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  • 特開-静電気散逸性保護手袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016291
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】静電気散逸性保護手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/008 20060101AFI20240130BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A41D13/008
A41D19/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203355
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2021568836の分割
【原出願日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】102019114691.7
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513032633
【氏名又は名称】ウベックス セーフティ グローブ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】クロス カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥシュ マティアス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、静電気散逸性の保護手袋およびそれに対応する保護手袋の製造方法に関する。
【解決手段】保護手袋は、ポリマーフォーム層を含み、その体積抵抗は、炭素繊維を追加することによって、所望の値に低減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の層と第2の層の2つの層からなる保護手袋であって、前記第1の層がポリマーフォーム層であり、前記ポリマーフォーム層が前記保護手袋の外側の層にあり、前記ポリマーフォーム層が、3μmから9μmの直径を有する炭素繊維の固形分を4.0wt.%~1.0wt.%含有するラテックス化合物を含み、DIN EN 16350によって測定された前記保護手袋の体積抵抗が、10Ω未満であること、を特徴とする、保護手袋。
【請求項2】
前記ポリマーフォーム層が、ニトリル、クロロプレン、イソプレン、天然ラテックス、またはポリウレタンゴム、もしくはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の保護手袋。
【請求項3】
前記ポリマーフォーム層が、実質的にニトリルゴムを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の保護手袋。
【請求項4】
前記第2の層が、織物基材によって形成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護手袋。
【請求項5】
導電糸が、前記織物基材に配合されていることを特徴とする、請求項4に記載の保護手袋。
【請求項6】
前記第2の層が、非発泡ポリマー層によって形成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護手袋。
【請求項7】
保護手袋の製造方法であって、前記ポリマーフォーム層の製造が、
a.ラテックス化合物を供給する工程と、
b.前記ラテックス化合物に3μm~9μmの直径を有する炭素繊維の固形分を4.0wt.%~1.0wt.%添加する工程と、
c.所定量の空気を機械的に配合することによって、前記炭素繊維を含む前記ラテックス化合物を発泡させる工程と、
d.発泡した前記ラテックス化合物に浸漬用型を浸漬する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項8】
保護手袋の製造方法であって、前記方法が、
a.手の形をした浸漬用型を予熱する工程と、
b.前記浸漬用型に織物基材からなるニット製手袋を装着する工程と、
c.前記ニット製手袋を装着した前記浸漬用型を凝固性の生理食塩水に浸漬する工程と、
d.前記ニット製手袋を装着した前記浸漬用型を凝固性の生理食塩水から取り出した後、乾燥する工程と、
e.請求項7に記載の工程a~dを実行する工程と、
f.前記ニット製手袋を装着した前記浸漬用型をラテックス化合物の溶液から取り出した後、予備乾燥する工程と、
g.前記コーティングされたニット製手袋を装着した前記浸漬用型を水浴に浸漬する工程と、
h.前記コーティングされたニット製手袋を装着した前記浸漬用型を100℃~130℃の温度で乾燥させる工程と、
i.完成した保護手袋を外す工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項9】
前記ラテックス化合物がニトリルゴムを含むことを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の保護手袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気散逸性の保護手袋およびそれに対応する保護手袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電気散逸性の手袋は、保護手袋の分野で特有の役割がある。例えば、爆発の危険がある作業場では、静電気の確実な散逸が必要になる。
