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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162902
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20241114BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241114BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09D11/36
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078881
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】391040870
【氏名又は名称】紀州技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇弥
(72)【発明者】
【氏名】阪上 智洋
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186FB04
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB57
4J039BA04
4J039BC01
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE22
4J039CA07
4J039EA46
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】MOAH、MOSH等の鉱物油を使用せずとも、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れるインクジェットインクを提供する。
【解決手段】引火点が125~170℃、20℃における粘度が4.0~10.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(1)と、
引火点が170~200℃である飽和脂肪酸モノエステル(2)と、
引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルを2種以上、又は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルと、引火点が125~170℃であり、20℃における粘度が0.1~4.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(3)する可塑剤とを含有し、且つ、
前記飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)の合計含有量が、インク総量を100質量%として、合計で53.0~63.0質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引火点が125~170℃、20℃における粘度が4.0~10.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(1)と、
引火点が170~200℃である飽和脂肪酸モノエステル(2)と、
可塑剤とを含有し、
前記可塑剤は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルを2種以上、又は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルと、引火点が125~170℃であり、20℃における粘度が0.1~4.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(3)とを含有し、且つ、
前記飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)の合計含有量が、インク総量を100質量%として、合計で53.0~63.0質量%である、
インクジェットインク。
【請求項2】
前記飽和脂肪酸モノエステル(1)と、前記飽和脂肪酸モノエステル(2)との含有量の比(飽和脂肪酸モノエステル(2)/飽和脂肪酸モノエステル(1))が、0.20~0.80である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記可塑剤の含有量が、インク総量を100質量%として、合計で15.0~35.0質量%である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
さらに、顔料及び/又は染料を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
さらに、顔料誘導体及び/又は顔料分散剤を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
鉱物油を含まない、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
油性インクジェットインクである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
ピエゾ型インクジェットインクである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクが収容されたインクジェットインク収容体。
【請求項10】
印刷基材上に、請求項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクで印字された印刷物。
