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特開2024-162959車両制御装置、及び車両制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162959
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両制御装置、及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156250
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2023078776
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】運転に関わらない同乗者が自律走行制御に対して感じる不安を抑制することが可能な車両制御装置等の提供。
【解決手段】自動運転ECUは、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両において用いられ、車両制御装置として機能する。自動運転ECUは、自車両の走行制御状態が自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握する。自動運転ECUは、自律走行制御によって自車両が走行する自動走行期間において、ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御装置であって、
前記自車両の走行制御状態が前記自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握する制御把握部(76)と、
前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間において、前記ドライバに前記周辺監視義務のある要監視期間よりも前記自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する静音制御部(78)と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記静音制御部は、前記自車両に搭載される動力発生装置(41)の回転速度を抑制する動力抑制制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車室内のオーディオ装置(24)によるコンテンツ再生の状態を把握する再生把握部(71)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記車室内にて前記コンテンツ再生が行なわれている場合、前記動力抑制制御を緩和する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自車両への緊急車両の接近を把握する車外把握部(74)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記緊急車両の接近が把握された場合、前記動力抑制制御を中止する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記自車両に関連する異常の発生に基づき緊急退避制御を実施する退避制御部(77)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記動力抑制制御が前記緊急退避制御を妨げるか否かを判定し、前記動力抑制制御が前記緊急退避制御を妨げないと判定した場合には、前記緊急退避制御によって前記自車両が走行する退避走行期間において前記動力抑制制御を実施する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記動力抑制制御を実施してしまうと前記自車両の走行速度が前記ドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、前記設定車速に到達しないことを示す報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記静音制御部は、前記動力抑制制御を実施してしまうと前記自車両の走行速度が前記ドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、前記走行速度が前記設定車速に到達するまで前記動力抑制制御を緩和する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記自動走行期間において前記自車両に搭載される動力発生装置(41)の騒音が増大する動力発生制御が行われた場合、当該動力発生制御の完了後に、前記動力発生制御が正常な制御であったことを示す正常報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記自車両の搭乗者が不安を感じる不安状態か否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記動力発生制御に対して前記搭乗者が前記不安状態とならない場合、前記正常報知を抑制する請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記自律走行制御の開始後に、前記自律走行制御が行われていることを示す自動運転背景音を出力する報知実施部(72)、をさらに備える請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記報知実施部は、前記走行制御状態の変更が予定された場合、前記自動運転背景音の出力を抑制する請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記報知実施部は、前記走行制御状態の変更が予定された場合、前記走行制御状態の変更を通知する変更通知背景音を出力する請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記制御把握部は、予定された変更後の前記走行制御状態に紐づく自動運転レベルを把握し、
前記報知実施部は、変更後の前記自動運転レベルに応じて前記変更通知背景音の出力時間を変更する請求項12に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記自動走行期間において予め許可された運転以外の特定行為を前記ドライバが実施しているか否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自律走行制御から前記ドライバに前記周辺監視義務のある前記走行制御状態への移行が行われる場合、前記ドライバの前記特定行為の終了後、予め規定された時間が経過するまで前記変更通知背景音の出力を制限する請求項12に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記報知実施部は、前記自律走行制御により前記自車両の挙動に変化が生じるタイミングで前記自動運転背景音の出力を開始するか、又は出力中の前記自動運転背景音の音量を大きくする請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項16】
前記自車両への緊急車両の接近を把握する車外把握部(74)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自動運転背景音の指向性を調整し、前記緊急車両の相対的な方向を前記自車両の搭乗者に示す請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項17】
前記制御把握部は、実行中の前記走行制御状態に紐づく自動運転レベルを把握し、
前記報知実施部は、前記自動運転レベルに応じて前記自動運転背景音の様態を変更する請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項18】
騒音の発生源と前記自車両の搭乗者との位置関係を把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記車室内のオーディオ装置(24)により出力される車内音の指向性を調整し、前記搭乗者に対して前記発生源の方向となる位置に前記車内音の仮想の音源を設定する音場制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項19】
前記静音制御部は、前記車室内のオーディオ装置(24)によるコンテンツ再生の音量を大きくする音量調整制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項20】
前記静音制御部は、前記車室内の騒音を抑制する騒音抑制装置(81)を用いて、前記ドライバ以外の搭乗者が着座する同乗者席の騒音を、前記ドライバが着座する運転席の騒音よりも大きく低減させるノイズ低減制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項21】
静音化が有用となる特定種別の搭乗者が前記車室内にいるか否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記特定種別の前記搭乗者が前記車室内にいる場合に前記静音化制御を実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項22】
前記静音制御部は、前記車室内の騒音が搭乗者に聞こえ難くなるような擬音を出力する擬音装置(82)を前記静音化制御に用いる請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項23】
前記静音制御部は、前記自車両に設けられたウィンドウの開閉状態を、前記車室内を静音化するために調整する開閉制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項24】
前記自車両の走行に伴う騒音が所定の判定基準よりも大きい場合、前記自車両から遠隔に存在する遠隔管理センタに対して、静音性に関する報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項25】
前記自律走行制御への切り替えに基づき、前記静音化制御を実施するか否かを前記ドライバに問い合わせる報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記静音化制御の実施が前記ドライバによって承認された場合に前記静音化制御を実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項26】
前記静音制御部は、前記自車両に搭載される動力発生装置(41)が複数の動力源を含む場合、複数の前記動力源のうちで騒音の少ない静音動力源を優先的に動作させる動力選択制御を、前記静音化制御として実施する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項27】
前記静音制御部は、前記自車両のドライブモードが走行性能を優先させるスポーツモードに設定されている場合、前記自動走行期間における前記静音化制御の実施を中止する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項28】
ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御プログラムであって、
前記自車両の走行制御状態が前記自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握し(S13)、
前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間において、前記ドライバに前記周辺監視義務のある要監視期間よりも前記自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する(S20)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両において用いられる車両制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の自動運転を制御する車両制御システムが記載されている。特許文献1の車両制御システムが搭載された車両には、ドライバだけでなく、運転に関わらない乗員(以下、同乗者)の搭乗も想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-47867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような自動運転によって走行する車両では、同乗者は、自動運転による制御が正しく行なわれているかどうか不安を感じ易くなる。特に、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって自車両が走行しており、ドライバが周辺監視をしていない走行状態下では、走行に伴う車室内の騒音が大きくなると、自律走行制御に対する同乗者の不安も高まる可能性があった。
【0005】
本開示は、運転に関わらない同乗者が自律走行制御に対して感じる不安を抑制することが可能な車両制御装置、及び車両制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御装置であって、自車両の走行制御状態が自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握する制御把握部(76)と、自律走行制御によって自車両が走行する自動走行期間において、ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する静音制御部(78)と、を備える車両制御装置とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御プログラムであって、自車両の走行制御状態が自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握し(S13)、自律走行制御によって自車両が走行する自動走行期間において、ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する(S20)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる車両制御プログラムとされる。
