(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162894
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】タイヤ状態判定装置、タイヤ状態判定方法、およびタイヤ状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20241114BHJP
B60C 23/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C23/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078872
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 友亮
(72)【発明者】
【氏名】前田(影本) 義明
(72)【発明者】
【氏名】岡部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 五大
(57)【要約】
【課題】道路を走行している車両毎に、その車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する。
【解決手段】入力部には、走行路を走行している車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測したセンサの計測信号が入力される。第1算出部が、入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、速度取得部が取得した車両の速度を基に、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出する。判定部が、第1算出部が算出したタイヤの接地長さを基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を走行している車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測したセンサの計測信号が入力される入力部と、
タイヤが路面を押圧する押圧力が前記センサによって計測される車両の速度を取得する速度取得部と、
前記入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、前記速度取得部が取得した車両の速度を基に、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出する第1算出部と、
前記第1算出部で算出されたタイヤの接地長さを基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する判定部と、
を備えたタイヤ状態判定装置。
【請求項2】
前記入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号を基に、このタイヤが路面に加える荷重を算出する第2算出部を備え、
前記判定部は、前記第1算出部で算出したタイヤの接地長さ、および前記第2算出部で算出したタイヤが路面に加える荷重を基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項1に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項3】
車両の種類を取得する車両種別取得部と、
車両の種類別に、タイヤの空気圧が適正である場合における、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さと、タイヤが路面に加える荷重との関係を示す判定情報を記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、前記第1算出部で算出したタイヤの接地長さ、および前記第2算出部で算出したタイヤが路面に加える荷重を前記判定情報に照合し、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項2に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記判定情報を車軸毎に記憶している、請求項3に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項5】
前記判定情報は、車両の種類別に、車軸毎に収集した車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さ、およびタイヤが路面に加える荷重の算出結果を統計的に処理して得られた情報である、請求項4に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項6】
前記センサは、走行路における車両の走行方向に複数並べられ、
前記第1算出部は、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤと路面との接地長さを算出し、
前記判定部は、前記第1算出部が、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さを用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項1に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第1算出部が、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さの平均値を用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項6に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項8】
前記センサは、走行路における車両の走行方向に複数並べられ、
前記第1算出部は、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤと路面との接地長さを算出し、
前記第2算出部は、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤが路面に加える荷重を算出し、
前記判定部は、前記センサ毎に、前記第1算出部が算出したタイヤの接地長さ、および前記第2算出部が算出したタイヤが路面に加える荷重を基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項2に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記第1算出部が、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さの平均値、および前記第2算出部が、前記センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤが路面に加える荷重の平均値を用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、
