2は、制御装置2から搬送車1への通信が有効であることも確認することができない。しかしながら、本開示に係る物品搬送設備100では、制御装置2は、制御装置2から搬送車1への通信は有効であると推定し、搬送車1に対して指令Cоを送信する。換言すれば、制御装置2は、制御装置2から搬送車1への通信が有効であるか無効であるかにかかわらず、搬送車1に対して指令Cоを送信する。これにより、制御装置2から搬送車1への通信が有効である場合には、搬送車1に指令Cоが届き、搬送車1が指令Cоに応じたタスクを実行することにより、通信の復旧が図られる。なお、制御装置2から搬送車1への通信復旧のための指令Cоは、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えた以後に送信されればよい。例えば、当該指令Cоは、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えたことと同時に送信されてもよいし、通信が途絶えた直後に送信されてもよいし、通信が途絶えてから予め設定された期間が経過した後に送信されてもよい。
【0026】
図4に示すように、本実施形態では、制御装置2が送信する指令Cоには、搬送車1に接続先のアクセスポイントAPを切り替えさせるポイント切替指令が含まれる。これにより、搬送車1に対して、より通信強度の強いアクセスポイントAPに切り替えることを促すことができる。従って、制御装置2と搬送車1との通信を復旧させ易くなる。
【0027】
本実施形態では、ポイント切替指令を受けた搬送車1は、新たな接続先の候補となる複数のアクセスポイントAPがある場合には、これら複数のアクセスポイントAPの中から何れかを選択して、当該選択したアクセスポイントAPに接続先を切り替える。例えば、搬送車1は、電波の受信強度を検出する受信強度検出部(不図示)を備え、受信強度検出部による検出結果に基づいて、接続先となるアクセスポイントAPを選択するようにしてもよい。この場合、搬送車1は、受信強度が最も強いアクセスポイントAPを選択するとよい。
【0028】
図4に示す例のように、第1のアクセスポイントAP1に接続した状態で移動している搬送車1は、制御装置2からポイント切替指令を受けた場合には、第1のアクセスポイントAP1以外のアクセスポイントAP(図示の例では第2のアクセスポイントAP2又は第3のアクセスポイントAP3)に接続先を切り替える。図示の例では、搬送車1は、第1のアクセスポイントAP1から第2のアクセスポイントAP2に接続先を切り替えている。
【0029】
図5に示すように、本実施形態では、制御装置2が送信する指令Cоには、搬送車1を現在位置から移動させる移動指令が含まれる。これにより、搬送車1が、現在位置よりも通信環境の良い場所に移動する可能性が高まる。従って、制御装置2と搬送車1との通信を復旧させ易くなる。
【0030】
移動指令が送信される前提として、搬送車1から制御装置2への通信が途絶えた状況である。そのため制御装置2は、搬送車1の現在位置を把握することができていない。しかしながら、制御装置2から搬送車1に移動指令が送信されることにより、搬送車1の現在位置がどこであるかにかかわらず、搬送車1はその現在位置から移動する。現在位置から移動を開始した搬送車1は、接続可能なアクセスポイントAPを探索し、探索したアクセスポイントAPとの接続をトライする。接続が成功すれば、制御装置2と搬送車1との通信が復旧する。なお、搬送車1が現在位置で停止した状態で物品の移載動作を行っている場合には、物品の移載動作を終えた後に、現在位置から移動する。
【0031】
本実施形態では、移動指令には、搬送車1が移動すべき移動先の情報が含まれる。或いは、制御装置2は、搬送車1に対して移動指令を送信すると共に、搬送車1が移動すべき移動先を指定する。
【0032】
本実施形態では、複数の情報保持体Mが、経路8の延在方向に沿って間隔を空けて設置されている。図5では、説明の便宜上、1つの情報保持体Mを示している。各情報保持体Mは、自らが設置されている地点のアドレス情報を保持している。搬送車1は、情報保持体Mからアドレス情報を読み取る読取装置を備えており、各情報保持体のアドレス情報を読み取りながら経路8を走行する。例えば、情報保持体Mとして、1次元コード又は2次元コードを用い、読取装置として、1次元コードリーダ又は2次元コードリーダを用いることができる。
【0033】
図5に示す例では、アドレス1001に設置された情報保持体Mが、搬送車1の移動先とされている。移動指令を受けた搬送車1は、アドレス1001に向けて移動する。アドレス1001に到着した搬送車1は、アドレス1001に到着するまでの間に最も近いアクセスポイントAPとの接続をトライする。接続が成功すれば、制御装置2と搬送車1との通信が復旧する。
【0034】
