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特開2024-162994水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセス
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  • 特開-水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162994
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/82 20060101AFI20241114BHJP
   C07C 49/403 20060101ALI20241114BHJP
   B01D 3/32 20060101ALI20241114BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C45/82
C07C49/403 J
B01D3/32 Z
B01D3/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000693
(22)【出願日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】202310534563.8
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524009543
【氏名又は名称】▲エン▼鉱魯南化学工業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】魯宜武
(72)【発明者】
【氏名】陳明
(72)【発明者】
【氏名】陳靖
(72)【発明者】
【氏名】張華
(72)【発明者】
【氏名】張厚智
(72)【発明者】
【氏名】▲チウ▼峰
(72)【発明者】
【氏名】肖紅玲
(72)【発明者】
【氏名】趙麗
(72)【発明者】
【氏名】張▲ショウ▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲トン▼▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄鵬
(72)【発明者】
【氏名】許柯夢
(72)【発明者】
【氏名】孫淑傑
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
【Fターム(参考)】
4D076BB03
4D076BB23
4D076DA02
4D076DA35
4D076FA31
4D076FA34
4D076HA20
4D076JA04
4H006AA02
4H006AA04
4H006AD13
4H006BD60
4H006BD82
4H006BD84
(57)【要約】
【課題】本発明は、ベンゼン1塔の塔頂熱量、ベンゼン2塔の塔釜熱量、アルコール1塔の塔頂熱量、アルコール2塔の側線熱量、アルケン1塔の塔頂熱量、アルケン2塔の塔釜熱量、凝縮濾過缶の副生成蒸気の熱量、アルカン2塔の塔頂熱量、軽塔の塔頂熱量を総合的に利用する水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセスを開示する。
【解決手段】サーマルカップリング及びヒートポンプ技術により、精留塔の塔頂及び塔釜の熱量を総合的に利用することで、蒸気及び循環水の使用量を節約する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムであって、前記システムは、ベンゼン1塔を含み、前記ベンゼン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記ベンゼン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりベンゼン1塔の第2再沸器に繋がり、前記ベンゼン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりベンゼン2塔に繋がり、前記ベンゼン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第1再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第1再沸器は、ベンゼン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルコール1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルコール1塔の塔釜の第2再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール2塔に繋がり、前記アルコール2塔の塔内の物料出口は、ヒートポンプによりアルコール2塔の第1再沸器に繋がり、
前記アルコール1塔の塔釜は、さらに、第3再沸器及び第4再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第3再沸器は、アルケン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルケン1塔の供給物予熱器は、アルケン1塔に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記アルケン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルケン1塔の第2再沸器に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルケン2塔に繋がり、前記アルケン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第3再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第4再沸器は、凝縮濾過缶に繋がり、前記凝縮濾過缶は、ヒートポンプによりアルカン2塔の塔釜の第1再沸器、ケトン塔の第1再沸器に繋がり、前記アルカン2塔の第1再沸器は、アルカン2塔に繋がり、前記アルカン2塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルカン2塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第1再沸器は、ケトン塔に繋がり、前記ケトン塔の塔釜は、ケトン塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第2再沸器は、ヒートポンプにより軽塔の塔頂に繋がる、
ことを特徴とする水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム。
【請求項2】
