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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162893
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】凝集沈殿水処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20241114BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B01D21/24 V
B01D21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078867
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】山岸 秀規
(72)【発明者】
【氏名】平子 宏治
(72)【発明者】
【氏名】小田 和希
(57)【要約】
【課題】トラフ内への汚泥の堆積を抑制した凝集沈殿水処理装置を提供する。
【解決手段】本開示の凝集沈殿水処理装置100は、筒状の側部11と、すり鉢状の底部13とを有する沈殿槽10と、沈殿槽10の側部11の上部に設けられた越流板21から径方向外側に向けて流出する水の流路となるトラフ20とを備える凝集沈殿水処理装置100であって、トラフ20の底壁23は、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面23aを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側部と、すり鉢状の底部とを有する沈殿槽と、
前記沈殿槽の前記側部の上部に設けられた越流板から径方向外側に向けて流出する水の流路となるトラフと
を備える凝集沈殿水処理装置であって、
前記トラフの底壁は、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面を有する、凝集沈殿水処理装置。
【請求項2】
前記トラフの底壁は、前記傾斜面の径方向外側において、径方向外側に向かって略水平方向に延びる水平底壁を有する、請求項1に記載の凝集沈殿水処理装置。
【請求項3】
前記トラフは、前記越流板と、該越流板の下部から径方向外側に延びる前記底壁と、該底壁の径方向外側端に立設された外壁とを備え、前記越流板と前記外壁との径方向中間位置における前記傾斜面の中間点の高さが、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの底壁の高さと同じである、請求項1又は2に記載の凝集沈殿水処理装置。
【請求項4】
前記トラフは、前記越流板と、該越流板の下部から径方向外側に延びる前記底壁と、該底壁の径方向外側端に立設された外壁とを備え、
軸線方向断面における、前記傾斜面と、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの内周壁と、前記矩形形状トラフの底壁とで囲まれる領域(A)の断面積と、
前記傾斜面と、前記水平底壁と、前記外壁と、前記矩形形状トラフの底壁とで囲まれる領域(B)の断面積と
が等しい、請求項2に記載の凝集沈殿水処理装置。
【請求項5】
前記越流板には、上方に向けて突出する突出部が周方向に間隔を置いて設けられている、請求項1又は2に記載の凝集沈殿水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凝集沈殿水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
凝集沈殿は、汚泥などの微細な固形異物が混じった汚水に対して高分子凝集剤を添加し、固形異物を結合させることで嵩密度を増加させて沈降分離する水処理手法である。沈降分離にはすり鉢状の底部を有する沈殿槽が用いられる。高分子凝集剤を添加した汚水を沈殿槽の中央部に供給すると、中央部から外周へ(水処理装置の型式によっては下から上へ)流れる間に汚泥が成長し沈降する。沈降した汚泥は中央底部にある引抜き管から排出され、処理水(うわ水)は外周上部のトラフへと越流し、回収される。
【0003】
例えば、特許文献1には、汚泥を沈降分離するための有底筒状の槽と、槽の上部に設けられ、越流したうわ水を処理水として槽外部に流出させるトラフとを備えた凝集沈殿処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-177000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されるような流路の断面が矩形形状を有するトラフ(図1の符号7参照)を用いる場合、処理水の運搬量に優れる一方、処理水量が低下しトラフに越流してくる水量が減少した場合には、うわ水と共にトラフ内に流入する少量の汚泥がトラフ内に堆積してしまう場合があった。これは、最大水量に対応するよう設計されたトラフを少ない水量で使用した場合、越流水が広いトラフの底壁に薄く広がってしまい、水勢が低下してしまうことが原因として挙げられる。