(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162956
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】サーバ装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20241114BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149148
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2023109452の分割
【原出願日】2023-07-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2023077198
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 輝嘉
(72)【発明者】
【氏名】新田 巖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜太
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB34
5L049BB34
(57)【要約】
【課題】サプライチェーンに含まれる製品同士の紐付け状況を把握しやすくする。
【解決手段】サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品情報を企業毎に紐付けて記憶するサーバ装置。対象企業のアカウントに対する、対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡を、前記対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、これに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行し、前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて、前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知する。紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第2連絡を、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて第2識別情報を通知することを含む。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品に関する製品情報を企業毎に紐付けて記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置であって、
前記制御部は、
対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡であって、第1識別情報を含む第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、前記対象企業のアカウントに送信することと、
前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行することと、
前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記対象企業のアカウントから受け取り、前記ステータスを、前記受け取った第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知することと、
を実行し、
前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第2連絡であって、第2識別情報を含む第2連絡を、前記対象企業のアカウントから受け取り、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、
前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知することを含む、
サーバ装置。
【請求項2】
前記対象製品が製品ツリーの終端に位置する場合、
前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に終端フラグを設定することを含み、
前記ステータスを通知することは、前記終端フラグが設定済みであることを示す情報を前記第1識別情報に関連付けて前記第2下流企業のアカウントに通知することを含み、
前記対象製品が製品ツリーの終端に位置しない場合、
前記紐付け作業に関する処理は、前記第2識別情報を含む前記第2連絡を、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、
前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知することを含む、
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記対象製品の製品情報に対する紐付け作業が完了した後に、前記上流企業のアカウントに前記第2連絡を送信する、
請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記記憶装置は、前記第1識別情報と、前記第1識別情報に関連付く前記第2識別情報とを記憶する、
請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記第1連絡は、前記下流企業の下流製品と前記対象製品とを紐付けるリクエストを含み、
前記第2連絡は、前記対象製品と前記上流企業の上流製品とを紐付けるリクエストを含む、
請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記第1連絡は、前記対象製品よりも上流に位置する製品における紐付け状況の照会リ
クエストを含む、
請求項5に記載のサーバ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2連絡を送信した前記上流企業のアカウントから、前記上流製品の製品情報に対して、更なる上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第3連絡であって、第3識別情報を含む第3連絡を受け取り、前記第3連絡を、前記上流企業よりも上流に位置する企業のアカウントに送信する、
請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項8】
前記製品情報は、トレーサビリティ関連情報を含む、
請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項9】
前記トレーサビリティ関連情報は、温室効果ガスの排出量に関する情報、所定の原料に関するリサイクル率、デューデリジェンスに関するスコアのうちの少なくとも1つを含む、
請求項8に記載のサーバ装置。
【請求項10】
サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品に関する製品情報を企業毎に紐付けて記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置が実行する情報処理方法であって、
対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡であって、第1識別情報を含む第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、前記対象企業のアカウントに送信するステップと、
前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行するステップと、
前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記対象企業のアカウントから受け取り、前記ステータスを、前記受け取った第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知するステップと、
を含み、
前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第2連絡であって、第2識別情報を含む第2連絡を、前記対象企業のアカウントから受け取り、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信するステップを含み、
前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知するステップを含む、
情報処理方法。
【請求項11】
前記対象製品が製品ツリーの終端に位置する場合、
前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に終端フラグを設定することを含み、
前記ステータスを通知することは、前記終端フラグが設定済みであることを示す情報を前記第1識別情報に関連付けて前記第2下流企業のアカウントに通知することを含み、
前記対象製品が製品ツリーの終端に位置しない場合、
前記紐付け作業に関する処理は、前記第2識別情報を含む前記第2連絡を、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、
前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知することを含む、
請求項10に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記対象製品の製品情報に対する紐付け作業が完了した後に、前記上流企業のアカウントに前記第2連絡を送信する、
請求項10または11に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記記憶装置に、前記第1識別情報と、前記第1識別情報に関連付く前記第2識別情報とを記憶させるステップをさらに含む、
請求項10または11に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記第1連絡は、前記下流企業の下流製品と前記対象製品とを紐付けるリクエストを含み、
前記第2連絡は、前記対象製品と前記上流企業の上流製品とを紐付けるリクエストを含む、
請求項10または11に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記第1連絡は、前記対象製品よりも上流に位置する製品における紐付け状況の照会リクエストを含む、
請求項14に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記第2連絡を送信した前記上流企業のアカウントから、前記上流製品の製品情報に対して、更なる上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第3連絡であって、第3識別情報を含む第3連絡を受け取り、前記第3連絡を、前記上流企業よりも上流に位置する企業のアカウントに送信するステップをさらに含む、
請求項10または11に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記製品情報は、トレーサビリティ関連情報を含む、
請求項10または11に記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記トレーサビリティ関連情報は、温室効果ガスの排出量に関する情報、所定の原料に関するリサイクル率、デューデリジェンスに関するスコアのうちの少なくとも1つを含む、
請求項17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
請求項10に記載の情報処理方法を前記サーバ装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サプライチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
