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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162921
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078926
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】中村 友一
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA03
4C099CA03
4C099GA02
4C099JA02
4C099NA02
4C099PA01
(57)【要約】
【課題】利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱しつつ、利用者に冷感または温感をより感じさせる。
【解決手段】身体温冷装置は、利用者の頸部のうちの頸動脈を冷却または加熱する右側熱電素子17と左側熱電素子18と、利用者の後頸部を冷却または加熱する中央熱電素子16と、中央熱電素子16の温度が、右側熱電素子17と左側熱電素子18との温度と異なるように、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とを制御する制御装置とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の頸部のうちの頸動脈を冷却または加熱する第1熱電素子と、
前記頸部のうちの前記頸動脈と異なる他の部位を冷却または加熱する第2熱電素子と、
前記第1熱電素子の温度と前記第2熱電素子の温度とが異なるように、前記第1熱電素子と前記第2熱電素子とを制御する制御部
とを備える身体温冷装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定期間内に、前記第2熱電素子の温度を第1温度以下から前記第1温度より高い第2温度以上となるように、前記第2熱電素子を制御する
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1温度と前記第2温度との温度差が1℃より大きくなるように、前記第2熱電素子を制御する
請求項2に記載の身体温冷装置。
【請求項4】
前記第1熱電素子の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された温度に基づいて前記第1熱電素子を制御する
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項5】
熱媒体と空気とを熱交換する熱交換部と、
前記第1熱電素子および前記第2熱電素子が放熱するように、前記熱媒体と前記第1熱電素子および前記第2熱電素子とを熱交換する熱電素子放熱部と、
前記熱交換部により空気と熱交換された前記熱媒体を前記熱電素子放熱部に供給する第1流路が形成された第1チューブと、
前記熱電素子放熱部により熱交換された前記熱媒体を前記熱交換部に供給する第2流路が形成された第2チューブと、
前記制御部が前記第1熱電素子および前記第2熱電素子を制御するときに、前記制御部から前記第1熱電素子および前記第2熱電素子に電力を供給する電線と、
前記電線が前記第1チューブと前記第2チューブとの間に配置された状態で、前記電線を前記第1チューブと前記第2チューブとに対して保持する保持部材
とをさらに備える請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項6】
前記熱交換部には、
熱媒体が流れる流路と、
熱媒体が前記流路に流入する入口と、
熱媒体が前記流路から流出する出口とが形成され、
前記入口は、前記流路より下側に配置され、
前記出口は、前記流路より上側に配置される
請求項5に記載の身体温冷装置。
【請求項7】
前記第1熱電素子は、
前記頸動脈のうちの右頸動脈を冷却または加熱する右側熱電素子と、
前記頸動脈のうちの左頸動脈を冷却または加熱する左側熱電素子とを含み、
前記熱電素子放熱部は、
熱媒体を右側熱媒体と左側熱媒体とに分ける分岐部と、
前記右側熱媒体と前記右側熱電素子とを熱交換する右側熱電素子放熱部と、
前記左側熱媒体と前記左側熱電素子とを熱交換する左側熱電素子放熱部とを有する
請求項5に記載の身体温冷装置。
【請求項8】
前記右側熱電素子放熱部での熱媒体の流れる流路の断面積と、前記左側熱電素子放熱部での熱媒体の流れる流路の断面積とは、前記熱電素子放熱部のうちの、熱媒体と第2熱電素子とを熱交換する熱電素子放熱部での熱媒体の流れの断面積に等しい
請求項7に記載の身体温冷装置。
【請求項9】
前記熱交換部は、前記熱交換部の厚さTと、前記第1熱電素子の厚さTとを用いて、
次式:
2.5<T/T<26.6
が満足するように、形成される
請求項5に記載の身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱することにより、利用者の体温を調節する身体温冷装置が知られている。この種の身体温冷装置としては、熱電素子を有する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部との間でチューブ部材を介して水を循環させるポンプ部と、を備える装置がある(特許文献1)。温調部は、利用者の頚部のうちの頸動脈の近傍の部分に接するプレートと、プレートを冷却または加熱する熱電素子とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-136884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用者は、頚部に接するプレートの温度が一定であると、温度を感じる感覚が麻痺して温冷感を感じにくくなることがある。このため、このような身体温冷装置は、頸動脈を流れる血液を適切に冷却または加熱しているにもかかわらず、利用者が冷感または温感を感じにくくなり、利用者の快適性が低下することがある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、頸動脈を流れる血液を冷却または加熱するだけでなく、利用者が冷感または温感をより感じることができる身体温冷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による身体温冷装置は、利用者の頸部のうちの頸動脈を冷却または加熱する第1熱電素子と、前記頸部のうちの前記頸動脈と異なる他の部位を冷却または加熱する第2熱電素子と、前記第1熱電素子の温度と前記第2熱電素子の温度とが異なるように、前記第1熱電素子と前記第2熱電素子とを制御する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
開示の身体温冷装置は、頸動脈を流れる血液を冷却または加熱しつつ、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の身体温冷装置を利用者が装着した状態を示す図である。
図2図2は、ネック部を示す斜視図である。
図3図3は、熱媒体回路を示す回路図である。
図4図4は、熱交換器を示す側面図である。
図5図5は、ケーブル部を示す横断面図である。
図6図6は、複数の保持部材のうちの1つの保持部材を示す斜視図である。
図7図7は、身体温冷装置を示すブロック図である。
図8図8は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときに、中央プレートの温度の変化と、右側プレートの温度の変化と、左側プレートの温度の変化とを示すグラフである。
図9図9は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときに、中央プレートの温度の変化と、右側プレートの温度の変化と、左側プレートの温度の変化とを示すグラフである。
図10図10は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、エコモードに切り替えられたときに、中央プレートの温度の変化と、右側プレートの温度の変化と、左側プレートの温度の変化とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる身体温冷装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例の身体温冷装置1は、図1に示されているように、ネック部2と本体部3とケーブル部5とを備えている。図1は、実施例の身体温冷装置1を利用者が装着した状態を示す図である。ネック部2は、利用者の頸部に装着される。本体部3は、利用者の腰または背に装着される。ケーブル部5は、可撓性を有する紐状に形成されている。ケーブル部5の一端は、ネック部2に接合され、ケーブル部5の他端は、本体部3に接合されている。
