IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -継手 図1
  • -継手 図2
  • -継手 図3
  • -継手 図4
  • -継手 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162912
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20241114BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E04B1/24 P
E04B1/24 M
E04B1/58 503H
E04B1/58 508S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078895
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】三谷 淳
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB16
2E125AB17
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG20
2E125BB09
2E125BB18
2E125BB29
2E125BB31
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを接合することが可能な安価な継手を提供することである。
【解決手段】角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とを連結する継手10であって、軸線Oを中心とした筒状の継手本体11を有し、継手本体11は、それぞれ第1下底11a1と第1下底11a1よりも短い第1上底11a2とを有する台形形状であり、第1下底11a1を角形鋼管柱21の側に向けた姿勢で軸線Oを中心として環状に並べて配置された4枚の第1板状部11aと、それぞれ第1下底11a1よりも短い第2下底11b1と第1上底11a2と同一長さの第2上底11b2とを有する台形形状であり、第2下底11b2を角形鋼管柱21の側に向けた姿勢で隣り合う一対の第1板状部11aの間に接合された4枚の第2板状部11bと、を備え、角形鋼管柱21の側を向く一端が隅角正八角形であり、鉄骨丸柱22の側を向く他端が正八角形であることを特徴とする継手10。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結する継手であって、
軸線を中心とした筒状の継手本体を有し、
前記継手本体は、
それぞれ第1下底と前記第1下底よりも短い第1上底とを有する台形形状であり、前記第1下底を前記角形鋼管柱の側に向けた姿勢で前記軸線を中心として環状に並べて配置された4枚の第1板状部と、
それぞれ前記第1下底よりも短い第2下底と前記第1上底と同一長さの第2上底とを有する台形形状であり、前記第2下底を前記角形鋼管柱の側に向けた姿勢で隣り合う一対の前記第1板状部の間に接合された4枚の第2板状部と、を備え、
前記角形鋼管柱の側を向く一端が隅角正八角形であり、前記鉄骨丸柱の側を向く他端が正八角形であることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記継手本体の一端に接合された第1ダイアフラムと、
前記継手本体の他端に接合された第2ダイアフラムと、を有する、請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記第1板状部が梁の接合部となって仕口として用いられる、請求項1または2に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば倉庫、オフィスビル、商業ビルなどの建築物においては、躯体を構成する柱は、複数本の柱を、継手を用いて上下方向に連結して構成されるのが一般的である。
【0003】
また、上記のような建築物に用いられる柱として、継手で連結される一方側の柱を角形鋼管柱とし、他方側の柱を鉄骨丸柱としたものが知られている。
【0004】
従来、角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結する継手として、角形鋼管柱に接合される側の端部が正方形であるとともに鉄骨丸柱に接合される側の端部が円形となる筒形状のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】建築構造用鋳鋼品 製品カタログ、p2 “角丸ジョイント”、[online]、日本鋳造株式会社、[令和5年3年1日検索]、インターネット<URL:https://www.nipponchuzo.co.jp/pdf/product/CMcatalog2021.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の継手は、鋳造によって製造された鋳鋼品を切削加工して製造されたものであるため、製造コストが高く、高価である、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結することが可能な安価な継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の継手は、角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結する継手であって、軸線を中心とした筒状の継手本体を有し、前記継手本体は、それぞれ第1下底と前記第1下底よりも短い第1上底とを有する台形形状であり、前記第1下底を前記角形鋼管柱の側に向けた姿勢で前記軸線を中心として環状に並べて配置された4枚の第1板状部と、それぞれ前記第1下底よりも短い第2下底と前記第1上底と同一長さの第2上底とを有する台形形状であり、前記第2下底を前記角形鋼管柱の側に向けた姿勢で隣り合う一対の前記第1板状部の間に接合された4枚の第2板状部と、を備え、前記角形鋼管柱の側を向く一端が隅角正八角形であり、前記鉄骨丸柱の側を向く他端が正八角形であることを特徴とする。