請求項8に記載のタイヤ状態判定装置。
【請求項10】
走行路を走行している車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測したセンサの計測信号が入力される入力部を備えたタイヤ状態判定装置のコンピュータが、
タイヤが路面を押圧する押圧力が前記センサによって計測される車両の速度を取得する速度取得ステップと、
前記入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、前記速度取得ステップで取得した車両の速度を基に、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出されたタイヤの接地長さを基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する判定ステップと、
を実行するタイヤ状態判定方法。
【請求項11】
走行路を走行している車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測したセンサの計測信号が入力される入力部を備えたタイヤ状態判定装置のコンピュータに、
タイヤが路面を押圧する押圧力が前記センサによって計測される車両の速度を取得する速度取得ステップと、
前記入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、前記速度取得ステップで取得した車両の速度を基に、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出されたタイヤの接地長さを基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する判定ステップと、
を実行させるタイヤ状態判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行路を走行している車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行路(道路)を走行している車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する装置として、特許文献1に記載されたものがあった。
【0003】
この特許文献1では、振動発電素子がタイヤに設けられ、この振動発電素子の出力を処理してタイヤの接地面における接地長さ(車両の進行方向におけるタイヤの接地長さ)を検出し、検出した接地長さに基づいてタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置は、この装置が備えられた車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定できるが、この装置が備えられていない車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定できない。
【0006】
道路を走行している車両が、タイヤの空気圧が適正でなかったことが原因で、なんらかの事故を起こした場合、他の車両(タイヤの空気圧が適正である車両であっても)がその事故に巻き込まれることがある。このことから、道路を走行している車両毎に、その車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定できる技術が望まれている。
【0007】
この発明の目的は、道路を走行している車両毎に、その車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のタイヤ状態判定装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0009】
入力部には、走行路を走行している車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測したセンサの計測信号が入力される。センサは、例えば圧力センサである。
【0010】
速度取得部は、タイヤが路面を押圧する押圧力がセンサによって計測される車両の速度を取得する。車両のタイヤがセンサ上を通過する時間は、車両の速度に応じて変化する。
【0011】
第1算出部は、入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、速度取得部が取得した車両の速度を基に、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出する。センサは、車両のタイヤがセンサ上を通過しているときに、タイヤによって押圧される。言い換えれば、センサが車両のタイヤによる押圧力を検出していた時間が、このタイヤがセンサ上を通過している時間Tである。また、速度取得部が車両の速度Vを取得している。したがって、第1算出部は、例えば、車両の速度Vと、センサが車両のタイヤによる押圧力を検出している時間Tとを乗することにより、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さを算出することができる。
【0012】
判定部は、第1算出部で算出されたタイヤの接地長さを基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する。車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さは、タイヤの空気圧が低くなるにつれて長くなる(言い換えれば、タイヤの空気圧が高くなるにつれて短くなる。)。したがって、判定部は、第1算出部で算出された、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さによって、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0013】
このように、この構成によれば、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定するための構成の装置を備えている車両に限らず、車両のタイヤが路面を押圧する押圧力を計測するセンサを配置した走行路(道路)を走行した車両毎に、その車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0014】
また、例えば、第2算出部が、入力部に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号を基に、このタイヤが路面に加える荷重を算出し、判定部が、第1算出部で算出したタイヤの接地長さ、および第2算出部で算出したタイヤが路面に加える荷重を基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する構成にしてもよい。
