(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162926
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】風力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01L 7/00 20060101AFI20241114BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01L7/00 S
G01L13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078942
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】相原 知子
(72)【発明者】
【氏名】大和 伸行
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA01
2F055BB05
2F055FF38
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構成で建物の壁体に作用する風力を測定できる風力測定装置を提供すること。
【解決手段】風力測定装置1は、建物2の屋外側に位置する屋外側部材30に屋外側測定孔11Aが形成されるとともに建物2の屋内側に位置する屋内側部材40に屋内側測定孔11Bが形成された風力測定治具10と、風力測定治具10の屋外側測定孔11Aに接続された第1圧力測定チューブ12Aと、風力測定治具10の屋内側測定孔11Bに接続された第2圧力測定チューブ12Bと、第1圧力測定チューブ12A内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する第1差圧センサ13Aと、第2圧力測定チューブ12B内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する第2差圧センサ13Bと、屋外側圧力と屋内側圧力との差分を風力として算出する演算装置14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁体に作用する風力を計測する風力測定装置であって、
前記建物の屋外側に位置する部分に屋外側測定孔が形成されるとともに前記建物の屋内側に位置する部分に屋内側測定孔が形成された風力測定治具と、
前記風力測定治具の屋外側測定孔に接続された第1圧力測定チューブと、
前記風力測定治具の屋内側測定孔に接続された第2圧力測定チューブと、
前記第1圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する第1差圧センサと、
前記第2圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する第2差圧センサと、
前記第1差圧センサで測定した屋外側圧力と前記第2差圧センサで測定した屋内側圧力との差分を風力として算出する演算装置と、を備えることを特徴とする風力測定装置。
【請求項2】
前記風力測定治具は、締め付け金物を用いて建物の壁体の上面に仮固定される仮固定部と、
前記仮固定部から延びて前記壁体の屋外側の壁面の一部を覆うとともに前記屋外側測定孔が形成された屋外側部材と、
前記仮固定部から延びて前記壁体の屋内側の壁面の一部を覆うとともに屋内側測定孔が形成された屋内側部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の風力測定装置。
【請求項3】
前記風力測定治具は、建物の床面上に載置される載置部と、
前記載置部から上方に延びて前記屋外側測定孔が形成された屋外側部材と、
前記載置部から上方に延びて前記屋外側部材の屋内側に位置しかつ前記屋内側測定孔が形成された屋内側部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の風力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に作用する風力を計測する風力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の風力を測定するための風力測定装置が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1には、耐風圧建築設計のための風圧測定装置が提案されている。この風圧測定装置は、風洞内にて送風機と対面して配置される耐風圧建築設計用の被測定体を有する。この被測定体の正面及び両側面には、各面の各所に作用する風圧に基づく温度、歪みなどの物理的変化に応じた電気信号を、各所毎に出力する風圧測定用シートが貼付されている。この各所毎の電気信号に基づいて、被測定体の3面に作用する各所の風圧が、風圧出力部にて演算され、プリンタ及び表示部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、比較的簡易な構成で建物の壁体に作用する風力を測定できる風力測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の風力測定装置(例えば、後述の風力測定装置1、1A)は、建物(例えば、後述の建物2)の壁体に作用する風力を計測する風力測定装置であって、前記建物の屋外側に位置する部分(例えば、後述の屋外側部材30)に屋外側測定孔(例えば、後述の屋外側測定孔11A)が形成されるとともに前記建物の屋内側に位置する部分(例えば、後述の屋内側部材40)に屋内側測定孔(例えば、後述の屋内側測定孔11B)が形成された風力測定治具(例えば、後述の風力測定治具10、10A)と、前記風力測定治具の屋外側測定孔に接続された第1圧力測定チューブ(例えば、後述の第1圧力測定チューブ12A)と、前記風力測定治具の屋内側測定孔に接続された第2圧力測定チューブ(例えば、後述の第2圧力測定チューブ12B)と、前記第1圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する第1差圧センサ(例えば、後述の第1差圧センサ13A)と、前記第2圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する第2差圧センサ(例えば、後述の第2差圧センサ13B)と、前記第1差圧センサで測定した屋外側圧力と前記第2差圧センサで測定した屋内側圧力との差分を風力として算出する演算装置(例えば、後述の演算装置14)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、基準圧とは、外気の影響を受けない屋内や、第1差圧センサや第2差圧センサが収容された収容ボックス内の圧力である。
