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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162964
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】骨吸収抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/09 20060101AFI20241114BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 36/906 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20241114BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241114BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/09
A61K31/375
A61K31/202
A61K36/906
A61K36/185
A61K36/48
A61P19/10
A23L33/10
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177618
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2023078337
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(72)【発明者】
【氏名】下段 詩絵理
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD25
4B018MD28
4B018MD30
4B018MD35
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA97
4C088AB12
4C088AB59
4C088AB81
4C088BA08
4C088MA16
4C088MA34
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA06
4C088NA14
4C088ZA97
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA27
4C206DA36
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA06
4C206NA14
4C206ZA97
(57)【要約】
【課題】 骨吸収抑制能を有し、副作用等のリスクのない原料を有効成分として含有する骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物を提供する。
【解決手段】 c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスからなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する骨吸収抑制用組成物並びに骨密度改善用組成物。これらの成分の中でも、c-バングレン及び t-バングレンは好ましい。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスからなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する骨吸収抑制用組成物。
【請求項2】
c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスからなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する骨密度改善用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨吸収抑制用組成物に関する。さらに詳しく言うと、本発明は、骨吸収抑制能を有する成分を含有する骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨の恒常性は、骨代謝と呼ばれる破壊(骨吸収)と形成(骨形成)との動的なサイクルによって維持される。骨吸収および骨形成は、それぞれ破骨細胞および骨芽細胞が担っている。
通常の状態では、破骨細胞と骨芽細胞との間に活性のバランスが保たれており、骨の形と量は維持される。しかし、このバランスが崩れ、骨吸収に傾く場合、骨量は低下し、最終的に骨粗鬆症を引き起こす。
骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患である。骨芽細胞による骨形成はエストロゲン(女性ホルモン)により促進されるが、破骨細胞による骨吸収は、エストロゲンによって抑制される。そのため、骨粗鬆症は、閉経期以降にエストロゲン分泌が減少した女性や高年齢の男性で多く見られる。
骨粗鬆症の予防および治療にはカルシウムの積極的な摂取が重要である。しかし、食品からのカルシウム摂取のみでは骨量の減少を防止するには不十分であり、積極的に骨吸収を抑えることが望ましい。
【0003】
骨吸収を抑制する薬剤として、ビスホスフォネート製剤や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、カルシトニン製剤等が従来より一般的に使用されてきた(非特許文献1~3)。
