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特開2024-162974移動体、サーバ、および移動体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162974
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】移動体、サーバ、および移動体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 60/00 20200101AFI20241114BHJP
   B60W 40/105 20120101ALI20241114BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20241114BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20241114BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20241114BHJP
   B60W 50/06 20060101ALI20241114BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20241114BHJP
   B62D 65/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W60/00
B60W40/105
B60W40/107
B60W40/114
B60W30/09
B60W50/06
B62D65/18 Z
B62D65/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188214
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2023078687
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】安山 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 典継
(72)【発明者】
【氏名】狩野 岳史
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
【テーマコード(参考)】
3D114
3D241
【Fターム(参考)】
3D114AA03
3D114BA27
3D114CA05
3D114HA02
3D241BA00
3D241BA33
3D241BB00
3D241BC01
3D241BC04
3D241CD05
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE06
3D241DA12Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DA61Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
(57)【要約】
【課題】遠隔制御又は自律制御による移動体の運転制御を、工程ごとに好適に実行することができる技術を提供する。
【解決手段】工場で製造される移動体は、遠隔制御の制御指令を受信するための車両通信部と、工場における移動体の製造過程において、受信された遠隔制御の制御指令にしたがって移動体の運転制御を実行する運転制御部と、製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部と、処理の完了が検出された場合に、移動体の制御の内容を変更する制御内容変更部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場で製造される移動体であって、
遠隔制御の制御指令を受信するための通信部と、
前記工場における前記移動体の製造過程において、受信された前記制御指令にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部と、
前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部と、
前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容を変更する制御内容変更部と、を備える、
移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体であって、
前記処理完了検出部は、前記少なくとも一の工程による前記移動体に要素を追加する処理または前記移動体に備えられる要素を変更する処理の完了を検出し、
前記制御内容変更部は、前記処理の完了が検出された場合に、前記処理の完了によって前記移動体に追加または変更される要素を用いた制御になるように、前記移動体の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項3】
請求項2に記載の移動体であって、
前記工程は、レーダ装置およびカメラのうち少なくともいずれかを含む物体検出装置であって、前記移動体の周囲の物体を検出可能な物体検出装置を前記要素として前記移動体に追加する処理を行う物体検出装置装着工程を含み、
前記制御内容変更部は、前記物体検出装置装着工程の完了が検出された場合に、追加された前記物体検出装置を用いた衝突防止制御を実行するように、前記移動体の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項4】
請求項3に記載の移動体であって、
前記制御内容変更部は、さらに、前記遠隔制御による運転制御に代えて、前記衝突防止制御を利用した前記移動体の運転制御によって前記移動体が走行するように、前記移動体の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項5】
請求項2に記載の移動体であって、
前記工程は、車速センサ、車輪速センサ、加速度センサ、およびヨーレートセンサのうち少なくともいずれか一つを含む速度検出装置であって、前記移動体としての車両の速度に関する速度情報を取得可能な速度検出装置を前記要素として前記移動体に追加する処理を行う速度検出装置装着工程を含み、
前記制御内容変更部は、前記速度検出装置装着工程の完了が検出された場合に、追加された前記速度検出装置によって検出された前記速度情報を用いた運転制御を実行するように、前記移動体の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項6】
請求項2に記載の移動体であって、
前記工程は、前記移動体としての車両のホイールアライメントを前記要素として変更する処理を行うホイールアライメント調整工程、および、前記車両のサスペンションを前記要素として変更する処理を行うサスペンション調整工程の少なくともいずれかを含む調整工程を含み、
前記制御内容変更部は、前記調整工程の完了が検出された場合に、前記車両の走行速度の上限値を増加させるように、前記車両の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項7】
請求項1に記載の移動体であって、
さらに、前記移動体の手動運転を行うための操作部と、
前記操作部の操作量を用いて予め設定される閾値であって、前記遠隔制御による運転制御と前記操作部による運転制御とが同時に実行された場合に、前記遠隔制御による運転制御よりも前記操作部による運転制御を優先するか否かを判定するための閾値を格納する記憶装置と、を備え、
前記処理完了検出部は、前記少なくとも一の工程のうち、作業員が前記操作部に接触する可能性がある予め定められた工程よりも前の工程による処理の完了を検出し、
前記制御内容変更部は、前記前の工程による処理の完了が検出された場合に、前記閾値を前記操作部による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、前記移動体の制御の内容を変更する、
移動体。
【請求項8】
サーバであって、
工場で製造される移動体であって、遠隔制御の制御指令を受信するための通信部、および前記移動体を製造する工場内の製造過程において、受信された前記制御指令にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部を備える移動体を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の進行状況を含む製造情報を取得する製造情報取得部と、
前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する制御内容変更指示部と、を備える、
サーバ。
【請求項9】
請求項8に記載のサーバであって、
前記製造情報取得部は、前記少なくとも一の工程による前記移動体に要素を追加する処理または前記移動体に備えられる要素を変更する処理の完了を取得し、
前記制御内容変更指示部は、前記処理の完了が取得された場合に、前記処理の完了によって前記移動体に追加または変更される要素を用いた制御になるように、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する、
サーバ。
【請求項10】
請求項8に記載のサーバであって、
前記製造情報取得部は、前記少なくとも一の工程のうち、前記移動体の手動運転を行うための操作部に作業員が接触する可能性がある工程よりも前の工程による処理の完了を取得し、
前記制御内容変更指示部は、
前記前の工程による処理の完了が取得された場合に、
前記操作部による運転制御と前記遠隔制御による運転制御とが同時に実行された場合に、前記遠隔制御による運転制御よりも前記操作部による運転制御を優先するか否かを判定するための閾値を、前記操作部による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する、
サーバ。
【請求項11】
さらに、前記閾値が緩和されたあとに前記操作部による運転制御が優先して実行された場合に、前記移動体の製造の停止と報知との少なくともいずれかの異常措置を実行させる異常措置部を備える、請求項10に記載のサーバ。
【請求項12】
移動体の製造方法であって、
移動体を製造する工場内の製造過程において、前記移動体を無人運転によって走行させ、
前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の進行状況を含む製造情報を取得し、
前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する、
移動体の製造方法。
【請求項13】
工場で製造される移動体であって、
前記工場における前記移動体の製造過程において、無人運転によって前記移動体を移動させるための制御信号を生成し、前記制御信号にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部と、
前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部と、
前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容を変更する制御内容変更部と、を備える、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、サーバ、および移動体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両を製造するための製造システムにおいて、自律的に又は遠隔制御によって、車両を製造システムの組立ラインの終端から製造システムの駐車場まで走行させる車両走行方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔制御又は自律制御による車両の運転制御は、遠隔制御又は自律制御によって車両が走行可能であることを前提に車両が完成する前でも実行することができる。しかしながら、車両が完成に近づくと、部品の組み付けや制御パラメータの変更など、車両に対する様々な処理が工程ごとに行われ得る。そのため、工程ごとに好適に遠隔制御又は自律制御による車両の運転制御を実行することができる技術が望まれている。また、こうした課題は、車両に限らず、任意の移動体についても共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、工場で製造される移動体が提供される。この移動体は、遠隔制御の制御指令を受信するための通信部と、前記工場における前記移動体の製造過程において、受信された前記制御指令にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部と、前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部と、前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容を変更する制御内容変更部と、を備える。