【0015】
車両のタイヤが路面を押圧する押圧力は、そのタイヤの輪重に応じて変化する。したがって、センサによって計測された押圧力の計測信号を用いて、タイヤの輪重を算出することができる。
【0016】
また、車両のタイヤは、空気圧が適正であっても、輪重に応じて、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さが変化する。
【0017】
したがって、このように構成すれば、車両のタイヤの輪重も考慮し、そのタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0018】
また、例えば、車両種別取得部が、車両の種類を取得し、記憶部が、車両の種類別に、タイヤの空気圧が適正である場合における、車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さと、タイヤが路面に加える荷重との関係を示す判定情報を記憶する構成を備えてもよい。ここで言う車両の種類は、例えば、車両の名称による分類であってもよいし、車両の大きさ(軽自動車、普通車、2tトラック、4tトラック、トレーラ等)による分類であってもよい。より具体的には、車両の種類は、タイヤの径およびタイヤの扁平率が略同じである車両に分類できるものであればよい。
【0019】
車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さは、空気圧が適正であっても、タイヤの径およびタイヤの扁平率によって変化する。
【0020】
この車両種別取得部、および記憶部を備えた場合、判定部は、第1算出部で算出したタイヤの接地長さ、および第2算出部で算出したタイヤが路面に加える荷重を判定情報に照合し、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する。
【0021】
これにより、タイヤの径およびタイヤの扁平率をも考慮し、そのタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0022】
また、例えば、記憶部を、判定情報を車軸毎に記憶する構成にしてもよい。このように構成すれば、取り付けられているタイヤの種類が車軸によって異なる車両であっても、各タイヤの空気圧が適正であるかどうかを精度よく判定できる。
【0023】
また、判定情報は、例えば、車両の種類別に、車軸毎に収集した車両の走行方向におけるタイヤと路面との接地長さ、およびタイヤが路面に加える荷重との関係を統計的に処理して得られた情報にしてもよい。このように構成すれば、判定情報を、実際の計測結果を基に定めることができ、タイヤの空気圧が適正であるかどうかの判定精度の向上が図れる。
【0024】
また、例えば、センサを、走行路における車両の走行方向に複数並べ、第1算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤと路面との接地長さを算出し、判定部が、第1算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さを用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する構成であってもよい。この場合、例えば、判定部は、第1算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さの平均値を用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する構成にしてもよい。
【0025】
このように構成すれば、走行している車両の振動による影響を抑え、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0026】
また、例えば、センサを、走行路における車両の走行方向に複数並べ、第1算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤと路面との接地長さを算出し、第2算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に、タイヤが路面に加える荷重を算出し、判定部が、センサ毎に、第1算出部が算出したタイヤの接地長さ、および第2算出部が算出したタイヤが路面に加える荷重を基に、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する、構成であってもよい。この場合、例えば、判定部は、第1算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤと路面との接地長さの平均値、および第2算出部が、センサ毎に、そのセンサの計測信号を基に算出したタイヤが路面に加える荷重の平均値を用いて、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定する。
【0027】
このように構成すれば、走行している車両の振動による影響を抑え、タイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、道路を走行している車両毎に、その車両のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この例のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。
【
図2】
図2(A)は、車両のタイヤが輪重センサ上に位置しているときの状態を示した図であり、
図2(B)は、車両のタイヤが輪重センサ上を通過したときに計測される車両のタイヤの押圧力の変化を示す図ある。
【
図3】この例のタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)、(B)は、車軸が2軸である車両が軸重センサ上を通過したときに輪重センサによって計測される押圧力の計測信号の例を示す図である。
【
図5】
図5(A)、(B)は、車両検知センサによる車両の検知結果を示す図である。
【
図6】この例のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】変形例1のタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図8】変形例1のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】変形例2のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。
【
図10】変形例2のタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図11】変形例2のタイヤ状態判定装置が記憶する判定情報を示す図である。
