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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162884
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241114BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D21/15 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078848
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB12
3D203BB22
3D203BB24
3D203BB25
3D203BC31
3D203CA26
3D203CA43
3D203CA45
3D203CA52
3D203CA62
3D203CA66
3D203CB19
3D203DA11
(57)【要約】
【課題】フロアパネル構造体に入力された車体前後方向に沿う衝撃加重をサイドフレームによって効率良く受け止め、フロアパネル構造体等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることができる車体下部構造を提供する。
【解決手段】車体下部構造は、一対のサイドフレームと、クロスメンバと、フロアパネル構造体15と、を備える。クロスメンバは、車幅方向の中央領域の両端部から車体前後方向の中央側に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部13sを有する。フロアパネル構造体15は、クロスメンバよりも車体前後方向の外側位置からクロスメンバと接するように車体前後方向の中央側に向かって延びる補強ビード23を有する。補強ビード23は、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体15との接合部に達しない位置まで延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向の中央の後方側または前方側において、車体前後方向に略沿って延びる一対のサイドフレームと、
一対の前記サイドフレームに連結されるクロスメンバと、
一対の前記サイドフレームと前記クロスメンバとに接合されるフロアパネル構造体と、を備え、
前記クロスメンバは、車幅方向の中央領域の両端部から車体前後方向の中央側に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部を有し、
前記フロアパネル構造体は、前記クロスメンバよりも車体前後方向の外側位置から前記クロスメンバと接するように車体前後方向の中央側に向かって延びる補強ビードを有し、
前記補強ビードは、前記クロスメンバの車体前後方向の中央側の前記フロアパネル構造体との接合部に達しない位置まで延びていることを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記クロスメンバの前記中央領域には、車体下方に配置される部品の設置部が固定され、
前記補強ビードは、前記設置部と車幅方向で交差する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記クロスメンバの前記中央領域には、車体下方に配置される部品の設置部が固定され、
前記設置部は、前記クロスメンバの前記中央領域と前記傾斜延出部の間の屈曲部に跨るように固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記補強ビードは、前記クロスメンバの車体前後方向の外側の前記フロアパネル構造体との接合部を超えて車体前後方向の中央側に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記補強ビードは、車幅方向に離間して前記フロアパネル構造体に複数設けられ、
前記クロスメンバの前記傾斜延出部と交差する前記補強ビードは、前記クロスメンバの前記中央領域と交差する前記補強ビードよりも車体前後方向の中央側に延びていることを特徴とする請求項4に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪車両の車体下部構造として、車体前後方向に略沿って延びる一対のリヤサイドフレームにクロスメンバが連結され、一対のリヤサイドフレームとクロスメンバにフロアパネルが接合されたものがある。この種の車体下部構造では、車両後方からフロアパネルに衝撃荷重が入力されたときに、フロアパネルからクロスメンバに荷重をスムーズに伝達でき、かつフロアパネルが前後に圧壊することによって衝撃荷重のエネルギーを効率良く吸収できることが望まれている。従来より、この要望を実現するための各種の技術が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車体下部構造は、一対のリヤサイドフレームとクロスメンバに接合されるフロアパネルに、車体前後方向に略沿って延びる補強ビードが形成されている。この車体下部構造の場合、車両後方からフロアパネルの後部に衝撃荷重が入力されると、補強ビードがクロスメンバに入力荷重をスムーズに伝達する。また、このとき、補強ビードによって補強されたフロアパネルが圧壊することにより、衝撃荷重のエネルギーは効率良く吸収される。