前記ベンゼン2塔の再沸器は、ベンゼン2塔に繋がり、前記アルコール1塔の第1再沸器、第2再沸器は、いずれもアルコール1塔に繋がり、前記アルカン2塔の第1再沸器、第2再沸器は、いずれもアルカン2塔に繋がり、前記アルケン1塔の再沸器は、アルケン1塔に繋がり、前記ケトン塔の第1再沸器及び第2再沸器は、いずれもケトン塔に繋がり、前記軽塔の再沸器は、軽塔に繋がる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ベンゼン1塔の第1再沸器、ベンゼン2塔の再沸器、アルケン1塔の第1再沸器、アルケン2塔の再沸器、軽塔の再沸器は、いずれも凝縮濾過缶に繋がる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ベンゼン1塔の物料供給器は、ベンゼン1塔に繋がり、前記ベンゼン1塔の物料供給器は、凝縮液缶に繋がる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ケトン塔の第1再沸器、アルカン2塔の第1再沸器は、いずれも超低圧凝縮液缶に繋がる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記ベンゼン1塔の第1再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルコール1塔の第4再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルコール2塔の第2再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルカン2塔は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルケン1塔の供給物予熱器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルケン1塔の第1再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記軽塔は、凝縮液缶に繋がる、
又は、前記ベンゼン2塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記アルケン2塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がり、
又は、前記軽塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ベンゼン1塔、ベンゼン2塔、アルコール1塔、アルコール2塔、アルカン2塔、アルケン1塔、アルケン2塔、凝縮濾過缶、ケトン塔、軽塔の塔頂部のいずれにも、塔頂出口が設けられ、前記塔頂出口は、凝縮器の入り口に繋がり、前記凝縮器には、2つの出口A及びBが設けられ、前記凝縮器の出口Aは、尾部冷却器の入り口に繋がり、前記凝縮器の出口Bは、還流缶頂部の入り口に繋がり、前記尾部冷却器には、2つの出口C及びDが設けられ、前記尾部冷却器の出口Cは、廃ガスシステムに繋がり、前記尾部冷却器の出口Dは、凝縮器の出口Bの出口配管に繋がる、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記ベンゼン1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記ベンゼン1塔の還流缶の底部の出口は、ベンゼン1塔の第2再沸器に繋がり、
又は、前記アルコール1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルコール1塔の還流缶の底部の出口は、ベンゼン1塔の第2再沸器に繋がり、
又は、前記アルカン2塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルカン2塔の還流缶の底部の出口は、アルカン2塔の第2再沸器に繋がる、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記アルケン1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルケン1塔の還流缶の底部の出口は、アルケン1塔の第2再沸器に繋がり、
又は、前記軽塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記軽塔の還流缶の底部の出口は、ケトン塔の第2再沸器に繋がる、
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセスであって、前記プロセスは、
ヒートポンプ技術を利用してベンゼン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ベンゼン1塔の第2再沸器によりベンゼン1塔の塔釜を加熱する、ベンゼン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりベンゼン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第1再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きベンゼン1塔の供給物予熱器に送り、ベンゼン1塔の供給物を加熱する、ベンゼン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール1塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルコール1塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール2塔の側線の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール2塔の第2再沸器によりアルコール2塔の塔釜を加熱する、アルコール2塔の側線熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルケン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルケン1塔の第2再沸器によりアルケン1塔の塔釜を加熱する、アルケン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりアルケン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第3再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きアルケン1塔の供給物予熱器に送り、アルケン1塔の供給物を加熱する、アルケン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して凝縮濾過缶の副生成0.3MPa(300kPa)蒸気に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第1再沸器及びアルカン2塔の第1再沸器に送り込んでその塔釜をそれぞれ加熱する、凝縮濾過缶の副生成蒸気の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルカン2塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルカン2塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルカン2塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して軽塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第2再沸器によりケトン塔の塔釜を加熱する、軽塔の塔頂熱量の利用と、を含む、