【0011】
図2は、ネック部2を示す斜視図である。ネック部2は、首掛け部材11と中央プレート12と左側プレート15と右側プレート14とを備えている。首掛け部材11は、ネック部2が利用者の頸部に装着されるときに、利用者の首回りに沿って配置されように、概ねU字状に形成されている。中央プレート12と右側プレート14と左側プレート15とは、それぞれ、アルミニウムに例示される金属材料から形成され、屈曲している板状に形成されている。中央プレート12は、ネック部2が利用者の頸部に装着されるときに、利用者の後頸部に中央プレート12が接触するように配置され、首掛け部材11に固定されている。頸部には、右頸動脈と左頸動脈がある。
【0012】
右側プレート14は、ネック部2が利用者の頸部に装着されるときに、利用者の頸部の皮膚のうちの右頸動脈を覆う右頸動脈部分が右側プレート14に接触するように、配置され、首掛け部材11に固定されている。左側プレート15は、ネック部2が利用者の頸部に装着されるときに、利用者の頸部の皮膚のうちの左頸動脈を覆う左頸動脈部分が左側プレート15に接触するように、配置され、首掛け部材11に固定されている。
【0013】
首掛け部材11は、右側プレート14が、中央プレート12に対して予め定められた位置から移動したときに、弾性変形し、右側プレート14がその位置に戻ろうとするような弾性力を右側プレート14に与える。首掛け部材11は、さらに、左側プレート15が、中央プレート12に対して予め定められた位置から移動したときに、弾性変形し、左側プレート15がその位置に戻ろうとするような弾性力を左側プレート15に与える。
【0014】
ネック部2は、中央熱電素子16(第2熱電素子)と右側熱電素子17(第1熱電素子)と左側熱電素子18(第1熱電素子)とをさらに備えている。中央熱電素子16は、ペルチェ素子から形成され、板状に形成されている。中央熱電素子16の厚さは、1.5mmより大きく、かつ4.0より小さい。中央熱電素子16には、温調面21と放熱面22とが形成されている。放熱面22は、温調面21の裏側に形成されている。中央熱電素子16は、温調面21が中央プレート12に接するように、首掛け部材11の内部に配置され、中央プレート12に熱的に接触している。
【0015】
右側熱電素子17は、ペルチェ素子から形成され、板状に形成されている。右側熱電素子17の厚さは、1.5mmより大きく、かつ4.0より小さい。右側熱電素子17には、温調面23と放熱面24とが形成されている。放熱面24は、温調面23の裏側に形成されている。右側熱電素子17は、温調面23が右側プレート14に接するように、首掛け部材11の内部に配置され、右側プレート14に熱的に接触している。
【0016】
左側熱電素子18は、ペルチェ素子から形成され、板状に形成されている。左側熱電素子18の厚さは、1.5mmより大きく、かつ4.0より小さい。左側熱電素子18には、温調面25と放熱面26とが形成されている。放熱面26は、温調面25の裏側に形成されている。左側熱電素子18は、温調面25が左側プレート15に接するように、首掛け部材11の内部に配置され、左側プレート15に熱的に接触している。
【0017】
身体温冷装置1は、図3に示されているように、熱媒体回路31を備えている。図3は、熱媒体回路31を示す回路図である。熱媒体回路31は、ポンプ32と熱交換器33(熱交換部)と中央熱電素子放熱部34と右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36と分岐部37と合流部38とを備えている。ポンプ32は、本体部3の内部に配置されている。熱交換器33は、本体部3の内部のうちのポンプ32の上に配置されている。熱交換器33の重量は、ポンプ32の重量より小さい。
【0018】
中央熱電素子放熱部34は、中央熱電素子16の放熱面22が中央熱電素子放熱部34と接するように、ネック部2の内部に配置され、中央熱電素子16に熱的に接触している。中央熱電素子放熱部34の内部には、流路が形成されている。右側熱電素子放熱部35は、右側熱電素子17の放熱面24が右側熱電素子放熱部35に接するように、ネック部2の内部に配置され、右側熱電素子17に熱的に接触している。右側熱電素子放熱部35の内部には、流路が形成されている。右側熱電素子放熱部35は、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の流路抵抗が、中央熱電素子放熱部34に形成される流路の流路抵抗と等しくなるように、形成されている。すなわち、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の断面積は、中央熱電素子放熱部34に形成される流路の断面積に概ね等しく、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の流路長は、中央熱電素子放熱部34に形成される流路の流路長に概ね等しい。
【0019】
左側熱電素子放熱部36は、左側熱電素子18の放熱面26が左側熱電素子放熱部36に接するように、ネック部2の内部に配置され、左側熱電素子18に熱的に接触している。左側熱電素子放熱部36は、左側熱電素子放熱部36に形成される流路の流路抵抗が、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の流路抵抗と等しくなるように、形成されている。すなわち、左側熱電素子放熱部36に形成される流路の断面積は、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の断面積に概ね等しく、左側熱電素子放熱部36に形成される流路の流路長は、右側熱電素子放熱部35に形成される流路の流路長に概ね等しい。分岐部37は、中央熱電素子放熱部34と一体に形成され、ネック部2の内部に配置されている。中央熱電素子放熱部34に流入した熱媒体は分岐部37で分岐し、右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36のそれぞれに流入する。合流部38は、ネック部2の内部に配置されている。右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36のそれぞれから流出した熱媒体は合流部38で合流してポンプ32に向けて流出する。
【0020】
熱媒体回路31には、第1流路41と第2流路42と第3流路43と第4流路44と第5流路45と第6流路46と第7流路47とが形成されている。ポンプ32は、第1流路41を介して熱交換器33に接続されている。熱交換器33は、第2流路42を介して中央熱電素子放熱部34に接続されている。中央熱電素子放熱部34と一体に形成された分岐部37は、第3流路43を介して右側熱電素子放熱部35に接続され、第4流路44を介して左側熱電素子放熱部36に接続されている。第4流路44は、第4流路44の流路抵抗が第3流路43の流路抵抗に等しくなるように、形成されている。すなわち、第4流路44の断面積は、第3流路43の断面積に概ね等しく、第4流路44の流路長は、第3流路43の流路長に概ね等しい。
【0021】
右側熱電素子放熱部35は、第5流路45を介して合流部38に接続されている。左側熱電素子放熱部36は、第6流路46を介して合流部38に接続されている。第6流路46は、第6流路46の流路抵抗が第5流路45の流路抵抗に等しくなるように、形成されている。すなわち、第6流路46の断面積は、第5流路45の断面積に概ね等しく、第6流路46の流路長は、第5流路45の流路長に概ね等しい。合流部38は、第7流路47を介してポンプ32に接続されている。
【0022】
図4は、熱交換器33を示す側面図である。熱交換器33は、アルミニウムに例示される金属から形成され、入口ヘッダ51と出口ヘッダ52と複数の伝熱管53と複数のフィン54とを備えている。入口ヘッダ51は、底面が閉じられた円筒状に形成されている。入口ヘッダ51には、入口55が形成され、入口ヘッダ51の内部は、外部から隔離され、入口55を介して第1流路41に接続されている。出口ヘッダ52は、底面が閉じられた円筒状に形成され、その中心軸が入口ヘッダ51の中心軸と平行になるように配置されている。出口ヘッダ52には、出口56が形成され、出口ヘッダ52の内部は、外部から隔離され、出口56を介して第2流路42に接続されている。
【0023】