【0004】
また、四輪車両の車体下部構造として、左右のリサイドフレームに連結されるクロスメンバが、非直線部(屈曲部)を持つクロスメンバによって連結されたものが案出されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載の車体下部構造は、クロスメンバの車幅方向の中央領域の両端部から車両前方側に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部が設けられ、各傾斜延出部の外側端部が左右のリヤサイドフレームに連結されている。左右のリヤサイドフレームとクロスメンバにはフロアパネルが接合されている。
【0006】
このような車体下部構造においても、フロアパネル構造体(複数パネルから成る場合も含む。)に車体前後方向に略沿って延びる補強ビードを設け、衝撃荷重のスムーズな伝達と、衝撃荷重のエネルギーの吸収性能の向上を図ることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-16348号公報
【特許文献2】特開2016-078658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、傾斜延出部を持つクロスメンバを採用した車体下部構造において、フロアパネル構造体に車体前後方向に略沿って延びる補強ビードを適用した場合、車体前後方向に沿う衝撃荷重が補強ビードからクロスメンバに入力されると、クロスメンバの傾斜延出部が外側に開くように変形し易くなる。そして、クロスメンバの傾斜延出部が外側に開くように変形すると、左右のサイドフレームが車幅方向外側に押し広げられ、入力荷重を効率良く受け止められなくなる。左右のサイドフレームが衝撃荷重を効率良く受け止められなくなると、フロアパネル構造体等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることが難しくなる。
【0009】
そこで本発明は、フロアパネル構造体に入力された車体前後方向に沿う衝撃加重をサイドフレームによって効率良く受け止め、フロアパネル構造体等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることができる車体下部構造を提供しようとするものである。そして、本発明は、延いては持続可能な運送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車体下部構造は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る車体下部構造は、車体前後方向の中央の後方側または前方側において、車体前後方向に略沿って延びる一対のサイドフレーム(例えば、実施形態のリヤサイドフレーム10)と、一対の前記サイドフレームに連結されるクロスメンバ(例えば、実施形態のリヤクロスメンバ13)と、一対の前記サイドフレームと前記クロスメンバとに接合されるフロアパネル構造体(例えば、実施形態のフロアパネル構造体15)と、を備え、前記クロスメンバは、車幅方向の中央領域(例えば、実施形態の中央延出部13c)の両端部から車体前後方向の中央側に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部(例えば、実施形態の傾斜延出部13s)を有し、前記フロアパネル構造体は、前記クロスメンバよりも車体前後方向の外側位置から前記クロスメンバと接するように車体前後方向の中央側に向かって延びる補強ビード(例えば、実施形態の補強ビード23)を有し、前記補強ビードは、前記クロスメンバの車体前後方向の中央側の前記フロアパネル構造体との接合部(例えば、実施形態の前側接合部35)に達しない位置まで延びていることを特徴とする。
【0011】
上記の構成により、フロアパネル構造体を通して車体前後方向から衝撃荷重が入力されると、その衝撃荷重は補強ビードに沿ってクロスメンバに伝達される。このとき、補強ビードは、クロスメンバに荷重を伝達するものの、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部に達していない。このため、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部には、フロアパネル構造体の張力がクロスメンバの傾斜延出部の変形を抑制するように作用する。
