(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162909
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ミキサドラムの制御装置
(51)【国際特許分類】
B60P 3/16 20060101AFI20241114BHJP
B28C 5/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60P3/16 A
B28C5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078891
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CA01
4G056CB23
4G056CC11
4G056CD08
4G056CD61
4G056CD64
4G056CE05
4G056DA05
(57)【要約】
【課題】ミキサドラムへの生コンクリートの不正投入を困難にする。
【解決手段】コントローラ20は、ミキサ車1のミキサドラム2を制御するミキサドラム2の制御装置であって、ミキサ車1がミキサドラム2への生コンの投入施設である生コンプラント付近にいるときに、ミキサドラム2が生コンを積載した状態である場合は、ミキサドラム2の回転速度Nを制限する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車のミキサドラムを制御するミキサドラムの制御装置であって、
前記ミキサ車が前記ミキサドラムへの生コンクリートの投入施設又は当該投入施設付近にいるときに、前記ミキサドラムが生コンクリートを積載した状態である場合は、前記ミキサドラムの回転速度を生コンクリート投入時の前記ミキサドラムの回転速度である投入回転速度よりも低く制限する、
ことを特徴とするミキサドラムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサドラムの制御装置であって、
前記ミキサドラムの回転速度を生コンクリート運搬時の前記ミキサドラムの回転速度である運搬回転速度に制限する、
ことを特徴とするミキサドラムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミキサドラムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、残水の検知開始指示や検知結果を利活用し、ドラムに生コンクリートを積込む作業とも連動可能なコンクリートミキサー車のシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、生コンプラントにおいて、ミキサ車のミキサドラムには、建築現場等の現場で必要な分の生コンクリートが投入される。しかしながら、現場で生コンクリートが不足する事態を避けるために、必要以上の生コンクリートをミキサドラムに投入した場合など、投入した生コンクリートが現場で使い切られずに余る場合がある。
【0005】
生コンプラントにおいて、余った生コンクリートが未排出のまま、新たな生コンクリートをミキサドラムに投入する不正投入が行われると、未排出の古い生コンクリートと混ざり合ってしまい、品質低下を招く。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、ミキサドラムへの生コンクリートの不正投入を困難にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ミキサ車のミキサドラムを制御するミキサドラムの制御装置であって、ミキサ車がミキサドラムへの生コンクリートの投入施設又は投入施設付近にいるときに、ミキサドラムが生コンクリートを積載した状態である場合は、ミキサドラムの回転速度を生コンクリート投入時のミキサドラムの回転速度である投入回転速度よりも低く制限することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、生コンクリートを積載した状態でミキサ車が投入施設又は投入施設付近にいれば、ミキサドラムの回転速度を投入回転速度よりも低く制限する。このため、ミキサドラムに生コンクリートを投入しても、ミキサドラム内で生コンクリートを前方に十分送ることができなくなり、結果として、予定の生コンクリート量を投入するのに多くの時間を要することになる。従って、生コンクリートを投入することに対して支障を生じさせることができる。
【0009】
また、本発明は、ミキサドラムの回転速度を生コンクリート運搬時のミキサドラムの回転速度である運搬回転速度に制限することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ミキサドラム内の生コンクリートの固化を防止しつつも、生コンクリートの投入に支障が生じるようにミキサドラムの回転速度を適切に制限することができる。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明によれば、ミキサドラムへの生コンクリートの不正投入を困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施形態に係るミキサ車を上方から見た平面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るミキサ車を後方から見た背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るミキサ車の要部を示す構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る回転速度制限制御の一例をフローチャートで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1A,Bに示すように、ミキサ車1は、架装物であるミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等の生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両であり、運転室11と架台3とを備える。