サプライチェーンを構成する複数の企業において情報共有を行うシステムが知られている。これに関して、例えば、特許文献1には、サプライチェーンに含まれる企業間で情報共有を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、サプライチェーンに含まれる製品同士の紐付け状況を把握しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一態様は、
サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品に関する製品情報を企業毎に紐付けて記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置であって、前記制御部は、対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡であって、第1識別情報を含む第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、前記対象企業のアカウントに送信することと、前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行することと、前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記対象企業のアカウントから受け取り、前記ステータスを、前記受け取った第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知することと、を実行し、前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第2連絡であって、第2識別情報を含む第2連絡を、前記対象企業のアカウントから受け取り、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知することを含む、サーバ装置である。
【0006】
本開示の実施形態の一態様は、
サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品に関する製品情報を企業毎に紐付けて記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置が実行する情報処理方法であって、対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡であって、第1識別情報を含む第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、前記対象企業のアカウントに送信するステップと、前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行するステップと、前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記対象企業のアカウントから受け取り、前記ステータスを、前記受け取った第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知するステップと、を含み、前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第2連絡であって、第2識別情報を含む第2連絡を、前記対象企業のアカウントから受け取り、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信するステップを含み、前記ステータスを通知す
ることは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を通知するステップを含む、情報処理方法である。
【0007】
また、他の態様として、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、サプライチェーンに含まれる製品同士の紐付け状況を把握しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るサプライチェーンを説明する図。
【
図2】サプライチェーンによって供給される製品同士の関係を説明する図。
【
図3】企業端末とサーバ装置との間で行われる処理の概要を示した図。
【
図4】第一の実施形態において企業端末とサーバ装置との間で行われる処理の概要を示した図。
【
図5】実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成図。
【
図6】実施形態に係る企業端末のハードウェア構成図。
【
図7】実施形態に係るサーバ装置のソフトウェア構成図。
【
図8】企業端末によって生成される製品情報の一例。
【
図10】製品ツリーと各工程で排出される二酸化炭素の量を説明する図。
【
図11】製品ツリーを画像によって出力した画面の一例。
【
図12】アクセス権限が無い製品を非開示とした場合の製品ツリーの一例。
【
図13】第一の実施形態においてサーバ装置が行う処理のフローチャート。
【
図14】第一の実施形態においてサーバ装置が行う処理のフローチャート。
【
図15】第二の実施形態において企業端末とサーバ装置との間で行われる処理の概要を示した図。
【
図16】第二の実施形態においてサーバ装置が行う処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
近年、自動車、電池等の製品を製造する際に排出される温室効果ガスの量を追跡したい、すなわち、カーボンフットプリントを追跡したいという要望がある。
【0011】
ここで、製品が、複数の企業を含むサプライチェーンによって供給される場合を考える。一例では、サプライチェーンに含まれる少なくとも一部の企業(中間サプライヤー)は、1以上の上流企業から部品を受け取り、受け取った部品を使用して自社製品を生産(製造を含む)し、生産された自社製品を次の工程における企業(下流企業)に納入し得る。最上流企業は、直接的に自社製品を生産し、生産された自社製品を次の工程における企業に納入し得る。サプライチェーンの一部の企業は、他の企業から受け取った製品をそのまま別の企業に納入(すなわち、流通に関与)し得る。複数の企業がこれを繰り返し、最終工程において、最終的な製品が得られる。
【0012】
自動車に関する製品を得る場面では、サプライチェーンは、OEMメーカー及び複数のサプライヤーから構成されてよい。OEMメーカーは、最終的な製品を組み立てる企業(最下流企業)であってよく、サプライヤーは、当該製品を生産するための部品、素材、アッセンブリ等を供給する企業であってよい。サプライチェーンに含まれる企業は、製品に応じて決定され得る。
【0013】
なお、以降の説明において、複数のサプライヤーのそれぞれが生産する部品等を「製品
」と称し、最終的な製品を「最終製品」と称する。一例では、最終製品は消費者に供給され得る。また、サプライチェーンに含まれるサプライヤー及びOEMメーカーのことを単に「企業」と称する。また、サプライチェーンが有する複数の階層のそれぞれを「Tier」と称する。
以下の説明において、サプライチェーンにおける特定の階層をTierNといった語で表現
する。Nは、サプライチェーンにおける階層を表し、数値が小さいほど、下流に位置することを意味する。
【0014】
斯様なシステムにおいて、例えば、最終製品の製造にともなって排出される温室効果ガスの総量を算出するためには、複数の企業間における製品の供給関係を明確にすることが求められる。最終製品を構成する複数の製品同士の関係が明確でなければ、複数の工程において排出される温室効果ガスの総量を正しく算出することが困難であるからである。
【0015】
複数の企業間における製品の供給関係を明確にするために、サプライチェーンに含まれる各企業から、製品の供給関係を示す情報を収集するという方法がある。全ての企業から、斯様な情報を収集することで、最終製品を構成する複数の製品同士の供給関係を示したツリー(以下、製品ツリー)を生成することが可能になる。また、生成された製品ツリーを利用して、カーボンフットプリントの追跡(例えば、温室効果ガスの排出量算出)を行うことが可能になる。また、各企業は、製品ツリーを利用して生成した情報を取得することができる。
【0016】
しかし、サプライチェーンに含まれる複数の企業に情報提供を行わせる場合、製品ツリーを生成するための情報がどこまで集まったかを判断することが難しいという問題がある。
例えば、あるTier(TierN)に属する企業が、自社製品と、一つ上の階層(TierN+1)に属する企業が生産する製品との関係を示す情報を提供したとする。サーバ装置は、斯様な情報に基づいて、TierNとTierN+1との間における、製品同士の供給関係を確定させる。同様に、TierN+1に属する企業が、自社製品と、TierN+2に属する企業が生産する製品との関係を提供すると、サーバ装置は、TierN+1とTierN+2との間における、製品同士の供給関係を確定させる。これを最上流のTierまで繰り返すことで、最終的な製品ツリーを確定させることができる。
【0017】
しかし、情報提供を行った各企業は、製品同士の供給関係を確定させる処理が、上流方向のどの階層まで完了しているかを知ることができない。全ての製品について供給関係を確定させなければ、サーバ装置が製品ツリーを生成できないため、各企業は、製品ツリーに関する情報をどのタイミングでサーバ装置から得ることができるかを知ることができない。
本開示に係るサーバ装置は、かかる問題を解決する。
【0018】
本開示の一態様に係るサーバ装置は、サプライチェーンに含まれる複数の企業それぞれの製品に関する製品情報を企業毎に紐付けて記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置である。
具体的には、前記制御部は、対象製品の製品情報に対する紐付け作業に関する第1連絡であって、第1識別情報を含む第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取り、前記対象企業のアカウントに送信することと、前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記紐付け作業に関する処理を実行することと、前記対象製品の前記紐付け作業のステータスを前記対象企業のアカウントから受け取り、前記ステータスを、前記受け取った第1連絡に含まれる第1識別情報に関連付けて前記下流企業より更に下流に位置する第2下流企業のアカウントに向けて通知することと、を実行し、前記紐付け作業に関する処理は、前記対象製品の製品情報に紐付けする上流製品の製品情報に対する紐付け作業に関
する第2連絡であって、第2識別情報を含む第2連絡を、前記対象企業のアカウントから受け取り、前記対象企業の上流企業のアカウントに送信することを含み、前記ステータスを通知することは、前記第1識別情報に関連付けて前記第2識別情報を前記第2下流企業のアカウントに通知することを含む。
【0019】
対象企業とは、対象製品を生産する企業である。対象企業は、サプライチェーンにおいて、下流企業よりも上流に位置する。
製品情報とは、サプライチェーンに含まれる各企業が生産する製品に関する情報である。製品情報は、トレーサビリティに関する演算を行うための情報(トレーサビリティ関連情報)を含んでもよい。トレーサビリティ関連情報は、例えば、対象製品を生産する際に排出される温室効果ガスの量や、エネルギー消費量を含んでいてもよい。
【0020】
紐付け作業とは、供給関係のある製品情報同士を関連付ける作業である。制御部は、例えば、サプライチェーンの下流に位置する第1製品の製品情報と、上流に位置する第2製品(例えば、第1製品の製造に利用される製品。第1製品に包含される製品であってもよい)の製品情報とを紐付ける処理を行う。
【0021】
なお、以降の説明において、サプライチェーンにおいて、ある製品よりも相対的に下流に位置する製品を下流製品、ある製品よりも相対的に上流に位置する製品を上流製品と称する。また、下流製品を製造する企業を下流企業、上流製品を製造する企業を上流企業と称する。また、下流企業よりも更に下流に位置する企業を第2下流企業と称する。
【0022】
第1連絡とは、対象企業の対象製品について、サーバ装置に紐付け作業を行わせるために、下流企業から対象企業に対して送信される連絡である。第1連絡は、例えば、下流企業が製造する下流製品と、対象製品との紐付けを行うためのリクエストとすることができる。第1連絡には、第1連絡を識別するための第1識別情報が含まれる。
【0023】
サーバ装置は、下流企業から受け取った第1連絡を対象企業のアカウントに送信し、当該アカウントとインタラクションした結果に基づいて、対象製品について、紐付け作業に関する処理を行う。
