(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162880
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】油入変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20241114BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01F27/02 150
H01F27/02 D
H01F27/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078837
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土門 敢大
(72)【発明者】
【氏名】芥川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】椎名 洋悦
【テーマコード(参考)】
5E050
5E059
【Fターム(参考)】
5E050BA03
5E059BB03
5E059BB07
5E059FF03
(57)【要約】
【課題】油入変圧器に対してコストを抑え、簡単な構造で有効に冷却フィンの下部先端方向からの外傷を防止する。
【解決手段】油入変圧器は、油を貯蔵するタンク容器を有し、タンク容器の外側に冷却フィンが取り付けられ、冷却フィンの下部先端を挟み込む形態のカバー状保護部材を設けるようにする。カバー状保護部材の底には、水抜き穴を設けてもよい。また、冷却フィンをタンク容器に取り付けた正面または側面と冷却フィンの下方向の面の二面で、冷却フィンと相対するL字状保護部材を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を貯蔵するタンク容器を有し、
前記タンク容器の外側に冷却フィンが取り付けられ、
前記冷却フィンの下部先端を挟み込む形態のカバー状保護部材を設けたことを特徴とする油入変圧器。
【請求項2】
前記カバー状保護部材の底に水抜き穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の油入変圧器。
【請求項3】
前記カバー状保護部材は、取り付けられた面の両端の冷却フィンに取り付けることを特徴とする請求項1記載の油入変圧器。
【請求項4】
油を貯蔵するタンク容器を有し、
前記タンク容器の外側に冷却フィンが取り付けられ、
前記冷却フィンをタンク容器に取り付けた正面または側面と冷却フィンの下方向の面の二面で、冷却フィンと相対するL字状保護部材を設けたことを特徴とする油入変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入変圧器に係り、特に、内部の冷却のための油が冷却フィンに循環する構造の油入変圧器の冷却フィンを保護するのに好適な油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
油入変圧器は、絶縁や冷却を目的として内部に絶縁油を満たした構造の変圧器であり、安価で、熱に強く、低騒音であるため、最も普及している一般的な変圧器の形態である。
【0003】
油入変圧器に関しては、例えば、特許文献1に開示がある。特許文献1に記載された油入変圧器では、平板状の鋼材を複数の波山状を備えるように折り曲げて、波山の端部を溶接等で塞いだ放熱リブを形成した側板を有しており、その波山状の放熱リブに、絶縁油が循環するように内部に空間を形成し、循環経路とする構造を有している(段落[0022]、[0023])。
【0004】
このような油入変圧器のタンクは、主に発錆を抑える目的でタンク内外面へ塗装を施しているが、油入変圧器タンクの冷却フィン(特許文献1の放熱リブに相当する)下部の発錆による油漏れを発生する場合がある。このような発錆の原因として、風で舞い上がった小石等が当たることにより塗装が欠け、さらに、塩害等の影響で生じることが挙げられる。
【0005】
このような発錆を懸念する際は、第一の対策として、外面の塗膜を厚くする対応、第二の対策として、塗装前に亜鉛溶射を行う対応、また、第三の対策として、別部材を設ける対応がある。
【0006】
この第三の対策を行った油入変圧器の例としては、例えば、特許文献2がある。
特許文献2のタンクの保護構造として、上部タンク部10、下部タンク部20を互いに接合する溶着継ぎ目30を保護するために、上側保護リング110と下側保護リング120を閉鎖板130により溶着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-130235号公報
【特許文献2】特表2021-508957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第三の対策の一例として示した特許文献2に記載された油入変圧器では、補強リングを施設しているため、冷却フィンの直下からの外傷を防ぐことが基体されるが、冷却フィンの先端方向からの外傷を必ずしも防ぐことができない。
【0009】
また、第一の対策として示した外面の塗膜を厚くする対応では、外部から衝撃物に対する傷などを防ぐ効果としては、よほど塗膜を厚くしなければ効果は限定的である。
【0010】
さらに、第二の対策として示した塗装前に亜鉛溶射は、亜鉛を電気または燃焼エネルギーによって溶融し、圧縮空気などで微粒子化して吹き付けて皮膜を形成させる表面被覆法であり、冷却フィンを衝撃物の外傷から防ぐのに有効であるが、油入変圧器の製造工程を増やさなければならず、コスト高につながる。
【0011】
本発明の目的は、油入変圧器に対してコストを抑え、簡単な構造で有効に冷却フィンの下部先端方向からの外傷を防止することのできる油入変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の油入変圧器の構成は、好ましくは、油を貯蔵するタンク容器を有し、タンク容器の外側に冷却フィンが取り付けられ、冷却フィンの下部先端を挟み込む形態のカバー状保護部材を設けたことを特徴とする当該冷却フィンを挟み込むようにしたものである。
