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2024-162878光触媒スプレー、光触媒コーティング方法及び光触媒被覆物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162878
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光触媒スプレー、光触媒コーティング方法及び光触媒被覆物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241114BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20241114BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20241114BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09D201/00
B01J35/02 J
B01J23/652 M
C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078835
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】芝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜紀
【テーマコード(参考)】
4G169
4J038
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA10
4G169CA17
4G169DA03
4G169EA02X
4G169HB06
4G169HC02
4G169HC29
4G169HD10
4G169HE02
4G169HE12
4J038HA076
4J038HA166
4J038JA20
4J038JA25
4J038KA04
4J038KA06
4J038NA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、光触媒粒子の施工むら(白化)が発生しないようにコーティングすることを可能とする光触媒スプレーを提供する。
【解決手段】
本発明は、光触媒懸濁液と、前記光触媒懸濁液を収容する噴霧容器とを備え、前記光触媒懸濁液は、水性分散媒と、前記水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、前記光触媒懸濁液に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒懸濁液に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒懸濁液と、前記光触媒懸濁液を収容する噴霧容器とを備え、
前記光触媒懸濁液は、水性分散媒と、前記水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含み、
前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、
前記光触媒懸濁液に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒懸濁液に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする光触媒スプレー。
【請求項2】
前記ジオール化合物に含まれる炭素原子の数は、6以上11以下である請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項3】
前記光触媒粒子は、Pt担持酸化タングステン微粒子である請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項4】
前記噴霧容器に収容された噴射剤をさらに含む請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項5】
前記ジオール化合物は、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール及び3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールのうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の光触媒スプレーから前記光触媒懸濁液を噴霧するステップを含む光触媒コーティング方法。
【請求項7】
基材と、前記基材上に設けられた光触媒コーティング層とを含み、
前記光触媒コーティング層は、光触媒粒子とジオール化合物とを含み、
前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、
前記光触媒コーティング層に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒コーティング層に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする光触媒被覆物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒スプレー、光触媒コーティング方法及び光触媒被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に消臭技術としては、主に化学的消臭、物理的消臭、生物的消臭、感覚的消臭の4つに大別される。その中で、化学的消臭法は、臭い成分と消臭剤の成分との化学反応(中和、付加、縮合、酸化など)により無臭の成分にしてしまう方法で、臭いの対象がわかっている場合に優れた効果を発揮する。
化学的消臭材料の1つとして、光触媒の強い酸化力を利用した消臭材料が開発されている。光触媒を利用した消臭材料については、従来から多数提案されている。例えば、光触媒性を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子に、ナノメートルオーダーの金属銀および金属銅粒子から選ばれる金属粒子を分散付着させてなる光触媒粒子と、シラン系アルコキシドと、エチルアルコールと、LPGガスとをエアゾール容器に入れている光触媒スプレーが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