複数の伝熱管53の各々は、長手方向に沿って内部に複数の流路が形成された扁平管である。複数の伝熱管53は、入口ヘッダ51と出口ヘッダ52との間に配置され、複数の伝熱管53の一端は、入口ヘッダ51に接合され、複数の伝熱管53の他端は、出口ヘッダ52に接合されている。入口ヘッダ51の内部は、複数の伝熱管53のそれぞれに形成された複数の流路を介して出口ヘッダ52の内部に接続されている。複数のフィン54の各々は、板状に形成されている。複数のフィン54は、複数のフィン54同士の間に隙間が形成されるように、入口ヘッダ51と出口ヘッダ52とが並ぶ方向に垂直に配置されている。複数のフィン54は、それぞれ、複数のフィン54が複数の伝熱管53に熱的に接続されるように、複数の伝熱管53に接合されている。熱交換器33は、さらに、厚さが10.0mmより大きく、かつ、40.0mmより小さくなるように形成されている。
【0024】
身体温冷装置1は、さらに、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とに用いられるペルチェ素子の厚さT、熱交換器33の厚さTを用いて、比T/Tが以下の数式を満足するように設計されている。
2.5<T/T<26.6
【0025】
図5は、ケーブル部5を示す横断面図である。ケーブル部5は、カバー60と第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63と複数の保持部材64とを備えている。カバー60は、可撓性を有する筒状に形成されている。カバー60は、第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63とが外部に露出しないように、第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63とを覆っている。
【0026】
第1チューブ61は、可撓性を有する管から形成されている。第1チューブ61の内部には、第2流路42が形成されている。第2チューブ62は、可撓性を有する管から形成されている。第2チューブ62の内部には、第7流路47が形成されている。電線部63は、可撓性を有する複数のケーブルから形成されている。複数のケーブルの各々は、電線と、電線を覆う絶縁物とを備えている。電線部63は、第1チューブ61と第2チューブ62とが直接に接触しないように、第1チューブ61と第2チューブ62との間に配置されている。
【0027】
複数の保持部材64の各々は、粘着テープや面ファスナーで形成されていればよい。複数の保持部材64のうちの1つの保持部材65は、図6に示されているように、保持部材65が第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63とに巻き付けられている。図6は、複数の保持部材64のうちの1つの保持部材65を示す斜視図である。電線部63は、保持部材65が第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63とに巻き付けられることにより、第1チューブ61と第2チューブ62とが直接に接触しないように、複数の保持部材64を介して第1チューブ61と第2チューブ62とに保持されている。複数の保持部材64のうちの保持部材65と異なる他の保持部材も、保持部材65と同様に、電線部63が第1チューブ61と第2チューブ62との間に配置されるように、第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63とに巻き付けられている。
【0028】
身体温冷装置1は、図7に示されているように、中央温度センサ71と右側温度センサ72(温度検出部)と左側温度センサ73(温度検出部)と送風ファン74と入力装置75と制御装置76(制御部)とをさらに備えている。図7は、身体温冷装置1を示すブロック図である。中央温度センサ71は、中央熱電素子16と一体に形成されている。中央温度センサ71は、熱電素子の温度として中央熱電素子16の温調面21の温度、または、中央プレート12の温度を検出する。右側温度センサ72は、右側熱電素子17と一体に形成されている。右側温度センサ72は、熱電素子の温度として右側熱電素子17の温調面23の温度、または、右側プレート14の温度を検出する。左側温度センサ73は、左側熱電素子18と一体に形成されている。左側温度センサ73は、熱電素子の温度として左側熱電素子18の温調面25の温度、または、左側プレート15の温度を検出する。
【0029】
送風ファン74は、本体部3の内部に配置されている。送風ファン74は、厚さが10mmより小さくなるように形成されている。送風ファン74は、本体部3の外部の空気が熱交換器33の複数のフィン54の間を流通するように、本体部3の外部の空気を送風する。入力装置75は、身体温冷装置1の利用者に操作され、どのような操作がなされたかの情報を生成する。
【0030】
制御装置76は、コンピュータであり、図示されていない記憶装置とCPU(Central Processing Unit)とを備えている。記憶装置は、制御装置76にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPUにより利用される情報を記憶する。CPUは、制御装置76にインストールされるコンピュータプログラムを実行する。制御装置76は、電線部63を介して右側熱電素子17と左側熱電素子18と中央熱電素子16と右側温度センサ72と左側温度センサ73と中央温度センサ71とに接続され、ポンプ32と送風ファン74と入力装置75とにさらに接続されている。
【0031】
制御装置76は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより、右側温度センサ72と左側温度センサ73と中央温度センサ71と入力装置75とから情報を取得する。制御装置76は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより、さらに、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とポンプ32と送風ファン74とを制御する。
【0032】
[身体温冷装置1の動作]
身体温冷装置1の利用者は、身体温冷装置1を用いて体温を調節するときに、本体部3を利用者の腰または背に装着し、ネック部2を利用者の頸部に装着する。本体部3は、熱交換器33がポンプ32の上に配置されるように本体部3が配置された状態で本体部3が利用者に装着されることにより、利用者に適切に装着される。本体部3は、厚さが増すことにより、利用者に装着時に引っ掛かり等が発生し装着性が悪くなることがある。熱交換器33の厚さが40mmより大きいときに、実際の現場の声から、本体の厚さは50mmまでが許容限界値であり、本体の厚さ50mmに対して、送風ファン74の厚さ限界値10mm、熱交換器33の厚さ最大値40mmとした。身体温冷装置1は、送風ファン74の厚さが10mmより小さく、熱交換器33の厚さが40mmより小さいことにより、本体部3を小型化することができ、たとえば、本体部3の厚さを50mm以下にすることができる。身体温冷装置1は、本体部3が小さいことにより、本体部3の装着時の引っ掛かり等を防止し、本体部3の装着性を向上させることができる。熱交換器33は、本体部3が利用者に適切に装着されるときに、出口ヘッダ52が入口ヘッダ51の上に配置されるように、配置される。身体温冷装置1は、ポンプ32が熱交換器33より重いことにより、ポンプ32が熱交換器33より上に配置されるように、すなわち、入口ヘッダ51が出口ヘッダ52の上に配置されるように、本体部3が回転することを防止することができる。
【0033】
ネック部2は、中央プレート12が利用者の頸部の後の後頸部に接触するときで、かつ、右側プレート14が右頸動脈部分に接触するときで、かつ、左側プレート15が左頸動脈部分に接触するときに、利用者の頸部に適切に装着される。首掛け部材11は、ネック部2が利用者の頸部に適切に装着されているときに、右側プレート14が右頸動脈部分に接触するように、かつ、左側プレート15が左頸動脈部分に接触するように、右側プレート14と左側プレート15とに弾性力を与える。このため、身体温冷装置1は、ネック部2が利用者の頸部に適切に装着されているときに、ネック部2が利用者の頸部から外れることを防止することができる。
【0034】
身体温冷装置1が実行する動作は、頸動脈冷却運転と頸動脈加熱運転とを含んでいる。利用者は、ネック部2と本体部3とが利用者に適切に装着された後に、身体温冷装置1を操作し、身体温冷装置1を起動する。身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転が開始するように入力装置75が利用者により操作されたときに、頸動脈冷却運転を開始する。制御装置76は、頸動脈冷却運転が開始されると、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18の頸部に向かい合う面が冷たくなるような電圧として、冷却用電圧を印加する。
