(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162887
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G21C17/00 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078858
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山路 和也
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA08
2G075FB04
(57)【要約】
【課題】短時間で効率よく炉心計算を実行する方法を提供する。
【解決手段】炉心計算方法は、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、
前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、
を有する炉心計算方法。
【請求項2】
前記簡易計算ステップでは、所定の評価期間の開始から終了までの炉心状態について、前記評価期間内に設定された1つ又は複数の評価点での減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度と、を計算し、
前記詳細計算ステップでは、前記簡易計算ステップで計算された、前記評価点ごとの減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、それぞれの前記評価点における詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記評価点ごとに、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度と、を計算する、
請求項1に記載の炉心計算方法。
【請求項3】
前記簡易計算ステップでは、燃料集合体を均質なものとして扱い、中性子のエネルギーを前記詳細な炉心計算に比べて少数群に分類して、拡散計算を行う、
請求項1又は請求項2に記載の炉心計算方法。
【請求項4】
前記詳細計算ステップは、燃料集合体を非均質なものとして扱い、中性子のエネルギーを前記簡易な炉心計算に比べて多数群に分類して、輸送計算を行う、
請求項1又は請求項2に記載の炉心計算方法。
【請求項5】
相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算部と、
前記簡易計算部が計算した、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算部と、
を備える炉心計算装置。
【請求項6】
コンピュータに、
相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、
前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の状態を評価するために炉心計算が行われる(例えば、特許文献1)。炉心計算を行うプログラムである計算コードには、例えば、現行の原子炉の設計に用いられる炉心設計コードと、炉心設計コードと比較して、より詳細な炉心計算を行う詳細計算コードとが存在する。一般的には、炉心設計コードによる炉心計算を実行することで所望の精度の解析結果を得ることができる。詳細計算コードは、炉心構造が変更になった場合の炉心計算や、新たに開発された計算コードの検証用のリファレンスを算出する場合などに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
詳細計算コードの計算負荷は高く、最終的な計算結果が得られるまでに長時間の計算が必要になる。効率よく短時間で詳細計算コードによる高精度な炉心計算を実行する方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る炉心計算方法は、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、を有する。
【0007】
本開示に係る炉心計算装置は、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算部と、前記簡易計算部が計算した、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算部と、を備える。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムによれば、短時間で高精度な炉心計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る炉心計算装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る炉心計算の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る炉心計算の一例を示す図である。
【
図4】実施形態の炉心計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の炉心計算装置について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る炉心計算装置の一例を示すブロック図である。
炉心計算装置10は、詳細計算コードを用いた高精度な炉心計算を短時間で実行する。炉心計算装置10は、入力受付部11と、制御部12と、記憶部13と、を備える。