【
図12】変形例2のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】変形例3のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0031】
<1.適用例>
図1は、この例のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。
【0032】
図1に示す車両100が走行する走行路(道路)の路面には、軸重センサ201が設置されている。軸重センサ201は、1対の輪重センサ201R、201Lを有している。1対の輪重センサ201R、201Lは、走行路の幅方向(走行する車両100の車幅方向)に並べて設置されている。輪重センサ201Rは、走行路を走行している車両100の右側のタイヤが通過する位置に設置され、輪重センサ201Lは、走行路を走行している車両100の左側のタイヤが通過する位置に設置されている。
【0033】
輪重センサ201R、201Lは、通過する車両100のタイヤ101の押圧力を計測できるセンサであれば、どのような方式のものであってもよい。例えば、輪重センサ201R、201Lは、ピエゾ方式の圧力センサであってもよいし、歪ゲージ方式の圧力センサであってもよいし、その他の方式の圧力センサであってもよい。
【0034】
図2(A)は、車両のタイヤが輪重センサ上に位置しているときの状態を示した図であり、
図2(B)は、車両のタイヤが輪重センサ上を通過したときに計測される車両のタイヤの押圧力の変化を示す図ある。
【0035】
図2(A)では、輪重センサ201Rが、車両100の走行方向におけるタイヤ101と路面との接地長さLの略中心に位置している状態である。車両100のタイヤ101の位置は、車両100の走行にともなって移動する。また、輪重センサ201Rによって計測される車両100のタイヤ101による押圧力は、
図2(B)に示すように、車両100の走行にともなって上昇し、ピークに達した後、下降する。これは、タイヤ101の路面との接地面積に対する、輪重センサ201Rとタイヤ101との当接面積の比率の変化によって生じている。具体的には、
(輪重センサ201Rとタイヤ101との当接面積)/(タイヤ101の路面との接地面積)の値(面積比率)が大きくなるにつれて、輪重センサ201Rによって計測される車両100のタイヤ101による押圧力が大きくなる。
【0036】
また、車両100の速度が高速であるほど、輪重センサ201Rによって計測される押圧力の波形(
図2(B)に示す波形)の幅は時間軸方向に狭くなる。言い換えれば、車両100の速度が低速であるほど、輪重センサ201Rによって計測される押圧力の波形の幅は時間軸方向に拡がる。
【0037】
また、走行路の路面には、車両100の走行方向に、軸重センサ201を挟んだ両側に車両100の有無を検知する車両検知センサ150、151が設けられている。この例では、車両検知センサ150、151は、走行路に埋設されたループコイルセンサである。2つの車両検知センサ150、151間の距離はDである。車両検知センサ150、151は、車両100の有無を検知できるセンサであれば、反射型、または透過型の光電センサであってもよい。また、この例では、車両検知センサ150、151は、軸重センサ201上を通過する車両100の速度を取得するために設けている。言い換えれば、軸重センサ201上を通過する車両100の速度を取得することができれば、車両検知センサ150、151として電波レーダ、レーザレーダ、画像センサ(カメラ)等を用いてもよい。公知のように、走行路を走行している車両100の速度は、電波レーダ、レーザレーダ、画像センサ(カメラ)等を用いても取得できる。
【0038】
この例のタイヤ状態判定装置1は、軸重センサ201(1対の輪重センサ201R、201L)の計測信号、車両検知センサ150、151の検知信号が入力される。
【0039】
タイヤ状態判定装置1は、例えば、車両検知センサ150が車両100の検知を開始した時点から、車両検知センサ151が車両100の検知を開始した時点までの時間を計測する。すなわち、タイヤ状態判定装置1は、車両検知センサ150が車両100を検知する地点から、車両検知センサ151が車両100を検知する地点までの車両100の走行時間を計測する。車両検知センサ150による車両100の検知地点から、車両検知センサ151による車両100の検知地点までの距離は、車両検知センサ150、151の設置位置間の距離Dである。タイヤ状態判定装置1は、車両検知センサ150、151の設置位置間の距離Dを、計測した車両100の走行時間で除することによって、車両100の速度Vを取得する。
【0040】
また、タイヤ状態判定装置1は、輪重センサ201R、201Lによって計測された押圧力が、
図2(B)に示す検知レベルを超えている時間を、車両100のタイヤ101が輪重センサ201R、201Lを押圧していた時間(通過時間T)として検出する。
【0041】
そして、タイヤ状態判定装置1は、車両100の走行方向におけるタイヤ101と路面との接地長さLを、車両100の速度Vと、通過時間Tとを用いて算出する。具体的には、
接地長さL=車両100の速度V×通過時間T
により算出する。
【0042】
車両100の走行方向におけるタイヤ101と路面との接地長さLは、タイヤ101の空気圧が低くなるにつれて長くなる(言い換えれば、タイヤ101の空気圧が高くなるにつれて短くなる。)。
【0043】
タイヤ状態判定装置1は、例えば、空気圧が適正である場合におけるタイヤ101と路面との接地長さLの適正範囲を記憶している。タイヤ状態判定装置1は、算出したタイヤ101と路面との接地長さLが、記憶している適正範囲内であるかどうかにより、タイヤ101の空気圧が適正であるかどうかを判定する。
【0044】
なお、車両100の右側のタイヤ101と路面との接地長さLは、輪重センサ201Rの計測信号によって算出でき、車両100の左側のタイヤ101と路面との接地長さLは、輪重センサ201Lの計測信号によって算出できる。
【0045】
このように、この例のタイヤ状態判定装置1は、走行路を走行している車両100毎に、その車両100のタイヤ101毎に、空気圧が適正であるかどうかを判定することができる。
【0046】
<2.構成例>
図3は、この例のタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示すブロック図である。タイヤ状態判定装置1は、
図3に示すように、制御ユニット11と、計測信号入力部12と、検知信号入力部13と、出力部14とを備えている。
【0047】
制御ユニット11は、タイヤ状態判定装置1本体各部の動作を制御する。制御ユニット11は、通過時間検出部11a、速度取得部11b、接地長さ算出部11c、および判定部11dを有している。制御ユニット11が有する、通過時間検出部11a、速度取得部11b、接地長さ算出部11c、および判定部11dについては後述する。