【0009】
本発明の柱の継手は、上記構成において、前記継手本体の一端に接合された第1ダイアフラムと、前記継手本体の他端に接合された第2ダイアフラムと、を有するのが好ましい。
【0010】
本発明の柱の継手は、上記構成において、前記第1板状部が梁の接合部となって仕口として用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、角形鋼管柱と鉄骨丸柱とを連結することが可能な安価な継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る継手が用いられた建築物の躯体の一部の斜視図である。
図2図1に示す躯体の、継手の部分の断面図である
図3】(a)は、継手本体の正面図、(b)は、継手本体の平面図、(c)は、継手本体の底面図、(d)は、継手本体の(b)における矢視Aから見た図である。
図4】継手本体の下端形状と角形鋼管柱の上端形状との関係を示す説明図である。
図5】継手本体の上端形状と鉄骨丸柱の下端形状との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る継手について詳細に例示説明する。
【0014】
図1に示す建築物1の躯体2は、本発明の一実施形態に係る継手10が適用された柱20を有する躯体の一例である。この建築物1は、例えば倉庫、オフィスビル、商業ビルなどであってよい。
【0015】
柱20は、角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とが継手10によって上下方向に連結された構成となっている。角形鋼管柱21は、角形鋼管により形成された断面が正方形状の柱である。鉄骨丸柱22は、断面円形の鉄骨ないし鋼管により形成された柱である。本実施形態では、角形鋼管柱21の辺の長さ寸法と鉄骨丸柱22の外径寸法は同一であり、鉛直姿勢で配置された角形鋼管柱21の上に、継手10によって鉄骨丸柱22が同軸に連結されている。
【0016】
継手10は、角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とを上下方向に連結するものである。本実施形態では、継手10は、角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とを上下方向に連結する継手としての機能に加えて、躯体2を構成する梁30を柱20に接合する仕口としても用いられている。
【0017】
図1図2に示すように、継手10は、軸線Oを中心とした筒状の継手本体11を有している。なお、継手本体11の軸線Oは、柱20すなわち角形鋼管柱21及び鉄骨丸柱22の軸線と同軸である。
【0018】
本実施形態では、継手10は、継手本体11の下端に接合された第1ダイアフラム12と、継手本体11の上端に接合された第2ダイアフラム13とを有している。第1ダイアフラム12と第2ダイアフラム13は、それぞれ鋼板により正方形の板状に形成されており、継手本体11に溶接によって接合されている。角形鋼管柱21は第1ダイアフラム12の下面に溶接により接合され、鉄骨丸柱22は第2ダイアフラム13の上面に溶接により接合されている。
【0019】
図3に示すように、継手本体11は、4枚の第1板状部11aと、4枚の第2板状部11bとを、軸線Oを中心とした周方向に交互に接合して筒状に構成されている。
【0020】
4枚の第1板状部11aは、それぞれ鋼板により、第1下底(第1下辺部)11a1と、第1下底11a1よりも短い第1上底(第1上辺部)11a2とを有する台形形状に形成されており、第1下底11a1を角形鋼管柱21の側に向けた姿勢で軸線Oを中心として環状に並べて配置されている。それぞれの第1板状部11aの第1下底11a1は、互いに同一面上に配置されている。また、隣り合う第1板状部11aは互いに周方向に間隔を空けられている。
【0021】
4枚の第2板状部11bは、それぞれ鋼板により、第1下底11a1よりも短い第2下底(第2下辺部)11b1と、第1上底11a2と同一長さの第2上底(第2上辺部)11b2とを有する台形形状に形成されており、第2下底11b1を角形鋼管柱21の側に向けた姿勢で隣り合う一対の第1板状部11aの間に配置されている。このとき、それぞれの第2板状部11bの第2下底11b1は、何れも第1板状部11aの第1下底11a1と同一面上に配置されている。
【0022】
それぞれの第1板状部11aの一対の第1脚(第1側辺部)11a3及びそれぞれの第2板状部11bの一対の第2脚(第2側辺部)11b3は、何れも同一長さである。
【0023】
一対の第1板状部11aの間に配置された4枚の第2板状部11bは、それぞれ一対の第2脚11b3において隣接する第1板状部11aの第1脚11a3に溶接によって接合されている。これにより、継手本体11は、図3(c)に示すように、角形鋼管柱21の側を向く下端が隅角正八角形であるとともに、図3(b)に示すように、鉄骨丸柱22の側を向く上端が正八角形となる角筒状となっている。なお、隅角正八角形は、互いに90度ずれて配置された同一長さの4つの長辺(第1下底11a1)と、隣り合う長辺の間に45度傾斜して配置された長辺よりも短い3つの短辺(第2下底11b1)とを有する形状である。
【0024】
したがって、本実施形態に係る継手10によれば、角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22との間に配置される継手本体11によって角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とを連結することができるとともに、鉄骨丸柱22から加えられる鉛直方向荷重を、正八角形となる継手本体11の上端において効率よく支持することができるとともに、当該鉛直荷重を、継手本体11の隅角正八角形となる下端から角形鋼管柱21に効率よく伝達することができる。