【0012】
入力受付部11は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて入力された情報や指示などを受け付ける。例えば、入力受付部11は、炉心計算に必要なパラメータの入力を受け付ける。入力受付部11は、受け付けた情報を記憶部13に記録したり、制御部12へ出力したりする。
【0013】
制御部12は、PWR(Pressurized Water Reactor:加圧水型原子炉)の炉心計算を実行する。炉心計算は、熱水力計算、共鳴計算、3次元輸送計算などを含む。炉心計算では、減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、燃焼度分布、臨界ほう素濃度、実効断面積、中性子束分布、実効増倍率などを計算する。
【0014】
制御部12は、簡易計算部121と、詳細計算部122と、を有している。
簡易計算部121は、比較的簡易な計算モデルや計算方法により炉心計算を行う。例えば、簡易計算部121は、燃料集合体について全燃料を均質とし、中性子のエネルギーについて少数群(例えば、2群)に分類して扱い、中性子の振る舞いについては拡散計算によって炉心計算を行う。このような炉心計算を行う計算コードの例として、現行の炉心設計コードを挙げることができる。
【0015】
詳細計算部122は、比較的詳細なモデルや計算方法により炉心計算を行う。例えば、詳細計算部122は、燃料集合体について非均質とし(例えば、1本毎の燃料棒の特性の違いを考慮する)、中性子のエネルギーについて多群(例えば、9群)に分類して扱い、中性子の振る舞いについては3次元輸送計算によって炉心計算を行う。このような炉心計算を行う計算コードを詳細計算コードと呼ぶ。詳細計算コードは、実績が無い原子炉や炉心設計コードでは解析できない構造の原子炉などの特性の把握や、実験の代わりに原子炉の挙動を再現し解析するような場面で用いられ、より精度の高い炉心計算が可能である。例えば、詳細計算コードでは、燃料棒単位で核種毎の数密度・断面積データを保有し、中性子束分布を計算するため、計算負荷が大きく、炉心計算に時間がかかる。
【0016】
炉心設計コードおよび詳細計算コードに原子炉の状態に関する初期値(燃焼度など)、評価期間(例えば、13か月)、計算ステップ長さ(例えば、数日~数十日)を与えて、炉心計算の実行を指示すると、評価期間における炉心状態の推移(例えば、評価期間の開始から終了までの計算ステップ長さごとの炉心状態)が解析される。炉心設計コードと詳細計算コードを比較すると、炉心設計コードによる炉心計算に要する計算時間は短時間(例えば、数分)で、計算精度は一定程度以上である。詳細計算コードによる炉心計算に要する計算時間は長時間で、計算精度は高精度である。
【0017】
一般に詳細計算コードで炉心計算を行う場合、詳細計算コードの初期値として物理的に意味のない一様な減速材温度分布や減速材密度分布、燃料温度分布、適当な臨界ほう素濃度、すべて新燃料を仮定した燃焼度(0MWD/t)を初期値として与えて炉心計算を行う。詳細計算コードによる炉心計算では、中性子束分布、実効増倍率が収束するまで反復計算を行うが、これらの値が収束するまでには長い時間を要する。そこで、本実施形態では、短時間で一定以上の精度で炉心計算を行うことができる炉心設計コードと、詳細計算コードとを併用することによって、反復計算が収束するまでの時間を短縮する。具体的には、最初に炉心設計コードによって炉心計算を行い、その計算結果を詳細計算コードに初期値として与え、詳細計算コードを用いた炉心計算を実行する。詳細計算コードは、与えられた初期値から炉心計算を始めて、中性子束分布と実効増倍率が収束するまで原子炉の状態を模擬する計算を繰り返し行う。これにより、意味の無い値を初期値として与えて炉心計算を行う場合と比較して、短時間で計算を終了させることができる。
【0018】
なお、上記した簡易計算部121、詳細計算部122の計算条件、例えば、中性子のエネルギーを少数群の場合には2群とし、多数群の場合には9群とすることなどは一例であって、この数には限定されない。例えば、少数群が9群、多数群が100群であってもよい。任意の比較的簡易な炉心計算を行う計算コードと比較的詳細な炉心計算を行う計算コードとを、それぞれ簡易計算部121、詳細計算部122が用いる計算コードとして適用し、本実施形態の炉心計算を行うことができる。
【0019】
記憶部13は、炉心計算に必要な初期値(例えば、減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度、燃焼度分布)、炉心設計コード、詳細計算コード、計算中のデータ、計算結果などを記憶する。
【0020】
(動作)
次に
図2を用いて、本実施形態の炉心計算の流れを説明する。
図2は、実施形態に係る炉心計算の一例を示すフローチャートである。
まず、オペレータが炉心計算に必要な各種のパラメータ(例えば、炉心計算開始時の原子炉の状態を表すパラメータ等)を炉心計算装置10に入力し、炉心計算の開始を指示する。入力受付部11は、入力されたパラメータを取得して、記憶部13に記録するとともに、制御部12へ炉心計算の開始を指示する。制御部12は、簡易計算部121に炉心計算の実行を指示する。簡易計算部121は、炉心設計コードによって炉心計算を行う(ステップS1)。炉心計算が終了すると、簡易計算部121は、炉心設計コードによって計算された減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度などの計算結果を記憶部13に記録する。