【0048】
計測信号入力部12には、軸重センサ201が接続される。計測信号入力部12は、輪重センサ201Rの計測信号が入力される入力チャンネル、および輪重センサ201Lの計測信号が入力される入力チャンネルの2つの入力チャンネルを有している。計測信号入力部12が、この発明で言う入力部に相当する。
【0049】
検知信号入力部13には、車両検知センサ150、151が接続される。検知信号入力部13は、車両検知センサ150の検知信号が入力される入力チャンネル、および車両検知センサ151の検知信号が入力される入力チャンネルの2つの入力チャンネルを有している。
【0050】
出力部14は、車両100毎に、その車両100のタイヤの空気圧が適正であるかどうかを判定した判定結果を外部機器に出力する。外部機器は、車両100のドライバに対して、空気圧が適正であるかどうかを判定した判定結果を案内板に表示する案内装置であってもよいし、センタに設置された上位装置であってもよい。
【0051】
次に、制御ユニット11が有する通過時間検出部11a、速度取得部11b、接地長さ算出部11c、および判定部11dについて説明する。
【0052】
通過時間検出部11aは、計測信号入力部12に入力されている輪重センサ201R、201Lの計測信号を処理し、車両100のタイヤ101が輪重センサ201R、201L上の通過に要した時間を検出する。
図4は、車軸が2軸である車両が軸重センサ上を通過したときに輪重センサによって計測される押圧力の計測信号の例を示す図である。
図4(A)は、輪重センサ201Rの計測信号を示す例であり、
図4(B)は、輪重センサ201Lの計測信号を示す例である。
【0053】
通過時間検出部11aは、輪重センサ201R、201Lによって計測されたタイヤ101の押圧力が検知レベルを超えていた期間を、そのタイヤ101が輪重センサ201R、201L上の通過に要した時間として検出する。
図4(A)に示す通過時間T1は、車両100の右側の前輪のタイヤ101が輪重センサ201R上の通過に要した時間であり、
図4(A)に示す通過時間T2は、車両100の右側の後輪のタイヤ101が輪重センサ201R上の通過に要した時間である。また、
図4(B)に示す通過時間T3は、車両100の左側の前輪のタイヤ101が輪重センサ201L上の通過に要した時間であり、
図4(B)に示す通過時間T4は、車両100の左側の後輪のタイヤ101が輪重センサ201L上の通過に要した時間である。
【0054】
速度取得部11bは、車両検知センサ150、151の検知信号を用いて、軸重センサ201上を通過した車両100の速度を算出する。速度取得部11bは、車両検知センサ150、151により車両100が検知されているかどうかを判定する。例えば、車両検知センサ150、151がループコイルセンサである場合、速度取得部11bは、ループコイルセンサ(車両検知センサ150、151)のインダクタンスの変化により、車両100の有無を判定する。
【0055】
図5(A)は、車両検知センサ150による車両100の検知結果を示す図であり、
図5(B)は、車両検知センサ151による車両100の検知結果を示す図である。速度取得部11bは、車両検知センサ150、151による検知結果が車両検知無から車両検知有に変化した時刻(
図5に示すT11、T12)を検出する。また、
図5に示すT21、T22は、車両検知センサ150、151による検知結果が車両検知有から車両検知無に変化した時刻である。
【0056】
速度取得部11bは、2つの車両検知センサ150、151間の距離Dを、
図5に示したT11からT12までの時間(走行時間)で除することにより、車両100の速度Vを算出する。
【0057】
なお、速度取得部11bは、車両検知センサ150、151による検知結果が車両検知有から車両検知無に変化した時刻(
図5に示すT21、T22)を検出し、T21からT22までの時間を車両100の走行時間として、車両100の速度を算出してもよい。また、T11からT12までの時間を車両100の走行時間として算出した車両100の速度V1と、T21からT22までの時間を車両100の走行時間として算出した車両100の速度V2と、の平均を、車両100の速度Vとして算出してもよい。ここで言う平均は、相加平均であってもよいし、相乗平均であってもよいし、対数平均であってもよいし、これら以外(例えば、調和平均)であってもよい。
【0058】
接地長さ算出部11cは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101の通過時間T1~T4を車両100の速度に乗じた値を、路面との接地長さL(L1~L4)として算出する。具体的には、
図4に示した例では、
車両100の右前輪のタイヤ101の路面との接地長さL1=V×T1
車両100の右後輪のタイヤ101の路面との接地長さL2=V×T2
車両100の左前輪のタイヤ101の路面との接地長さL3=V×T3
車両100の左後輪のタイヤ101の路面との接地長さL4=V×T4
として算出する。接地長さ算出部11cが、この発明で言う第1算出部に相当する。
【0059】
判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101の空気圧が適正であるかどうかを判定する。例えば、判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101について接地長さ算出部11cが算出した路面との接地長さL(L1~L4)が、空気圧が適正である場合における、タイヤ101の路面との接地長さの範囲内であるかどうかを判定する。空気圧が適正である場合における、タイヤ101の路面との接地長さは、下限長さaと上限長さb(a<b)との間である。下限長さa、および上限長さbは、予め記憶されている。
【0060】
タイヤ状態判定装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかるタイヤ状態判定プログラムを実行したときに、通過時間検出部11a、速度取得部11b、接地長さ算出部11c、および判定部11dとして動作する。また、メモリは、この発明にかかるタイヤ状態判定プログラムを展開する領域や、このタイヤ状態判定プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかるタイヤ状態判定方法を実行するコンピュータである。
【0061】
<3.動作例>
図6は、この例のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。タイヤ状態判定装置1は、タイヤ101の状態を判定する車両100の進入を検知するのを待つ(s1)。タイヤ状態判定装置1は、速度取得部11bが、車両検知センサ150による検知結果が車両検知無から車両検知有への変化を検知した時を、車両100の進入として検知する。