【0008】
これらの態様では、自律走行制御によって自車両が走行する自動走行期間において、静音化制御が実施され、自車両の車室内が静音化され得る。故に、ドライバが周辺監視をしていない走行状態下において、走行に伴う車室内の騒音により、運転に関わらない同乗者が自律走行制御に対して感じる不安を抑制することが可能になる。
【0009】
尚、上記及び特許請求の範囲における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、特許請求の範囲において明示していない請求項同士の組み合せも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態による自動運転ECUを含む車載ネットワークの全体像を示す図である。
図2】自動運転ECUの詳細を示すブロック図である。
図3】自動運転ECUにて実施されるモード切替処理の詳細を示すフローチャートである。
図4】自動運転ECUが走行制御ECUと連携して実施する動力制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図5】自動運転ECUがボディECUと連携して実施するウィンドウ制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】自動運転ECUがHMI制御装置と連携して実施する車室内制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】本開示の第二実施形態による自動運転ECUの詳細を示すブロック図である。
図8】自動運転期間にて出力される背景音の出力タイミングの一例を示す図である。
図9】自動運転期間にて出力される背景音の出力タイミングの一例を示す図である。
図10】自動運転ECUにて実施される自動運転報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図11】自動運転ECUにて実施される挙動変化報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図12】自動運転ECUにて実施される緊急車両報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図13】自動運転ECUにて実施される運転交代報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】自動運転ECUにて実施される静穏制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】自動運転ECUにて実施される正常騒音報知処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による車両制御装置の機能は、図1及び図2に示す自動運転ECU(Electronic Control Unit)50bによって実現されている。自動運転ECU50bは、運転支援ECU50aと共に車両(以下、自車両Am)に搭載されている。自動運転ECU50b及び運転支援ECU50a等は、自車両Amの自動運転システム50を構成している。自動運転システム50の搭載により、自車両Amは、自動運転機能を備えた自動運転車両となり、自動運転機能(自律走行制御)によって走行可能となる。
【0013】
運転支援ECU50aは、自動運転システム50において、ドライバの運転操作を支援する運転支援機能を実現させる車載ECUである。運転支援ECU50aは、米国自動車技術会の規定する自動運転レベルにおいて、レベル2程度の高度運転支援又は部分的な自動運転を可能にする。運転支援ECU50aによって実施される自動運転は、ドライバの目視による自車周辺の監視が必要な周辺監視義務のある自動運転となる。例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)、LTC(Lane Trace Control)、及びLCA(Lane Change Assist)等の運転支援機能が運転支援ECU50aによって実現される。
【0014】
自動運転ECU50bは、ドライバの運転操作を代行可能な自律走行機能を実現させる車載ECUである。自動運転ECU50bは、システムが制御主体となるレベル3以上の自律走行を実施可能である。自動運転ECU50bによって実施されるレベル3の自動運転は、ドライバによる周辺監視義務のない、自車周囲の監視が不要なアイズオフの自動運転となる。自動運転ECU50bは、レベル4以上の自動運転を実施可能であってよい。レベル4の自動運転は、システムによって全ての運転タスクが実施される完全自動運転であり、ドライバへ向けた運転交代の要請が発生しないブレインオフの自動運転となる。
【0015】
自動運転システム50では、運転支援ECU50aによる周辺監視義務のある運転支援制御と、自動運転ECU50bによる周辺監視義務のない自律走行制御とを少なくとも含む複数のうちで、自動運転機能の制御状態が切り替えられる。以下の説明では、運転支援ECU50aによるレベル2以下の自動運転制御を「運転支援制御」と記載し、自動運転ECU50bによるレベル3以上の自動運転制御を「自律走行制御」と記載する。
【0016】
自動運転ECU50bによる自律走行制御によって自車両Amが走行する自動走行期間では、予め規定された運転以外の特定行為(以下、セカンドタスク)がドライバに許可され得る。セカンドタスクは、自動運転ECU50bがHMI(Human Machine Interface)制御装置100と連携して行う運転交代要請の発生まで、ドライバに法規的に許可される。例えば、動画等のエンターテイメント系のコンテンツの視聴、スマートフォン等のデバイス操作、及び食事等の行為が、セカンドタスクとして想定される。
【0017】
運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bは、自車両Amに搭載された車載ネットワーク1の通信バス99に、通信可能に接続されている。通信バス99には、車内モニタ装置29、周辺監視センサ30、ロケータ35、ナビゲーションECU38、車載通信機39、走行制御ECU40、ボディECU43、及びHMI制御装置100等が接続されている。通信バス99に接続されたこれらのノードは、相互に通信可能である。これらECU等のうちの特定のノード同士は、相互に直接的に電気接続され、通信バス99を介することなく通信可能であってもよい。
【0018】
車内モニタ装置29は、自車両Amの車室内を撮影する複数の車室内カメラと、複数の車室内カメラを制御する制御ユニットと備えている。車室内カメラは、可視光カメラであってもよく、又は近赤外光源と組み合わされた近赤外カメラであってもよい。複数の車室内カメラのうち少なくとも1つは、運転席に着座する搭乗者(ドライバ)を撮影可能に設置されており、ドライバモニタとして機能する。
【0019】
車内モニタ装置29は、車室内カメラによる撮像画像、又は撮像画像を画像解析した解析結果を、車内モニタ情報としてHMI制御装置100及び自動運転ECU50b等に提供する。車内モニタ情報には、搭乗中の搭乗者の人数を示す情報、大人、子供、及び高齢者等の各搭乗者の種別情報、並びに睡眠中か否か等の各搭乗者の状態を示す情報が含まれている。さらに、車内モニタ情報には、ドライバのアイポイントの位置及び視線方向等を示すドライバステータス情報が含まれている。
【0020】
周辺監視センサ30は、自車両Amの周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ30は、例えばカメラユニット、ミリ波レーダ、ライダ、及びソナーのうちの1つ又は複数を含んでなる。周辺監視センサ30は、自車周囲の検出範囲から移動物体及び静止物体を検出可能である。周辺監視センサ30は、自車周囲の物体の検出情報を運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等に提供する。
【0021】
ロケータ35は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ35は、GNSS受信機で複数の測位衛星から受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び通信バス99に出力された車速情報等を組み合わせ、自車両Amの自車位置及び進行方向等を逐次測位する。ロケータ35は、測位結果に基づく自車両Amの位置情報及び方角情報を、ロケータ情報として通信バス99に逐次出力する。
【0022】
ロケータ35は、地図データを格納した地図データベースをさらに有している。地図データベースは、多数の3次元地図データ及び2次元地図データを格納した大容量の記憶媒体を主体とする構成である。3次元地図データは、いわゆるHD(High Definition)マップであり、自動運転に必要な道路情報を含んでいる。具体的には、道路の3次元形状情報及び各レーンの詳細情報等が3次元地図データには含まれている。ロケータ35は、車載通信機39による車外通信により、3次元地図データ及び2次元地図データを最新の情報に更新可能である。ロケータ35は、現在位置周辺の地図データを地図データベースから読み出し、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等にロケータ情報と共に提供する。
【0023】
ナビゲーションECU38は、HMI制御装置100から取得する操作情報に基づき、ドライバ等の搭乗者が指定する目的地の情報を取得する。ナビゲーションECU38は、自車位置情報及び方角情報をロケータ35から取得し、現在位置から目的地までの経路を設定する。ナビゲーションECU38は、目的地までの設定経路を示す経路情報を、運転支援ECU50a、自動運転ECU50b、及びHMI制御装置100等に提供する。ナビゲーションECU38は、後述するHMIシステム10と連携し、目的地までの経路案内として、画面表示及び音声メッセージ等を組み合わせ、交差点及び分岐ポイント等にて自車両Amの進行方向をドライバに通知する。
【0024】
ここで、スマートフォン及びタブレット等のユーザ端末等が、車載ネットワーク1又はHMI制御装置100に接続されていてもよい。こうしたユーザ端末は、ロケータ35に替わって、自車位置情報、方角情報、及び地図データ等を運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等に提供してもよい。さらに、ユーザ端末は、ナビゲーションECU38に替わって、目的地までの経路情報を、運転支援ECU50a、自動運転ECU50b及びHMI制御装置100等に提供してもよい。また、ユーザ端末が、後述のHMIシステム10に替わって、又はHMIシステム10と共に、動画コンテンツ等の再生を実施してもよい。
【0025】
車載通信機39は、自車両Amに搭載された車外通信ユニットであり、V2X(Vehicle to Everything)通信機として機能する。車載通信機39は、道路脇に設置された路側機との間で無線通信によって情報を送受信する。一例として、車載通信機39は、渋滞情報及び交通規制情報等を路側機から受信する。渋滞情報及び交通規制情報は、例えばVICS(登録商標)情報等である。車載通信機39は、交通信号機の点灯パターンを示す信号情報、並びに停止車両、駐車車両、歩行者、及びサイクリスト等の検出情報等を、路側機からさらに受信してもよい。車載通信機39は、受信した渋滞情報、交通規制情報、信号情報、及び検出情報等を、ナビゲーションECU38、自動運転ECU50b、及びHMI制御装置100等に提供する。
【0026】
走行制御ECU40は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。走行制御ECU40は、各輪のハブ部分に設けられた車輪速センサの検出信号に基づき、自車両Amの現在の走行速度を示す車速情報を生成し、生成した車速情報を通信バス99に逐次出力する。走行制御ECU40は、ブレーキ制御ECU、駆動制御ECU、及び操舵制御ECUの機能を少なくとも有している。走行制御ECU40は、ドライバの運転操作に基づく操作指令、運転支援ECU50aの制御指令、及び自動運転ECU50bの制御指令のいずれか一つに基づき、各輪のブレーキ力制御、動力発生装置41の出力制御、及び操舵角制御を継続的に実施する。
【0027】
動力発生装置41は、自車両Amに搭載され、自車両Amを走行させるための動力を発生する。動力発生装置41は、一例として、ガソリン又は軽油等の燃料を燃焼させる内燃機関、及び駆動用のモータージェネレータ等、複数の動力源を含んでなるハイブリッド方式のパワーユニットである。動力発生装置41は、内燃機関及びモータージェネレータのうちの一方のみを含む、言い替えれば、単一の動力源を主体とした構成であってもよい。
【0028】
走行制御ECU40は、HMI制御装置100から取得する操作情報に基づき、自車両Amのドライブモードを切り替える。走行制御ECU40には、ノーマルモード、エコモード、コンフォートモード、及びスポーツモード等が、ドライブモードの選択肢として予め設定されている。走行制御ECU40は、ドライブモードの切り替えに基づき、自車両Amの走行特性を変更する。エコモードは、基準となるノーマルモードよりも燃費又は電費を優先するドライブモードとされる。コンフォートモードは、ノーマルモードよりも乗り心地を優先するドライブモードとされる。スポーツモードは、ノーマルモードよりも走行性能を優先するドライブモードとされる。走行制御ECU40に設定されたドライブモードの状態は、HMI制御装置100による表示モードの切り替えによってドライバに報知される。例えば、ドライブモードがスポーツモードである場合、メータディスプレイ21には、タコメータが表示される。