【請求項11】
前記印刷基材が多孔質素材である、請求項10に記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムは、流動性の高い液体インクを微細なノズルから噴射し、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷システムである。このインクジェット記録システムは、比較的安価な装置で、高解像度及び高品位の画像を、高速且つ低騒音で印刷可能という特徴を有し、最近急速に普及している。
【0003】
なかでも、ピエゾ型インクジェット方式では、電圧を印加すると体積が変化する圧電素子(ピエゾ素子)を用いて、ピエゾ素子の体積変化に応じてインクがインクジェットヘッドから振動によって吐出される。このピエゾ型インクジェット方式によれば、電圧制御によってインクの吐出量を精度よく制御できるとともに、加熱しないために使用環境の影響が少なく耐久性も高い。
【0004】
ただし、ピエゾ型インクジェット方式に使用される油性インクジェットインク(ピエゾ型インクジェットインク)は、種々の要件が要求されている。まず、揮発によって吐出安定性が損なわれることを抑制するため、揮発しにくい必要がある。また、インクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制するため、ピエゾ型インクジェット方式に使用される油性インクジェットインク(ピエゾ型インクジェットインク)は、粘度が低い必要があり、高精細ヘッドを使用するほど低粘度であることが要求される。具体的には、20℃における粘度が15.0mPa・s以下であることが求められる。次に、インクジェットヘッドを構成するゴムパッキン等のゴム部材がインクジェットインクによって膨潤することを抑制する必要がある。さらに、冬場での使用を想定し、インクジェットインクが凝固することによって目詰まりすることを抑制するため、凝固点を氷点下とする必要がある。
【0005】
上記のような種々の要件を満たすため、ピエゾ型インクジェット方式に使用されるインクジェットインク(ピエゾ型インクジェットインク)には、溶媒として、流動パラフィンを初めとする石油系炭化水素が使用されていることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フランス政府は、人体に及ぼすリスクを懸念し、2023年1月1日から、鉱物油の使用が規制され、インク製造に使用される石油系炭化水素を原料とする油脂の使用が禁じられた。このため、1~7個の芳香環を含む鉱物油芳香族炭化水素(MOAH)や、16~35個の炭素原子を含む鉱物油飽和炭化水素(MOSH)を使用することができなくなった。
【0007】
このため、上記のMOAH、MOSH等の鉱物油を使用せずとも、上記の種々の要件を満たすインクジェットインクを提供することが求められている。
【0008】
そこで、本発明は、MOAH、MOSH等の鉱物油を使用せずとも、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れるインクジェットインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の引火点を有する飽和脂肪酸モノエステルと、特定の引火点を有する飽和脂肪酸ジエステルとを使用し、飽和脂肪酸モノエステルの含有量を特定範囲とすることによって、MOAH、MOSH等の鉱物油を使用せずとも、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れる油性インクジェットインクとなることを見出した。本発明者らは、この知見に基づいて更に研究を重ね本発明を完成した。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0010】
項1.引火点が125~170℃、20℃における粘度が4.0~10.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(1)と、
引火点が170~200℃である飽和脂肪酸モノエステル(2)と、
可塑剤とを含有し、
前記可塑剤は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルを2種以上、又は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルと、引火点が125~170℃であり、20℃における粘度が0.1~4.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(3)とを含有し、且つ、
前記飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)の合計含有量が、インク総量を100質量%として、合計で53.0~63.0質量%である、
インクジェットインク。
【0011】
項2.前記飽和脂肪酸モノエステル(1)と、前記飽和脂肪酸モノエステル(2)との含有量の比(飽和脂肪酸モノエステル(2)/飽和脂肪酸モノエステル(1))が、0.20~0.80である、項1に記載のインクジェットインク。
【0012】
項3.前記可塑剤の含有量が、インク総量を100質量%として、合計で15.0~35.0質量%である、項1又は2に記載のインクジェットインク。
【0013】
項4.さらに、顔料及び/又は染料を含有する、項1~3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0014】