光触媒を利用した消臭材料は、有機系の脱臭材料に比べて耐熱性に優れ、製品への加工も容易であり、変色したり変質したりするおそれが小さい。
一方、自動車の車内などの静電気が発生しやすい場所を消臭したいというニーズがある。自動車の車内では、プラスチック部材は触れたり擦れたりすることで簡単に静電気を帯びる。また近年の車室内部材はプラスチックを多く使用した構造になっている。
従来から帯電防止剤を含むエアゾールは知られており、これを噴霧することを特徴とする車室内の帯電防止方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-349423号公報
【特許文献2】特公昭59-066099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光触媒スプレーを用いて光触媒粒子とこれを分散させた分散媒などを含む成分を噴射ノズルから噴射すると、噴射物(噴霧粒子)が帯電する。この静電気を持った光触媒粒子を含む噴霧粒子が対象物へ向けて噴射されると、噴霧粒子が周囲の帯電した部材の影響を受けて帯電圧の大きい部材に吸い寄せられ、噴射した場所の静電気が蓄積しやすい部材に選択的に付着しやすくなり不均一に定着する傾向がある。そのために光触媒粒子の施工むら(白化)が発生して対象物から離脱しやすくなるため本来の消臭効果が発揮できなくなる。
また、特許文献2のような帯電防止剤を含む成分を噴霧したあとに、光触媒を含む成分を噴霧しても、帯電防止剤を含む成分を大量に隙間なく噴霧しない限りは光触媒粒子の帯電部材への選択的付着を抑えることができず、室内全体での光触媒機能を発揮することが困難となる。また光触媒スプレー成分に、特許文献2の帯電防止剤を添加しても、多量の帯電防止剤を加えないと効果が得られない。また、帯電防止剤が光触媒の消臭能を妨害するおそれがある、また、帯電防止剤が光触媒粒子の分散性に影響を与えて成分の凝集が発生することで光触媒粒子の消臭能を妨害するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光触媒粒子の施工むら(白化)が発生しないようにコーティングすることを可能とする光触媒スプレーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光触媒懸濁液と、前記光触媒懸濁液を収容する噴霧容器とを備え、前記光触媒懸濁液は、水性分散媒と、前記水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、前記光触媒懸濁液に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒懸濁液に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする光触媒スプレーを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光触媒スプレーを用いて光触媒懸濁液を対象物に向けて噴射することにより、対象物の表面に、施工むら(白化)が少なく高い消臭能を有する光触媒コーティング層を形成することができる。このことは、本願発明者等が行った実験により明らかになった。この理由は明らかではないが、保湿性を有する前記ジオール化合物により噴霧粒子が乾燥し帯電することを抑制することができ、噴霧粒子が凝集することや帯電圧の大きい部材に吸い寄せられることを抑制することができるためと考えられる。
また、比率(n/m)を(200/100)以下とすることにより、前記ジオール化合物が光触媒粒子の光触媒活性を阻害することを抑制することができ、高い消臭能を有する光触媒コーティング層を形成することが可能になる。
また、本発明の光触媒スプレーは水性分散媒を含むため、使用時の引火や燃焼の危険性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の光触媒スプレーの概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態の光触媒スプレーを用いて光触媒コーティング層を形成する方法の説明図である。
図3】ジオール化合物の構造式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光触媒スプレーは、光触媒懸濁液と、前記光触媒懸濁液を収容する噴霧容器とを備え、前記光触媒懸濁液は、水性分散媒と、前記水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、前記光触媒懸濁液に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒懸濁液に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする。
【0010】
前記ジオール化合物に含まれる炭素原子の数は、6以上11以下であることが好ましい。
前記光触媒粒子は、Pt担持酸化タングステン微粒子であることが好ましい。
本発明の光触媒スプレーは噴霧容器に収容された噴射剤を含むことが好ましい。
前記ジオール化合物は、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール及び3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0011】
本発明は、本発明の光触媒スプレーから前記光触媒懸濁液を噴霧するステップを含む光触媒コーティング方法も提供する。
本発明は、基材と、前記基材上に設けられた光触媒コーティング層とを含む光触媒被覆物も提供する。前記光触媒コーティング層は、光触媒粒子とジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、前記光触媒コーティング層に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒コーティング層に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下である。