【0029】
ボディECU43は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。ボディECU43は、自車両Amに搭載された種々の車載機器を制御する機能を有している。ボディECU43には、種々の車載機器の一つとして、パワーウィンドウ(以下、PW)アクチュエータ44が接続されている。ボディECU43は、自車両Amのドアに設けられたパワーウィンドウスイッチへ入力されるユーザ操作に基づき、PWアクチュエータ44の動作を制御し、自車両Amのサイドウィンドウを開閉(昇降)させる。
【0030】
HMI制御装置100は、複数の表示デバイス、オーディオ装置24、アンビエントライト25、操作デバイス26、及び車内音響センサ27等と共にHMIシステム10を構成している。HMIシステム10は、自車両Amのドライバ等の搭乗者による操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ドライバへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを備えている。
【0031】
表示デバイスは、画像表示等により、ドライバの視覚を通じて情報を提示する。表示デバイスには、メータディスプレイ21、センターインフォメーションディスプレイ(以下、CID)22、及びヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)23等が含まれている。CID22は、タッチパネルの機能を有しており、ドライバ等による表示画面へのタッチ操作を検出する。
【0032】
オーディオ装置24は、車室内に設置された複数のスピーカを有している。オーディオ装置24は、報知音又は音声メッセージ等をスピーカによって車室内に再生させる。アンビエントライト25は、インスツルメントパネル及びステアリングホイール等に設けられている。アンビエントライト25は、発光色を変化させるアンビエント表示により、ドライバの周辺視野を利用した情報提示を行う。
【0033】
操作デバイス26は、ドライバ等によるユーザ操作を受け付ける入力部である。操作デバイス26には、例えば自動運転機能の作動及び停止に関連するユーザ操作、経路案内の目的地の設定に関連するユーザ操作等が入力される。さらに、後述する静音化制御の実施に関連するユーザ操作等が、操作デバイス26には入力される。ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、及びドライバの発話内容を認識する音声入力装置等が、操作デバイス26に含まれる。
【0034】
車内音響センサ27は、MEMSマイク又はコンデンサマイク等のマイク素子を主体として含む構成である。車内音響センサ27は、車室内の空気の振動をマイク素子によって電気信号に変換することで、車室内に生じている音を検出する。車内音響センサ27は、車外から車室内に伝わる騒音を主に検出する。車内音響センサ27は、車室内の複数箇所の騒音を検出できるように、車室内に複数設けられていてもよい。
【0035】
HMI制御装置100は、処理部11、RAM12、記憶部13、入出力インターフェース14及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。HMI制御装置100は、提示制御装置として機能し、複数の表示デバイス、オーディオ装置24、及びアンビエントライト25等を用いた情報提示を統合的に制御する。HMI制御装置100は、自動運転システム50との連携により、自動運転に関連する情報を提示する。例えば、自動運転ECU50bにて自律走行制御の終了が予定された場合、HMI制御装置100は、ドライバに運転交代を要請する報知を実施する。
【0036】
HMI制御装置100は、ユーザ操作の内容を示す操作情報を、CID22及び操作デバイス26等から取得する。HMI制御装置100は、自動運転機能に関連したユーザ操作の操作情報、及び車内音響センサ27によって検出された車室内の騒音に関連する情報(以下、車内騒音情報)等を自動運転ECU50bに提供する。またHMI制御装置100は、自車両Amの目的地を設定するユーザ操作の操作情報を、ナビゲーションECU38に提供する。
【0037】
HMI制御装置100は、動画及び音楽等のコンテンツの再生機能に加えて、ノイズキャンセリング機能、及び騒音マスキング機能を有している。HMI制御装置100には、ノイズキャンセリング機能を実現するためのノイズキャンセリング制御部81と、騒音マスキング機能を実現するための擬音生成部82とが設けられている。尚、ノイズキャンセリング制御部81及び擬音生成部82は、オーディオ装置24のスピーカを用いて車室内に音を出力する構成であってもよく、又は専用のスピーカを用いて車室内に音を出力する構成であってもよい。
【0038】
ノイズキャンセリング制御部81及び擬音生成部82は、車内音響センサ27によって検出された車室内の騒音の波形を取得する。ノイズキャンセリング制御部81は、騒音に対して逆位相となる波形の音波をスピーカから車室内に出力する。ノイズキャンセリング制御部81は、逆位相の音波によって騒音の少なくとも一部を相殺することにより、車室内の騒音を低減させる。また、擬音生成部82は、騒音の波形を分析し、この騒音が搭乗者に聞こえ難くなるような周波数及び音量の擬音を生成する。擬音生成部82は、生成した擬音をスピーカから車室内に出力し、騒音を擬音によって覆い隠すことで、搭乗者の感じる車室内の騒音を低減させる。
【0039】
次に、自動運転ECU50bの詳細をさらに説明する。
【0040】
自動運転ECU50bは、運転支援ECU50aよりも高い演算能力を備えており、ACC、LTC及びLCAに相当する走行制御を少なくとも実施できる。自動運転ECU50bは、自律走行制御が一時的に中断されるシーン等において、運転支援ECU50aに代わって、ドライバに周辺監視義務のある運転支援制御を実施可能であってよい。
【0041】
自動運転ECU50bは、処理部51、RAM52、記憶部53、入出力インターフェース54及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、本開示による自動運転制御方法及び車両制御方法を実現するための種々の処理(インストラクション)を実行する。記憶部53には、処理部51によって実行される種々のプログラム(自動運転制御プログラム及び車両制御プログラム等)が格納されている。処理部51によるプログラムの実行により、自動運転ECU50bには、情報連携部61、環境認識部62、行動判断部63、制御実行部64、及び機器制御部65等が、自動運転機能及び車両制御機能を実現するための機能部として構築される(図2参照)。
【0042】
情報連携部61は、HMI制御装置100への情報提供と、HMI制御装置100及び車内モニタ装置29からの情報取得とを実施する。情報連携部61は、HMI制御装置100及び車内モニタ装置29との情報連携のためのサブ機能部として、HMI情報取得部71、報知要求部72、及び車内監視部73を有する。
【0043】
HMI情報取得部71は、HMI制御装置100から取得する操作情報に基づき、ドライバ等によりCID22及び操作デバイス26等に入力されるユーザ操作の内容を把握する。HMI情報取得部71は、例えば手動運転から運転支援制御への移行を指示するレベル2移行操作、及び運転支援制御から自律走行制御への移行を指示するレベル3移行操作等を把握する。またHMI情報取得部71は、後述する静音化制御の実施を承認する承認操作を把握する。加えて、HMI情報取得部71は、オーディオ装置24によるコンテンツ再生の状態を把握する。
【0044】
報知要求部72は、HMI制御装置100へ向けた報知の実施要求の出力により、自動運転機能の動作状態に同期したHMI制御装置100による報知を可能にする。報知要求部72は、例えば自律走行制御の終了が予定された場合、運転交代を要請する報知の実施要求をHMI制御装置100へ向けて出力する。また報知要求部72は、後述する静音化制御に関連する報知の実施要求を、HMI制御装置100へ向けて出力する。
【0045】
車内監視部73は、車内モニタ装置29から取得する車内モニタ情報、及びHMI制御装置100から取得する車内騒音情報を用いて、車室内の状況を監視する。具体的に、車内監視部73は、ドライバの運転姿勢、視線方向、周辺監視の実施の有無、セカンドタスクの実施の有無、及び覚醒度合い等を継続的に把握する。さらに、車内監視部73は、ドライバの体調に生じた異常を検知する。加えて、車内監視部73は、車内モニタ情報に基づき、後述する静音化制御による静音化が有用となる特定種別の搭乗者、例えば、子供及び睡眠状態の搭乗者等が車室内にいるか否かを把握する。尚、静音化が有用となる搭乗者は、上述の子供や睡眠状態の搭乗者に限定されず、適宜変更されてよい。
【0046】
環境認識部62は、ロケータ35より取得するロケータ情報及び地図データと、周辺監視センサ30及び車載通信機39より取得する検出情報とを組み合わせ、自車両Amの走行環境を認識する。環境認識部62は、自車両Amの状態を示す情報として、現在の走行速度を示す車速情報を通信バス99から取得する。
【0047】
環境認識部62は、走行環境認識のためのサブ機能部として、物標把握部74及び道路把握部75を有する。物標把握部74は、自車両Amの周囲を走行する他車両等、自車周囲の動的な物標の相対位置及び相対速度等を把握する。物標把握部74は、警察車両、消防車、及び救急車等の緊急車両の自車両Amへの接近を把握する。道路把握部75は、自車両Amの走行する道路又は走行予定の道路に関連した道路情報を取得する。環境認識部62は、物標把握部74及び道路把握部75にて把握された情報、即ち、走行環境の認識結果を行動判断部63に逐次提供する。
【0048】
行動判断部63は、運転支援ECU50a及びHMI制御装置100と連携し、自動運転システム50及びドライバ間での運転交代を制御する。行動判断部63は、自動運転ECU50bに運転操作の制御権がある場合、環境認識部62による走行環境の認識結果に基づき、自車両Amを走行させる予定走行ラインを生成し、生成した予定走行ラインを制御実行部64に出力する。行動判断部63は、自動運転機能の動作状態を制御するためのサブ機能部として、制御切替部76及び退避制御部77を有する。
【0049】
制御切替部76は、運転支援ECU50aと連携し、手動運転(制御オフ)、ドライバによる周辺監視義務のあるレベル2の運転支援制御、及びドライバによる周辺監視義務のないレベル3の自律走行制御のうちで、自車両Amの走行制御状態を切り替える。制御切替部76は、自動運転機能による自車両Amの走行制御状態を切り替えると、切り替え後の現在の走行制御状態を把握する。制御切替部76は、現在の走行制御状態を示す制御状態情報を、情報連携部61等に提供する。制御状態情報は、情報連携部61を経由して、HMI制御装置100等に提供される。
【0050】
退避制御部77は、自車両Amに関連する異常の発生に基づき、緊急退避制御を実施する。緊急退避制御は、自車両Amを退避場所に停車させる車両制御である。退避場所は、走行中のレーン内又は走行中の道路の道路脇(路肩)等に設定される。退避制御部77は、非常駐車帯、路側帯、及びパーキングエリア等に退避場所を設定可能であってもよい。退避制御部77は、車内監視部73にてドライバの体調異常が把握された場合、又は物標把握部74にて緊急車両の接近が把握された場合等に、緊急退避制御の実施を決定する。
【0051】
制御実行部64は、自動運転ECU50bに運転操作の制御権がある場合、走行制御ECU40との連携により、行動判断部63にて生成された予定走行ラインに従って、自車両Amの加減速制御及び操舵制御等を実行する。具体的に、制御実行部64は、予定走行ラインに基づく制御指令を生成し、生成した制御指令を走行制御ECU40へ向けて逐次出力する。
【0052】
機器制御部65は、ボディECU43へ向けた制御指令の出力により、自車両Amに搭載された種々の車載機器の作動を、自動運転機能の動作に関連づけて制御する。機器制御部65は、ボディECU43と連携し、PWアクチュエータ44を制御することで、自動走行期間において自車両Amの各ウィンドウの開閉状態を調整する。
【0053】
[レベル3自動走行期間における静音化制御]
ここまで説明した自動運転車両では、自動走行期間において、ドライバは運転操作及び周辺監視を実施しない。このとき、自動運転システム50は、例えば自律走行制御の設定車速まで加速するシーン等に、動力発生装置41の内燃機関又はモータージェネレータの回転速度を大きくする制御を実施し得る。こういった状況において、運転に参加していない同乗者は、内燃機関又はモータージェネレータの稼動に伴う車室内の騒音により、自動運転が正しく制御されているのかどうか不安を感じる可能性があった。
【0054】
そのため自動運転ECU50bの行動判断部63には、静音制御部78が、車両制御プログラムに基づくサブ機能部としてさらに設けられる。静音制御部78は、自律走行制御によって自車両Amが走行する自動走行期間において、ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも、自車両Amの車室内を静音化するための静音化制御を実施する。要監視期間は、ハンズオン制御又はハンズオフ制御を含む運転支援制御によって自車両Amが走行する期間、及び手動運転によって自車両Amが走行する期間を含む。静音制御部78は、静音化制御として、動力制御及び車室内制御を実施する。以下、動力制御及び車室内制御の各詳細と、静音化制御に関連する報知の詳細とを説明する。