項5.さらに、顔料誘導体及び/又は顔料分散剤を含有する、項1~4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0015】
項6.鉱物油を含まない、項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0016】
項7.油性インクジェットインクである、項1~6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0017】
項8.ピエゾ型インクジェットインクである、項1~7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0018】
項9.項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクが収容されたインクジェットインク収容体。
【0019】
項10.印刷基材上に、項1~8のいずれか1項に記載のインクジェットインクで印字された印刷物。
【0020】
項11.前記印刷基材が多孔質素材である、項10に記載の印刷物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、MOAH、MOSH等の鉱物油を使用せずとも、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れる油性インクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0023】
本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0024】
1.インクジェットインク
本発明のインクジェットインクは、引火点が125~170℃、20℃における粘度が4.0~10.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(1)と、
引火点が170~200℃である飽和脂肪酸モノエステル(2)と、
可塑剤とを含有し、
前記可塑剤は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルを2種以上、又は、引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルと、引火点が125~170℃であり、20℃における粘度が0.1~4.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(3)とを含有し、且つ、
前記飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)の合計含有量が、インク総量を100質量%として、合計で53.0~63.0質量%である。
【0025】
(1-1)飽和脂肪酸モノエステル(1)
本発明では、引火点が125~170℃、20℃における粘度が4.0~10.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(1)を含有する。飽和脂肪酸モノエステル(1)を含まない場合には、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できず、ゴム部材も膨潤しやすいためインクジェット装置からインクが漏れる等プリンターの安定稼働に欠け、揮発しやすく吐出安定性に劣る。
【0026】
飽和脂肪酸モノエステル(1)の引火点は、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、125~170℃、好ましくは127~168℃である。飽和脂肪酸モノエステル(1)の引火点が125℃未満では、揮発しやすく吐出安定性に劣り、ゴム部材も膨潤しやすいためインクジェット装置からインクが漏れる等プリンターの安定稼働に欠ける。また、飽和脂肪酸モノエステル(1)の引火点が170℃をこえると、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できない。
【0027】
飽和脂肪酸モノエステル(1)の20℃における粘度は、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、4.0~10.0mPa・s、好ましくは4.5~8.0mPa・sである。飽和脂肪酸モノエステル(1)の20℃における粘度が4.0mPa・s未満では、引火点が低くなり、ノズルで揮発をするため、安定稼働ができない。また、飽和脂肪酸モノエステル(1)の20℃における粘度が10.0mPa・sをこえると、インクの粘度が高くなるため安定して吐出できなくなる。
【0028】
飽和脂肪酸モノエステル(1)の沸点は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、100~200℃が好ましく、130~180℃がより好ましい。なお、インクジェットインクの粘度を低く抑えやすい観点では分子量を小さくし、沸点は高すぎないほうが好ましい。また、融点を低くして凝固点を低くしやすい観点でも、沸点は高すぎないほうが好ましい。
【0029】
以上のような条件を満たす飽和脂肪酸モノエステル(1)としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ブチル等が挙げられる。なお、飽和脂肪酸モノエステル(1)は、単独で使用することもでき、2種以上を組合せて使用することもできる。また、飽和脂肪酸モノエステル(1)は、公知又は市販品を使用することができる。
【0030】
(1-2)飽和脂肪酸モノエステル(2)