【0025】
本実施形態では、4枚の第1板状部11aは、それぞれ軸線Oに平行に配置されており、互いに平行に軸線Oを挟んで対向する一対の第1板状部11aの外側を向く外面間の寸法は、角形鋼管柱21の辺の長さ寸法及び鉄骨丸柱22の外径寸法と同一となっている。また、4枚の第1板状部11a及び4枚の第2板状部11bの板厚は、互いに同一であるとともに、角形鋼管柱21及び鉄骨丸柱22の板厚よりも厚くなっている。これにより、図4に示すように、平面視において、継手本体11の隅角正八角形となる下端は、角形鋼管柱21の上端の全体に重複し、図5に示すように、平面視において、継手本体11の正八角形となる上端は鉄骨丸柱22の下端の全体に重複する。したがって、鉄骨丸柱22から加えられる鉛直方向荷重を、正八角形となる継手本体11の上端において直接的により効率よく支持することができるとともに、当該鉛直荷重を、継手本体11の隅角正八角形となる下端から角形鋼管柱21に直接的により効率よく伝達することができる。
【0026】
上記構成を有する本実施形態に係る継手10では、継手本体11は、4枚の第1板状部11aと4枚の第2板状部11bとを軸線Oを中心とした周方向に交互に接合した構成となっている。4枚の第1板状部11aと4枚の第2板状部11bは、鋼板により形成することができるので安価であり、これらを接合する溶接に係るコストも低廉である。したがって、本実施形態に係る継手10によれば、鋳鋼品とする場合に比べて製造コストを低減して、継手10をより安価なものとすることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る継手10では、継手本体11の一端である下端に接合された第1ダイアフラム12と、継手本体11の他端である上端に接合された第2ダイアフラム13とを有する構成としたので、継手本体11に第1ダイアフラム12を介して角形鋼管柱21をより確実に接合することができるとともに、継手本体11に第2ダイアフラム13を介して鉄骨丸柱22をより確実に接合することができる。
【0028】
また、第1ダイアフラム12と第2ダイアフラム13は鋼板により形成することができるので安価であり、これらを接合する溶接に係るコストも低廉であるので、第1ダイアフラム12と第2ダイアフラム13とを有する構成としても、継手10を、鋳鋼品とする場合に比べてより安価なものとすることができる。
【0029】
上記の通り、本実施形態では、継手10は、躯体2を構成する梁30を柱20に接合する仕口としても用いられている。この場合、図1に示すように、継手本体11を構成する第1板状部11aが梁30の接合部とされ、梁30の端部が第1板状部11aに溶接によって接合される。
【0030】
本実施形態では、梁30は、ウェブ30aと一対のフランジ30bとを有するH形鋼で構成されており、ウェブ30aの端部において第1板状部11aに溶接によって接合されている。この場合、梁30の第1板状部11aへの接合を補強するために、第1ダイアフラム12に4つの補強板31を溶接により接合するとともに、これらの補強板31を上下のフランジ30bの側部に溶接により接合した構成としてもよい。
【0031】
本実施形態では、互いに軸線Oを挟んで対向する2つの第1板状部11aに梁30を接合した構成としているが、これに限らず、例えば4つの第1板状部11aの全てに梁30を接合した構成、1つの第1板状部11aにのみ梁30を接合した構成など、梁30の接合パターンは種々変更可能である。
【0032】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0033】
例えば、前記実施形態では、角形鋼管柱21の上に、継手10によって鉄骨丸柱22を連結した構成としているが、鉄骨丸柱22の上に、継手10によって角形鋼管柱21を連結した構成とすることもできる。この場合、継手本体11は、隅角正八角形となる一端を上方に向け、正八角形となる他端を下方に向けた姿勢で配置すればよい。
【0034】
また、前記実施形態では、第1板状部11a及び第2板状部11bの板厚を、角形鋼管柱21及び鉄骨丸柱22の板厚よりも厚くしているが、これに限らず、これらの板厚は種々変更可能である。
【0035】
さらに、前記実施形態では、互いに平行に軸線Oを挟んで対向する一対の第1板状部11aの外側を向く外面間の寸法を、角形鋼管柱21の辺の長さ寸法及び鉄骨丸柱22の外径寸法と同一としているが、これらの寸法も適宜変更可能である。
【0036】
さらに、前記実施形態では、継手本体11の一端に第1ダイアフラム12が接合されるとともに他端に第2ダイアフラム13が接合された構成としているが、第1ダイアフラム12及び第2ダイアフラム13を設けず、角形鋼管柱21及び鉄骨丸柱22を継手本体11に直接接合した構成としてもよい。
【0037】
さらに、前記実施形態では、継手10を、躯体2を構成する梁30を柱20に接合する仕口としても用いるようにしていが、これに限らず、継手10を、梁30が接合されることなく、角形鋼管柱21と鉄骨丸柱22とを接合する用途にのみ用いられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 建築物
2 躯体
10 継手
11 継手本体
11a 第1板状部
11a1 第1下底
11a2 第1上底
11a3 第1脚
11b 第2板状部
11b1 第2下底
11b2 第2上底
11b3 第2脚
12 第1ダイアフラム
13 第2ダイアフラム
20 柱
21 角形鋼管柱
22 鉄骨丸柱
30 梁
30a ウェブ
30b フランジ
31 補強板
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5