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  • -地下構造物の構築方法及び地下構造物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162913
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】地下構造物の構築方法及び地下構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078896
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】三谷 淳
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB00
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】順打ち工法によって構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤の高低差が生じることを抑制することが可能な地下構造物の構築方法及び地下構造物を提供することができる。
【解決手段】建築物1の地下構造物の構築方法であって、地下構造物20の第1構造部21を順打ち工法で構築する第1構築工程と、地下構造物20の第1構造部21に隣接する第2構造部22を逆打ち工法で構築する第2構築工程と、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bにブレース30を設置するブレース設置工程と、を有することを特徴とする地下構造物の構築方法、及び、順打ち工法で構築された第1構造部21と、逆打ち工法で構築された第2構造部22と、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bに設置されたブレース30とを有する地下構造物20。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の地下構造物の構築方法であって、
前記地下構造物の第1構造部を順打ち工法で構築する第1構築工程と、
前記地下構造物の前記第1構造部に隣接する第2構造部を逆打ち工法で構築する第2構築工程と、
前記第1構造部と前記第2構造部との境界部分にブレースを設置するブレース設置工程と、を有することを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
建築物の地下構造物であって、
順打ち工法で構築された前記地下構造物の第1構造部と、
逆打ち工法で前記第1構造部に隣接して構築された前記地下構造物の第2構造部と、
前記第1構造部と前記第2構造部との境界部分に設置されたブレースと、を有することを特徴とする地下構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の地下構造物の建築方法及び地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高層ビルなどの建築物には、複数の階層を有する地下構造物が設けられるのが一般的である。
【0003】
従来、このような建築物の地下構造物を構築する方法として、地下構造物の一部分である第1構造部を順打ち工法で構築するとともに、地下構造物の残りの部分である第2構造部を逆打ち工法で構築するようにした方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような地下構造物の構築方法によれば、例えば建築物の建築予定地に2つの既存建築物がある場合に、先に解体した既存建築物の敷地において順打ち工法により第1構造部の構築を進めつつ、残りの既存建築物が解体された後、当該敷地において逆打ち構造により第2構造部の構築を進めることで、第1構造部及び第2構造部の上に地上構造物を遅滞なく構築するが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-95693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の地下構造物の構築方法では、順打ち工法によって構築された第1構造部から逆打ち工法で構築される部分の地盤に圧力が加わり、順打ち工法によって構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤の高低差が生じる虞があった。順打ち工法によって構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤の高低差が生じると、第1構造部と第2構造部との間に変形が生じる虞があるなどの種々の問題が生じることになる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、順打ち工法によって構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤の高低差が生じることを抑制することが可能な地下構造物の構築方法及び地下構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地下構造物の構築方法は、建築物の地下構造物の構築方法であって、前記地下構造物の第1構造部を順打ち工法で構築する第1構築工程と、前記地下構造物の前記第1構造部に隣接する第2構造部を逆打ち工法で構築する第2構築工程と、前記第1構造部と前記第2構造部との境界部分にブレースを設置するブレース設置工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の地下構造物は、建築物の地下構造物であって、順打ち工法で構築された前記地下構造物の第1構造部と、逆打ち工法で前記第1構造部に隣接して構築された前記地下構造物の第2構造部と、前記第1構造部と前記第2構造部との境界部分に設置されたブレースと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、順打ち工法によって構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤の高低差が生じることを抑制することが可能な地下構造物の構築方法及び地下構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る地下構造物の構築方法により構築された地下構造物を有する建築物を概略で示す説明図である。