【0003】
耐摩耗性、グリップ性、柔軟性などの様々な特性に好ましい影響をもたらすために、保護手袋のポリマーコーティングに添加剤を配合することが知られている。
【0004】
また、コーティングの表面抵抗および/または体積抵抗を低減するために、コーティングに導電性の添加剤を配合することも知られている。例えば、導電性カーボンブラックの分散液をコーティング用のポリマー化合物に添加する。その中に含まれるカーボンブラックの粒子が球状構造であるため、所望の電気伝導度を得るには、それらを多量に使用する必要がある。
【0005】
あるいは、カーボンナノチューブのような細長い粒子を含む分散液を使用でき、この分散液は異方性特性を有するため、より少量でも効果がある。カーボンナノチューブを使用する欠点は、カーボンナノチューブが凝集しないようにするため、ポリマー化合物に高希釈分散液を添加する必要があることである。5%未満のカーボンナノチューブを有する分散液が一般的である。そのため、より多くの量の分散液を使用する必要があるが、これはポリマー化合物中のポリマーの割合を減らす場合でのみ可能である。ただし、ポリマーの割合を減らすと、例えば、ポリマー化合物のpH値または粘度などの特性に望ましくない変化が生じる。
【0006】
特に、発泡性ポリマーコーティングされている保護手袋は、絶縁性のガスポケットによって体積固有抵抗が大きくなるため、問題が生じる。また、従来の導電性添加剤の多くは、ポリマーの割合が低下すると、発泡安定性が低下するという欠点を有する。これは、発泡体が比較的短期間内に粗く、および/または高密度になることを意味しており、すなわち、発泡体がより早く崩壊する傾向がある。その結果、安定した製品品質を確保できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリマーの発泡安定性が向上したポリマーフォーム層を有する静電散逸性保護手袋を提供することである。さらに、本発明の目的は、本発明による保護手袋の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載の保護手袋および請求項8に記載の方法によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項の主題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による保護手袋は、少なくとも2つの層から構成され、第1の層が、ポリマーフォーム層である。ポリマーフォーム層は、炭素繊維を含み、その炭素繊維が体積抵抗を低減する。特に炭素繊維は、その細長い形状から、球状の粒子よりも少ない数でポリマーマトリックス内に導電路を形成できるため、本用途に適している。したがって、所望の体積抵抗を得るために、大幅に少ない数の炭素繊維をラテックス化合物に加えるだけでよい。さらに、カーボンナノチューブとは異なり、炭素繊維は、予め分散液に溶かさず、ラテックス化合物に直接添加される。したがって、ラテックス化合物の特性、例えば、ポリマー含量、粘度、pH値、ひいては作業性に対する添加剤の影響はほとんどない。また、炭素繊維の追加によって、完成した手袋の機械的特性に影響が及ぶこともほとんどない。さらに、驚くべきことに、炭素繊維は、従来の導電性添加剤と比較して、より高い発泡安定性をもたらすことが発見された。すなわち、発泡、ひいては製品品質が、炭素繊維を含まない化合物に比べて、より長い期間安定している。
【0010】
炭素繊維は、好ましくは10μmから1000μmの長さ、特に好ましくは50μmから250μmの長さを有する粉砕された炭素繊維である。これを得るために、例えば、繊維を切断するか、もしくは粉砕することが可能である。
【0011】
本発明によれば、炭素繊維の直径は、それらの長さよりも著しく小さく、好ましくは2μmから25μm、特に好ましくは3μmから9μmである。また、数本の炭素繊維からなる繊維束も考えられ、繊維束の直径はより長く、例えば、100μm以上であってもよい。また、例えば、金属化もしくは導電性のカーボンブラックでコーティングされた、様々な種類の形状に利用可能な他の導電性合成繊維または天然繊維を使用することは、当業者にとって自明である。
【0012】
発泡層は、合成ポリマーまたは天然ポリマーから構成されてもよい。好ましくは、ポリマーフォーム層は、ニトリル、クロロプレン、イソプレン、天然ラテックス、ポリウレタンゴム、またはこれらのうち1つ以上の構成要素の混合物を含む。好ましくは、発泡性ポリマーコーティングは、本発明による炭素繊維に加えて、例えば、架橋助剤、増粘剤、または着色顔料などの他の添加剤を含んでもよい。特に好ましくは、ポリマーフォーム層は、実質的にニトリルゴムから構成される。
【0013】
本発明によれば、ポリマーフォーム層は発泡している、すなわち、ガスポケットを含む。この場合、クローズドポアフォーム、オープンポアフォーム、または両方のタイプの混合物であってもよい。ポケットは、空気または別のガス、もしくはガス混合物を含んでもよく、これらを様々な方法で導入してもよい。当業者であれば、例えば、フォームミキサーまたは化学発泡を使用するのが一般的な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明による手袋の例示的な実施形態を模式的に示し、ニトリルゴム発泡層1および内側2に織物基材を有するニット製保護手袋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