本発明では、引火点が170~200℃である飽和脂肪酸モノエステル(2)を含有する。飽和脂肪酸モノエステル(2)を含まない場合には、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できず、ゴム部材も膨潤しやすいためインクジェット装置からインクが漏れる等プリンターの安定稼働に欠け、揮発しやすく吐出安定性に劣る。
【0031】
飽和脂肪酸モノエステル(2)の引火点は、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、170~200℃、好ましくは175~195℃である。飽和脂肪酸モノエステル(2)の引火点が170℃未満では、ゴム部材が膨潤しやすいためインクジェット装置からインクが漏れる等プリンターの安定稼働に欠ける。また、飽和脂肪酸モノエステル(2)の引火点が200℃をこえると、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できず、インクの粘度が高くなるため安定して吐出できなくなる。
【0032】
飽和脂肪酸モノエステル(2)の20℃における粘度は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、4.0~10.0mPa・sが好ましく、5.0~9.0mPa・sがより好ましい。
【0033】
飽和脂肪酸モノエステル(2)の沸点は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、100~200℃が好ましく、130~180℃がより好ましい。なお、インクジェットインクの粘度を低く抑えやすい観点では分子量を小さくし、沸点は高すぎないほうが好ましい。
【0034】
以上のような条件を満たす飽和脂肪酸モノエステル(2)としては、例えば、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル等が挙げられる。なお、飽和脂肪酸モノエステル(2)は、単独で使用することもでき、2種以上を組合せて使用することもできる。また、飽和脂肪酸モノエステル(2)は、公知又は市販品を使用することができる。
【0035】
(1-3)可塑剤
本発明では、可塑剤としては、
引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルを2種以上、又は、
引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルと、引火点が125~170℃であり、20℃における粘度が0.1~4.0mPa・sである飽和脂肪酸モノエステル(3)とを含有する。
【0036】
使用する引火点が125~220℃である飽和脂肪酸ジエステルが1種のみであり、且つ、飽和脂肪酸モノエステル(3)を使用しない場合は、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できず、ゴム部材も膨潤しやすいためインクジェット装置からインクが漏れる等プリンターの安定稼働に欠け、揮発しやすく吐出安定性に劣る。
【0037】
飽和脂肪酸ジエステル
飽和脂肪酸ジエステルの引火点は、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、125~220℃が好ましく、140~210℃がより好ましい。飽和脂肪酸ジエステルの引火点が125℃未満では、揮発しやすく吐出安定性に劣る。また、飽和脂肪酸ジエステルの引火点が220℃をこえると、得られるインクジェットインクの粘度が高くインクジェットヘッドにおける目詰まりを抑制できず、凝固点が高く冬場に凝固による目詰まりを防止できない。
【0038】
飽和脂肪酸ジエステルの20℃における粘度は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、4.0~20.0mPa・sが好ましく、5.0~15.0mPa・sがより好ましい。
【0039】
以上のような条件を満たす飽和脂肪酸ジエステルとしては、例えば、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジエチルヘキシル等が挙げられる。なお、飽和脂肪酸ジエステルは、単独で使用することもでき、2種以上を組合せて使用することもできる。なお、飽和脂肪酸ジエステルを1種使用する場合、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、セバシン酸ジブチルが最も好ましい。また、飽和脂肪酸ジエステルを2種以上使用する場合、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、1種はセバシン酸ジブチルとし、1種は他の飽和脂肪酸ジエステルとすることが好ましい。また、飽和脂肪酸ジエステルは、公知又は市販品を使用することができる。
【0040】
飽和脂肪酸モノエステル(3)
飽和脂肪酸モノエステル(3)の引火点は、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、125~170℃が好ましく、130~168℃である。
【0041】
飽和脂肪酸モノエステル(3)の20℃における粘度は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、1.0~5.0mPa・sが好ましく、2.0~4.0mPa・sがより好ましい。
【0042】
以上のような条件を満たす飽和脂肪酸モノエステル(3)としては、例えば、ラウリン酸メチル等が挙げられる。なお、飽和脂肪酸モノエステル(3)は、単独で使用することもでき、2種以上を組合せて使用することもできる。また、飽和脂肪酸モノエステル(3)は、公知又は市販品を使用することができる。