【0015】
ミキサ車1は、車両上に回転自在に搭載されたミキサドラム2と、ミキサドラム2の駆動を制御し、ミキサドラム2の制御装置を構成するコントローラ20と、を備える。
【0016】
ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、図示しないドラムブレードがドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの攪拌等が行われる。
【0017】
ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コンプラントにおいてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0018】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を駆動源として、駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。
【0019】
図2はミキサ車1の要部を示す構成図であり、
図2では要部としてミキサドラム2や駆動装置4等とともにコントローラ20を示す。
図2に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、エンジン10によって駆動装置4を駆動させる際に図示しないアクチュエータを介してコントローラ20により制御される。また、エンジン10には、エンジン10の回転速度を検出し、検出された回転速度に応じた信号をコントローラ20へ出力する回転センサ10bが設けられる。
【0020】
駆動装置4を駆動する際のエンジン10の回転数は、回転センサ10bによって検出された回転速度が所定の大きさとなるように、スロットル弁10aを介してコントローラ20により制御される。なお、回転センサ10bは、駆動装置4の入力軸である後述のPTO軸9やドライブシャフト8の回転速度を検出するものであってもよいし、後述の油圧ポンプ5の回転速度を検出するものであってもよい。
【0021】
エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take-off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0022】
駆動装置4は、エンジン10によって駆動され作動流体としての作動油を吐出する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油によって作動しミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油の流れを制御する電磁比例弁31と、を有する。なお、駆動装置4では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体が用いられてもよい。
【0023】
油圧ポンプ5は、PTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動される。油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源は、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。
【0024】
油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5から吐出された作動油は油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が回転する。油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達される。油圧ポンプ5は、ポンプ吐出圧が導かれるアクチュエータ(図示省略)の作動により、アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧が上昇するほど、斜板を付勢する傾転スプリングに抗してポンプ吐出量が小さくなるように制御される。アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧は、ロードセンシング弁(図示省略)によって調整される。ロードセンシング弁は、油圧ポンプ5の吐出圧と油圧モータ6に供給される圧力(負荷圧)との差圧が所定値となるようにアクチュエータに導かれるポンプ吐出圧を調整する。
【0025】
油圧ポンプ5によってミキサドラム2が正転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンが攪拌される。一方、油圧ポンプ5によってミキサドラム2が逆転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンが後端の開口部2aからフローガイド17及びシュート18を介して外部へと排出される。
【0026】
油圧モータ6は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6は、コントローラ20からの二速切換信号を受信して斜板(図示省略)の傾転角を調整する電磁弁(図示省略)を備える。油圧モータ6の容量は、電磁弁が切り換えられることによって、高速回転用の小容量(2速)と通常回転用の大容量(1速)との二段階に切り換えられる。油圧モータ6は、容量が無段階で切り換えられるものであってもよい。