また、越流水が少ないため、越流板から落下する水流も弱く、トラフの底壁に溜まった汚泥が撹拌されずに越流板から離れた外壁側に汚泥の溜まりやすい領域が生じてしまう。更にトラフ内に越流する処理水は高分子凝集剤を含んでいるため、トラフ底壁に付着した汚泥が次々と周りの汚泥と結合していき、速い速度で汚泥の堆積が進行する。こうして生じた堆積汚泥は処理水量が増加した時などに一斉に流れ出すため、処理水の水質異常の原因となる他、堆積期間が長いと植物などが自生してしまい、枯れ葉が次工程のポンプを閉塞させるなどのトラブルを引き起こすことがあった。特に雨水処理設備のような処理水量が季節に左右される設備や異常排水処理設備のような常用ではない設備では、汚泥の堆積が進み易くトラブルの発生率が高くなる傾向にあったため、これらの点について改善の余地があった。
【0006】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、トラフ内への汚泥の堆積を抑制した凝集沈殿水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本開示の凝集沈殿水処理装置は、
[1]
筒状の側部と、すり鉢状の底部とを有する沈殿槽と、
前記沈殿槽の前記側部の上部に設けられた越流板から径方向外側に向けて流出する水の流路となるトラフと
を備える凝集沈殿水処理装置であって、
前記トラフの底壁は、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする。
【0008】
また、本開示の凝集沈殿水処理装置は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、前記トラフの底壁は、前記傾斜面の径方向外側において、径方向外側に向かって略水平方向に延びる水平底壁を有することが好ましい。
【0009】
また、本開示の凝集沈殿水処理装置は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記トラフは、前記越流板と、該越流板の下部から径方向外側に延びる前記底壁と、該底壁の径方向外側端に立設された外壁とを備え、前記越流板と前記外壁との径方向中間位置における前記傾斜面の中間点の高さが、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの底壁の高さと同じであることが好ましい。
【0010】
また、本開示の凝集沈殿水処理装置は、
[4]
上記[2]に記載の構成において、前記トラフは、前記越流板と、該越流板の下部から径方向外側に延びる前記底壁と、該底壁の径方向外側端に立設された外壁とを備え、軸線方向断面における、前記傾斜面と、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの内周壁と、前記矩形形状トラフの底壁とで囲まれる領域(A)の断面積と、前記傾斜面と、前記水平底壁と、前記外壁と、前記矩形形状トラフの底壁とで囲まれる領域(B)の断面積とが等しいことが好ましい。
【0011】
また、本開示の凝集沈殿水処理装置は、
[5]
上記[1]から[4]のいずれかに記載の構成において、前記越流板には、上方に向けて突出する突出部が周方向に間隔を置いて設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、トラフ内への汚泥の堆積を抑制した凝集沈殿水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る凝集沈殿水処理装置の構成を示す正面断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る凝集沈殿水処理装置の斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る凝集沈殿水処理装置におけるトラフ部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図3を参照して、本開示の一実施形態に係る凝集沈殿水処理装置100について詳細に例示説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る凝集沈殿水処理装置100の構成を示す断面図である。凝集沈殿水処理装置100は、筒状の側部11とすり鉢状の底部13とを有し、汚水等の未処理水の貯留空間Sを区画形成する沈殿槽10と、沈殿槽10の側部11の上部に設けられた越流板21から径方向外側に向けて流出するうわ水の流路となる環状のトラフ20と、沈殿槽10の径方向中央部に配設された筒状のフィードウェル30と、フィードウェル30の中央を貫くセンターシャフト33の下端部に設けられ、駆動モーター33aの作動により回転駆動されるレーキ33bとを備えている。
【0016】
なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、トラフ20が設けられた側を上方(図1における上側)とし、沈殿槽10の底部13が位置する側を下方(図1における下側)とする。
【0017】