【0043】
(1-4)溶剤の含有量
本発明のインクジェットインクは、上記のとおり、飽和脂肪酸モノエステル(1)と、飽和脂肪酸モノエステル(2)と、可塑剤とを含有するものであるが、各成分の含有量は、以下のとおりとすることが好ましい。
【0044】
飽和脂肪酸モノエステル(1)の含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、30.0~50.0質量%が好ましく、35.0~45.0質量%がより好ましい。
【0045】
飽和脂肪酸モノエステル(2)の含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、5.0~33.0質量%が好ましく、10.0~27.0質量%がより好ましい。
【0046】
飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)の合計含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、53.0~63.0質量%が好ましく、55.0~62.0質量%がより好ましい。
【0047】
飽和脂肪酸モノエステル(1)と、飽和脂肪酸モノエステル(2)との含有量の比(飽和脂肪酸モノエステル(2)/飽和脂肪酸モノエステル(1))は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、0.20~0.80が好ましく、0.25~0.70がより好ましい。
【0048】
可塑剤の合計含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、15.0~35.0質量%が好ましく、24.0~33.0質量%がより好ましい。
【0049】
可塑剤としてセバシン酸ジブチルを含有する場合、その含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、10.0~30.0質量%が好ましく、12.0~28.0質量%がより好ましい。
【0050】
また、可塑剤として、セバシン酸ジブチル以外の飽和脂肪酸ジエステル及び飽和脂肪酸モノエステル(3)を含有する場合、その合計含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、2.0~25.0質量%が好ましく、3.0~20.0質量%がより好ましい。
【0051】
本発明では、溶剤としては、飽和脂肪酸モノエステル(1)及び飽和脂肪酸モノエステル(2)を使用しており、上記した可塑剤も溶剤となり得る。このため、本発明のインクジェットインクは、有機溶媒を溶剤として使用する油性インクジェットインクとすることができる。
【0052】
また、水性インクジェットインクにおいて溶剤として使用されることが多い水、ケトン、アルコール等の使用は完全に排除するものではないが、本発明のインクジェットインクは、後述のように、印刷基材として紙等の多孔質基材が想定されており、水、ケトン、アルコール等は印刷基材中に染みこみやすいことから、水、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等)等は使用しない又は本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、1質量%以下とすることが好ましい。
【0053】
(1-5)顔料及び/又は染料
本発明のインクジェットインクは、上記のとおり、飽和脂肪酸モノエステル(1)と、飽和脂肪酸モノエステル(2)と、可塑剤とを含有するものであるが、その他、インクジェットインクに通常含まれる成分、例えば、顔料(色材顔料、蛍光顔料等)及び/又は染料(色材染料、蛍光染料等)を含ませることもできる。
【0054】
色材顔料
色材顔料は、非蛍光色を呈することができる顔料であれば特に制限されない。色材顔料は、無機顔料及び有機顔料に大別できるが、いずれも採用できる。
【0055】
無機色材顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄、コバルトブルー等を好適に使用することができる。
【0056】
有機色材顔料としては、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体である顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン顔料;フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料等が挙げられる。
【0057】
上記した色材顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,109,110,117,125,128,129,137,139,147,148,151,153,154,181,166,168,185等;C.I.ピグメントオレンジ16,36,43,51,55,59,61等;C.I.ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,123,168,177,180,192,202,206,215,216,217,220,223,224,226,227,228,238,240等;C.I.ピグメントバイオレット19,23,30,37,40,50等;C.I.ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,22,60,64等;C.I.ピグメントグリーン7,36等;C.I.ピグメントブラウン23,25,26等が挙げられる。
【0058】