【0027】
油圧モータ6には、回転数検知器としての回転センサ6aと圧力検知器としての圧力センサ6bとが設けられる。回転センサ6aは、油圧モータ6の出力軸の回転方向と回転数を検知し、コントローラ20に回転方向信号と回転数信号とを出力する。圧力センサ6bは、油圧によるミキサドラム2の駆動圧を検出する。圧力センサ6bは油圧ポンプ5に設けられ、駆動圧としてポンプ吐出圧を検出してもよい。
【0028】
油圧ポンプ5と油圧モータ6の間には、閉回路Lが設けられ、この閉回路Lを作動油が循環するようになっている。この閉回路L中に電磁比例弁31が設けられる。電磁比例弁31は、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を正回転させるように油圧モータ6に導く正転位置31Aと、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を逆回転させるように油圧モータ6に導く逆転位置31Bと、油圧ポンプ5から油圧モータ6への間の作動油の流れを遮断する中立位置31Cと、を備える。
【0029】
電磁比例弁31は、一対のソレノイド32a,32b及び一対のリターンスプリング33a,33bを有する。一対のソレノイド32a,32bは、コントローラ20から出力される制御信号によって作動する。制御信号とは、具体的には電流値である。この電流値を調整することで、電磁比例弁31は、正転位置31A、中立位置31C、及び逆転位置31Bによりそのポジションが無段階に切り換えられる。
【0030】
電磁比例弁31は、一方のソレノイド32aへ通電されることで、その通電量に応じた開度で正転位置31Aに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を正転方向に回転させるように供給される。
【0031】
反対に、電磁比例弁31は、他方のソレノイド32bへ通電されることで、その通電量に応じた開度で逆転位置31Bに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を逆転方向に回転させるように供給される。なお、電磁比例弁31は、ソレノイド32a,32bへの通電量が大きいほど、開度が大きくなり多くの流量が油圧モータ6に導かれる。
【0032】
電磁比例弁31は、一対のソレノイド32a,32bへの通電が遮断されると、一対のリターンスプリング33a,33bの付勢力によって中立位置31Cに切り換えられる。中立位置31Cでは、油圧モータ6への作動油の供給が遮断されるため、油圧モータ6は回転駆動されない。
【0033】
上記構成の駆動装置4では、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることで油圧モータ6が回転し、供給される作動油の流れの向き、流量や油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転速度及び回転方向が変更される。
【0034】
駆動装置4の出力軸、すなわち油圧モータ6の出力軸は、減速機7を介してミキサドラム2の回転軸Oに連結される。このため、油圧モータ6の回転速度を増減することによって、ミキサドラム2の回転速度Nを増減させることが可能であり、油圧モータ6の回転方向を切り換えることによって、ミキサドラム2の回転方向を正回転方向である投入方向と逆回転方向である排出方向とに切り換えることが可能である。
【0035】
このように、ミキサドラム2の回転数及び回転方向は、油圧モータ6の回転数及び回転方向に相関することから、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値からミキサドラム2の回転数及び回転方向を把握することが可能である。なお、回転センサ6aは、油圧モータ6に代えて、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を検出するものであってもよい。
【0036】
ミキサドラム2が投入方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動する。一方、ミキサドラム2が排出方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら後方へと移動する。
【0037】
このようにミキサドラム2を投入方向とは反対の方向である排出方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出できる。ミキサドラム2から排出された生コンは、フローガイド17及びシュート18を介して所定位置に誘導される。
【0038】
なお、ホッパ16を介して、ミキサドラム2内へ生コンを投入する場合には、攪拌時よりもミキサドラム2を高速で投入方向に回転させることで、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。
【0039】
コントローラ20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAM等をROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって、駆動装置4の作動が制御される。
【0040】
