(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162904
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241114BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20241114BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/16 503
B41J2/14 501
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078883
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山持 晴加
(72)【発明者】
【氏名】竹内 創太
(72)【発明者】
【氏名】木村 了
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 環樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA03
2C056HA16
2C056HA17
2C056HA23
2C057AF65
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの吐出口面に塗布された接着剤と金属材料間の密着性を高め、吐出口保護部材の接着強度を強化する。
【解決手段】吐出される液体の流路が形成された基板と、前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に形成される薄膜であって、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に形成される薄膜であって、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記薄膜は、前記酸化ケイ素を含み、該酸化ケイ素中のケイ素に対する酸素の比率が5%以上50%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記吐出口形成部材は、エポキシ樹脂を含む材料で構成され、
前記吐出口保護部材は、シリコンもしくは金属を含む材料で構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記吐出口保護部材は、耐食性金属を含む材料で構成されることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記吐出口保護部材は、ステンレス鋼、アルミ合金、チタン合金、ニッケル合金のいずれかを含む材料で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記吐出口保護部材は、10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記薄膜は、ケイ素と酸素の比率が100:25であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記薄膜は、30nm以上100nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記薄膜の膜応力は、圧縮応力が300MPa以上700MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
前記吐出口を保護するべく、接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜が形成される工程を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記薄膜は、前記酸化ケイ素を含み、該酸化ケイ素中のケイ素に対する酸素の比率が5%以上50%以下であることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記薄膜は、真空成膜によって形成されることを特徴とする請求項10または11に記
載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記薄膜は、プラズマCVD法によって形成されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記薄膜は、バイアスRFスパッタリング法によって形成されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ用の記録ヘッドに代表される液体吐出ヘッドによる記録方式は、インク等の液体に熱エネルギーや振動エネルギーを与え、インクを微小な液滴として吐出口より吐出し、被記録媒体上に画像を形成するものである。
【0003】
液体吐出ヘッドは、吐出口及び流路を形成する感光性樹脂層と、基板とを有する。吐出口及び流路を形成する感光性樹脂層は基板上に設けられている。基板には液体を流路に供給する供給口が形成されている。流路及び吐出口が設けられている側の基板の表面はエネルギー発生素子を有する。液体は供給口から流路に供給され、エネルギー発生素子でエネルギーを与えられ、液体吐出口から吐出されて紙などの記録媒体に着弾する。