図2】第1構築工程が完了した状態を概略で示す説明図である。
図3】第2構築工程を行っている状態を概略で示す説明図である。
図4】第2構築工程が完了した状態を概略で示す説明図である。
図5】ブレース設置工程が完了した状態を概略で示す説明図である。
図6】変形例に係る地下構造物を概略で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る地下構造物の構築方法及び地下構造物について詳細に例示説明する。
【0013】
図1に示す建築物1は、地上に構築された地上構造物10と、地下に構築された本発明の一実施形態に係る地下構造物20とを有している。
【0014】
地上構造物10は、例えば複数の階層を有するビルディングである。本実施形態では、地上構造物10は、高さが200m程度の鉄筋コンクリート造の高層のビルディングである。なお、地上構造物10は、高層のビルディングに限られない。
【0015】
地下構造物20は、第1構造部21と、第1構造部21に隣接する第2構造部22とを有している。第1構造部21と第2構造部22は、それぞれ地下構造物20を構成する躯体ないし構造である。
【0016】
第1構造部21は、順打ち工法で構築されたものである。より具体的には、第1構造部21は、地面2から掘り下げられた地盤3に打設されたコンクリート製の基礎21aと、基礎21aに支持された複数本の柱21bと、隣り合う柱21bに接合された複数の梁21cとを有している。詳細は図示しないが、第1構造部21は、地階の各階層に対応する複数のスラブが設けられ、複数階の地下空間を構成している。
【0017】
第2構造部22は、逆打ち工法で構築されたものである。より具体的には、第2構造部22は、地面2から掘り下げられた地盤3に打ちこまれたコンクリート製の支持体22aに支持された複数本の逆打ち支柱22bと、隣り合う逆打ち支柱22bに接合された複数の梁22cとを有している。詳細は図示しないが、第2構造部22は、地階の各階層に対応する複数のスラブが設けられ、複数階の地下空間を構成している。
【0018】
第1構造部21の第2構造部22に隣接する柱21bと、第2構造部22の第1構造部21に隣接する逆打ち支柱22bとは、複数本の連結梁23によって互いに接合されている。これにより、第1構造部21と第2構造部22は一体化されている。
【0019】
なお、図1においては、便宜上、1つの柱21b、梁21c、逆打ち支柱22b、梁22c及び連結梁23にのみ符号を付している。
【0020】
第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bにはブレース30が設置されている。ブレース30は、鉛直ブレースである。より具体的には、第1構造部21の第2構造部22に隣接する柱21bと、第2構造部22の第1構造部21に隣接する逆打ち支柱22bと、それぞれ柱21bと逆打ち支柱22bとに接合するとともに上下に並べて配置された一対の連結梁23との間に、ブレース30が設置されている。
【0021】
本実施形態では、ブレース30は、一端が第2構造部22の逆打ち支柱22bと下側の連結梁23との接合部に接合され、他端が第1構造部21の柱21bと上側の連結梁23との接合部に接合されている。
【0022】
ブレース30は、第2構造部22に、第1構造部21に対して上方に変位する方向の荷重が加えられてときに、当該荷重を第1構造部21に伝達して第2構造部22が第1構造部21に支持されるようにして、第2構造部22の第1構造部21に対する上方への変位を抑制することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、ブレース30は、一端が第2構造部22の逆打ち支柱22bと下側の連結梁23との接合部に接合され、他端が第1構造部21の柱21bと上側の連結梁23との接合部に接合されているが、これに限らず、一端が第2構造部22の逆打ち支柱22bと上側の連結梁23との接合部に接合され、他端が第1構造部21の柱21bと下側の連結梁23との接合部に接合された構成とすることもできる。
【0024】
また、本実施形態では、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bにおいて、所定の地階を構成する一対の連結梁23の間にのみブレース30を設けるようにしているが、他の地階を構成する複数対の連結梁23の間に、それぞれブレース30を設けるようにしてもよい。
【0025】
上記構成を有する建築物1の地下構造物20は、本発明の一実施形態に係る地下構造物の構築方法により構築することができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る地下構造物の構築方法は、第1構築工程と、第2構築工程と、ブレース設置工程と、を有している。
【0027】
第1構築工程は、地下構造物20の第1構造部21を順打ち工法で構築する工程である。より具体的には、図2に示すように、建築物1の建築予定場所の一部の地面2を掘り下げるとともに山留め壁4を支保工(不図示)などで外周に設けて地下空間を形成し、地下空間の底の地盤3にコンクリートを打設して基礎21aを形成し、当該基礎21aに複数本の柱21bを支持させつつ梁21cを接合し、最下層から上方に向けて順次第1構造部21を構築していく。そして、最上層の階層まで構築が繰り返されると、複数本の柱21bと梁21cとが接合された第1構造部21の構築が完了する。
【0028】
第1構築工程が完了すると、次に第2構築工程が行われる。第2構築工程は、地下構造物20の第1構造部21に隣接する第2構造部22を逆打ち工法で構築する工程である。より具体的には、図3に示すように、第1構造部21に隣接する地面2に複数本の逆打ち支柱22bを打ち込み、複数本の逆打ち支柱22bに支持された地上階の床部分22dを構築した後、山留め壁5を支保工(不図示)などで外周に設けて地面2を掘り下げて上側階から下側階に向けて順次第2構造部22を構築していく。また、第2構造部22の構築された部分は、適宜、連結梁23により第1構造部21に接合される。そして、図4に示すように、最下層の階層まで構築が繰り返されると、複数本の逆打ち支柱22bと梁22cとが接合された第2構造部22の構築が完了する。
【0029】
なお、第2構築工程において地上階の床部分22dを構築した後には、図4に示すように、第2構築工程を行いつつ、第1構造部21と第2構造部22の上に地上構造物10を構築する作業を同時に行うことができる。
【0030】