つまり、補強ビードがクロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部に跨るように延びている場合には、衝撃荷重の入力時に補強ビードの溝形状が押し開かれるように変形すると、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部に、傾斜延出部の変形を抑制するようにフロアパネル構造体の張力が作用しなくなる。これに対し、上記の構成では、補強ビードがクロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部に達していないため、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部には、クロスメンバの傾斜延出部の変形を抑制するようにフロアパネル構造体の張力が作用するようになる。
したがって、フロアパネル構造体を通して車体前後方向から衝撃荷重が入力された場合に、クロスメンバが補強ビードから荷重を受け、それによってクロスメンバの傾斜延出部の傾斜角度が広がろうとする変形が生じにくくなる。よって、本構成を採用した場合には、クロスメンバの屈曲部が開き方向に変形するのを抑制し、フロアパネル構造体に入力された衝撃加重をサイドフレームによって効率良く受け止めることができる。
【0012】
前記クロスメンバの前記中央領域には、車体下方に配置される部品(例えば、実施形態のドライブユニット18)の設置部(例えば、実施形態の支持ブラケット19r)が固定され、前記補強ビードは、前記設置部と車幅方向で交差する位置に配置されるようにしても良い。
【0013】
この場合、補強ビードに入力された車体前後方向に沿う衝撃荷重は、クロスメンバの中央領域のうちの部品の設置部の固定される部位に入力される。クロスメンバの中央領域のうちの、補強ビードを通して衝撃荷重の入力される部位は、部品の設置部によって補強されている。このため、クロスメンバの中央領域が変形しにくくなるうえ、補強ビードの口開き状の変形挙動もクロスメンバの傾斜延出部側に伝達されにくくなる。
【0014】
前記クロスメンバの前記中央領域には、車体下方に配置される部品(例えば、実施形態のドライブユニット18)の設置部(例えば、実施形態の支持ブラケット19r)が固定され、前記設置部は、前記クロスメンバの前記中央領域と前記傾斜延出部の間の屈曲部(例えば、実施形態の屈曲部13b)に跨るように固定されるようにしても良い。
【0015】
この場合、クロスメンバの中央領域と傾斜延出部の間の屈曲部が部品の設置部によって強固に補強される。このため、車体前後方向から補強ビードに衝撃荷重が入力されたときに、クロスメンバの屈曲部を起点とした変形を部品の設置部によって抑制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、フロアパネル構造体に入力された衝撃加重をサイドフレームによってより効率良く受け止めることができる。
【0016】
前記補強ビードは、前記クロスメンバの車体前後方向の外側の前記フロアパネル構造体との接合部(例えば、実施形態の後側接合部30)を超えて車体前後方向の中央側に延びるようにしても良い。
【0017】
この場合、フロアパネル構造体に入力された車体前後方向に沿う荷重を、補強ビードを通してクロスメンバにより効率良く伝達することができる。
【0018】
前記補強ビードは、車幅方向に離間して前記フロアパネル構造体に複数設けられ、前記クロスメンバの前記傾斜延出部と交差する前記補強ビードは、前記クロスメンバの前記中央領域と交差する前記補強ビードよりも車体前後方向の中央側に延びるようにしても良い。
【0019】
この場合、クロスメンバの傾斜延出部と交差する補強ビードを車体前後方向の中央側に最大限に延ばすことにより、クロスメンバの傾斜延出部の変形を抑制しつつ、フロアパネル構造体に入力された衝撃荷重を複数の補強ビードを介してクロスメンバに効率良く伝達することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車体下部構造は、フロアパネル構造体の補強ビードが、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体との接合部に達しない位置まで延びている。このため、車両前後方向の衝撃荷重の入力時に、補強ビードを介して入力荷重をクロスメンバにスムーズに伝達し、かつクロスメンバの傾斜延出部が開き方向に変形するのを抑制することができる。したがって、本発明に係る車体下部構造を採用した場合には、フロアパネル構造体に入力された車体前後方向に沿う衝撃加重をサイドフレームによって効率良く受け止め、フロアパネル構造体等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることができる。よって、本発明に係る車体下部構造を採用した場合には、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の車両を下方から見た図。
図2】第1実施形態の車両の図1のII-II線に沿う断面図。
図3】第2実施形態の車両の図2と同様の断面図。
図4】第2実施形態の車両を下方から見た図。