【0035】
中央熱電素子16は、冷却用電圧が印加されることにより、温調面21の熱を放熱面22に移動させ、中央プレート12を冷却し、放熱面22の温度を上昇させる。身体温冷装置1は、中央プレート12が冷却されることにより、利用者の後頸部を冷却することができる。右側熱電素子17は、冷却用電圧が印加されることにより、温調面23の熱を放熱面24に移動させ、右側プレート14を冷却し、放熱面24の温度を上昇させる。身体温冷装置1は、右側プレート14が冷却されることにより、利用者の右頸動脈部分を冷却することができる。左側熱電素子18は、冷却用電圧が印加されることにより、温調面25の熱を放熱面26に移動させ、左側プレート15を冷却し、放熱面26の温度を上昇させる。身体温冷装置1は、左側プレート15が冷却されることにより、利用者の左頸動脈部分を冷却することができる。身体温冷装置1は、利用者の右頸動脈部分と左頸動脈部分が冷却されることにより、利用者の血液を冷却することができ、利用者の体温を低下させることができる。
【0036】
ペルチェ素子は、厚さが1.5mm未満であるときに、排熱性が落ち、冷えないことがある。身体温冷装置1は、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18との厚さが1.5mmより大きいことにより、利用者の頸部を適切に冷却することができる。ペルチェ素子は、厚さが4.0mmより大きいときに、ペルチェ素子内部の半導体素子の耐久性が悪くなったり、ネック部2の厚さが出る事で首の装着性が悪くなったりすることがある。身体温冷装置1は、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18との厚さが4.0mmより小さいことにより、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18との耐久性を向上させることができ、ネック部2の厚さを薄くして装着性を向上させることができる。
【0037】
制御装置76は、頸動脈冷却運転が開始されると、さらに、送風ファン74を起動し、ポンプ32を起動する。送風ファン74は、熱交換器33の複数のフィン54により形成される隙間に本体部3の外部の空気を通過させ、熱交換器33に本体部3の外部の空気を通過させる。ポンプ32は、第7流路47を介してポンプ32に流入した熱媒体を熱交換器33に第1流路41を介して供給し、熱媒体回路31に熱媒体を循環させる。
【0038】
熱交換器33に供給された熱媒体は、入口55を介して入口ヘッダ51に流入する。入口ヘッダ51の内部に流入した熱媒体は、重力により入口ヘッダ51の内部に溜まり、入口ヘッダ51に充填される。入口ヘッダ51の内部に流入した熱媒体は、入口ヘッダ51に充填された後に、複数の伝熱管53にそれぞれ形成される複数の流路に流入する。複数の伝熱管53の複数の流路に流入した熱媒体は、複数の流路に沿って概ね等しい流速で流れ、出口ヘッダ52に流入する。熱交換器33は、複数の伝熱管53の複数の流路を流れる熱媒体と、熱交換器33を通過する空気とを熱交換し、熱媒体を冷却し、熱交換器33を通過する空気を加熱する。出口ヘッダ52の内部に流入した熱媒体は、出口56を介して第2流路42に流入し、第2流路42を介して中央熱電素子放熱部34に流入し、中央熱電素子放熱部34を流れる。
【0039】
熱交換器33に供給された熱媒体は、入口55が出口56より上に配置されているときに、重力の影響により、入口ヘッダ51に溜まらないで、複数の伝熱管53の複数の流路のうちのいくつかの流路を所定の流速より早い流速で流れ、複数の伝熱管53の複数の流路のうちの残りの流路を所定の流速より遅い流速で流れることがある。熱媒体は、複数の伝熱管53の複数の流路を速い流速で流れるときに、空気と熱交換量が小さくなる。このため、熱交換器33は、複数の伝熱管53の複数の流路を熱媒体がそれぞれ流れる複数の流速が大きく異なっているときに、熱媒体と空気とを熱交換量が低下する。熱交換器33は、入口55が出口56より上に配置されていることにより、複数の伝熱管53の複数の流路を熱媒体がそれぞれ流れる複数の流速が概ね等しくすることができ、熱媒体と空気との熱交換量を確保することができる。
【0040】
中央熱電素子放熱部34は、中央熱電素子放熱部34を流れる熱媒体と、中央熱電素子16とを熱交換し、熱媒体を加熱し、中央熱電素子16の放熱面22を放熱させる。身体温冷装置1は、中央熱電素子16が中央プレート12を冷却しているときに中央熱電素子放熱部34が放熱面22を放熱することにより、中央熱電素子16が中央プレート12を冷却する効率が低下することを抑制し、中央熱電素子16の温度が上昇して破損焼損することを防止することができる。
【0041】
中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体は、分岐部37で2つに分けられる。中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体のうちの分岐部37で分けられた一方の右側熱媒体は、第3流路43を介して右側熱電素子放熱部35に流入し、右側熱電素子放熱部35を流れる。中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体のうちの分岐部37で分けられた他方の左側熱媒体は、第4流路44を介して左側熱電素子放熱部36に流入し、左側熱電素子放熱部36を流れる。
【0042】
右側熱電素子放熱部35は、右側熱電素子放熱部35を流れる右側熱媒体と、右側熱電素子17とを熱交換し、右側熱媒体を加熱し、右側熱電素子17の放熱面24を放熱させる。身体温冷装置1は、右側熱電素子17が右側プレート14を冷却しているときに右側熱電素子放熱部35が放熱面24を放熱することにより、右側熱電素子17が右側プレート14を冷却する効率が低下することを抑制し、右側熱電素子17の温度が上昇して破損焼損することを防止することができる。
【0043】
左側熱電素子放熱部36は、左側熱電素子放熱部36を流れる左側熱媒体と、左側熱電素子18とを熱交換し、左側熱媒体を加熱し、左側熱電素子18の放熱面26を放熱させる。身体温冷装置1は、左側熱電素子18が左側プレート15を冷却しているときに左側熱電素子放熱部36が放熱面26を放熱することにより、左側熱電素子18が左側プレート15を冷却する効率が低下することを抑制し、左側熱電素子18の温度が上昇して破損焼損することを防止することができる。
【0044】
右側熱電素子放熱部35により熱交換された右側熱媒体は、第5流路45を介して合流部38に流入する。左側熱電素子放熱部36により熱交換された左側熱媒体は、第6流路46を介して合流部38に流入する。合流部38に流入した右側熱媒体と左側熱媒体とは、合流部38で合流し、第7流路47を介してポンプ32に流入する。
【0045】
右側熱電素子放熱部35と第3流路43と第5流路45とは、左側熱電素子放熱部36と第4流路44と第6流路46と流路抵抗が等しい。このため、分岐部37は、右側熱電素子放熱部35を熱媒体が流れる流速が、左側熱電素子放熱部36を熱媒体が流れる流速と概ね等しくなるように、中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体を2つに分けることができる。身体温冷装置1は、右側熱電素子放熱部35を熱媒体が流れる流速が、左側熱電素子放熱部36を熱媒体が流れる流速と等しいことにより、右側熱電素子17が放熱される程度と、左側熱電素子18が放熱される程度とを等しくすることができる。身体温冷装置1は、右側熱電素子17が放熱される程度が、左側熱電素子18が放熱される程度と等しいことにより、右側プレート14が冷却される程度と、左側プレート15が冷却される程度とを概ね等しくすることができる。利用者は、右頸動脈部分に接する右側プレート14の温度と左頸動脈部分に接する左側プレート15の温度とが異なるときに、不快に感じることがある。身体温冷装置1は、右側プレート14が冷却される程度が、左側プレート15が冷却される程度と等しいことにより、右頸動脈部分に接する右側プレート14と左頸動脈部分に接する左側プレート15との温度差を低減することができ、利用者が感じる不快感を低減することができる。
【0046】
身体温冷装置1は、さらに、右側熱電素子放熱部35を熱媒体が流れる流速と、左側熱電素子放熱部36を熱媒体が流れる流速とを、中央熱電素子放熱部34を熱媒体が流れる流速の半分に概ね等しくすることができる。身体温冷装置1は、右側熱電素子放熱部35を熱媒体が流れる流速と、左側熱電素子放熱部36を熱媒体が流れる流速とが、中央熱電素子放熱部34を熱媒体が流れる流速より小さいことにより、右側熱電素子17と左側熱電素子18とを中央熱電素子16より高性能に放熱させることができる。身体温冷装置1は、右側熱電素子17と左側熱電素子18とが中央熱電素子16より高性能に放熱することにより、利用者の後頸部を利用者の頸動脈より効果的に冷却することができる。