しかしながら、これらの薬剤は、副作用や他の薬との併用などの面で注意が必要であり、より安全な骨密度改善用素材が必要とされている。
また、近年の骨密度の研究により、各種素材に骨吸収抑制能が報告されている(例:ブドウ種子、ケルセチン、クルクミン、β-クリプトキサンチン等)。
【0004】
このような状況下で、副作用や他の薬との併用等の問題のない骨吸収抑制能を有する素材の研究・開発がさらに求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kashida K. et al:Bone Miner. Metab. (2004) 22.462-468
【0006】
【非特許文献2】Ohta H.:Clin. Calium (2004) 14.73-80
【0007】
【非特許文献3】Hosoi T.: Clin. Calcium. (2007) Jul;17 (7) 1098-104.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、骨吸収抑制能を有し、副作用等のリスクのない原料を有効成分として含有する骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、骨吸収抑制能を有する素材を探索すべく、約1500種の素材を用いてスクリーニングを行い、同機能を有することが既知の素材を除外したところ、ジャワしょうがエキスに特徴的に含まれるc-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスが優れた骨吸収抑制能を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物を提供するものである。
(1)c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスからなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する骨吸収抑制用組成物。
(2)c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスからなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する骨密度改善用組成物。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】骨吸収抑制能の評価結果を示すグラフである。
図2】骨吸収抑制能の評価結果を示す写真である。
図3】骨密度改善評価の結果を示すグラフである。
図4】骨密度改善評価の結果を示すグラフである。
図5】骨密度改善評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、例を挙げながら詳しく説明する。
本発明の骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物(以下、「骨吸収抑制用組成物等」)は、骨吸収抑制能を有する成分として、c-バングレンまたはt-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、ジャワしょうがエキス、月見草エキス、インディアンデーツパウダー及び黒生姜エキス末からなる群から選択される1以上の成分を有効成分として含有する。
【0013】
このうち、c-バングレン及びt-バングレンは、ジャワしょうが(学名:Zingiber purpureum)のエキスに特徴的に含まれる成分である。c-バングレンとt-バングレンは、フェニルブタジエンのダイマーであるバングレンの幾何異性体である。
なお、ジャワしょうがは、東南アジアにおいて、香辛料や民間療法薬として用いられている安全性の高い作物である。
【0014】
L-アスコルビン酸パルミチン酸エステルは、ビタミンCの誘導体であり、酸化防止剤の1種として、食品添加物として用いられている。
【0015】
クロセチンは、クチナシの果実に含まれる色素成分であり、古くから食品添加物として用いられている。クロセチンは、抗酸化作用にも優れた物質である。
【0016】
月見草(学名:Oenothera tetraptera)は、アカバナ科マツヨイグサ属の植物である。本発明において用いられる月見草エキスは、月見草の種子からポリフェノール類を高濃度に濃縮した物質であり、強い抗酸化性を有することが知られている。
【0017】
インディアンデーツパウダーは、インドなどで食用や民間薬として利用されるインディアンデーツ(タマリンド:Tamarindus indica L.)由来の粉末製剤である。天然添加物として、増粘剤や色素としての利用されている。
【0018】
黒生姜エキス末は、黒生姜(学名: Kaempferia parviflora)から抽出したエキスの粉末である。黒生姜は、タイやラオスで自生しており、タイでは民間薬として使用されている。黒生姜エキス末は、ショウガ特有のジンゲロール、ショウガオールとは全く異なる有効成分である「ポリメトキシフラボノイド」を含んでおり、様々な有効性が報告されている。
【0019】
これらの素材が有する骨吸収抑制能及び骨密度改善能については未だ報告がなく、上記のように、本発明者が約1500種の素材について研究を重ねた結果、見出したものである。