図5】第3実施形態の車両の図2と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、前後や上下、左右については、特別に断らない限り車両の前進方向に対しての向きを意味するものとする。また、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが記されている。
また、以下で説明する各実施形態においては、共通部分に同一符号を付して重複する説明を一部省略するものとする。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の車両1の後部領域を下方から見た図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
車両1の後部領域の左右両側には、車両前後方向に略沿って延びる一対のリヤサイドフレーム10(サイドフレーム)が配置されている。左右のリヤサイドフレーム10の各前端部は、車室の車幅方向外側下方に配置される左右のサイドシル11に連結されている。左右のサイドシル11は車体前後方向に沿って延びている。左右のリヤサイドフレーム10の前部領域同士は、車幅方向に略沿って延びるフロントクロスメンバ12によって連結されている。左右のリヤサイドフレーム10の後部領域同士は、車幅方向に略沿って延びるリヤクロスメンバ13(クロスメンバ)によって連結されている。
【0024】
左右のサイドシル11には、車室下方を覆うフロントフロアパネル14が接合されている。左右のリヤサイドフレーム10と、フロントクロスメンバ12及びリヤクロスメンバ13には、車室後方の荷室の下方を覆うリヤ側のフロアパネル構造体15が接合されている。フロアパネル構造体15は、後に詳述するように上壁パネル16と下壁パネル17を有する二重パネル構造とされている。
【0025】
フロントクロスメンバ12とリヤクロスメンバ13には、車両駆動用のドライブユニット18が支持されている。ドライブユニット18の前縁部は、フロントクロスメンバ12の後縁部に接合された複数の支持ブロック70に支持され、ドライブユニット18の後縁部は、リヤクロスメンバ13に支持されている。複数の支持ブロック70は、フロントクロスメンバ12の後縁部とフロアパネル構造体15の上壁パネル16の前縁部の下面とに溶接固定されている。ドライブユニット18は、図示しない防振マウントと支持ブラケット19f,19rを介して、複数の支持ブロック70とリヤクロスメンバ13の各下面に締結固定されている。
本実施形態では、ドライブユニット18が車体下方に配置される部品を構成し、リヤクロスメンバ13の下面に締結固定される二つの支持ブラケット19rが車体下方に配置される部品の設置部を構成している。
【0026】
ドライブユニット18からは、車体の左右方向の外側に延びる一対のドライブシャフト20が延設されている。左右の各ドライブシャフト20の先端側は、図示しないリヤサスペンション装置を介して車体に支持されている。各ドライブシャフト20の先端部には図示しない後輪が取り付けられている。
【0027】
フロアパネル構造体15は、図2に示すように、フロントフロアパネル14(図1参照)の後端部と車体後端部の間に延在する上壁パネル16と、上壁パネル16の下方でリヤクロスメンバ13の後端部と車体後端部の間に延在する下壁パネル17と、上壁パネル16と下壁パネル17の後端部同士を連結する後部パネル21と、を備えている。リヤクロスメンバ13は、上端部が上壁パネル16の車両前後方向の略中間部に接合され、下端側の後縁部に下壁パネル17の前縁部が接合されている。下壁パネル17は、上壁パネル16の後半部領域との間で箱型の中空部を構成している。
【0028】
具体的には、下壁パネル17の左右の側縁部は上方に屈曲して延び、その屈曲した上縁部が上壁パネル16の左右の側縁部に接合されている。また、下壁パネル17の前端部と上壁パネル16の間は、リヤクロスメンバ13によって閉塞され、下壁パネル17と上壁パネル16の後端部間は、後部パネル21によって閉塞されている。こうして構成された箱型の中空部は、リヤクロスメンバ13と左右のリヤサイドフレーム10の後方側に延在している。また、後部パネル21によって閉じられた上壁パネル16と下壁パネル17の後端部の中央領域には、略ハット状断面のリヤバンパ22が接合されている。
【0029】
下壁パネル17の車幅方向の中央領域には、車体前後方向に沿って延びる複数(例えば、六つ)の補強ビード23が車幅方向に略等間隔に離間して形成されている。補強ビード23は、車両下方側、若しくは、上方側に山形状の膨出する断面が車体前後方向に沿って延びている。各補強ビード23は、リヤクロスメンバ13よりも後方側位置(車体前後方向の外側位置)からリヤクロスメンバ13と接するように車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって延びている。
【0030】