【0047】
身体温冷装置1は、熱交換器33の厚さが小さいと放熱性能が低下することがある。身体温冷装置1は、ペルチェ素子の厚さを大きくしたときに、温調性能が向上するものの、ネック部2の装着性が悪くなることがある。身体温冷装置1は、比T/Tが2.5より大きいことにより、放熱性能の低下とネック部2の装着性の悪化とを抑制しつつ、温調性能を向上させることができる。身体温冷装置1は、ペルチェ素子の厚さが小さいと温調性能が低下することがある。身体温冷装置1は、熱交換器33の厚さを大きくすることにより、放熱性能を向上させることができるが、本体部3の装着性が悪化することがある。身体温冷装置1は、比T/Tが26.6より大きいことにより、温調性能の低下と本体部3の装着性の悪化とを抑制しつつ、放熱性能を向上させることができる。
【0048】
身体温冷装置1は、頸動脈加熱運転が開始するように入力装置75が利用者により操作されたときに、頸動脈加熱運転を開始する。制御装置76は、頸動脈加熱運転が開始されると、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18の頸部に向かい合う面が暖かくなるような電圧として、加熱用電圧を印加する。
【0049】
中央熱電素子16は、加熱用電圧が印加されることにより、放熱面22の熱を温調面21に移動させ、中央プレート12を加熱し、放熱面22の温度を低下させる。身体温冷装置1は、中央プレート12が加熱されることにより、利用者の後頸部を加熱することができる。右側熱電素子17は、加熱用電圧が印加されることにより、放熱面24の熱を温調面23に移動させ、右側プレート14を加熱し、放熱面24の温度を低下させる。身体温冷装置1は、右側プレート14が加熱されることにより、利用者の右頸動脈部分を加熱することができる。左側熱電素子18は、加熱用電圧が印加されることにより、放熱面26の熱を温調面25に移動させ、左側プレート15を加熱し、放熱面26の温度を低下させる。身体温冷装置1は、左側プレート15が加熱されることにより、利用者の左頸動脈部分を加熱することができる。身体温冷装置1は、利用者の右頸動脈部分と左頸動脈部分が加熱されることにより、利用者の血液を加熱することができ、利用者の体温を上昇させることができる。
【0050】
制御装置76は、頸動脈加熱運転が開始されると、頸動脈冷却運転のときと同様に、送風ファン74を起動し、ポンプ32を起動する。送風ファン74は、熱交換器33に本体部3の外部の空気を通過させ、熱交換器33の複数の伝熱管53にそれぞれ形成される複数の流路に沿って流れる熱媒体に、複数のフィン54を介して、熱交換器33を通過する空気を熱的に接触させる。ポンプ32は、第7流路47を介してポンプ32に流入した熱媒体を熱交換器33に第1流路41を介して供給し、熱媒体回路31に熱媒体を循環させる。熱交換器33は、ポンプ32から供給された熱媒体と、熱交換器33を通過する空気とを熱交換し、熱媒体を加熱し、空気を冷却する。熱交換器33により加熱された熱媒体は、第2流路42を介して中央熱電素子放熱部34に流入し、中央熱電素子放熱部34を流れる。なお加熱用電圧の大きさによっては送風ファン74およびポンプ32を動作させる必要がないため、熱電素子16、17、18に通電するだけで頸動脈加熱運転を行うようにしても良い。
【0051】
中央熱電素子放熱部34は、中央熱電素子放熱部34を流れる熱媒体と、中央熱電素子16とを熱交換し、熱媒体を冷却し、中央熱電素子16の放熱面22を加熱する。身体温冷装置1は、中央熱電素子16が中央プレート12を加熱しているときに中央熱電素子放熱部34が放熱面22を加熱することにより、中央熱電素子16が中央プレート12を加熱する効率が低下することを抑制することができる。
【0052】
中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体は、分岐部37で2つに分けられる。中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体のうちの分岐部37で分けられた一方の右側熱媒体は、第3流路43を介して右側熱電素子放熱部35に流入し、右側熱電素子放熱部35を流れる。中央熱電素子放熱部34により熱交換された熱媒体のうちの分岐部37で分けられた他方の左側熱媒体は、第4流路44を介して左側熱電素子放熱部36に流入し、左側熱電素子放熱部36を流れる。
【0053】
右側熱電素子放熱部35は、右側熱電素子放熱部35を流れる右側熱媒体と、右側熱電素子17とを熱交換し、右側熱媒体を冷却し、右側熱電素子17の放熱面24を加熱する。身体温冷装置1は、右側熱電素子17が右側プレート14を加熱しているときに右側熱電素子放熱部35が放熱面24を加熱することにより、右側熱電素子17が右側プレート14を加熱する効率が低下することを抑制することができる。
【0054】
左側熱電素子放熱部36は、左側熱電素子放熱部36を流れる左側熱媒体と、左側熱電素子18とを熱交換し、左側熱媒体を冷却し、左側熱電素子18の放熱面26を加熱する。身体温冷装置1は、左側熱電素子18が左側プレート15を加熱しているときに左側熱電素子放熱部36が放熱面26を加熱することにより、左側熱電素子18が左側プレート15を加熱する効率が低下することを抑制することができる。
【0055】
右側熱電素子放熱部35により熱交換された右側熱媒体は、第5流路45を介して合流部38に流入する。左側熱電素子放熱部36により熱交換された左側熱媒体は、第6流路46を介して合流部38に流入する。合流部38に流入した右側熱媒体と左側熱媒体とは、合流部38で合流し、第7流路47を介してポンプ32に流入する。
【0056】
このような熱媒体の循環によれば、身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転が実行されているときと同様に、右側プレート14が加熱される程度と、左側プレート15が加熱される程度とを概ね等しくすることができ、右頸動脈部分に接する右側プレート14と左頸動脈部分に接する左側プレート15との温度差を低減することができ、利用者が感じる不快感を低減することができる。
【0057】
[PWM制御]
制御装置76は、頸動脈冷却運転または頸動脈加熱運転が実行されているときに、中央熱電素子16のPWM(Pulse Width Modulation)制御と右側熱電素子17のPWM制御と左側熱電素子18のPWM制御とを実行している。中央熱電素子16のPWM制御では、中央熱電素子16に印加される電圧のパルス波が、予め定められたPWM制御周期ごとに中央熱電素子16に出力され、デューティ比が所定値に等しくなるようにパルス波のパルス幅が調整される。デューティ比は、パルス幅がPWM制御周期で除算されることにより算出された値に等しく、すなわち、PWM制御周期のうちの右側熱電素子17に電圧が印加されている時間がPWM制御周期で除算されることにより算出された値に等しい。中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が大きいほど、中央熱電素子16に流れる電流は大きくなり、中央プレート12を冷却または加熱する能力は増大する。
【0058】
右側熱電素子17のPWM制御では、中央熱電素子16のPWM制御と同様に、右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比が所定値に等しくなるように、右側熱電素子17に印加される電圧のパルス波のパルス幅が調整される。右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比が大きいほど、右側熱電素子17に流れる電流は大きくなり、右側プレート14を冷却または加熱する能力は増大する。左側熱電素子18のPWM制御では、中央熱電素子16のPWM制御と同様に、左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比が所定値に等しくなるように、左側熱電素子18に印加される電圧のパルス波のパルス幅が調整される。左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比が大きいほど、左側熱電素子18に流れる電流は大きくなり、左側プレート15を冷却または加熱する能力は増大する。
【0059】
身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転または頸動脈加熱運転が実行されているときに、入力装置75が利用者に操作されることにより、複数のモードのうちの1つのモードに切り替えられる。複数のモードは、ノーマルモードと、より冷却能力を大きくするためのフルモードと、消費電力を抑えた運転を行うエコモードとを含んでいる。