【0062】
タイヤ状態判定装置1は、タイヤ101の状態を判定する車両100の進入を検知すると、通過時間検出部11aが、計測信号入力部12に入力されている軸重センサ201(輪重センサ201R、201L)の計測信号の記録を開始する(s2)。
【0063】
タイヤ状態判定装置1は、タイヤ101の状態を判定する車両100の退出を検知するのを待つ(s3)。タイヤ状態判定装置1は、速度取得部11bが、車両検知センサ151による検知結果が車両検知有から車両検知無への変化を検知した時を、車両100の退出として検知する。
【0064】
タイヤ状態判定装置1は、タイヤ101の状態を判定する車両100の退出を検知すると、通過時間検出部11aが、計測信号入力部12に入力されている軸重センサ201(輪重センサ201R、201L)の計測信号の記録を終了する(s4)。
【0065】
速度取得部11bは、今回進入を検知した車両100の速度Vを算出する(s5)。s5では、速度取得部11bは、車両検知センサ150による検知結果が車両検知無から車両検知有に変化した時刻(
図5に示すT11)から、車両検知センサ151による検知結果が車両検知無から車両検知有に変化した時刻(
図5に示すT12)までの時間を車両100の走行時間として取得する。速度取得部11bは、2つの車両検知センサ150、151間の距離Dを、走行時間(T11からT12までの時間)で除した値を車両100の速度Vとして算出する。
【0066】
なお、速度取得部11bは、車両検知センサ150、151による検知結果が車両検知有から車両検知無に変化した時刻(
図5に示すT21、T22)を検出し、T21からT22までの時間を車両100の走行時間として、車両100の速度を算出してもよい。また、T11からT12までの時間を車両100の走行時間として算出した車両100の速度V1と、T21からT22までの時間を車両100の走行時間として算出した車両100の速度V2と、の平均を、車両100の速度Vとして算出してもよい。上記したように、ここで言う平均は、相加平均であってもよいし、相乗平均であってもよいし、対数平均であってもよいし、これら以外(例えば、調和平均)であってもよい。
【0067】
通過時間検出部11aが、s2で記録を開始し、s4で記録を終了した軸重センサ201の計測信号を基に、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101が軸重センサ201上の通過に要した時間T1~T4(
図4参照)を検出する(s6)。
【0068】
接地長さ算出部11cが、車両100のタイヤ101毎に、路面との接地長さL(L1~L4)を算出する(s7)。
【0069】
判定部11dが、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs7で算出された路面との接地長さL(L1~L4)に基づいて、空気圧が適正であるかどうかを判定する判定処理を行う(s8)。判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs7で算出された路面との接地長さL(L1~L4)が、予め設定されている適正範囲内であれば、空気圧が適正であると判定する。言い換えれば、判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs7で算出された路面との接地長さL(L1~L4)が、予め設定されている適正範囲内でなければ、空気圧が適正でないと判定する。
【0070】
また、判定部11dは、路面との接地長さLが適正範囲の下限長さaよりも短い場合、タイヤ101の空気圧が高いと判定し、路面との接地長さLが適正範囲の上限長さbよりも長い場合、タイヤ101の空気圧が低いと判定する。また、判定部11dは、路面との接地長さLが、適正範囲の上限長さbよりも閾値長さc以上長い場合、タイヤ101がパンクしていると判定してもよい。
【0071】
なお、タイヤ状態判定装置1は、下限長さa、上限長さb、および閾値長さcをメモリ等に記憶している。
【0072】
タイヤ状態判定装置1は、s8にかかる判定結果を出力し(s9)、s1に戻る。s9では、例えば、タイヤ状態判定装置1は、車両100のいずれかのタイヤ101について、空気圧が適正でないと判定すると、タイヤ101の空気圧が適正でない車両100として出力する。また、このとき、タイヤ状態判定装置1は、空気圧が適正でないタイヤ101を示す情報を含めた判定結果を出力してもよい。
【0073】
このように、この例にかかるタイヤ状態判定装置1は、軸重センサ201、車両検知センサ150、151を設置した区間を走行した車両100毎に、その車両100の各タイヤ101について空気圧が適正であるかどうかを判定し、その判定結果を出力する。
【0074】
判定結果は、例えば、軸重センサ201、車両検知センサ150、151を設置した区間の下流側に設けられた案内板で表示し、当該車両100のドライバに通知すればよい。
【0075】
<4.変形例>
・変形例1
図7は、変形例1にかかるタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示す図である。この変形例1のタイヤ状態判定装置1Aは、制御ユニット11Aが輪重算出部11eを備えている点で上記の例と相違する。
【0076】
輪重算出部11eは、速度取得部11bで取得した車両100の速度、および計測信号入力部12に入力された軸重センサ201(輪重センサ201R、201L)の計測信号を基に、各タイヤ101が路面に加える荷重(輪重)を算出する。輪重算出部11eが、この発明で言う第2算出部に相当する。
【0077】
公知のように、輪重が大きくなるほど、タイヤ101の変形が大きくなるので、タイヤ101の路面との接地長さLが長くなる。すなわち、タイヤ101の路面との接地長さLは、輪重の大きさに応じて変化する。
【0078】
輪重算出部11eは、輪重センサ201R、201Lによって計測された押圧力をこの押圧力が検知レベルを超えている期間(すなわち、上記した例で説明した通過時間T)において積分した積分値Sと、車両100の速度Vを用いて、輪重Mを算出する。具体的には、輪重算出部11eは、
輪重M=積分値S×速度V×補正係数α
によって算出する。
【0079】
また、この例では、判定部11dは、空気圧が適正である場合における、タイヤ101の路面との下限長さa、および上限長さbを、輪重算出部11eによって算出された輪重Mを用いて補正する。具体的には、判定部11dは、タイヤ101と路面との接地長さL、および輪重Mについて収取した計測結果を統計的に処理して取得された、タイヤ101と路面との接地長さと輪重Mとの関係を基に、計測されたタイヤ101の輪重Mに応じたタイヤ101の路面との補正下限長さac、および補正上限長さbcを推定する。例えば、判定部11dは、
タイヤ101と路面との接地長さL=α×輪重M+β