リヤクロスメンバ13は、図2に示すように、上壁パネル16の下面に接合されることにより、上壁パネル16との間で略矩形状の閉断面を形成している。リヤクロスメンバ13は、下面視において車幅方向に沿って延出する中央延出部13c(中央領域)と、中央延出部13cの車幅方向の両側の外側端部から車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部13sと、を備えている。中央延出部13cと各傾斜延出部13sの間には、屈曲部13bが設けられている。なお、中央延出部13cと各傾斜延出部13sの間に設けられる屈曲部13bにおける「屈曲」とは、角ばって曲がる形態に限らず湾曲して曲がる形態も含む。
【0031】
また、本実施形態のリヤクロスメンバ13は、図2に示すように、車幅方向と直交する断面が略L字状の前部プレート13fと、車幅方向と直交する断面が略I字状の後部プレート13rと、を備えている。
【0032】
前部プレート13fは、上下方向に延出する縦壁24と、縦壁24の下端から車両後方側に延出する下壁25と、を有する。縦壁24の上端部には、車両前方側に屈曲して延びる上部フランジ26が延設されている。上部フランジ26の上面は、フロアパネル構造体15の上壁パネル16の下面に接合されている。上壁パネル16のうちの前部プレート13fの上部フランジ26の接合される部位には、補強ビード等の車体前後方向に延びる凹凸部が形成されていない。上部フランジ26は、上壁パネル16のうちの車体前後方向に延びる凹凸部を持たない部位に接合されている。
本実施形態では、前部プレート13fの上部フランジ26が、クロスメンバの車体前後方向の中央側(前側)のフロアパネル構造体15との接合部35を構成している。以下、この接合部35については、「前側接合部35」と称する。
【0033】
後部プレート13rは、前部プレート13fの縦壁24の後方側で上下方向に延出する縦壁27を有する。縦壁27の上端部には、車両前方側に屈曲して延びる上部フランジ28が延設されている。縦壁27の下端部には、車両後方側に屈曲して延びる下部フランジ29が延設されている。上部フランジ28の上面は、フロアパネル構造体15の上壁パネル16の下面に接合されている。下部フランジ29は、前部プレート13fの下壁25の後縁部の上面と上下方向で対向している。下部フランジ29と下壁25の後縁部との間には、フロアパネル構造体15の下壁パネル17の前縁部が挿入されている。下部フランジ29と下壁25は、下壁パネル17の前縁部を間に挟み込んだ状態において、溶接等によって相互に固定されている。下壁パネル17の前縁部は、下部フランジ29と下壁25の後縁部に挟持された状態において、リヤクロスメンバ13に接合されている。
本実施形態では、下部フランジ29と下壁25の後縁部が、クロスメンバの車体前後方向の外側(後側)のフロアパネル構造体15との接合部30を構成している。以下、この接合部30については、「後側接合部30」と称する。
【0034】
下壁パネル17に形成される複数の補強ビード23は、車両の下面視において、リヤクロスメンバ13の前方側の前側接合部35に達しない位置まで延びている。つまり、複数の補強ビード23は、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体15との接合部に達しない位置まで延びている。本実施形態の場合、複数の補強ビード23は、前端部がリヤクロスメンバ13の後方側の後側接合部30の後端部に接し、かつリヤクロスメンバ13の前方側の前側接合部35に達しない位置まで延びている。
【0035】
また、図1に示すように、下壁パネル17の左半領域の三つの補強ビード23は、リヤクロスメンバ13の左側(図1中の上側)の支持ブラケット19rの延在部と車幅方向で交差する位置に配置されている。左側の支持ブラケット19rは、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cと左側の傾斜延出部13sの間の屈曲部13bに跨るようにリヤクロスメンバ13の下壁25の下面に固定されている。左半領域の補強ビード23のうちの最も左側に位置される補強ビード23L(23)は、左側の屈曲部13bと交差する位置に配置されている。
【0036】
同様に、図1に示すように、下壁パネル17の右半領域の三つの補強ビード23は、リヤクロスメンバ13の右側(図1中の下側)の支持ブラケット19rの延在部と車幅方向で交差する位置に配置されている。右側の支持ブラケット19rは、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cと右側の傾斜延出部13sの間の屈曲部13bに跨るようにリヤクロスメンバ13の下壁25の下面に固定されている。右半領域の補強ビード23のうちの最も右側に位置される補強ビード23R(23)は、右側の屈曲部13bと交差する位置に配置されている。
【0037】