【0004】
近年、インクジェットプリンタを始めとする記録装置には、商業、産業印刷用途など、従来よりも高解像度な記録物をより高速にプリントアウトする需要が高まっている。しかしながらより高速にプリントアウトする際、紙ジャム等によって折れ曲がった用紙が、液体吐出ヘッドの感光性樹脂層からなる吐出口表面に接触し、吐出口表面が損傷する可能性がある。
【0005】
また、インクジェットプリンタ等の記録装置は、需要が高まっている分野のうち特に産業印刷の分野においては液体吐出ヘッドの堅牢性が要求されており、紙ジャムの発生において吐出口へのダメージが発生しないように基材の強化が求められている。
【0006】
さらに、インクジェットプリンタ等の記録装置は、高画質を実現するため、吐出液の選択自由度を広げてきており、そのためインクと接触する部材の耐溶解性を向上させることが要求されている。
【0007】
そこで、特許文献1では吐出口(ノズル)が形成された基板上に金属材料を接着接合し、積層することで吐出口表面を用紙からガードする件が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、感光性樹脂層からなる吐出口を有する液体吐出ヘッドにおいて、特許文献1のように金属材料を吐出口表面に接着接合した場合、金属と感光性樹脂層との異種部材の接着となる。そのため、硬化収縮や線膨張差などで応力差が生じやすく、長時間インクに接することで、密着性の低い金属材料と接着剤との間で剥離が生じてしまう可能性がある。
【0010】
また、単純に特許文献1の一般金属材料だけではインクに対する耐溶解性能が不十分であり、材料として耐溶解性の高い耐食性金属を用いたヘッドが求められている。しかしながら、近年開発されている高画質インクは、耐溶解性の高いステンレス鋼などの耐食性金属部材を用いてもなおインクに対する耐溶解性能が十分ではないことが分かってきた。
【0011】
より具体的には、単純にヘッドの堅牢性を向上させるために吐出口保護部材に耐腐食性金属であるステンレス鋼を用い、ノズルプレート上に吐出口保護部材を接着接合する。そうすると接合界面のステンレス鋼がインクによって溶解し、接合に用いた接着剤を剥離させ、吐出口保護部材の接着強度を低下させることが分かってきた。
【0012】
そこで本発明の目的は、耐食性金属本来の耐溶解性能を損なわず、液体吐出ヘッドの吐出口面に塗布された接着剤と金属材料間の密着性を高め、吐出口保護部材の接着強度を強化することができる液体吐出ヘッド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明における液体吐出ヘッドは、
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に形成される薄膜であって、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜と、
を有することを特徴とする。
また、上記の目的を達成するために、本発明における液体吐出ヘッドの製造方法は、
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
前記吐出口を保護するべく、接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜が形成される工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体吐出ヘッドの吐出口面を含む面と金属材料の密着性が高く、吐出口保護部材の接着強度を強化した液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1、2における液体吐出ヘッドについての構造図。
【
図2】実施例1における液体吐出ヘッドの製造方法についての説明図。
【
図3】比較例1、実施例3における液体吐出ヘッドについての構造図。
【
図4】比較例1、実施例3における液体吐出ヘッドの製造方法についての説明図。
【
図5】比較例2、実施例4における液体吐出ヘッドについての構造図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
(実施例1)
本発明を適用したインクジェット記録用基板及び液体吐出ヘッドについて、以下に説明
する。基板4をヘッド接合部材20に接着接合して液体吐出ヘッドとした形態を
図1に示す。
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は
図1(a)をD-D線で切断した場合の断面図である。なお、
図1(b)では液体の吐出口を上向きに示している。
【0018】
本実施例における液体吐出ヘッドは、エネルギー発生素子(ヒータ)3から発生したエネルギーによって液体がヘッド接合部材20から基板内に流入し、基板内の供給口5と流路を通過し、吐出口1から吐出され、記録媒体に液体が着弾し印字を行う。
【0019】
基板内に液体を流入させて、液体を供給するためには、基板4を連通する液体の流れる流路を形成する必要がある。
【0020】
連通する穴は要求される形状によってその製造方法が異なり、列をなす複数の吐出口列(ノズル列)に対して共通する1つの大きな溝を形成する方法としては、ウエット異方性エッチング法や、レーザー法、サンドブラスト法がある。