また、径方向外側とは、図1において上下方向に延びるセンターシャフト33の中心軸線を通り、当該中心軸線に垂直な直線に沿って当該中心軸線から離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って当該中心軸線に向かう方向を指すものとする。なお、本実施形態では、沈殿槽10は、平面視で略円形状を備えているが、平面視で楕円形状や矩形形状等を備えていてもよい。その場合であっても、平面視において沈殿槽10の中央部から側部11に向かう方向を径方向外側方向とする。
【0018】
また、周方向は、センターシャフト33の中心軸線周りの回転方向とする。
【0019】
また、センターシャフト33の中心軸線を含む断面を軸線方向断面とする。
【0020】
沈殿槽10は、平面視において略円形状を有する筒状の側部11と、側部11の下端部に連なり、径方向内側に向かって下方に傾斜するすり鉢状の底部13とを有する有底筒状形状を備えている。底部13の径方向中央部には、排出孔13aが設けられており、汚水等の未処理水から沈降分離された濃縮汚泥がこの排出孔13aを通じて引抜き管15から下方に排出される。
【0021】
沈殿槽10の径方向中央部には、上下方向に延びる筒状のフィードウェル30が配設されている。フィードウェル30は、上端部から供給された未処理水をフィードウェル30の内側を通して沈殿槽10の下部へと導く。未処理水は、フィードウェル30内に供給される際に、未処理水中の固形異物を凝集させるために高分子凝集剤が添加されている。高分子凝集剤によって固められた固形異物は凝集フロックとなり、嵩密度の増加に伴い未処理水内で沈降分離して沈殿槽10の底部13に向かって下降する。
【0022】
フィードウェル30の下端部は、少なくとも周方向の一部が下端開孔31aにより開放されており、フィードウェル30の下端部に導かれた凝集フロックは、沈殿槽10の底部13において濃縮汚泥層を形成する。また、この濃縮汚泥層の上方にうわ水(上澄み水)による清澄層が形成され、うわ水は沈殿槽10の径方向外側に向かって上昇する。
【0023】
フィードウェル30の径方向中央部には、センターシャフト33が上下方向に貫いている。センターシャフト33の下端部には、駆動モーター33aの作動により回転駆動されるレーキ33bが設けられている。
【0024】
本実施形態において、レーキ33bは、すり鉢状の底部13に対応した側面33b1を有する、上下を逆にした略円錐形状を備えており、レーキ33bの側面33b1がすり鉢状の底部13近傍で底部13に沿って回動することによって、底部13に沈殿付着している凝集フロックを排出孔13aに向けて誘導する役割を担っている。
【0025】
沈殿槽10の側部11の上端部には、越流板21から径方向外側に向けて流出する水の流路となる環状のトラフ20が設けられている。トラフ20は、図2及び図3に示すように、沈殿槽10の側部11の上部に設けられた越流板21と、越流板21の下部から径方向外側に延びる底壁23と、底壁23の径方向外側端に立設された外壁25とを備えている。トラフ20は、沈殿槽10により沈降分離された上澄みであるうわ水を処理水として外部に排出するための流出溝の機能を有しており、排出路27経由で外部に排出される。なお、トラフ20の越流板21や底壁23等の詳細な形状については、図2及び図3を参照されたい。
【0026】
越流板21は、側部11の上端部に沿って平面視で環状に設けられた板状部材であり、本実施形態では、図2等に示すように、上方に向けて突出する三角形形状の突出部21aが周方向に間隔を置いて設けられている。そして、突出部21a同士の間の周方向位置から清澄層を形成しているうわ水がトラフ20内に流れ出すように構成されている。越流板21の上部に突出部21aを設けることによって、うわ水がトラフ20内に流入する周方向位置が突出部21a同士の間の周方向位置に制限されるため、トラフ20内に流入する水の流速を高めて、トラフ20内に汚泥が堆積しにくくすることができる。
【0027】
本実施形態では、トラフ20の底壁23は、図3に示すように、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面23aを有している。従来型のトラフは軸線方向断面が矩形形状を有するのに対し(図3における二点鎖線参照)、本実施形態における凝集沈殿水処理装置100が備えるトラフ20は、図3に示す傾斜面23a及び水平底壁23bを有する。なお、傾斜面23a及び水平底壁23bを有するトラフ20を備える新規の凝集沈殿水処理装置100を新設した場合の他、既設の凝集沈殿水処理装置における従来型のトラフ(越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保するトラフであり「矩形形状トラフ」ともいう。)を傾斜面23a及び水平底壁23bを有するトラフ20に更新(改良)した場合の対象も、本発明の技術的範囲に含むことは当然である。
【0028】
本実施形態に示す構成によって、矩形形状断面(図3に二点鎖線で表示)を有するトラフと比較して、トラフ20内に流入したうわ水(処理水)を、傾斜面23aの下端部に集めて水頭を稼ぐことによって処理水の自然流下を促進し、汚泥がトラフ20内に溜まって堆積することを抑制することができる。