【0012】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態の光触媒スプレーの概略断面図である。図2は本実施形態の光触媒スプレーを用いて光触媒コーティング層を形成する方法の説明図である。
本実施形態の光触媒スプレー20は、光触媒懸濁液2と、光触媒懸濁液2を収容する噴霧容器3とを備え、光触媒懸濁液2は、水性分散媒と、水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、光触媒懸濁液2に含まれる光触媒粒子の重量mに対する光触媒懸濁液2に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする。
【0014】
本実施形態の光触媒被覆物は、基材と、前記基材上に設けられた光触媒コーティング層とを含み、前記光触媒コーティング層は、光触媒粒子とジオール化合物とを含み、前記ジオール化合物は、エーテル結合を有し二重結合を有さない二価アルコール又はアルカンジオールであり、前記光触媒コーティング層に含まれる前記光触媒粒子の重量mに対する前記光触媒コーティング層に含まれる前記ジオール化合物の重量nの比率(n/m)は、(50/100)以上(200/100)以下であることを特徴とする。
【0015】
〔光触媒スプレー〕
光触媒スプレー20は、光触媒懸濁液2を噴霧するように設けられた噴霧器である。
光触媒スプレー20は、光触媒懸濁液2を収容したトリガースプレーボトルであってもよく、液化ガス(噴射剤)を用いたエアゾールスプレーであってもよく、加圧式スプレーであってもよく、電動スプレーであってもよい。図1にはエアゾールスプレーを例示している。
【0016】
例えば、図2のように、光触媒スプレー20を用いて光触媒懸濁液2を基材10の表面にスプレー塗布し形成された塗布膜11を乾燥させることにより光触媒コーティング層12を形成することができる。また、光触媒コーティング層12を有する光触媒被覆物13も形成することができる。光触媒懸濁液2を塗布乾燥することにより形成された光触媒コーティング層12が光照射を受けて消臭、抗菌等の光触媒効果を発揮する。
【0017】
〔エアゾールスプレー〕
エアゾールスプレーは、エアゾール容器(噴霧容器3)の内部の光触媒懸濁液2を噴射剤(噴射ガス成分)の圧力によってエアゾール容器の外に放出させる製品である。噴射剤は、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス、フッ化炭化水素、二酸化炭素、窒素(N2)などである。
【0018】
エアゾール容器(噴霧容器3)に収容されている噴射剤はジメチルエーテルを含むことが好ましい。ジメチルエーテルの沸点は-24.8℃であり、ジメチルエーテルは液化ガスとしてエアゾール容器に入れられるため、エアゾール容器の内部では、ジメチルエーテルの一部は光触媒懸濁液2に溶解している又は液体として存在し、ジメチルエーテルの一部は気相8に気体として存在する。また、エアゾール容器の内圧が25℃で0.33MPa以上となるような量の噴射剤がエアゾール容器3に入れられる。
【0019】
〔噴霧容器〕
噴霧容器3は、光触媒懸濁液2を噴霧するための噴霧機構を備えた容器であり、例えば、トリガースプレーボトル、エアゾール容器、加圧式スプレー容器、電動スプレー容器などである。
エアゾール容器(噴霧容器3)は、エアゾールスプレーの容器であり、光触媒懸濁液2及び噴射剤(噴射ガス成分)を収容する耐圧容器9、バルブ部材5、アクチュエータ4、ディップチューブ6などを含む。バルブ部材5は、マウンテングカップ、ステム、ステムガスケット、マウンテングガスケット、スプリング、ハウジングなどを含むことができる。
アクチュエータ4の頭部が押されていない状態では、ステムガスケットがステム孔を塞ぎ、エアゾール容器の内部は密閉状態となる。
アクチュエータ4の頭部が押されると、ステム及びステムガスケットが下がりステム孔が開放され、光触媒懸濁液2の流路が噴射孔7までつながる。エアゾール容器の内部は噴射剤により高圧となっているため、この圧力により光触媒懸濁液2は、ディップチューブ6、バルブ部材5のハウジングとステムの流路を流れ、アクチュエータ4の流路を流れ、噴射孔7から噴出する。
【0020】
〔光触媒懸濁液〕
光触媒懸濁液2は、噴霧容器3により噴霧される塗布液であり、水性分散媒と、水性分散媒中に分散している光触媒粒子と、ジオール化合物とを含む。また、光触媒懸濁液2は、添加剤を含んでもよい。また、噴射剤が光触媒懸濁液2の水性分散媒に溶解していてもよい。
【0021】
〔水性分散媒〕
水性分散媒は、光触媒粒子(分散質)と共に分散系を構成する媒質であり、水又は水溶液である。水性分散媒には、ジオール化合物が溶解している。水性分散媒は、エタノール水溶液であることがより好ましい。
水性分散媒がエタノール水溶液である場合、エタノールの役割としては、スプレー液滴の粘度をさげて微細な噴霧粒子を形成すること、水性分散媒にジオール化合物を溶解しやすくすること、塗布膜11の乾燥時間を短縮すること(エタノールは水と比べて揮発しやすい特性を持つ)、光触媒懸濁液2の長期保管を可能にすること(エタノールは殺菌作用を有する)等が挙げられる。
【0022】
水性分散媒であるエタノール水溶液(噴霧ガス成分を除く)のエタノール含有率は、5.0wt%以上であることが好ましい。このことにより、エタノールが上記の役割を果たすことができる。
水性分散媒であるエタノール水溶液(噴霧ガス成分を除く)のエタノール含有率は、60wt%未満が好ましい。分散媒中のエタノール配合量が60wt%を超えると燃焼や引火がし易くなることや長期保管での光触媒分散状態を保ちにくくなることから好ましくない。
【0023】
〔光触媒粒子〕