コントローラ20は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、コントローラ20は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。また、コントローラ20は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態における各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0041】
コントローラ20には上記のように、油圧モータ6の回転センサ6a及び圧力センサ6bと、エンジン10の回転センサ10bと、が接続され、これらのセンサ類で検出された検出値が入力される。また、コントローラ20には上記のように、電磁比例弁31と、エンジン10のスロットル弁10aと、が接続され、これらを作動させる指令値がコントローラ20から出力される。
【0042】
コントローラ20にはさらに、ミキサ車1の位置を検出するGNSS(Global Navigation Satelite System)モジュール21と、ミキサドラム2の積載量を検出する積載量センサ22と、が接続される。
【0043】
GNSSモジュール21は、GNSS受信機と、地図データベースと、ナビゲーション装置とを含む。GNSS受信機は、測位衛星からの電波を受信し、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づき測位衛星までの距離を算出するとともに、測位衛星までの距離と測位衛星の位置とに基づきミキサ車1の現在位置を検出する。地図データベースは、地図情報を格納したデータベースである。ナビゲーション装置は、ユーザの操作によってミキサ車1の走行ルートを設定可能であり、走行ルートの設定にはGNSS受信機が検出したミキサ車1の現在位置や地図データベースの地図情報が用いられる。GNSSモジュール21が検出したミキサ車1の現在位置は、位置情報としてコントローラ20に入力される。GNSSモジュール21は情報取得装置に相当する。
【0044】
積載量センサ22は、ミキサドラム2の重量を測定する。積載量センサ22の検出値は、コントローラ20に入力される。
【0045】
コントローラ20は、GNSSモジュール21からミキサ車1の現在位置や地図情報を含むミキサ車1の位置情報や各種の設定情報等の情報を取得する情報取得部20aと、積載量センサ22の検出値と圧力センサ6bの検出値とに基づき、演算結果の一つとしてミキサドラム2の生コンの積載量を演算する積載量演算部20bと、情報取得部20aが取得した情報に基づきミキサ車1がミキサドラム2への生コンの投入施設としての生コンプラント付近にいるか否かを判定する第1判定部20cと、積載量演算部20bが演算した積載量(後述する積載量検出部Dが検出した積載量)に基づき、ミキサドラム2が生コンを積載した状態(生コン積載状態)か否かを判定する第2判定部20dと、第1判定部20c及び第2判定部20dの判定結果に基づき、ミキサドラム2の回転速度Nを制限する回転速度制限部20eと、を有する。
【0046】
なお、これら情報取得部20a等は、コントローラ20の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。また、上記機能はコントローラ20が実行する制御の一部であり、コントローラ20ではこれら以外の機能に関連する制御も随時実行される。
【0047】
次に、
図2に示すコントローラ20の各構成について更なる説明を適宜行いつつ、ミキサドラム2の制御装置としてのコントローラ20が行う制御を
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0048】
図3は、回転速度制限制御の一例をフローチャートで示す図である。
図3に示すフローチャートの処理は、コントローラ20とGNSSモジュール21とにより構成されたミキサドラム2の制御装置によって行われてもよく、以下で説明するようにミキサ車1が所定エリア内にいることを判定(検出)するといった処理をGNSSモジュール21で行ってもよい。
図3に示すフローチャートの処理は、所定周期毎に繰り返し実行することができる。
【0049】
ステップS1では、ミキサ車1の位置情報に基づきミキサ車1が所定エリア内にいるか否かが判定される。所定エリアは、生コンプラントに対応するエリアであり、ミキサ車1が現場を含む生コンプラント外から生コンの投入施設である生コンプラントに戻ってきたか否かを判定するために、GNSSモジュール21のナビゲーション装置を用いて予め設定される。所定エリアは、現在位置の検出精度や設定エリアの指定方法等に応じて、生コンプラントそのもののエリアに対し余裕を持って設定された生コンプラント付近であってよく、生コンプラントそのもののエリアとされてもよい。ステップS1は、第1判定部20cに対応する。
【0050】
ステップS1で否定判定であった場合は、所定周期後に本フローチャートの処理が再開される。ステップS1で肯定判定であれば、処理はステップS2に進む。
【0051】
ステップS2では、積載量演算部20bの演算結果に基づき、生コン積載状態であるか否かが判定される。積載量演算部20bは、積載量センサ22の検出値に基づき、当該検出値とミキサドラム2の空重量との差分を演算することで、ミキサドラム2の積載量を演算する。ミキサドラム2の空重量には、ミキサドラム2が空の状態で予め測定した値を適用できる。
【0052】
積載量演算部20bは、積載量が所定値以上か否かを判定することで、ミキサドラム2が生コン積載状態であるか否かを判定する。当該所定値は、ミキサドラム2が生コン積載状態か否かを判定するための判定値(換言すれば、ミキサドラム2が生コン無積載状態か否かを判定するための判定値)であり、予め設定される。生コン無積載状態は生コンを積載していない状態であり、ミキサドラム2の内壁に付着している生コンが残っている場合など、無積載状態とみなされるみなし無積載状態を含む。