【0055】
<静音化のための動力制御>
動力制御は、車室内の騒音の原因となる動力発生装置41の振動を抑制する車両制御である。静音制御部78は、制御実行部64及び走行制御ECU40と連携し、静音化のための動力制御として、動力選択制御及び動力抑制制御を実施する。
【0056】
動力選択制御は、自車両Amに搭載される動力発生装置41が内燃機関及びモータージェネレータ等のような複数の動力源を含む場合、複数の動力源のうちで騒音の少ない静音動力源(即ち、モータージェネレータ)を優先的に動作させる車両制御である。静音制御部78は、動力選択制御として、内燃機関を停止させ、モータージェネレータの発生動力により、いわゆるEVモードで自車両Amを走行させる。動力発生装置41が走行用のモータージェネレータを複数(2つ)含む構成の場合、静音制御部78は、動力選択制御として、複数のうちで低振動及び低騒音となるモータージェネレータのみを動作させてもよい。
【0057】
動力抑制制御は、動力発生装置41に動力源として含まれる内燃機関又はモータージェネレータの回転速度(回転数)を抑制する車両制御である。静音制御部78は、低い回転速度でシフトアップするシフト制御、又は加速度を低く抑制する加速制御等を適用することで、動力抑制制御を実現する。
【0058】
静音制御部78は、緊急車両の接近によって退避制御部77が緊急退避制御を実施する場合、動力選択制御及び動力抑制制御を中止する。さらに、静音制御部78は、ドライバ異常の発生によって退避制御部77が緊急退避制御を実施する場合、動力選択制御及び動力抑制制御が緊急退避制御を妨げるか否かを判定する。静音制御部78は、動力選択制御及び動力抑制制御が緊急退避制御を妨げないと判定した場合には、緊急退避制御によって自車両Amが走行する退避走行期間においても、動力選択制御及び動力抑制制御を実施(継続)する。一方で、緊急退避制御を妨げると判定した場合、静音制御部78は、退避走行期間において、動力選択制御及び動力抑制制御を中止する。例えば、退避場所への移動に車線変更が必要とされる等、加速又は高速度の維持を要する緊急退避制御が計画された場合、動力選択制御及び動力抑制制御は、中止される。
【0059】
静音制御部78は、動力抑制制御を緩和できる。具体的に、静音制御部78は、車室内にて、オーディオ装置24によるコンテンツ再生が行なわれている場合、動力抑制制御を緩和する。コンテンツ再生の音量が大きくなるほど、静音制御部78は、動力抑制制御を緩和し、内燃機関又はモータージェネレータの高い回転速度での稼動を許容する。
【0060】
加えて、静音制御部78は、動力抑制制御を実施してしまうと自車両Amの走行速度がドライバによって設定された高い設定車速(例えば、200km/h等)に届かなくなる場合、設定車速に到達するまで動力抑制制御を緩和する。静音制御部78は、設定車速に到達後、動力抑制制御の緩和を終了しても、設定車速を維持できるか否かを判定する。設定車速の維持が可能な場合、静音制御部78は、動力抑制制御の緩和を終了する。一方、設定車速の維持が可能でない場合、静音制御部78は、動力抑制制御の緩和を継続し、設定車速での巡航を可能にする。
【0061】
<静音化のための車室内制御>
車室内制御は、車室内に生じている騒音を低減させる車両制御、又は騒音を聞こえ難くする車両制御である。静音制御部78は、情報連携部61及びHMI制御装置100、又は機器制御部65及びボディECU43と連携し、静音化のための車室内制御として、音量調整制御、ノイズキャンセリング制御、及び騒音マスキング制御と、開閉制御とを実施する。
【0062】
音量調整制御は、車室内のオーディオ装置24によるコンテンツ再生の音量を上げる制御である。静音制御部78は、オーディオ装置24によってコンテンツ再生が行なわれている場合、報知要求部72と連携し、コンテンツの再生音量を徐々に上げるようHMI制御装置100に要求する。HMI制御装置100は、音量調整制御として、オーディオ装置24のボリュームを所定レベルだけ引き上げる。HMI制御装置100は、音量調整制御の終了に基づき、オーディオ装置24のボリュームを制御開始前のレベルに引き下げる。
【0063】
ノイズキャンセリング制御は、上述したように、騒音に対して逆位相となる波形の音を車室内に再生させる制御である。ノイズキャンセリング制御部81は、ノイズキャンセリングの効果の程度を、車室内の搭乗者毎に調整する。具体的に、ノイズキャンセリング制御部81は、運転席に着座するドライバに対するノイズキャンセリングの効果を、他の席に着座する同乗者に対するノイズキャンセリングの効果よりも低くする。言い替えれば、同乗者席の騒音は、運転席の騒音よりも大きく低減される。
【0064】
騒音マスキング制御は、上述したように、騒音を覆い隠すような擬音を車室内に再生させる制御である。擬音生成部82は、報知要求部72からの要求に応じて、車室内の騒音が搭乗者に聞こえ難くなるような擬音を出力し、ドライバを含む搭乗者が感じる騒音を軽減させる。
【0065】
開閉制御は、自車両Amに設けられたウィンドウの開閉状態を、車室内を静音化するために調整する制御である。例えば、特定のウィンドウが大きく開いている場合、又は片方のウィンドウのみが開いている場合等、走行に伴うノイズが発生し易くなる。ボディECU43は、機器制御部65からの要求に応じて、車室内がうるさくならないように、各ウィンドウの開閉状態を左右のバランスを取りつつ調整する。ボディECU43は、原則的に、各ウィンドウを閉める制御を実施する。ボディECU43は、開閉制御として、全てのウィンドウを全閉状態にする調整を実施してもよい。
【0066】
<静音化制御に関連する報知>
報知要求部72は、HMI制御装置100と連携し、静音化制御を実施するか否かをドライバに問い合わせる報知(以下、問い合わせ報知)を実施する。静音化制御の要否の問い合わせ報知は、運転支援制御等から自律走行制御への切り替えに基づき、ドライバがセカンドタスクを開始するよりも前に実施される。具体的に、HMI制御装置100は、セカンドタスクに関連した動画コンテンツ等が表示されるCID22を用いて、動画コンテンツ等の再生が開始される以前に、問い合わせ報知を実施する。問い合わせ報知に応じて、ドライバが静音化制御の実施を承認した場合、静音制御部78は、静音化制御を実施する。
【0067】
[静音化制御に関連する各処理]
次に、ここまで説明した静音化制御を実現するため、自動運転システム50にて実施されるモード切替処理、動力制御処理、ウィンドウ制御処理、及び車室内制御処理の各詳細を、図3図6に基づき、図1及び図2を参照しつつ、さらに説明する。
【0068】
<モード切替処理>
図3に示すモード切替処理は、静音化制御が実施される静音モードと、静音化制御が実施されない通常モードとを切り替える処理である。モード切替処理は、制御切替部76が自動運転機能の制御状態(自動運転レベル)を切り替えた場合に、自動運転ECU50bによって開始される。
【0069】
モード切替処理のS11では、制御実行部64が、走行制御ECU40に設定されている現在のドライブモードを把握する。静音制御部78は、S12にて、現在のドライブモードが走行性能を優先させるスポーツモードに設定されているか否かを判定する。ドライブモードがスポーツモードに設定されている場合(S12:YES)、静音制御部78は、S19にて、静音化制御を実施しない通常モードに設定する。これにより、メータディスプレイ21にタコメータが表示されている場合、静音化制御は実施されない。
【0070】
一方、ドライブモードがスポーツモード以外に設定されている場合(S12:NO)、制御切替部76は、S13にて、自車両Amの走行制御状態、即ち、現在の自動運転レベルを把握する。一例として、事理値走行制御への制御遷移が行われた場合等、制御切替部76は、S13にて、自車両Amの走行制御状態が自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握する。
【0071】
制御切替部76は、S14にて、自車両Amの走行制御状態が自動運転レベル3以上の状態か否かを判定する。自車両Amがレベル3未満の走行制御状態である場合(S14:NO)、静音制御部78は、S19にて、静音化制御を実施しない通常モードに設定する。対して、自車両Amがレベル3以上の走行制御状態である場合(S14:YES)、車内監視部73が、S15にて、車内モニタ情報及び車内騒音情報に基づき、車内の状況を把握する。車内監視部73は、S15にて、車室内にいる搭乗者の種別を少なくとも把握する。
【0072】
車内監視部73は、S16にて、静音化が有用となる特定種別の搭乗者が車室内にいるか否かを判定する。子供又は睡眠状態の搭乗者等、特定種別の搭乗者が車室内にいる場合(S16:YES)、静音制御部78は、S20にて、静音化制御を実施する静音モードに設定する。対して、特定種別の搭乗者が車室内にいない場合(S16:NO)、報知要求部72は、S17にて、自律走行制御への切り替えに基づく問い合わせ報知を実施する。
【0073】
HMI情報取得部71は、S18にて、静音化制御の実施を承認するユーザ操作の操作情報を、HMI制御装置100から取得したか否かを判定する。HMI情報取得部71が操作情報を取得した場合(S18:YES)、即ち、静音化制御の実施がドライバによって承認された場合、静音制御部78は、S20にて、静音化制御を実施する静音モードに設定する。対して、所定時間以内に操作情報が取得されない場合(S18:NO)、即ち、静音化制御の実施がドライバによって承認されなかった場合、静音制御部78は、S19にて、静音化制御を実施しない通常モードに設定する。
【0074】
<動力制御処理>
図4に示す動力制御処理は、動力選択制御及び動力抑制制御の実施及び停止を切り替える処理である。動力制御処理は、自動走行期間にて、自動運転ECU50bにより繰り返し実施される。
【0075】
動力制御処理のS31では、静音制御部78が、モード切替処理(図3参照)にて設定された制御モードを把握する。静音制御部78は、S32にて、制御モードが静音モードに設定されているか否かを判定する。制御モードが通常モードに設定されている場合(S32:NO)、静音制御部78は、S37にて、動力選択制御及び動力抑制制御を含む静音化制御(動力制御)をオフ状態にする。
【0076】
一方、制御モードが静音モードに設定されている場合(S32:YES)、S33にて、物標把握部74が、自車両Amへの緊急車両の接近を把握する。緊急車両の接近が把握されている場合(S33:YES)、静音制御部78は、S37にて、静音化制御をオフ状態にする。これにより、動力抑制制御等は中止される。対して、自車両Amに緊急車両が接近していない場合(S33:NO)、静音制御部78は、S34にて、緊急退避制御が実施されているか否かを判定する。
【0077】
緊急退避制御が実施されている場合(S34:YES)、静音制御部78(行動判断部63)は、S35にて、静音化のための動力制御が緊急退避制御を妨げるか否かを判定する。動力制御が緊急退避制御を妨げる可能性があると判定した場合(S35:YES)、静音制御部78は、S37にて、動力選択制御及び動力抑制制御を含む静音化制御をオフ状態にする。対して、緊急退避制御が実施されていない場合(S34:NO)、又は動力制御が緊急退避制御を妨げる可能性がないと判定した場合(S35:NO)、静音制御部78は、S36にて、静音化制御をオン状態にする。これにより、騒音の少ないモータージェネレータを優先的に動作させる動力選択制御、及び動力発生装置41の回転速度を抑制する動力抑制制御の実施が許可される。
【0078】
行動判断部63は、S38にて、動力抑制制御を実施した状態で自車両Amの走行速度が設定速度に届くか否かを判定する。動力抑制制御を実施してしまうと自車両Amの走行速度が設定車速に届かなくなる場合(S38:YES)、静音制御部78は、S40にて、動力抑制制御を緩和する。この場合、動力選択制御も中断されてよい。静音制御部78は、自車両Amの走行速度が設定車速に到達するまで、少なくとも動力抑制制御の緩和を継続する。
【0079】
動力抑制制御を実施しても自車両Amの走行速度が設定車速に届く場合(S38:NO)、S39にて、HMI情報取得部71が、車室内のオーディオ装置24によるコンテンツ再生の状態を把握する。車室内にてコンテンツ再生が行なわれている場合(S39:YES)、静音制御部78は、S40にて、動力抑制制御を緩和する。この場合、動力抑制制御はオフ状態とされてもよい。一方、車室内にてコンテンツ再生が行なわれていない場合(S39:NO)、静音制御部78は、S41にて、動力抑制制御の緩和を停止する。
【0080】
<ウィンドウ制御処理>
図5に示すウィンドウ制御処理は、開閉制御の実施により、車室内を静音化するためにウィンドウの開閉状態を調整する処理である。ウィンドウ制御処理は、自動走行期間にて、自動運転ECU50bにより繰り返し実施される。
【0081】
ウィンドウ制御処理のS51では、静音制御部78が、モード切替処理(図3参照)にて設定された制御モードを把握する。静音制御部78は、S52にて、制御モードが静音モードに切り替えられたか否かを判定する。静音モードへの切り替えがなかった場合(S52:NO)、ウィンドウ制御処理は終了される。対して、静音モードへの切り替えがあった場合(S52:YES)、静音制御部78は、S53にて、機器制御部65及びボディECU43を通じて、自車両Amに設けられたウィンドウの開閉状態を把握する。さらに、静音制御部78は、S54にて、機器制御部65及びボディECU43と連携し、車室内を静音化するためのウィンドウの開閉制御を実施する。
【0082】
<車室内制御処理>
図6に示す車室内制御処理は、開閉制御を除く車室内制御であって、HMI制御装置100との連携による車室内制御の実施を制御する処理である。車室内制御処理は、自動走行期間にて、自動運転ECU50bにより繰り返し実施される。
【0083】