光触媒懸濁液2に含まれる光触媒粒子(光触媒効果を有する粉体)は、光触媒活性を有する粉体又は微粒子である。光触媒スプレー20を用いて対象物(例えば、基材10)の表面に形成した光触媒コーティング層12において、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーギャップ以上のエネルギーを持つ光が光触媒粒子に照射されると、光触媒粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起され価電子帯に正孔が発生する。この伝導帯の電子が光触媒粒子内部を移動し光触媒粒子の表面又は助触媒粒子表面において酸素ガスを還元することにより、スーパーオキシドアニオンが生成する。また、価電子帯の正孔が光触媒粒子内部を移動し光触媒粒子の表面において水を酸化することにより、ヒドロキシラジカルが生成する。生成したヒドロキシラジカルによって、活性酸素種が生成する。生成した活性酸素種によって、例えば、臭いの元になる有害物質の分解が達成される。
【0024】
光触媒懸濁液2に含まれる光触媒粒子は、酸化チタン粒子であってもよく、酸化タングステン粒子であってもよいが、酸化タングステン粒子であることが好ましい。光触媒懸濁液2が光触媒粒子として酸化タングステン粒子を含むことにより、屋内の可視光光源下でも光触媒活性に優れた光触媒コーティング層12を得ることができる。光触媒懸濁液2は、1種の光触媒粒子のみを含有してもよく、2種以上の光触媒粒子を含有してもよい。
【0025】
光触媒懸濁液2に含まれる酸化タングステンは光触媒活性を有すれば特に限定されず、市販品の酸化タングステンを適宜使用することができる。酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W23、W45、W411、W2573、W2058、及びW2468、並びにこれらの混合物が挙げられる。光触媒活性を向上させるために、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。酸化タングステンの一部がV価に還元されていてもよい。ただし、酸化タングステンはVI価に酸化してから使用することが好ましい。VI価に酸化する方法としては、例えば、酸化タングステンを高温で焼成する方法が挙げられる。なお、酸化タングステンの結晶構造は、特に限定されない。
【0026】
光触媒粒子の平均一次粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましい。光触媒粒子の平均一次粒子径5nm以上であると、光触媒粒子が凝集し難くなり、光触媒粒子の再分散が容易となる。光触媒粒子の平均一次粒子径が200nm以下であると、水性分散媒に光触媒粒子を均一に分散させることができる傾向があり、光触媒懸濁液2を塗布・乾燥させることにより形成される光触媒コーティング層12から光触媒粒子が離脱することを抑制できる。光触媒粒子の平均一次粒子径は、BET法により測定された光触媒粒子の比表面積(単位:m2/g)に基づいて、光触媒粒子の1次粒子が球状であると仮定して算出された値である。
【0027】
光触媒粒子は、酸化チタン粒子又は酸化タングステン粒子の表面に担持された助触媒粒子を有してもよい。助触媒粒子としては、金属粒子が好ましく、遷移金属粒子がより好ましく、白金族金属粒子が更に好ましい。白金族金属粒子としては、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、及びIrの粒子が挙げられる。光触媒粒子の質量に対する助触媒粒子の含有率(以下、助触媒担持率と記載することがある)は、0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましい。助触媒担持率がこのような範囲内であると、光触媒粒子の価電子帯と伝導帯との間のエネルギーのギャップを小さくして、可視光領域での光応答性、光触媒性能を向上させることができる。助触媒粒子は、白金族金属の酸化物の粒子であってもよい。また、助触媒粒子は光触媒粒子表面に高分散していることが好ましく、助触媒粒子の好適な粒子径は20nm以下である。
光触媒懸濁液2(噴霧ガス成分を除く)における光触媒粒子の重量パーセントは、0.01wt%以上2.0wt%以下の範囲とすることが好ましい。光触媒粒子が0.01wt%未満では消臭効果が小さくなり、又、2.0wt%を超えると光触媒粒子が凝集する傾向があり好ましくない。
【0028】
〔ジオール化合物〕
光触媒懸濁液2に含まれるジオール化合物は、アルカンに含まれる2個の水素原子をヒドロキシル基で置換した二価アルコール(アルカンジオール)又はエーテルに含まれる二重結合を有さない少なくとも1つの炭化水素基に含まれる2個の水素原子をヒドロキシル基で置換した二価アルコールである。
ジオール化合物は、水性分散媒に溶解することができる化合物である。このことにより、光触媒スプレー20から噴射された噴霧粒子が乾燥し帯電することを抑制することができる。
【0029】
ジオール化合物は、二重結合を有さない化合物である。このことにより、光触媒コーティング層12における光触媒活性によりジオール化合物を容易に酸化分解することができ、ジオール化合物が光コーティング層の消臭能を低下させることを抑制することができる。
ジオール化合物に含まれる炭素原子の数は、例えば4以上であり、6以上であることが好ましい。このことにより、ジオール化合物が噴霧粒子において蒸発することを抑制することができ、ジオール化合物が保湿性を有することができる。
ジオール化合物に含まれる炭素原子の数は、11以下であることが好ましい。このことにより、ジオール化合物が水性分散媒への溶解性を有することができる。
【0030】
アルカンジオール(ジオール化合物)は、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどであり、好ましくは、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールである。
エーテル結合を有する二価アルコール(ジオール化合物)は、例えば、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールなどである。
図3に、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールの構造式を示している。
光触媒懸濁液2は例示したジオール化合物を単独で有してもよく、複数種有してもよい。
【0031】
光触媒懸濁液2がジオール化合物を含むことにより、噴霧後に噴霧粒子に含まれる水やエタノールが瞬時に気化することを抑制することができる。このことにより、噴霧粒子がスプレー対象物の部分的な帯電又はその近傍の帯電の影響を受けにくくなり、光触媒粒子からなる層に塗りムラが生じることを抑制することができる。