なお、移載対象箇所9が、当該移載対象箇所9に搬送車1を追い出す(換言すれば、退避させる)ことが可能な追い出し可能ステーション(追い出し可能箇所)と、当該移載対象箇所9に搬送車1を追い出すことができない追い出し不可能ステーション(追い出し不可能箇所)と、を含む場合には、追い出し可能ステーションが、移動指令が行われる際の搬送車1の移動先にされるとよい。また、移載対象箇所9が、搬送車1が待機しておくことが可能な待機可能ステーション(待機可能箇所)と、搬送車1が待機することができない待機不可能ステーション(待機不可能箇所)と、を含む場合がある。この場合、複数の待機不可能ステーションが、移動指令が行われる際の搬送車1の移動先に順次設定されると、搬送車1を常に移動している状態とすることができるため、接続先の候補となるアクセスポイントAPの数を増やすことができる。従って、接続のトライ回数を増やすことができ、制御装置2と搬送車1との通信復旧が期待できる。この場合、例えば、搬送車1が停止することなく周回可能な閉ループ状の経路に、複数の待機不可能ステーションが設定されているとよい。
【0035】
上述のように、本実施形態では、制御装置2は、搬送車1に対して確認信号Scを送信するように構成されており、搬送車1は、確認信号Scを受信したことに応じて制御装置2に対して受領信号Srを送信するように構成されている(図2参照)。
【0036】
図6に示すように、本実施形態では、制御装置2は、搬送車1に対して設定周期Cで確認信号Scを繰り返し送信するように構成されている。図6の横軸は、時間Tである。制御装置2は、図中の「ОN」のタイミングで搬送車1に確認信号Scを送信する。
【0037】
本実施形態では、制御装置2は、搬送車1からの受領信号Srを予め定められた設定期間P受け取らなかった場合には、設定周期Cを短く変更する周期変更処理を実行する。
【0038】
本実施形態では、複数の設定期間Pが設定されており、制御装置2は、設定期間Pが経過する毎に周期変更処理を実行する。図6に示す例では、少なくとも、第1設定期間P1、第2設定期間P2、及び第3設定期間P3が設定されている。
【0039】
制御装置2は、搬送車1から最後に受領信号Srを受け取った時点(以下、「最終受取時点T0」と称する。)から第1設定期間P1が経過するまでは、搬送車1に対して第1設定周期C1で確認信号Scを送信する。第1設定期間P1は例えば30秒であり、第1設定周期C1は、例えば10秒である。この場合、制御装置2は、第1設定期間P1内に確認信号Scを3回送信することになる。
【0040】
制御装置2は、最終受取時点T0から第1設定期間P1が経過するまでに搬送車1から受領信号Srを受け取らなかった場合には、周期変更処理を実行して、設定周期Cを第1設定周期C1から第2設定周期C2に変更する。制御装置2は、設定周期Cを第2設定周期C2に変更する周期変更処理を実行した時点T1から第2設定期間P2が経過するまでは、搬送車1に対して第2設定周期C2で確認信号Scを送信する。第2設定周期C2は、第1設定周期C1よりも短い。また、本例では、第2設定期間P2は、第1設定期間P1よりも短い。第2設定期間P2は例えば15秒であり、第2設定周期C2は、例えば5秒である。この場合、制御装置2は、第2設定期間P2内に確認信号Scを3回送信することになる。
【0041】
制御装置2は、設定周期Cを第2設定周期C2に変更する周期変更処理を実行した時点T1から第2設定期間P2が経過するまでに搬送車1から受領信号Srを受け取らなかった場合には、再び周期変更処理を実行して、設定周期Cを第2設定周期C2から第3設定周期C3に変更する。制御装置2は、設定周期Cを第3設定周期C3に変更する周期変更処理を実行した時点T2から第3設定期間P3が経過するまでは、搬送車1に対して第3設定周期C3で確認信号Scを送信する。第3設定周期C3は、第2設定周期C2よりも短い。また、本例では、第3設定期間P3は、第2設定期間P2よりも短い。第3設定期間P3は例えば9秒であり、第3設定周期C3は、例えば3秒である。この場合、制御装置2は、第3設定期間P3内に確認信号Scを3回送信することになる。
【0042】
本実施形態では、制御装置2は、搬送車1からの受領信号Srを受け取らない状態が、予め定められた認定基準期間Pt継続した場合には、搬送車1を通信不良車両に認定する。認定基準期間Ptの起算時点は、最終受取時点T0である。図示の例では、時刻T3において、認定基準期間Ptが終了し、通信不良車両の認定が行われる。本例では、認定基準期間Ptは、第1設定期間P1と第2設定期間P2と第3設定期間P3とを合計した期間に等しい。通信不良車両と認定された搬送車1の個体情報は、制御装置2の記憶部21に記憶される。なお、本例では、制御装置2は、搬送車1を通信不良車両と認定した後であっても、当該搬送車1に対して、確認信号Scを所定期間送信し続ける。また、制御装置2は、通信不良車両ではない他の搬送車1に対して、通信不良車両に対する接近を禁止する旨の接近禁止指令を送信するとよい。接近禁止指令を受けた搬送車1は、通信不良車両の周囲のエリア(例えば後方エリア)には進入しないようにすることで、通信不良車両に接近しないようにする。接近禁止指令は、通信不良車両の認定が行われる時刻T3以降に発せられるとよい。また、制御装置2は、接近禁止指令に代えて、通信不良車両以外の正常な搬送車1に対して、通信不良車両が走行していたレーンへの進入を禁止してもよい。或いは、制御装置2が、各レーンのコスト(重み)に基づき目的地までのコストが最小となる移動経路を選択する場合に、制御装置2は、通信不良車両が走行していたレーンのコストを上昇させることで、通信不良車両以外の正常な搬送車1の移動経路を決定する場合に、当該レーンが移動経路として選択され難くするようにしてもよい。