【0021】
またノズル列に対して精度よく小さな穴を多数形成するためには、Deep-RIEによるドライエッチング法がある。
【0022】
液体が吐出するノズル・吐出口を形成する方法について、ノズル部分はオリフィスプレートと呼ばれ、回転塗布で基板上に形成する方法や別部材で形成し基板接合する方法があるが、詳細は後述する。
【0023】
本実施例では、感光性のエポキシ樹脂を吐出口形成部材に用いた方法を選択した。その樹脂もドライフィルムによる貼り合わせを選択した。貼り合わせ後、露光、現像、硬化ベークを行って完成となる。
【0024】
上述のように、本発明の液体吐出ヘッドが適用されるインクジェットプリンタ等の記録装置は、特に産業印刷の分野において使用されることを想定し、ヘッドの堅牢性が要求されており、紙ジャムの発生において吐出口1へのダメージが発生しないように基材の強化が求められている。
【0025】
そのため、吐出口保護部材11を吐出口形成部材2の直上に接合することによって紙などがヘッドの表面に接触しても直接吐出口形成部材2に接触することを抑制し、吐出口1を保護する形態をとっている。
【0026】
本実施例では吐出口形成部材2の材料としてエポキシ樹脂を選択し、吐出口保護部材11の材料としてステンレス鋼部材を選択している。これには吐出液であるインクに対する耐溶解性を高める狙いがある。
【0027】
また、吐出口保護部材11は吐出口形成部材2を保護することを目的としていることから、エポキシ樹脂より機械的な強度が高い材料であれば良く、シリコン基板又は金属部材が候補になる。その中でもインクに対する耐溶解性を考えると、吐出口保護部材11としてはステンレス鋼、アルミ合金、チタン合金、ニッケル合金等の耐食性金属が材料としてより望ましい。
【0028】
吐出口形成部材2と吐出口保護部材11との接合は、一旦完成した吐出口1に触れたり変化させたりすることなく、吐出口保護部材11との接合を可能にするため接着剤13による接合を選択している。本来接着剤の選択は接合部材に依存しているものであるが、セラミックを用いた部材であるヘッド接合部材20、シリコンを用いた部材である基板4、エポキシ樹脂などの樹脂を用いた吐出口形成部材2の全てに対して接合が可能であり、イ
ンクとの耐性も十分な接着剤を用いている。耐インク性を考慮すると、主剤はエポキシ樹脂であり、硬化触媒そして酸無水物を用いた接着剤であることが好ましい。
【0029】
接着剤に用いるエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0030】
脂環式エポキシ樹脂としては、以下のものが挙げられる。少なくとも1個の脂環式環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテルまたはシクロヘキセン、シクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド構造含有化合物または、シクロペンテンオキサイド構造含有化合物、またはビニルシクロヘキサン構造を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるビニルシクロヘキサンオキサイド構造含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル等。
【0031】
芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる。少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、または、ナフタレン環を含むもの、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またこれらに更にアルキレンオキサイドを付加させた化合物のグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラックジグリシジルエーテル、ビスフェノールFノボラックジグリシジルエーテル等。
【0032】
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる。脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、脂肪族長鎖不飽和炭化水素を酸化剤で酸化することによって得られるエポキシ含有化合物、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、また、プロピレングリコール,グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル。
【0033】
さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油等が挙げられる。
【0034】
本発明において選択可能な接着剤は、上記要素を満たすことが必要であることから、本実施例において選択されたものに限定されるわけではない。また、本実施例では基板裏接着剤21と同じものを接着剤13に用いている。
【0035】
吐出口保護部材11の吐出口形成部材2と接合する側の接着接合面には、密着性の向上を目的として密着向上層12を成膜する。この密着向上層12は接着剤13との接着性が重要であることから、酸化ケイ素を含むもので、ケイ素(Si)に対して5%以上の比率で酸素(O)を含有する密着向上層が好ましい。