この形態の移動体によれば、工程による処理の完了ごとに移動体の制御の内容を変更することができ、工程ごとに好適な遠隔制御による移動体の運転制御を実行することができる。
(2)上記形態の移動体において、前記処理完了検出部は、前記少なくとも一の工程による前記移動体に要素を追加する処理または前記移動体に備えられる要素を変更する処理の完了を検出されてよい。前記制御内容変更部は、前記処理の完了が検出された場合に、前記処理の完了によって前記移動体に追加または変更される要素を用いた制御になるように、前記移動体の制御の内容を変更されてよい。
この形態の移動体によれば、移動体に追加または変更される要素を、移動体の製造過程の進行状況に応じて利用することができ、移動体の遠隔制御による移動における性能を製造過程の進行状況に応じて適正に発揮させることができる。
(3)上記形態の移動体において、前記工程は、レーダ装置およびカメラのうち少なくともいずれかを含む物体検出装置であって、前記移動体の周囲の物体を検出可能な物体検出装置を前記要素として前記移動体に追加する処理を行う物体検出装置装着工程を含んでよい。前記制御内容変更部は、前記物体検出装置装着工程の完了が検出された場合に、追加された前記物体検出装置を用いた衝突防止制御を実行するように、前記移動体の制御の内容を変更してよい。
この形態の移動体によれば、物体検出装置の装着工程の完了とともに、移動体の移動時の衝突防止を実行することができる。
(4)上記形態の移動体において、前記制御内容変更部は、さらに、前記遠隔制御による運転制御に代えて、前記衝突防止制御を利用した前記移動体の運転制御によって前記移動体が走行するように、前記移動体の制御の内容を変更してよい。
この形態の移動体によれば、物体検出装置の装着工程の完了とともに、遠隔制御による運転制御から、移動体の運転制御による移動へと切り替えることができる。
(5)上記形態の移動体において、前記工程は、車速センサ、車輪速センサ、加速度センサ、およびヨーレートセンサのうち少なくともいずれか一つを含む速度検出装置であって、前記移動体としての車両の速度に関する速度情報を取得可能な速度検出装置を前記要素として前記移動体に追加する処理を行う速度検出装置装着工程を含んでよい。前記制御内容変更部は、前記速度検出装置装着工程の完了が検出された場合に、追加された前記速度検出装置によって検出された前記速度情報を用いた運転制御を実行するように、前記移動体の制御の内容を変更してよい。
この形態の移動体によれば、速度検出装置の装着工程の完了とともに、検出された速度情報を用いた自己位置推定や車速のフィードバック制御を実行することができる。
(6)上記形態の移動体において、前記工程は、前記移動体としての車両のホイールアライメントを前記要素として変更する処理を行うホイールアライメント調整工程、および、前記車両のサスペンションを前記要素として変更する処理を行うサスペンション調整工程の少なくともいずれかを含む調整工程を含んでよい。前記制御内容変更部は、前記調整工程の完了が検出された場合に、前記移動体の走行速度の上限値を増加させるように、前記移動体の制御の内容を変更してよい。
この形態の移動体によれば、調整工程の完了とともに、自動走行における移動体の移動速度を増加させることができ、移動体の生産性を向上させることができる。
(7)上記形態の移動体において、さらに、前記移動体の手動運転を行うための操作部と、前記操作部の操作量を用いて予め設定される閾値であって、前記遠隔制御による運転制御と前記操作部による運転制御とが同時に実行された場合に、前記遠隔制御による運転制御よりも前記操作部による運転制御を優先するか否かを判定するための閾値を格納する記憶装置と、を備えてよい。前記処理完了検出部は、前記少なくとも一の工程のうち、作業員が前記操作部に接触する可能性がある工程よりも前の工程による処理の完了を検出してよい。前記制御内容変更部は、前記前の工程による処理の完了が検出された場合に、前記閾値を前記操作部による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、前記移動体の制御の内容を変更してよい。
この形態の移動体によれば、遠隔制御による移動体の移動中に作業員等が誤って操作部に接触することによって移動体の移動が意図せず停止される不具合を抑制または防止することができる。
(8)本開示の他の形態によれば、サーバが提供される。このサーバは、工場で製造される移動体であって、遠隔制御の制御指令を受信するための通信部、および前記移動体を製造する工場内の製造過程において、受信された前記制御指令にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部を備える移動体を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による前記移動体に要素を追加する処理または前記移動体に備えられる要素を変更する処理の進行状況を含む製造情報を取得する製造情報取得部と、前記処理の完了が検出された場合に、前記処理の完了によって前記移動体に追加または変更される要素を用いた制御になるように、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する制御内容変更指示部と、を備える。
この形態のサーバによれば、サーバによって管理される移動体の製造過程の進行状況に応じて、移動体の制御の内容を適宜に変更することができ、工程ごとに好適な遠隔制御による移動体の運転制御を実行することができる。
(9)上記形態のサーバにおいて、前記製造情報取得部は、前記少なくとも一の工程による前記移動体に要素を追加する処理または前記移動体に備えられる要素を変更する処理の完了を取得してよい。前記制御内容変更指示部は、前記処理の完了が取得された場合に、前記処理の完了によって前記移動体に追加または変更される要素を用いた制御になるように、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示してよい。
この形態のサーバによれば、サーバによって管理される移動体の製造過程の進行状況に応じて、移動体に追加または変更される要素を適宜に利用することができ、移動体それぞれの遠隔制御による移動における性能を適正に発揮させることができる。
(10)上記形態のサーバにおいて、前記製造情報取得部は、前記少なくとも一の工程のうち、作業員が前記操作部に接触する可能性がある工程よりも前の工程による処理の完了を取得してよい。前記制御内容変更指示部は、前記前の工程による処理の完了が取得された場合に、前記移動体の手動運転を行うための操作部による運転制御と前記遠隔制御による運転制御とが同時に実行された場合に前記遠隔制御による運転制御よりも前記操作部による運転制御を優先するか否かを判定するための閾値を、前記操作部による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示してよい。
この形態のサーバによれば、遠隔制御による移動体の移動中に作業員等が誤って操作部に接触することによって移動体の移動が意図せず停止される不具合を抑制または防止することができる。
(11)上記形態のサーバは、さらに、前記閾値が緩和されたあとに前記操作部による運転制御が優先して実行された場合に、前記移動体の製造の停止と報知との少なくともいずれかの異常措置を実行させる異常措置部を備えてよい。
この形態のサーバによれば、異常措置を実行することにより、閾値の緩和に伴うリスクを抑制または防止することができる。
(12)本開示の第2の形態によれば、移動体の製造方法が提供される。この製造方法は、移動体を製造する工場内の製造過程において、前記移動体を無人運転によって走行させ、前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の進行状況を含む製造情報を取得し、前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容の変更を前記移動体に指示する。
この形態の移動体の製造方法によれば、工程による処理の完了ごとに移動体の制御の内容を変更することができ、工程ごとに好適に遠隔制御又は自律制御による移動体の運転制御を実行することができる。
(13)本開示の第3の形態によれば、工場で製造される移動体が提供される。この移動体は、前記工場における前記移動体の製造過程において、無人運転によって前記移動体を移動させるための制御信号を生成し、前記制御信号にしたがって前記移動体の運転制御を実行する運転制御部と、前記製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部と、前記処理の完了が検出された場合に、前記移動体の制御の内容を変更する制御内容変更部と、を備える。
この形態の移動体によれば、工程による処理の完了ごとに移動体の制御の内容を変更することができ、工程ごとに好適に遠隔制御又は自律制御による移動体の運転制御を実行することができる。
本開示は、移動体や、サーバや、移動体の製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、システム、移動体の搬送方法、移動体における制御の変更または追加方法、移動体の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る車両とシステムの概略構成を示す説明図。
図2】サーバの内部機能構成を示すブロック図。
図3】ECUの内部機能構成を示すブロック図。
図4A】第1実施形態における車両の走行制御の処理手順を示すフローチャート。
図4B】遠隔制御部の遠隔制御による車両の自動運転制御を示す説明図。
図5】制御内容変更テーブルを概念的に示す説明図。
図6】第1実施形態に係る車両の製造方法を示すフローチャート。
図7】第1実施形態に係る車両の製造方法を模式的に示す説明図。
図8】第2実施形態に係るサーバの内部機能構成を示すブロック図。
図9】第2実施形態に係る車両が備えるECUの内部機能構成を示すブロック図。
図10】第3実施形態に係る車両のECUの内部機能構成を示すブロック図。
図11】第3実施形態に係るサーバの内部機能構成を示すブロック図。
図12】第3実施形態に係る車両の製造方法を示すフローチャート。
図13】第4実施形態に係る車両のECUの内部機能構成を示すブロック図。
図14】第4実施形態に係るサーバの内部機能構成を示すブロック図。
図15】第5実施形態に係るシステムの概略構成を示す説明図。
図16】第5実施形態に係る車両のECUの内部機能構成を示す説明図。
図17】第5実施形態に係る車両の走行制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態に係る車両100およびシステム500の概略構成を示す説明図である。本実施形態におけるシステム500は、遠隔自動運転システムとして構成されている。システム500は、移動体としての車両100を製造する工場FC内の製造過程において、遠隔制御によって車両100を自動走行させることができる。本明細書では、製品として完成した状態と、製造途中の半製品・仕掛品の状態とを総じて「車両」と呼ぶ。
【0009】
本開示において、「移動体」は、移動し得る物体を意味し、例えば、車両や電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)である。車両は、車輪によって走行する車両であっても無限軌道によって走行する車両であってもよく、例えば、乗用車、トラック、バス、二輪車、四輪車、戦車、工事用車両などである。車両は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、ならびに燃料電池自動車を含む。移動体が車両以外である場合には、本開示における「車両」「車」との表現を、適宜に「移動体」に置き換えることができ、「走行」との表現を、適宜に「移動」に置き換えることができる。