【0043】
図7に示すように、本実施形態では、制御装置2は、通信不良車両に認定した搬送車1の情報と、認定時の搬送車1の位置の情報と、を紐づけて記憶する。図7に示すように、「通信不良車両に認定した搬送車1の情報」は、搬送車1の個体情報である。「認定時の搬送車1の位置の情報」は、経路8上における地点の情報である。
【0044】
本実施形態では、制御装置2は、通信不良車両に認定した搬送車1の個体情報と、認定時において搬送車1が存在すると推定される位置の情報と、を紐づけて記憶する。説明を加えると、制御装置2は、通信不良車両である搬送車1との通信を行うことはできないため、当該搬送車1の現在位置を把握することはできない。最終受取時点T0における搬送車1の位置が、制御装置2が把握可能である最後の搬送車1の位置(以下、「最終把握位置」と称する。)である。本実施形態では、制御装置2は、搬送車1の最終把握位置に基づいて、通信不良車両と認定した時点における当該搬送車1の位置(以下、「推定位置」と称する。)を推定する。制御装置2は、通信不良車両に認定した搬送車1の個体情報と、認定時における当該搬送車1の推定位置の情報とを、記憶部21(図2参照)によって記憶する。記憶部21は、制御装置2の外部(例えば、制御装置2と通信可能なサーバ)に設けられてもよい。
【0045】
上記のように、制御装置2によって記憶部21に記憶された情報、すなわち、通信不良車両に認定した搬送車1の個体情報と、認定時における当該搬送車1の推定位置の情報とは、制御装置2と搬送車1との間で生じた通信不良の原因を特定するために用いることができる。例えば、通信不良車両と認定された搬送車1の情報を用いて、通信不良が特定の個体に基づくものか否かを把握可能となる。また、例えば、認定時の搬送車1の推定位置の情報を用いて、通信不良が周囲の環境(電波を遮断する構造物の存在など)や特定のアクセスポイントAP(アクセスポイントAPの故障など)に基づくものか否かを把握可能となる。
【0046】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について説明する。
【0047】
(1)上記の実施形態では、制御装置2は、通信不良車両に認定した搬送車1の情報と、認定時の搬送車1の位置の情報と、を紐づけて記憶する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、制御装置2は、最終受取時点T0における搬送車1の位置(最終把握位置)から通信不良車両と認定した時点T3において存在すると推定される搬送車1の位置(推定位置)までのエリアを算出し、当該エリアの情報を通信不良車両に認定した搬送車1の情報と紐づけて記憶してもよい。
【0048】
(2)上記の実施形態では、ポイント切替指令を受けた搬送車1は、新たな接続先の候補となる複数のアクセスポイントAPがある場合には、これら複数のアクセスポイントAPの中から何れかを選択して、当該選択したアクセスポイントAPに接続先を切り替える例について説明した。しかし、このような構成に限定されるものではない。搬送車1は、新たな接続先の候補となる複数のアクセスポイントAPがある場合に、複数のアクセスポイントAPに接続先としての優劣をつけることなく、各アクセスポイントAPへの接続をトライするように構成されていてもよい。この場合、搬送車1は、最初に接続できたアクセスポイントAPとの接続状態を維持するとよい。これにより、制御装置2と搬送車1との早期の通信復旧が期待できる。
【0049】
(3)上記の実施形態では、制御装置2が周期変更処理を実行するための基準となる設定期間Pが、複数設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、単一の設定期間Pが設定されていてもよい。
【0050】
(4)上記の実施形態では、第1設定期間P1と第2設定期間P2と第3設定期間P3とが、記載の順に次第に短くなるように設定されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、第2設定期間P2と第3設定期間P3とは同じ長さに設定されていてもよい。
【0051】
(5)上記の実施形態では、複数のアクセスポイントAPのそれぞれは、制御装置2と有線で通信するように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、複数のアクセスポイントAPの少なくとも一部が、無線によって、制御装置2と通信するように構成されていてもよい。
【0052】