【0032】
光触媒懸濁液2に含まれるジオール化合物は、光触媒粒子の表面を濡らして、光触媒粒子を光触媒懸濁液2中で良く分散させる効果を有する。また、ジオール化合物は、光触媒スプレー20から噴霧された噴霧粒子が乾燥してこれらの微粒子の大凝集物が発生して周囲への不均一な付着、定着になることを抑えて、より分散性良く周囲に付着、定着させる効果を有する。また光触媒スプレーの噴霧粒子が帯電することを抑制することができる。さらにジオール化合物は光触媒活性により非常に分解しやすく、光触媒コーティング層12の光触媒性能への影響が少ない。
【0033】
このような効果が発現するメカニズムの詳細は不明であるが以下のことが推定される。ジオール化合物は水性分散媒の水、アルコール又はアルコール水溶液に溶解しやすく、且つその親水性の高い官能基(OH基)が光触媒懸濁液2中の光触媒粒子の表面に吸着するとともに、光触媒粒子と水性分散媒の濡れ性を向上させ、光触媒懸濁液2の噴射後の噴霧粒子においても光触媒粒子表面にジオール化合物が吸着しているためこれら粒子を含む噴霧粒子が瞬時に凝集しにくい効果が得られる。ジオール化合物は、その分子の大きさによるバリヤー効果をより一層維持できて粒子同士の凝集を抑制していると考えられる。光触媒懸濁液2の噴射後の噴霧粒子の乾燥後もジオール化合物は光触媒粒子の表面に吸着しているため光触媒粒子を含む噴霧粒子が乾燥過程で凝集しにくく、光触媒粒子の凝集による施工むら(白化)が抑制される。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されない。
【0034】
〔添加剤〕
光触媒懸濁液2が含有してもよい添加剤としては、防腐効果を有する有機化合物や無機化合物が挙げられる。白化を発生させないため水溶性の有機化合物、水溶性の金属イオン錯体が挙げられる。
【0035】
〔光触媒スプレーの製造方法〕
ここでは、光触媒スプレー20の一例であるエアゾールスプレーを例に挙げて説明する。
エアゾールスプレーは通常のエアゾールスプレー製造方法により製造できる。エアゾール容器は、金属アルミニウムやブリキからなる有底筒状の容器に光触媒懸濁液2を充填後、上端の開口部にガスケットを介してエアゾールバルブ(バルブ部材5)をクリンチして液化ガスなどの噴射剤が所定の液量まで充填される。液化ガスとしては、液化ガスの液密度を調整しやすく、エアゾールの圧力を調整しやすい点から、プロパン(液密度:0.501g/ml)、ノルマルブタン(液密度:0.579g/ml)、イソブタン(液密度:0.557g/ml)およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル(液密度:0.661g/ml)、および液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガスなどが使用されている。また、エアゾール容器の内部圧力を調節するために、加圧剤として炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの圧縮ガスを用いることができる。光触媒スプレー20の内圧は、25℃の温度で0.35MPa以上0.50MPa以下であることが好ましい。内圧は気温が低い場合は低下し、気温が高い場合は上昇する。気温が低くなると内圧が低下して噴射性が悪くなり、周囲に成分を均一に付着、定着することが困難になる。
【0036】
〔消臭方法〕
光触媒スプレー20を用いた消臭方法について説明する。
光触媒スプレー20から光触媒懸濁液2を室内の対象物(基材10)に向けて噴射し、対象物の表面に光触媒粒子とジオール化合物を含む光触媒コーティング層12を形成する。また、この光触媒コーティング層12で被覆された対象物(基材10)が光触媒被覆物13である。例えば、室内で光触媒スプレー20から光触媒懸濁液2を噴霧すると室内の部材(基材10)、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、及び皮革上に光触媒懸濁液2又はその乾燥物が付着する。室内に光触媒懸濁液2又はその乾燥物を連続噴射させる場合は噴射ボタンとして公知の全量噴射型のボタンを用いることができる。なお、噴霧後に形成される光触媒コーティング層12の厚さは、特に限定されない。
照明機器の光や自然光が光触媒コーティング層12に照射されると、光触媒粒子の光触媒活性が活性化し前記室内に存在する臭い成分が分解される。
【0037】
形成直後の光触媒コーティング層12は、光触媒粒子とジオール化合物とを含むが、光触媒コーティング層12に含まれるジオール化合物は、光触媒粒子の光触媒活性により分解される。
【0038】
光触媒スプレーの作製実験
実施例1~20および比較例1~5に係る光触媒スプレー(試料番号:A-(1)-1~A-(1)-4、A-(2)-1~A-(2)-4、A-(3)-1~A-(3)-4、A-(4)-1~A-(4)-4、B-1~B-9)を作製した。表1、2に、各光触媒スプレーに含まれる光触媒スプレーの組成などを示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1、表2中の光触媒分散液(1)~(3)(Pt-WO3分散液)は、20wt%の白金担持酸化タングステン粒子(Pt-WO3)が水に分散した懸濁液である。
表1、表2中の「ジオール化合物」は、市販の試薬を使用した。
表1、表2中の「水」は純水であり、「EtOH」はエチルアルコールである。表2中の「-」は、該当する材料を光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)が含有していないことを示す。
表1、表2中の「固形分」は、「光触媒分散液中のPt-WO3の質量」を示す。表1、表2中の「Pt担持割合」は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合を示す。表1、表2中の「ジオール (g)/光触媒(g)」は、「光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)中のPt-WO3の質量に対するジオール化合物の質量の比率」を示す。表1、表2中の「エタノールの割合」は、噴射剤を除いた光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)中のエタノールの重量パーセントを示す。