紐付け作業に関する処理は、紐付け作業そのもの(例えば、対象製品と下流製品とを関連付ける処理)のほか、上流企業に対して、第2連絡を送信することを含む。第2連絡は、対象製品よりも上流に位置する上流製品に対する紐付け処理(例えば、対象製品と上流製品とを関連付ける処理)をリクエストするものであってもよい。
このように、第1連絡を受け取った対象企業が、サーバ装置を利用して、下流製品と対象製品との紐付けを行い、上流企業に第2連絡を送信する。第2連絡には、第2連絡を識別するための第2識別情報が含まれる。
この処理を、複数のTierを対象として繰り返し実行することで、上流に位置する全ての製品について紐付けを行う(すなわち、製品同士の供給関係を確定させる)ことが可能になる。
【0024】
第1連絡を受け取った対象企業は、サーバ装置によって、紐付け作業に関する処理を行うとともに、当該紐付け作業のステータスを第2下流企業のアカウントに通知してもよい。第2下流企業とは、サプライチェーンにおいて下流企業よりも更に下流に位置する企業である。
前述したように、紐付け作業に関する処理は、対象製品に対して紐付けを行うことと、対象企業よりも上流に位置する上流企業のアカウントに対して第2連絡を送信することを含む。従って、第2下流企業に通知されるステータスは、対象製品に対して行われた紐付けのステータスと、上流企業に対して送信した第2連絡に関するステータスを含みうる。
第2連絡に関するステータスとして、例えば、「どの企業(または、どのTierに属する
企業)に対して第2連絡を発行したか」、「第2連絡に応答して、どの製品(または、どのTierに属する製品)の紐付けが完了したか」といったものが挙げられる。第2連絡に関するステータスには、当該第2連絡を識別するための情報が含まれていてもよい。
【0025】
さらに、サーバ装置は、第1連絡を識別するための第1識別情報と、当該第1連絡と関連する第2連絡を識別するための第2識別情報を記憶してもよい。また、対象企業は、第1識別情報と第2識別情報の関連付けに基づいてステータスの通知を行ってもよい。かかる構成によると、上流方向に連絡がどこまで伝播し、それに応じて製品情報同士の紐付けがどこまで完了しているかを追跡することが可能になる。
【0026】
なお、対象製品が、サプライチェーンの最上流(製品ツリーの終端とも称する)に位置する場合、すなわち、対象製品が製品ツリーの最上流にある場合、対象企業から見て上流企業が存在しないため、第2連絡を送信することができない。この場合、紐付け作業に関する処理として、対象製品の製品情報に終端フラグを設定してもよい。終端フラグとは、対象製品が、製品ツリーの終端(最上流)に位置することを識別するフラグである。
【0027】
また、制御部は、前記第1連絡を受け取ったことに応答して、前記対象製品の製品情報に対する紐付け作業が完了した後に、前記上流企業のアカウントに前記第2連絡を送信するよう構成されてもよい。
すなわち、下流方向における製品情報同士の関係が確定してから、上流方向における製品情報同士の紐付けをリクエストするようにしてもよい。かかる構成によると、下流方向から上流方向に向けて、製品ツリーが確定した状態を順次作り上げることができる。
【0028】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
(第一の実施形態)
本実施形態に係る情報処理システムは、複数の企業を含むサプライチェーンによって供給される製品に関する情報を提供するシステムである。製品に関する情報とは、典型的には、トレーサビリティに関する情報である。サプライチェーンに属する企業は、製品等の属性に応じて適宜決定されてよい。
【0030】
まず、サプライチェーンの構造について説明する。
図1は、本実施形態に係るサプライチェーンの一例を説明する図である。
図1に示されるサプライチェーンは、OEM企業、及びサプライヤーである複数の企業により構成される。
図1の例では、例えば、自動車そのもの、電池等の自動車に関連する製品を製造するサプライチェーンを想定している。OEM企業は、最終製品を組み立てる。サプライヤーである複数の企業(企業A~C)は、最終製品を製造するための部品、素材、アッセンブリ等を供給する。サプライヤーである複数の企業はそれぞれ、1つ以上の製品を生産し、一段下の階層に位置する企業に当該製品を納入する。複数の企業がこれを繰り返し、最終工程(すなわち、OEM企業)において、最終的な製品が得られる。
【0031】
本実施形態では、サプライチェーンの各階層において、製品を納入する側を上流側、当該製品を仕入れて新たな製品を生産する側を下流側と称する。本明細書では、上流側に位置する企業を上流企業、下流側に位置する企業を下流企業と称する。また、上流企業が生産する製品を上流製品、下流企業が生産する製品を下流製品と称する。下流製品には、上流製品が包含される。
また、本実施形態では、サプライチェーンに含まれる階層のことをTier(ティア)と称する。Tier0は、最終的な製品を組み立てる(OEM企業に対応する)最下層の階層であ
り、Tier1,2,3と進むにつれて上流側へ遷移する。注目する階層によっては、下流企業が
上流企業に変わることもある。例えば、Tier2に属する企業Bは、Tier3との関係では下流企業であるが、Tier1との関係では上流企業となる。このように、「上流」と「下流」の
定義は、階層ごとに変わりうる。
なお、上流企業と下流企業との中間には、他の企業が存在していてもよいし、上流製品と下流製品との中間には、他の製品が存在していてもよい。
【0032】
図2は、サプライチェーンによって供給される製品同士の関係を説明する図である。ここでは、最終製品Xを構成する複数の製品の供給関係を樹形図によって表している。本例では、最終製品Xは、製品A1,B1,C1,D1…を組み立てることによって生産される。製品A1は、製品A11,A12,A13…を組み立てることによって生産される。このように、最終製品を構成する複数の製品同士の関係は、個々の製品がノードとなる樹形図によって表すことができる。
以下、特定の最終製品に関する樹形図を、製品ツリーと称する。
【0033】
本実施形態に係るサーバ装置1は、各企業に対応する端末(企業端末2)から、各企業が生産する製品に関する情報(以下、製品情報)と、製品情報同士の関係を紐付けるための情報を収集し、これらに基づいて斯様な製品ツリーを生成する。また、製品情報には、トレーサビリティに関する情報(例えば、製品の生産時に排出される温室効果ガスの量に関する情報。以下、トレーサビリティ関連情報)が含まれており、これを用いて、トレーサビリティに関する処理を行うことができる。
【0034】
図1に示されるとおり、本実施形態に係る情報処理システムは、サーバ装置1及び複数の企業端末2を含んでいる。
【0035】
企業端末2は、サプライチェーンを構成する複数の企業のそれぞれに対応する端末である。各企業に対応する端末の数は任意であってよい。また、対象の企業に対応する端末には、当該対象の企業に関する操作を行う企業(例えば、代行企業)の端末が含まれてもよい。
【0036】
サーバ装置1は、複数の企業端末2それぞれから、製品ツリーを生成するための情報を収集し、収集された情報に基づいて製品ツリーを生成する。更に、サーバ装置1は、生成された製品ツリーに基づいて、トレーサビリティに関する処理(典型的には、二酸化炭素の総排出量を算出する処理等)を実行することができる。また、処理の実行結果を、企業端末2に送信することができる。
【0037】
次に、
図3を用いて、サーバ装置1が製品ツリーを生成する処理の概要について説明する。
図3は、企業端末2とサーバ装置1との間で行われる処理の概要を示した図である。
図3の例では、任意の階層において、下流企業である企業A及び上流企業である企業Bが存在すると仮定している。企業Bは、製品Bを生産して企業Aに納入し、企業Aは、製品Bを用いて製品Aを生産すると想定する。すなわち、
図3の例では、製品ツリー上、製品Bは、製品Aの子ノードとなる。
【0038】
各企業に対応する企業端末2は、自社が生産する製品に関する情報(製品情報)をサーバ装置1に送信する。本例では、企業Aに対応する企業端末2が、製品Aに関する製品情報(製品情報Aとする)を、サーバ装置1に送信する。同様に、企業Bに対応する企業端末2が、製品Bに関する製品情報(製品情報Bとする)を、サーバ装置1に送信する。各企業の製品情報は、サーバ装置1において記憶される。
【0039】
製品ツリーを生成し、生成した製品ツリーに基づいて、トレーサビリティに関する処理
(例えば、CO2排出量を算出する処理)を行うためには、サーバ装置1は、サーバ装置1に記憶された製品情報同士を紐付ける必要がある。紐付けとは、製品同士の供給関係を関連付けることを指す。図示した例では、製品Bを利用して製品Aが生産される。すなわち、製品Aと製品Bとの間には供給関係があるため、製品情報Aと製品情報Bが紐付けの対象となる。
この処理を、全ての製品について繰り返すことで、サーバ装置1は、製品ツリーを生成することができる。また、サーバ装置1は、トレーサビリティに関する演算処理等を行うことができるようになる。
【0040】
サーバ装置1に記憶された製品情報同士を紐付けるための操作は、企業端末2によって行われる。一例では、下流企業(企業A)の担当者が、当該下流企業のアカウントを使用して企業端末2からサーバ装置1にログインし、自社製品である下流製品を紐付けるためのリクエスト(紐付けリクエスト)をサーバ装置1に送信する。サーバ装置1は、紐付けリクエストを上流企業(企業B)に送信し、当該上流企業に、製品情報同士の紐付けを行うための処理を行わせる。
例えば、紐付けリクエストは、当該紐付けリクエストを識別するID(以下、リクエストID)と、紐付けの対象となる下流製品の識別子とを含むものであってもよい。紐付けリクエストを受信したサーバ装置1は、上流企業に依頼を送信し、紐付けリクエストに係る製品に紐付く製品を上流企業に回答させてもよい。サーバ装置1は、これらの情報に基づいて、製品情報同士(すなわち、製品情報Aと製品情報B)を紐付けることができる。
【0041】
なお、ここでは、紐付けリクエストを受信した上流企業が、紐付け先となる製品を回答することで、サーバ装置1が製品情報同士の紐付けを行う例を挙げたが、互いに紐付く製品情報をサーバ装置1が特定することができれば、他の方法を採用してもよい。例えば、上流企業が、下流企業に対してアクセスを許可する自社製品を回答し、下流企業が、アクセスが許可された上流製品の中から紐付け先となる製品を選択してもよい。
【0042】
また、サーバ装置1は、製品情報同士の紐付け結果(ステータス情報)を、下流企業(企業A)に対して通知する。
【0043】
図3に示した処理によって、サプライチェーンの特定の階層において、製品情報同士の紐付けを行うことができる。
しかし、特定の階層において紐付けが完了しても、製品ツリーを完成させることはできない。例えば、
図2の例では、Tier1に属する企業(例えば、製品A1を製造する企業)
が、サーバ装置1に紐付けリクエストを送信することで、Tier1に属する製品とTier2に属する製品とを紐付けることができる。しかし、当該サプライチェーンはTier3まで存在す
るため、Tier2に属する製品とTier3に属する製品との間で紐付けを完了させなければ、製品ツリーを完成させることはできない。
そこで、本実施形態に係るサーバ装置1は、
図3を参照して説明した処理を、複数のTier間で反復して実行する。
【0044】
図4は、当該処理を説明する図である。ここでは、TierN, TierN+1, TierN+2の3つの
階層を例示する。
まず、TierNに属する企業Aのアカウントが、サーバ装置1に対して紐付けリクエスト
を送信する。サーバ装置1は、紐付けリクエストを、TierN+1に属する企業Bのアカウン
トに送信する。当該紐付けリクエストは、「第1連絡」の一例である。紐付けリクエストには、当該紐付けリクエストを識別するためのID(リクエストID)が含まれる。
上流企業(TierN+1に属する企業B)のアカウントは、サーバ装置1とインタラクショ
ンを行い、製品情報同士(TierNに属する製品Aの製品情報と、TierN+1に属する製品Bの製品情報)の紐付けを実行する。
【0045】
続いて、企業Bのアカウントが、企業Bから見た上流企業に向けて紐付けリクエストを発行する。当該紐付けリクエストは、「第2連絡」の一例である。例えば、企業Bは、製品Aと製品Bの紐付けが完了した段階で、TierN+2に属する企業Cに対して紐付けリクエ
ストを発行する。