以上のように、本実施形態の車体下部構造は、フロアパネル構造体15の下壁パネル17に形成される補強ビード23が、リヤクロスメンバ13の後側接合部30と接し、かつリヤクロスメンバ13の前側接合部35に達しない位置まで延びている。このため、車両後方からの衝撃荷重の入力時には、補強ビード23を介して入力荷重をリヤクロスメンバ13にスムーズに伝達し、かつリヤクロスメンバ13の傾斜延出部13sが開き方向に変形するのを抑制することができる。即ち、本構成では、補強ビード23がリヤクロスメンバ13の前側接合部35に達していないため、リヤクロスメンバ13のフロアパネル構造体15との前側接合部35には、リヤクロスメンバ13の傾斜延出部13sの開き方向の変形を抑制するようにフロアパネル構造体15(上壁パネル16)の張力が作用する。このため、フロアパネル構造体15に車両後方から入力された衝撃加重を左右のリヤサイドフレーム10によって効率良く受け止めることができる。
したがって、本実施形態の車体下部構造を採用した場合には、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、フロアパネル構造体15等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることができる。よって、本実施形態の車体下部構造を採用した場合には、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0038】
また、本実施形態の車体下部構造は、車体下方に配置される部品であるドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)と車幅方向で交差する位置に補強ビード23が配置されている。このため、車両後方から補強ビード23に入力される衝撃荷重は、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cのうちのドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)の固定される部位に入力される。このとき、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cのうちの、補強ビード23を通して衝撃荷重の入力される部位は、ドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)によって強固に補強されている。このため、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cの剛性が高まり中央延出部13cが変形しにくくなるうえ、補強ビード23の口開き状の変形挙動もリヤクロスメンバ13の傾斜延出部13s側に伝達されにくくなる。
したがって、本構成を採用した場合には、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、フロアパネル構造体15等の圧壊によるエネルギー吸収をよりスムーズに進行させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態の車体下部構造は、車体下方に配置される部品であるドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)がリヤクロスメンバ13の中央延出部13cと傾斜延出部13sの間の屈曲部13bに跨るように固定されている。これにより、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cと傾斜延出部13sの間の屈曲部13bはドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)によって強固に補強される。この結果、車体後部からの衝撃荷重の入力時に、リヤクロスメンバ13の屈曲部13bを起点とした変形をドライブユニット18の設置部(支持ブラケット19r)によって抑制することが可能になる。
したがって、本構成を採用した場合には、車両後方からフロアパネル構造体15に入力された衝撃加重を左右のリヤサイドフレーム10によってより効率良く受け止めることができる。
【0040】
<第2実施形態>
図3は、本実施形態の車両101の第1実施形態の図2と同様の断面図である。図4は、本実施形態の車両101を下方から見た図である。
本実施形態の車両101は、第1実施形態と同様に、図示しない左右のリヤサイドフレームの前部領域同士が図示しないフロントクロスメンバによって連結され、後部領域同士がリヤクロスメンバ13によって連結されている。左右のリヤサイドフレームと、フロントクロスメンバ及びリヤクロスメンバ13には、二重パネル構造のフロアパネル構造体115が接合されている。フロアパネル構造体115は、第1実施形態と同様に上壁パネル16と下壁パネル117とを備え、下壁パネル117には、車体前後方向に沿って延びる複数(例えば、六つ)の補強ビード123が車幅方向に略等間隔に離間して形成されている。補強ビード123は、車両下方側、若しくは、上方側に山形状の膨出する断面が車体前後方向に沿って延びている。各補強ビード123は、リヤクロスメンバ13よりも後方側位置(車体前後方向の外側位置)からリヤクロスメンバ13と交差するように車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって延びている。