による線形回帰で予め求めた、タイヤ101と路面との接地長さLと、タイヤ101の輪重Mとの関係式を基に、今回計測されたタイヤ101の輪重Mに対する、タイヤ101の路面との補正下限長さac、および補正上限長さbcを推定する。この場合、判定部11dは、補正下限長さac、および補正上限長さbcについては、それぞれ95%信頼区間の下側2.5%点と上側2.5%によって定めてもいいし、3σのように設定してもよい。
【0080】
判定部11dは、補正下限長さac、および補正上限長さbcを用いて、車両100のタイヤ101毎に、空気圧が適正であるかどうかを判定する。これにより、判定部11dは、タイヤ101と路面との接地長さLと、タイヤ101の輪重Mとの関係を考慮してタイヤ101の空気圧が適正であるかの判定を行える。
【0081】
図8は、この変形例1のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
図8では、
図6に示した処理と同じ処理については、同じステップ番号を付している。
【0082】
この変形例1のタイヤ状態判定装置1Aは、上記したs1~s7にかかる処理を行うと、輪重算出部11eが、車両100のタイヤ101毎に、輪重Mを算出する(s11)。
【0083】
判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs11で算出された輪重Mを用いて、空気圧が適正であるかどうかの判定に用いる、補正下限長さac、および補正上限長さbcを算出する(s12)。判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs7で算出した接地長さLが、s12で算出した補正下限長さacと補正上限長さbcとの範囲内であるかどうかによって、空気圧が適正であるかどうかを判定する(s13)。
【0084】
タイヤ状態判定装置1Aは、s13の判定結果を外部機器に出力し(s9)、s1に戻る。
【0085】
このように、この変形例1のタイヤ状態判定装置1Aは、車両100のタイヤ101の空気圧が適正であるかどうかの判定を、そのタイヤ101が路面に加える荷重(輪重)も考慮して行える。
【0086】
・変形例2
図9は、この変形例2のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。この変形例2のタイヤ状態判定装置1Bが適用される車両100の走行路には、撮像装置160が設けられている。撮像装置160は、車両100の正面を撮像するアングルで設置されている。撮像装置160は、撮像したフレーム画像を、タイヤ状態判定装置1Bに出力する。撮像装置160は、静止画像を撮像するディジタルスチルカメラであってもよいし、動画像を撮像するビデオカメラであってもよい。例えば、タイヤ状態判定装置1Bは、撮像装置160が静止画像を撮像するディジタルスチルカメラである場合、車両検知センサ150による検知結果が車両検知無から車両検知有に変化したときに、レリーズ信号を撮像装置160に出力する構成にすればよい。また、タイヤ状態判定装置1Bは、撮像装置160が動画像を撮像するビデオカメラである場合、車両検知センサ150による検知結果が車両検知無から車両検知有に変化したタイミングに対して、時間的に近い撮像時刻のフレーム画像を、車両100が撮像されているフレーム画像として選択する。
【0087】
図10は、変形例2にかかるタイヤ状態判定装置の主要部の構成を示す図である。この変形例2のタイヤ状態判定装置1Bは、画像入力部15、および判定情報記憶部16を追加的に備えている点で、上記の変形例1と異なる。また、この変形例2のタイヤ状態判定装置1Bは、制御ユニット11Bが、車両種別取得部11fを追加的に有している点で上記の変形例1と異なる。
【0088】
画像入力部15には、撮像装置160が接続されている。画像入力部15には、撮像装置160によって撮像されたフレーム画像が入力される。
【0089】
判定情報記憶部16には、
図11に示すように、車両100の種類別に、輪重Mを変数とするタイヤ101と路面との補正下限長さacを算出する関数(fA_min(M)、fB_min(M)、fC_min(M)等)と、輪重Mを変数とするタイヤ101と路面との補正上限長さbcを算出する関数(fA_max(M)、fB_max(M)、fC_max(M)等)と、を記憶している。これらの関数は、例えば、上記したように、車種別に
タイヤ101と路面との接地長さL=α×輪重M+β
による線形回帰で予め求めた、タイヤ101と路面との接地長さLと、タイヤ101の輪重Mとの関係式に基づくものである。
【0090】
ここで言う車両100の種類は、車両100をタイヤ101の径およびタイヤ101の扁平率が略同じであるグループに分類されるものであればよい。例えば、車両100の種類は、車両の名称によりグループに分類されるものであってもよいし、車両の大きさ(軽自動車、普通車、2tトラック、4tトラック、トレーラ等)によりグループに分類されるものであってもよい。
【0091】
制御ユニット11Bが有する車両種別取得部11fは、撮像装置160によって撮像された車両100の撮像画像を処理し、車両100の種類を判定する。車両100の種類の判定は、パターンマッチング等の公知の画像処理で行ってもよいし、AI(Artificial Intelligence)を利用して行ってもよい。
【0092】
図12は、この変形例1のタイヤ状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
図12では、
図8に示した処理と同じ処理については、同じステップ番号を付している。
【0093】
この変形例2のタイヤ状態判定装置1Bは、上記したs1、s2にかかる処理を行うと、撮像装置160が今回進入した車両100を撮像したフレーム画像を取得する(s21)。車両種別取得部11fは、s21で取得したフレーム画像に撮像されている車両100の種類を判定する。
【0094】
タイヤ状態判定装置1Bは、上記したs3~s7、s11にかかる処理を行うと、s22で判定した車両100の種類の判定情報を判定情報記憶部16から読み出し、この車両100のタイヤ101について、s11で算出された輪重Mを用いて、空気圧が適正であるかどうかの判定に用いる、補正下限長さac、および補正上限長さbcを算出する(s23)。判定部11dは、車両100のタイヤ101毎に、そのタイヤ101についてs7で算出した接地長さLが、s23で算出した補正下限長さacと補正上限長さbcとの範囲内であるかどうかによって、空気圧が適正であるかどうかを判定する(s13)。タイヤ状態判定装置1Bは、s13の判定結果を外部機器に出力し(s9)、s1に戻る。
【0095】
このように、この変形例2のタイヤ状態判定装置1Bは、車両100のタイヤ101の空気圧が適正であるかどうかの判定を、そのタイヤ101が路面に加える荷重(輪重)に加えて、タイヤ101の径、および扁平率も考慮して行える。
【0096】