【0021】
次に制御部12は、記憶部13に記録された減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度を読み出して、これらの値を初期値として詳細計算コードに設定する(ステップS2)。制御部12は、詳細計算部122に炉心計算の実行を指示する。詳細計算部122は、詳細計算コードを用いて炉心計算を行う(ステップS3)。詳細な炉心計算では、炉心計算が収束するまでの間、熱水力計算、共鳴計算、3次元輸送計算が繰り返し実行される(反復計算)。詳細計算部122は、反復計算で計算された実効増倍率、中性子束分布が収束したかどうかを判定する(ステップS4)。1回目のループではこの判定はNoとなる。2回目のループ以降は、例えば、前回計算した実効増倍率と今回計算した実効増倍率の差が所定値以内となり、且つ、前回計算した中性子束分布と今回計算した中性子束分布の差が所定値以内となると、詳細計算部122は、炉心計算が収束したと判定し、そうでない場合、炉心計算は収束していないと判定する。収束していないと判定した場合(ステップS4;No)、ステップS3の処理が繰り返し行われる。収束した場合(ステップS4;Yes)、詳細計算部122は、詳細計算コードによる炉心計算を終了し、計算結果を記憶部13に記録する。制御部12は、記憶部13に記録された炉心計算の結果、例えば、減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度、燃焼度分布、実効増倍率、中性子束分布などを表示装置や電子ファイル等に出力する(ステップS5)。
【0022】
図3に本実施形態の炉心計算の一例を示す。例えば、燃料を装荷して原子炉の運転を開始し、次の定期点検等で原子炉の運転を停止するまでの炉心状態を解析する目的で炉心計算を行うとする。
図3に例示するのは、評価期間を「13か月」、計算ステップ長さを「2週間」とした場合の本実施形態の炉心計算の過程を模式的に表したものである。
簡易計算部121が、原子炉の運転開始直前の定期点検等で測定された燃料集合体の燃焼度分布などの原子炉に関する所定の初期値を炉心設計コードに設定し、簡易的に炉心計算を行う(
図2のステップS1)。これにより、2週間ごとの減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度などが13か月先まで予測計算される。
【0023】
次に、詳細計算部122が、炉心設計コードによって予測計算された、2週間ごとの減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度を、詳細計算コードによる炉心計算における各計算ステップでの反復計算の初期値として設定する(
図2のステップS2)。詳細計算部122は、炉心設計コードが計算した開始から2週間後の減速材温度等を、詳細計算コードによる2週間後の炉心計算の初期値として設定し、4週間後の減速材温度等を、詳細計算コードによる4週間後の炉心計算の初期値する等、計算ステップ毎の炉心設計コードの計算結果を、詳細計算コードの対応する計算ステップの初期値として設定する。
【0024】
次に、詳細計算部122が、詳細計算コードによる炉心計算を実行する(
図2のステップS3)。運転開始の直前に測定された燃焼度が、燃焼度分布の初期値として詳細計算コードに設定され、その後の各計算ステップでは、対応する計算ステップで炉心設計コードが計算した減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度を初期値として反復計算が行われ、実効増倍率と中性子束分布が収束するまで反復計算が実行される(
図2のステップS3~S4)。燃焼度分布については、1つ前の計算ステップ(2週間後の場合には定期点検で測定された初期値)に基づく計算が行われる。炉心計算が収束すると、収束時に計算された減速材温度分布、減速材密度分布、燃料温度分布、臨界ほう素濃度、燃焼度分布などがその計算ステップにおける計算結果として記憶部13に保存される。このようにして炉心状態の詳細な予測計算が、計算ステップ(2週間)ごとに13か月先まで実行される。各計算ステップでは、予め炉心設計コードによって計算された一定以上の精度を有する各パラメータ値(減速材温度分布など)が与えられ、そこから反復計算を開始するので、無意味な値を初期値として与えた場合と比較して、反復回数が減少し、収束までの計算時間が短縮される。これにより、詳細計算コードによる高精度な炉心計算を従来よりも短時間で完了させることができる。
【0025】
制御部12は、各計算ステップにて詳細計算コードによって計算された、13か月先までの2週間ごとの減速材温度等を、表示装置や電子ファイルへ出力する(
図2のステップS5)。
【0026】
図3の説明で用いた評価期間や計算ステップ長さは一例であって特に限定は無い。例えば、評価期間と計算ステップ長さを共に1週間に設定して炉心計算を行ってもよい。この場合、1回の計算ステップで炉心計算が完了する。
【0027】
(効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、簡易な炉心計算を行って、その結果を初期値として詳細な炉心計算を行う。これにより、詳細計算コードだけを実行する場合と比べて計算負荷を小さくし、高精度な炉心計算を短時間で完了させることができる。例えば、過渡解析コードの検証等、実験による検証が困難な場合に実験の代替となる参照解を、現実的な計算時間(例えば、1日以内)で得ることができる。また、現行の炉心設計コードの近似が適さない、新しい炉心構造を有する原子炉の解析を行うような場合にも、高温全出力の燃焼計算の高速化・高精度化を図ることができる。