【0010】
車両100は、無人運転により走行可能に構成されている。「無人運転」とは、搭乗者の走行操作によらない運転を意味する。走行操作とは、車両100の「走る」、「曲がる」、「止まる」の少なくともいずれかに関する操作を意味する。無人運転は、車両100の外部に位置する装置を用いた自動または手動の遠隔制御によって、あるいは、車両100の自律制御によって実現される。無人運転によって走行している車両100には、走行操作を行わない搭乗者が搭乗していてもよい。走行操作を行わない搭乗者には、例えば、単に車両100の座席に着座している人や、組み付け、検査、スイッチ類の操作といった走行操作とは異なる作業を車両100に乗りながら行っている人が含まれる。なお、搭乗者の走行操作による運転は、「有人運転」と呼ばれることがある。
【0011】
本明細書において、「遠隔制御」は、車両100の外部から車両100の動作の全てが完全に決定される「完全遠隔制御」と、車両100の外部から車両100の動作の一部が決定される「部分遠隔制御」とを含む。また、「自律制御」は、車両100の外部の装置から一切の情報を受信することなく車両100が自身の動作を自律的に制御する「完全自律制御」と、車両100の外部の装置から受信した情報を用いて車両100が自身の動作を自律的に制御する「部分自律制御」とを含む。
【0012】
図1に示すように、工場FCには、前工程50と、後工程60と、車両100の走路RTとが備えられている。走路RTは、前工程50と後工程60とを繋ぐ工場FC内の車両100の搬送区間である。なお、工場FCおよび製造過程における各工程は、1つの建物である場合や、1箇所の敷地や1箇所の住所に存在する場合などには限定されない。工場FCおよび製造過程における各工程は、複数の建物、複数の敷地、複数の住所等に亘って存在してもよい。また、「車両100が工場FC内を走行する」とは、車両100が、1つの場所に存在する工場内の走路を走行する場合のみには限らず、複数の場所に存在する複数の工場および工程の間の搬送区間を走行する場合を含む。「車両100が工場FC内を走行する」には、例えば、車両100が複数の場所に存在する工場および工程の間を移動するために、私道に限らず公道を走行する場合が含まれる。
【0013】
前工程50および後工程60は、車両100の製造過程に属する種々の工程である。車両100の製造過程では、車両100に要素を追加する処理と、車両100に備えられる要素を変更する処理とが行われ得る。「処理」とは、車両100に特定の作業を施すことを意味する。処理は、作業員等による手動の作業と、設備等による自動の作業とを問わない。「車両100の要素」には、例えば、車両100に装着される部品・装置の種類・パラメータ・位置・状態などの車両100に装着される部品や装置に関する要素と、車両100の運転制御を含む車両100の各部を動作させるための種々の制御に係る制御パラメータ・制御プログラムなどの車両100の制御に関する要素とが含まれる。工程による処理が完了すると、車両100には、新たな要素が追加されるか、あるいは車両100が有していた要素が変更されることがある。
【0014】
前工程50には、例えば、検出装置類180など、車両100の部品を車両100に装着させる装着工程と、車両100に装着された部品等の調整を行う調整工程とが含まれる。後工程60は、例えば、車両100の検査工程である。前工程50から払い出された車両100は、後工程60の仕掛品となり、遠隔制御によって走行先である後工程60へと走路RTを走行する。車両100は、後工程60としての検査工程を終えると製品として完成され、出荷を待機するための工場FC内の待機場所へと走行する。その後、車両100は、車両100ごとに対応する出荷先へと出荷される。なお、前工程50および後工程60は、装着工程、調整工程、ならびに検査工程に限らず、前工程50および後工程60による処理後の車両100が無人運転によって走行可能であることを前提に種々の工程を採用することができる。
【0015】
前工程50および後工程60を含む工場FC内の各工程には、車両100の製造情報を管理するための工程管理装置が備えられている。「製造情報」には、例えば、工程による処理の進行状況、仕掛品の数、処理中の製品の数、工程ごとの製造時間、各工程による処理の開始時刻および完了時刻、各工程に存在する車両100の車両識別情報、1日の製造予定数、車両100を1台製造するための工程の目標製造時間などが含まれる。目標製造時間は、「タクトタイム」と呼ばれることがある。「車両識別情報」とは、車両100を個別に識別可能な種々の情報を意味する。車両識別情報には、例えば、車両識別情報(VIN:Vehicle Identification Number)などの車両100ごとに与えられるID情報、車種・色・形状などの車両100の仕様情報、仕掛かり中の工程の名称などの車両100の生産管理情報などが含まれる。車両識別情報は、例えば、車両100に付されたRF-ID(Radio Frequency-Identification:無線移動識別)タグ等から短距離無線通信などを介して取得することができる。各工程の工程管理装置は、各工程に設けられる図示しないカメラやセンサなどから、各工程の車両100の製造状況を取得し、取得した製造状況をサーバ300および車両100に送信する。各工程の製造状況は、工場FCの各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置に送信されてもよい。
【0016】
システム500は、車両検出器と、サーバ300とを備えている。車両検出器は、車両100の画像と、車両100の位置との少なくともいずれかを含む車両情報を検出する。検出された車両情報は、システム500による遠隔制御に利用される。「車両情報」には、さらに、車両100の走行方向あるいは車両100の向きが含まれてもよい。車両100の走行方向や車両100の向きは、例えば、車両100の形状あるいは車両100の部品等を検出することによって取得することができる。ただし、車両検出器によって車両100の位置のみを取得し、車両100の経時的な変化を用いることによって、車両100の走行方向や向きが推定されてもよい。
【0017】
本実施形態では、車両検出器には、カメラ80が用いられている。カメラ80は、サーバ300と無線通信あるいは有線通信により通信可能に接続されている。カメラ80は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像部と光学系とを有している。カメラ80は、走路RTと、走路RTを走行する車両100とを撮像できる位置に固定されており、車両情報としての車両100の画像を取得する。カメラ80によって取得される画像は、画像解析によって、走路RTに対する車両100の相対位置、および車両100の向きなど、遠隔制御に利用可能な種々の車両情報を取得することができる。工場FCに設置されたカメラ80の画像を用いることにより、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)などの車両100に搭載された検出器を用いることなく、遠隔制御による車両100の自動走行を実行することができる。なお、車両検出器は、車両100の位置を取得可能であれば、車両100の画像を取得しなくてもよい。この場合には、車両検出器には、例えば、LiDAR、赤外線センサ、レーザセンサ、超音波センサ、ミリ波レーダなど、車両100の画像に代えて、車両100の位置を検出可能な種々の検出器が用いられてもよい。
【0018】
図2は、サーバ300の内部機能構成を示すブロック図である。サーバ300は、中央演算処理装置としてのCPU310と、記憶装置320と、遠隔通信部390とを備えており、これらは、内部バスやインターフェース回路等を介して相互に接続されている。遠隔通信部390は、ネットワーク72を介して車両100などとの通信を行うための回路である。
【0019】
記憶装置320は、たとえば、RAM、ROM、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)等である。記憶装置320には、本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されている。記憶装置320に記憶されたコンピュータプログラムがCPU310によって実行されることにより、CPU310は、遠隔制御部312および製造情報取得部314などとして機能する。ただし、これらの機能の一部または全部はハードウェア回路によって構成されてもよい。
【0020】
製造情報取得部314は、各工程に設けられる工程管理装置あるいは各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置などから製造情報322を取得する。製造情報取得部314は、車両100のそれぞれから製造情報322を取得してもよい。取得された製造情報322は、記憶装置320に格納される。この結果、サーバ300は、製造過程における車両100に対する各工程による処理の進行状況を、車両100それぞれについて個別に取得することができる。
【0021】
遠隔制御部312は、遠隔制御によって、工場FC内の車両100の自動走行を実行する。より具体的には、遠隔制御部312は、遠隔通信部390を介して、遠隔制御を要求する制御信号を車両100に送信する。具体的には、本実施形態では、この制御信号は、後述する走行制御信号である。車両100が遠隔制御の要求を受け付けると、ECU200によって制御信号に従った運転制御が実現され、この結果、車両100が自動的に走行する。こうした無人運転による走行を利用した車両100の搬送により、車両100が走行する際の人為的な事故を抑制または防止することができる。
【0022】
なお、他の実施形態では、遠隔制御部312は、車両100を遠隔制御によって走行させる場合、車両100に対して走行制御信号を送信しなくてもよく、車両100に対して制御指令を送信すればよい。制御指令は、走行制御信号と、走行制御信号を生成するための生成情報との少なくとも一方を含む。生成情報としては、例えば、後述する車両位置情報や経路や目標位置を用いることができる。
【0023】
図1に示すように、車両100は、操作部170と、車両通信部190と、受電装置150と、バッテリ120と、PCU130と、モータ140と、検出装置類180と、ECU(Electronic Control Unit)200と、を備えている。操作部170は、例えば、アクセル、ハンドル(steering wheel)、ブレーキなどである。操作部170は、車両100における「走る」、「曲がる」、「止まる」の機能を発揮するための手動操作を受け付ける。手動操作は、上記の運転者による走行操作に相当する。
【0024】
車両通信部190は、例えばドングルなど、車両100に搭載される無線通信装置である。車両通信部190は、車両100の制御などに用いられ得るCAN(Controller Area Network)通信、および故障診断などに用いられ得るダイアグノシス通信を用いて通信する通信機能を備えている。CAN通信は、多方向に送信または受信を行うことができる通信規格である。ダイアグノシス通信は、要求と応答とを1対1で対応付けることができる通信規格である。車両通信部190は、例えば、工場FC内のアクセスポイント70を介して、ネットワーク72に接続されたサーバ300、ならびに車両100の生産情報を統括管理する図示しない生産管理装置など、車両100の外部の装置との無線通信を行う。以下では、車両通信部190を、単に通信部ともいう。
【0025】
受電装置150は、外部の給電装置などから供給される交流電力を整流器によって直流電力に変換し、負荷としてのバッテリ120に供給する。バッテリ120は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの充電可能な二次電池である。バッテリ120は、例えば、数百Vの高電圧バッテリであり、車両100の走行に利用される電力を蓄えている。外部の給電装置から受電装置150に供給される電力、ならびにモータ140によって発電された回生電力がバッテリ120に供給されると、バッテリ120が充電される。