【0036】
さらに、密着向上層自体の耐インク性を考慮すると、ケイ素に対する酸素の比率が50%以下であることが好ましい。すなわち、酸化ケイ素を含む薄膜で、酸化ケイ素中のケイ素(Si)に対する酸素(O)の比率が5%以上50%以下となる密着向上層12を形成することが好ましい。なお、本実施例では、Siに対してOの比率が25%となるように密着向上層12を形成している。
【0037】
また膜厚に関しても光学的に膜と認識できる30nm程度以上あればよく、また基材となるステンレス鋼部材の変形を発生させないことも重要であり、バランスを考慮して膜厚100nm程度以下の薄膜にすることがよい。すなわち、密着向上層12の厚さは、30nm以上100nm以下であることが望ましい。
【0038】
また密着向上層12の特徴を考慮すると、基材となる吐出口保護部材11のステンレス鋼部材に対して反りを発生させることが無い範囲で膜の膜応力として、圧縮応力を高くすることが有利であり、圧縮応力を300MPa以上700MPa以下にすることが望ましい。
【0039】
図2は本発明の実施例1に対応する基板4及び液体吐出ヘッドの構造と製法を示す図である。対応する部位は符号が
図1と共通になっている。以下、基板4及び液体吐出ヘッドの製造方法について詳細に説明する。
【0040】
図2(a)に示すように、表面側にエネルギー発生素子3と、半導体素子と配線からなる駆動回路(不図示)を内蔵した、厚さ500μmのシリコン基板4を用意した。
【0041】
次に、
図2(b)に示すように、基板4の表面側からエッチングし、50×50μm、の堀込穴を形成し、供給口5とした。本実施例では、エッチングガスとしてはSF
6とC
4F
8を用い、エッチングと成膜を交互に行うDeep-RIE法を用いている。
【0042】
次に、
図2(c)に示すように、基板4の上に吐出口形成部材2となる感光性のエポキシ樹脂を含むドライフィルムを貼り付ける。
【0043】
さらに、
図2(d)に示すように、感光性のドライフィルムを部分に分けて露光し、現像することによって、液体が流れる流路や吐出口1を形成した。ここで一旦吐出口1までの工程が完成する。
【0044】
次に、
図2(e)に示すように、別部品として形状が作り込まれている厚さ30μmのステンレス鋼部材を吐出口保護部材11として用意する。形状はフォトエッチ技術を用いて、レジスト形成、ウエットエッチングを実施してステンレス鋼部材を加工している。なお、本実施例では厚さ30μmのものを採用したが、これに限定されるわけではなく、10μm以上50μm以下の厚みを有することが好ましい。
【0045】
次に、
図2(f)に示すように、吐出口保護部材11の裏面に、Siに対してOの比率が25%となるようSiOC膜を50nmの厚みで成膜し、薄膜の密着向上層12を形成した。本実施例では成膜ガスとしてSiH
4とCH
4を用い、真空成膜のうち、プラズマCVD法によって成膜を行った。
【0046】
次に
図2(g)に示すように、別部品として形成した密着向上層12付きの吐出口保護部材11を吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合する。
【0047】
最後に、
図2(h)に示すように、基板4をヘッド接合部材20に対して基板裏接着剤21を用いて接着接合して液体吐出ヘッドとした。
【0048】
ここで本発明の実施例1の特徴について説明する。本実施例では上述のように密着向上層12としてのSiOC膜をSi:Oが100:25となるように成膜している。成膜ガスとしてSiH4とCH4を用い、プラズマCVD法によって成膜を行った。
【0049】
本実施例の液体吐出ヘッドにインク耐久試験、インク浸漬試験をおこなっても接着剤13と吐出口保護部材11との間で剥離が生じ破壊が起こることはなく、その結果、液体吐出ヘッドの製品破壊が起きることはなかった。
【0050】
比較として、吐出口保護部材11としてのステンレス鋼部材の裏面に密着向上層であるSiOC膜を成膜せずに吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合し、同じインク耐久試験、インク浸漬試験を行った。
【0051】
すると、インクが接着剤とステンレス鋼部材との界面に侵入し、接着強度が低下した。結果としてSiOC膜を成膜せずにステンレス鋼部材を吐出口保護部材11として用いると吐出口を保護する機能を十分に果たせないことが分かった。
【0052】
また比較として、元々インクに対する耐性の低いシリコン基板を用いて吐出口保護部材11を形成し裏面に密着力向上層であるSiOC膜を成膜し、吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合し、同じインク耐久試験、インク浸漬試験を行った。
【0053】
するとSiOC膜を成膜した部分だけ溶解せず、シリコン基板の接着強度が低下することはなかった。
【0054】
但し、シリコン基板のSiOC膜を成膜しなかった部分は溶解が発生し、吐出口保護部材11としての性能の低下が見られた。
【0055】
〔比較例1〕
図3及び