これらの素材は、いずれも商業的に入手可能なものを用いても、合成可能なものは合成して用いてもよい。
本発明の骨吸収抑制用組成物等は、これらの成分のいずれか1種を含有しても、2種以上を適宜組み合わせて含有してもよい。
本発明においては、これらの素材が有する骨吸収抑制能によって骨密度改善を達成することができる。したがって、本発明は骨吸収抑制用組成物及び骨密度改善用組成物を包含する。
【0020】
本発明において、骨吸収抑制用組成物等中の骨吸収抑制能を有する各成分の配合比率は、特に限定されないが、0.1~99質量%とすることが好ましく、1~60質量%とすることがさらに好ましい。
なお、本発明の骨吸収抑制用組成物等に含まれる骨吸収抑制除去能を有する成分は、骨吸収抑制能を有するその他の成分、医薬等と組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の骨吸収抑制用組成物等は、食品組成物、医薬組成物、飼料組成物として用いることができる。食品組成物としては特に限定されないが、健康食品、サプリメント、美容用食品、栄養補助食品、機能性食品、特定保健用食品などとして使用することができる。また、本発明の骨吸収抑制用組成物等は、骨吸収抑制用成分以外の効能、薬効を有する成分、例えば骨形成促進能を有する成分を配合してもよい。
【0022】
本発明の骨吸収抑制用組成物等は、骨密度を改善して、骨粗鬆症の予防、改善、治療用に用いることができる。そのため、本発明の骨吸収抑制用組成物等の摂取及び投与対象者の年齢、性別は問われず、幅広い年齢層の摂取、投与に適しているが、特に、中高年女性の骨の健康促進、維持、治療などに好適に用いることができる。
【0023】
本発明の骨吸収抑制用組成物等の形態、剤型は限定されず、カプセル、錠剤、粉剤、顆粒、ゼリー剤、ドリンク剤、液剤等いずれの形態、剤型としてもよい。
【0024】
本発明の骨吸収抑制用組成物等は、食品組成物、医薬組成物、飼料組成物の製造において通常使用される栄養成分、賦形剤、添加物などいかなる原料も適宜用いることができる。
【0025】
本発明の骨吸収抑制用組成物等に配合することができる栄養成分としては、ビタミン類、ミネラル類、タンパク質、脂質、糖質等を適宜用いることができ、その種類や配合量は限定されない。
本発明の骨吸収抑制用組成物等に配合することができる賦形剤としては、例えば、水、精製水、アルコール、グリセリン、乳糖、デンプン、デキストリン、白糖、沈降シリカ、蜂蜜等を用いることができ、その種類や配合量は限定されない。
本発明の骨吸収抑制用組成物等に配合することができる添加物としては、例えば、乳化剤、凝固剤、軟化剤、pH調整剤、酵素、香料、光沢剤、苦味剤、調味料等を用いることができ、その種類や配合量は限定されない。
【0026】
本発明の骨吸収抑制用組成物等の1日当たりの摂取、投与量は、特に限定されず、有効成分の種類によっても異なるが、0.1mg~3,000mgとすることが好ましく、1mg~1,000mgとすることがさらに好ましい。
ただし、1日当たりの摂取、投与量は、対象者の症状、年齢、体重、性別などにより適宜変更することができる。
【0027】
なお、本発明の骨吸収抑制用組成物等の製造方法は、特に限定されず、慣用のいずれの方法で製造してもよい。
【実施例0028】
以下、試験例、実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。試験例、実施例において、単に「%」と記載するものはすべて「質量%」を意味する。
【0029】
(試験例1)
本試験例では、骨吸収活性評価試験を行った。
使用した材料は下記の通りである。
(細胞)
骨髄由来マクロファージ(C57BL/6J:チャールズリバー社製、マウスの骨髄から作製して使用)
【0030】
(検査キット)
A)骨吸収活性評価キット48(Bone Resorption Assay Kit 48)(PGリサーチ社製)
・BRA-48P(骨吸収活性評価プレート48、リン酸カルシウムを固層化した48WELLプレート)
・BRA-FACS(骨吸収活性評価用FACS、リン酸カルシウムを標識する蛍光標識コンドロイチン硫酸(FACS))
・BRA-B(骨吸収活性評価用緩衝液、蛍光強度を測定する際に使用)
B)発光細胞生存アッセイ(Cell Titer-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製))
【0031】
(培地・試薬)
・初代培養用に調製された培地
破骨細胞培養用メディウム(マウス用)(コスモバイオ社製)
破骨細胞洗浄用メディウム(コスモバイオ社製)
・Murine M-CSF(PEPROTECH社製)
・ビスホスホネート(東京化成工業社製)
【0032】
(使用した原料)
・c-バングレン(c-banglene 標品(純度96.8%):ホソダSHC社製)
・t-バングレン(t-banglene 標品(純度93.0%):ホソダSHC社製)
・L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル(DSMニュートリションジャパン社製)
・クロセチン[クロビットP(理研ビタミン社製)]
・月見草エキス(月見草エキス-WSPS:オリザ油化社製)
・インディアンデーツエキス(インディアンデーツエキスパウダーMF:丸善製薬社製)
・黒生姜エキス(黒生姜エキス末:香栄興業社製)
【0033】
(手順)
[1日目]
(基質の固層化(無菌条件下で操作))