【0026】
モータ140は、例えば、交流同期モータであり、電動機および発電機として機能する。モータ140が電動機として機能するとき、モータ140は、バッテリ120に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ140の出力は、減速機および車軸を介して車輪に伝達される。車両100の減速時には、モータ140は、車輪の回転を利用する発電機として機能し、回生電力を発電する。モータ140とバッテリ120との間には、PCU(Power Control Unit)130が電気的に接続されている。
【0027】
PCU130は、インバータ、昇圧コンバータ、ならびにDC/DCコンバータを有している。インバータは、バッテリ120から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力をモータ140に供給する。インバータは、モータ140から供給される回生電力を直流電力に変換してバッテリ120に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力がモータ140に供給されるときに、バッテリ120の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力を補機等に供給する場合に、バッテリ120の電圧を降圧する。
【0028】
検出装置類180は、車両100に備えられるセンサ類である。検出装置類180は、例えば、前工程50に含まれる各工程で車両100に装着される。検出装置類180には、たとえば、物体検出装置、速度検出装置などが含まれる。物体検出装置は、レーダ装置、車載カメラなどである。レーダ装置には、LiDAR、ミリ波レーダなどの車両100の周囲の物標の有無、当該物標までの距離や位置などを検出する装置が含まれる。車載カメラには、ステレオカメラ、単眼カメラなどの車両100の周囲の物標を撮像可能な種々のカメラが含まれる。速度検出装置は、車速センサ、車輪速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサなどである。なお、検出装置類180には、物体検出装置および速度検出装置のみには限らず、操舵角センサなどの種々の一般的なセンサが含まれてもよい。
【0029】
図3は、ECU200の内部機能構成を示すブロック図である。ECU200は、車両100に搭載され、車両100の各種の制御を実行する。ECU200は、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、光記録媒体、半導体メモリ等の記憶装置220と、中央演算処理装置としてのCPU210と、インターフェース回路280とを備えている。インターフェース回路280には、検出装置類180および車両通信部190等が接続されている。記憶装置220には、制御プログラム222および制御内容変更テーブル224が格納されている。
【0030】
制御プログラム222は、CPU210が運転制御部212として機能するためのコンピュータプログラムである。また、制御プログラム222には、制御パラメータが含まれる。制御内容変更テーブル224には、工程と、工程の完了後に追加または変更される制御プログラム222の内容との対応関係が示されている。
【0031】
記憶装置220には、本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されている。CPU210が記憶装置220に格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、運転制御部212、処理完了検出部214、ならびに制御内容変更部216などの各種の機能が実現される。また、ECU200は、PCU130を制御することによって、バッテリ120とモータ140との間の電力の授受を制御する。
【0032】
処理完了検出部214は、製造過程に含まれる工程による処理の完了を検出する。本実施形態では、処理完了検出部214は、各工程による自車に対する処理が完了したことを、各工程に設けられるセンサやカメラ等から取得する。処理完了検出部214は、各工程による自車に対する処理が完了したことを、各工程に設けられる工程管理装置、各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置、あるいはこれらの情報を取得したサーバ300から取得してもよい。
【0033】
制御内容変更部216は、処理完了検出部214によって各工程による処理の完了が検出された場合に、車両100の制御の内容を変更する。具体的には、制御内容変更部216は、検出された工程の処理によって車両100に追加または変更される要素を用いた制御になるように、車両100の制御の内容を変更する。本実施形態では、制御内容変更部216は、制御内容変更テーブル224を参照して、工程による処理の完了ごとに制御プログラム222を書き換える。この結果、制御プログラム222は、車両100に追加または変更される要素が用いられる制御の内容に変更される。「制御プログラム222の書き換え」には、制御パラメータの書き換えが含まれる。なお、車両100に追加または変更される要素がない工程が完了した場合には、制御内容変更部216は、車両100の制御の内容を変更しなくてもよい。
【0034】
運転制御部212は、車両100の運転制御を実行する。「運転制御」とは、例えば、加速度、速度、ならびに舵角の調整などである。遠隔制御による運転制御では、運転制御部212は、車両通信部190を介してサーバ300から受信した遠隔制御の要求に従って、車両100に搭載された各アクチュエータを制御する。
【0035】
図4Aは、第1実施形態における車両100の走行制御の処理手順を示すフローチャートである。ステップS1にて、サーバ300は、車両100の外部に位置するセンサである外部センサから出力される検出結果を用いて、車両100の車両位置情報を取得する。車両位置情報は、走行制御信号を生成する基礎となる位置情報である。本実施形態では、車両位置情報には、工場FCの基準座標系における車両100の位置および向きが含まれている。本実施形態では、工場FCの基準座標系は、グローバル座標系であり、工場FC内の任意の位置は、グローバル座標系におけるX,Y,Zの座標で表現される。本実施形態では、外部センサは、工場FCに設置されているカメラ80であり、外部センサからは、検出結果として撮像画像が出力される。すなわち、ステップS1にて、サーバ300は、外部センサであるカメラ80から取得した撮像画像を用いて、車両位置情報を取得する。
【0036】
詳細には、ステップS1では、サーバ300は、例えば、撮像画像から車両100の外形を検出し、撮像画像の座標系、すなわち、ローカル座標系における車両100の測位点の座標を算出し、算出された座標をグローバル座標系における座標に変換することによって、車両100の位置を取得する。撮像画像に含まれる車両100の外形は、例えば、人工知能を活用した検出モデルに撮像画像を入力することで検出できる。検出モデルは、例えば、システム500内やシステム500外で準備され、サーバ300のメモリに予め記憶される。検出モデルとしては、例えば、セマンティックセグメンテーションとインスタンスセグメンテーションとのいずれかを実現するように学習された学習済みの機械学習モデルが挙げられる。この機械学習モデルとしては、例えば、学習用データセットを用いた教師あり学習によって学習された畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN)を用いることができる。学習用データセットは、例えば、車両100を含む複数の訓練画像と、訓練画像における各領域が車両100を示す領域と車両100以外を示す領域とのいずれであるかを示すラベルとを有している。CNNの学習時には、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)により、検出モデルによる出力結果とラベルとの誤差を低減するように、CNNのパラメータが更新されることが好ましい。また、サーバ300は、例えば、オプティカルフロー法を利用して、撮像画像のフレーム間における車両100の特徴点の位置変化から算出された車両100の移動ベクトルの向きに基づいて推定することによって、車両100の向きを取得できる。
【0037】
ステップS2にて、サーバ300は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する。本実施形態では、目標位置は、グローバル座標系におけるX,Y,Zの座標で表される。サーバ300のメモリには、車両100が走行すべき経路である参照経路が予め記憶されている。経路は、出発地を示すノード、通過点を示すノード、目的地を示すノード、および、各ノードを結ぶリンクで表されている。サーバ300は、車両位置情報と参照経路とを用いて、次に車両100が向かうべき目標位置を決定する。サーバ300は、車両100の現在地よりも先の参照経路上に目標位置を決定する。
【0038】
ステップS3にて、サーバ300は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する。本実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度および操舵角をパラメータとして含んでいる。サーバ300は、車両100の位置の推移から車両100の走行速度を算出し、算出した走行速度と目標速度とを比較する。サーバ300は、全体として、走行速度が目標速度よりも低い場合には、車両100が加速するように加速度を決定し、走行速度が目標速度よりも高い場合には、車両100が減速するように加速度を決定する。また、サーバ300は、車両100が参照経路上に位置している場合には、車両100が参照経路上から逸脱しないように操舵角および加速度を決定し、車両100が参照経路上に位置していない場合、換言すれば、車両100が参照経路上から逸脱している場合には、車両100が参照経路上に復帰するように操舵角および加速度を決定する。他の実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度に代えて、あるいは、これに加えて、車両100の速度をパラメータとして含んでいてもよい。
【0039】
ステップS4にて、サーバ300は、生成した走行制御信号を車両100に対して送信する。サーバ300は、所定の周期で、車両100の車両位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、走行制御信号の送信などを繰り返す。
【0040】
ステップS5にて、車両100は、サーバ300から送信される走行制御信号を受信する。ステップS6にて、車両100は、受信した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御することにより、走行制御信号に表されている加速度および操舵角で車両100を走行させる。車両100は、所定の周期で、走行制御信号の受信、および、車両100のアクチュエータの制御を繰り返す。本実施形態におけるシステム500によれば、車両100を遠隔制御により走行させることができ、クレーンやコンベア等の搬送設備を用いずに車両100を移動させることができる。
【0041】
図4Bは、遠隔制御部312の遠隔制御による車両100の自動運転制御を示す説明図である。図4Bの例では、走路RTは、互いに連続する第一走路RT1と、第二走路RT2と、第三走路RT3と、第四走路RT4とを含んでいる。第一走路RT1と、第二走路RT2とは、直角のカーブを介して互いに接続されている。第三走路RT3と、第四走路RT4との間には、駐車場PAが接続されている。遠隔制御部312は、通常時には、車両100を走路RTに沿って後工程60への投入位置PGまで走行させる。
【0042】