車室内制御処理のS61では、静音制御部78が、モード切替処理(図3参照)にて設定された制御モードを把握する。静音制御部78は、S62にて、制御モードが静音モードに切り替えられたか否かを判定する。静音モードへの切り替えがなかった場合(S62:NO)、車室内制御処理は終了される。
【0084】
対して、静音モードへの切り替えがあった場合(S62:YES)、S63にて、行動判断部63が、動力抑制制御を実施した状態で自車両Amの走行速度が設定速度に届くか否かを判定する。動力抑制制御を実施してしまうと自車両Amの走行速度が設定車速に届かなくなる場合(S63:YES)、S64にて、報知要求部72が、HMI制御装置100と連携し、車速不足の注意喚起として、設定車速に到達しないことを示す報知を実施する。S64による車速不足の注意喚起は、動力抑制制御の緩和が実施される場合(図4 S40参照)でも、実施されてよい。
【0085】
さらに、静音制御部78は、報知要求部72及びHMI制御装置100と連携し、音量調整制御(S65)、ノイズキャンセリング制御(S66)、及び騒音マスキング制御(S67)を実施する。各制御の実施順序は、適宜変更されてよい。加えて、一部の制御は、実施されなくてもよい。
【0086】
(第一実施形態まとめ)
ここまで説明した第一実施形態では、自律走行制御によって自車両Amが走行する自動走行期間において、静音化制御が実施され、自車両Amの車室内が静音化され得る。故に、ドライバが周辺監視をしていない走行状態下において、走行に伴う車室内の騒音により、運転に関わらない同乗者が自律走行制御に対して感じる不安を抑制することが可能になる。
【0087】
加えて第一実施形態では、自車両Amに搭載される動力発生装置41の回転速度を抑制する動力抑制制御が、静音化制御として実施される。こうした動力抑制制御によれば、走行に伴う車室内の騒音が、効果的に低減され得る。その結果、同乗者の不安は、さらに抑制可能となる。
【0088】
また第一実施形態では、車室内のオーディオ装置24によるコンテンツ再生の状態が把握され、車室内にてコンテンツ再生が行なわれている場合、動力抑制制御が緩和される。車室内にてメディアコンテンツの再生が行なわれていれば、車室内が少々うるさくても、同乗者は、不安を感じ難い。故に、動力抑制制御を緩和し、車室内がうるさくなることを許容してもよい。
【0089】
さらに第一実施形態では、自車両Amへの緊急車両の接近が把握される。そして、緊急車両の接近が把握された場合、動力抑制制御が中止される。故に、動力抑制制御に妨げられることなく、緊急車両を回避する走行制御が迅速に実施され得る。
【0090】
さらに第一実施形態では、自車両Amに関連する異常の発生に基づき緊急退避制御が実施される場合、静音制御部78は、動力抑制制御が緊急退避制御を妨げるか否かを判定する。そして、動力抑制制御が緊急退避制御を妨げないと判定した場合には、緊急退避制御によって自車両Amが走行する退避走行期間において、動力抑制制御が実施される。以上によれば、動力発生装置41の高回転化が抑制されるため、退避走行期間にて車室内が静音となる。その結果、退避走行期間でも、同乗者に安心感を与えることが可能になる。
【0091】
加えて第一実施形態では、動力抑制制御を実施してしまうと自車両Amの走行速度がドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、設定車速に到達しないことを示す報知が行われる。こうした報知によれば、同乗者は、自車両Amの制御状態を正しく把握し得る。その結果、自律走行制御に対して感じる同乗者の不安は、軽減され得る。
【0092】
また第一実施形態では、動力抑制制御を実施してしまうと自車両Amの走行速度がドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、設定車速に到達するまで動力抑制制御が緩和される。故に、高速巡航が必要なシーンにおいて、動力抑制制御による車速不足により、自律走行制御に対して同乗者が不安を感じ易くなる事態は、回避され得る。
【0093】
加えて第一実施形態では、車室内のオーディオ装置24によるコンテンツ再生の音量を大きくする音量調整制御が、静音化制御として実施される。以上によれば、同乗者の注意をコンテンツの音声に向くようになるため、同乗者は、車室内の騒音を感じ難くなる。
【0094】
また第一実施形態では、車室内の騒音を抑制するノイズキャンセリング制御部81を用いたノイズキャンセリング制御が、静音化制御として実施される。このノイズキャンセリング制御において、ドライバ以外の搭乗者が着座する同乗者席の騒音は、ドライバが着座する運転席の騒音よりも大きく低減される。これにより、ドライバは、動力発生装置41の動作状態を音情報から把握できる。一方、同乗者は、騒音がキャンセルされた静音環境下で過ごすことができる。尚、ノイズキャンセリング制御が「ノイズ低減制御」に相当する。
【0095】
さらに第一実施形態では、静音化が有用となる特定種別の搭乗者、具体的には、子供や睡眠状態の搭乗者について、車室内にいるか否かが把握される。そして、こうした搭乗者が車室内にいる場合、静音化制御が実施される。故に、車室内の騒音により、子供や睡眠状態の搭乗者が不快となる事態は、回避され得る。
【0096】
加えて第一実施形態では、車室内の騒音が搭乗者に聞こえ難くなるような擬音を出力する擬音装置が静音化制御に用いられる。このように、異音を消すような擬音を発生させ、騒音をマスキングすることによっても、同乗者の感じる騒音が低減され得る。その結果、同乗者の不安の軽減が可能になる。
【0097】
また第一実施形態では、自車両Amに設けられたウィンドウの開閉状態を、車室内を静音化するために調整する開閉制御が、静音化制御として実施される。こうした開閉制御によれば、ウィンドウの開け過ぎ又は片方のウィンドウのみ開ける等によって発生する騒音が抑制可能になる。
【0098】
さらに第一実施形態では、自律走行制御への切り替えに基づき、静音化制御を実施するか否かをドライバに問い合わせる報知が実施される。そして、静音化制御の実施がドライバによって承認された場合に、静音化制御が実施される。故に、自動走行期間にて、静音化が不要なシーンにおいて、ドライバ等の搭乗者の意思に基づき、静音化制御の実施の回避が可能になる。
【0099】
加えて第一実施形態では、自車両Amに搭載される動力発生装置41が複数の動力源を含む場合、動力選択制御が静音化制御として実施される。この動力選択制御では、複数の動力源のうちで騒音の少ない静音動力源、即ち、モータージェネレータが、優先的に動作する。こうした制御によっても、動力発生装置41の稼動に起因する車室内の騒音は、効果的に低減され得る。
【0100】
また第一実施形態では、自車両Amのドライブモードが走行性能を優先させるスポーツモードに設定されている場合、自動走行期間における静音化制御の実施が中止される。以上によれば、ドライバが積極的な走行を望んでいる場合に、ドライバの意思に反して静音化が実施されてしまう事態は、回避され得る。
【0101】
尚、上記第一実施形態では、自動運転ECU50bが「車両制御装置」に相当し、HMI情報取得部71が「再生把握部」に相当し、報知要求部72が「報知実施部」に相当し、車内監視部73が「車内把握部」に相当する。また、物標把握部74が「車外把握部」に相当し、制御切替部76が「制御把握部」に相当し、ノイズキャンセリング制御部81が「騒音抑制装置」に相当し、擬音生成部82が「擬音装置」に相当する。
【0102】
(第二実施形態)
本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、HMI制御装置100及び自動運転ECU50bの連携によって実施される車室内の音響制御の内容が第一実施形態とは異なっている。以下、第二実施形態のHMI制御装置100及び自動運転ECU50bの各詳細を、図7に基づき説明する。
【0103】
HMI制御装置100は、動画及び音楽等のコンテンツの再生機能に加えて、背景音出力機能及び音場制御機能をさらに有している。HMI制御装置100には、背景音出力機能を実現するためのBGM(background music)出力部86と、音場制御機能を実現するための音場制御部87とが設けられている。BGM出力部86及び音場制御部87は、オーディオ装置24のスピーカを用いて車室内に音を出力する構成であってもよく、又は専用のスピーカを用いて車室内に音を出力する構成であってもよい。
【0104】
BGM出力部86は、自動運転BGM、運転支援BGM、及び運転交代用BGMを自車両Amの車室内に出力するための音声信号を生成する。BGM出力部86は、生成した音声信号をオーディオ装置24に出力する。オーディオ装置24は、入力される音声信号に従い、スピーカを用いて各BGMを再生する。
【0105】
自動運転BGMは、自律走行制御が行われていることを示す背景音である。運転支援BGMは、運転支援制御が行われていることを示す背景音である。自動運転BGM及び運転支援BGMは、自動運転レベル毎に設定されている。即ち、自動運転ECU50bがレベル4及びレベル3の自動運転を実施可能な場合、BGM出力部86には、自動運転レベル4に対応する自動運転BGMと、自動運転レベル3に対応する自動運転BGMとが準備されている。さらに、自動運転レベル2に対応する運転支援BGMと、自動運転レベル1に対応する運転支援BGMとが、BGM出力部86には準備されている。
【0106】
自動運転BGM及び運転支援BGMには、自車両Amを製造する車両メーカー、又は自車両Amを利用したモビリティサービスを提供する事業者等、個々の企業ブランドを示すメロディが使用される。各自動運転レベルに紐づく自動運転BGM及び運転支援BGMは、類似性をもたせつつ、互いに異なる様態とされている。具体的に、各BGMは、音程及びテンポの少なくとも一方が異なっている。一例として、自動運転レベルが高くなるほど、BGMの音程は低く設定される。また、自動運転レベルが高くなるほど、BGMのテンポは速く設定される。
【0107】
ここで、自動運転ECU50bが遠隔での自動運転を実施可能な場合、BGM出力部86には、遠隔自動運転に対応する自動運転BGMが準備されてもよい。またBGM出力部86には、ハンズオフレベル2に対応する運転支援BGMと、ハンズオンレベル2に対応する運転支援BGMとが、別々に準備されていてもよい。さらに、自動運転レベルが高くなるほど、BGMの音程は高く設定されてよい。同様に、自動運転レベルが高くなるほど、BGMのテンポは遅く設定されてよい。
【0108】
運転交代用BGMは、自律走行制御から運転支援制御への走行制御状態(自動運転レベル)の変更を通知する変更通知背景音である。運転交代用BGMは、走行制御状態が変更されるよりも前に、予告通知として出力される。運転交代用BGMは、走行制御状態が変更された後に、変更完了通知としてさらに出力されてもよい。運転交代用BGMは、自動運転BGM及び運転支援BGMとは別のBGMであってもよく、或いは変更後の走行制御状態に紐づく自動運転BGM又は運転支援BGMであってもよい。
【0109】
音場制御部87は、オーディオ装置24に接続される複数のスピーカを用いて、実際には音源が存在しない場所から音が発生しているような音場を車室内に形成する。音場制御部87は、自動運転ECU50bから取得する指令等に基づき、車室内に出力する音の発生源の仮想位置を3次元的に決定する。音場制御部87は、各スピーカからの音の伝播特性及び車室内での反射パターン等のモデリングデータに基づき、出力対象とされる音声信号に対して、仮想の音源位置に対応した信号処理を実施する。音場制御部87は、信号処理を適用した音声信号をオーディオ装置24に出力し、各スピーカによって再生させる。音場制御部87は、動画及び音楽等のコンテンツの音声信号、BGM出力部86にて生成される各BGMの音声信号、及び擬音生成部82にて生成される擬音の音声信号等に対して、信号処理を実施可能である。音場制御部87は、車室内に存在する搭乗者の人数及び位置を把握し、搭乗者の人数及び位置に合わせて、仮想の音源位置を調整する。
【0110】
自動運転ECU50bは、HMI制御装置100の機能を利用し、自動運転に関連する背景音の出力、静音化のための車室内制御、及び騒音発生後の正常報知等を実施する。以下、これらの機能の詳細を順に説明する。
【0111】
<自動運転に関連する背景音の出力>
報知要求部72は、BGM出力部86と連携し、自動運転BGM及び運転支援BGMを車室内に再生させる。上述したように、制御切替部76では、実行中の走行制御状態に紐づく自動運転レベルが把握される。報知要求部72は、制御切替部76にて把握される実行中の自動運転レベルに応じて出力する自動運転BGM及び運転支援BGMを切り替え、車室内に再生されるBGMの様態を変更する。
【0112】
具体的に、報知要求部72は、自動運転ECU50bによって自動運転レベル3に相当する自律走行制御が開始されると、この自律走行制御の開始後に、自律走行制御が行われていることを示す自動運転BGMを出力する(図8参照)。報知要求部72は、自動運転の開始を通知する自動運転開始通知の後に自動運転BGMの出力を開始してもよく、又は自動運転開始通知と実質同時に自動運転BGMの出力を開始してもよい。これらの場合、自動運転開始通知は、メータディスプレイ21又はHUD23等に表示される文字メッセージとされる。さらに、こうした文字メッセージの表示が省略され、自律走行制御の開始と共に開始される自動運転BGMが、自動運転開始通知を兼ねていてもよい。
【0113】
報知要求部72は、自動運転BGMの出力を所定時間(数秒~10秒程度)継続した後に終了させる。報知要求部72は、自動運転BGMの出力を、自律走行制御が継続される期間中にて継続してもよい。一例として、自車両Amが個人所有される車両(Personally Owned Vehicle,以下、POV)であれば、自動運転BGMは、所定時間で終了される。対して、自車両Amがモビリティサービスを提供するサービス車両である場合、自動運転BGMは、継続的に再生され続ける。