ことを特徴とする水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業の分野に属し、具体的には水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
該背景技術部分の情報は、本発明の全体背景に対する理解を深めることのみを意図して開示されており、必ずしも該情報が当業者に既に周知されている既存技術を構成することを認めたり何らかの形で示唆したりするものとは見なされない。
【0003】
現在、工業でのシクロヘキサノン製造は、シクロヘキセン水和法を採用することが多く、該方法は、プロセスが簡単で、副生成物が少なく、他の環境に有害の物質の生成がない。同時に、反応は水相で行われるため、従来のベンゼン法と比べ、本質的に「省エネ、無公害及び安全」の特徴を有する。しかし、該方法には精留操作が多く関わっており、精留はエネルギ消費が非常に高い化学工業の単位操作であり、精留塔の塔頂は、冷却水で塔頂ガスを凝縮して、熱を取る必要があり、塔釜は、蒸気で塔釜料液を再沸させて、加熱を行う必要がある。現在国内外では、殆どの水和法によるシクロヘキサノン製造の精留単位は依然として通常の工程であり、総蒸気原単位が約8t/tシクロヘキサノンであり、総循環水原単位が約680m/tシクロヘキサノンであり、エネルギ消費が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を克服するために、本発明は、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システム及びプロセスを提供する。サーマルカップリング及びヒートポンプ技術により、精留塔の塔頂及び塔釜の熱量を総合的に利用することで、蒸気及び循環水の使用量を節約する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
工業でのシクロヘキサノン製造は、シクロヘキセン(Cyclohexene)水和法を採用することが多く、そのプロセス工程としては、ベンゼンを原料とし、ベンゼンの一部を水素化してシクロヘキセンを生産し、副生成物がシクロヘキサン(Cyclohexane)であることと、シクロヘキセンを水和してシクロヘキサノール(Cyclohexanol)を生成することと、シクロヘキサノールを脱水素化してシクロヘキサノン(Cyclohexanone)を生成することと、なっている。本発明におけるベンゼン1塔は、抽出精留によりベンゼンをシクロヘキセン、シクロヘキサンから分離し、ベンゼン2塔は、精留によりベンゼンを抽出剤から分離し、アルケン1塔は、抽出精留によりシクロヘキセンをシクロヘキサンから分離し、アルケン2塔は、精留によりシクロヘキセンを抽出剤から分離し、アルカン2塔は、精留により軽成分をシクロヘキサンから分離し、アルコール1塔は、精留により軽成分、シクロヘキセン、シクロヘキサノールを分離し、アルコール2塔は、精留を経てシクロヘキサノール製品を取得し、ケトン塔は、精留を経てシクロヘキサノン製品を取得し、軽塔は、精留により軽成分を粗アルコールケトンから分離し、
上記技術目的を実現するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0006】
本発明の1つ目の態様において、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムであって、前記システムは、ベンゼン1塔を含み、前記ベンゼン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記ベンゼン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりベンゼン1塔の第2再沸器に繋がり、前記ベンゼン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりベンゼン2塔に繋がり、前記ベンゼン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第1再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第1再沸器は、ベンゼン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルコール1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルコール1塔の塔釜の第2再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール2塔に繋がり、前記アルコール2塔の塔内の物料出口は、ヒートポンプによりアルコール2塔の第1再沸器に繋がり、
前記アルコール1塔の塔釜は、さらに、第3再沸器及び第4再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第3再沸器は、アルケン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルケン1塔の供給物予熱器は、アルケン1塔に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記アルケン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルケン1塔の第2再沸器に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルケン2塔に繋がり、前記アルケン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第3再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第4再沸器は、凝縮濾過缶に繋がり、前記凝縮濾過缶は、ヒートポンプによりアルカン2塔の塔釜の第1再沸器、ケトン塔の第1再沸器に繋がり、前記アルカン2塔の第1再沸器は、アルカン2塔に繋がり、前記アルカン2塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルカン2塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第1再沸器は、ケトン塔に繋がり、前記ケトン塔の塔釜は、ケトン塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第2再沸器は、ヒートポンプにより軽塔の塔頂に繋がる、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムを提供する。
