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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162906
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】液滴吐出装置および液滴吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20241114BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241114BHJP
   B05D 3/14 20060101ALI20241114BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241114BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241114BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241114BHJP
   B05B 5/025 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/14
B05C11/00
B05C11/10
B05C5/00 101
B05B5/025 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078885
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】506159976
【氏名又は名称】株式会社SIJテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 和広
【テーマコード(参考)】
4D075
4F034
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC01
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075BB81X
4D075BB91X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA33
4F034AA04
4F034BA01
4F034BA07
4F034BB04
4F034BB15
4F034BB24
4F034BB26
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA06
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA20
4F042BA21
4F042CA01
4F042CB03
4F042DH09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板側のパターンによる影響を受けずに静電方式による液滴吐出を安定して行うこと。
【解決手段】一実施形態の液滴吐出方法は、基板上のパターンを撮像し、前記パターンに対応する第1撮像データを取得し、前記第1撮像データを機械学習モデルに適用することにより前記液滴吐出条件を生成することを含む。上記液滴吐出方法において、あらかじめ取得された第1撮像データを対象とした機械学習により前記機械学習モデルを生成することをさらに含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のパターンを撮像し、
前記パターンに対応する第1撮像データを取得し、
前記第1撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習を行い、静電方式による液滴吐出条件を生成することを含む、
液滴吐出方法。
【請求項2】
あらかじめ取得された第1撮像データを対象とした機械学習により前記機械学習モデルを生成することをさらに含む、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項3】
静電型液滴吐出ノズルから吐出された液滴の形状を撮像することを含み、
前記機械学習モデルは、前記パターンと前記液滴の形状との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項4】
前記機械学習モデルは、前記パターンと前記基板の導電率との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、前記パターンと、静電型液滴吐出ノズルの形状および湿度の少なくともいずれかとの対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項6】
前記機械学習モデルは、前記パターンと、前記基板に対する液滴の接触角との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項7】
前記液滴吐出条件は、吐出電圧、周波数、前記基板と静電型液滴吐出ノズルとの間の距離の少なくとも一つを含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【請求項8】
基板上のパターンを撮像する撮像部と、
前記パターンに対応する第1撮像データを取得し、前記第1撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習を行い、静電方式による液滴吐出条件を生成する制御部と、
を含む、
液滴吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、あらかじめ取得された第1撮像データを対象とした機械学習により前記機械学習モデルを生成する、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
静電型液滴吐出ノズルから吐出された液滴の形状を撮像する第2撮像部を含み、
前記機械学習モデルは、前記パターンと前記液滴の形状との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記機械学習モデルは、前記パターンと前記基板の導電率との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記機械学習モデルは、前記パターンと、静電型液滴吐出ノズルの形状および湿度の少なくともいずれかとの対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
前記機械学習モデルは、前記パターンと、前記基板に対する液滴の接触角との対応関係を学習させた学習モデルである、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項14】
前記液滴吐出条件は、吐出電圧、周波数、前記基板と静電型液滴吐出ノズルとの間の距離の少なくとも一つを含む、
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術の工業用プロセスへの応用が行われている。例えば、液晶ディスプレー用のカラーフィルター製造工程などはその一例である。インクジェット印刷技術として、従来は機械的圧力や振動により液滴を吐出する、いわゆるピエゾ型ヘッドが多く使用されてきていたが、より微細な液滴を吐出できる静電吐出型インクジェットヘッドが注目されている。特許文献1には、静電吐出型インクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-34967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、基材に設けられるパターンは様々であり、一様ではない。ピエゾ方式の場合、基板側のパターンによる影響を受けずに液滴を吐出することができるが、静電方式の液滴吐出の場合、パターンがある場所と、パターンがない場所では液滴吐出条件に違いが生じるため、均一なサイズの液滴を吐出できない(パターンを均一に形成できない)場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、基板側のパターンによる影響を受けずに静電方式による液滴吐出を安定して行うことを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば基板上のパターンを撮像し、基板上のパターンを撮像し、前記パターンに対応する第1撮像データを取得し、前記第1撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習を行い、静電方式による液滴吐出条件を生成することを含む、液滴吐出方法が提供される。
【0007】
上記液滴吐出方法において、あらかじめ取得された第1撮像データを対象とした機械学習により前記機械学習モデルを生成することをさらに含んでもよい。
【0008】
上記液滴吐出方法において、静電型液滴吐出ノズルから吐出された液滴の形状を撮像することを含み、前記機械学習モデルは、前記パターンと前記液滴の形状との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0009】
上記液滴吐出方法において、前記機械学習モデルは、前記パターンと前記基板の導電率との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0010】
上記液滴吐出方法において、前記機械学習モデルは、前記パターンと、静電型液滴吐出ノズルの形状および湿度の少なくともいずれかとの対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0011】
上記液滴吐出方法において、前記機械学習モデルは、前記パターンと、前記基板に対する液滴の接触角との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0012】
上記液滴吐出装置において、前記液滴吐出条件は、吐出電圧、周波数、前記基板と前記静電型液滴吐出ノズルとの間の距離の少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、基板上のパターンを撮像する撮像部と、前記パターンに対応する第1撮像データを取得し、前記第1撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習を行い、静電方式による液滴吐出条件を生成する制御部と、を含む、液滴吐出装置が提供される。
【0014】
上記液滴吐出装置において、前記制御部は、あらかじめ取得された第1撮像データを対象とした機械学習により前記機械学習モデルを生成してもよい。
【0015】
上記液滴吐出装置において、静電型液滴吐出ノズルから吐出された液滴の形状を撮像する第2撮像部を含み、前記機械学習モデルは、前記パターンと前記液滴の形状との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0016】
上記液滴吐出装置において、前記機械学習モデルは、前記パターンと前記基板の導電率との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0017】
上記液滴吐出装置において、前記機械学習モデルは、前記パターンと、静電型液滴吐出ノズルの形状および湿度の少なくともいずれかとの対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0018】
上記液滴吐出装置において、前記機械学習モデルは、前記パターンと、前記基板に対する液滴の接触角との対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【0019】
上記液滴吐出装置において、前記液滴吐出条件は、吐出電圧、周波数、前記基板と静電型液滴吐出ノズルとの間の距離の少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態を用いることにより、基板側のパターンによる影響を受けずに静電方式による液滴吐出を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る液滴吐出条件データセットである。
図4】本発明の一実施形態に係る液滴吐出のフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る学習処理のフロー図である。
図6A】撮像データの模式図である。
図6B】撮像データの模式図である。
図7A】撮像データの模式図である。
図7B】撮像データの模式図である。
図7C】撮像データの模式図である。
図8A】撮像データの模式図である。
図8B】撮像データの模式図である。
図8C】撮像データの模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る液滴吐出のフロー図である。
図10】本発明の一実施形態に係る液滴吐出のフロー図である。
図11】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図12】本発明の一実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
図13】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
図14A】マルチノズルヘッド151の一部を拡大した上面模式図である。
図14B】マルチノズルヘッド151の一部を拡大した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B、または-1,-2等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0024】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0025】
<第1実施形態>
(1-1.液滴吐出装置100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100の概略模式図である。
【0026】
液滴吐出装置100は、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、液滴吐出部140、撮像部160および基板保持部190を含む。
【0027】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programable Gate Array)、またはその他の演算処理回路を含む。制御部110は、あらかじめ設定された液滴吐出用プログラムを用いて、液滴吐出部140の吐出処理を制御する。
【0028】
記憶部115は、液滴吐出用プログラム、および液滴吐出用プログラムで用いられる各種情報を記憶するデータベースとしての機能を有する。記憶部115には、メモリ、SSD、または記憶可能な素子が用いられる。
【0029】
電源部120は、制御部110、記憶部115、駆動部130、液滴吐出部140および基板保持部190と接続される。電源部120は、制御部110から入力される信号をもとに、液滴吐出部140に電圧を印加する。この例では、電源部120は、液滴吐出部140に対してパルス状の電圧を印加する。なお、パルス電圧に限定されず、一定の電圧が常時印加されてもよい。液滴吐出部140に対して電源部120から印加された電圧により後述する液滴吐出ノズル141の先端部141aから液滴が基板200の方向(第3方向D3)に吐出される。
【0030】
駆動部130は、モータ、ベルト、ギアなどの駆動部材により構成される。駆動部130は、制御部110からの指示に基づき、基板保持部190に対して液滴吐出部140(液滴吐出ノズル141)を相対的に(この例では、第1方向D1または第2方向D2。第1方向D1と第2方向D2は交差する(直交する))に移動させる。これにより、駆動部130は、装置使用時(液滴吐出時)における基板200と液滴吐出部140との相対的な位置関係を制御する。
【0031】
駆動部130は、液滴吐出部140(液滴吐出ノズル141)を適宜固定して基板200を移動させてもよい。また、駆動部130は、ゴニオステージなどの位置調整機構と組み合わせて用いられ、液滴吐出ノズル141とを微調整してもよい。
【0032】
液滴吐出部140は、液滴吐出ノズル141およびインクタンク143を含む。液滴吐出ノズル141には、静電方式のインクジェットノズルが用いられる。そのため、液滴吐出ノズルは、静電型液滴吐出ノズルともいう。液滴吐出ノズル141の先端部141aの内径は、数百nm以上20μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは5μm以上12μm以下である。
【0033】
液滴吐出ノズル141は、ガラス管を有し、ガラス管の内部に電極145が設けられる。この例では、電極145には、タングステンの細線が用いられる。なお、電極145は、タングステンに限定されず、ニッケル、モリブデン、チタン、金、銀、銅、白金などが設けられてもよい。
【0034】
液滴吐出部140の液滴吐出ノズル141は、基板200の表面(基板保持部190の上面)に対して垂直に設けられる。
【0035】
基板保持部190は、基板200を保持する機能を有する。基板保持部190は、この例ではステージが用いられる。基板保持部190が基板200を保持する機構は特に制限されず、一般的な保持機構が用いられる。この例では、基板200は、基板保持部190に真空吸着している。なお、本発明はこれに限定されず、基板保持部190は固定具を用いて基板200を保持してもよい。
【0036】
基板200は、液滴吐出部140から吐出される液滴が吐出される部材をいう。この例では、基板200にはガラス基板が用いられる。なお、基板200はガラス基板に限定されない。例えば、金属板であってもよいし、樹脂製の板状部材でもよい。また、基板に限定されず、固定可能であれば、他の形状の構造物でもよい。また、基板200上には、金属配線または有機樹脂材料により形成されたパターンP1,P2,P3が設けられる。また、基板200には、液滴吐出用の対向電極が設けられてもよい。このとき、基板200には、GND(Ground)電位が印加されてもよい。
【0037】
撮像部160は、基板200に形成されているパターンを撮像する。この例では、撮像部160には、CCD(Charge Coupled Device)方式またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)方式のイメージセンサ(カメラ)が用いられる。撮像部160で取得された情報は、制御部110および記憶部115に送られる。
【0038】
(1-2.制御部の機能ブロック図)
図2は、制御部110の機能ブロック図である。図2に示すように、制御部110は、液滴吐出を実現させるプログラム(液滴吐出プログラム)において、機能部として、取得部1101、学習処理部1103、生成部1105、および吐出指示部1107を含む。
【0039】
取得部1101は、撮像部160によって撮像された撮像データを取得する機能を有する。取得された撮像データは、記憶部115に格納される。
【0040】
学習処理部1103は、あらかじめ取得された撮像データ(教師データ)を用いて生成された機械学習モデルに基づいて機械学習を行う機能を有する。
【0041】
生成部1105は、学習結果に基づいて液滴吐出条件を生成する機能を有する。図3は、液滴吐出条件データセット300である。この例では、液滴吐出条件データセット300は、パターン識別子301、基板-液滴吐出ノズル間の距離303、吐出電圧305、液滴吐出するときにパルス電圧を印加する周波数307を含む。
【0042】
吐出指示部1107は、生成された液滴吐出条件に基づいて液滴吐出部140から液滴を吐出するように、液滴吐出部140、電源部120および駆動部130に指示する機能を有する。
【0043】
(1-3.液滴吐出方法)
次に、本実施形態における液滴吐出方法について図4乃至図8を用いて説明する。図4は、液滴吐出方法を示すフロー図S100である。
【0044】
まず、撮像部160は、制御部110の指示に基づき基板200に形成されたパターンを撮像する(ステップS101)。パターンを撮像するときは、広角でパターン全体を撮像してもよいし、スキャン操作により撮像してもよいし、部分的に撮像してもよい。撮像した撮像データは、制御部110に送信される。取得部1101は、撮像データを取得し(ステップS103)、撮像データは、記憶部115に格納される。
【0045】
このとき、制御部110は、撮像データから最小パターン寸法、形状、段差の有無などの情報を取得してもよい。
【0046】
次に、学習処理部1103は、取得した撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習を行う(ステップS105)。機械学習モデルの生成は以下のように行われる。
【0047】
図5は、本実施形態における機械学習モデル生成のフロー図S1050である。図5に示すように、機械学習モデルを生成するための撮像データをあらかじめ取得する(ステップS1051)。図6A~B、図7A~C、および図8A~Cは、撮像データの模式図である。図6A~B、図7A~C、および図8A~Cに示すように、あらかじめ取得する撮像データは、様々なパターンに対応するように取得される。
【0048】
線形のパターンの場合、図6Aには、隣接する線形パターン410間の間隔sが異なるパターン400aが示される。具体的には、パターン400aにおいて、パターン400a-1は、間隔s1を有する。パターン400a-2は、間隔s2を有する。パターン400a-3は、間隔s3を有する。間隔s1、間隔s2、間隔s3の順に間隔が大きくなる。このとき、パターン400aの形状は同じであってもよい。図6Bには、異なる線幅Lを有する線形パターン410が形成されたパターン400bが示される。具体的には、パターン400bにおいて、パターン400b-1は、線幅L1を有する。パターン400b-2は、線幅L2を有する。パターン400b-3は、線幅L3を有する。線幅L1、線幅L2、線幅L3の順に線幅Lが大きくなる。このとき、パターン400bの形状は同じであってもよい。
【0049】
円形のパターンの場合、図7Aには、異なる直径Rを有する円形パターン420が形成されたパターン400cが示される。具体的には、パターン400cにおいて、パターン400c-1は、直径R1の円形パターン420を有する。パターン400b-2は、直径R2の円形パターン420を有する。パターン400b-3は、直径R3の円形パターン420を有する。直径R1、直径R2、直径R3の順に直径Rが大きくなる。図7Bには、隣接する円形パターン420間の間隔sが異なるパターン400dが示される。具体的には、パターン400dにおいて、パターン400d-1は、間隔s1を有する。パターン400d-2は、間隔s2を有する。間隔s1、間隔s2の順に間隔sが大きくなる。円形パターン420は同じであってもよ。図7Cには、複雑な円形パターンを有するパターン400eが示される。具体的には、パターン400e-1は、中心部に空間を有するように環形状を有する。パターン400e-2は、楕円形状を有する。パターン400e-3は、2つの円が一部において結合する形状を有する。
【0050】