【0114】
報知要求部72は、自律走行制御による自車両Amの挙動の変化を、自動運転BGMを用いて搭乗者に通知する(図8参照)。報知要求部72は、例えば所定の加速度を超えるような加速が実施されるタイミング、及び車線変更又は右左折が実施されるタイミングを、自動運転BGMによって搭乗者に予告する。報知要求部72は、自動運転BGMが停止している場合、自車両Amの挙動に変化が生じるタイミングで自動運転BGMの出力を開始(再開)する。また、自動運転BGMが継続的に再生されている場合、報知要求部72は、自車両Amの挙動に変化が生じるタイミングで自動運転BGMの音量を大きくする。自動運転BGMの再生又は音量増加は、挙動変化の発生前に開始され、自車両Amの挙動が安定するまで継続される。以上により、回転速度上昇に伴うパワートレインの騒音、及びタイヤノイズ等は、自動運転BGMによってマスキングされ、搭乗者に認識され難くなる。
【0115】
報知要求部72は、自律走行制御を実行中の自車両Amに緊急車両が接近するシーンにて、音場制御部87との連携によって自動運転BGMの指向性を調整し、緊急車両の相対的な方向を自車両Amの搭乗者に示す(図8参照)。上述したように、物標把握部74では、自車両Amへの緊急車両の接近が把握される。物標把握部74は、緊急車両の検知に車外音響センサ31を用いることが可能である。車外音響センサ31は、MEMSマイク又はコンデンサマイク等のマイク素子を主体として含む構成である。報知要求部72は、物標把握部74にて把握される緊急車両の相対位置を示すように、仮想の音源位置を指定する指令を音場制御部87に出力する。一例として、報知要求部72は、音源位置を明確にしない様態での自動運転BGMの再生を開始させた後、緊急車両が接近してきている方向のスピーカによる音の出力を最後に残し、搭乗者に対して緊急車両となる方向に仮想の音源を出現させる。搭乗者は、自動運転BGMの鳴る方向により、緊急車両の相対的な位置を把握できる。
【0116】
報知要求部72は、自車両Amの走行制御状態の変更が予定された場合、自動運転BGM及び運転支援BGMの出力を抑制する。報知要求部72は、自律走行制御を終了させる走行制御状態の変更が予定された場合、運転交代用BGMを出力し、走行制御状態の変更を搭乗者に通知する。
【0117】
一例として、自動運転レベル3に相当する自律走行制御の終了が予定されると、報知要求部72は、車室内のドライバへ向けた運転交代要請を実施する(図9参照)。自律走行制御から運転支援制御への移行が行われる場合、報知要求部72は、運転交代要請によってドライバがセカンドタスクを終了させた後、予め規定された時間(数秒~10秒程度,以下、BGM制限時間)が経過するまで運転交代用BGMの出力を制限する。報知要求部72は、BGM制限時間において、運転交代用BGMの出力を保留し、車室内へ向けた運転交代用BGMの再生を待機状態としてもよく、又は運転交代用BGMの再生をごく小さい音量で開始してもよい。BGM制限時間にて、ドライバは、車外環境の認識を再開し、ステアリングホイールを把持する。報知要求部72は、ステアリングホイールの把持再開が車内監視部73によって検知されるまで、出力制限を継続してもよい。
【0118】
報知要求部72は、BGM制限時間の経過後、運転交代用BGMの出力を開始する。報知要求部72は、BGM制限時間にて運転交代用BGMを小音量で再生させている場合、BGM制限時間の経過後に、運転交代用BGMの再生音量を通常の音量に変更する。報知要求部72は、自律走行制御の終了後に、運転交代用BGMに替えて運転支援BGMの出力を開始する。尚、運転交代用BGMとして、変更後の走行制御状態に紐づく背景音を使用する場合、報知要求部72は、自律走行制御から運転支援制御に切り替える切り替え期間において、運転支援BGMの出力を継続する。
【0119】
報知要求部72は、変更後の自動運転レベルに応じて運転交代用BGMの出力時間を変更する。自動運転レベル2に相当する運転支援制御に走行制御状態が移行する場合(図9参照)、運転支援制御への移行後、報知要求部72は、運転交代用BGMの出力を所定時間(数秒~10秒程度)継続する。一方、自動運転レベル1に相当する運転支援制御又は手動運転に走行制御状態が移行する場合、自律走行制御のオフ後、報知要求部72は、運転交代用BGMを出力しないか、又は自動運転レベル2のへ移行時よりも短い時間だけ運転交代用BGMを出力する。運転交代用BGMが所定のメロディを繰り返す態様の場合、報知要求部72は、自律走行制御のオフ後に、運転交代用BGMを1度だけ発音させてもよい。
【0120】
<静音化のための車室内制御>
静音制御部78は、情報連携部61及びHMI制御装置100と連携し、静音モードにおいて音量調整制御及び音場制御等を静音化のために実施する。
【0121】
静音制御部78は、自動走行期間にて、車内監視部73にて把握されるセカンドタスクの内容に応じて、車室内の静穏度合いを変化させる。車内監視部73は、車内モニタ装置29から取得する車内モニタ情報等に基づき、ドライバが実施しているセカンドタスクの内容を把握する。車内監視部73は、例えば、Web会議(通話)中、映画等のコンテンツを視聴中、デバイス操作、及び食事中等、ドライバのタスク状態を判別する。
【0122】
静音制御部78は、セカンドタスクの内容に応じて、車室内に再生される音声のボリュームを増減させる。一例として、ドライバがWeb会議中である場合、静音制御部78は、Web会議に関連しない通知音及び背景音のボリュームを下げ、車室内を静穏状態にする。また、ドライバがコンテンツを視聴中である場合、静音制御部78は、コンテンツに関連する音声のボリュームを、通知音及び背景音に対し設定されたボリュームよりも大きくなるように調整する。
【0123】
静音制御部78は、報知要求部72及び音場制御部87と連携し、騒音を聞こえ難くする車室内制御としての音場制御を実施する。車内監視部73では、騒音の発生源と自車両Amの搭乗者との位置関係が把握される。静音制御部78は、車内監視部73にて把握された位置関係に基づき、車室内のオーディオ装置24により出力される車内音の指向性を調整する。静音制御部78は、自動運転BGM及びコンテンツ音声等の仮想の音源位置を音場制御部87による音場制御によって変更し、搭乗者に対して騒音の発生源の方向となる位置に仮想の音源を設定する。これにより、室内音の発生位置(方向)は、搭乗者からみて、騒音の発生源の位置(方向)と同じになる。その結果、内燃機関及びモータージェネレータを発生源とする騒音は、室内音によってマスキングされ、搭乗者に認識され難くなる。
【0124】
<正常な騒音発生に伴う正常報知>
報知要求部72は、自動走行期間において、制御実行部64及び走行制御ECU40により動力発生制御が行われ、かつ、この動力発生制御が正常な制御であった場合、動力発生制御の完了後に正常報知を実施する。動力発生制御は、自車両Amに搭載される動力発生装置41の騒音が増大する制御である。具体的には、動力発生装置41に含まれる内燃機関又はモータージェネレータの回転速度が騒音閾値を超える加速制御が、動力発生制御とされる。動力発生制御は、例えば合流区間及び登坂区間等にて実施される。
【0125】
正常報知は、動力発生制御が正常な制御であったことを示す報知である。正常報知は、うるさくなったことに起因した動力発生制御の完了後、言い替えれば、動力発生装置41の発する騒音が小さくなったタイミングで実施される。正常報知は、例えば合流完了後又は登り坂の終了後に開始される。正常報知には、メータディスプレイ21及びCID22による表示、並びに音声メッセージ等が用いられる。例えば、「騒音が大きくなる制御を行いました」等のメッセージが、正常報知として、ドライバ及び同乗者の両方に対して提示される。
【0126】
報知要求部72は、正常報知を毎回実施せず、搭乗者の状態に応じて正常報知を適宜省略する。報知要求部72は、車内監視部73にて動力発生制御に対する搭乗者の不安が検知された場合にのみ、正常報知を実施する。車内監視部73は、種々の計測情報を用いて、自車両Amの搭乗者が不安を感じる不安状態か否かを把握する。車内監視部73は、例えば車内音響センサ27にて集音される搭乗者の発話内容又は声の震え具合等に基づき、搭乗者が不安状態か否かを判定する。車内監視部73は、運転席及び同乗者席に設置されたバイタルセンサ、又は搭乗者が身につけているウェアラブル端末等から、搭乗者の心拍数を取得する。車内監視部73は、搭乗者の心拍数の上昇に基づき、搭乗者が不安状態か否かを判定する。報知要求部72は、動力発生制御に対して搭乗者が不安状態となる場合、正常通知を実施する。一方、動力発生制御に対して搭乗者が不安状態とならない場合、報知要求部72は、正常報知を抑制(中止)する。
【0127】
[車室内音響制御に関連する各処理]
ここまで説明した車室内の音響を実現するため、自動運転ECU50bは、自動運転報知処理、挙動変化報知処理、緊急車両報知処理、運転交代報知処理、静穏制御処理、及び正常騒音報知処理を実施する。以下、自動運転ECU50bを主体として実施される各処理の詳細を、図10図15に基づき、図7図9を参照しつつ、さらに説明する。
【0128】
<自動運転報知処理>
図10に示す自動運転報知処理は、自動運転レベル3以上の自律走行制御の開始を搭乗者に報知する処理である。自動運転報知処理は、自律走行制御が待機状態となっている場合に、自動運転ECU50bによって継続的に実施される。
【0129】
自動運転報知処理のS211では、自動運転レベルを切り替える制御のスケジュールが制御切替部76によって把握される。制御切替部76は、把握した制御スケジュールに基づき、S212にて、自動運転レベル3以上への切り替えが予定されているか否かを判定する。手動運転又は運転支援制御が継続される場合(S212:NO)、S211及びS212の繰り返しにより、自律走行制御への移行が待機される。
【0130】
一方、自律走行制御への切り替えが予定される場合(S212:YES)、報知要求部72は、S213にて、自律走行制御への切り替えに合わせて、自動運転開始通知(図8参照)を実施する。さらに、報知要求部72は、自律走行制御の開始後となるS214にて、自律走行制御が行われていることを示す自動運転BGM(図8参照)の出力を開始する。報知要求部72は、制御切替部76にて把握される自動運転レベルを参照し、現在の自動運転レベルに応じて、S214にて出力する自動運転BGMの様態を変更する。
【0131】
<挙動変化報知処理>
図11に示す挙動変化報知処理は、自車両Amに挙動変化が発生するイベントを、自動運転BGMを用いて搭乗者に報知する処理である。挙動変化報知処理は、自動運転期間の開始と共に開始され、自動運転期間の終了まで継続的に実施される。
【0132】
挙動変化報知処理のS221では、自律走行制御における車両制御のスケジュールが行動判断部63によって把握される。行動判断部63は、S222にて、車両挙動の変化が予定されているか否かを判定する。車両挙動の変化予定がない場合(S222:NO)、S221及びS222の繰り返しにより、挙動変化の発生が待機される。対して、車両挙動の変化が予定される場合(S222:YES)、報知要求部72は、S223にて、挙動変化を報知するための自動運転BGMの出力を実施する(図8参照)。S223によれば、自律走行制御により自車両Amの挙動に変化が生じるタイミングで、自動運転BGMの出力が開始される。S223では、自動運転BGMの音量を大きくする報知制御が実施されてもよい。
【0133】
<緊急車両報知処理>
図12に示す緊急車両報知処理は、緊急車両の接近を、自動運転BGMを用いて搭乗者に報知する処理である。緊急車両報知処理は、挙動変化報知処理(図11参照)と同様に、自動運転期間の開始と共に開始され、自動運転期間の終了まで継続的に実施される。
【0134】
緊急車両報知処理のS231では、物標把握部74により、自車両Amへの緊急車両の接近が把握される。緊急車両の接近がない場合(S231:NO)、S231の繰り返しにより、緊急車両の接近が待機される。一方、緊急車両の接近が把握されると(S231:YES)、物標把握部74は、S232にて、緊急車両の相対的な方向を把握する。次に、S233では、車内監視部73が、車室内の搭乗者の位置を把握する。S232及びS233の実施順序は、変更されてよい。
【0135】
報知要求部72は、S234にて、音場制御部87と連携し、自動運転BGMの音場制御を実施する。自動運転BGMの出力が中断されている場合、報知要求部72は、S234にて、自動運転BGMの出力を再開させる。報知要求部72は、S232及びS233にて把握された緊急車両と搭乗者との位置関係に基づき、再生中の自動運転BGMの指向性を調整する。報知要求部72は、搭乗者に対して緊急車両が接近している方向に仮想の音源位置を設定することで、緊急車両の相対的な方向を搭乗者に示す(図8参照)。報知要求部72は、緊急車両が所定の距離まで接近したタイミングで、搭乗者による緊急車両のサイレン音の把握を妨げないように、自動運転BGMを終了させる。
【0136】
<運転交代報知処理>
図13に示す運転交代報知処理は、自律走行制御の終了を搭乗者に報知する処理である。運転交代報知処理は、自律走行制御が実行状態となっている場合に、自動運転ECU50bによって継続的に実施される。
【0137】
運転交代報知処理のS241では、自動運転レベルを切り替える制御のスケジュールが制御切替部76によって把握される。制御切替部76は、把握した制御スケジュールに基づき、S242にて、自動運転レベル3以上の自律走行制御が継続される予定か否かを判定する。自律走行制御が継続予定の場合(S242:YES)、S241及びS242の繰り返しにより、自律走行制御の終了が待機される。一方、自律走行制御の終了が予定される場合(S242:NO)、報知要求部72は、S243にて、ドライバへ向けた運転交代要請を実施する(図9参照)。自動運転BGMが再生されている場合、S243にて、自動運転BGMの出力が抑制される。