【0053】
水と生コンとでは粘性が異なり、生コンはミキサドラム2内に付着することから生コンを積載している場合は水を積載している場合と比べ、ミキサドラム2の駆動負荷は十分な有意差が得られる程度に高くなる。
【0054】
このため、生コン積載状態か否かを判定するにあたり、積載量演算部20bはさらに、圧力センサ6bの検出値に基づきミキサドラム2の積載物が生コンであることを検出する。このような検出には、公知技術のほか適宜の技術を用いることができる。積載量演算部20bは、所定周期毎に積載量を検出することができ、逐次積載量を検出する。
【0055】
積載量センサ22と圧力センサ6bとは、積載量演算部20bとともに積載量検出部D(
図2参照)を構成する。積載量検出部Dは、ミキサドラム2に生コンが積載されていることを検出する積載検出部を兼ねる。積載量センサ22は例えば、ミキサドラム2内の生コンの残量を検出するように構成されてもよく、積載量検出部Dは、センサ単体で構成されてもよい。また、積載量を検出することは、積載量を推定することを含む。ステップS2は、第2判定部20dに対応する。
【0056】
生コン無積載状態と判定された場合、ステップS2で否定判定され、本フローチャートの処理は終了する。ここで、例えば、ミキサドラム2では生コンの排出後に洗浄が行われる。このため、洗浄後のミキサドラム2は生コン無積載状態になり、この場合はステップS2で否定判定されるので、本フローチャートの処理は終了する。従って、洗浄が行われた場合は、後述する回転速度Nの制限は行われない。一方、生コン積載状態と判定された場合、ステップS2で肯定判定され、処理はステップS3に進む。
【0057】
ステップS3では、ミキサドラム2の回転速度Nが制限される。これにより、相応の回転速度で生コンを投入することに対して支障を生じさせることができるので、不正投入を困難にすることができる。ステップS3では、ミキサドラム2の回転は禁止されない。これは、ミキサドラム2の回転を禁止すると、ミキサドラム2内で生コンの固化が進行してしまうためである。
【0058】
回転速度Nは正規の投入回転速度N1よりも低く制限される。これにより、ミキサドラム2に生コンを投入しても、ミキサドラム2内で生コンを前方に十分送ることができなくなり、結果として、予定の生コン量を投入するのに多くの時間を要することになる。従って、ミキサドラム2への生コンの不正投入を困難にすることができる。
【0059】
回転速度Nは、例えば、生コン運搬時のミキサドラム2の回転速度Nである運搬回転速度N2に制限される。運搬回転速度N2は例えば1回転/minであり、例えば10~15回転/min程度の投入回転速度N1と比べてかなり低い。
【0060】
このため、回転速度Nを運搬回転速度N2に制限することで、ミキサドラム2内の生コンの固化を防止しつつも、生コンの投入に支障が生じるように回転速度Nを適切に制限することができる。ステップS3の後には、本フローチャートの処理は終了する。なお、回転速度Nの制限は、生コンが排出された場合に解除できる。
【0061】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0062】
コントローラ20は、ミキサ車1のミキサドラム2を制御するミキサドラム2の制御装置であって、ミキサ車1がミキサドラム2への生コンの投入施設である生コンプラント付近にいるときに、ミキサドラム2が生コンを積載した状態である場合は、ミキサドラム2の回転速度Nを生コン投入時のミキサドラム2の回転速度Nである投入回転速度N1よりも低く制限する。
【0063】
この構成によれば、生コンを積載した状態でミキサ車1が生コンプラント付近にいれば、ミキサドラム2の回転速度Nを制限する。このため、ミキサドラム2に生コンを投入しても、ミキサドラム2内で生コンを前方に十分送ることができなくなり、結果として、予定の生コン量を投入するのに多くの時間を要することになる。従って、生コンを投入することに対して支障を生じさせることができ、不正投入を困難にすることができる。
【0064】
コントローラ20は、ミキサドラム2の回転速度Nを生コン運搬時のミキサドラム2の回転速度Nである運搬回転速度N2に制限する。
【0065】
この構成によれば、不正投入を困難にするにあたり、ミキサドラム2内の生コンの固化を防止しつつも、生コンの投入に支障が生じるようにミキサドラム2の回転速度Nを適切に制限することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0067】
上述した実施形態では、
図3のステップS2で生コン積載状態か否かを判定するにあたり、コントロ-ラ20が積載量センサ22の検出値と圧力センサ6bの検出値とに基づきミキサドラム2に生コンが積載されていることを検出した。しかしながら、コントロ-ラ20は、積載量センサ22の検出値に特段基づくことなく、圧力センサ6bの検出値に基づき、ミキサドラム2に生コンが積載されていることを検出してもよい。つまり、積載検出部としての積載量検出部Dは圧力センサ6bにより構成されてもよい。また、
図3のステップS2において、コントローラ20は、積載物があるとすれば生コンであることが前提となる条件下では、積載量センサ22の検出値に基づきミキサドラム2に生コンが積載されていることを検出してもよい。従って、コントローラ20は、積載量センサ22の検出値と圧力センサ6bの検出値のいずれか一方に基づきミキサドラム2に生コンが積載されていることを検出してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1A・・・ミキサ車、2・・・ミキサドラム、20,20A・・・コントローラ(制御装置)、N・・・回転速度、N1・・・投入回転速度、N2・・・運搬回転速度