【0013】
また、別の構成は、好ましくは、冷却フィンをタンク容器に取り付けた正面または側面と冷却フィンの下方向の面で、冷却フィンと相対するL字状保護部材を設けたようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油入変圧器に対してコストを抑え、簡単な構造で有効に冷却フィンの下部先端方向からの外傷を防止することのできる油入変圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2A】一般的な油入変圧器の筐体の上面図である。
【
図2B】一般的な油入変圧器の筐体の側面図である。
【
図3】実施形態1に係る油入変圧器の冷却フィンと保護部材の透過斜視図である。
【
図4A】実施形態2に係る冷却フィンの保護部材を設けた油入変圧器の正面図である。
【
図4B】実施形態2に係る冷却フィンの保護部材を設けた油入変圧器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る各実施形態を、
図1ないし
図4Bを用いて説明する。
【0017】
先ず、
図1ないし
図2Bを用いて油入変圧器の一般的な構造について説明する。
【0018】
一般的な油入変圧器1は、
図1に示されるように、アモルファスや珪素鋼板などの鉄心および鉄心に装着したコイルを絶縁し、冷却する絶縁油を収納したタンク容器2を備えている。そして、このタンク容器2の周縁に冷却フィン(放熱リブ)3を設けて、鉄心やコイルなどから発生する熱を冷却する構成となっている。
【0019】
また、タンク容器2の上部には、絶縁油をタンク内に注油する注油口4を有している。
【0020】
電気系統としては、一次側端子7、二次側端子8が、タンク容器2の上部に設置されており、一次側端子7を入力として、出力された変圧器で昇圧または降圧した電圧を二次側端子8から負荷側に送る構成となっている。
【0021】
一般的な油入変圧器1を上面から見ると、
図2Aのようになり、側面から見ると、
図2Bのようなる。
図2Aでは、タンク容器2のみを示して、内部のコイルを設置前の状態を示しており、底板10が上から見えている状態を示している。
【0022】
タンク容器2は、側壁を形成する冷却フィン3の上端をフランジ5に、下端を底板10に、それぞれ溶接により接合している。
【0023】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る実施形態1を、
図3を用いて説明する。
【0024】
図3は、実施形態1に係る油入変圧器の冷却フィンと保護部材の透過斜視図である。
本実施形態の油入変圧器では、冷却フィン3の先端下部からカバー状保護部材20を挟み込む形で取付ける。カバー状保護部材20の開口幅20wが冷却フィン3の断面幅3wよりも狭くして、カバー状保護部材20の働く弾性力によって、冷却フィン3に固定させる。カバー状保護部材20の材質は、固定可能な程度の弾性力を有するものであればよく、耐熱性を有する樹脂でもよいし、ステンレス板金のような金属板であってもよい。このように冷却フィン3の先端下部からカバー状保護部材20を装着することにより、特に、小石などの外部から衝撃物があたることを防止し、塗装の保護を行うことができる。
【0025】
また、水分や、高湿度状態が塗装の腐食原因となるため、カバー状保護部材20の底には水抜き穴21を設けている。
【0026】
以上示したように、本実施形態の保護部材により、冷却フィンの塗装を外傷から保護し発錆のリスクを抑えることが可能となる。この方法は、カバー状保護部材20を取付けるのみでよく、冷却フィン自体への加工を必要としないため、追加工も容易で工数も少ないソリューションである。
【0027】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る実施形態2を、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
【0028】
図4Aは、実施形態2に係る冷却フィンの保護部材を設けた油入変圧器の正面図である。
【0029】
図4Bは、実施形態2に係る冷却フィンの保護部材を設けた油入変圧器の側面図である。
【0030】
本実施形態の油入変圧器1では、L字状保護部材30に支持金具40を取り付け、冷却フィン3の下側に
図4A、
図4Bのように置くことにより。タンク容器2へ取付けられた冷却フィン3の下部をまとめて保護する形状としている。L字状保護部材30は、冷却フィンをタンク容器2に取り付けた正面または側面と冷却フィンの下方向の面の二面で、冷却フィンと相対している。L字状保護部材30に支持金具40は、一方に突起と他方にそれをはめ込む穴を設けて差し込む形で取り付けることができる。
【0031】
真横からの外傷は、実施形態1で述べたカバー状保護部材20を両端の冷却フィン3r,3lに取付けることで防ぐようにする。これは、L字状保護部材30の横から、衝撃物がぶつかるのを防止するのに有効である。
【0032】
図4A、
図4Bでは示さなかったが、
図4Bの側面においても、L字状保護部材30に支持金具40を置き、カバー状保護部材20を両端の冷却フィン3に設けることにより、保護することができる。どこにL字状保護部材30とカバー状保護部材20を設けるかは、油入変圧器1の設置箇所の状況により選択することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、L字状保護部材30と実施形態1で示しカバー状保護部材20の設置により、有効的に塗装を外傷から保護し発錆のリスクを抑えることが可能となる。本体の油入変圧器1に対して加工が必要でなく、追加工も容易で工数も少ないソリューションである。
【符号の説明】
【0034】
1…油入変圧器
2…タンク容器
3,3r,3l…冷却フィン
4…注油口
5…フランジ
7…一次側端子
8…二次側端子
10…底板
20…カバー状保護部材
21…水抜き穴
30…L字状保護部材
40…支持金具