【0060】
[ノーマルモード]
制御装置76は、モードがノーマルモードに切り替えられたときに、温度変動制御周期(所定期間)ごとに中央熱電素子ノーマルモード制御を繰り返し実行し、左右熱電素子ノーマルモード制御を実行する。中央熱電素子ノーマルモード制御では、温度変動制御周期は、第1中央熱電素子ノーマルモード期間と第2中央熱電素子ノーマルモード期間とから形成されている。温度変動制御周期の1周期には、第1中央熱電素子ノーマルモード期間と第2中央熱電素子ノーマルモード期間が1つずつ連続して含まれる。第1中央熱電素子ノーマルモード期間の長さは、第2中央熱電素子ノーマルモード期間より長い。例えば、第1中央熱電素子ノーマルモード期間の長さは、15秒に等しく、第2中央熱電素子ノーマルモード期間の長さは、3秒に等しい。第1中央熱電素子ノーマルモード期間の中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比は、第2中央熱電素子ノーマルモード期間の中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比より大きい。例えば、第1中央熱電素子ノーマルモード期間では、中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が常に100%に等しくなるように、中央熱電素子16のPWM制御が実行され、第2中央熱電素子ノーマルモード期間では、中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が常に30%に等しくなるように、中央熱電素子16のPWM制御が実行される。中央熱電素子ノーマルモードでは、中央温度センサ71により検出された温度が利用されればよい。
【0061】
左右熱電素子ノーマルモード制御では、制御装置76は、定期的に、右側温度センサ72により検出された右側温度を取得し、左側温度センサ73により検出された左側温度を取得する。制御装置76は、右側温度が目標温調温度に等しくなるように、右側温度に基づいて右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比をPI制御する。制御装置76は、左側温度が目標温調温度に等しくなるように、左側温度に基づいて左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比をPI制御する。目標温調温度としては、頸動脈冷却運転が実行されているときに、20℃が例示される。
【0062】
図8は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときに、中央プレート12の温度の変化と、右側プレート14の温度の変化と、左側プレート15の温度の変化とを示すグラフである。図8の折れ線81は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときの中央プレート12の温度を示している。折れ線81は、温度変動制御周期における中央プレート12の温度の最大値と最小値との差が1℃より大きいことを示している。すなわち、温度変動制御周期の長さと、第1中央熱電素子ノーマルモード期間の長さと、第2中央熱電素子ノーマルモード期間の長さとは、温度変動制御周期における中央プレート12の温度の最大値と最小値との差が1℃より大きくなるように設定されている。身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときに、中央プレート12の温度が変動することにより、頸部のうちの中央プレート12に接触している部分の温度を利用者が感じる感覚が麻痺することを抑制することができ、利用者に冷感をより感じさせることができる。
【0063】
図8の折れ線82は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときの右側プレート14の温度を示している。折れ線82は、目標温調温度である20℃に右側プレート14の温度が時間とともに接近していることを示し、温度変動制御周期における右側プレート14の温度の最大値と最小値との差が1℃より小さいことを示している。図8の折れ線83は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときの左側プレート15の温度を示している。折れ線83は、目標温調温度である20℃に左側プレート15の温度が時間とともに接近していることを示し、温度変動制御周期における左側プレート15の温度の最大値と最小値との差が1℃より小さいことを示している。
【0064】
身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられたときに、右側プレート14の温度と左側プレート15の温度とが目標温度に向けて低下することにより、利用者の右頸動脈部分と左頸動脈部分とを冷却することができ、利用者の頸動脈を流れる血液を冷却することができる。利用者は、右側プレート14の温度と左側プレート15の温度とが中央プレート12の温度のように変動しないことにより、右頸動脈部分と左頸動脈部分との温度を感じる感覚が麻痺することがある。身体温冷装置1は、利用者が右頸動脈部分と左頸動脈部分との温度を感じる感覚が麻痺したときでも、中央プレート12に接触している部分の温度を利用者に感じさせることにより、利用者に冷感を感じさせることができる。
【0065】
[フルモード]
制御装置76は、モードがフルモードに切り替えられたときに、中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が常に100%に等しくなるように、中央熱電素子16のPWM制御を実行する。制御装置76は、モードがフルモードに切り替えられたときに、さらに、右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比が常に100%に等しくなるように、右側熱電素子17のPWM制御を実行する。制御装置76は、モードがフルモードに切り替えられたときに、さらに、左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比が常に100%に等しくなるように、左側熱電素子18のPWM制御を実行する。
【0066】
図9は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときに、中央プレート12の温度の変化と、右側プレート14の温度の変化と、左側プレート15の温度の変化とを示すグラフである。図9の折れ線84は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときの中央プレート12の温度を示している。折れ線84は、時間が経過するにつれて中央プレート12の温度がある温度に接近することを示し、温度変動制御周期における中央プレート12の温度の最大値と最小値との差が1℃より小さいことを示している。
【0067】
図9の折れ線85は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときの右側プレート14の温度を示している。折れ線85は、時間が経過するにつれて右側プレート14の温度がある温度に接近していることを示し、温度変動制御周期における右側プレート14の温度の最大値と最小値との差が1℃より小さいことを示している。図9の折れ線86は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときの左側プレート15の温度を示している。折れ線86は、時間が経過するにつれて左側プレート15の温度がある温度に接近していることを示し、温度変動制御周期における左側プレート15の温度の最大値と最小値との差が1℃より小さいことを示している。
【0068】
身体温冷装置1は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、フルモードに切り替えられたときに、右側プレート14の温度と左側プレート15の温度とが低下することにより、利用者の右頸動脈部分と左頸動脈部分とを冷却することができ、利用者の頸動脈を流れる血液を冷却することができる。利用者は、中央プレート12と右側プレート14と左側プレート15のそれぞれにおいて、温度が変動する程度が小さいことにより、温度を感じる感覚が麻痺することがある。身体温冷装置1は、フルモードに切り替えられたときに、フルモードに切り替えられる前と比較して、中央プレート12の温度が変動する程度を大きくすることができ、中央プレート12に接触している部分の温度を利用者に感じさせることができる。