【0029】
本実施形態では、越流板21と外壁25の中間の径方向位置において、傾斜面23aの中間点の高さ位置と、従来型の矩形形状断面を有するトラフの底壁123bの高さ位置とが概ね一致するように構成している。このような構成によって、トラフ20の流路の断面積が従来型のトラフの流路の断面積と概ね同じになるので、従来型の矩形形状トラフと同等以上の流量の処理水を受け入れて排出することができる。
【0030】
本実施形態では、トラフ20の底壁23は、傾斜面23aの径方向外側において、径方向外側に向かって略水平方向に延びる水平底壁23bを有するように構成している。この構成によって、傾斜面23aと外壁25とが直接連結された場合に、傾斜面23aと外壁25がなす鋭角の隅部に処理水に含まれる僅かな汚泥等が挟まってしまうことを効果的に抑制することができる。
【0031】
本実施形態では、傾斜面23aの径方向外側に水平底壁23bを設けたので、図3に示すように、傾斜面23aと水平底壁23bとがなす角度は鈍角となり、汚泥等が隅部に挟まり難くなっている。
【0032】
本実施形態では、軸線方向断面において、傾斜面23aの上部と、従来型のトラフにおける内周壁123a(図3に二点鎖線で示す)と、従来型のトラフにおける底壁123bの内周側とで囲まれる領域(図3における領域(A))と、傾斜面23aの下部と、水平底壁23bと、外壁25と、従来型のトラフにおける底壁123bの外周側とで囲まれる領域(図3における領域(B))との断面積が概ね等しくなるように構成している。この構成によって、本開示のトラフ20を採用することにより新たに処理水を流すことができる領域(B)により形成される流路の容積は、従来型の矩形断面のトラフを採用した場合に処理水を流すことができた領域(A)により形成される流路の容積以上とすることができる。
【0033】
すなわち、本実施形態のように、トラフ20が平面視で略円形状を有する場合、領域(B)により形成される流路の容積の方が、領域(A)により形成される流路の容積よりも、半径が大きい分だけ大きくなる。また、トラフ20を平面視で矩形形状とした場合、トラフ20の角部を除いて領域(B)により形成される流路の容積は、領域(A)により形成される流路の容積と概ね等しくなる。従って、本開示のトラフ20を採用することにより新たに処理水を流すことができる領域(B)により形成される流路の容積は、少なくとも従来型の矩形断面のトラフを採用した場合に処理水を流すことができた領域(A)により形成される流路の容積と同等以上とすることができる。
【0034】
以上の構成を有する本実施形態によれば、以下に記載する2つの効果を得ることができる。まず第1に、トラフ20内での処理水の流速を底上げすることができる。従来型の矩形形状の軸線方向断面を有するトラフでは、処理水の水量が少ない場合、越流しトラフ内に流入する処理水が広面積の底壁123b上に薄く広がるため、トラフ内に汚泥が溜まり易くなっていた。一方、本実施形態では、図3における領域(B)に処理水を集めることで水頭を稼ぎ、処理水の自然流下を促進することができる。従って、トラフ20内への汚泥の堆積を抑制することができる。通常、トラフの幅を狭めることは処理水の最大流量の低下を招くが、本実施形態では、トラフ20の断面の形状変更を伴うもののトラフ20全体として処理することができる処理水の最大流量が減少していない。そのため、従来型の矩形形状断面のトラフと同等以上の水量を処理しつつ、トラフ20内への汚泥等の堆積を抑制することができる。
【0035】
第2に、越流板21を越流した処理水を利用して、トラフ20の洗浄及び処理水に含まれる汚泥の撹拌を行うことができる。本実施形態では、従来型のトラフの底壁123bの水平部分が少なくなったことで汚泥が堆積し難い形状となっているが、傾斜面23aや水平底壁23bに僅かに汚泥等が堆積することは考えられる。しかし、仮に傾斜面23aに汚泥が堆積したとしても、越流水が斜面を流れ落ちる際の水流によって汚泥が押し流される。また、水平底壁23b部分では横から流れ込む越流水が底壁23内の汚泥を撹拌するため、汚泥の滞留を抑制することができる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態に係る凝集沈殿水処理装置100は、筒状の側部11と、すり鉢状の底部13とを有する沈殿槽10と、沈殿槽10の側部11の上部に設けられた越流板21から径方向外側に向けて流出する水の流路となるトラフ20とを備える凝集沈殿水処理装置100であって、トラフ20の底壁23は、径方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜面23aを有するように構成した。このような構成の採用によって、トラフ20内での処理水の流速を底上げし、従来型の矩形形状断面のトラフと同等以上の水量を処理しつつ、トラフ20内への汚泥等の堆積を抑制することができる。また、越流板21を越流した処理水を利用して、トラフ20の洗浄及び処理水に含まれる汚泥の撹拌を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、トラフ20は、越流板21と、越流板21の下部から径方向外側に延びる底壁23と、底壁23の径方向外側端に立設された外壁25とを備え、越流板21と外壁25との径方向中間位置における傾斜面23aの中間点の高さが、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの底壁123bの高さと同じであるように構成した。このような構成の採用によって、トラフ20の流路の断面積が従来型のトラフの流路の断面積と概ね同じになるので、従来型のトラフと同等以上の流量の処理水を受け入れて排出することができる。