保護手袋の好ましい実施形態では、手袋の第2の層は、織物基材から構成される。この種のニット製手袋により、例えば、着心地が向上し、もしくは切り傷から保護される。織物基材は使用者の肌に触れるものであり、一方ポリマーフォーム層は、手袋の外層を形成する。
【0016】
保護手袋の別の好ましい実施形態では、導電性の糸は、織物基材に組み込まれている。導電糸は、織物基材に散逸性をもたらす。導電糸に適した材料としては、例えば、金属性材料(例えば、鋼、銅、または銀)であってもよく、炭素繊維を含んでもよく、また別の方法で、金属化または導電的に改質した糸であってもよい。
【0017】
別の実施形態では、保護手袋は、本発明による発泡層に加えて、別の、非発泡ポリマー層を第2の層として含む。このように、本発明による発泡層に関する基材として、非発泡ポリマー層を使用することによって、不編布の手袋を提供することができる。これは、例えば、化学保護手袋に好適である。本実施形態における非発泡ポリマー層は、必要に応じて導電的改質が可能である。
【0018】
あるいは、保護手袋は、織物基材、1つ以上の非発泡ポリマー層、および本発明による発泡層を含む、多層系から構成されてもよい。また、すべての追加層は、導電的に改質されてもよい。対応する実施形態では、保護手袋は、例えば、本発明による織物基材とポリマーフォーム層との間に非発泡ポリマー層を含む。その結果、本発明によれば、非発泡層の防水性およびポリマー層の散逸性に織物の快適な着心地を組み合わせることが可能である。
【0019】
さらに、同一もしくは異なるその他の織物またはポリマー層の組み合わせが考えられる。また、様々な層が異なる範囲内で手袋を覆うことも自明である。例えば、ニット製の、機械的保護手袋は、指および手の平の領域にしかコーティングされない。これに対して、化学保護手袋は、完全に、すなわち、カフ部分を含め、コーティングされているが、指および手の平の領域のみを覆う追加のグリップ層を有する場合が多い。
【0020】
別の好ましい実施形態では、本発明による保護手袋の体積抵抗は、10Ω未満である。これは、DIN EN 16350の保護手袋の要件を満たしている。本発明によれば、この体積抵抗は、ラテックス化合物中の炭素繊維の固形分を、4wt.%未満とすることで達成され得る。
【0021】
本発明に記載の保護手袋を製造するための本発明による方法は、ニトリルゴム発泡層に関する以下の工程を含む。まず、ラテックス化合物が提供される。好ましくは、ラテックス化合物は、ニトリルゴムを含むラテックス化合物である。炭素繊維をラテックス化合物に添加する。炭素繊維は、懸濁液である必要はなく、望ましくない凝集が発生することなく、ラテックス化合物に直接添加できる。次の工程で、化合物を発泡させる。発泡は、定義された量の空気をラテックス化合物に機械的に配合することによって、好ましくはフォームミキサーにおいて行われる。添加した炭素繊維によって、発泡安定性が向上する。次の、発泡後の塊は、ポンプで浸漬タンクに送られる。
【0022】
不編布保護手袋を製造するための好ましい方法では、手の形の浸漬用型を設け、炭素繊維を含む発泡ラテックス化合物に浸漬する。浸漬用型は、浸漬前に、凝固性の生理食塩水で処理されていてもよい。その後、手袋を乾燥させ、型から外す。
【0023】
ニット製保護手袋を製造するための好ましい方法では、以下の工程が行われる。まず、手の形の浸漬用型を設け、予熱する。浸漬用型は、好ましくは、アルミニウムまたはセラミック材料から構成される。予熱した浸漬用型の上に、織物基材からなるニット製手袋を装着する。好ましくは、ニット製手袋には、導電糸が散在される。特に好ましくは、ニット製手袋は、一枚布で作られた、すなわち、いわゆる「シームレス」な手袋である。次の工程では、ニット製手袋を装着した浸漬用型を凝固性の生理食塩水に浸漬する。凝固剤により、ラテックス化合物の凝固が始まる前にゴムの気泡が織物基材に完全に浸透するのを防ぐ。次の工程では、浸漬用型を生理食塩水から取り出し、乾燥させる。次に、乾燥したニット製手袋を装着した浸漬用型を、炭素繊維を含む発泡ラテックス化合物に浸漬する。その後、浸漬用型をラテックス化合物から取り出し、予備乾燥を行う。これに続いて、新たにコーティングされた織物基材が装着された浸漬用型を水浴に浸漬して、余分な凝固剤を除去する。次の工程では、コーティングされた織物基材を装着した浸漬用型を、好ましくは100℃から130℃の温度で乾燥させる。最後の工程では、完成した保護手袋を浸漬用型から外す。
【0024】
多層系のニット製保護手袋を製造するための好ましい方法では、手型上のニット製手袋を最初に凝固性生理食塩水に浸漬し、乾燥させた後、非発泡性のコーティング化合物に浸漬する。次に、コーティングされた手袋を、炭素繊維を含む発泡ラテックス化合物の中に浸漬する。その後、浸漬用型をラテックス化合物から取り出し、予備乾燥、洗浄、乾燥を経て、最後に手袋を型から外す。
【0025】
ラテックス化合物中の炭素繊維の固形分は、好ましくは4.0wt.%未満、特に好ましくは4.0wt.%~1.0wt.%である。このように固形分が少ないと、発泡の機械的特性への影響はほとんどなく、むしろ発泡安定性が増すという利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 ニトリルゴム発泡層
2 内側
図1