【0041】
リヤクロスメンバ13は、第1実施形態と同様に、下面視において車幅方向に沿って延出する中央延出部13c(中央領域)と、中央延出部13cの車幅方向の両側の外側端部から車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部13sと、を備えている。中央延出部13cと各傾斜延出部13sの間には、屈曲部13bが設けられている。リヤクロスメンバ13は、第1実施形態と同様に前部プレート13fと後部プレート13rを有している。
【0042】
後部プレート13rの下部フランジ29と前部プレート13fの下壁25の間には、フロアパネル構造体15の下壁パネル117の前縁部が挿入されている。下壁パネル117の前縁部は前部プレート13fの下壁25の車体前後方向の略中央位置まで延びている。下部フランジ29と下壁25は、下壁パネル117の前縁部を間に挟み込んだ状態において、溶接等によって相互に固定されている。下壁パネル117の前縁部は、下部フランジ29と下壁25の後縁部に挟持された状態において、リヤクロスメンバ13に接合されている。
本実施形態の場合も、下部フランジ29と下壁25の後縁部が、クロスメンバの車体前後方向の外側(後側)のフロアパネル構造体115との接合部を構成している。以下、この接合部のことを「後側接合部30」と称する。また、上壁パネル16の下面に接合される前部プレート13fの上部フランジ26は、クロスメンバの車体前後方向の中央側(前側)のフロアパネル構造体115との接合部を構成している。以下、この接合部のことを「前側接合部35」と称する。
【0043】
本実施形態の場合、複数の補強ビード123は、前端部がリヤクロスメンバ13の後方側の後側接合部30の後端部と交差し、かつリヤクロスメンバ13の前方側の前側接合部35に達しない位置まで延びている。したがって、複数の補強ビード123は、クロスメンバ(リヤクロスメンバ13)の車体前後方向の外側のフロアパネル構造体115との接合部(後側接合部30)を超えて車体前後方向の中央側(前方側)に延びている。
【0044】
また、複数の補強ビード123のうちの最も左側に位置される補強ビード123Lは、リヤクロスメンバ13の左側の傾斜延出部13sと交差するように配置され、最も右側に位置される補強ビード123Rは、リヤクロスメンバ13の右側の傾斜延出部13sと交差するように配置されている。残余の中央側の四つの補強ビード123Cは、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cと交差するように配置されている。
【0045】
図4に示すように、左右の補強ビード123L,123Rの前端部123Le,123Reは、中央領域の補強ビード123Cの前端部123Ceよりも車体前方側に配置されている。つまり、傾斜延出部13sと交差する左右の補強ビード123L,123Rは、リヤクロスメンバ13の中央延出部13cと交差する中央領域の四つの補強ビード123Cよりも車両前方側に長く延びている。
【0046】
本実施形態の車体下部構造は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、上述した第1実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態の車体下部構造は、複数の補強ビード123が、リヤクロスメンバ13の後側接合部30(車体前後方向の外側のフロアパネル構造体115との接合部)を超えて車体前方側(車体前後方向の中央側)に延びている。このため、車体後部からフロアパネル構造体115に入力された衝撃荷重を、複数の補強ビード123を通してリヤクロスメンバ13に効率良く伝達することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、複数の補強ビード123を介して車両後方から入力された衝撃加重を左右のリヤサイドフレームによってより効率良く受け止め、フロアパネル構造体115等の圧壊によるエネルギー吸収をよりスムーズに進行させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の車体下部構造は、複数の補強ビード123のうちの、リヤクロスメンバ13の傾斜延出部13sと交差する補強ビード123L,123Rが、中央延出部13cと交差する補強ビード123Cよりも車体前方側(車体前後方向の中央側)に延びている。このため、リヤクロスメンバ13の傾斜延出部13sと交差する補強ビード123L,123Rを車体前方側(車体前後方向の中央側)に最大限に延ばし、傾斜延出部13sの変形を抑制しつつ、フロアパネル構造体115に入力された衝撃荷重を複数の補強ビード123を介してリヤクロスメンバ13に効率良く伝達することができる。
【0049】
<第3実施形態>
図5は、本実施形態の車両201の第1実施形態の図2と同様の断面図である。