この発明によれば、建物の屋外側に位置する部分に屋外側測定孔が形成されるとともに建物の屋内側に位置する部分に屋内側測定孔が形成された風力測定治具を設ける。さらに、屋外側測定孔に第1圧力測定チューブを接続して、第1差圧センサにより第1圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する。また、屋内側測定孔に第2圧力測定チューブを接続して、第2差圧センサにより第2圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する。そして、演算装置により、屋外側圧力と屋内側圧力との差分を算出して、建物の壁体に作用する風力とする。よって、比較的簡易な構成で建物の壁体に作用する風力を測定できる。
【0007】
第2の発明の風力測定装置(例えば、後述の風力測定装置1)は、前記風力測定治具(例えば、後述の風力測定治具10)は、締め付け金物(例えば、後述のシャコ万力23)を用いて建物の壁体(例えば、後述のベランダ手摺4)の上面に仮固定される仮固定部(例えば、後述の仮固定部20)と、前記仮固定部から延びて前記壁体の屋外側の壁面の一部を覆うとともに前記屋外側測定孔が形成された屋外側部材(例えば、後述の屋外側部材30)と、前記仮固定部から延びて前記壁体の屋内側の壁面の一部を覆うとともに屋内側測定孔が形成された屋内側部材(例えば、後述の屋内側部材40)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、締め付け金物を用いて、風力測定治具の仮固定部を建物の壁体に仮固定するだけで、建物の壁体に穴開け加工をすることなく、建物の壁体に作用する風力を測定でき、低コストである。
【0009】
第3の発明の風力測定装置(例えば、後述の風力測定装置1A)は、前記風力測定治具(例えば、後述の風力測定治具10A)は、建物の床面(例えば、後述の床面3)上に載置される載置部(例えば、後述の載置部50)と、前記載置部から上方に延びて前記屋外側測定孔が形成された屋外側部材(例えば、後述の屋外側部材30)と、前記載置部から上方に延びて前記屋外側部材の屋内側に位置しかつ前記屋内側測定孔が形成された屋内側部材(例えば、後述の屋内側部材40)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、風力測定治具を建物の床面上に載置するだけで、建物の床面上に壁体を設けた場合に、この壁体に作用する風力を容易に測定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的簡易な構成で建物の壁体に作用する風力を測定できる風力測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る風力測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る風力測定装置の側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る風力測定装置の平面図である。
【
図4】
図2中破線Aで囲んだ部分(風力測定治具)の拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係る風力測定治具の縦断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る風力測定装置を構成する風力測定治具の縦断面図である。
【
図7】風洞実験の実験方法を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態に係る風力測定治具についての風洞実験の実験結果を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る風力測定治具についての風洞実験の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、建物壁面に作用する風力を測定する風力測定装置である。風力測定装置は、屋外側測定孔および屋内側測定孔が設けられた風力測定治具を建物に設け、屋外側測定孔に第1圧力測定チューブを接続して、第1差圧センサにより第1圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する。また、屋内側測定孔に第2圧力測定チューブを接続して、第2差圧センサにより第2圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する。そして、演算装置により、屋外側圧力と屋内側圧力との差分を算出して、建物の壁体に作用する風力とする。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る風力測定装置1の構成を示す模式図である。
図2は、風力測定装置1の側面図である。
図3は、風力測定装置1の平面図である。
図4は、
図2中破線Aで囲んだ部分(風力測定治具10)の拡大図である。
図5は、風力測定治具10の縦断面図である。なお、
図2では、理解を容易にするため、仮固定部本体21の延出部22およびシャコ万力23の表示を省略している。
【0014】
風力測定装置1は、建物2に作用する風力を計測するものである。建物2の屋上階の床面3上の端部には、壁体としてのベランダ手摺4が設けられている。
風力測定装置1は、建物2のベランダ手摺4に仮固定されて屋外側測定孔11Aおよび屋内側測定孔11Bが形成された風力測定治具10と、風力測定治具10の屋外側測定孔11Aに接続された第1圧力測定チューブ12Aと、風力測定治具10の屋内側測定孔11Bに接続された第2圧力測定チューブ12Bと、第1圧力測定チューブ12A内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する第1差圧センサ13Aと、第2圧力測定チューブ内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する第2差圧センサ13Bと、第1差圧センサ13Aで測定した屋外側圧力と第2差圧センサ13Bで測定した屋内側圧力との差分を風力として算出する演算装置14と、を備える。
【0015】