企業Cのアカウントも、同様に、サーバ装置1とインタラクションを行い、製品情報同士(TierN+1に属する製品Bの製品情報と、TierN+2に属する製品Cの製品情報)の紐付けを実行する。
【0046】
本例では、製品Cが製品ツリーの末端であるため、企業Cは、これ以上上流へ紐付けリクエストを発行することができない。そこで、企業Cは、製品Cの製品情報に、終端を明示するフラグを設定する。
【0047】
紐付けリクエストを受信した企業は、自社の製品についての紐付けが完了すると、紐付け処理の状況を通知するためのステータス情報を下流企業に送信する。例えば、企業Cは、サーバ装置1を介して、企業Bに対して、「受信したリクエストIDを持つ紐付けリクエストに応答して、製品Bと(製品ツリーの末端に位置する)製品Cの紐付けが完了した」旨を通知するステータス情報を送信する。
【0048】
企業Bから企業Aに対しても、同様にステータス情報が送信される。
ただし、企業Bは、サプライチェーンの中間に位置するため、自社製品の紐付けを行ったタイミングでは、製品ツリーの末端まで紐付けが完了したことを企業Aに通知することができない。そこで、このような場合、企業Bは、上流(企業C)からステータス情報が送信されるまで、企業Aに対する通知を保留してもよい。この場合、企業Bは、上流企業である企業Cからステータス情報を受信したことをトリガとして、企業Aにステータス情報を送信するようにしてもよい。
かかる構成によると、全ての企業が、「製品ツリーの末端まで紐付けが完了した」ことを認識することができる。
【0049】
なお、ステータス情報の送信は複数回であってもよい。例えば、企業Bは、自社製品の紐付けが完了したタイミングと、企業Cからステータス情報を受信したタイミングで、それぞれ、企業Aに対して、現在の状況を通知すべく、ステータス情報を送信してもよい。
【0050】
また、ステータス情報には、関連する紐付けリクエストのID(リクエストID)が含まれていてもよい。例えば、企業Bから企業Aに送信されるステータス情報には、企業Aから企業Bに対して発行された紐付けリクエストのリクエストIDが含まれていてもよい。これにより、企業Aは、受信したステータス情報が、どの紐付けリクエストに対応するものであるかを認識することができる。
また、企業Bから企業Aに送信されるステータス情報には、企業Bよりも上流方向において発行された紐付けリクエストのリクエストID(例えば、企業Bから企業Cに対して発行された紐付けリクエストのリクエストID)が含まれていてもよい。これにより、企業Aは、企業Bよりも上流方向における紐付けリクエストの発行状況と、それに対するステータスを認識することができる。
このように、企業Bから企業Aに対して発行されるステータス情報は、(1)企業Aから企業Bに向けた紐付けリクエストのID、(2)企業Bから企業Cに向けた紐付けリクエストのID、(3)企業Bが行った紐付け処理の状況、の3種類のデータを含んでもよい。
【0051】
[ハードウェア構成]
次に、システムを構成する各装置のハードウェア構成について説明する。
図5は、本実
施形態に係るサーバ装置1のハードウェア構成の一例を模式的に示した図である。サーバ装置1は、制御部11、記憶部12、通信モジュール13、及び入出力装置14を有するコンピュータとして構成される。
【0052】
サーバ装置1は、プロセッサ(CPU、GPU等)、主記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等)を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能(ソフトウェアモジュール)を実現することができる。ただし、一部または全部の機能は、例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア回路によってハードウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0053】
制御部11は、所定のプログラムを実行することで、サーバ装置1の各種機能を実現する演算ユニットである。制御部11は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部11は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。
【0054】
記憶部12は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部12には、制御部11にて実行されるプログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。
また、記憶部12には、データベースが構築されており、当該データベースに、複数の企業端末2から収集した製品情報、及び企業に関するアカウント情報が記憶される。詳細については後述する。
【0055】
通信モジュール13は、サーバ装置1をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信モジュール13は、例えば、ネットワークインタフェースボード、無線通信のための無線通信インタフェース等を含むように構成されてよい。サーバ装置1は、通信モジュール13を介して、他のコンピュータ(例えば、各企業端末2)との間でデータ通信を行うことができる。
【0056】
入出力装置14は、オペレータが行った入力操作を受け付け、オペレータに対して情報を提示する手段である。具体的には、入出力装置14は、マウス、キーボード等の入力を行うための装置、及びディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置を含む。入出力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0057】
なお、サーバ装置1の具体的なハードウェア構成は、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部11は、複数のハードウェアプロセッサを含んでもよい。ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA、GPU等で構成されてよい。入出力装置14は省略されてもよいし、例示したもの以外の入出力装置(例えば、光学ドライブ等)が付加されてもよい。また、サーバ装置1は、複数台のコンピュータにより構成されてよい。この場合、各コンピュータのハードウェア構成は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0058】
図6は、本実施形態に係る企業端末2のハードウェア構成の一例を模式的に示した図である。企業端末2は、制御部21、記憶部22、通信モジュール23、及び入出力装置24を有するコンピュータとして構成される。
【0059】
企業端末2は、サーバ装置1と同様、プロセッサ(CPU、GPU等)、主記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブ
ルメディア等)を有するコンピュータとして構成することができる。ただし、一部または全部の機能(ソフトウェアモジュール)は、例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア回路によってハードウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0060】
制御部21は、所定のプログラムを実行することで、企業端末2の各種機能(ソフトウェアモジュール)を実現する演算ユニットである。制御部11は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部21は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。
【0061】
記憶部22は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部22には、制御部21にて実行されるプログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。
【0062】
通信モジュール23は、企業端末2をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信モジュール23は、例えば、ネットワークインタフェースボード、無線通信のための無線通信インタフェース等を含むように構成されてよい。企業端末2は、通信モジュール23を介して、他のコンピュータ(例えば、サーバ装置1)との間でデータ通信を行うことができる。
【0063】
入出力装置24は、オペレータが行った入力操作を受け付け、オペレータに対して情報を提示する手段である。具体的には、入出力装置24は、マウス、キーボード等の入力を行うための装置、及びディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置を含む。入出力装置は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0064】
なお、企業端末2の具体的なハードウェア構成は、サーバ装置1と同様に、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。
【0065】
[ソフトウェア構成]
次に、システムを構成する各装置のソフトウェア構成について説明する。
図7は、本実施形態に係るサーバ装置1のソフトウェア構成を模式的に示した図である。本実施形態では、制御部11は、情報収集部111、紐付部112、及び情報提供部113の3つのソフトウェアモジュールを有して構成される。各ソフトウェアモジュールは、記憶部12に記憶されたプログラムを制御部11(CPU)によって実行することで実現されてもよい。なお、以下の情報収集部111、紐付部112、及び情報提供部113により実行される情報処理は、制御部11により実行される情報処理と同義である。
【0066】
情報収集部111は、企業端末2から製品情報を収集し、当該製品情報を記憶部12に格納する処理を実行するように構成される。
図8は、情報収集部111によって収集される製品情報の一例である。製品情報は、企業端末2のオペレータを介して入力させてもよい。本実施形態では、製品情報は、企業ID、企業名、製品ID、及び製品名の各フィールドを有して構成される。企業ID及び企業名は、対象製品を生産する企業(すなわち、企業端末2を使用する企業)の識別子及び名称である。製品ID及び製品名は、対象製品の識別子及び名称である。
【0067】
さらに、製品情報は、紐付け関連情報を含むように構成される。紐付け関連情報は、対象製品と紐付く上流製品を識別するための情報である。本実施形態では、紐付け関連情報は、「上流製品情報」及び「終端フラグ」の各フィールドを含む。
【0068】
上流製品情報フィールドは、対象製品と紐付く上流製品(すなわち、対象製品を生産するために必要な製品であって、対象製品に包含される製品)に対応する製品情報を識別す
るための情報を格納するように構成される。上流製品情報フィールドは、サーバ装置1が製品同士の紐付けを行う際に使用される。基本的には、製品情報が生成された段階では、対象製品は上流製品と紐付いていないため、上流製品情報フィールドには、上流製品を示す値は格納されていなくてよい。
【0069】
終端フラグフィールドは、対象の製品が、製品ツリー内において葉ノード、すなわち、最上流(末端)に位置するノードであるか否かを示すフラグを格納するように構成される。本実施形態では、複数の企業端末2が製品情報を送信するため、製品ツリー内にある製品について、上流側にさらなる製品が紐付くか、これ以上の紐付けが発生しないか(対象製品が最上流に位置するか)を判別するために本フラグが使用される。すなわち、終端フラグフィールドは、サーバ装置1が製品同士の紐付けを確定させる際に使用される。基本的には、製品情報が生成された段階では、対象製品の紐付け関係は未確定であるため、終端フラグフィールドには「0(現状では終端ではない)」が格納されていてよい。最終的に、製品ツリーを生成するためには、サーバ装置1に記憶された各企業の製品情報は、「上流製品との紐付けが行われている」及び「終端フラグに“1”が設定されている」のいずれかの状態に設定される。
【0070】