【0069】
[エコモード]
制御装置76は、モードがエコモードに切り替えられたときに、温度変動制御周期ごとに、中央熱電素子エコモード制御と左右熱電素子エコモード制御とを繰り返し実行する。温度変動制御周期は、PWM制御周期より十分に長く、例えば、18秒に等しい。中央熱電素子エコモード制御では、温度変動制御周期は、第1中央熱電素子エコモード期間と第2中央熱電素子エコモード期間とから形成されている。温度変動制御周期の1周期には、第1中央熱電素子エコモード期間と第2中央熱電素子エコモード期間が1つずつ連続して含まれる。第1中央熱電素子エコモード期間の長さは、第2中央熱電素子エコモード期間より長い。例えば、第1中央熱電素子エコモード期間の長さは、11秒に等しく、第2中央熱電素子エコモード期間の長さは、7秒に等しい。第1中央熱電素子エコモード期間の中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比は、第2中央熱電素子エコモード期間の中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比より大きい。例えば、第1中央熱電素子エコモード期間では、中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が常に80%に等しくなるように、中央熱電素子16のPWM制御が実行され、第2中央熱電素子エコモード期間では、中央熱電素子16のPWM制御のデューティ比が常に0%に等しくなるように、中央熱電素子16のPWM制御が実行される。
【0070】
左右熱電素子エコモード制御では、温度変動制御周期は、第1左右熱電素子エコモード期間と第2左右熱電素子エコモード期間とから形成されている。第1左右熱電素子エコモード期間の長さと第2左右熱電素子エコモード期間の長さは等しく、本実施例では9秒である。第1左右熱電素子エコモード期間の右側熱電素子17と左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比は、第2左右熱電素子エコモード期間の右側熱電素子17と左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比より小さい。例えば、第1左右熱電素子エコモード期間では、右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比が常に0%に等しくなるように、右側熱電素子17のPWM制御が実行され、左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比が常に0%に等しくなるように、左側熱電素子18のPWM制御が実行される。第2左右熱電素子エコモード期間では、右側熱電素子17のPWM制御のデューティ比が常に50%に等しくなるように、右側熱電素子17のPWM制御が実行され、左側熱電素子18のPWM制御のデューティ比が常に50%に等しくなるように、左側熱電素子18のPWM制御が実行される。すなわち、制御装置76は、第2中央熱電素子エコモード期間と第1左右熱電素子エコモード期間とが時間的に重ならないように、すなわち、右頸動脈部分と左頸動脈部分と後頚部との全部が冷却または加熱されていない期間がないように、中央熱電素子エコモード制御と左右熱電素子エコモード制御とを実行している。
【0071】
図10は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、エコモードに切り替えられたときに、中央プレート12の温度の変化と、右側プレート14の温度の変化と、左側プレート15の温度の変化とを示すグラフである。図10の折れ線87は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、エコモードに切り替えられたときの中央プレート12の温度を示している。折れ線87は、温度変動制御周期で中央プレート12の温度が上昇したり下降したりすることを示し、中央プレート12の温度が変動することを示している。折れ線87は、温度変動制御周期における中央プレート12の温度の最大値と最小値との差が1℃より大きいことをさらに示している。
【0072】
図10の折れ線88は、頸動脈冷却運転が実行されているときで、かつ、エコモードに切り替えられたときの右側プレート14の温度を示している。折れ線88は、温度変動制御周期で右側プレート14の温度が上昇したり下降したりすることを示し、右側プレート14の温度が変動することを示している。折れ線88は、温度変動制御周期における右側プレート14の温度の最大値と最小値との差が1℃より大きいことをさらに示している。折れ線89は、温度変動制御周期で左側プレート15の温度が上昇したり下降したりすることを示し、左側プレート15の温度が変動することを示している。折れ線89は、温度変動制御周期における左側プレート15の温度の最大値と最小値との差が1℃より大きいことをさらに示している。身体温冷装置1は、エコモードに切り替えられたときに、中央プレート12の温度と右側プレート14の温度と左側プレート15の温度とが変動することにより、ノーマルモードに切り替えられたときと同様に、利用者に冷感をより感じさせることができる。利用者は、右頸動脈部分と左頸動脈部分と後頚部との全部が冷却または加熱されていない期間があるときに、冷感または温感を感じないことがある。身体温冷装置1は、エコモードに切り替えられているときに、右頸動脈部分と左頸動脈部分と後頚部との全部が冷却されていない期間がないことにより、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0073】
身体温冷装置1は、頸動脈加熱運転が実行されているときも、頸動脈冷却運転が実行されているときと同様に、利用者に温感をより感じさせることができる。すなわち、身体温冷装置1は、頸動脈加熱運転が実行されているときで、かつ、ノーマルモードに切り替えられているときに、中央プレート12の温度が変動することにより、利用者に温感をより感じさせることができる。身体温冷装置1は、頸動脈加熱運転が実行されているときで、かつ、エコモードに切り替えられているときに、中央プレート12の温度と右側プレート14の温度と左側プレート15の温度とが変動することにより、利用者に温感をより感じさせることができる。
【0074】
[実施例の身体温冷装置1の効果]
実施例の身体温冷装置1は、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18と制御装置76とを備えている。右側熱電素子17と左側熱電素子18とは、利用者の頸部の皮膚のうちの頸動脈を覆う頸動脈部分を冷却または加熱する。中央熱電素子16は、利用者の後頸部を冷却または加熱する。制御装置76は、中央熱電素子16の温度が、右側熱電素子17と左側熱電素子18との温度と異なるように、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とを制御する。このとき、実施例の身体温冷装置1は、利用者の頸動脈部分の温度が一定になるように右側熱電素子17と左側熱電素子18とが利用者の頸動脈を冷却または加熱しているときでも、頸動脈と異なる後頸部の温度が変動するように、利用者の頸部を冷却または加熱することができる。
【0075】
また、実施例の身体温冷装置1の制御装置76は、中央熱電素子16の温度が温度変動制御周期内に第1温度より低くなったり、第1温度より高い第2温度より高くなったり変動するように、中央熱電素子16を制御する。利用者は、冷却または加熱される部位の温度の変動が小さいときに、その部位の温度の感覚が麻痺するものの、その部位の温度が変動すると、その部位の温度の感覚が麻痺しにくい。このため、実施例の身体温冷装置1は、利用者の頸部のうちの中央熱電素子16により冷却または加熱される後頸部の温度の感覚が麻痺することを抑制することができ、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0076】
[他の実施例]
また、実施例の身体温冷装置1は、制御装置76は、第1温度と第2温度との温度差が1.0℃より大きくなるように、中央熱電素子16を制御する。利用者は、冷却または加熱される部位の温度の変動が大きいほど、その部位の温度の感覚が麻痺しにくい。このため、実施例の身体温冷装置1は、第1温度と第2温度との温度差が1.0℃より大きいことにより、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。なお、実施例の身体温冷装置1は、第1温度と第2温度との温度差が2.0℃より大きいときに、利用者に冷感または温感をさらに感じさせることができる。実施例の身体温冷装置1は、第1温度と第2温度との温度差が5.0℃より大きいときに、利用者に冷感または温感をさらに感じさせることができる。