図4は本発明の比較例1に対応する基板4及び液体吐出ヘッドの構造と製法を示す図である。対応する部位は符号が共通になっている。以下、基板4及び液体吐出ヘッドの製造方法について詳細に説明する。比較例1では、
図3(b)に示すように1つの液体吐出ヘッド内で基板4が2つ横並びになっている。
【0056】
図4(a)に示すように、表面側にエネルギー発生素子3と、半導体素子と配線からな
る駆動回路(不図示)を内蔵した、厚さ500μmのシリコン基板4を用意した。
【0057】
次に、
図4(b)に示すように、基板3の表面側からエッチングし、50×50μm、の堀込穴を形成し、供給口5とした。実施例1と同様にエッチングガスとしてはSF
6とC
4F
8を用い、エッチングと成膜を交互に行うDeep-RIE法を用いている。
【0058】
次に、
図4(c)に示すように、基板4の上に吐出口形成部材2となる感光性のエポキシ樹脂を含むドライフィルムを貼り付ける。
【0059】
次に、
図4(d)に示すように、感光性のドライフィルムを部分に分けて露光し、現像することによって、実施例1と同様に、液体が流れる流路や吐出口1を形成した。
【0060】
次に、
図4(e)に示すように、横に並んだ2つの基板4を1つのヘッド接合部材20に対して基板裏接着剤21を用いて接着接合した。ここで一旦吐出口1まで形成した2つの基板4を1つの液体吐出ヘッドに接合する工程が完成する。
【0061】
次に、
図4(f)に示すように、別部品として形状が作り込まれている厚さ30μmのステンレス鋼部材を吐出口保護部材11として用意する。形状はフォトエッチ技術を用いて、レジスト形成、ウエットエッチングを実施してステンレス鋼部材を加工している。なお、実施例1との比較のため、同様に厚さ30μmのものを採用している。
【0062】
次に、
図4(g)に示すように、吐出口保護部材11の裏面にSiOC膜を、Siに対してOの比率が4%になるように、すなわちSi:Oが100:4となるように厚さ100nmで成膜を行い密着向上層12を形成している。比較例1では成膜ターゲットとしてSiOCを用い、真空成膜のうち、バイアスRFスパッタリング法によって成膜を行った。
【0063】
次に
図4(h)に示すように、別部品として形成した密着向上層12付きの吐出口保護部材11を吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合して液体吐出ヘッドとした。
【0064】
比較例1の液体吐出ヘッドに対してインク耐久試験、インク浸漬試験をおこなった結果、長時間のインク浸漬によって、密着向上層とステンレス鋼の界面にインクが浸透し、剥離が生じた。比較例1では密着向上層としてSiOC膜をSi:Oが100:4となるように成膜している。インクが界面へと侵入したのは、膜中の接着に寄与する酸素の存在比率が少ないほど、界面での接着力が低下するためであると考えられる。
【0065】
〔比較例2〕
図5は本発明の比較例2に対応する基板4及び液体吐出ヘッドの構造を示す図である。比較例2でも、1つの吐出ヘッド内で基板4が2つ横並びになっている。比較例2では、基板4、吐出口形成部材2、吐出口保護部材11は実施例1、比較例1と同じであるため、基板4および液体吐出ヘッドの製造方法についての説明は省略する。
【0066】
比較例2では、SiOC膜をSi:Oが100:55となるように30nmの厚みで成膜し、密着向上層12としている。比較例2では成膜ガスとしてSiH4とCH4を用い、プラズマCVD法によって成膜を行った。
【0067】
比較例2の液体吐出ヘッドに対してインク耐久試験、インク浸漬試験を行った結果、密着向上層であるSiOC膜が長時間のインク浸漬で溶解し、剥離が生じた。比較例2では、SiOC膜をSi:Oが100:55となるように30nmの厚みで成膜していることから、酸素の存在比率が過剰だと、膜自体の耐インク性が低下し、インクで溶解しやすく
なると考えられる。
【0068】
(実施例2)
実施例2のインクジェット記録用基板及び液体吐出ヘッドについて説明する。基板4をヘッド接合部材20に接着接合して液体吐出ヘッドとした形態を
図1に示す。基板及び液体吐出ヘッドとしての構造は、ほぼ実施例1と同じであるため、実施例1と異なる部分について説明する。
【0069】
吐出口保護部材11は、実施例1と同様に別部品として先に形状をレジスト形成、ウエットエッチングを用いたフォトエッチ法で加工している。その後に吐出口保護部材11の裏面に接着剤による接合を強化することを目的として密着向上層12を成膜する。
【0070】
ここで、この密着向上層12はインクとの耐性が重要であることから、実施例1と異なり、炭素を含むシリコン系、すなわち炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜が望ましい。より具体的には、SiC、SiOC、SiCN、SiOCNならどれでもよく、要求されるインク種によって選択することが可能である。本実施例では、SiCによる厚さ50μmの薄膜を、成膜ガスとしてSiH4とCH4を用い、プラズマCVD法によって成膜を行っている。また膜厚や、圧縮応力に関しても、実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