【0028】
上記の実施形態では、PWRの炉心計算を例に説明を行ったが、BWR(Boiling Water Reactor:沸騰水型原子炉)についても、本実施形態と同様の考え方で、簡易な炉心計算と詳細な炉心計算を組み合わせて、短時間で詳細な炉心計算を行うことができる。また、上記例では、詳細計算コードによる炉心計算の収束条件として、実効増倍率と中性子束分布が収束することとしたが、収束状況を判断する条件として、他のパラメータ(例えば、燃料温度分布、減速材密度分布、実効断面積、出力分布など)に注目し、他のパラメータの値が収束することを収束条件としてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、炉心設計コードにより各計算ステップでの初期値を計算することとしたが、詳細計算に用いる確からしい初期値を持っている場合は、簡易計算を実行すること無く、確からしい初期値を設定して、詳細計算コードを実行してもよい。
【0030】
図4は、炉心計算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の炉心計算装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。炉心計算装置10は、複数のコンピュータ900によって構成されてもよい。例えば、
図1の簡易計算部121と、詳細計算部122とを別々のコンピュータに実装してもよいし、詳細計算部122を複数台のコンピュータに実装し、複数台で並行して詳細な炉心計算を行うように構成してもよい。
【0031】
炉心計算装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0032】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0033】
<付記>
実施形態に記載の炉心計算方法、炉心計算装置及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0034】
(1)第1の態様に係る炉心計算方法は、相対的に簡易な炉心計算(炉心設計コードによる炉心計算)を実行する簡易計算ステップと、前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算(詳細計算コードによる炉心計算)を実行する詳細計算ステップと、を有する。
これにより、計算負荷を小さくして、短時間で高精度な炉心計算を実行することができる。
【0035】
(2)第2の態様に係る炉心計算方法は、(1)の炉心計算方法であって、前記簡易計算ステップでは、所定の評価期間の開始から終了までの炉心状態について、前記評価期間内に設定された1つ又は複数の評価点(2週間後、4週間後・・・)での減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度と、を計算し、前記詳細計算ステップでは、前記簡易計算ステップで計算された、前記評価点ごとの減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、それぞれの前記評価点における詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記評価点ごとに、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度と、を計算する。
これにより、所定の評価期間における炉心状態の推移の高精度な解析を短時間で実行することができる。
【0036】
(3)第3の態様に係る炉心計算方法は、(1)~(2)の炉心計算方法であって、前記簡易計算ステップでは、燃料集合体を均質なものとして、中性子のエネルギーを前記詳細な炉心計算に比べて少数群に分類して、拡散計算を行う。
これにより、簡易な炉心計算を実行し、一定程度以上の精度で、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを計算することができる。
【0037】
(4)第4の態様に係る炉心計算方法は、(1)~(3)の炉心計算方法であって、前記詳細計算ステップは、燃料集合体を非均質なものとして、中性子のエネルギーを前記簡易な炉心計算に比べて多数群に分類して、輸送計算を行う。
これにより、高精度且つ短時間に炉心計算を実行することができる。
【0038】
(5)第5の態様に係る炉心計算装置は、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算部と、前記簡易計算部が計算した、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算部と、を備える。
【0039】
(6)第6の態様に係るプログラムは、コンピュータに、相対的に簡易な炉心計算を実行する簡易計算ステップと、前記簡易計算ステップで計算された、減速材温度分布と、減速材密度分布と、燃料温度分布と、臨界ほう素濃度とを、相対的に詳細な炉心計算の初期値として設定し、前記詳細な炉心計算を実行する詳細計算ステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0040】
10・・・炉心計算装置
11・・・入力受付部
12・・・制御部
121・・・簡易計算部
122・・・詳細計算部
13・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース