IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -車両用空調装置 図1
  • -車両用空調装置 図2
  • -車両用空調装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162907
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B60H1/34 671Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078889
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211FA02
3L211FA03
3L211FA22
3L211FB08
3L211GA03
3L211GA04
3L211GA10
3L211GA29
(57)【要約】
【課題】車両用空調装置の更なる省電力化を実現する。
【解決手段】車両用空調装置10の制御部46は、ユーザが乗車中の期間に、空調の種類に応じて選択した吹き出し口(冷房の場合はサイド/センタレジスタ吹き出し口28B(Vent)、暖房の場合は足下吹き出し口28C(Heat))から空気を吹き出させる通常空調制御を行うと共に、ユーザが乗車するよりも前の期間に、通常空調制御よりも多数の吹き出し口(サイド/センタレジスタ吹き出し口28Bおよび足下吹き出し口28C)から空気を各々吹き出させるプレ空調制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが乗車中の期間に、空調の種類に応じて選択した吹き出し口から空気を吹き出させる通常空調制御を行うと共に、ユーザが乗車するよりも前の期間に、前記通常空調制御よりも多数の吹き出し口から空気を吹き出させるプレ空調制御を行う制御部を含む車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレ空調の指示が行われると、車室内下部へ向けて空気を吹き出し、乗員の乗車を検出した場合に、吹き出し口を切り替えて、車室内上部へ向けて空気を吹き出す制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-55315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用空調装置における電力消費の削減は、常に改善が求められている重要な課題である。
【0005】
本開示は上記事実を考慮して成されたもので、更なる省電力化を実現できる車両用空調装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る車両用空調装置は、ユーザが乗車中の期間に、空調の種類に応じて選択した吹き出し口から空気を吹き出させる通常空調制御を行うと共に、ユーザが乗車するよりも前の期間に、前記通常空調制御よりも多数の吹き出し口から空気を吹き出させるプレ空調制御を行う制御部を含んでいる。
【0007】
第1の態様では、ユーザが乗車するよりも前の期間に、通常空調制御よりも多数の吹き出し口から空気を吹き出させるプレ空調制御を行う。これにより、プレ空調制御での空気の吹き出しにおける圧力損失が低減されることで、車両用空調装置の更なる省電力化を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、車両用空調装置の更なる省電力化を実現できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図2】空調制御処理の一例を示すフローチャートである。
図3】プレ空調制御の開始タイミングおよび通常空調制御の開始タイミングの一例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る車両用空調装置10は、コンプレッサ12、コンデンサ14、膨張弁16及びエバポレータ18を含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが実現される。
【0011】
エバポレータ18は、圧縮され液化された冷媒を気化することで、エバポレータ18を通過する空気を冷却する。この時、エバポレータ18を通過する空気は、エバポレータ18によって冷却され、空気中の水分が結露されることで除湿される。冷媒循環路のうちエバポレータ18の上流側に設けられた膨張弁16は、液化している冷媒を急激に減圧することで、霧状にしてエバポレータ18へ供給し、エバポレータ18での冷媒の気化効率を向上させる。
【0012】
本実施形態において、コンプレッサ12は電動式とされ、車両の原動機(例えば、エンジンやモータ等)が動作していない場合でもモータ20によって冷媒の循環が可能とされている。なお、車両の原動機が動作している時には、車両の原動機によってコンプレッサ12を駆動してもよい。また、車両の原動機を使用する場合は、電動式のコンプレッサに代えて機械式のコンプレッサを適用してもよい。
【0013】
また、エバポレータ18は空調ダクト22の内部に設けられている。空調ダクト22は両端が開口しており、一方の開口端には空気吸い込み口24、26が形成されている。空気吸い込み口26は、車両外部と連通し、空調ダクト22内に外気を導入可能とされている。また、空気吸い込み口24は、車室内と連通し、車室内から空気(内気)を導入可能とされている。空気吸い込み口24、26の近傍には、吸い込み口切換ダンパ30が設けられている。吸い込み口切換ダンパ30は、吸い込み口切換ダンパ用アクチュエータ32の駆動力により、空気吸い込み口24、26を排他的に開閉させる。
【0014】
また空調ダクト22の他方の開口端には、車室内へ向けて開口された複数の空気吹き出し口28(図1では、一例として28A、28B、28Cを図示)が形成されている。また、本実施形態において、空気吹き出し口28は、ウインドシールドガラスへ向けて空気を吹き出すデフロスタ吹き出し口28A(DEF)、車室内上部へ向けて空気を吹き出すサイド/センタレジスタ吹き出し口28B(Vent)、車室内下部へ向けて空気を吹き出す足下吹き出し口28C(Heat)とされている。
【0015】
空気吹き出し口28の近傍には吹き出し口切換ダンパ42が設けられている。本実施形態では、吹き出し口切換ダンパ42によって空気吹き出し口28A、28B、28Cを開閉することにより、所望の吹き出し口から車室内へ空気を吹き出すことができる。なお、この吹き出し口切換ダンパ42の作動は、制御部46(後述)が空調設定に応じて吹き出し口切換ダンパ用アクチュエータ44を駆動することによって行われる。
【0016】
また、空調ダクト22内には、エバポレータ18と空気吸い込み口24、26との間にブロアファン27が設けられている。ブロアファン27は、ブロアモータ34の駆動によって回転して、空気吸い込み口24または空気吸い込み口26から空調ダクト22内に空気を吸引し、さらにこの空気をエバポレータ18へ向けて送出する。この時、吸い込み口切換ダンパ30による空気吸い込み口24、26の開閉状態に応じて、空調ダクト22内に外気又は内気が導入される。すなわち、吸い込み口切換ダンパ30によって内気循環モードと外気導入モードが切換えられる。
【0017】
空調ダクト22内のうちエバポレータ18の下流側には、エアミックスダンパ36及びヒータコア38が設けられている。エアミックスダンパ36は、エアミックスダンパ用アクチュエータ40の駆動によって回動し、エバポレータ18を通過した空気のうち、ヒータコア38を通過する空気の量とヒータコア38をバイパスする空気の量との比率を調整する。ヒータコア38は、エアミックスダンパ36によって案内された空気を加熱する。
【0018】
エバポレータ18を通過した空気は、エアミックスダンパ36の開度に応じてヒータコア38へ案内されて加熱され、さらに、ヒータコア38によって加熱されていない空気と混合された後に、空気吹き出し口28へ向けて送出される。車両用空調装置10では、エアミックスダンパ36をコントロールしてヒータコア38により加熱される空気の量を調節することで、空気吹き出し口28から車室内へ向けて吹き出す空気の温度調整を行う。
【0019】
また車両用空調装置10は、車両用空調装置10の各種制御を行う制御部46を備えている。制御部46は、ブロアファン27の回転速度を制御するブロアファン速度制御部48、吸い込み口切換ダンパ用アクチュエータ32、エアミックスダンパ用アクチュエータ40、吹き出し口切換ダンパ用アクチュエータ44、コンプレッサ12を回転駆動するモータ20を制御する制御スイッチ50、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56、車両用空調装置10の温度設定や吹き出し口28の選択等を行うための操作部58及びユーザの乗車を検出する乗車検出センサ60が接続されている。なお、乗車検出センサ60は、ドアの開閉を検出するドアスイッチでもよいし、車両のシートへのユーザの着座を検出する着座センサでもよい。
【0020】
制御部46は、外気温センサ52、車室内温度センサ54、日射センサ56及び乗車検出センサ60の検出値などが入力される。制御部46は、各センサの検出値に基づき操作部58を介した設定等に応じた各種制御を行う。なお、ブロアファン速度制御部48は、パワートランジスタのようなものを適用することができ、パワートランジスタを適用する場合には、パワートランジスタのベースにかかる電圧のデューティ比を変えることでブロアファン27の回転速度を変更可能である。
【0021】
なお、車両用空調装置10は、ユーザが乗車する前に予め空調するプレ空調機能を備えており、車両に搭載されたバッテリの電力を利用してコンプレッサ12や各種モータを駆動することが可能とされている。また、本実施形態ではバッテリの電力を利用してプレ空調を行うが、プレ空調時にバッテリの電力を用いずに、エンジンやモータ等の原動機の動力を使用してもよい。
【0022】
次に本実施形態の作用として、車両用空調装置10の制御部46で実行される空調制御処理について、図2を参照して説明する。空調制御処理のステップ100において、制御部46は、プレ空調制御の開始タイミングおよび通常空調制御の開始タイミングを認識する。本実施形態では、制御開始タイミングの設定パターンとして、ユーザが車両に乗車する時刻が予め設定される第1のパターンと、プレ空調制御の開始時刻が予め設定される第2のパターンと、ユーザが車両に乗車する時刻およびプレ空調制御の開始時刻が予め各々設定される第3のパターンと、が設けられており、何れかのパターンが選択される。
【0023】
第1のパターンが選択された場合(図3(A)も参照)、制御部46は、プレ空調制御で車室内の温度を目標温度に到達させる所要時間Tを演算し、予め設定されたユーザの乗車時刻を通常空調制御の開始タイミングと認識し、通常空調制御の開始タイミングよりも所要時間Tだけ前の時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識する。また、第2のパターンが選択された場合(図3(B)も参照)、制御部46は、予め設定されたプレ空調制御の開始時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識し、乗車検出センサ60によってユーザの乗車が検出されたタイミングを通常空調制御の開始タイミングと認識する。また、第3のパターンが選択された場合(図3(C)も参照)、制御部46は、予め設定されたプレ空調制御の開始時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識し、予め設定されたユーザの乗車時刻を通常空調制御の開始タイミングと認識する。
【0024】
なお、ユーザによるパターンの選択および各種時刻の設定は、例えば操作部58を介して行うことができるが、これに限定されるものではなく、例えば制御部46と無線通信可能とされたスマートフォンなどの携帯端末を介して上記の選択・設定が行われるようにしてもよい。
【0025】
ステップ102において、制御部46は、ステップ100で認識したプレ空調開始タイミングが到来したか否か判定する。ステップ102の判定が否定された場合は、判定が肯定されるまでステップ102を繰り返す。ステップ102の判定が肯定された場合はステップ104へ移行する。
【0026】
ステップ104において、制御部46は、後述する通常空調制御よりも空気の吹き出しにおける圧力損失が低く、車室内全体に空気を送れる吹き出しモード、具体的には、車室内上部へ向けて空気を吹き出し可能なサイド/センタレジスタ吹き出し口28B(Vent)と、車室内下部へ向けて空気を吹き出す足下吹き出し口28C(Heat)と、から各々空気を吹き出す吹き出しモード(バイレベルモードともいう)で、車室内の温度を目標温度に到達させるプレ空調制御を実行する。
【0027】
次のステップ106において、制御部46は、ステップ100で認識した通常空調開始タイミングが到来したか否か判定する。ステップ106の判定が否定された場合はステップ104に戻り、ステップ106の判定が肯定されるまでステップ104、106を繰り返すことでプレ空調制御を継続する。また、ステップ106の判定が肯定された場合はステップ108へ移行する。
【0028】
ステップ108において、制御部46は、空調設定に応じた吹き出しモード、具体的には、冷房の場合にはサイド/センタレジスタ吹き出し口28B(Vent)から冷風を吹き出し、暖房の場合には足下吹き出し口28C(Heat)から温風を吹き出すモードで、頭寒足熱を考慮した冷房または暖房を行う通常空調制御を実行する。次のステップ110において、制御部46は、ユーザが降車したか否か判定する。ステップ110の判定が否定された場合はステップ108に戻り、ステップ110の判定が肯定されるまでステップ108、110を繰り返すことで通常空調制御を継続する。そして、ステップ110の判定が肯定された場合は空調制御処理を終了する。
【0029】
このように、本実施形態において、制御部46は、ユーザが乗車中の期間に、空調の種類に応じて選択した吹き出し口から空気を吹き出させる通常空調制御を行うと共に、ユーザが乗車するよりも前の期間に、通常空調制御よりも多数の吹き出し口から空気を吹き出させるプレ空調制御を行う。これにより、プレ空調制御での空気の吹き出しにおける圧力損失が低減されることで、車両用空調装置10の省電力化を実現することができる。
【0030】
また、プレ空調制御での空気の吹き出しにおける圧力損失が従来よりも低減されることで、図3(A)~(C)に示すように、プレ空調制御時における室温の変化の傾きが従来よりも大きくなる。これにより、第1のパターンにおいては、図3(A)に示すように、プレ空調制御の開始タイミングを従来よりも遅くすることができ、プレ空調制御の実行時間を従来よりも短くすることができることで、省エネ化に繋がる。また、第2のパターンにおいては、図3(B)に示すように、プレ空調制御により車室内の温度が目標温度に到達する時刻が従来よりも早くなることで、ユーザが乗車して走行を開始できる時刻の早期化に繋がる。また、第3のパターンにおいては、図3(C)に示すように、ユーザが乗車した時点での車室内の室温と目標温度との差が従来よりも小さくなることで、ユーザの快適性の向上に繋がる。
【0031】
なお、上記ではプレ空調制御として、サイド/センタレジスタ吹き出し口28B(Vent)および足下吹き出し口28C(Heat)から空気を吹き出させる制御を行う態様を説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、上記の2つの吹き出し口に加えて、ウインドシールドガラスへ向けて空気を吹き出すデフロスタ吹き出し口28A(DEF)からも空気を吹き出させる制御を行うようにしてもよい。
【0032】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0033】
(付記1)
ユーザが乗車中の期間に、空調の種類に応じて選択した吹き出し口から空気を吹き出させる通常空調制御を行うと共に、ユーザが乗車するよりも前の期間に、前記通常空調制御よりも多数の吹き出し口から空気を吹き出させるプレ空調制御を行う制御部を含む車両用空調装置。
【0034】
(付記2)
前記制御部は、ユーザが車両に乗車する時刻が予め設定された場合、プレ空調制御で車室内の温度を目標温度に到達させる所要時間Tを演算し、予め設定されたユーザの乗車時刻を通常空調制御の開始タイミングと認識し、通常空調制御の開始タイミングよりも所要時間Tだけ前の時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識する付記1記載の車両用空調装置。
【0035】
(付記3)
前記制御部は、プレ空調制御の開始時刻が予め設定された場合、予め設定されたプレ空調制御の開始時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識し、乗車検出センサによってユーザの乗車が検出されたタイミングを通常空調制御の開始タイミングと認識する付記1記載の車両用空調装置。
【0036】
(付記4)
前記制御部は、ユーザが車両に乗車する時刻およびプレ空調制御の開始時刻が予め各々設定された場合、予め設定されたプレ空調制御の開始時刻をプレ空調制御の開始タイミングと認識し、予め設定されたユーザの乗車時刻を通常空調制御の開始タイミングと認識する付記1記載の車両用空調装置。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用空調装置
28B サイド/センタレジスタ吹き出し口
28C 足下吹き出し口
44 吹き出し口切換ダンパ用アクチュエータ
46 制御部
60 乗車検出センサ
図1
図2
図3