【0138】
S244では、車内監視部73によってドライバの状態が把握される。車内監視部73は、S245にて、ドライバがセカンドタスクを終了したか否かを判定する。セカンドタスクが継続されている場合(S245:NO)、S244及びS245の繰り返しにより、セカンドタスクの終了が待機される。一方、セカンドタスクの終了が把握された場合(S245:YES)、報知要求部72は、S246にて、セカンドタスクの終了から予め規定されたBGM制限時間が経過したか否かを判定する。報知要求部72は、S246の判定により、BGM制限時間が経過するまで運転交代用BGMの出力を制限する。
【0139】
BGM制限時間が経過すると(S246:YES)、S241にて把握した制御スケジュールに基づき、制御切替部76は、S247にて、変更後の自動運転レベルを判定する。自動運転レベル2への移行が予定された場合(S247:YES)、報知要求部72は、S248にて、運転交代用BGMを通常出力する(図9参照)。この場合、運転交代用BGMの出力は、運転交代後、所定時間が経過するまで継続される。一方、自動運転レベル1又は手動運転への移行が予定された場合、(S247:NO)、報知要求部72は、S249にて、通常よりも制限した態様で運転交代用BGMを出力する。この場合、報知要求部72は、運転交代用BGMの出力を中止してもよく、通常よりも短時間で運転交代用BGMの再生を終了されてもよい。
【0140】
<静穏制御処理>
図14に示す静穏制御処理は、自動運転期間において、車室内に再生される室内音の音量及び音場を調整する処理である。緊急車両報知処理は、自動運転期間の開始と共に開始され、自動運転期間の終了まで繰り返し実施される。
【0141】
運転交代報知処理のS261では、静音制御部78が、モード切替処理(図3参照)にて設定した車室内制御のモードを把握する。静音制御部78は、S262にて、制御モードが静音モード(図3 S20参照)に設定されたか否かを判定する。制御モードが通常モード(図3 S19参照)に設定されている場合(S262:NO)、静穏制御処理は、一旦終了される。
【0142】
対して、制御モードが静音モードに設定されている場合、報知要求部72は、S263にて、セカンドタスクの内容に応じた音量調整制御を実施する。さらにS264では、車内監視部73が、騒音の発生源と搭乗者との位置関係を把握する。そして、報知要求部72は、音場制御部87によって車内音の指向性を調整する音場制御を実施し、搭乗者に対して騒音の発生源の方向となる位置に車内音の仮想の音源を設定する。以上のS263及びS264の実施順序は、適宜変更されてよい。
【0143】
<正常騒音報知処理>
図15に示す正常騒音報知処理は、動力発生装置41の騒音増大の発生後に正常報知を行うための処理である。正常騒音報知処理は、自動運転期間の開始と共に開始され、自動運転期間の終了まで繰り返し実施される。
【0144】
正常騒音報知処理のS271では、行動判断部63が、動力発生制御の実施により動力発生装置41の騒音が増大したか否かを判定する。騒音の増大を伴う動力発生制御が実施されない場合(S271:NO)、行動判断部63は、騒音の増大を伴う動力発生制御の実施を待機する。そして、動力発生制御が実施された場合(S271:YES)、行動判断部63は、S272にて、動力発生制御が終了したか否かを判定する。動力発生制御が継続している場合(S272:NO)、行動判断部63は、動力発生制御の終了を待機する。
【0145】
行動判断部63にて動力発生制御が終了したと判定されると(S272:YES)、車内監視部73は、S273にて、動力発生制御の実施期間にて、搭乗者の不安状態が把握されたか否かを判定する。搭乗者の不安状態が把握されない場合(S273:NO)、正常騒音報知処理は、一旦終了される。対して、搭乗者の不安状態が把握された場合(S273:YES)、報知要求部72は、S274にて、正常報知を実施する。以上のように、正常報知は、搭乗者の不安状態が把握された場合にのみ実施される。
【0146】
(第二実施形態まとめ)
ここまで説明した第二実施形態でも、自動走行期間において実施される静音化制御が実施され、自車両Amの車室内が静音化され得る。その結果、第一実施形態と同様の効果を奏し、運転に関わらない同乗者が自律走行制御に対して感じる不安を抑制することが可能になる。
【0147】
加えて第二実施形態では、自車両Amに搭載される動力発生装置41の騒音が増大する動力発生制御が自動走行期間において行われた場合、この動力発生制御の完了後に、動力発生制御が正常な制御であったことを示す正常報知が実施される。故に、合流及び登坂等に起因して不可避的に動力発生装置41の騒音が高まった場合でも、搭乗者の感じる不安は、早急に緩和され得る。
【0148】
また第二実施形態では、自車両Amの搭乗者が不安を感じる不安状態か否かが把握される。そして、動力発生制御に対して搭乗者が不安状態とならない場合、正常報知は抑制される。以上によれば、正常報知の繰り返しを搭乗者が煩わしく感じてしまう事態は、回避され得る。
【0149】
さらに第二実施形態では、自律走行制御の開始後に、自律走行制御が行われていることを示す自動運転BGMが出力される。以上によれば、搭乗者は、車室内に再生される自動運転BGMにより、自律走行制御が正常に開始されたと認識できる。その結果、自律走行制御に対する不安が抑制され得る。尚、自動運転BGMは、「自動運転背景音」に相当する。
【0150】
加えて第二実施形態では、走行制御状態の変更が予定された場合、自動運転BGMの出力が抑制される。以上によれば、搭乗者は、自動運転BGMの変化から、走行制御状態の変更予定を時間的な余裕を持って把握できる。故に、走行制御状態の変更に起因する搭乗者の不安が抑制され得る。
【0151】
また第二実施形態では、走行制御状態の変更が予定された場合、走行制御状態の変更を通知する運転交代用BGMが出力される。こうした運転交代用BGMの出力によれば、搭乗者は、走行制御状態の変更予定をより明確に把握できる。その結果、走行制御状態の変更に起因する搭乗者の不安が抑制され得る。尚、運転交代用BGMは、「変更通知背景音」に相当する。
【0152】
さらに第二実施形態では、予定された変更後の走行制御状態に紐づく自動運転レベルが把握される。そして、変更後の自動運転レベルに応じて運転交代用BGMの出力時間が変更される。以上によれば、搭乗者は、運転交代用BGMの出力時間から、変更後の自動運転レベルを認識できる。その結果、走行制御状態の変更後における搭乗者の不安が軽減され得る。
【0153】
加えて第二実施形態では、車室内のドライバについて、自動走行期間において予め許可されたセカンドタスクを実施しているか否かが把握される。そして、自律走行制御から運転支援制御への移行が行われる場合、セカンドタスクの終了後、予め規定された時間が経過するまで、運転交代用BGMの出力が制限される。以上によれば、ドライバは、セカンドタスクの終了後に開始した車外環境の認識を、運転交代用BGMによって妨げられ難い。その結果、運転交代用BGMは、ドライバへのスムーズな運転交代を確実に支援できる。
【0154】
また第二実施形態では、自車両Amの挙動に変化が生じるタイミングにて、自動運転BGMの出力を開始する処理、又は出力中の自動運転BGMの音量を大きくする処理が行われる。故に、挙動変化に起因する騒音は、自動運転BGMによって搭乗者に認識され難くなる。その結果、騒音が発生するシーンでの搭乗者の不安が抑制され得る。
【0155】
さらに第二実施形態では、自車両Amへの緊急車両の接近が把握される。そして、自動運転BGMの指向性の調整により、緊急車両の相対的な方向が自車両Amの搭乗者に示される。こうした音場制御によれば、緊急車両の位置を搭乗者に早期に示唆することが可能になる。その結果、緊急車両の急な接近に対して搭乗者が不安を感じる事態は、回避され得る。
【0156】
加えて第二実施形態では、実行中の走行制御状態に紐づく自動運転レベルが把握される。そして、自動運転レベルに応じて自動運転BGMの様態が変更される。以上によれば、搭乗者は、自動運転BGMの様態から、現在の走行制御状態を把握できる。このように、搭乗者による走行制御状態の把握が容易になることで、搭乗者の自律走行制御に対する不安が抑制可能になる。
【0157】
また第二実施形態では、騒音の発生源と自車両Amの搭乗者との位置関係が把握される。そして、車室内のオーディオ装置24により出力される車内音の指向性が調整され、搭乗者に対して発生源の方向となる位置に車内音の仮想の音源が設定される。こうした静音化制御によれば、搭乗者は、車内音によって騒音を認識し難くなる。その結果、騒音に起因した搭乗者の不安は、抑制可能になる。
【0158】
(他の実施形態)
以上、本開示による複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0159】
上記実施形態の変形例1による自動運転ECU50bを搭載する自車両Amは、特定のドライバが搭乗しない状態で、モビリティサービスを提供するドライバレス車両として運行される。ドライバレス車両の運行は、自車両から遠隔に存在する遠隔管理センタによって遠隔監視される。こうした変形例1においても、自動運転ECU50bは、車両制御装置として機能し、静音化制御を実施する。
【0160】
加えて変形例1では、車内監視部73が、車内音響センサ27にて検出される車内騒音情報を用いて、車室内の静穏性の良否を判定する。自車両Amの走行に伴う騒音が所定の判定基準よりも大きく、車室内の静穏性が悪い場合、報知要求部72は、遠隔管理センタ対して、静穏性に関する報知(以下、騒音報知)を行う。遠隔管理センタに配置された管理者は、騒音報知に基づき、ドライバレス車両に何らかの異常が生じていないかをチェックすることができる。
【0161】
上記実施形態の変形例2では、車外の音を検出する車外音響センサが自車両Amに設けられている。車外音響センサは、車内音響センサ27と実質的に同一の構成であり、車外の音を電気信号に変換し、その出力信号を自動運転ECU50bに提供する。自動運転ECU50bは、検出情報の1つとして、車外音響センサの出力信号を取得する。こうした変形例2では、物標把握部74は、車外音響センサの出力信号を用いて、緊急車両のサイレンを検知することで、緊急車両の接近を把握できる。
【0162】
上記実施形態の変形例3では、静音化のための動力制御及び車室内制御のうちで、一方のみが実施される。また、上記実施形態の変形例4では、動力選択制御及び動力抑制制御のうちで、一方のみが動力制御として実施される。さらに、上記実施形態の変形例5では、音量調整制御、ノイズキャンセリング制御、騒音マスキング制御、開閉制御、及び音場制御のうちで、少なくとも1つの車室内制御が省略される。こうした変形例5のように、静音化のための車室内制御の内容は、適宜変更されてよい。加えて、ドライバ等のユーザによる操作に基づき、実施される車室内制御の内容が予め設定されてもよい。
【0163】
上記実施形態の変形例6では、静音化制御の実施の承認をドライバに要求するプロセスが省略される。こうした変形例6では、自動運転レベル3への切り替えに基づき、静音制御部78は、静音化制御の実施を決定する。さらに、搭乗者の種別を判定する処理は、省略されてもよい。
【0164】
上記第二実施形態にて用いられた自動運転BGM、運転支援BGM、及び運転交代用BGMに用いられる音楽(旋律)は、適宜変更されてよい。例えば、自動運転BGM、運転支援BGM、及び運転交代用BGMのうち、少なくとも2つは、同じものであってもよい。さらに、これらの背景音は、自車両Amのユーザ操作に基づき変更可能であってもよい。
【0165】
本開示による車両制御装置の少なくとも一部の機能は、自動運転ECU50bとは異なる車載ECUに実装されてよい。上記実施形態の変形例7では、車両制御装置の少なくとも一部の機能は、走行制御ECU40に実装されており、走行制御ECU40が、モード切替処理及び動力制御処理を実施する。こうした変形例7では、走行制御ECU40、又は走行制御ECU40及び自動運転ECU50bを含むシステムが、「車両制御装置」に相当する。
【0166】
上記実施形態の変形例8では、車両制御装置の少なくとも一部の機能は、HMI制御装置100に実装されており、HMI制御装置100が、モード切替処理及び車室内制御処理を実施する。こうした変形例8では、HMI制御装置100、又はHMI制御装置100及び自動運転ECU50bを含むシステムが、「車両制御装置」に相当する。
【0167】
自動運転機能を実現するシステムの構成は、適宜変更されてよい。一例として、上記実施形態の変形例9では、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bの各機能は、一つの自動運転ECUによって提供されている。即ち、変形例9の自動運転ECU50bには、運転支援ECU50aの機能が実装されている。また、上記実施形態の変形例10では、運転支援ECU50a、自動運転ECU50b及びHMI制御装置100の各機能が、一つの統合ECUによって提供されている。こうした変形例10では、統合ECUが「車両制御装置」に相当する。
【0168】
上記実施形態にて、自動運転ECUによって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。また、こうした機能を実現するためのソフトウェアは、例えば現実世界のカメラ映像を用いてレーニングされたニューラルネットワーク又は言語モデルにより自動生成されたコードを少なくとも一部に含んでいてもよい。
【0169】
上記実施形態の各処理部は、RAMと結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。こうした処理部は、プリント基板に個別に実装された構成であってもよく、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA等に実装された構成であってもよい。