以下、表1、表2に示す実施例1~20、比較例1~5の光触媒スプレーの作製方法について説明する。また、表1、表2に示した各光触媒スプレーの試料番号を用いて説明する。
【0042】
[光触媒分散液(1)~(3)の調製]
光触媒分散液(1)(Pt-WO3分散液)は以下に示す方法により調製した。
酸化タングステン粉末(キシダ化学株式会社製)200gと純水1000mLとを混合した後、超音波を照射しながら分散させて、酸化タングステン粒子の懸濁液Aを得た。懸濁液Aに、ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物(キシダ化学株式会社製、純度98.5%)を溶解させて、酸化タングステン粒子の懸濁液Bを得た。ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物の添加量は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合が0.05wt%となるような量とした。懸濁液Bを100℃で加熱して水分を蒸発させた後、500℃で焼成することにより、白金担持酸化タングステン粉末(Pt-WO3)を得た。ビーズミルで解砕処理して得られた粉末に含まれる白金担持酸化タングステン粒子の平均粒子径は、175nmであった(BET法により測定)。
固形分濃度が20wt%となるように白金担持酸化タングステン粉末(Pt-WO3)と純水とを混合し、混合物に超音波を照射しながら分散させて20wt%光触媒分散液(1)を調製した。
光触媒分散液(2)(Pt-WO3分散液)は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合が0.01wt%となるような量に変更した以外は上記の光触媒分散液(1)の調製と同じ手順で調製した。
光触媒分散液(3)(Pt-WO3分散液)は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合が0.3wt%となるような量に変更した以外は上記の光触媒分散液(1)の調製と同じ手順で調製した。
【0043】
[光触媒スプレー(A-(1)-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと1,2-オクタンジオール0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤50gを入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(1)-1)を得た。
【0044】
[光触媒スプレー(A-(1)-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと1,2-オクタンジオール0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤50gを入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(1)-2)を得た。
【0045】
[光触媒スプレー(A-(1)-3)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと1,2-オクタンジオール0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(1)-3)を得た。
【0046】
[光触媒スプレー(A-(1)-4)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと1,2-オクタンジオール2.00gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(1)-4)を得た。
【0047】
[光触媒スプレー(A-(2)-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(2)-1)を得た。
【0048】
[光触媒スプレー(A-(2)-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(2)-2)を得た。
【0049】
[光触媒スプレー(A-(2)-3)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(2)-3)を得た。
【0050】
[光触媒スプレー(A-(2)-4)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール2.00gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(2)-4)を得た。
【0051】
[光触媒スプレー(A-(3)-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと1,2-ヘキサンジオール0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(3)-1)を得た。
【0052】
[光触媒スプレー(A-(3)-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと1,2-ヘキサンジオール0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(3)-2)を得た。
【0053】
[光触媒スプレー(A-(3)-3)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと1,2-ヘキサンジオール0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(3)-3)を得た。
【0054】
[光触媒スプレー(A-(3)-4)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと1,2-ヘキサンジオール2.00gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(3)-4)を得た。