図8A図8B、および図8Cには、さらに複雑なパターンが示される。パターン400fは、複数パターンが一部において重なっている。具体的には、図8Aにおいて、パターン400f-1では、2つの線形パターン410が重畳部410fcにおいて重畳している。パターン400f-2は、3つの線形パターン410が、重畳部410fcにおいて重畳している。これにより、パターン400f-1およびパターン400f-2は、異なる高さの段差を有する。図8Bには、複数の凹凸を有するパターンとして星形形状を有するパターン400gが示される。図8Cには、さらに多くの凹凸を有するパターン400hが示される。
【0051】
次に、あらかじめ取得した撮像データを基に教師データを生成する(ステップS1053)。このとき、ユーザからの入力により任意に教師データを生成してもよい。具体的には、実際に吐出処理を行った結果を入力することにより教師データを生成してもよい。また、教師データは、一つのパターンおよびそれに対応する細分化した液滴吐出条件でもよいし、所定の範囲におけるパターン群およびそれに対応する液滴吐出条件でもよい。一つのパターンおよびそれに対応する細分化した液滴吐出条件の場合、より正確な液滴吐出条件を生成(設定)することができる。所定の範囲におけるパターン群およびそれに対応する液滴吐出条件の場合、広い領域の液滴吐出条件を生成(設定)することができる。
【0052】
次に、教師データおよびあらかじめ取得した撮像データを用いて機械学習を行う(ステップS1055)。機械学習には、誤差逆伝播法(Backpropagation)、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)などの公知の学習方法が用いられてもよい。機械学習を繰り返し行うことにより、液滴を吐出するするための条件(液滴吐出条件)を生成するための機械学習モデルが生成される(ステップS1057)。
【0053】
図4に戻って説明する。撮像データを機械学習モデルに適用して機械学習が行われ、その結果として、制御部110は、液滴吐出条件を生成する(出力する)(ステップS107)。このとき、図3に示すように、液滴吐出条件として、取得された撮像データに対応するパターン識別子301、基板-液滴吐出ノズル間の距離303、吐出電圧305、液滴吐出するときにパルス電圧を印加する周波数307を含む液滴吐出条件データセットが生成される。
【0054】
制御部110は、液滴吐出部140に生成された液滴吐出条件による液滴吐出を指示する。最後に、上記指示により、液滴吐出部140が基板(基板)に液滴を吐出する(ステップS109)。以上が、液滴吐出方法である。
【0055】
本実施形態の場合、基板上のパターンを入力パラメータとして用いることにより、当該パターンに応じた最適な液滴吐出条件(パラメータ)が設定される。これにより、パターンによる影響を受けずに静電方式による液滴吐出を行うことができ、均一なパターン形成が可能である。したがって、本実施形態を用いることにより、基板側のパターンによる影響を受けずに静電方式による液滴吐出を安定して行うことができる。
【0056】
また、本実施形態において生成する液滴吐出条件が一つのパターンに対応する細分化した条件である場合、1回の吐出ごとに最適な条件で液滴を吐出することができる。また、本実施形態において生成する液滴吐出条件が所定の範囲におけるパターン群に対応する場合、その範囲に対して最適な条件で液滴を吐出することができる。
【0057】
また、本実施形態の場合、基板上のパターンを撮像後、瞬時に液滴吐出条件を生成することができる。これにより、ダイナミックに吐出条件を制御しながら液滴を吐出することもできる。
【0058】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態と異なる液滴吐出方法について説明する。具体的には、基板側の導電率を機械学習モデルに適用して、液滴吐出条件を生成する例について説明する。なお、説明の関係上、第1実施形態と同様の構成については適宜省略して説明する。
【0059】
図9は、本実施形態における液滴吐出方法を示すフロー図S100Aである。本実施形態において、取得部1101は、撮像データとともに(ステップS103)、基板の導電率データを取得してもよい(ステップS104)。そして、学習処理部1103は、撮像データとともに、基板側の導電率を一つの機械学習モデルに適用してもよい。(ステップS105A)。このとき、機械学習モデルは、基板上のパターンと基板側の導電率との対応関係を学習させた学習モデルである。
【0060】
静電方式の液滴吐出の場合、基板側(基板またはパターン内部)に電荷が蓄積していると、液滴吐出ノズルに印加されるべき電圧が適切に印加されない場合がある。このとき、ほかの液滴吐出条件(パラメータ)が適切であっても、安定して液滴が吐出できない。そのため、基板側の導電率が低い場合(絶縁基板の場合)、基板と液滴吐出ノズル間の距離を長くするように制御することが望ましい。基板と液滴吐出ノズル間の距離は、パターンのサイズにより影響される場合がある。そのため、基板(またはパターン)の導電率(または抵抗率)を機械学習モデルに適用することにより、最適な液滴吐出条件、とくに基板と液滴吐出ノズル間の最適距離を設定することができる。
【0061】
したがって、本実施形態を用いることにより、静電方式による液滴吐出をさらに安定して行うことができる。
【0062】
なお、本実施形態では、撮像データとともに、基板側の導電率を一つの機械学習モデルに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板側の導電率について別の機械学習モデルに適用して機械学習を行い、導電率に対応する補正係数を生成してもよい。この場合、基板上のパターンを機械学習モデルに適用することにより生成された液滴吐出条件に補正係数を組み合わせることで新たな液滴吐出条件を生成してもよい。
【0063】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態と異なる液滴吐出方法について説明する。具体的には、基板側の接触角を機械学習モデルに適用して、液滴吐出条件を生成する例について説明する。なお、説明の関係上、第1実施形態と同様の構成については適宜省略して説明する。