【0170】
上記実施形態にて各種プログラム等を記憶する記憶媒体(持続的有形コンピュータ読み取り媒体,non-transitory tangible storage medium)の形態は、適宜変更されてよい。さらに、記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、自動運転ECU等の制御回路に電気的に接続される構成であってよい。また、記憶媒体は、自動運転ECU等へのプログラムのコピー元又は配信元となる光学ディスク、ハードディスクドライブ、及びソリッドステートドライブ等であってもよい。
【0171】
上記の自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、一般的な自家用の乗用車に限定されず、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、ライドシェア用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。また、自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、右ハンドル車両であってもよく、又は左ハンドル車両であってもよい。さらに、車両が走行する交通環境は、左側通行を前提とした交通環境であってもよく、右側通行を前提とした交通環境であってもよい。本開示による車両制御は、それぞれの国及び地域の道路交通法、さらに車両のハンドル位置等に応じて適宜最適化されてよい。
【0172】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0173】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0174】
(技術的思想1)
ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御装置であって、
前記自車両の走行制御状態が前記自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握する制御把握部(76)と、
前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間において、前記ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも前記自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する静音制御部(78)と、
を備える車両制御装置。
(技術的思想2)
前記静音制御部は、前記自車両に搭載される動力発生装置(41)の回転速度を抑制する動力抑制制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1に記載の車両制御装置。
(技術的思想3)
前記車室内のオーディオ装置(24)によるコンテンツ再生の状態を把握する再生把握部(71)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記車室内にて前記コンテンツ再生が行なわれている場合、前記動力抑制制御を緩和する技術的思想2に記載の車両制御装置。
(技術的思想4)
前記自車両への緊急車両の接近を把握する車外把握部(74)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記緊急車両の接近が把握された場合、前記動力抑制制御を中止する技術的思想2又は3に記載の車両制御装置。
(技術的思想5)
前記自車両に関連する異常の発生に基づき緊急退避制御を実施する退避制御部(77)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記動力抑制制御が前記緊急退避制御を妨げるか否かを判定し、前記動力抑制制御が前記緊急退避制御を妨げないと判定した場合には、前記緊急退避制御によって前記自車両が走行する退避走行期間において前記動力抑制制御を実施する技術的思想2~4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想6)
前記動力抑制制御を実施してしまうと前記自車両の走行速度が前記ドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、前記設定車速に到達しないことを示す報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える技術的思想2~5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想7)
前記静音制御部は、前記動力抑制制御を実施してしまうと前記自車両の走行速度が前記ドライバによって設定された設定車速に届かなくなる場合、前記設定車速に到達するまで前記動力抑制制御を緩和する技術的思想2~6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想8)
前記自動走行期間において前記自車両に搭載される動力発生装置(41)の騒音が増大する動力発生制御が行われた場合、当該動力発生制御の完了後に、前記動力発生制御が正常な制御であったことを示す正常報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える技術的思想1~7のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想9)
前記自車両の搭乗者が不安を感じる不安状態か否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記動力発生制御に対して前記搭乗者が前記不安状態とならない場合、前記正常報知を抑制する技術的思想8に記載の車両制御装置。
(技術的思想10)
前記自律走行制御の開始後に、前記自律走行制御が行われていることを示す自動運転背景音を出力する報知実施部(72)、をさらに備える技術的思想1~9のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想11)
前記報知実施部は、前記走行制御状態の変更が予定された場合、前記自動運転背景音の出力を抑制する技術的思想10に記載の車両制御装置。
(技術的思想12)
前記報知実施部は、前記走行制御状態の変更が予定された場合、前記走行制御状態の変更を通知する変更通知背景音を出力する技術的思想10又は11に記載の車両制御装置。
(技術的思想13)
前記制御把握部は、予定された変更後の前記走行制御状態に紐づく自動運転レベルを把握し、
前記報知実施部は、変更後の前記自動運転レベルに応じて前記変更通知背景音の出力時間を変更する技術的思想12に記載の車両制御装置。
(技術的思想14)
前記自動走行期間において予め許可された運転以外の特定行為を前記ドライバが実施しているか否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自律走行制御から前記ドライバに前記周辺監視義務のある前記走行制御状態への移行が行われる場合、前記ドライバの前記特定行為の終了後、予め規定された時間が経過するまで前記変更通知背景音の出力を制限する技術的思想12又は13に記載の車両制御装置。
(技術的思想15)
前記報知実施部は、前記自律走行制御により前記自車両の挙動に変化が生じるタイミングで前記自動運転背景音の出力を開始するか、又は出力中の前記自動運転背景音の音量を大きくする技術的思想10~14のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想16)
前記自車両への緊急車両の接近を把握する車外把握部(74)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自動運転背景音の指向性を調整し、前記緊急車両の相対的な方向を前記自車両の搭乗者に示す技術的思想10~15のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想17)
前記制御把握部は、実行中の前記走行制御状態に紐づく自動運転レベルを把握し、
前記報知実施部は、前記自動運転レベルに応じて前記自動運転背景音の様態を変更する技術的思想10~16のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想18)
騒音の発生源と前記自車両の搭乗者との位置関係を把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記車室内のオーディオ装置(24)により出力される車内音の指向性を調整し、前記搭乗者に対して前記発生源の方向となる位置に前記車内音の仮想の音源を設定する音場制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1~17のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想19)
前記静音制御部は、前記車室内のオーディオ装置(24)によるコンテンツ再生の音量を大きくする音量調整制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1~18のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想20)
前記静音制御部は、前記車室内の騒音を抑制する騒音抑制装置(81)を用いて、前記ドライバ以外の搭乗者が着座する同乗者席の騒音を、前記ドライバが着座する運転席の騒音よりも大きく低減させるノイズキャンセリング制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1~19のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想21)
静音化が有用となる特定種別の搭乗者が前記車室内にいるか否かを把握する車内把握部(73)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記特定種別の搭乗者が前記車室内にいる場合に前記静音化制御を実施する技術的思想1~20のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想22)
前記静音制御部は、前記車室内の騒音が搭乗者に聞こえ難くなるような擬音を出力する擬音装置(82)を前記静音化制御に用いる技術的思想1~21のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想23)
前記静音制御部は、前記自車両に設けられたウィンドウの開閉状態を、前記車室内を静音化するために調整する開閉制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1~22のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想24)
前記自車両の走行に伴う騒音が所定の判定基準よりも大きい場合、前記自車両から遠隔に存在する遠隔管理センタに対して、静音性に関する報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備える技術的思想1~23のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想25)
前記自律走行制御への切り替えに基づき、前記静音化制御を実施するか否かを前記ドライバに問い合わせる報知を実施する報知実施部(72)、をさらに備え、
前記静音制御部は、前記静音化制御の実施が前記ドライバによって承認された場合に前記静音化制御を実施する技術的思想1~24のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想26)
前記静音制御部は、前記自車両に搭載される動力発生装置(41)が複数の動力源を含む場合、複数の前記動力源のうちで騒音の少ない静音動力源を優先的に動作させる動力選択制御を、前記静音化制御として実施する技術的思想1~25のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想27)
前記静音制御部は、前記自車両のドライブモードが走行性能を優先させるスポーツモードに設定されている場合、前記自動走行期間における前記静音化制御の実施を中止する技術的思想1~26のいずれか一項に記載の車両制御装置。
(技術的思想28)
ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御によって走行可能な自車両(Am)において用いられる車両制御方法であって、
前記自車両の走行制御状態が前記自律走行制御によって走行する状態に切り替えられたことを把握し(S13)、
前記自律走行制御によって前記自車両が走行する自動走行期間において、前記ドライバに周辺監視義務のある要監視期間よりも前記自車両の車室内を静音化するための静音化制御を実施する(S20)、
というステップを、少なくとも一つの処理部(51)にて実施される処理に含む車両制御方法。
【符号の説明】
【0175】
Am 自車両、24 オーディオ装置、41 動力発生装置、50b 自動運転ECU(車両制御装置)、51 処理部、71 HMI情報取得部(再生把握部)、72 報知要求部(報知実施部)、73 車内監視部(車内把握部)、74 物標把握部(車外把握部)、76 制御切替部(制御把握部)、77 退避制御部、78 静音制御部、81 ノイズキャンセリング制御部(騒音抑制装置)、82 擬音生成部(擬音装置)
図1
図2
図3
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図5
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