また、大型トラック、トレーラ等の車両100の中には、車軸間で、タイヤ101の径や扁平率が異なっていることがある。このことから、判定情報記憶部16は、車軸別に、輪重Mを変数とするタイヤ101と路面との補正下限長さacを算出する関数(fA_min(M)、fB_min(M)、fC_min(M)等)と、輪重Mを変数とするタイヤ101と路面との補正上限長さbcを算出する関数(fA_max(M)、fB_max(M)、fC_max(M)等)と、を記憶してもよい。これにより、車軸間で、取り付けられているタイヤ101の種類が異なっていても、タイヤ101毎に、空気圧が適正であるかどうかを精度よく判定できる。
【0097】
・変形例3
図13は、この変形例3のタイヤ状態判定装置が適用される車両の走行路を示す概略図である。この変形例3のタイヤ状態判定装置1が適用される車両100の走行路には、車両検知センサ150、151の間に、4つの軸重センサ201~204が車両100の走行方向に並べられている。各軸重センサ201~204は、一対の輪重センサ201R~204R、201L~204Lを有している。車両100の走行方向に隣接する軸重センサ201~204間の距離は、同じでない。これは、走行している車両100の振動周期の影響を受けることなく、車両100の重量(各タイヤ101の輪重の総和)を計測するためである。
【0098】
ここでは、タイヤ状態判定装置1は、
図3に示した構成であるとして説明するが、
図7、または
図10に示した構成であってもよい。
【0099】
なお、この例では、計測信号入力部12は、輪重センサ201R~204R、201L~204Lの計測信号が入力される8つの入力チャンネルを有している。
【0100】
この変形例3では、タイヤ状態判定装置1は、車両100のタイヤ101毎に、4つの軸重センサ201~204別に路面との接地長さLを算出する。各軸重センサ201~204の計測信号を基にタイヤ101の路面との接地長さLを算出する処理は、上記した通りである。
【0101】
この変形例3のタイヤ状態判定装置1は、車両100のタイヤ101毎に、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの平均値(平均長さ)が下限長さaと、上限長さbとの範囲内であるかどうかによって、タイヤ101の空気圧が適正であるかどうかを判定する。ここで言う平均長さは、相加平均であってもよいし、相乗平均であってもよいし、対数平均であってもよいし、これら以外(例えば、調和平均)であってもよい。
【0102】
また、タイヤ状態判定装置1は、タイヤ101の空気圧が適正であるかどうかの判定を、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの平均値(平均長さ)に加えて、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの最大値、および最小値をも用いて判定してもよい。例えば、タイヤ状態判定装置1は、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの平均値が下限長さaと、上限長さbとの範囲内であっても、いずれかの軸重センサ201~204で計測された接地長さLが下限長さaと、上限長さbとの範囲内でなければ、タイヤ101の空気圧が適正でないと判定してもよい。このようにすれば、タイヤ101の空気圧が適正であるかどうかの判定精度を向上できる。
【0103】
また、
図7に示した変形例1にかかるタイヤ状態判定装置1Aであれば、車両100のタイヤ101毎に、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの平均値(平均長さ)が、4つの軸重センサ201~204別に算出した輪重の平均値(平均荷重)を用いて算出した補正下限長さacと補正上限長さbcとの範囲内であるかどうかによって、空気圧が適正であるかどうかを判定すればよい。ここで言う平均荷重は、相加平均であってもよいし、相乗平均であってもよいし、対数平均であってもよいし、これら以外(例えば、調和平均)であってもよい。
【0104】
また、変形例1のタイヤ状態判定装置1Aにおいても、上記したように、タイヤ101の空気圧が適正であるかどうかの判定を、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの平均値(平均長さ)に加えて、4つの軸重センサ201~204別に算出した路面との接地長さLの最大値、および最小値をも用いて判定してもよい。
【0105】
また、この変形例3では、車両100の重量を得ることができる。具体的には、車両100のタイヤ101毎に、4つの軸重センサ201~204別に算出した輪重の平均値(平均荷重)を算出し、各タイヤ101の平均荷重の総和を車両100の重量として算出できる。したがって、過積載の車両100や、偏載の車両100等の検出も行える。
【0106】
また、この変形例3では、隣接する軸重センサ201~204間におけるタイヤ101の到達時間を用いて、車両100の速度Vを算出してもよい。
【0107】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。また、各処理フローチャートに示したステップの順番は、あくまでも一例であり、適宜その順番を入れ替えてもよい。
【0108】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
走行路を走行している車両(100)のタイヤ(101)が路面を押圧する押圧力を計測したセンサ(201R、201L)の計測信号が入力される入力部(12)と、
タイヤ(101)が路面を押圧する押圧力が前記センサ(201R、201L)によって計測される車両(100)の速度を取得する速度取得部(11b)と、
前記入力部(12)に入力されたタイヤが路面を押圧する押圧力の計測信号と、前記速度取得部(11b)が取得した車両(100)の速度を基に、車両(100)の走行方向におけるタイヤ(101)と路面との接地長さ(L)を算出する第1算出部(11c)と、
前記第1算出部(11c)で算出されたタイヤ(101)の接地長さを基に、タイヤ(101)の空気圧が適正であるかどうかを判定する判定部(11d)と、
を備えたタイヤ状態判定装置(1)。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B…タイヤ状態判定装置
11、11A、11B…制御ユニット
11a…通過時間検出部
11b…速度取得部
11c…接地長さ算出部
11d…判定部
11e…輪重算出部
11f…車両種別取得部
12…計測信号入力部
13…検知信号入力部
14…出力部
15…画像入力部
16…判定情報記憶部
100…車両
101…タイヤ
150、151…車両検知センサ
160…撮像装置
201~204…軸重センサ
201R~204R、201L~204L…輪重センサ