(6)上記の実施形態では、経路8が、天井付近に設置されたレール80を用いて構成され、搬送車1が、レール80に支持されながら走行する天井搬送車として構成されている例について説明した。しかしながら、このような例に限定されることなく、搬送車1は、床面を走行する床面搬送車として構成されていてもよい。この場合、経路8は、床面に沿って設けられた磁気テープ等を用いて構成されていてもよいし、或いは、床面に沿って仮想的に設定されたものであってもよい。
【0053】
(7)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0054】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、本実施形態のまとめについて説明する。
【0055】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記制御装置と前記搬送車とは、複数の前記アクセスポイントのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成され、
前記制御装置は、前記搬送車から前記制御装置への通信が途絶えた場合に、前記制御装置から前記搬送車への通信は有効なものとして、前記搬送車に対して通信復旧のための指令を送信する。
【0056】
制御装置と搬送車とが双方向に通信を行う構成において、搬送車から制御装置への通信が途絶えた場合であっても、制御装置から搬送車への通信が不能であるとは限らない。本構成によれば、制御装置は、搬送車から制御装置への通信が途絶えた場合には、制御装置から搬送車への通信は有効なものとして、搬送車に対して通信復旧のための指令を送信する。制御装置から搬送車への通信が有効であれば、制御装置から搬送車への指令は届くため、当該指令によって、通信復旧のための動作を搬送車に行わせることができる。従って、本構成によれば、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図ることが可能となる。
【0057】
前記指令には、前記搬送車に接続先の前記アクセスポイントを切り替えさせるポイント切替指令が含まれる、と好適である。
【0058】
本構成によれば、搬送車に接続先のアクセスポイントを切り替えさせることができる。これにより、搬送車が、より通信強度の強いアクセスポイントに切り替えることが促されるため、制御装置との通信を復旧させ易くなる。
【0059】
前記指令には、前記搬送車を現在位置から移動させる移動指令が含まれる、と好適である。
【0060】
本構成によれば、搬送車を現在位置から移動させることができる。これにより、搬送車が、現在位置よりも通信環境の良い場所に移動する可能性が高まるため、制御装置との通信を復旧させ易くなる。
【0061】
前記制御装置は、前記搬送車に対して設定周期で確認信号を繰り返し送信するように構成され、
前記搬送車は、前記確認信号を受信したことに応じて、前記制御装置に対して受領信号を送信するように構成され、
前記制御装置は、前記搬送車からの前記受領信号を予め定められた設定期間受け取らなかった場合には、前記設定周期を短く変更する周期変更処理を実行する、と好適である。
【0062】
本構成によれば、制御装置は、搬送車との通信状態の確認を定期的に行うことができる。そして、搬送車からの応答(受領信号の送信)が設定期間無い場合には、確認信号を送信する頻度を多くすることで、搬送車の応答機会を多く確保することができる。また、確認信号を送信する頻度を多くすることで、制御装置は、通信が復旧した場合に、通信が復旧したことを早期に認識し易くなる。そのため、制御装置は、搬送車に対して早期に搬送指令を送信することでき、その結果、設備全体として搬送効率が向上する。
【0063】
前記制御装置は、前記搬送車からの前記受領信号を受け取らない状態が、予め定められた認定基準期間継続した場合には、前記搬送車を通信不良車両に認定し、
前記制御装置は、前記通信不良車両に認定した前記搬送車の情報と、認定時の前記搬送車の位置の情報と、を紐づけて記憶する、と好適である。
【0064】
本構成によれば、制御装置と搬送車との間で生じた通信不良の原因を特定し易い。例えば、通信不良車両に認定した搬送車の情報を用いて、通信不良が特定の個体に基づくものか否かを把握可能となる。また、例えば、認定時の搬送車の位置の情報を用いて、通信不良が周囲の環境や特定のアクセスポイントに基づくものか否かを把握可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示に係る技術は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 :物品搬送設備
1 :搬送車
2 :制御装置
8 :経路
AP :アクセスポイント
P :設定期間
C :設定周期
Cо :指令
Pt :認定基準期間
Sc :確認信号
Sr :受領信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7