さらに、製品情報は、トレーサビリティ関連情報を含むように構成される。一例では、トレーサビリティ関連情報は、製品の生産量あたりにおける材料(例えば、上流製品)の使用量、所定の原料のリサイクル率に関する情報、製品を生産する際に排出される温室効果ガスの排出量、デューデリジェンス関連情報又はこれらの組み合わせを含んでよい。所定の原料は、例えば、リチウム、ニッケル、コバルト、鉛、黒鉛等であってよい。リサイクル率は、直接的に表現されてもよいし、或いは合計利用量及びリサイクル材の利用量の組み合わせ等のように間接的に表現されてもよい。
これらの値は、対象製品を生産する工程に対応する値である。例えば、
図3の例の場合、製品情報Aに含まれるトレーサビリティ関連情報には、製品Aの生産活動において排出される温室効果ガスの量等が格納される。製品情報Aに含まれるトレーサビリティ関連情報には、上流製品が生産されるまでの工程についての情報(例えば、上流製品Bが生産されるまでに排出される温室効果ガスの量等)は含まれない。
【0071】
情報収集部111は、企業端末2のオペレータに対して、斯様な情報を入力させるためのインタフェースを提供し、製品情報を取得する。
【0072】
紐付部112は、前述したように、特定のTierに属する企業のアカウントから紐付けリクエストを受け付け、上流方向に隣接するTierに属する企業のアカウントに、紐付けリクエストを送信する。
【0073】
また、紐付部112は、紐付けリクエストの送信先である企業のアカウントとインタラクションを行うことで、製品情報同士の紐付けを行う。
例えば、紐付部112は、紐付けリクエストの送信先である企業の企業端末2とインタラクションを行うことで、当該企業端末2から、製品情報同士を紐付けるための情報を取得するように構成される。更に、紐付部112は、当該情報に基づいて、記憶部12に記憶されている製品情報について、紐付け関係を表す情報を書き込む処理を実行するように構成される。
【0074】
この処理を複数のTierにおいて繰り返すことで、最初に紐付けリクエストを送信した企業の製品よりも上流に位置する全ての製品について、紐付けを行うことができる。
【0075】
紐付けリクエストには、当該紐付けリクエストのID(「第1識別情報」または「第2識別情報」の一例)と、当該リクエストを行った企業の企業IDと、リクエストに係る製
品の製品IDが含まれていてもよい。製品IDとは、紐付けの対象となる自社製品の識別子である。紐付けリクエストは、自社製品と、当該自社製品に対応する上流製品とを紐付けさせるためのリクエストであると言うこともできる。
【0076】
前述したように、紐付けリクエストを受信した企業は、自社の製品についての紐付けが完了すると、ステータス情報を下流企業に送信する。
紐付部112は、特定企業のアカウントからステータス情報を受信すると、対応する下流企業のアカウントに当該ステータス情報を送信する。ステータス情報は、隣接するTierとの間における紐付け処理の状況を通知するものであってもよいし、上流に位置する製品の紐付け処理の状況(例えば、どのTierに属する製品まで紐付けが完了したか)を通知するものであってもよい。ステータス情報には、関連する紐付けリクエストのIDが含まれていてもよい。これにより、紐付部112は、ステータス情報の送信先である企業を認識することができる。
【0077】
情報提供部113は、製品ツリーに関連する情報処理を実行し、情報処理を実行した結果を出力するように構成される。
企業端末2のオペレータが、サーバ装置1に対して製品ツリー(および付随する情報)の提供を要求すると、情報提供部113が処理を行い、企業端末2に対して情報提供を行う。
製品ツリーに関連する情報処理は、製品ツリーについてトレーサビリティに関する演算を行う処理を含んでよい。情報処理を実行した結果を出力することは、生成された製品ツリーに関する情報を当該企業端末2に提供する処理を含んでよい。一例では、情報提供部113は、製品ツリーに関する情報を生成し、生成された当該製品ツリーに関する情報を出力するように構成される。
【0078】
記憶部12には、企業端末2から送信された製品情報と、アカウント情報が記憶される。本実施形態では、各企業のオペレータが、企業端末2を介して、対応する企業のアカウントを用いてサーバ装置1にログインすることで、サーバ装置1と企業端末2のインタラクションが行われる。アカウント情報は、サプライチェーンを構成する各企業に対応するアカウントに関する情報である。ただし、サーバ装置1へのアクセス方法は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0079】
[処理の詳細]
次に、サーバ装置1と企業端末2が行う処理の具体的な内容について説明する。
まず、
図9を参照して、紐付部112が行う紐付け処理について説明する。
図9は、サプライチェーンの構造の一例を示した図である。
【0080】
まず、サーバ装置1の情報収集部111が、企業端末2から製品情報を取得する。
図9の例では、サプライチェーンには8社が含まれており、8社それぞれが、製品情報を企業端末2からサーバ装置1に送信する。サーバ装置1が取得した製品情報は、記憶部12に記憶される。
【0081】
サーバ装置1の紐付部112は、いずれかの企業端末2から紐付けリクエストを受信する。紐付けリクエストは、サプライチェーンにおいて下流に位置する企業から送信され、サーバ装置1を介して上流企業に送信される。上流企業のオペレータは、当該企業の製品(下流製品)と、上流に位置する製品(上流製品)との紐付けを行うための処理(情報提供等)を行う。
【0082】
ここでは、
図9のTier1に属する企業A1のアカウントが紐付けリクエストをサーバ装
置1に送信したと仮定する。当該紐付けリクエストには、当該紐付けリクエストのID(
リクエストID)、当該紐付けリクエストを送信した企業のID及び対象製品の製品IDが含まれている。
図9の例では、Tier2に企業B1(製品B1)、企業B2(製品B2)、企業B3(製
品B3)が属しているため、製品A1は、3つの製品と紐付く。よって、本例では、3つの紐付けリクエストが送信される。
【0083】
サーバ装置1の紐付部112は、受信した紐付けリクエストを、記憶部12に記憶させる。すなわち、サーバ装置1は、紐付けリクエストのID、当該紐付けリクエストを送信した企業、および当該紐付けリクエストに係る製品を関連付けて記憶する。
【0084】
また、サーバ装置1の紐付部112は、受信した紐付けリクエストを対象企業のアカウントに送信する。対象企業とは、下流企業よりも一階層上のTierに属する企業であって、下流企業からの紐付けリクエストに応答して製品情報同士の紐付けを実行する企業である。
図9の例では、企業B1,B2,B3のアカウントに対して紐付けリクエストが送信される。
紐付けリクエストを受信した企業のアカウントは、紐付部112とインタラクションを行い、製品情報同士の紐付けを実行する。
ここでは、企業B1に向けられた紐付けリクエストにはR001というリクエストIDが、企業B2に向けられた紐付けリクエストにはR002というリクエストIDが、企業B3に向けられた紐付けリクエストにはR003というリクエストIDがそれぞれ付与されているものとする。
【0085】
紐付けリクエストを受信した企業は、製品情報同士の紐付けを行うための情報を紐付部112に送信し、紐付部112がこれに応答して、記憶された製品情報を更新することで製品情報同士の紐付けを行ってもよい。
例えば、対象企業の企業端末2は、紐付けリクエストに係る製品と紐付く製品をオペレータに選択させてもよい。例えば、対象企業が企業B1である場合、企業B1のオペレータは、例えば、製品A1について、上流製品が製品B1であることを示す情報を、入出力装置24を介して入力することができる。
企業端末2は、上流製品(製品B1)と下流製品(製品A1)を識別するデータを、紐付部112に送信してもよい。
【0086】
図8を示して説明したように、製品情報には、紐付け先となる製品に関するフィールド(紐付け関連情報)が設けられている。紐付部112は、対象企業から送信された情報に基づいて、製品情報A1が有する紐付け関連情報に、製品情報B1(すなわち、上流製品)に対応する情報を格納する。例えば、紐付け関連情報には、上流製品の識別子、当該上流製品を生産する企業の識別子などが格納される。なお、紐付け関連情報には、紐付け先となる製品情報へのポインタ等が格納されてもよい。
以上に説明した処理によって、下流製品の製品情報を親ノード、上流製品の製品情報を子ノードとする、ツリー構造の一部が形成される。
【0087】
紐付けを行った製品が、製品ツリーの末端に位置していない場合、紐付けを実行した対象企業のアカウントは、さらに上流方向への紐付けを進めるべく、上流に位置する企業に対して、新規に紐付けリクエストを発行する。
図9の例の場合、企業B1のアカウントが、新規の紐付けリクエストを発行する。当該紐付けリクエストは、Tier3に属する企業に
向けられたものである。当該紐付けリクエストには、同様にリクエストID(本例では“R011”)が付与される。
【0088】
なお、上流方向への新規の紐付けリクエストの発行は、以下の条件を満たした場合に行ってもよい。
(1)自社製品(ここでは製品B1)がサーバ装置1に登録されていること
(2)自社製品(ここでは製品B1)について、下流製品(ここでは製品A1)との紐付けが完了していること
【0089】
ここで、新規に発行された紐付けリクエストが、別の企業から送信された紐付けリクエストに応答して発行されたものである場合、紐付部112は、紐付けリクエスト同士の関係を記憶する。例えば、本例の場合、R001というIDを持つ紐付けリクエストに応答して、R011というIDを持つ紐付けリクエストが発行されている。
サーバ装置1は、企業A1から送信された紐付けリクエストのID“R001”(「第1識別情報」の一例)と、企業B1から送信された紐付けリクエストのID“R011”(「第2識別情報」の一例)を関連付けて記憶する。
同様に、
図9の例では、サーバ装置1は、R002とR021、R002とR022、R002とR023の関係を記憶する。なお、紐付けリクエストのIDは、企業端末2によって記憶されてもよい。
【0090】
このように、サーバ装置1(または企業端末2)は、連鎖的に発行される紐付けリクエスト同士の関係を記憶する。このようにすることで、あるTierにおいて、紐付けに関する処理を実行した場合に、サーバ装置1(または企業端末2)は、当該紐付けに関連する下流企業を特定することができる。例えば、
図9の例において、“R011”で識別される紐付けリクエストに応答して紐付けが完了した場合、サーバ装置1(または企業端末2)は、“R001”で識別される紐付けリクエストを特定することができる。これにより、サーバ装置1(または企業端末2)は、任意のTierにおいて行われた紐付け処理の状況を、下流に位置する任意の企業に通知することが可能になる。例えば、企業A1に対して、「紐付けリクエスト“R001”に応答して、Tier3まで紐付けが完了した」といった情
報を通知することができるようになる。
【0091】
本実施形態では、あるTierにおいて紐付けが完了した場合、対象企業のアカウントが、紐付けリクエストのIDに基づいて、下流企業に対して、紐付け処理の状況を通知(ステータス情報を送信)する。ステータス情報の送信は、紐付部112を介して行うことができる。
ステータス情報は、例えば、当該Tierにおいて製品情報同士の紐付けが完了したことを通知するものであってもよい。なお、Tierが複数あり、Tierごとに紐付け処理が順次行われる場合、その都度ステータス情報を送信してもよいし、最上流までの紐付けが完了してからステータス情報を送信してもよい。
【0092】
ステータス情報は、例えば、以下のうちのいずれかを含んでもよい。
(A)下流製品と自社製品の紐付けが完了し、上流企業に向けて紐付けリクエストを発行した旨の通知
(B)下流製品と自社製品の紐付けが完了し、自社製品の製品情報に終端フラグを設定した旨の通知(自社製品が製品ツリーの末端にある場合)
(C)下流製品と自社製品の紐付けが完了し、かつ、自社と上流企業との間での紐付けが完了した旨の通知
(D)自社よりも上流に位置する全ての製品の紐付けが完了した旨の通知
【0093】
ステータス情報は、これらの通知のほか、下流企業から対象企業に向けた紐付けリクエストのID、および、対象企業から上流企業に向けた紐付けリクエストのIDを含んでいてもよい。なお、これらのリクエストIDを通知することで、上述した(A)~(C)の通知を兼ねるようにしてもよい。
ステータス情報は、対象企業のアカウントに対してプッシュ通知してもよいし、対象企業のアカウントがシステムにログインした際に通知してもよい。