BRA-48Pに、FACSを0.25mL/well添加し、37℃、遮光条件下で80分間インキュベートし、リン酸緩衝液(PBS(-))0.5mL/wellで2回洗浄した。
次いで、培地を0.5mL/well添加し、プレートを遮光して細胞播種の準備をした。
(プレーティング)
上記培地をアスピレートし、細胞をプレートに播種(6×10cells/0.5mL/well)した。その後、37℃、CO濃度5%の条件下で4日間インキュベートした。
【0034】
[4日目]
培地全量をアスピレートし、新しい培地を0.5mLずつ添加した。培地を添加した後、各原料を最終濃度10μg/mLまたは1μg/mLになるように調製し、添加した(最終濃度を10μg/mLとした場合に細胞毒性の強かった原料(c-バングレン、t-バングレン)については、最終濃度を1μg/mLとして評価した。)
比較対照として、骨吸収阻害薬であるビスホスホネートを最終濃度0.05mMになるように添加したWellも作製した。
【0035】
[6日目]
・骨吸収活性の検出、評価
培養上清100μLを96wellプレート(Greiner社製)に採取し、BRA-B50μL/wellを添加し、2分間振盪した。
次いで、Infinite(登録商標)M200(Tecan Austria社製)を用いて、各原料について得られた培養上清の蛍光強度(Ex:485nm、Em:535nm)を測定した。
【0036】
・細胞生存アッセイによる評価
wellに残っている培地400μLから、200μL分をピペットマンで吸って取り除き、wellに200μL分の培地が残るようにした。次いで、Cell Titer-Gloを培地と等量(200μL)添加し、室温で2分間振盪した。
室温で10分間インキュベートした後、White96well plate(1/2Area OptiPlate(登録商標)-96)に100μL分を移し、Infinite(登録商標)M200(Tecan Ausutria社製)を用いて発光を測定した。
測定条件は下記の通りである。
・プレート:Greiner96 Flat Bottom White Polystyrene[GRE96fw_harf area.pdfx]
・ルミネッセンス
・インテグレーション時間:100m秒
Cell Titer-Gloによる処理後のプレートは、MilliQで洗浄し、細胞を洗い流して乾燥させ、Pitの観察に使用した。
培養上清蛍光強度及び細胞生存アッセイでの測定結果を表1、表2及び図1に示す。また、得られた各素材のプレートの写真を図2に示す。
【0037】
なお、表1及び図1における用語の意味は下記の通りである。
・「RANKL」(Receptor activator of NF-κB ligand)は、破骨細胞分化誘導因子(osteoclast differentiation factor(ODF))とも呼ばれ、破骨細胞の分化に必須の因子である。
・「RANKL+」は、RANKLを含む培地(分化培地)で培養した上清の蛍光強度を示す。
・「RANKL-」は、RANKLを含まない培地(非分化培地)で培養した上清の蛍光強度を示す。
・「Ave.」は、各原料(または対照)の培養上清蛍光強度の平均値ある。
・「Ave.-(RANKL-)」は、Ave.の値からRANKLを含まない培地(非分化培地)で培養した上清の蛍光強度を引いた値であり、バックを0とした時の蛍光強度を算出している。
・「RANKL+ビスホスフォネート+」は、RANKL+の培地(分化培地)に、骨吸収抑制薬であるビスホスフォネートを添加して培養した値である。この系において、骨粗鬆症治療薬であるビスホスフォネートを添加した際に骨吸収抑制がみられることを確認するために試験を行った。
・「R+Ave.-(R-)」は、RANKL+の培地(分化培地)で培養した上清の蛍光強度平均からRANKLを含まない培地(非分化培地)で培養した上清の蛍光強度平均を引いた値である。この値が本試験例における最終的なコントロールの値となる。
・各原料を添加した場合、この値に対してどれだけ蛍光強度が下がったかを評価するために、各原料の「Ave.-(RANKL-)」をR+Ave.-(R-)で割った値「/R+Ave.-(R-)」を算出し、比較した。
・また、/RANKL+Ave.は、各原料を添加して培養した細胞のCell Titer-Glo処理後上清の発光度平均をRANKL+の培地(分化培地)で培養した細胞のCell Titer-Glo処理後上清の発光度平均で割った値である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1及び図1に示される結果から、本発明の素材はいずれも対照(RANKL+)に比べて上清蛍光強度が減少し、骨吸収抑制能が高いことが分かる。特に、黒生姜エキス末、インディアンデーツエキス、月見草エキスなどでは上清蛍光強度が著しく減少し、特にc-バングレン及びt-バングレンは、他の素材の1/10の濃度で上記蛍光強度の減少を確認した。
これらの結果から、本発明の各成分は、ビスホスホネートと比べても遜色なく、優れた骨吸収抑制効果を有することが明らかとなった。
また、表2及び図1に示される結果から、表1及び図1の結果は素材の毒性により引き起こされた細胞死によるものではないことが確認できた。
これらの結果から、本発明によれば、ビスホスホネートと比べても遜色なく、優れた骨吸収抑制効果が得られることが明らかとなった。
【0041】