車両検出器としてのカメラ80は、図4Bに示すように、走路RTおよび駐車場PAの車両100を上方から俯瞰する画像を取得する。カメラ80の数は、カメラ80の画角などを考慮して、走路RTおよび駐車場PAの全体を撮像することが可能な数で設定されている。図4Bの例では、カメラ80は、第一走路RT1の全体を含む範囲RG1を撮像可能なカメラ801と、第二走路RT2の全体を含む範囲RG2を撮像可能なカメラ802と、第三走路RT3および第四走路RT4の全体を含む範囲RG3を撮像可能なカメラ803と、駐車場PAの全体を含む範囲RG4を撮像可能なカメラ804とを含んでいる。なお、カメラ80は、車両100の上方からの画像に限らず、車両100の前方、後方、側方などからの画像を取得してもよい。また、これらの画像を取得するカメラが任意に組み合わせられてもよい。
【0043】
走路RTには、遠隔制御において車両100が走行すべき仮想の目標ルートが予め設定されている。本実施形態における目標ルートは、上記の参照経路に相当する。また、遠隔制御部312は、カメラ80によって取得される走路RTと車両100との画像を所定の時間間隔で解析しながら、ECU200に車両100の運転制御を実行させる。遠隔制御部312が目標ルートに対する車両100の相対位置を逐次に調節する遠隔制御を車両100に要求することによって、車両100は、目標ルートに沿って走行することができる。なお、遠隔制御には、車両100全体の画像が用いられてもよく、車両100に設けられるアライメントマークなど、車両100の一部の画像が用いられてもよい。
【0044】
図4Bに示す位置P1のように、各走路の接続位置では、接続される各走路に対応するカメラ80の画角が互いに重複するように構成されている。位置P1の例では、第一走路RT1に対応するカメラ801の画角と、第二走路RT2に対応するカメラ802の画角とが互いに重複する。前工程50から払い出された車両100は、カメラ801の撮像画像を利用した遠隔制御によって位置P1まで走行する。位置P1に到達すると、カメラ801に代えてカメラ802が取得する撮像画像を用いた遠隔制御に切り替えられ、車両100は、第二走路RT2を走行する。同様に、第三走路RT3および第四走路RT4の走行にはカメラ803による撮像画像が用いられ、駐車場PAの走行にはカメラ804による撮像画像が用いられる。このように、遠隔制御部312は、解析する撮像画像を走路RTの範囲ごとに適宜に切り替えながら車両100の遠隔制御を行う。遠隔制御部312は、遠隔制御により、車両100を走路RTから駐車場PAへと走行させて、走路RTから待避させることができ、さらに、駐車場PAの駐車位置P2に停車させることができる。
【0045】
図5は、制御内容変更テーブル224を概念的に示す説明図である。図5に示す「大工程」「中工程」「小工程」は、便宜のために設定した分類である。図5の例では、大工程には、車両100に検出装置類180などの部品を装着する装着工程と、車両100に装着された部品等の調整を行う調整工程とが含まれる。
【0046】
図5に示すように、制御内容変更テーブル224には、工程と、工程の完了後に追加または変更される制御プログラム222の内容との対応関係が示されている。制御プログラム222の追加または変更される内容は、各工程による処理が完了することによって車両100に追加または変更される要素が用いられるように、予め設定されている。
【0047】
図5の例では、装着工程は、物体検出装置を車両100に装着する物体検出装置装着工程と、速度検出装置を車両100に装着する速度検出装置装着工程と、装着工程の最終工程とを備えている。物体検出装置装着工程は、要素としての物体検出装置を装着する工程であり、例えば、レーダ装置装着工程と、車載カメラ装着工程とを含んでいる。レーダ装置装着工程は、例えば、LiDAR装着工程と、ミリ波レーダ装着工程とを含んでいる。
【0048】
レーダ装置および車載カメラが車両100に装着された場合には、装着されたレーダ装置および車載カメラを使用した衝突防止制御を実行するように、制御プログラム222が書き換えられる。また、遠隔制御を利用せず、衝突防止制御を利用した自動走行が実施されるように、制御プログラム222が書き換えられる。すなわち、車両100は、サーバ300の遠隔制御部312による遠隔制御を利用することなく、運転制御部212の運転制御による自動走行へと切り替えられる。ただし、物体検出装置装着工程の完了後であっても、サーバ300の遠隔制御による自動走行が実行されてもよい。この場合には、例えば、サーバ300の遠隔制御部312による自走搬送中の衝突防止等を目的に、車両100に搭載された衝突検出装置を補助的に利用することができる。なお、車載カメラ装着工程が完了した後には、車載カメラの撮像画像を用いた車速データを取得する制御も実行される。
【0049】
速度検出装置装着工程は、要素としての速度検出装置を車両100に装着する工程である。速度検出装置は、車両100の速度に関する速度情報を取得可能なセンサである。「速度情報」には、車速のみには限らず、車輪速、車両100の加速度、角速度、角加速度など、車両100の速度に関する種々の情報が含まれる。図5の例では、速度検出装置装着工程は、車輪速センサ装着工程と、加速度センサ装着工程とを含んでいる。ただし、速度検出装置は、車輪速センサおよび加速度センサのみには限定されず、車輪速センサと、加速度センサと、車速センサと、ヨーレートセンサとのうち少なくともいずれか一つであってよい。
【0050】
速度検出装置装着工程が完了すると、車輪速センサおよび加速度センサの装着によって、車両100は、速度情報としての車輪速データおよび加速度データを検出できるようになる。取得された車輪速データおよび加速度データを用いることによって速度情報としての車速データを取得することができ、サーバ300あるいはECU200は、当該車速データを用いた自動走行を実行することができる。また、取得された車輪速データおよび加速度データを用いることによって、車両100の自己位置推定を実行することができる。したがって、自己位置推定を利用した車両100の自動走行を実行することができる。この場合において、自動走行は、遠隔制御による車両100の自動走行と、遠隔制御を利用しない運転制御部212の運転制御による自動走行とのいずれであってもよい。
【0051】
装着工程の最終工程が完了すると、すなわち、物体検出装置および速度検出装置を含むすべての検出装置の装着が完了すると、すべての検出装置を利用することにより、車両100の自動走行時の安全性能が向上する。したがって、制御プログラム222に追加または変更される制御の内容の例として、自動走行時に許容される車速の制限値の上限値の増加、ならびに操舵角の許容範囲を拡大することができる。
【0052】
図5の左下に示すように、調整工程は、例えば、ホイールアライメント調整工程と、駆動ガタ調整工程と、サスペンション調整工程と、検出装置の装着位置を調整する工程とを含んでいる。ホイールアライメント調整工程では、車体に対するホイールの取り付け位置を要素として調整する処理が実行される。ホイールアライメント調整工程が完了すると、車両100を安定して直進させることができる。したがって、制御プログラム222に追加または変更される制御の内容の例として、自動走行時に許容される車速の制限値の上限値を増加することができる。
【0053】
駆動ガタ調整工程とは、要素としてのモータから車輪までの伝動系などのガタを詰める工程である。サスペンション調整工程は、要素としてのサスペンションを調整する工程である。サスペンションブッシュを要素として装着する工程ということもできる。駆動ガタ調整工程およびサスペンション調整工程が完了すると、車両100の走行を安定させることができる。検出装置の装着位置を調整する工程では、装着工程で装着されたセンサにカバーを取り付ける工程、センサを最終位置に固定する工程などが含まれる。検出装置の装着位置を調整する工程が完了すると、センサの検出精度が向上することにより、車両100の走行の安定性や安全性能が向上する。したがって、サスペンション調整工程、駆動ガタ調整工程、ならびに検出装置の装着位置を調整する工程が完了すると、制御プログラム222に追加または変更される制御の内容の例として、自動走行時に許容される車速の制限値の上限値の増加、ならびに操舵角の許容範囲を拡大することができる。
【0054】
図6は、第1実施形態に係る車両100の製造方法を示すフローチャートである。本フローは、例えば、車両100が所定の工程に到着したことによって開始する。
【0055】
ステップS10では、工程による車両100に対する処理が実施される。ステップS18では、工程による車両100に対する処理が完了する。当該処理の完了は、処理完了検出部214あるいは製造情報取得部314によって検出される。ステップS20では、制御内容変更部216は、検出された工程による制御の内容に追加または変更があるか否かを確認する。より具体的には、制御内容変更部216は、制御内容変更テーブル224を参照して、検出された工程に対応する制御の変更または追加の内容を確認する。車両100の制御に変更または追加がなければ(S20:NO)、処理をステップS40へと移行する。車両100の制御に変更または追加がある場合には(S20:YES)、制御内容変更部216は、処理をステップS30へと移行する。
【0056】
ステップS30では、制御内容変更部216は、制御内容変更テーブル224の内容にしたがって、制御プログラム222を書き換える。ステップS40では、処理完了検出部214は、車両100の製造過程におけるすべての工程が終了したか否かを確認する。全工程が終了していれば(S40:YES)、本フローを終了する。全工程が終了していなければ(S40:NO)、処理完了検出部214は、処理をステップS50へと移行する。ステップS50では、遠隔制御部312は、車両100の走行を開始し、車両100を次の工程に向けて走行させる。この場合において、車両100の運転制御は、書き換えられた制御プログラム222に基づいて実行される。ステップS60では、車両100が次の工程に到着する。車両100が次の工程に到着すると、処理をステップS10へと戻す。
【0057】
図7は、第1実施形態に係る車両100の製造方法を模式的に示す説明図である。図7には、前工程50に含まれる各工程と、各工程間の搬送区間C1,C2,C3を自動走行する車両100p,100q,100rとが模式的に示されている。図7に示す各工程は、例えば、図5で示した物体検出装置装着工程のうち、レーダ装置装着工程50pおよび車載カメラ装着工程50qと、速度検出装置装着工程のうち車輪速センサ装着工程50rである。
【0058】
レーダ装置装着工程50pによる処理が完了すると、図5で示したように、制御内容変更テーブル224を参照した制御内容変更部216は、レーダ装置を使用した車両100の自動走行を実行するように制御プログラム222を書き換える。この結果、車両100pは、サーバ300の遠隔制御部312による遠隔制御に代えて、車両100pの運転制御部212の運転制御によって搬送区間C1を自動走行する。
【0059】
さらに、車載カメラ装着工程50qによる処理が完了すると、制御内容変更テーブル224を参照した制御内容変更部216は、さらに、車載カメラを使用した自動走行を実行するように制御プログラム222を書き換える。この結果、車両100qは、レーダ装置とともに車載カメラを使用した衝突防止制御を実行しながら、運転制御部212の運転制御によって搬送区間C2を自動走行する。
【0060】
さらに、車輪速センサ装着工程50rによる処理が完了すると、制御内容変更部216は、取得される車輪速データを用いた車速データの取得と、車輪速データを用いた自己位置推定を利用した自動走行を実行するように制御プログラム222を書き換える。この結果、車両100rは、車輪速データを用いた車速データの取得と、車輪速データを用いた自己位置推定とを実行しながら、運転制御部212の運転制御によって搬送区間C3を自動走行する。
【0061】
以上、説明したように、本実施形態の車両100は、製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了を検出する処理完了検出部214と、処理の完了が検出された場合に車両100の制御の内容を変更する制御内容変更部216と、を備える。工程による処理の完了ごとに車両100の制御の内容を変更することができ、工程ごとに好適な遠隔制御による車両100の運転制御を実行することができる。
【0062】