【0055】
[光触媒スプレー(A-(4)-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと1,2-オクタンジオール0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(2)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤50gを入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(4)-1)を得た。
【0056】
[光触媒スプレー(A-(4)-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと1,2-オクタンジオール0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(2)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤50gを入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(4)-2)を得た。
【0057】
[光触媒スプレー(A-(4)-3)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと1,2-オクタンジオール0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(3)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(4)-3)を得た。
【0058】
[光触媒スプレー(A-(4)-4)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと1,2-オクタンジオール2.00gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(3)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-(4)-4)を得た。
【0059】
[光触媒スプレー(B-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと1,3-ブタンジオール0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-1)を得た。
【0060】
[光触媒スプレー(B-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと1,3-ブタンジオール0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-2)を得た。
【0061】
[光触媒スプレー(B-3)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと1,3-ブタンジオール0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)0.5gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-3)を得た。
【0062】
[光触媒スプレー(B-4)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと1,3-ブタンジオール2.00gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-4)を得た。
【0063】
[光触媒スプレー(B-5)の作製]
水35.2gとエタノール9.8gを混合・攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-5)を得た。光触媒スプレー(B-5)には、ジオール化合物を入れていない。
【0064】
[光触媒スプレー(B-6)の作製]
水34.9gとエタノール9.7gと1,2-オクタンジオール0.4gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-6)を得た。
【0065】
[光触媒スプレー(B-7)の作製]
水34.9gとエタノール9.7gと1,2-ヘキサンジオール0.4gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-7)を得た。
【0066】
[光触媒スプレー(B-8)の作製]
水32.0gとエタノール10.0gと1,2-オクタンジオール3.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-8)を得た。
【0067】
[光触媒スプレー(B-9)の作製]
水32.0gとエタノール10.0gと1,2-ヘキサンジオール3.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した光触媒分散液(1)5.0gを添加して光触媒スプレー液剤を調製した。
金属アルミニウム製エアゾール容器(満注量200ml)に調製した光触媒スプレー液剤を入れ、噴射剤(液化ガス)としてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-9)を得た。
【0068】
光触媒スプレーの評価
<光触媒スプレーの評価方法及び評価結果>
[塗膜(光触媒コーティング層)の目視評価]
以下に示す方法により、塗膜(光触媒コーティング層)を形成し、形成した塗膜を目視観察することにより欠陥有無確認を行った。
室内長×室内幅×室内高=容積3.6m3の室を準備した。
4個のポリカーボネート製シート(厚み0.5mm,φ50mm)を布等で擦り、静電気測定器で測定しながらポリカーボネート製シート(基材)の表面を+10kVに帯電させ、これらのポリカーボネート製シートを室前方(空間の長手方向前半分)に設置した。
【0069】
室内中央の床に作製した光触媒スプレー(A-(1)-1)~(A-(1)-4)、(A-(2)-1)~(A-(2)-4)、(A-(3)-1)~(A-(3)-4)、(A-(4)-1)~(A-(4)-4)、(B-1)~(B-9)のいずれか1つを設置して、設置位置で全量噴射ボタンを押してロックし、噴射開始して室の扉を閉じた。噴射終了後は5分間そのままの状態で成分を定着させた。