【0038】
例えば、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの更新にあたり、更新後のトラフ20を本発明により構成し、更新後のトラフ20の越流板21と外壁25との径方向中間位置における傾斜面23aの中間点の高さが、更新前のトラフ(矩形形状トラフ)の底壁123bの高さと同じであるように構成しても良い。このようにすることで、更新後のトラフ20の流路の断面積が更新前の矩形形状トラフの流路の断面積と概ね同じになるので、更新前のトラフと同等以上の流量の処理水を受け入れて排出することができる。
【0039】
また、本実施形態では、トラフ20の底壁23は、傾斜面23aの径方向外側において、径方向外側に向かって略水平方向に延びる水平底壁23bを有するように構成した。このような構成の採用によって、傾斜面23aと外壁25がなす狭い隅部に汚泥等が挟まってしまうことを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、トラフ20は、越流板21と、越流板21の下部から径方向外側に延びる底壁23と、底壁23の径方向外側端に立設された外壁25とを備え、軸線方向断面における、傾斜面23aと、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した従来型トラフ(矩形形状トラフ)の内周壁123aと、従来型トラフ(矩形形状トラフ)の底壁123bとで囲まれる領域(A)の断面積と、傾斜面23aと、水平底壁23bと、外壁25と、従来型トラフ(矩形形状トラフ)の底壁123bとで囲まれる領域(B)の断面積とが等しくなるように構成した。このような構成の採用によって、本開示のトラフ20を採用することにより新たに処理水を流すことができる領域(B)により形成される流路の容積は、従来型の矩形断面のトラフを採用した場合に処理水を流すことができた領域(A)により形成される流路の容積以上とすることができる。従って、従来型のトラフと同等以上の流量の処理水を受け入れて排出することができる。
【0041】
例えば、越流水を流すのに必要な断面積を矩形形状で確保した矩形形状トラフの更新にあたり、更新後のトラフ20を本発明により構成し、更新後のトラフ20の軸線方向断面における、傾斜面23aと、更新前のトラフ(矩形形状トラフ)の内周壁123aと、更新前のトラフ(矩形形状トラフ)の底壁123bとで囲まれる領域(A)の断面積と、傾斜面23aと、水平底壁23bと、外壁25と、更新前のトラフ(矩形形状トラフ)の底壁123bとで囲まれる領域(B)の断面積とが等しくなるように構成しても良い。このようにすることで、更新後のトラフ20の流路の断面積が更新前の矩形形状トラフの流路の断面積と概ね同じになるので、更新前のトラフと同等以上の流量の処理水を受け入れて排出することができる。
【0042】
また、本実施形態では、越流板21には、上方に向けて突出する突出部21aが周方向に間隔を置いて設けられるように構成した。このような構成の採用によって、うわ水がトラフ20内に流入する周方向位置が突出部21a同士の間の周方向位置に制限されるため、トラフ20内に流入するうわ水の流速を高めて、トラフ20内に汚泥が堆積しにくくすることができる。
【0043】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0044】
例えば、本実施形態では、沈殿槽10の径方向中央部にフィードウェル30を配置し、フィードウェル30の上端部から未処理水を供給すると共に、側部11の上部に設けられた越流板21から水を流出させて環状のトラフ20経由で外部に排出するように構成したが、この態様には限定されない。例えば、図1における沈殿槽10の左側の側部11の上端部から未処理水を供給すると共に、沈殿槽10の右側の側部11の上端部に設けたトラフ経由で外部に処理水を排出するように構成してもよい。つまり、トラフは必ずしも環状でなくてもよく、沈殿槽10の側部11の一部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 沈殿槽
11 側部
13 底部
13a 排出孔
15 引抜き管
20 トラフ
21 越流板
21a 突出部
23 底壁
23a 傾斜板
25 外壁
27 排出路
30 フィードウェル
31a 下端開孔
33 センターシャフト
33a 駆動モーター
33b レーキ
33b1 側面
100 凝集沈殿水処理装置
123a 内周壁
123b 底壁
S 貯留空間
図1
図2
図3