【0094】
次に、
図10~
図11を参照して、情報提供部113が行う処理について説明する。
サーバ装置1の情報提供部113は、記憶された製品情報に基づいて、製品ツリーに関する情報を生成し、当該製品ツリーに関する情報を出力する。製品ツリーに関する情報を生成するとは、製品情報同士の紐付けによってノード同士のリンクが形成された後で、製品に関する各種の情報(例えば、トレーサビリティに関する情報、製品同士のリンク関係を樹形図によって表した画像等)を生成する処理を指す。この製品ツリーに関する情報を生成する処理は、製品ツリーに関する情報処理の一例である。製品ツリーに関する情報を生成するためには、製品情報同士の紐付けが全て完了している必要がある。情報提供部113は、斯様な条件を満たした場合に、当該情報を適切に生成することができる。
【0095】
本実施形態における製品ツリーは、
図2を参照して説明したように、サプライチェーンにおける製品情報同士の供給関係を樹形図によって表したものである。情報提供部113は、製品情報に基づいて、樹形図を表した画像を生成することができる。
【0096】
さらに、情報提供部113は、製品ツリーに関する情報を生成する際に、各製品情報に定義されているトレーサビリティ関連情報を統合し、その結果を出力する。
【0097】
ここで、
図10を用いて、トレーサビリティ関連情報の統合について説明する。本例では、トレーサビリティ関連情報は、カーボンフットプリントの追跡を行うための値(以下、CFP値)を含む。
図10は、最終製品Xを構成する複数の製品と、これらの複数の製品を生産する各工程で排出される二酸化炭素(CO
2)の量を説明する図である。例えば、図中の製品A12を生産する工程で、E
A12[g]の二酸化炭素が排出されるものとす
る。また、当該製品は、3つの上流製品A121~A123によって構成されているものとする。このように、ある製品に含まれる上流製品を、「包含製品」とも称する。ここで、ある対象製品が生産されるまでに排出される二酸化炭素の総量は、葉ノードである最上流製品から、対象製品まで、各隣接する2つの階層の企業間で、製品情報を参照しながら、上流製品に関連付いたCO
2排出量を下流製品に引き継ぐ処理を繰り返すことで得ることができる。
【0098】
図10の例において、対象製品がA12であった場合、包含製品(上流製品A121~A123)に対応するCO
2排出量を、製品A12に対応するCO
2排出量と合計することで、製品A12が生産されるまでに排出される二酸化炭素の総量を算出することができる。すなわち、製品A11について統合されたCO
2排出量は、以下のようになる。
I
A12=E
A12+E
A121×U
A121+E
A122×U
A122+E
A123×U
A123[g]
ここで、E
A121,E
A122,E
A123は、それぞれ、製品A121,A122,A123を生産する際における、単位量あたりのCO
2排出量であるものとする。また、U
A121,U
A122,U
A123は、それぞれ、製品A12の生産に用いられる、製品A121,A122,A123の使用量とする。この使用量は、上記トレーサビリティ関連情報に含まれる、製品の生産量あたりにおける材料の使用量の一例である。最終製品(最下流企業の製品)のCO
2排出量は、最上流企業の製品から最終製品まで上記演算を順次実行することにより得ることができる。
【0099】
統合されたCFP値は、製品情報とは別個に記憶部12に記憶されてもよいし、製品情報の一部に含ませてもよい。すなわち、製品A12に対応する製品情報は、工程単独における排出量であるEA12と、統合後の排出量であるIA12の双方を保持するようにしてもよい。
【0100】
統合後のCFP値は、下流製品について統合を実施する際に再び利用される。この処理を、最上流を起点として、各階層において実行することで、CFP値(例えば、CO2排
出量の累計値)が下流方向に順次引き継がれる。最終的に、CFP値が最終製品まで引き継がれることで、最終製品が生産されるまでの全期間に対応するCFP値(例えば、CO2の総排出量)を得ることができる。
【0101】
このように、情報提供部113は、製品ツリーに関する情報を生成する際に、各製品情報に含まれるCFP値を、最上流から最下流に向けて順次統合する処理を繰り返し実行する。なお、上記の例では、統合の対象として二酸化炭素の排出量を例示したが、統合の対象であるトレーサビリティ関連情報は、所定の原料に関するリサイクル率、デューデリジェンスに関するスコア等であってもよい。なお、トレーサビリティ関連情報が数値である場合、統合は数値演算によって行われてもよいし、トレーサビリティ関連情報が数値以外の情報(例えば、デューデリジェンス関連情報など)である場合、統合は単なる情報収集であってもよい。
【0102】
情報提供部113は、生成された製品ツリーを画像形式で出力してもよい。また、同時に、任意の製品に対応するトレーサビリティ関連情報を出力してもよい。
図11は、製品ツリーを画像によって出力した画面の一例である。図示した画面には、最終製品を構成する複数の製品の供給関係を樹形図によって示した画像が含まれる。また、任意の製品を選択することで、当該製品に対応するトレーサビリティ関連情報、または、当該製品が生産されるまでの全期間に対応するトレーサビリティ関連情報の統合結果(例えば、最上流からの二酸化炭素の排出量の合計値)を閲覧することができる。斯様な情報は、サーバ装置1のオペレータの操作に基づいて、サーバ装置1が有する入出力装置14を介して出力することができる。
【0103】
さらに、情報提供部113は、生成された製品ツリーを、企業端末2からの求めに応じて、当該企業端末2に提供してもよい。なお、製品ツリーの全体を特定の企業に開示することは適当ではない場合がある。そこで、情報提供部113は、ある企業に対応する企業端末2に対して製品ツリーを提供する場合に、当該企業からのアクセス権限が無い範囲を非開示にする処理を行うようにしてもよい。
【0104】
例えば、サプライチェーンに含まれる企業が、他の企業に対して自社の製品情報を秘匿したい場合がある。これを可能にするため、企業間で、製品情報に対するアクセス権限を許諾するようにしてもよい。例えば、「隣接する企業に対してのみ、自社の製品情報に対するアクセス権限を許諾する」といったルールを設定し、サーバ装置1が、当該ルールに沿って製品ツリーを公開してもよい。
特定の製品情報に対するアクセス権限は、下流企業から送信された紐付けリクエストに対して、上流企業が回答するタイミングで、上流企業が設定してもよい。この場合、サーバ装置1は、上流企業から送信された、アクセス権限に関する情報に基づいて、どの情報をどの企業に公開するかを決定してもよい。
【0105】
例えば、
図10の例において、情報提供部113が、製品A12を生産する企業に対応する企業端末2から製品ツリーの開示要求を受けたものとする。ここで、当該企業に対しては、A121,A122,A123の各製品についてのみアクセス権限が付与されていたものとする。すなわち、当該企業からは、当該3製品と、下流製品であるA1以外の製品情報にアクセスすることができない。この場合、情報提供部113は、アクセス権限が無い製品についての情報を非開示とした製品ツリーを、企業端末2に対して提供する。
【0106】
図12は、アクセス権限が無い製品を非開示とした場合の製品ツリーの一例である。本例では、非開示である製品については、詳細な情報(または、存在そのもの)が秘匿された状態で製品ツリーが表示される。
【0107】
なお、製品の存在は公開されているが、対応する製品情報中の特定の項目についてのみアクセス権限が付与されていないといったケースでは、図中の点線で示したように、当該特定の項目についてのみ秘匿処理が行われる。図示した例では、製品A121を生産する際の二酸化炭素の排出量が非公開である旨が示されている。
【0108】
一方で、アクセス権限が無い製品(または項目)がツリー中に存在する場合であっても、前述した、トレーサビリティ関連情報の統合は、これに影響されずに実行される。例えば、図示した例では、製品A121についての二酸化炭素の排出量は非公開であるが、製品A12についての、二酸化炭素の総排出量を算出する処理には影響しない。
【0109】
なお、情報提供部113は、秘匿処理を行っていない製品ツリーを生成してから、企業ごとに付与されたアクセス権限に基づいて、企業ごとに秘匿処理を実施してもよいし、該当する企業のアクセス権限を用いて製品ツリーを生成してもよい。例えば、企業Aから製品ツリーを要求された場合、情報提供部113は、企業Aに対してアクセスが許可されている一つ以上の製品情報を抽出し、製品ツリーを生成してもよい。
【0110】
[処理フロー]
次に、サーバ装置1が実行する処理のフローについて、
図13~
図14を参照しながら説明する。
図13は、サーバ装置1が、企業端末2からの指示に基づいて、製品情報同士の紐付けを行う処理のフローチャートである。
【0111】
一例では、サーバ装置1と企業端末2のインタラクションは、サプライチェーンに含まれる各企業のオペレータが、企業端末2を介して、対応する企業のアカウントを用いてサーバ装置1にログインすることで開始される。本例では、各企業のオペレータが、自社のアカウントを用いてサーバ装置1にログインしているものとする。
【0112】
なお、図示した処理を開始する前に、各企業端末2は、オペレータを介して自社の製品情報を取得し、取得した製品情報をサーバ装置1へ送信しているものとする。サーバ装置1に送信された製品情報は、情報収集部111によって受信され、記憶部12に記憶される。
【0113】
ステップS11では、サーバ装置1(紐付部112)が、任意の企業端末2から、紐付けリクエストを受信する。なお、ここでは、ステップS11で紐付けリクエストを送信した企業(TierNに属する企業)を「下流企業」と称し、当該紐付けリクエストの送信先で
ある企業(TierN+1に属する企業)を「対象企業」と称する。
【0114】
ステップS12~S15は、紐付けリクエストに応答して、製品情報同士の紐付けを行うステップである。当該ステップは、紐付けリクエストを受信した対象企業からの指示に基づいて実行される。
【0115】
まず、ステップS12で、ステップS11において受信した紐付けリクエストに含まれるリクエストIDを記憶する。なお、紐付けリクエストが、別の企業から送信された紐付けリクエストに応答して生成されたものである場合、紐付部112は、紐付けリクエスト同士の関係を記憶する。この情報は、紐付けリクエストの送信先である企業と共有されてもよい。
【0116】
ステップS13では、紐付部112が、対象企業とインタラクションを行い、紐付け先となる製品を特定する。本ステップでは、紐付部112が、受信した紐付けリクエストを、対象企業のアカウントに対して送信し、対象企業とインタラクションを行うことで、紐
付けに関する情報を収集する。
紐付けリクエストを受信した企業のオペレータは、企業端末2を介して、例えば、指定された製品(下流企業が指定した製品)と供給関係がある自社製品を回答する。本ステップでは、対象企業のオペレータに、下流製品と、当該下流製品に紐付く製品との組み合わせを指定させてもよい。対象企業の企業端末2は、紐付け元である製品(下流製品)の識別子及び紐付け先である製品の識別子をペアでサーバ装置1に送信する。これにより、サーバ装置1は、互いに紐付く下流製品と上流製品を特定することができる。
なお、このタイミングで、対象企業からの回答を下流企業に提示し、紐付けの内容を下流企業のオペレータに確認させてもよい。また、紐付け候補の製品が複数ある場合、下流企業のオペレータに選択肢を提示し、選択させてもよい。
また、本ステップでは、対象企業が、下流企業に対して、自社の製品情報に対するアクセス権限を許諾してもよい。
【0117】
ステップS14では、サーバ装置1の紐付部112が、紐付けリクエストと、それに対する回答に基づいて、記憶された製品情報を更新し、製品情報同士の紐付け内容を反映させる。製品情報同士の紐付けは、下流製品の製品情報が有する紐付け関連情報に、紐付け先の製品に関する情報(識別子、ポインタ等)を格納することで行ってもよい。
なお、ステップS13を実行するタイミングで、対象の製品情報同士が既に紐付いている場合、ステップS13~S14の処理はスキップしてもよい。
【0118】
製品情報同士の紐付けが完了すると、ステップS15で、紐付部112は、紐付け状況を下流企業に通知する(ステータス情報を送信する)処理を実行する。ステータス情報は、対象企業のアカウントからの指示に基づいて紐付部112が生成してもよいし、対象企業のアカウントによって生成されたものを企業端末2から受信してもよい。