第1差圧センサ13A、第2差圧センサ13B、演算装置14は、箱状の収容ボックス6に収容されている。建物2の屋上階の床面3上には、架台7が仮固定され、この架台7上に収容ボックス6が設置されている。第1差圧センサ13Aおよび第2差圧センサ13Bで用いる基準圧とは、外気の影響を受けない屋内や、この収容ボックス6内の圧力である。
【0016】
風力測定治具10は、ベランダ手摺4の笠木5に仮固定される仮固定部20と、仮固定20から延びてベランダ手摺4の屋外側の壁面の一部を覆う屋外側部材30と、仮固定部20から延びてベランダ手摺4の屋内側の壁面の一部を覆う屋内側部材40と、を備える。
仮固定部20は、笠木5の上面を覆う仮固定部本体21と、仮固定部本体21から笠木5の上面に延びる一対の延出部22と、を備える。仮固定部20は、一対の締め付け金物としてのシャコ万力23で一対の延出部22と笠木5とを上下から挟み込む込むことにより、笠木5に仮固定される。
【0017】
仮固定部本体21の下面には、第1圧力測定チューブ12Aおよび第2圧力測定チューブ12Bを中継する中継ボックス24が取り付けられている。
屋外側部材30は、板状であり、屋外側測定孔11Aが形成されている。屋外側部材30の内側には、屋外側測定孔11Aが連通する圧力ポート31が設けられている。
屋内側部材40は、板状であり、屋内側測定孔11Bが形成されている。屋内側部材40の内側には、屋内側測定孔11Bが連通する圧力ポート41が設けられている。
【0018】
第1圧力測定チューブ12Aは、圧力ポート31から延びて、風力測定治具10の内部を通って中継ボックス24に到達し、この中継ボックス24から風力測定治具10の外部に出て、収容ボックス6内の第1差圧センサ13Aまで延びている。
第2圧力測定チューブ12Bは、圧力ポート41から延びて、風力測定治具10の内部を通って中継ボックス24に到達し、この中継ボックス24から風力測定治具10の外部に出て、収容ボックス6内の第2差圧センサ13Bまで延びている。
これら第1圧力測定チューブ12Aおよび第2圧力測定チューブ12Bは、風力測定治具10の外部では、養生のため塩ビ管8で一本にまとめられている。
【0019】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)建物2の屋外側に位置する屋外側部材30に屋外側測定孔11Aが形成されるとともに建物2の屋内側に位置する屋内側部材40に屋内側測定孔11Bが形成された風力測定治具10を設ける。さらに、屋外側測定孔11Aに第1圧力測定チューブ12Aを接続して、第1差圧センサ13Aにより第1圧力測定チューブ12A内の圧力と基準圧との差分を屋外側圧力として測定する。また、屋内側測定孔11Bに第2圧力測定チューブ12Bを接続して、第2差圧センサ13Bにより第2圧力測定チューブ12B内の圧力と基準圧との差分を屋内側圧力として測定する。そして、演算装置14により、屋外側圧力と屋内側圧力との差分を算出して、建物2のベランダ手摺4に作用する風力とする。よって、比較的簡易な構成で建物2のベランダ手摺4に作用する風力を測定できる。
【0020】
(2)シャコ万力23を用いて、風力測定治具10の仮固定部20を建物2のベランダ手摺4に仮固定するだけで、建物2のベランダ手摺4に穴開け加工をすることなく、建物2のベランダ手摺4に作用する風力を測定でき、低コストである。
【0021】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係る風力測定装置1Aを構成する風力測定治具10Aの縦断面図である。
本実施形態では、風力測定治具10Aの構造が、第1実施形態と異なる。
風力測定治具10Aは、壁状であり、建物2の床面3上に載置される載置部50と、載置部50から上方に延びて屋外側測定孔11Aが形成された屋外側部材30と、載置部50から上方に延びて屋外側部材30の屋内側に位置しかつ屋内側測定孔11Bが形成された屋内側部材40と、を備える。
【0022】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(3)風力測定治具10Aを建物2の床面3上に載置するだけで、建物2の床面3上に壁体を設けた場合に、この壁体に作用する風力を容易に測定できる。
【0023】
〔風洞実験〕
上述の風力測定装置1、1Aの模型を製作し、風洞実験装置により、この模型に風を当てて、屋外側の側面と屋内側の側面との差圧(風力)を計測する風洞実験を行った。
図7は、第1実施形態に係る風力測定装置1についての風洞実験示す図である。
風洞実験装置は、吹出口の大きさが1.5m×1.5mであり、最大風速25m/sが可能である。
【0024】
今回の風洞実験では、風洞実験装置の吹出口の吹出し方向に対する風力測定治具の角度を、0°、15°、30°、45°と変化させた。なお、
図7は、吹出口の吹出し方向に対する風力測定治具の角度を0°とした状態である。また、吹出口から吹き出す風の風速を、1m/s、5m/s、15m/s、25m/sと変化させた。
図8は、第1実施形態に係る風力測定装置の風洞実験の実験結果である。
図9は、第2実施形態に係る風力測定装置の風洞実験の実験結果である。
図8および
図9より、吹出口の吹出し方向に対する風力測定治具の角度が小さくなるほど、吹出口から吹き出す風の風速が大きくなるほど、差圧が大きくなることが判る。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、第1差圧センサ13A、第2差圧センサ13B、および演算装置14を同一の収容ボックス6に収容したが、これに限らない。例えば、第1差圧センサ13Aおよび第2差圧センサ13Bを、風力測定治具10、10Aの近傍の同一または別個の収容ボックスに収納し、演算装置14をこれら第1差圧センサ13Aや第2差圧センサ13Bから離れた位置に配置しても良い。この場合、各差圧センサ13A、13Bと演算装置14とを無線あるいは有線で接続してよい。
【符号の説明】
【0026】
1、1A…風力測定装置 2…建物 3…床面
4…ベランダ手摺(壁体) 5…笠木 6…収容ボックス
7…架台 8…塩化ビニル管
10、10A…風力測定治具 11A…屋外側測定孔 11B…屋内側測定孔
12A…第1圧力測定チューブ 12B…第2圧力測定チューブ
13A…第1差圧センサ 13B…第2差圧センサ 14…演算装置
20…仮固定部 21…仮固定部本体 22…延出部
23…シャコ万力(締め付け金物) 24…中継ボックス
30…屋外側部材 31…圧力ポート
40…屋内側部材 41…圧力ポート 50…載置部