【0064】
図10は、本実施形態における液滴吐出方法を示すフロー図S100Bである。図10に示すように、本実施形態において、取得部1101は、撮像データ(ステップS103)とともに、基板側の接触角データを取得してもよい(ステップS104B)。学習処理部1103は、撮像データとともに、基板の接触角を一つの機械学習モデルに適用してもよい(ステップS105B)。このとき、機械学習モデルは、基板上のパターンと基板側の接触角との対応関係を学習させた学習モデルである。
【0065】
基板の接触角によっては、基板に所定のサイズのパターン形成できない場合がある。そのため、基板側の接触角に応じて、生成部1105は、液滴吐出前の前処理(撥液性処理、親液性処理)を液滴吐出条件に追加してもよい。
【0066】
なお、本実施形態では、撮像データとともに、基板側の接触角を一つの機械学習モデルに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板側の接触角について別の機械学習モデルに適用して機械学習を行い、それに対応する補正係数を生成してもよい。この場合、基板上のパターンを機械学習モデルに適用することにより生成された液滴吐出条件に補正係数を組み合わせることで新たな液滴吐出条件を生成してもよい。
【0067】
したがって、本実施形態を用いることにより、静電方式による液滴吐出をさらに安定して行うことができる。
【0068】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、第2撮像部を有する液滴吐出装置について説明する。なお、第1実施形態の説明と重複する部分については、適宜省略して説明する。
【0069】
図11は、液滴吐出装置100Cの模式図である。図11に示すように、液滴吐出装置100Cは、液滴吐出装置100は、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、液滴吐出部140、撮像部160および基板保持部190に加えて、第2撮像部170を含む。
【0070】
第2撮像部170は、液滴吐出ノズル141から吐出される液滴形状を撮像することができる。撮像した撮像データ(第2撮像データともいう)は、制御部110に送信される。取得部1101は、第2撮像データを取得し、学習処理部1103は、第1撮像データとともに第2撮像データを一つの機械学習モデルに適用して機械学習を行ってもよい。この場合、機械学習モデルは、基板上のパターンと液滴の形状との対応関係を学習させた学習モデルである。
【0071】
本実施形態の場合、液滴のダイナミックな形状を把握することができるため、今までパラメータして入力されていなかった情報を用いて機械学習を行うことができる。これにより、さらに適切な液滴吐出条件を生成することができる。したがって、本実施形態を用いることにより、静電方式による液滴吐出をさらに安定して行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1撮像データとともに、第2撮像データを一つの機械学習モデルに適用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2撮像データ(液滴の形状)について別の機械学習モデルに適用して機械学習を行い、それに対応する補正係数を生成してもよい。この場合、基板上のパターンを機械学習モデルに適用することにより生成された液滴吐出条件に補正係数を組み合わせることで新たな液滴吐出条件を生成してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、撮像部160と、第2撮像部170は、別々に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。撮像部160と、第2撮像部170が一体として設けられてもよい。
【0074】
<第5実施形態>
本実施形態では、第1実施形態と異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、制御部110が機能部として分析部を有する例について説明する。なお、説明の関係上、第1実施形態と同様の構成については適宜省略して説明する。
【0075】
図12は、制御部110Dの機能ブロックである。図13に示すように、制御部110Dは、液滴吐出を実現させるプログラム(液滴吐出プログラム)において、機能部として、取得部1101、学習処理部1103、生成部1105、および吐出指示部1107に加えて分析部1109を含む。
【0076】
分析部1109は、生成された液滴吐出条件によって吐出された液滴の形状またはサイズと、あらかじめ設定された液滴の形状またはサイズとを比較分析し、液滴吐出条件を判定する機能を有する。分析結果は、機械学習モデルに適用されてもよい。これにより、適切な液滴吐出条件を生成することができる。したがって、本実施形態を用いることにより、静電方式による液滴吐出をさらに安定して行うことができる。
【0077】
<第6実施形態>
本実施形態では、第1実施形態と異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、液滴吐出部がマルチノズルヘッドを有する例について説明する。なお、説明の関係上、第1実施形態と同様の構成については適宜省略して説明する。
【0078】
(1-1.液滴吐出装置100Eの構成)
図13は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100の概略図である。図13に示すように、液滴吐出装置100Eは、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、液滴吐出部140E、撮像部160および基板保持部190を含む。