この時のプラズマCVDの成膜として、シャワーヘッドに13.56MHzのRF電源をHFとし、プラテンに380KHzのRF電源をLFとして印加するトライオード成膜を選択した。
【0072】
さらにステンレス鋼表面に対する密着力を高めるために、シャワーヘッドに印加しているHFパワーを絞り、プラテンに印加しているLFパワーを上げて実施した。圧縮応力が500MPaになるように調整し、HF/LF/圧力の条件をそれぞれ100W/200W/100Paに設定し、成膜を実施している。
【0073】
プラズマCVD法では、成膜時の圧力が100Pa程度であり、成膜真空度としてはあまり高くないことから、ステンレス鋼表面の汚染物、特に有機物汚染物のデガスの発生に依存せず、安定して真空度を一定に保つことが可能であり、成膜が安定するというメリットがある。
【0074】
またトライオード成膜による常温に近い100℃以下の低温で成膜することが可能であり、温度差に起因するステンレス鋼部材の伸縮や反りといった成膜・搬送不具合を誘発する挙動を回避できるように60℃で成膜を行った。
【0075】
成膜したSiC膜は厚みが50nmと薄いことからその圧縮応力を500MPaと高めに設定しても基材のステンレス鋼部材の変形を発生することなく、密着向上層12として良好に機能した。
【0076】
本実施例の吐出ヘッドのインク耐久試験、インク浸漬試験をおこなっても剥離破壊、製品破壊が起きることはなかった。
【0077】
比較として、吐出口保護部材11としてのステンレス鋼部材の裏面に密着向上層であるSiC膜を成膜せずに吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合し、同じインク耐久試験、インク浸漬試験を行った。
【0078】
すると、接着剤と密着しているステンレス鋼部材界面がインクによって溶解し接着剤を
剥離させ、ステンレス鋼部材の接着強度が低下することを確認した。結果としてSiC膜を成膜せずにステンレス鋼部材を吐出口保護部材11として用いると吐出口を保護する機能を十分に果たせないことが分かった。
【0079】
また比較として、元々インクに対する耐性の低いシリコン基板を用いて吐出口保護部材11を形成し裏面に密着力向上層であるSiC膜を成膜し、吐出口形成部材2に接着剤13を用いて接着接合し、同じインク耐久試験、インク浸漬試験を行った。
【0080】
するとSiC膜を成膜した部分だけ溶解せず、シリコン基板の接着強度が低下することはなかった。
【0081】
但し、シリコン基板のSiC膜を成膜しなかった部分は溶解が発生し、吐出口保護部材11としての性能の低下が見られた。
【0082】
(実施例3)
図3及び
図4は本発明の実施例3に対応する基板4及び液体吐出ヘッドの構造と製法を示す図である。対応する部位は符号が共通になっている。以下、基板及びヘッドの製造方法について説明するが、基本的には比較例1における製造方法と同様のため、異なる部分について説明をしていくことにする。
【0083】
本発明の実施例3の特徴について説明する。本実施例では密着向上層12としてSiC膜を100nmの厚さで成膜している。成膜ターゲットとしてSiCを用い、バイアスRFスパッタリング法によって成膜を行った。
【0084】
スパッタとしては平行平板のSiCターゲットを用意し、RF電源印加とDC電源印加によるバイアスRFスパッタリングを行った。なお、RFパワー500W、バイアスパワー50Wとし、圧縮応力が0.5Paになるように調整し、成膜を実施している。
【0085】
一般にスパッタリングは前処理としてステンレス鋼表面の汚染物、特に有機汚染物を除去するため、逆スパッタを実施するが、ステンレス鋼の場合表面のクロム酸化物が除去され、ステンレス鋼の特徴である耐食性が低下することから、本実施例では、逆スパッタレスで実施している。
【0086】
また温度差に起因するステンレス鋼部材の伸縮や反りといった成膜・搬送不具合を誘発する挙動を回避するため基板加熱を行わず成膜を行った。
【0087】
本実施例では、成膜したSiC膜は厚みが100nmと実施例2より厚いことからその圧縮応力を300MPaと中程度に制限して設定したところ、基材のステンレス鋼部材の変形を発生することなく、密着向上層12として良好に機能した。
【0088】
本実施例では実施例1と違い、2つの基板4を1つのヘッドに接着接合した後、1つの吐出口保護部材11を2つの基板4に接着接合している。この時、接着剤13によって接着接合する吐出口保護部材11は全ての面が吐出口形成部材2に対するわけではい。吐出口形成部材2が無いところでは、基板4に対する面も存在し、吐出口保護部材11が接着剤13を介して基板4と接着接合を行う箇所も存在する。
【0089】
しかしながら、本実施例のように吐出口保護部材11の裏面の全面に密着向上層12を形成していることにより、接合する対象の面や素材が変わったとして、接着剤13に対する密着向上層の効果は良好であり変わらない。
【0090】
本実施例の吐出ヘッドのインク耐久試験、インク浸漬試験をおこなっても実施例2と同様に、剥離破壊、製品破壊が起きることはなかった。
【0091】
〔実施例4〕
図5は本発明の実施例4に対応する基板及びヘッドの構造を示す図である。実施例4では、実施例3で用いた基板4、吐出口形成部材2、吐出口保護部材11と構造が同じであるため、他の実施例とは異なる部分について、以下説明する。
【0092】