上記した色材顔料は、単独で用いることもでき、可視光下での視認性や色味等を考慮して2種以上を組合せて用いることもできる。また、色材顔料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0059】
上記した色材顔料は、色材染料とは異なり、インクジェットインク中で溶解せずに分散して存在している。
【0060】
色材顔料は、分散剤とともに分散機で高速撹拌を行って、安定な分散液にしておくことも可能である。
【0061】
蛍光顔料
蛍光顔料としては、例えば、無機蛍光顔料として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のアルミン酸塩等が挙げられ、有機蛍光顔料として、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン顔料;キノフタロンイエロー、ジケトピロロピロール等のその他の顔料等が挙げられる。
【0062】
上記した蛍光顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントイエロー138;C.I.ピグメントオレンジ71,73等;C.I.ピグメントレッド254,255,264等;C.I.ピグメントバイオレット29等が挙げられる。
【0063】
上記した蛍光顔料は、蛍光染料とは異なり、インクジェットインク中で溶解せずに分散して存在している。
【0064】
蛍光顔料は、分散剤とともに分散機で高速撹拌を行って、安定な分散液にしておくことも可能である。
【0065】
色材染料
色材染料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ソルベントイエロー2,14,16,19,21,34,48,56,79,88,89,93,95,98,133,137,147等;C.I.ソルベントオレンジ5,6,45,60,63等;C.I.ソルベントレッド1,3,7,8,9,18,23,24,27,49,83,100,111,122,125,130,132,135,195,202,212等;C.I.ソルベントブルー2,3,4,5,7,18,25,26,35,36,37,38,43,44,45,47,48,51,58,59,59:1,63,64,67,68,69,70,78,79,83,94,97,98,99,100,101,102,104,105,111,112,122,124,128,129,132,136,137,138,139,143等;C.I.ソルベントグリーン5,7,14,15,20,35,66,122,125,131等;C.I.ソルベントブラック1,3,6,22,27,28,29等;C.I.ソルベントヴァイオレット13等;C.I.ソルベントブラウン1,53等が挙げられる。また、塩基性の油性染料を用いることも可能である。このような塩基性の油性染料としては、例えばC.I.BasicViolet3;C.I.BasicRed1, 8等;C.I.BasicBlack2等が挙げられる。
【0066】
上記した色材染料は、色材顔料とは異なり、インクジェットインク中で溶解して存在している。
【0067】
これらの色材染料は、単独で用いることもでき、2種以上を用いることもできる。また、色材染料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0068】
蛍光染料
蛍光染料としては、溶剤中に溶解して存在しており、可視光下では視認できない又は視認しにくいものの、ブラックライト等から紫外光を照射すると蛍光発光して可視化し得る種々の蛍光染料が使用可能である。
【0069】
このような蛍光染料としては、例えば、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン等のベンゾオキサゾール誘導体;4,4’-ビス(トリアジン-2-イルアミノ)スチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体等のスチルベン誘導体であって、トリアジニル基が例えばアニリノ、スルファニル酸、メタニル酸、メチルアミノ、N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ、ビス(ヒドロキシエチルアミノ)、モルフオリノ、ジエチルアミノ等の置換体で置換されているスチルベン誘導体;2-(スチルベン-4-イル)ナフトトリアゾール、2-(4-フェニルスチルベン-4-イル)ベンゾオキサゾール等のモノ(アゾール-2-イル)スチルベン誘導体;4,4’-ビス(トリアゾール-2-イル)スチルベン-2,2’-ジスルホン酸等のビス(アゾール-2-イル)スチルベン誘導体;1,4-ビス(スチリル)ベンゼン、4,4’-ビス(スチリル)ビフェニル等のベンゼン又はビフェニルのスチリル誘導体;1,3-ジフェニル-2-ピラゾリン等のピラゾリン誘導体;フェニル環置換体としてアルキル、COO-アルキルまたはSO-アルキルを有するビス(ベンズアゾール-2-イル)誘導体;ビス(ベンズオキサゾール-2-イル)誘導体;2-(ベンゾフラン-2-イル)ベンズイミダゾール等のビス(ベンズイミダゾール-2-イル)誘導体;7-ヒドロキシクマリン、7-(アミノ置換)クマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、エスクレチン(esculetin)、β-メチルウンベリフェロン(methylumbelliferone)、3-フェニル-7-(トリアジン-2-イル-アミノ)クマリン、3-フェニル-7-アミノクマリン、3-フェニル-7-(アゾール-2-イル)クマリン、3,7-ビス(アゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(クマリン6)等のクマリン誘導体;カルボスチリル(carbostyril);ナフタルイミド;アルコキシナフタルイミド;ジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシドの誘導体;ピレン誘導体;ピリドトリアゾール等が挙げられる。これらの蛍光染料としては、(株)日本化学工業所製のNIKKABRIGHT、NIKKAFLUOR等;日本化薬(株)製のKAYAPHOR、KAYALIGHT等;昭和化工(株)製のILLUMINARL;住友化学(株)製のWHITEX、BASF製TINOPAL等も挙げられる。