上記の各実施形態は、フロアパネル構造体が上壁パネルと下壁パネルを有する二重パネル構造とされていたが、本実施形態の車両201の車体下部構造は、一重パネル構造のフロアパネル構造体215によって構成されている。即ち、フロアパネル構造体215は、リヤクロスメンバ213と図示しない一対のリヤサイドフレームとに接合される単体のリヤフロアパネル45によって構成されている。
【0050】
リヤクロスメンバ213は、例えば、上向きに開口する略U字状断面のクロスメンバ本体50の前側の上端部と後側の上端部に前部フランジ51と後部フランジ52が延設されている。前部フランジ51と後部フランジ52は車体前後方向に離間してリヤフロアパネル45の下面に接合されている。
本実施形態では、リヤクロスメンバ213の前部フランジ51が、クロスメンバの車体前後方向の中央側のフロアパネル構造体215との接合部を構成し、リヤクロスメンバ213の後部フランジ52が、クロスメンバの車体前後方向の外側のフロアパネル構造体215との接合部を構成している。
【0051】
詳細な図示は省略するが、本実施形態の場合も、リヤクロスメンバ213は、下面視において車幅方向に沿って延出する中央延出部(中央領域)と、中央延出部の車幅方向の両側の外側端部から車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって鈍角状に屈曲して延びる一対の傾斜延出部と、を備えている。
【0052】
また、リヤフロアパネル45(フロアパネル構造体215)には、リヤクロスメンバ213よりも後方位置(車体前後方向の外側位置)からリヤクロスメンバ213と接するように車体前方側(車体前後方向の中央側)に向かって延びる複数の補強ビード223が形成されている。複数の補強ビード223は車幅方向に離間してリヤフロアパネル45に形成されている。本実施形態の場合、複数の補強ビード223は、リヤクロスメンバ213の後部フランジ52と交差し、かつ前部フランジ51に達しない位置まで延びている。リヤクロスメンバ213の前側の接合部である前部フランジ51は、リヤフロアパネル45のうちの、補強ビード等の凹凸形状を持たない部位に接合されている。
【0053】
本実施形態の車体下部構造では、フロアパネル構造体215が単一のリヤフロアパネル45によって構成されているが、複数の補強ビード223は、後部フランジ52と交差し、かつ前部フランジ51に達しない位置まで延びている。これにより、リヤクロスメンバ213のフロアパネル構造体215との前側の接合部(前部フランジ51)には、リヤクロスメンバ213の傾斜延出部の開き方向の変形を抑制するようにフロアパネル構造体215(リヤフロアパネル45)の張力が作用する。このため、フロアパネル構造体215に車両後方から入力された衝撃加重を左右のリヤサイドフレームによって効率良く受け止めることができる。
したがって、本実施形態の場合にも、車両後方からの衝撃荷重の入力時に、フロアパネル構造体215等の圧壊によるエネルギー吸収をスムーズに進行させることができる。
【0054】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、リヤクロスメンバの中央領域に車幅方向に沿って延出する中央延出部が設けられているが、リヤクロスメンバの中央領域の形状は車幅方向に沿って延出する形状に限定されるものではなく、方形ブロック状等の他の形状であっても良い。また、第1,第2実施形態では、下壁パネル17,117に夫々六つの補強ビード23,123が設けられているが、下壁パネル17,117に設ける補強ビード23,123の数は六つに限定されるものではなく、車両に応じて適宜数を選定することができる。
【0055】
また、上記の実施形態は車両の後部側の車体下部構造であるが、車両の前部側の下部構造に同様の構成を採用することも可能である。具体的には、車体前後方向に略沿って延びる左右のフロントサイドフレームにフロントクロスメンバを結合し、フロントサイドフレームとフロントクロスメンバにフロアパネルを接合した構造において、フロアパネルに上述と同様に補強ビードを形成するようにしても良い。
【0056】
また、上記の実施形態では、クロスメンバ(リヤクロスメンバ13)に固定される車体下方に配置される部品の一例としてドライブユニット18を挙げているが、クロスメンバに固定される車体下方に配置される部品はこれに限定されない。クロスメンバに固定される車体下方に配置される部品は、例えば、サスペンション部品や配線保持部品等であっても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…リヤサイドフレーム(サイドフレーム)
13,213…リヤクロスメンバ(クロスメンバ)
13c…中央延出部(中央領域)
13s…傾斜延出部
13b…屈曲部
15,115,215…フロアパネル構造体
18…ドライブユニット(車体下方に配置される部品)
19r…支持ブラケット(設置部)
23,123,223…補強ビード
30…後側接合部(接合部)
35…前側接合部(接合部)
51…前部フランジ(接合部)
52…後部フランジ(接合部)
図1
図2
図3
図4
図5