ステータス情報は、例えば、「対象のTier(または製品)において紐付けが完了したこと」を含んでもよい。また、ステータス情報は、対応する紐付けリクエストのIDを含んでいてもよい。
ステータス情報の送信先は、典型的には、ステップS11において紐付けリクエストを送信した企業である。ステータス情報の送信先は、紐付けリクエストのIDに基づいて特定してもよい。
例えば、
図9の例において、紐付けリクエスト“R001”に基づいて紐付けが行われた場合、ステータス情報を、企業A1に送信することができる。当該ステータス情報には、下流企業から受信した紐付けリクエストのID(R001)、および、当該紐付けリクエストに応じて上流企業に送信された紐付けリクエストのID(R011)が含まれていてもよい。
【0119】
なお、紐付けリクエストを送信した企業に対する、ステータス情報の送信は、必ずしも本ステップで行わなくてもよい。
前述したように、対象企業がサプライチェーンの中間に位置する場合、対象企業が、自社製品の紐付けを行ったタイミングでは、製品ツリーの末端まで紐付けが完了したことを下流企業に通知することができない。
このような場合、対象企業は、上流からの情報がもたらされるまで(例えば、上流企業からステータス情報が送信されるまで)、下流企業に対する通知を保留してもよい。この場合、対象企業は、任意の上流企業からステータス情報を受信したことをトリガとして、下流企業にステータス情報を送信するようにしてもよい。
【0120】
ステータス情報を送信する先の企業は、紐付けリクエストのIDによって特定することができる。例えば、
図9の例において、紐付けリクエスト“R011”に基づいて紐付けが行われた場合、ステータス情報を、紐付けリクエスト“R001”に対応する企業、すなわち、企業A1に送信することができる。このように、サーバ装置1は、紐付けリクエ
スト同士の関係を記憶しているため、当該情報を辿ることで、ある紐付けリクエストと関連のある下流企業を特定することができる。
【0121】
かかる構成によると、全ての企業が、「製品ツリーの末端まで紐付けが完了した」ことを認識することができる。
【0122】
ステップS16では、紐付部112が、紐付けリクエストによって紐付けられた製品が、製品ツリーの末端に位置するか否かを判定する。
例えば、
図9の例において、紐付けリクエストが企業A1から送信され、製品A1と製品B1が紐付けられたものとする。製品B1は、製品ツリーの中間に位置するため、本ステップは否定判定となる。
一方、紐付けリクエストが企業B1から送信され、製品B1と製品C1が紐付けられたケースを考える。製品C1は、製品ツリーの末端に位置するため、本ステップは肯定判定となる。
【0123】
ステップS16で否定判定となった場合、処理はステップS17へ遷移し、一つ上のTierに位置する企業が、紐付けリクエストを発行する。
例えば、
図9の例において、紐付けリクエストが、Tier0に属する企業A1から企業B
1に対して送信され、製品A1と製品B1が紐付けられたものとする。この場合、Tier1
に属する企業B1が、新規に紐付けリクエストを発行する。企業B1から紐付けリクエストが発行されると、
図13の処理が繰り返される。
【0124】
ステップS16で肯定判定となった場合、処理はステップS18へ遷移し、ステップS13で特定された、紐付け先である製品(TierN+1に位置する製品)の製品情報に、終端
フラグを設定する。
例えば、
図9の例において、紐付けリクエストが、Tier0に属する企業B1から送信さ
れ、製品B1と製品C1が紐付けられたものとする。製品C1は、製品ツリーの末端に位置するため、これ以上の紐付けは発生しない。そこで、これを明示するため、サーバ装置1は、企業C1の企業端末2からの指示に基づいて、製品C1の製品情報に、終端フラグを設定する。この場合、ステータス情報には、「紐付けリクエストが最上流Tierの企業まで到達した」、「紐付け処理が製品ツリーの終端まで完了した」、または、「製品ツリーの終端に位置する製品の製品情報に終端フラグが設定された」旨の通知が含まれてもよい。
【0125】
ステップS13~S17の処理が、「紐付け作業に関する処理」の一例である。すなわち、紐付け作業に関する処理には、製品情報同士の紐付けを行う処理(ステップS13~S14)と、上流企業のアカウントに対してさらなる紐付けリクエストを送信する処理(ステップS16)を含む。
【0126】
図14は、サーバ装置1が、製品ツリーに関する情報を提供する処理のフローチャートである。当該処理は、サーバ装置1が、企業端末2からの要求を受信した場合に開始される。
【0127】
まず、ステップS21で、サーバ装置1(情報提供部113)が、企業端末2から、製品ツリーに関する情報提供要求を受信する。当該要求には、例えば、対象製品の識別子が含まれる。対象製品は、最終製品であってもよいし、それ以外の製品(中間製品)であってもよい。対象製品が最終製品である場合、情報提供要求は、OEM企業から受信してもよいし、対象製品が中間製品である場合、情報提供要求は、サプライチェーンの中間Tierに属する企業から受信してもよい。
【0128】
要求を受信したサーバ装置1(情報提供部113)は、前述した処理によって、製品ツリーに関する情報を生成する(ステップS22)。この際、情報提供部113は、各製品情報に定義されているトレーサビリティ関連情報を、最上流から最下流に向けて統合する処理を実行する。統合の結果は、各製品情報に反映される。
【0129】
次に、ステップS23で、対象の企業が有しているアクセス権限に基づいて、アクセス権限が付与されていない情報を秘匿する処理を実行する。例えば、ある企業について、他社の製品情報の存在そのものが公開されていない場合、当該製品情報の存在を秘匿する処理を実行する。また、製品情報に含まれる特定の項目のみが公開されていない場合、当該項目の内容を秘匿する処理を実行する。
秘匿処理が施された製品ツリーに関する情報は、企業端末2へ提供され、出力される(ステップS24)。
【0130】
なお、ステップS22の処理は、製品ツリーが完成したタイミングで実行されてもよい。この場合、トレーサビリティ関連情報の統合処理が完了したことを、ステータス情報によって各企業に通知するようにしてもよい。
【0131】
以上説明したように、本実施形態では、サーバ装置1が、サプライチェーンに属する任意の企業から紐付けリクエストを受信し、当該紐付けリクエストに基づいて、製品情報同士の紐付けを実行する。また、隣接するTierに属する企業が、上流方向に向けて紐付けリクエストを順次発行することで、製品情報同士の紐付けを、下流から上流に向けて連鎖的に行うことができるようになる。
【0132】
さらに、サーバ装置1は、連鎖的に発行された複数の紐付けリクエスト同士の関係を記憶する。かかる構成によると、上流方向に紐付けリクエストがどこまで伝播し、それに応じて製品情報同士の紐付けがどこまで完了しているかを追跡し、任意の下流企業に通知することが可能になる。これにより、下流企業は、製品ツリーが確定したタイミングを知ることができ、製品ツリーに関する情報を適切にサーバ装置1から取得できるようになる。
【0133】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、下流企業が、上流方向に隣接するTierに属する企業(上流企業)のアカウントに対して紐付けリクエストを送信し、上流企業のアカウントが、当該紐付けリクエストに基づいて製品情報同士の紐付けを行った。また、製品情報同士の紐付けが完了した場合において、上流企業のアカウントは、紐付け状況を通知するためのステータス情報を、紐付けリクエストを送信した企業に対して送信した。すなわち、第一の実施形態では、
図4に示したように、ステータス情報が、隣接するTierに属している企業同士で送受信された。
【0134】
一方、かかる方式では、全体における紐付け状況を俯瞰的に確認することが難しいという課題がある。例えば、
図1の例では、OEM企業,企業A,企業Bが個別に紐付けリク
エストを発行し、各企業が、対応するステータス情報を、隣接するTierに属する上流企業からそれぞれ受け取る。しかし、この方法では、最下流に位置するOEM企業は、上流方向における紐付け状況を把握することができない。例えば、製品情報同士を紐付けるための操作を行っていない企業があり、これに起因して、製品ツリーが未完成の状況となっている場合であっても、OEM企業は、これを認識することができない。OEM企業は、企業Aからしかステータス情報を受信していないためである。
OEM企業が、サプライチェーンを統括する立場にある場合、上流に位置する複数の企業における紐付け状況(例えば、製品ツリーの末端まで紐付けリクエストが伝播したことや、これに応答して紐付けが全て完了したこと等)を把握できることが好ましい。
【0135】
これに対応するため、第二の実施形態では、紐付けリクエストに応答して製品情報同士の紐付けが行われた場合に、当該紐付けの状況を示すステータス情報を、当該紐付けリクエストを送信した企業ではなく、特定の企業に宛てて送信する。
特定の企業とは、紐付けリクエストを送信した企業よりも下流に位置する企業(第2下流企業)とすることができる。本実施形態では、特定の企業は、製品ツリーの最下流に位置するOEM企業である。
【0136】
図15は、第二の実施形態における、ステータス情報の送信先を説明する図である。
本実施形態では、第一の実施形態と同様に、企業Aのアカウントが企業Bのアカウントに対して紐付けリクエストを送信し、企業Bのアカウントがこれに応答して、製品情報同士の紐付けを実行する。また、企業Bのアカウントは、企業Cのアカウントに対して紐付けリクエストを送信し、企業Cのアカウントがこれに応答して、製品情報同士の紐付けを実行する。
【0137】
第一の実施形態では、紐付けが完了したタイミングで、企業Bおよび企業Cが、隣接するTierに属する下流企業(すなわち、紐付けリクエストを送信した企業)にステータス情報を送信した。
【0138】
一方、第二の実施形態では、ステータス情報は、製品ツリーの最上流に位置する企業のみが発行する。当該ステータス情報は、製品ツリーの最下流に位置する企業(すなわち、OEM企業)に対して送信される。OEM企業に対して送信されるステータス情報には、「製品ツリーの最上流に位置する製品まで紐付けが完了した旨」および「製品ツリーの最上流に位置する製品の製品情報に終端フラグが設定された旨」の通知が含まれる。これにより、OEM企業は、紐付けリクエストが最上流のTierまで伝播し、これに応答して、製品情報同士の紐付けが完了したことを認識することができるようになる。
【0139】
図16は、第二の実施形態におけるサーバ装置1が、企業端末2からの指示に基づいて、製品情報同士の紐付けを行う処理のフローチャートである。
第二の実施形態では、
図13におけるステップS15の処理が省略される。すなわち、本実施形態では、各Tierにおいて製品情報同士の紐付けが行われたタイミングでは、ステータス情報を送信する処理は行われない。ステータス情報は、製品ツリーの末端に位置する企業が、対応する製品情報に終端フラグを設定した場合に生成および送信される(ステップS19)。
これにより、紐付けリクエストが製品ツリーの末端まで伝播したこと、および、これに応答して、製品情報同士の紐付けが完了したことをOEM企業に通知することができるようになる。
【0140】
なお、本実施形態では、製品ツリーの末端に位置する企業(最上流企業)がステータス情報をOEM企業に送信する例を挙げたが、ステータス情報を送信する企業は、必ずしも最上流企業でなくてもよい。例えば、中間Tierに位置する一つ以上の企業が、「当該Tierまで紐付けが完了した」ことを示すステータス情報を生成し、OEM企業に送信するようにしてもよい。中間Tierに位置する企業がステータス情報をOEM企業に送信することで、OEM企業は、「製品ツリー中のどのTierまで紐付けが完了したか」を認識できるようになる。この場合、サーバ装置1は、
図18に示したフローチャートではなく、
図13に示したフローチャートを実行してもよい。この場合、ステップS15において生成されるステータス情報の送信先はOEM企業となる。当該ステータス情報は、下流企業から受信した紐付けリクエストのID、上流企業に送信した紐付けリクエストのID、および、紐付け処理の状況を含んでいてもよい。
【0141】