【0070】
上記した蛍光染料は、単独で用いることもでき、紫外光下での視認性や蛍光の強度、色味等を考慮して2種以上を組合せて用いることもできる。また、蛍光染料は、公知又は市販品を使用することができる。
【0071】
上記した蛍光染料は、蛍光顔料とは異なり、インクジェットインク中で溶解して存在している。
【0072】
本発明のインクジェットインクにおいて、顔料及び/又は染料の含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、3.0~20.0質量%が好ましく、5.0~15.0質量%がより好ましい。なお、顔料及び/又は染料を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0073】
(1-6)顔料誘導体又は顔料分散剤
本発明のインクジェットインクは、特に、顔料を使用する場合には、顔料の分散を目的として、顔料誘導体や顔料分散剤を使用することもできる。
【0074】
顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ソルスパース5000S(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0075】
顔料分散剤としては、具体的には、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0076】
エステル構造又は変性ポリ(メタ)アクリレート構造を有する顔料分散剤の具体例としては、例えば、ソルスパース9000、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパースJ-180、ソルスパースJ-200(以上、ルーブリゾール社製);DA-703-50、DA-7300、DA234(以上、楠本化成(株)製);DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2096、BYKJET-9150、BYKJET-9051、BYKJET-9052(以上、BykCemie社製)等が挙げられる。
【0077】
これらの顔料誘導体及び顔料分散剤は、単独で用いることもでき、2種以上を用いることもできる。また、顔料誘導体及び顔料分散剤は、公知又は市販品を使用することができる。
【0078】
本発明のインクジェットインクにおいて、顔料誘導体及び顔料分散剤を使用する場合、顔料誘導体及び顔料分散剤の含有量は、特に制限されるわけではないが、粘度、凝固点、ゴム部材の膨潤抑制、吐出安定性等の観点から、本発明のインクジェットインクの総量を100質量%として、1.5~10.0質量%が好ましく、2.5~7.5質量%がより好ましい。なお、顔料誘導体及び顔料分散剤を2種類以上使用する場合は、その合計含有量が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0079】
(1-7)その他の添加剤
本発明のインクジェットインクには、本発明の効果を害しない範囲において、上記成分以外にも、種々の目的で種々の成分を含有させることができる。例えば、導電剤、表面調整剤、界面活性剤、安定剤等、インクジェットインクに通常用いられている成分を通常使用される含有量の範囲で含有させることもできる。また、本発明のインクジェットインクには、不飽和脂肪酸エステルを、通常使用される含有量の範囲で含有させることを完全に排除するものではない。
【0080】
ただし、本発明のインクジェットインクは、鉱物油を使用せずとも、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れる油性インクジェットインクとすることができる。フランス政府による鉱物油規制の観点からも、本発明のインクジェットインクには、1~7個の芳香環を含む鉱物油芳香族炭化水素(MOAH)や、16~35個の炭素原子を含む鉱物油飽和炭化水素(MOSH)等の鉱物油を含まないことが好ましい。また、不飽和脂肪酸エステルは、不飽和結合部分の酸化により劣化しやすく、経時安定性を低下させやすいため、不飽和脂肪酸エステルを含まないことが好ましい。
【0081】
(1-8)インクジェットインク
上記のような各成分を有するインクジェットインクの製造方法は、特に制限されない。例えば、各成分を同時に添加することもできるし、各成分を所定の順序で順次添加することも可能である。
【0082】
このようにして得られる本発明のインクジェットインクは、粘度及び凝固点が低く、ゴム部材の膨潤を抑制することができ、吐出安定性に優れる油性インクジェットインクとすることができることから、ピエゾ型インクジェット方式、特にドロップオンデマンド式ピエゾ型インクジェット方式に使用されるインクジェットインク(ピエゾ型インクジェットインク、特にドロップオンデマンド式ピエゾ型インクジェットインク)とすることが好ましい。
【0083】