図5に示す本実施例ではSiC膜30nmを成膜し密着向上層12とした。本実施例では成膜ガスとしてSiH
4とCH
4を用い、プラズマCVD法によって成膜を行った。
【0093】
また
図5に示すように、ヘッド接合部材20は平坦ではなく、基板4が収まるようにヘッド接合部材20の外延部は高さが高くなっており、吐出口保護部材11の裏面にヘッド接合部材20が接着剤13によって接合される形態となっている。
【0094】
本発明の実施例4の特徴について説明する。成膜したSiC膜は厚みが30nmと実施例2より薄いことから、その圧縮応力を650MPaとしステンレス鋼表面に対する密着力を更に高めた。HF/LF/圧力の条件をそれぞれ100W/200W/50Paで成膜を実施している。
【0095】
それでも基材のステンレス鋼部材の変形を発生することなく、密着向上層12として良好に機能した。
【0096】
本実施例では実施例3と同様で、実施例1と違い、2つの基板4を1つのヘッドに接着接合した後、1つの吐出口保護部材11を2つの基板4に接着接合している。この時、接着剤13によって接着接合する吐出口保護部材11は全ての面が吐出口形成部材2に対するわけではない。吐出口形成部材2が無いところでは、ヘッド接合部材20に対する面も存在し、吐出口保護部材11が接着剤13を介してヘッド接合部材20と接着接合を行う箇所も存在する。
【0097】
本実施例のように吐出口保護部材11の裏面の全面に密着向上層12を形成していることにより、接合する対象の面や素材が変わったとして、接着剤13に対する密着向上層の効果は良好であり変わらない。
【0098】
本実施例の吐出ヘッドのインク耐久試験、インク浸漬試験をおこなっても剥離破壊、製品破壊が起きることはなかった。
【0099】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に形成される薄膜であって、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜と、
有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
(構成2)
前記薄膜は、前記酸化ケイ素を含み、該酸化ケイ素中のケイ素に対する酸素の比率が5%以上50%以下であることを特徴とする構成1に記載の液体吐出ヘッド。
(構成3)
前記吐出口形成部材は、エポキシ樹脂を含む材料で構成され、
前記吐出口保護部材は、シリコンもしくは金属を含む材料で構成される
ことを特徴とする構成1または2に記載の液体吐出ヘッド。
(構成4)
前記吐出口保護部材は、耐食性金属を含む材料で構成されることを特徴とする構成3に記載の液体吐出ヘッド。
(構成5)
前記吐出口保護部材は、ステンレス鋼、アルミ合金、チタン合金、ニッケル合金のいずれかを含む材料で構成されていることを特徴とする構成4に記載の液体吐出ヘッド。
(構成6)
前記吐出口保護部材は、10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする構成1または2に記載の液体吐出ヘッド。
(構成7)
前記薄膜は、ケイ素と酸素の比率が100:25であることを特徴とする構成2に記載の液体吐出ヘッド。
(構成8)
前記薄膜は、30nm以上100nm以下の厚みを有することを特徴とする構成1または2に記載の液体吐出ヘッド。
(構成9)
前記薄膜の膜応力は、圧縮応力が300MPa以上700MPa以下であることを特徴とする構成1または2に記載の液体吐出ヘッド。
(方法1)
吐出される液体の流路が形成された基板と、
前記流路を通過した液体が吐出される吐出口が形成された吐出口形成部材と、
前記吐出口を保護するべく、接着剤を介して前記吐出口形成部材と接合する吐出口保護部材と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記吐出口保護部材の前記吐出口形成部材と接合する側の面に、炭化ケイ素、または炭素を含む酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のいずれかを含む薄膜が形成される工程を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
(方法2)
前記薄膜は、前記酸化ケイ素を含み、該酸化ケイ素中のケイ素に対する酸素の比率が5%以上50%以下であることを特徴とする方法1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
(方法3)
前記薄膜は、真空成膜によって形成されることを特徴とする方法1または2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
(方法4)
前記薄膜は、プラズマCVD法によって形成されることを特徴とする方法3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
(方法5)
前記薄膜は、バイアスRFスパッタリング法によって形成されることを特徴とする方法3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0100】
2…吐出口形成部材、4…基板、11…吐出口保護部材、12…密着向上層、13…接着剤