第2構築工程が完了すると、次にブレース設置工程が行われる。ブレース設置工程においては、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bにブレース30を設置する。ブレース30は、鉛直ブレースである。より具体的には、図5に示すように、第1構築工程で構築された第1構造部21の第2構造部22に隣接する柱21bと、第2構築工程で構築された第2構造部22の第1構造部21に隣接する逆打ち支柱22bと、それぞれ柱21bと逆打ち支柱22bとに接合するとともに上下に並べて配置された一対の連結梁23との間に、ブレース30を設置する。
【0031】
ブレース設置工程においては、ブレース30を、一端が第2構造部22の逆打ち支柱22bと下側の連結梁23との接合部に接合され、他端が第1構造部21の柱21bと上側の連結梁23との接合部に接合されるように設置するのが好ましいが、これに限らず、一端が第2構造部22の逆打ち支柱22bと上側の連結梁23との接合部に接合され、他端が第1構造部21の柱21bと下側の連結梁23との接合部に接合されるように設置してもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、ブレース設置工程において、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bの、所定の地階を構成する一対の連結梁23の間にのみブレース30を設置するようにしているが、他の地階を構成する複数対の連結梁23の間に、それぞれブレース30を設置するようにしてもよい。
【0033】
上記の構成を有する本実施形態に係る地下構造物の構築方法によれば、例えば建築物1の建築予定地に2つの既存建築物がある場合に、先に解体した既存建築物の敷地において、第1構築工程すなわち順打ち工法により第1構造部21の構築を進めつつ、残りの既存建築物が解体された後、当該敷地において第2構築工程すなわち逆打ち構造により第2構造部22の構築を進めることができるので、第1構造部21及び第2構造部22の上に地上構造物10を遅滞なく構築するが可能となる。
【0034】
一方、第1構築工程において第1構造部21を順打ち工法で構築するとともに、第2構築工程において第2構造部22を逆打ち工法で構築すると、順打ち工法によって構築された第1構造部21から逆打ち工法で構築される部分の地盤3に圧力が加わり、順打ち工法で第1構造部21が構築された部分と逆打ち工法で第2構造部22が構築される部分とに地盤3の高低差が生じる虞がある。順打ち工法で第1構造部21が構築された部分と逆打ち工法で第2構造部22が構築された部分とに地盤3の高低差が生じると、第1構造部21と第2構造部22との間に変形が生じる虞があるなどの種々の問題が生じることになる。
【0035】
これに対し、本実施形態に係る地下構造物の構築方法では、第1構築工程において第1構造部21を順打ち工法で構築し、第2構築工程において第2構造部22を逆打ち工法で構築した後、ブレース設置工程において第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bにブレース30を設置するようにしたので、順打ち工法で第1構造部21が構築された部分と逆打ち工法で構築された部分とに地盤3の高低差を生じさせるような力が生じて、第2構造部22に第1構造部21に対して上方に変位する方向の荷重が加えられても、当該荷重が、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bに設置したブレース30により第1構造部21に伝達されて第2構造部22が第1構造部21に支持されるようにして、第2構造部22の第1構造部21に対する上方への変位を抑制することができる。したがって、第2構造部22が構築される部分の地盤3は、第1構造部21が構築された部分に対する上方への変位が抑制されることになり、順打ち工法によって第1構造部21が構築された部分と逆打ち工法で第2構造部22が構築された部分とに地盤3の高低差が生じることが抑制される。
【0036】
このように、本実施形態に係る地下構造物の構築方法ないし地下構造物20によれば、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bに設置したブレース30により、第2構造部22の第1構造部21に対する上方への変位を抑制することにより、順打ち工法によって構築された部分である第1構造部21と逆打ち工法で構築された部分である第2構造部22とに地盤3の高低差が生じることを抑制することができる。
【0037】
図6に変形例として示すように、本実施形態に係る地下構造物の構築方法により構築される地下構造物20は、第2構築工程で構築された第2構造部22の第1構造部21に隣接する逆打ち支柱22bが、鉛直方向に対して傾斜した部分すなわち傾斜柱22eを有する構成とすることもできる。この場合、ブレース30は、一端が傾斜柱22eの下端と下側の連結梁23との接合部分に接合され、他端が柱21bと上側の連結梁23との接合部分に接合された構成とすることができる。すなわち、ブレース設置工程においては、図6に示す配置となるようにブレース30が設置される。
【0038】
なお、変形例の構成においては、傾斜柱22eに隣接する他の逆打ち支柱22bと下側の梁22cとの接合部分に一端が接合され、傾斜柱22eと上側の梁22cとの接合部分に他端が接合された補助ブレース31を設けて、傾斜柱22eに加わる水平方向荷重を補助ブレース31で支持する構成とすることもできる。
【0039】
この変形例の構成においても、図1に示す場合と同様に、第1構造部21と第2構造部22との境界部分Bに設置したブレース30により、第2構造部22の第1構造部21に対する上方への変位を抑制することにより、順打ち工法によって構築された部分である第1構造部21と逆打ち工法で構築された部分である第2構造部22とに地盤3の高低差が生じることを抑制することができる。
【0040】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 建築物
2 地面
3 地盤
4 山留め壁
5 山留め壁
10 地上構造物
20 地下構造物
21 第1構造部
21a 基礎
21b 柱
21c 梁
22 第2構造部
22a 支持体
22b 逆打ち支柱
22c 梁
22d 床部分
22e 傾斜柱
23 連結梁
30 ブレース
31 補助ブレース
B 境界部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6