【0079】
図14Aは、マルチノズルヘッド151の一部を拡大した上面模式図である。図14Bは、マルチノズルヘッド151の一部を拡大した断面模式図である。図13図14Aおよび図14Bに示すように、液滴吐出部140Eは、インクタンク143、マルチノズルヘッド151を含む。
【0080】
マルチノズルヘッド151は、プレート部152および複数の第2液滴吐出ノズル153を含む。マルチノズルヘッド151は、マウントおよびアタッチメント(図示せず)に固定されて用いられる。第2液滴吐出ノズル153には、静電方式の液滴吐出型のインクジェットノズルが用いられる。
【0081】
プレート部152は、板状に設けられる。この例では、プレート部152は第1方向D1に延びる。プレート部152の厚さは、適宜設定される。この例では、プレート部152の厚さは10μm以上100μm以下である。
【0082】
第2液滴吐出ノズル153は、上部においてプレート部152の一面(下面)に接続されて設けられる。第2液滴吐出ノズル153は、第1方向D1に並んで配置されるが、適宜第2方向D2にも配置されてもよい。第2液滴吐出ノズル153は、先細る形状を有する。
【0083】
プレート部152は、第2液滴吐出ノズル153と対応する部分(重畳する部分)に第2液滴吐出ノズル153の吐出口(第2液滴吐出ノズル153の先端部153a)の内径r153aよりも大きい内径r152oを有する貫通孔152oを有する。プレート部152の貫通孔の内径は、1μm以上100μm以下であってもよい。第2液滴吐出ノズル153の先端部153aの内径は、数百nm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下であってもよい。本実施形態においては、各々の第2液滴吐出ノズル153に設けられた電極155に対して電圧を印加することができる。電極155には、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタン、金、銀、銅、白金などが設けられてもよい。
【0084】
本実施形態の場合、基板上のパターンに応じてノズルごとに液滴吐出条件を生成してもよい。これにより、パターンの有無、形状、サイズ等に応じて適切な液滴吐出条件を設定することができるとともに、複数のノズルを用いて液滴を吐出することによりパターン形成時間を短縮することができる。
【0085】
また、本実施形態において、液滴吐出ノズルの形状を機械学習モデルに適用してもよい。これにより、シングルノズル、マルチノズルの違いに応じて適切な液滴吐出条件を生成することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、各第2液滴吐出ノズル153に電極が設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電極155を有さずに第2液滴吐出ノズル153およびプレート部152に電圧を直接印加してもよいし、第2液滴吐出ノズル153に貯蔵されたインクに電圧を印加してもよい。また、第2液滴吐出ノズル153、プレート部152またはインクに対して電圧を印加する例を示したが、マルチノズルヘッド151を保持する治具(例えば、マウントまたはアタッチメント)に電圧が印加されてよい。
【0087】
(変形例)
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、各実施形態の組み合わせ若しくは設計変更を行ったもの、又は、処理の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0088】
(変形例1)
本発明の第1実施形態では、基板を撮像して、撮像データを取得する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板上に形成されているパターンに対応する形状データ(設計データ)を取得して、機械学習モデルに適用してもよい。
【0089】
(変形例2)
本発明の第1実施形態では、生成される液滴吐出条件として、基板-液滴吐出ノズル間の距離303、吐出電圧305、液滴吐出するときにパルス電圧を印加する周波数307を含む例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、液滴吐出条件は、走査速度、吐出量、吐出位置(座標)などの別のパラメータを適宜含んでもよい。
【0090】
(変形例3)
本発明の一実施形態では、湿度および液滴吐出ノズルの径の少なくともいずれかを機械学習モデルに適用することにより液滴吐出条件を生成してもよい。この場合、機械学習モデルは、基板上のパターンと、静電型液滴吐出ノズルの形状および湿度の少なくともいずれかとの対応関係を学習させた学習モデルであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
100・・・液滴吐出装置,110・・・制御部,115・・・記憶部,120・・・電源部,130・・・駆動部,140・・・液滴吐出部,141・・・液滴吐出ノズル,141a・・・先端部,143・・・インクタンク,145・・・電極,151・・・マルチノズルヘッド,152・・・プレート部,152o・・・貫通孔,153・・・第2液滴吐出ノズル,153a・・・先端部,155・・・電極,160・・・撮像部,170・・・第2撮像部,190・・・基板保持部,200・・・基板,300・・・液滴吐出条件データセット,301・・・パターン識別子,303・・・距離,305・・・吐出電圧,410・・・線形パターン,410fc・・・重畳部,420・・・円形パターン,1101・・・取得部,1103・・・学習処理部,1105・・・生成部,1107・・・吐出指示部,1109・・・分析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B