さらに、図2の写真において、写真の白く抜けている部分はカルシウムが吸収されて出現した穴(Pit)である。図2のRANKL+では、白い部分が大きいのに対して、本発明の素材を用いた写真ではPitが非常に少なかった。すなわち、図2の写真からみても、本発明によれば、骨吸収が著しく阻害されることが分かる。
【0042】
(試験例2)
本試験例1で評価した素材について、骨密度改善評価試験を行った。
その内、代表的な素材についてのみ開示する。
使用した評価モデルは、LPS誘導性骨量減少モデルと閉経後骨量低下モデルである。
以下、それぞれについて説明する。
【0043】
[LPS誘導性骨量減少モデル]
使用した材料は下記の通りである。
(動物)
Slc:ddYマウス♂5wを入荷し、1週間の順化後、6wで実験に供した(n=4~8)。
【0044】
(試薬等)
・LPS(SIGMA社製:#L2630-100MG)
生理食塩水中に5mg/10mL/kgとなるように調製し、4℃で保管した。
・生理食塩水
・0.5%CMC
・ビスホスホネート(東京化成工業社製:#D3921)
0.5%CMC中に10mg/10mlとなるように調製し、ポジティブコントロールとして使用した。
【0045】
(使用した原料)
・ジャワしょうがエキス(ホソダSHC社製;規格成分:バングレンとして5.0%以上)
・月見草エキス(オリザ油化社製:月見草エキス-WSPS)
各原料を、0.5%CMC中に500mg/10mlとなるように調製して使用した。
【0046】
(手順)
LPSを生理食塩水中に5mg/10mL/kgとなるように調製し、マウス0日目に腹腔内投与した。さらに、4日後も同様にしてLPSを腹腔内投与した。各食品原料は、500mg/10ml/kgとして、0~7日目まで毎日一回経口投与した。ビスホスホネートは10mg/10ml/kgとして、0~7日目まで毎日一回経口投与した。
2回目のLPSの腹腔内投与から4日後にマウスの大腿骨を採取し、μCT(日立アロカ・メディカル・システム社製)を用いて海綿骨密度と骨梁密度を測定した。
結果を表3及び図3~4に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3及び図3~4に示されるように、月見草エキス及びジャワしょうがエキスを用いることにより、海綿骨密度及び骨梁密度の低下が減少した。
これらの結果から、月見草エキスまたはジャワしょうがエキスを用いることにより、骨密度の減少を改善できることが明らかとなった。
【0049】
[閉経後骨量低下モデル]
使用した材料は下記の通りである。
(動物)
Slc:ddYマウス♀7wを入荷し、1週間の順化後、8wで実験に供した(n=10)。
【0050】
(試薬)
・0.5%CMC
(使用した原料)
・ジャワしょうがエキス
0.5%CMC中に60mg/10mlとなるように調製して使用した。
【0051】
(手順)
イソフルラン麻酔下でマウスの腹側部を切開した後,輸卵管を含めて左右の卵巣を摘出(OVX)した。また,偽手術動物として,同一条件下で両側の卵巣があることを確認し,摘出は行わずに縫合のみ実施した。卵巣摘出または偽手術を行った8日後にマウスの群分けを行い、両群ともに12週間、食品原料を60mg/10ml/kgで毎日一回経口投与した。12週間の投与終了後、大腿骨を採取し、μCTで海綿骨密度と骨梁密度を測定した。
結果を表4及び図5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4及び図5に示されるように、ジャワしょうがエキスを用いることによって、海綿骨密度及び骨梁密度の低下が減少した。
この結果から、ジャワしょうがエキスを用いることにより、閉経後骨量低下モデルにおいても、骨密度の減少を改善できることが明らかとなった。
【0054】
以上、試験例1及び2の結果から、本発明の骨吸収抑制用組成物は、骨吸収抑制効果のみならず骨密度改善効果をも有することが分かった。
【0055】
(処方例)
以下、本発明の骨吸収抑制用組成物の処方例を示す。
【0056】
(処方例1)
[カプセル剤]
組成
c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスから選ばれる1種(乾固物) ・・・100mg
ミツロウ ・・・ 10mg
ぶどう種子オイル ・・・140mg
上記各成分を混合し、ゼラチンおよびグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセル7種を調製した。
【0057】
(処方例2)
[錠剤]
組成
c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスから選ばれる1種(乾固物) ・・・150mg
セルロース ・・・ 80mg
デンプン ・・・ 20mg
ショ糖脂肪酸エステル ・・・ 2mg
上記各成分を混合、打錠し、錠剤7種を調製した。
【0058】
(処方例3)
[飲料]
組成(配合;質量%)
c-バングレン、t-バングレン、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、クロセチン、月見草エキス、インディアンデーツエキス及び黒生姜エキスから選ばれる1種(乾固物)・・・ 1.00
果糖ブトウ糖液糖 ・・・ 5.00
クエン酸 ・・・10.4
L-アスコルビン酸 ・・・ 0.20
香料 ・・・ 0.02
色素 ・・・ 0.10
水 ・・・82.28
上記各成分を用いて、常法により飲料7種を調製した。

図1
図2
図3
図4
図5