上記した本発明のインクジェットインクは、インクジェット記録装置でインクジェットインクを使用する前に、インクジェットインクの保管、輸送等に用いるために、本発明のインクジェットインクを収容体に収容してインクジェットインク収容体とし、インクジェットインクを使用する際にはインクジェットインクを記録装置に供給することができる。
【0084】
インクジェットインク収容体の形状としては、特に制限されず、例えば、パック、ボトル、タンク、ビン、缶等の任意の形状とすることができる。
【0085】
本発明のインクジェットインクは、種々の印刷基材への印刷に適用することができる。
【0086】
印刷基材としては、特に限定するわけではなく、例えば、紙、金属、ガラス、プラスチックスや、これらの材料の表面に塗装がなされた塗工物等へ適用することも包含されるが、本発明のインクジェットインクは、ピエゾ型インクジェット方式、特にドロップオンデマンド式ピエゾ型インクジェット方式に使用されるインクジェットインク(ピエゾ型インクジェットインク、特にドロップオンデマンド式ピエゾ型インクジェットインク)とすることが好ましいため、印刷基材は紙、布等の多孔質基材であることが好ましい。
【0087】
このような印刷基材に対し、その表面に、インクジェットプリンタにより本発明のインクジェットインクのインク滴を噴きつけて、例えば、文字やバーコード、データマトリックスコード等の種々のコードの印字が施された印刷物を得ることができる。
【実施例0088】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されないことは言うまでもない。
【0089】
なお、実施例において、各種試薬は、以下のとおり市販品を使用した。なお、以下の各試薬において、粘度は、いずれも20℃における数値である。
【0090】
色材顔料
カーボンブラック:キャボット社製のREGAL660R(C.I.ピグメントブラック7)。
【0091】
分散剤
ソルスパース24000:ルーブリゾール社製。
【0092】
溶剤
ミリスチン酸イソプロピル(IPM):引火点130℃、粘度5.4mPa・s
パルミチン酸イソプロピル(IPP):引火点183℃、粘度7.4mPa・s。
【0093】
可塑剤
セバシン酸ジブチル(DBS):引火点190℃、粘度9.1mPa・s
アジピン酸ジエチルヘキシル(DOA):引火点205℃、粘度13.5mPa・s
アジピン酸ジブチル(DBA):引火点166℃、粘度6.0mPa・s
ラウリン酸メチル:引火点136℃、粘度2.6mPa・s
アジピン酸ジメチル(DMA):引火点122℃、粘度3.3mPa・s
セバシン酸ジオクチル(DOS):引火点222℃、粘度20.9mPa・s。
【0094】
鉱物油
流動パラフィン40S:三光化学工業(株)製。
【0095】
実施例1
表1に示すように、ミリスチン酸イソプロピル(IPM;36.5質量部)、パルミチン酸イソプロピル(IPP;20.0質量部)、セバシン酸ジブチル(DBS;25.0質量部)、及びアジピン酸ジエチルヘキシル(DOA;5.0質量部)に、分散剤としてソルスパース24000(4.5質量部)、色材顔料としてカーボンブラック(9.0質量部)を加えて混合し、横型サンドミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルマルチラボ)にて周速12m/secで2時間分散処理し、目開き1μmのフィルターで濾過し、実施例1のインクジェットインクを調製した。
【0096】
実施例2~6及び比較例1~10
表1及び2に示すように、溶剤、可塑剤及び鉱物油の種類及び含有量を種々調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例2~6及び比較例1~10のインクジェットインクを調製した。
【0097】
評価1:粘度
実施例1~6及び比較例1~10のインクジェットインクの粘度を、測定温度20℃において、回転ディスク式粘度計(東機産業(株)製RE-80L)により測定した。インクジェットノズルからの高速吐出のため、粘度は低いほうが好ましく、
○:12.5mPa・s以下
△:12.5mPa・sより大きく15.0mPa・s以下
×:15.0mPa・sより大きい
として評価した。
【0098】
評価2:凝固点
実施例1~6及び比較例1~10のインクジェットインクの凝固点を、JISK 0065:1992(化学製品の凝固点測定方法)に準拠して測定した。冬場での使用を想定すると、凝固点は低いほうが好ましく、
○:-3℃以下である
×:-3℃より高い
として評価した。
【0099】
評価3:膨潤
実施例1~6及び比較例1~10のインクジェットインク中に、ゴム部品(OリングS11.2 4種D)を45℃で1ヶ月間浸漬させ、浸漬前後の重量変化を測定した。この結果、
○:重量変化が10質量%以下である
×:重量変化が10質量%より大きい
として評価した。
【0100】
評価4:鉱物油
実施例1~6及び比較例1~10のインクジェットインクにおいて、フランス政府による鉱物油規制に関して、
○:鉱物油を使用していない
×:鉱物油を使用している
として評価した。
【0101】
評価5:連続印字安定性
実施例1~6及び比較例1~10のインクジェットインクを、紀州技研工業(株)製JET-HQ510(ピエゾ方式ドロップオンデマンド型インクジェットプリンタ)にて40℃環境下で高速印字(3.5KHz)を10分間続けた場合、
〇:不吐出ノズルが10%未満である
×:不吐出ノズルが10%以上である
として評価した。
【0102】
評価1~5の結果を表1~2に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】