本実施形態の車両100によれば、処理完了検出部214は、製造過程に含まれる工程による車両100に要素を追加する処理または車両100に備えられる要素を変更する処理の完了を検出する。制御内容変更部216は、当該工程による処理の完了が検出された場合に、車両100に追加または変更される要素を用いた制御になるように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、車両100の製造過程の進行状況に応じて、車両100に追加または変更される要素を適宜に利用することができ、車両100の自動走行における性能を適正に発揮させることができる。例えば、車両100の走行速度の増加や操舵角の許容範囲の拡大など、車両100の走行時の性能を適正に発揮させることにより、車両100の生産効率を向上させることができる。
【0063】
本実施形態の車両100によれば、車両100の製造過程は、レーダ装置および車載カメラの少なくともいずれかを含む物体検出装置であって、車両100の周囲の物体を検出可能な物体検出装置を装着する処理を行う物体検出装置の装着工程を含んでいる。制御内容変更部216は、物体検出装置の装着工程の完了が検出された場合に、装着された物体検出装置を用いた衝突防止制御を実行するように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、物体検出装置の装着工程の完了とともに、車両100の自動走行時の衝突防止を実行することができる。
【0064】
本実施形態の車両100によれば、制御内容変更部216は、さらに、遠隔制御による運転制御に代えて、衝突防止制御を利用した車両100の運転制御によって車両100が走行するように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、物体検出装置の装着工程の完了とともに、サーバ300による遠隔制御から、車両100の運転制御による自動走行へと車両100を制御する主体を切り替えることができる。
【0065】
本実施形態の車両100によれば、車両100の製造過程は、車速センサ、車輪速センサ、加速度センサ、およびヨーレートセンサのうち少なくともいずれか一つを含む速度検出装置であって、車両100の速度に関する速度情報を取得可能な速度検出装置を装着する処理を行う速度検出装置の装着工程を含んでいる。制御内容変更部216は、速度検出装置の装着工程の完了が検出された場合に、装着された速度検出装置によって検出された速度情報を用いた運転制御を実行するように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、速度検出装置の装着工程の完了とともに、検出された速度情報を用いた自己位置推定や車速のフィードバック制御を実行することができる。
【0066】
本実施形態の車両100によれば、車両100の製造過程は、ホイールアライメントを調整する処理を行うホイールアライメント調整工程およびサスペンションを調整する処理を行うサスペンション調整工程の少なくともいずれかを含む調整工程を含んでいる。制御内容変更部216は、調整工程の完了が検出された場合に、車両100の走行速度の上限値を増加させるように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、調整工程の完了とともに、自動走行における車両100の走行速度を増加させることができ、車両100の生産性を向上させることができる。
【0067】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態に係るサーバ300bの内部機能構成を示すブロック図である。図9は、第2実施形態に係る車両100が備えるECU200bの内部機能構成を示すブロック図である。図8および図9に示すように、本実施形態では、ECU200bの記憶装置220には制御内容変更テーブル224が格納されず、制御内容変更テーブル324がサーバ300bの記憶装置320に格納されている点で第1実施形態とは相違する。制御内容変更テーブル324の構成は、第1実施形態で示した制御内容変更テーブル224と同様である。
【0068】
本実施形態では、ECU200bのCPU210は、処理完了検出部214として機能せず、サーバ300bのCPU310が制御内容変更指示部316として機能する点で第1実施形態とは相違する。制御内容変更指示部316は、製造情報取得部314によって各工程による処理の完了が検出された場合に、その処理の完了によって車両100に追加または変更される要素が用いられるように、車両100の制御内容変更部216に対して、車両100の制御の内容を追加また変更させる指示を行う。本実施形態では、制御内容変更指示部316は、制御内容変更テーブル324を参照して、完了された工程に対応する制御の内容に追加または変更される制御プログラム222に書き換えるように、制御内容変更部216に指示を出す。この結果、制御プログラム222は、完了された処理によって車両100に追加または変更される要素が用いられる制御の内容に変更される。
【0069】
以上のように、本実施形態のサーバ300bは、製造過程に含まれる工程による車両100に要素を追加する処理または車両100に備えられる要素を変更する処理の進行状況を含む製造情報322を取得する製造情報取得部314と、処理の完了が検出された場合に、処理の完了によって車両100に追加または変更される要素が用いられるように、車両100の制御の内容の変更を車両100に指示する制御内容変更指示部316と、を備えている。したがって、サーバ300bによって管理される車両100それぞれの製造過程の進行状況に応じて、車両100に追加または変更される要素を適宜に利用することができ、車両100それぞれの自動走行における性能を適正に発揮させることができる。
【0070】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態に係る車両100が備えるECU200cの内部機能構成を示すブロック図である。図10に示すように、本実施形態において、車両100には、CPU210cおよび記憶装置220cを含むECU200cが備えられている。CPU210cは、第1実施形態で示したCPU210とは、さらに、手動操作検出部217および異常検出部218を備える点において相違し、それ以外の構成は同様である。記憶装置220cは、第1実施形態で示した記憶装置220とは、さらに、閾値226を格納する点において相違し、それ以外の構成は同様である。
【0071】
図11は、第3実施形態に係るサーバ300cの内部機能構成を示すブロック図である。図11に示すように、サーバ300cは、第1実施形態でのサーバ300とは、CPU310に代えて、異常措置部318をさらに含むCPU310cを備えている点においてし、それ以外の構成は同様である。
【0072】
手動操作検出部217は、手動による操作部170の操作量を検出するためのセンサ類である。「操作部170の操作量」とは、例えば、アクセル開度、操舵角、フットブレーキの踏み込み量などである。操作部170の操作量には、車両100の速度、加速度、減速度、実舵角、制動力など、操作部170の手動操作に基づく運転制御上の出力値が用いられてもよい。
【0073】
異常検出部218は、予定されていない操作部170の操作を異常として検出する。より具体的には、異常検出部218は、手動による操作部170の操作量が、後述するように制御内容変更部216によって緩和された閾値226を超えた場合に、予定されていない操作部170の操作があったことを検出する。異常検出部218による検出結果は、サーバ300cに出力される。
【0074】
閾値226は、いわゆるオーバーライド(override)を実行するか否かを判定するために用いられる。本明細書において、「オーバーライド」とは、遠隔制御による車両100の運転制御と、操作部170の手動による運転制御とが同時に実行された場合に、遠隔制御による車両100の運転制御よりも操作部170による車両100の運転制御を優先して実行させるための処理を意味する。
【0075】
閾値226は、操作部170の操作量を用いて予め設定されている。本実施形態では、閾値226は、遠隔制御において予定されている操作部170の操作量を基準値とした場合に、当該基準値に対して所定の操作量だけ小さい下限値と、基準値に対して所定の操作量だけ大きい上限値とを含んでいる。検出された操作部170の操作量が下限値未満、あるいは上限値よりも大きい場合には、オーバーライドにより、操作部170の操作による運転制御が優先して実行される。例えば、遠隔制御によって車両100のハンドル操作が実行されていると同時に、ハンドル操作量の上限値よりも大きい、あるいは下限値よりも小さい操作量の手動のハンドル操作が実行された場合には、オーバーライドにより、手動のハンドル操作による運転制御が優先して実行される。なお、操作部170の操作量が下限値以上上限値以下である場合には、手動操作による運転制御よりも遠隔制御による運転制御が優先される。閾値226は、例えば、ハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作部170の種類ごとに個別に設定されている。閾値226は、制御内容変更テーブル224に含まれてもよい。
【0076】
車両100の製造過程では、遠隔制御による車両100の自走搬送は、車両100内に乗員がいない無人の状態で実行され得る。無人の状態であれば、通常、操作部170が手動操作されず、オーバーライドは発生しない。しかしながら、車両100の自走搬送中であっても、例えば、車両100内の検査や車両100内への部品の取り付けなどを行うために、車両100に作業員等が乗り込む可能性がある。この場合において、例えば、作業員等が誤って操作部170に接触すると、操作部170の操作量が閾値226を超えて、オーバーライドにより、車両100の自走搬送が意図せず停止してしまう可能性がある。
【0077】
本実施形態では、自走搬送中に作業員が操作部170に接触する可能性がある工程では、閾値226を、操作部170による運転制御が優先されにくくなる値、すなわちオーバーライドが発生しにくくなる値に緩和することにより、自走搬送中の作業員等による意図せぬオーバーライドの発生を抑制または防止する。このことから、緩和された閾値226は、予定されていない操作部170の操作を検出するための閾値ということもできる。なお、自走搬送中に作業員が操作部170に接触する可能性がある工程と、緩和後の閾値226との対応関係は、制御内容変更テーブル224に予め設定されている。緩和後の閾値226は、操作部170の種類ごとに好適な値を用いて予め設定されている。
【0078】
異常措置部318は、異常検出部218によって、予定されていない操作部170の操作が検出された場合に、予め定められた異常措置を実行する。異常措置としては、例えば、異常が発生した工程の管理者や作業員に対する異常発生の報知や、製造設備あるいは製造ラインの非常停止による車両100の製造の停止などが含まれる。
【0079】
図12は、第3実施形態に係る車両100の製造方法を示すフローチャートである。本フローでは、図6で示した第1実施形態の車両100の製造方法とは、ステップS10の後にステップS12,S14,S16を備える点と、ステップS20,S30に代えて、ステップS22,S32を備える点とにおいて相違する。
【0080】
ステップS12では、手動操作検出部217は、操作部170の操作量を監視する。ステップS14では、手動操作検出部217は、操作部170の操作量が、緩和された閾値226を超えたか否かを判定する。操作部170の操作量が緩和された閾値226以内であれば(S14;NO)、処理をステップS18へと移行する。なお、ステップS12の時点で閾値226が緩和されていない場合には、ステップS12,S14,S16を省略して、処理をステップS18へと移行してよい。
【0081】
ステップS14において、操作部170の操作量が緩和後の閾値226を超えた場合には(S14:YES)、手動操作検出部217は、処理をステップS16へと移行する。ステップS16では、異常措置部318による異常措置が実行される。より具体的には、異常検出部218は、予定されていない操作部170の操作の検出結果をサーバ300cに出力する。サーバ300cの異常措置部318は、車両100の異常検出部218から検出結果を取得すると、異常措置を実行して本フローを終了する。具体的には、異常措置部318は、異常が発生した工程の管理者や作業員に対する異常の報知と、製造ラインの非常停止を行い車両100の製造を停止させる。
【0082】