【0007】
本発明の2つ目の態様において、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセスであって、前記プロセスは、
ヒートポンプ技術を利用してベンゼン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ベンゼン1塔の第2再沸器によりベンゼン1塔の塔釜を加熱する、ベンゼン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりベンゼン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第1再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きベンゼン1塔の供給物予熱器に送り、ベンゼン1塔の供給物を加熱する、ベンゼン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール1塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルコール1塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール2塔の側線の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール2塔の第2再沸器によりアルコール2塔の塔釜を加熱する、アルコール2塔の側線熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルケン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルケン1塔の第2再沸器によりベンゼン1塔の塔釜を加熱する、アルケン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりアルケン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第3再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きアルケン1塔の供給物予熱器に送り、アルケン1塔の供給物を加熱する、アルケン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して凝縮濾過缶の副生成0.3MPa(300kPa)蒸気に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第1再沸器及びアルカン2塔の第1再沸器に送り込んでその塔釜をそれぞれ加熱する、凝縮濾過缶の副生成蒸気の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルカン2塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルカン2塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルカン2塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して軽塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第2再沸器によりケトン塔の塔釜を加熱する、軽塔の塔頂熱量の利用と、を含む、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有益効果は、以下の通りである。
【0009】
本発明は、サーマルカップリング及びヒートポンプ技術により、精留塔の塔頂及び塔釜の熱量を総合的に利用することで、蒸気及び循環水の使用量を節約する。
【0010】
本発明は、プロセス工程が簡単で、設備の保守が容易であり、企業の作動装置の安定率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明をさらに理解するために提供され、本発明の模式的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不適切に限定するものではない。
【0013】
図1は、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムの図である。
図1には、1は、ベンゼン1塔であり、2は、ベンゼン2塔であり、3は、アルコール1塔であり、4は、アルコール2塔であり、5は、アルカン2塔であり、6は、アルケン1塔であり、7は、アルケン2塔であり、8は、凝縮濾過缶であり、9は、ケトン塔であり、10は、軽塔であり、11は、ベンゼン1塔の供給物予熱器であり、12は、ベンゼン1塔の第1再沸器であり、13は、ベンゼン1塔の第2再沸器であり、14は、塔釜ポンプであり、15は、ヒートポンプであり、16は、ベンゼン2塔の再沸器であり、17は、塔釜ポンプであり、18は、アルコール1塔の第1再沸器であり、19は、アルコール1塔の第2再沸器であり、20は、アルコール1塔の第3再沸器であり、21は、アルコール1塔の第4再沸器であり、22は、ヒートポンプであり、23は、アルコール2塔の第2再沸器であり、24は、アルコール2塔の第1再沸器であり、25は、ヒートポンプであり、26は、アルカン2塔の第1再沸器であり、27は、アルカン2塔の第2再沸器であり、28は、ヒートポンプであり、29は、アルケン1塔の供給物予熱器であり、30は、アルケン1塔の第1再沸器であり、31は、アルケン1塔の第2再沸器であり、32は、塔釜ポンプであり、33は、ヒートポンプであり、34は、アルケン2塔の再沸器であり、35は、塔釜ポンプであり、36は、ヒートポンプであり、37は、超低圧凝縮液缶であり、38は、ケトン塔の第1再沸器であり、39は、ケトン塔の第2再沸器であり、40は、軽塔の再沸器であり、41は、ヒートポンプであり、42、43、44、45、46、47、48、49、50は、いずれも還流缶であり、51、52、53、54、55、56、57、58、59は、いずれも凝縮器であり、60、61、62、63、64、65、66、67、68は、いずれも尾部冷却器であり、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80は、いずれも凝縮液缶である。