【0077】
また、実施例の身体温冷装置1は、右側熱電素子17の温度を検出する右側温度センサ72と、左側熱電素子18の温度を検出する左側温度センサ73とをさらに備えている。制御装置76は、右側温度センサ72により検出された温度に基づいて右側熱電素子17を制御し、左側温度センサ73により検出された温度に基づいて左側熱電素子18を制御する。このような身体温冷装置1は、利用者の頸動脈の近傍の皮膚に接触する右側プレート14または左側プレート15の温度が予め定められた範囲に含まれるように、右側熱電素子17と左側熱電素子18とを適切に制御することができ、利用者の不快感を低減することができる。
【0078】
また、実施例の身体温冷装置1は、熱交換器33と中央熱電素子放熱部34と右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36と第1チューブ61と第2チューブ62と電線部63と複数の保持部材64とをさらに備えている。熱交換器33は、熱冷媒と空気とを熱交換する。中央熱電素子放熱部34と右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とは、熱冷媒を用いて中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とを放熱させる。第1チューブ61には、熱交換器33により熱交換された熱媒体を中央熱電素子放熱部34と右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とに供給する第2流路42が形成されている。第2チューブ62には、中央熱電素子放熱部34と右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とにより熱交換された熱媒体を熱交換器33に供給する第7流路47が形成されている。電線部63は、制御装置76が中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とを制御するときに、制御装置76から中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とに電力を供給する。複数の保持部材64は、電線部63が第1チューブ61と第2チューブ62との間に配置された状態で、電線部63を第1チューブ61と第2チューブ62とに対して保持する。このような身体温冷装置1は、第1チューブ61を流れる熱媒体と第2チューブ62を流れる熱媒体との間で熱交換される熱量を低減することができ、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とが放熱する効率が低減することを抑制することができ、省エネ性を向上させることができる。
【0079】
ところで、既述の実施例の身体温冷装置1の複数の保持部材64は、粘着テープから形成されているが、粘着テープと異なる他の部材から形成されてもよい。その部材としては、電線部63が第1チューブ61と第2チューブ62との間に配置された状態で電線部63を第1チューブ61と第2チューブ62とに対して保持するように塑性変形する金属材料が例示される。このときも、身体温冷装置1は、第1チューブ61を流れる熱媒体と第2チューブ62を流れる熱媒体とで熱交換される熱量を低減することができ、中央熱電素子16と右側熱電素子17と左側熱電素子18とが放熱する効率が低減することを抑制することができ、省エネ性を向上させることができる。
【0080】
ところで、既述の実施例の身体温冷装置1のケーブル部5は、第1チューブ61と第2チューブ62とが直接に接触しないように電線部63が配置されているが、第1チューブ61と第2チューブ62とが接触してもよい。身体温冷装置1は、第1チューブ61と第2チューブ62とが接触したときでも、後頸部の温度が変動するように利用者の頸部を冷却または加熱することにより、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0081】
また、実施例の身体温冷装置1の熱交換器33には、空気に熱的に接触する複数の伝熱管53にそれぞれ形成される複数の流路と、熱媒体を複数の流路に流入させる入口55と、熱媒体を複数の流路から流出させる出口56とが形成されている。入口55は、複数の流路より下側に配置されている。出口56は、複数の流路より上側に配置されている。このような身体温冷装置1は、複数の伝熱管53にそれぞれ形成される複数の流路に熱媒体が滞留する時間を重力の影響で長くすることができ、熱交換器33が熱媒体と空気とが熱交換する性能を向上させることができる。
【0082】
ところで、既述の実施例の身体温冷装置1の熱交換器33は、入口55が出口56より下に配置されているが、入口55が出口56より上に配置されていてもよい。身体温冷装置1は、熱交換器33の入口55が出口56より上に配置されているときでも、後頸部の温度が変動するように利用者の頸部を冷却または加熱することにより、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0083】
また、実施例の身体温冷装置1は、熱媒体を右側熱媒体と左側熱媒体とに分ける分岐部37と、右側熱媒体と右側熱電素子17とを熱交換する右側熱電素子放熱部35と、左側熱媒体と左側熱電素子18とを熱交換する左側熱電素子放熱部36とを備えている。このような身体温冷装置1は、右側プレート14の温度と左側プレート15の温度との温度差が大きくなることを抑制することができ、利用者の右頸動脈部分の温度と左頸動脈部分の温度とが異なることにより発生する利用者の不快感を低減することができる。
【0084】
また、実施例の身体温冷装置1の右側熱電素子放熱部35での熱媒体の流れる流路の断面積と、左側熱電素子放熱部36での熱媒体の流れる流路の断面積とは、中央熱電素子放熱部34での熱媒体の流れる流路の断面積に等しい。このような身体温冷装置1は、右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とでの熱媒体の流れの流量を中央熱電素子放熱部34での熱媒体の流れの流量より遅くすることができ、右側熱電素子17と左側熱電素子18とを中央熱電素子16より高性能に放熱させることができる。
【0085】
ところで、既述の実施例の身体温冷装置1の熱媒体回路31は、熱媒体から分けられた右側熱媒体と左側熱媒体とを右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とに流入させているが、熱媒体を分けることなく右側熱電素子放熱部35と左側熱電素子放熱部36とに流入させてもよい。たとえば、熱媒体回路31は、右側熱電素子放熱部35を流れた後の熱媒体を左側熱電素子放熱部36に流入させてもよい。身体温冷装置1は、このようなときでも、後頸部の温度が変動するように利用者の頸部を冷却または加熱することにより、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0086】
ところで、既述の実施例の身体温冷装置1の中央プレート12と中央熱電素子16とは、利用者の後頚部が冷却または加熱されるように形成されているが、利用者の右頸動脈部分と左頸動脈部分と後頚部とに異なる他の部位冷却または加熱されるように形成されていてもよい。その部位としては、右頸動脈部分と後頚部との間の部位、左頸動脈部分と後頚部との間の部位が例示される。このときも、身体温冷装置1は、中央プレート12の温度が変動することにより、その部位の温度を利用者が感じる感覚が麻痺することを抑制することができ、利用者に冷感または温感をより感じさせることができる。
【0087】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 :身体温冷装置
2 :ネック部
3 :本体部
5 :ケーブル部
16:中央熱電素子(第2熱電素子)
17:右側熱電素子(第1熱電素子)
18:左側熱電素子(第1熱電素子)
31:熱媒体回路
33:熱交換器(熱交換部)
34:中央熱電素子放熱部(熱電素子放熱部)
35:右側熱電素子放熱部(熱電素子放熱部)
36:左側熱電素子放熱部(熱電素子放熱部)
37:分岐部
53:複数の伝熱管
55:入口
56:出口
61:第1チューブ
62:第2チューブ
63:電線部
64:複数の保持部材
71:中央温度センサ
72:右側温度センサ(温度検出部)
73:左側温度センサ(温度検出部)
76:制御装置(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10