ステップS22では、制御内容変更部216は、次の工程で作業員が操作部170に接触する可能性があるか否かを確認する。具体的には、制御内容変更部216は、制御内容変更テーブル224を参照して、次の工程が、作業員が操作部170に接触する可能性がある工程であるか否かを確認する。次工程が操作部170に接触する可能性がない工程であれば(S22:NO)、制御内容変更部216は、処理をステップS40へと移行する。なお、ステップS22,S32は、ステップS40で全行程を終了していないと判定されたあと、ステップS50の前に実行されてもよい。
【0083】
次工程で作業員が操作部170に接触する可能性があれば(S22:YES)、制御内容変更部216は、閾値226を緩和する。より具体的には、制御内容変更部216は、制御内容変更テーブル224に従って、閾値226を緩和後の値へと変更する。
【0084】
以上のように、本実施形態の車両100によれば、さらに、遠隔制御による運転制御と操作部170による運転制御とが同時に実行された場合に、遠隔制御による運転制御よりも操作部170による運転制御を優先するか否かを判定するための閾値226がECU200cの記憶装置220cに格納されている。処理完了検出部214は、作業員が操作部170に接触する可能性がある工程よりも前の工程による処理の完了を検出する。制御内容変更部216は、処理完了検出部214によって当該前の工程による処理の完了が検出された場合に、閾値226を操作部170による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、車両100の制御の内容を変更する。したがって、遠隔制御による車両100の自走搬送中に作業員等が誤って操作部170に接触することによって車両100の自走搬送が意図せず停止される不具合を抑制または防止することができる。
【0085】
D.第4実施形態:
図13は、第4実施形態に係る車両100が備えるECU200dの内部機能構成を示すブロック図である。図14は、第4実施形態に係るサーバ300dの内部機能構成を示すブロック図である。図13および図14に示すように、本実施形態では、第3実施形態で示したECU200cおよびサーバ300cの構成とは、ECU200dの記憶装置220dに制御内容変更テーブル224が格納されず、制御内容変更テーブル324がサーバ300dの記憶装置320に格納されている点で相違する。制御内容変更テーブル324の構成は、第3実施形態で示した制御内容変更テーブル224と同様である。
【0086】
ECU200dのCPU210dは、第3実施形態で示したECU200cのCPU210cの構成とは、処理完了検出部214および異常検出部218として機能しない点で相違する。サーバ300dのCPU310dは、第3実施形態のサーバ300cの構成とは、さらに、制御内容変更指示部316および異常検出部317として機能する点で相違する。
【0087】
本実施形態では、製造情報取得部314は、製造情報を取得し、取得された製造情報を参照して、次の工程で作業員が操作部170に接触する可能性がある工程よりも前の工程による処理の完了を取得する。製造情報取得部314による取得結果は、制御内容変更指示部316に出力される。
【0088】
制御内容変更指示部316は、制御内容変更テーブル224を参照して、製造情報取得部314によって取得された製造情報を用いて、次の工程が、作業員が操作部170に接触する可能性がある工程であるか否かを確認してもよい。次の工程が、作業員が操作部170に接触する可能性がある工程であれば、制御内容変更指示部316は、制御内容変更テーブル224に従って、閾値226を緩和後の値へと変更するように、制御内容変更部216に指示を出す。この結果、ECU200dの記憶装置220dに格納される閾値226は、緩和後の値に変更される。
【0089】
異常検出部317は、手動操作検出部217によって取得される操作部170の操作量を逐次に取得する。異常検出部317は、第3実施形態で示した異常検出部218と同様に、取得された操作部170の操作量が緩和後の閾値226を超えた場合に、予定されていない操作部170の操作があったことを検出する。異常検出部317による検出結果は、異常措置部318に出力される。異常措置部318は、第3実施形態で示した異常措置部318と同様に、予定されていない操作部170の操作が検出された場合に、予め定められた異常措置を実行する。
【0090】
以上のように、本実施形態のサーバ300dによれば、製造情報取得部314は、作業員が操作部170に接触する可能性がある工程として予め定められた工程よりも前の工程による処理の完了を取得する。制御内容変更指示部316は、前の工程による処理の完了が取得された場合に、閾値226を操作部170による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、車両100の制御の内容の変更を前記車両100に指示する。したがって、本実施形態においても第3実施形態と同様に、遠隔制御による車両100の自走搬送中に作業員等が誤って操作部170に接触することによって車両100の自走搬送が意図せず停止される不具合を抑制または防止することができる。
【0091】
本実施形態のサーバ300dによれば、制御内容変更部216によって閾値226が緩和されたあとに、操作部170による運転制御が優先して実行された場合に、車両100の製造の停止と報知との異常措置を実行させる。オーバーライドに代えて異常措置を実行することにより、閾値226の緩和に伴うリスクを抑制または防止することができる。
【0092】
E.第5実施形態:
図15は、第5実施形態におけるシステム500eの概略構成を示す説明図である。本実施形態において、システム500eは、サーバ300を備えていない点で第1実施形態とは異なる。システム500eのその他の構成については、特に説明しない限り第1実施形態と同じである。
【0093】
図16は、第5実施形態における車両100eのECU200eの内部機能構成を示す説明図である。図16に示すように、ECU200eは、中央演算処理装置としてのCPU210eと、ROMやRAMなどの記憶装置220eと、図示しないインターフェース回路に接続された車両通信部190とを備えている。これらは内部バスを介して双方向に通信可能に接続されている。本実施形態では、CPU210eが記憶装置220eに格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、運転制御部212e、処理完了検出部214、および、制御内容変更部216などの各種の機能が実現される。後述するように、本実施形態における運転制御部212eは、車両100eの自律制御によって車両100eを走行させることが可能である。具体的には、運転制御部212eは、センサによる検出結果を取得し、検出結果を用いて走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を出力して車両100eの各種アクチュエータを動作させることで、車両100eを自律制御によって走行させることが可能である。
【0094】
図17は、第5実施形態における車両100eの走行制御の処理手順を示すフローチャートである。ステップS101にて、車両100eは、外部センサであるカメラ80から出力される検出結果を用いて車両位置情報を取得する。ステップS102にて、車両100eは、車両100eが次に向かうべき目標位置を決定する。ステップS103にて、車両100eは、決定した目標位置に向かって車両100eを走行させるための走行制御信号を生成する。ステップS104にて、車両100eは、生成した走行制御信号を用いて車両100eのアクチュエータを制御することにより、走行制御信号に表されているパラメータに従って車両100eを走行させる。車両100eは、所定の周期で、車両位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、アクチュエータの制御を繰り返す。本実施形態におけるシステム500eによれば、サーバ300により車両100eを遠隔制御しなくても、車両100eの自律制御によって車両100eを走行させることができる。
【0095】
本実施形態では、図6の製造方法と略同様の製造方法が実行される。本実施形態では、ステップS18における処理の完了は、処理完了検出部214によって検出される。処理完了検出部214は、各工程による自車に対する処理が完了したことを、例えば、各工程に設けられるセンサやカメラ等から取得してもよいし、製造情報を用いて取得してもよい。処理完了検出部214は、製造情報を、例えば、各工程に設けられる工程管理装置や、各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置から取得してもよい。また、本実施形態におけるステップS50では、車両100eの運転制御部212eは、車両100eの走行を開始し、車両100eを次の工程に向けて走行させる。この場合において、車両100eの運転制御は、書き換えられた制御プログラム222に基づいて実行される。
【0096】
以上、説明したように、本実施形態のシステム500eによれば、工程による処理の完了ごとに車両100eの制御の内容を変更することができ、工程ごとに好適な自律制御による車両100eの運転制御を実行することができる。
【0097】
なお、本実施形態と同様に車両100eが自律制御によって走行する他の実施形態において、例えば、CPU210eが手動操作検出部217と異常検出部218と異常措置部318とを備え、記憶装置220eに閾値226が記憶され、図12に示した製造方法が実行されてもよい。この場合、ステップS16は、車両100eの異常措置部318によって、第3実施形態と略同様に実行される。具体的には、異常検出部218は、予定されていない操作部170の操作の検出結果を出力し、異常措置部318は、この検出結果を取得して異常措置を実行する。こうすれば、自律制御による車両100eの自走搬送中に作業員等が誤って操作部170に接触することによって車両100eの自走搬送が意図せず停止される不具合を抑制または防止することができる。
【0098】
また、車両100eが自律制御によって走行する他の実施形態において、例えば、システム500にサーバ300が備えられていてもよい。この場合、サーバ300のCPU310は、例えば、上記各実施形態と同様に、製造情報取得部314や、制御内容変更指示部316や、異常措置部318として機能してもよい。また、この場合、サーバ300の記憶装置320には、例えば、上記各実施形態と同様に、製造情報322や、制御内容変更テーブル324が記憶されていてもよい。
【0099】
F.他の実施形態:
(F1)上記第2実施形態では、制御内容変更指示部316がサーバ300bに備えられ、制御内容変更部216が車両100のECU200bに備えられる例を示した。これに対して、サーバ300bは、制御内容変更指示部316に代えて制御内容変更部を備えてもよい。このように構成することにより、サーバ300bが車両100の制御内容を直接的に変更することができる。この場合には、ECU200bの制御内容変更部216を省略することができ、ECU200bの処理負担を軽減させることができる。
【0100】
(F2)上記各実施形態において、車両100は、無人運転により移動可能な構成を備えていればよく、例えば、以下に述べる構成を備えるプラットフォームの形態であってもよい。具体的には、車両100は、無人運転により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮するために、少なくとも、車両100の走行を制御する制御装置と、車両100eのアクチュエータとを備えていればよい。無人運転のために車両100が外部から情報を取得する場合に、車両100は、さらに、通信装置を備えていればよい。すなわち、無人運転により移動可能な車両100は、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、バンパやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、ボディシェルが装着されていなくてもよい。この場合、車両100が工場から出荷されるまでの間に、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよいし、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されていない状態で、車両100が工場から出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよい。各部品は、車両100の上側、下側、前側、後側、右側あるいは左側といった任意の方向から装着されてよく、それぞれ同じ方向から装着されてもよいし、それぞれ異なる方向から装着されてもよい。なお、プラットフォームの形態に対しても、第1実施形態における車両100と同様にして位置決定がなされ得る。