【0014】
なお、以下の詳しい説明はいずれも例示的なものであり、本発明をさらに説明することを意図して提供されている。別途明記されない限り、本発明で使用される全ての技術及び科学的用語は、本発明の当業者が通常に理解しているのと同じ意味を持つ。
【0015】
本発明の1つ目の典型的な実施形態において、水和法(hydration)によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムであって、前記システムは、ベンゼン1塔を含み、前記ベンゼン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記ベンゼン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりベンゼン1塔の第2再沸器に繋がり、前記ベンゼン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりベンゼン2塔に繋がり、前記ベンゼン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第1再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第1再沸器は、ベンゼン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルコール1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルコール1塔の塔釜の第2再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール2塔に繋がり、前記アルコール2塔の塔内の物料出口は、ヒートポンプによりアルコール2塔の第1再沸器に繋がり、
前記アルコール1塔の塔釜は、さらに、第3再沸器及び第4再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第3再沸器は、アルケン1塔の供給物予熱器に繋がり、前記アルケン1塔の供給物予熱器は、アルケン1塔に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の左右両端は、それぞれ第1再沸器及び第2再沸器に接続され、前記アルケン1塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルケン1塔の第2再沸器に繋がり、前記アルケン1塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルケン2塔に繋がり、前記アルケン2塔の塔釜の釜底は、塔釜ポンプによりアルコール1塔の塔釜の第3再沸器に繋がり、前記アルコール1塔の第4再沸器は、凝縮濾過缶に繋がり、前記凝縮濾過缶は、ヒートポンプによりアルカン2塔の塔釜の第1再沸器、ケトン塔の第1再沸器に繋がり、前記アルカン2塔の第1再沸器は、アルカン2塔に繋がり、前記アルカン2塔の塔頂は、ヒートポンプによりアルカン2塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第1再沸器は、ケトン塔に繋がり、前記ケトン塔の塔釜は、ケトン塔の第2再沸器に繋がり、前記ケトン塔の第2再沸器は、ヒートポンプにより軽塔の塔頂に繋がる、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留システムを提供する。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、前記ベンゼン2塔の再沸器は、ベンゼン2塔に繋がり、前記アルコール1塔の第1再沸器、第2再沸器は、いずれもアルコール1塔に繋がり、前記アルカン2塔の第1再沸器、第2再沸器は、いずれもアルカン2塔に繋がり、前記アルケン1塔の再沸器は、アルケン1塔に繋がり、前記ケトン塔の第1再沸器及び第2再沸器は、いずれもケトン塔に繋がり、前記軽塔の再沸器は、軽塔に繋がる。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、前記ベンゼン1塔の第1再沸器、ベンゼン2塔の再沸器、アルケン1塔の第1再沸器、アルケン2塔の再沸器、軽塔の再沸器は、いずれも凝縮濾過缶に繋がる。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、前記ベンゼン1塔の物料供給器は、ベンゼン1塔に繋がり、前記ベンゼン1塔の物料供給器は、凝縮液缶に繋がる。
【0019】
1つ又は複数の実施形態において、前記ケトン塔の第1再沸器、アルカン2塔の第1再沸器は、いずれも超低圧凝縮液缶に繋がる。
【0020】
1つ又は複数の実施形態において、前記ベンゼン1塔の第1再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0021】
1つ又は複数の実施形態において、前記ベンゼン2塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0022】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルコール1塔の第4再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0023】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルコール2塔の第2再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルカン2塔は、凝縮液缶に繋がる。
【0025】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルケン1塔の供給物予熱器は、凝縮液缶に繋がる。
【0026】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルケン1塔の第1再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、前記アルケン2塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0028】
1つ又は複数の実施形態において、前記軽塔は、凝縮液缶に繋がり、前記軽塔の再沸器は、凝縮液缶に繋がる。
【0029】