さらに、ステータス情報の送信先は、必ずしもOEM企業(製品ツリーにおける最下流
企業)でなくてもよい。ステータス情報の送信先は、紐付けリクエストを送信した企業よりもさらに下流に位置する任意の企業とすることができる。
【0142】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0143】
また、実施形態の説明では、サーバ装置1が製品情報をデータベースに記憶したが、製品情報は、データベース以外の手段によって記憶されてもよい。
【0144】
また、実施形態の説明では、紐付けが完了したことを通知するステータス情報を、紐付けが完了したタイミングで送信したが、ステータス情報は、紐付けがリクエストされた時点で送信されてもよい。さらに、ステータス情報は、対応するTierにおいて製品情報同士の紐付け関係が変化したことをトリガとして送信されてもよい。
【0145】
また、実施形態の説明では、ステータス情報に、下流企業から対象企業に向けて発行された紐付けリクエストのIDを含ませたが、ステータス情報には、これに加え、対象企業が上流方向に向けて発行した紐付けリクエストのIDを含ませてもよい。
例えば、
図9の例において、企業A1が発行した紐付けリクエストに応じて、企業B1が紐付けを行ったものとする。また、企業B1が、企業C1に対して新規の紐付けリクエストを発行したものとする。
この場合、企業B1から企業A1に送信されるステータス情報には、企業A1が発行した紐付けリクエストのID(R001)を含ませてもよいし、企業A1が発行した紐付けリクエストのID(R001)と、企業B1が発行した紐付けリクエストのID(R011)の双方を含ませてもよい。
かかる構成によると、企業A1が、企業B1よりも上流方向における紐付けリクエストの発行状況を認識することができるようになる。
【0146】
さらに、サーバ装置1は、紐付けリクエストのIDをキーとして、任意のTierにおける紐付け状況の照会を受け付けるようにしてもよい。例えば、サーバ装置1は、企業A1から、「R011というIDを持つ紐付けリクエストは現在どのような状況にあるか」といった問い合わせを受け付けてもよい。また、これに応答して、サーバ装置1が、企業A1に対して、「製品ツリーの末端より1つ前のTierまで紐付けが完了した」、「製品ツリーの末端まで紐付けが完了した」といった情報を提供するようにしてもよい。
かかる構成によると、下流企業が、ステータス情報によって通知された、紐付けリクエストのIDを用いてサーバ装置1に問い合わせを行うことで、製品ツリーの生成状況を把握することができる。
さらに、サーバ装置1は、過去に発行された紐付けリクエストと、当該紐付けリクエストを送信した下流企業に対するステータス情報の送信状況を管理し、必要に応じてステータス情報を周期的に下流企業に送信するようにしてもよい。
【0147】
また、実施形態の説明では、ある企業から紐付けリクエストが送信されたことに応じて、各企業が紐付けリクエストをリレーし、下流方向から上流方向に向けて製品ツリーを完成させていった。しかし、製品情報同士の紐付けは、紐付けリクエストをトリガとせず、Tierごとに個別に実施してもよい。
この場合、任意の企業が、第1連絡(第2連絡)として、紐付け状況の照会リクエストを上流企業に送信するようにしてもよい。この場合、上流企業は、照会リクエストに応答して、自社が属するTier、または、自社よりも上流における紐付け状況を回答するようにしてもよい。この際、紐付けが未完了である場合、上流企業は、紐付け処理を実行したう
えで回答を行うようにしてもよい。
【0148】
また、実施形態の説明では、
図9のように、Tierが3階層である例を示したが、対象となるサプライチェーンは4階層以上であってもよい。
この場合、企業A1が、紐付けリクエスト(第1連絡)を企業B1に送信し、企業B1が、別の紐付けリクエスト(第2連絡)を企業C1に送信し、企業C1が、さらに別の紐付けリクエスト(第3連絡)を、さらなる上流企業(例えば、Tier4に位置する企業)に
対して送信するようにしてもよい。サーバ装置1は、これらの紐付けリクエストを企業間で中継し、各企業からの指示に基づいて、製品情報同士の紐付けを行うことができる。
【0149】
また、実施形態の説明では、各企業のアカウントが紐付けリクエスト(第1連絡または第2連絡)を発行するものとしたが、紐付けリクエストは、各企業のアカウントからの指示に基づいてサーバ装置1が生成してもよい。このような形態も、「第1連絡を、対象企業の下流企業のアカウントから受け取る」こと、「第2連絡を、対象企業のアカウントから受け取る」ことに含まれる。
また、実施形態の説明では、各企業のアカウントがステータス情報を発行するものとしたが、ステータス情報は、各企業のアカウントからの指示に基づいてサーバ装置1が生成してもよい。このような形態も、「紐付け作業のステータスを対象企業のアカウントから受け取る」ことに含まれる。
【0150】
また、実施形態の説明では、紐付けリクエストに、紐付けの対象となる下流製品の識別子を含ませたが、紐付けリクエストに、紐付けの対象となる下流製品および上流製品の双方の識別子を含ませてもよい。紐付け先となる製品が下流企業側において(品番などによって)特定可能な場合、下流企業側から上流製品を指定することもできる。
サーバ装置1は、上流企業と事前にインタラクションを行い、下流企業に公開を許可する上流製品を指定する情報を取得し、公開が許可された上流製品のリストを下流企業に提供してもよい。下流企業は、当該リストを参照して、下流製品と、対応する上流製品の組み合わせを生成することもできる。
【0151】
また、実施形態の説明では、
図8に示したように、製品情報に、紐付け関連情報を含ませたが、紐付け関連情報、すなわち、製品同士の紐付け関係を表す情報を、製品情報とは別に保存されてもよい。例えば、製品に関する具体的な情報を含まず、紐付け関係のみを定義したデータを、製品情報と別に保存してもよい。また、このデータは、全ての企業からアクセス可能としてもよい。すなわち、製品ツリーの構造のみを公開し、当該製品ツリーに含まれる具体的なデータは、各企業に付与されたアクセス権限に応じて取得するようにしてもよい。
【0152】
また、実施形態の説明では、サーバ装置1が製品ツリーを完成させる形態を例示したが、サーバ装置1が持つ役割を、複数の企業端末2に分散して配置してもよい。例えば、製品情報は、ブロックチェーン基盤を利用した分散データベースによって記憶させてもよい。この場合、複数の企業端末2によって、製品情報データベースが構成されてもよい。この場合、スマートコントラクトを利用して、前述した各フェーズの処理を実行してもよい。例えば、ある企業のアカウントが、紐付けリクエストをデータベースに書き込んだことをトリガとして、紐付け処理が実行されるようにしてもよい。
【0153】
また、上記実施形態では、サプライチェーンに含まれる複数の企業を、製品を生産する企業として説明した。しかしながら、サプライチェーンに含まれる企業は、必ずしも製品を生産する企業である必要はない。例えば、製品の輸送、輸入、保管、卸売り等を行う企業も、サプライチェーンを構成する企業に含まれてよい。一例では、複数の企業のうちの一部の企業は、例えば、商社、販売代理店、輸入代理店等の製造工程を実行しない企業で
あってよく、一段上の階層に位置する企業(上流企業)から製品を受け取り、一段下の階層に位置する企業(下流企業)に製品を納入してもよい。
【0154】
また、上記実施形態では、自動車に関連する製品のサプライチェーンを想定し、OEMメーカーを最下流企業として説明し、部品、素材、アッセンブリ等を供給する企業をサプライヤーとして説明した。しかしながら、サプライチェーンに属する企業は、必ずしもこの限りではない。各段階の企業は、製品等に応じて適宜決定されてよい。また、最終製品を得られるまでに各企業で実施される製造活動は、実施の形態に応じて適宜決定されてよく、例えば、発掘、加工、組み立て、運搬、保管等の最終製品が得られるまでに行われ得るあらゆる活動を含んでよい。
【0155】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0156】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0157】
1・・・サーバ装置
2・・・企業端末
11,21・・・制御部
12,22・・・記憶部
13,23・・・通信モジュール
14,24・・・入出力装置
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプライチェーンに含まれる複数の企業に関する情報と、前記複数の企業各々の製品に関する製品情報とを記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置であって、
前記記憶装置は、
対象企業の対象製品の製品情報と、前記サプライチェーンにおいて前記対象企業よりも下流にある二つ以上の下流企業の下流企業製品の製品情報とのそれぞれの紐付け関係を記憶し、
前記制御部は、
前記対象製品の製品情報と、前記サプライチェーンにおいて前記対象企業よりも上流にある上流企業の上流企業製品の製品情報との紐付け処理の状態に係る情報を、前記二つ以上の下流企業のうち、第一下流企業よりも下流に位置する第二下流企業に送信する、
サーバ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一下流企業から、前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とを紐付けるリクエストを受信したことを条件として、前記紐付け処理の状態に係る情報を前記第二下流企業に送信する、
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記リクエストを受信したことを条件として、前記対象製品の製品情報と、前記上流企業製品の製品情報とを紐付ける前記紐付け処理を実行する、
請求項2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とが紐付けられたことを条件として、前記紐付け処理の状態に係る情報を前記第二下流企業に送信する、
請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とが紐付けられたことに応答して、前記対象製品の製品情報と、前記上流企業製品の製品情報とを紐付ける前記紐付け処理を実行する、
請求項4に記載のサーバ装置。
【請求項6】
サプライチェーンに含まれる複数の企業に関する情報と、前記複数の企業各々の製品に関する製品情報とを記憶する記憶装置と、制御部と、を有するサーバ装置が実行する情報処理方法であって、
対象企業の対象製品の製品情報と、前記サプライチェーンにおいて前記対象企業よりも下流にある二つ以上の下流企業の下流企業製品の製品情報とのそれぞれの紐付け関係を取得することと、
前記対象製品の製品情報と、前記サプライチェーンにおいて前記対象企業よりも上流にある上流企業の上流企業製品の製品情報との紐付け処理の状態に係る情報を、前記二つ以上の下流企業のうち、第一下流企業よりも下流に位置する第二下流企業に送信することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項7】
前記第一下流企業から、前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とを紐付けるリクエストを受信したことを条件として、前記紐付け処理の状態に係る情報を前記第二下流企業に送信する、
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記リクエストを受信したことを条件として、前記対象製品の製品情報と、前記上流企業製品の製品情報とを紐付ける前記紐付け処理を実行する、
請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とが紐付けられたことを条件として、前記紐付け処理の状態に係る情報を前記第二下流企業に送信する、
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記第一下流企業の下流企業製品の製品情報と前記対象製品の製品情報とが紐付けられたことに応答して、前記対象製品の製品情報と、前記上流企業製品の製品情報とを紐付ける前記紐付け処理を実行する、
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。