【0101】
(F3)上記第3実施形態では、閾値226が、遠隔制御において予定されている操作部170の操作量の基準値に対して所定の操作量だけ小さい下限値と、基準値に対して所定の操作量だけ大きい上限値とを含む例を示した。これに対して、閾値226は、上限値と下限値とのいずれかのみで設定されてもよい。閾値226は、例えば、無人運転による操作部170の操作量と、手動操作による操作部170の操作量との差分を用いて設定されてもよい。閾値226は、手動操作による操作部170の操作量の絶対値を用いて設定されてもよい。閾値226は、無人運転による操作部170の操作量と、手動操作によって追加された分の操作部170の操作量との合計値を用いて設定されてもよい。
【0102】
(F4)上記第3実施形態では、オーバーライドが実行されにくくなる値に閾値226が緩和される例を示した。これに対して、閾値226の緩和には、オーバーライドの機能をオフにすることが含まれてよい。
【0103】
(F5)上記第3実施形態では、ステップS14において、緩和された閾値226を、操作部170の操作量が超えた場合に、ステップS16において、異常措置部318による異常措置が実行される例を示した。これに対して、ステップS16では、異常措置に代えて、またはそれとともに、オーバーライドにより、遠隔制御による車両100の運転制御よりも操作部170による車両100の運転制御が優先して実行されてもよい。このように構成することにより、操作部170の誤操作による車両100の自走搬送の停止を抑制することができるとともに、オーバーライドにより操作部170の手動操作を実行することができる。
【0104】
(F6)上記各実施形態では、外部センサは、カメラ80である。これに対して、外部センサは、カメラ80でなくてもよく、例えば、LiDARであってもよい。この場合、外部センサによって出力される検出結果は、車両100を表す3次元点群データであってもよい。この場合、サーバ300や車両100は、検出結果としての3次元点群データと、予め準備された参照用点群データとを用いたテンプレートマッチングによって、車両位置情報を取得してもよい。
【0105】
(F7)上記第1実施形態から第4実施形態では、サーバ300により車両位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理が実行される。これに対して、車両100により車両位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理の少なくとも一部が実行されてもよい。例えば、以下の(1)から(3)の形態であってもよい。
【0106】
(1)サーバ300は、車両位置情報を取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得した車両位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成してもよい。サーバ300は、現在地と目的地との間の目標位置までの経路を生成してもよいし、目的地までの経路を生成してもよい。サーバ300は、生成した経路を車両100に対して送信してもよい。車両100は、サーバ300から受信した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御してもよい。
【0107】
(2)サーバ300は、車両位置情報を取得し、取得した車両位置情報を車両100に対して送信してもよい。車両100は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、受信した車両位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御してもよい。
【0108】
(3)上記(1),(2)の形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。内部センサは、車両100に搭載されたセンサである。具体的には、内部センサには、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどが含まれ得る。例えば、上記(1)の形態において、サーバ300は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(1)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0109】
(F8)上記第5実施形態において、車両100eに内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。例えば、車両100eは、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。車両100eは、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0110】
(F9)上記第5実施形態では、車両100eは、外部センサの検出結果を用いて車両位置情報を取得している。これに対して、車両100eに内部センサが搭載されており、車両100eは、内部センサの検出結果を用いて車両位置情報を取得し、車両100eが次に向かうべき目標位置を決定し、取得した車両位置情報に表されている車両100eの現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路を走行するための走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いて車両100eのアクチュエータを制御してもよい。この場合、車両100eは、外部センサの検出結果を一切用いずに走行することができる。なお、車両100eは、車両100eの外部から目標到着時刻や渋滞情報を取得し、経路と走行制御信号の少なくとも一方に目標到着時刻や渋滞情報を反映させてもよい。また、システム500の機能構成が全て車両100に設けられてもよい。すなわち、本開示でシステム500によって実現される処理は、車両100単独によって実現されてもよい。
【0111】
(F10)上記第1実施形態から第4実施形態では、サーバ300は、車両100に対して送信する走行制御信号を自動で生成している。これに対して、サーバ300は、車両100の外部に位置している外部オペレータの操作に従って、車両100に対して送信する走行制御信号を生成してもよい。例えば、外部センサから出力される撮像画像を表示するディスプレイ、車両100を遠隔操作するためのステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、有線通信あるいは無線通信によりサーバ300と通信するための通信装置を備える操縦装置を外部オペレータが操作し、サーバ300は、操縦装置に加えられた操作に応じた走行制御信号を生成してもよい。以下では、こうした制御による車両100の運転を、「遠隔手動運転」ともいう。この形態であっても、例えば、処理完了検出部214や製造情報取得部314によって製造過程に含まれる少なくとも一の工程による処理の完了が検出された場合に、制御内容変更部216は、車両100の制御の内容を変更することが可能である。具体的には、処理の完了が検出された場合に、制御内容変更部216は、例えば、処理の完了によって車両100に追加または変更される要素を用いた制御になるように遠隔手動運転の制御の内容を変更してもよいし、遠隔手動運転を中止して、追加または変更される要素を用いた無人運転を開始してもよい。また、処理の完了が検出された場合に、制御内容変更部216は、閾値226を、操作部170による運転制御が優先されにくくなる値に緩和するように、遠隔手動運転の制御の内容を変更してもよい。また、制御内容変更指示部316は、処理の完了が検出された場合に、例えば、上記各制御の内容の変更を、車両100に指示してもよい。
【0112】
(F11)車両100は、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。モジュールは、車両100の部位や機能に応じて纏められた複数の部品によって構成されるユニットを意味する。例えば、車両100のプラットフォームは、プラットフォームの前部を構成する前方モジュールと、プラットフォームの中央部を構成する中央モジュールと、プラットフォームの後部を構成する後方モジュールとを組み合わせることで製造されてもよい。なお、プラットフォームを構成するモジュールの数は、3つに限られず、2つ以下や4つ以上であってもよい。また、プラットフォームを構成する部品に加えて、あるいは、これに代えて、車両100のうちプラットフォームとは異なる部分を構成する部品がモジュール化されてもよい。また、各種モジュールは、バンパやグリルといった任意の外装部品や、シートやコンソールといった任意の内装部品を含んでいてもよい。また、車両100に限らず、任意の態様の移動体が、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。こうしたモジュールは、例えば、複数の部品を溶接や固定具等によって接合することで製造されてもよいし、モジュールを構成する部品の少なくとも一部を鋳造によって一の部品として一体的に成型することで製造されてもよい。一の部品、特に比較的大型の部品を一体的に成型する成型手法は、ギガキャストやメガキャストとも呼ばれる。例えば、上記の前方モジュールや中央モジュールや後方モジュールは、ギガキャストを用いて製造されてもよい。
【0113】
(F12)無人運転による車両100の走行を利用して車両100を搬送させることを「自走搬送」とも呼ぶ。また、自走搬送を実現するための構成を、「車両遠隔制御自律走行搬送システム」とも呼ぶ。また、自走搬送を利用して車両100を生産する生産方式のことを「自走生産」とも呼ぶ。自走生産では、例えば、車両100を製造する工場において、車両100の搬送の少なくとも一部が、自走搬送によって実現される。
【0114】
本開示に記載の制御及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0115】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
50…前工程、50p…レーダ装置装着工程、50q…車載カメラ装着工程、50r…車輪速センサ装着工程、60…後工程、70…アクセスポイント、72…ネットワーク、80…カメラ、100,100e,100p,100q,100r…車両、120…バッテリ、130…PCU、140…モータ、150…受電装置、170…操作部、180…検出装置類、190…車両通信部、200,200b,200c,200d,200e…ECU、210,210c,210d,210e…CPU、212,212e…運転制御部、214…処理完了検出部、216…制御内容変更部、217…手動操作検出部、218…異常検出部、220,220c,220d,220e…記憶装置、222…制御プログラム、224…制御内容変更テーブル、226…閾値、280…インターフェース回路、300,300b,300c,300d…サーバ、310,310c,310d…CPU、312…遠隔制御部、314…製造情報取得部、316…制御内容変更指示部、317…異常検出部、318…異常措置部、320…記憶装置、322…製造情報、324…制御内容変更テーブル、390…遠隔通信部、500,500e…システム、801,802,803,804…カメラ、C1,C2,C3…搬送区間、FC…工場、P2…駐車位置、PA…駐車場、PG…投入位置、RT…走路、RT1…第一走路、RT2…第二走路、RT3…第三走路、RT4…第四走路
図1
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