前記ベンゼン1塔、ベンゼン2塔、アルコール1塔、アルコール2塔、アルカン2塔、アルケン1塔、アルケン2塔、凝縮濾過缶、ケトン塔、軽塔の塔頂部のいずれにも、塔頂出口が設けられ、前記塔頂出口は、凝縮器の入り口に繋がり、前記凝縮器には、2つの出口A及びBが設けられ、前記凝縮器の出口Aは、尾部冷却器の入り口に繋がり、前記凝縮器の出口Bは、還流缶頂部の入り口に繋がり、前記尾部冷却器には、2つの出口C及びDが設けられ、前記尾部冷却器の出口Cは、廃ガスシステムに繋がり、前記尾部冷却器の出口Dは、凝縮器の出口Bの出口配管に繋がる。
【0030】
好ましくは、前記ベンゼン1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記ベンゼン1塔の還流缶の底部の出口は、ベンゼン1塔の第2再沸器に繋がる。
【0031】
好ましくは、前記アルコール1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルコール1塔の還流缶の底部の出口は、ベンゼン1塔の第2再沸器に繋がる。
【0032】
好ましくは、前記アルカン2塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルカン2塔の還流缶の底部の出口は、アルカン2塔の第2再沸器に繋がる。
【0033】
好ましくは、前記アルケン1塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記アルケン1塔の還流缶の底部の出口は、アルケン1塔の第2再沸器に繋がる。
【0034】
好ましくは、前記軽塔の還流缶の底部には、出口が設けられ、前記軽塔の還流缶の底部の出口は、ケトン塔の第2再沸器に繋がる。
【0035】
本発明の2つ目の典型的な実施形態において、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセスであって、前記プロセスは、
ヒートポンプ技術を利用してベンゼン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ベンゼン1塔の第2再沸器によりベンゼン1塔の塔釜を加熱する、ベンゼン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりベンゼン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第1再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きベンゼン1塔の供給物予熱器に送り、ベンゼン1塔の供給物を加熱する、ベンゼン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール1塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルコール1塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルコール2塔の側線の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルコール2塔の第2再沸器によりアルコール2塔の塔釜を加熱する、アルコール2塔の側線熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルケン1塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルケン1塔の第2再沸器によりアルケン1塔の塔釜を加熱する、アルケン1塔の塔頂熱量の利用と、
サーマルカップリング技術を利用して塔釜ポンプによりアルケン2塔の塔釜物料をアルコール1塔の第3再沸器に送り込んでアルコール1塔の塔釜を加熱し、熱交換後の物料を引き続きアルケン1塔の供給物予熱器に送り、アルケン1塔の供給物を加熱する、アルケン2塔の塔釜熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して凝縮濾過缶の副生成0.3MPa(300kPa)蒸気に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第1再沸器及びアルカン2塔の第1再沸器に送り込んでその塔釜をそれぞれ加熱する、凝縮濾過缶の副生成蒸気の利用と、
ヒートポンプ技術を利用してアルカン2塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、アルカン2塔の第2再沸器によりアルコール1塔の塔釜を加熱する、アルカン2塔の塔頂熱量の利用と、
ヒートポンプ技術を利用して軽塔の塔頂の気相物料に対して断熱圧縮を行い、気相物料の温度及び圧力を高め、ケトン塔の第2再沸器によりケトン塔の塔釜を加熱する、軽塔の塔頂熱量の利用と、を含む、水和法によるシクロヘキサノン製造の高効率省エネの精留プロセスを提供する。
【0036】
以下、具体的な実施例に照らして、本発明をさらに詳しく説明するが、なお、前記具体的な実施例は、本発明を限定するものではなく解釈するものである。
【0037】
実施例1
270000t/年のシクロヘキサノン装置を例に取り、ベンゼン1塔の塔頂の物料蒸気を利用して自体の再沸器に給熱する場合、蒸気を27t/h、循環水を1200t/h節約することができ、余分な電力消費が4500kwとなり、アルケン1塔の塔頂の物料蒸気を利用して自体の再沸器に給熱する場合、蒸気を14t/h、循環水を630t/h節約することができ、余分な電力消費が2600kwとなり、アルコール1塔の塔頂の物料蒸気を利用して自体の再沸器に給熱する場合、蒸気を14t/h、循環水を630t/h節約することができ、余分な電力消費が2600kwとなり、アルコール2塔の塔内の物料蒸気を利用して自体の再沸器に給熱する場合、蒸気を6.6t/h、循環水を300t/h節約することができ、余分な電力消費が220kwとなり、アルカン2塔の塔頂及び凝縮濾過缶の物料蒸気を利用して自体の再沸器に給熱する場合、蒸気を14t/h、循環水を630t/h節約することができ、余分な電力消費が2600kwとなり、軽塔の塔頂及び凝縮濾過缶の物料蒸気を利用してケトン塔の再沸器に給熱する場合、蒸気を16t/h、循環水を800t/h省くことができ、余分な電力消費が3000kwとなり、ベンゼン2塔及びアルケン2塔の塔釜物料を利用してアルコール1塔の塔釜に対してサーマルカップリング熱交換を行う場合、蒸気を30t/h、循環水を720t/h省くことができる。
【0038】
上記スキル変換策を採用することにより、合計で蒸気を121t/h、循環水を4910t/h省くことができ、増加した余分な電力消費が15520kwとなる。年間で8000h操作し、蒸気費用150元/t、循環水費用0.2元/t、電気0.58元/度であるとすると、年間で省かれる操作費用は、
蒸気費用を121*150*8000=14520万元節約し、
循環水費用を4910*0.2*8000=785.6万元節約し、
電気費用を15520*0.58*8000=7201.3万元増加する、というように計算される。
図1