【0070】
室の扉を開け、4個のポリカーボネート製シート(基材)を取り出し、真上からポリカーボネート製シート表面に形成された塗膜(光触媒コーティング層)を観察して塗膜の欠陥有無を確認した。ここでいう塗膜の欠陥とは、光触媒スプレーから光触媒スプレー成分を噴霧した際に、光触媒スプレー成分に含まれる光触媒粒子が基材表面(ポリカーボネート製シート表面)の帯電によって集まり、更に光触媒粒子の凝集によって、塗面に霧がかかったように白く見える現象を指す。
塗膜4個に欠陥がなかった場合は「最良◎」と評価し、
塗膜4個中1個に一部欠陥箇所があった場合は「良好○」と評価し、
塗膜4個全てに一部欠陥箇所があった場合は「やや不良△」と評価し、
塗膜4個全ての全面に欠陥箇所があった場合は「不良×」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
[アセトアルデヒドガス分解試験用のサンプルの作製]
各光触媒スプレー(A-(1)-1)~(A-(1)-4)、(A-(2)-1)~(A-(2)-4)、(A-(3)-1)~(A-(3)-4)、(A-(4)-1)~(A-(4)-4)、(B-1)~(B-9)をセルロース生地(125mm×125mm)に20秒間噴射して、日照場所に1週間静置して良く乾燥させて各光触媒スプレーにそれぞれ対応するアセトアルデヒドガス分解試験用サンプル(A-(1)-1)~(A-(1)-4)、(A-(2)-1)~(A-(2)-4)、(A-(3)-1)~(A-(3)-4)、(A-(4)-1)~(A-(4)-4)、(B-1)~(B-9)を作製した。
【0073】
[アセトアルデヒドガス分解試験]
容積1L のガスバッグを試験用サンプル毎に用意し、試験用サンプル(A-(1)-1)~(A-(1)-4)、(A-(2)-1)~(A-(2)-4)、(A-(3)-1)~(A-(3)-4)、(A-(4)-1)~(A-(4)-4)、(B-1)~(B-9)を対応するガスバッグにそれぞれ入れてから20ppm の濃度となるようにアセトアルデヒドガスをガスバックに投入した。そして、青色LED(ピーク波長450nm)ランプを用いて、4500ルクスの光をガスバック内の試験用サンプルに照射した。ガス投入後12時間後のガスバック内のアセトアルデヒドガス濃度を検知管により測定した。各試験用サンプルを用いたアセトアルデヒドガス分解試験の結果を、表3に示す。表3において「良好○」を示している試料を用いた試験ではアセトアルデヒドガス残存率が20%未満であった。表3において「やや不良△」を示している試料を用いた試験ではアセトアルデヒドガス濃度が20%以上50%未満であった。表3において「不良×」を示している試料を用いた試験ではアセトアルデヒドガス濃度が50%以上100%以下であった。
【0074】
表3の総合評価では、塗膜の目視観察で「最良◎」の評価及びアセトアルデヒドガス分解試験で「良好〇」の評価の試料を「最良◎」と評価し、「最良◎」の評価、「やや不良△」の評価及び「不良×」の評価が1つもない試料を「良好○」と評価し、塗膜の目視観察及びアセトアルデヒドガス分解試験において「やや不良△」の評価が少なくとも1つあり「不良×」の評価がない試料を「やや不良△」と評価し、塗膜の目視観察及びアセトアルデヒドガス分解試験において「不良×」の評価が少なくとも1つある試料を「不良×」と評価した。
【0075】
光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)に含まれる光触媒の固形分の重量mに対する光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)に含まれるジオール化合物の重量nの比率(n/m)が(50/100)以上(200/100)以下でありかつジオール化合物に含まれる炭素原子の数が6以上である試料(A-(1)-1)~(A-(1)-4)、(A-(2)-1)~(A-(2)-4)、(A-(3)-1)~(A-(3)-4)、(A-(4)-1)~(A-(4)-4)の光触媒スプレーでは(表1参照)、表3に示すように目視観察において塗膜の評価は良好であり、アセトアルデヒドガス分解試験の評価も良好であることがわかった。
【0076】
比率(n/m)が(50/100)以上(200/100)以下でありかつジオール化合物に含まれる炭素原子の数が4である試料(B-1)~(B-4) の光触媒スプレーでは(表2参照)、アセトアルデヒドガス分解試験の評価は良好であったが、目視観察において塗膜に一部に施工むら(白化)が発生した。
【0077】
光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)がジオール化合物を含んでいない試料(B-5) の光触媒スプレーでは(表2参照)、アセトアルデヒドガス分解試験の評価は良好であったが、目視観察において塗膜に施工むら(白化)が全体的に発生した。このため、光触媒スプレー液剤がジオール化合物を含んでいない場合には塗工むらが発生することがわかった。
【0078】
比率(n/m)が(40/100)である試料(B-6),(B-7)の光触媒スプレーでは(表2参照)、アセトアルデヒドガス分解試験の評価は良好であったが、塗膜に施工むら(白化)が全体的に発生した。これは、光触媒スプレー液剤(光触媒懸濁液)に含まれるアルカンジオールの量が少ないためと考えられる。
【0079】
比率(n/m)が(300/100)である試料(B-8),(B-9)の光触媒スプレーでは、アセトアルデヒドガス分解試験の結果が不良の結果となった。これは、ジオール化合物の量が多すぎたため光触媒粒子がジオール化合物に埋もれてしまい、アセトアルデヒドガス分解活性が低下したためと考えられる。
【符号の説明】
【0080】
2:光触媒懸濁液 3:噴霧容器 4:アクチュエータ 5:バルブ部材(マウンテングカップ、ステム、ステムガスケット、マウンテングガスケット、スプリング、ハウジング) 6:ディップチューブ 7:噴射孔 8:気相 9:耐圧容器 10:基材 11:塗布膜 12:光触媒コーティング層 13:光触媒被覆物 20:光触媒スプレー
図1
図2
図3