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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162999
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】変位検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005135
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2023077643
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩津 勇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077NN05
2F077PP06
2F077TT82
(57)【要約】
【課題】発熱を抑制しつつ、相対変位量の空間的な分解能を高めた変位検出装置を提供する。
【解決手段】蛇行する第1コイル配線を有するステータ10と、蛇行する第2コイル配線を有するスライダ12と、を第1コイル配線と第2コイル配線を平行に向かい合わせるように配置し、第1コイル配線と第2コイル配線との間に第1コイル配線及び第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置した変調子14を設け、ステータ10とスライダ12との相対変位量を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行する第1コイル配線を有するステータと、蛇行する第2コイル配線を有するスライダと、を前記第1コイル配線と前記第2コイル配線を平行に向かい合わせるように配置し、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との間に、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置した変調子を設け、
前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測する変位検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変位検出装置であって、
前記変調子における前記磁性の異なる部材の配置のピッチは、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行のピッチと異なることを特徴とする変位検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の変位検出装置であって、
前記変調子における前記磁性の異なる部材は、非磁性体と磁性体であることを特徴とする変位検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の変位検出装置であって、
前記第1コイル配線の励磁電流を流したときに生ずる磁界が前記変調子を透過して前記第2コイル配線と電磁的に結合し、
前記ステータと前記スライダが相対移動したときの位置関係の変化に応じて、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との電磁結合度が周期的に変化することで前記第2コイル配線に周期的に変化する誘起電圧を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測することを特徴とする変位検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変位検出装置であって、
前記誘起電圧において前記励磁電流の基本周波数とは異なる周波数成分を発生させ、当該周波数成分を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測することを特徴とする変位検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の変位検出装置であって、
前記第1コイル配線に励磁電流を流したときに生ずる磁界を前記変調子によって変調させて前記第1コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数と異なる高調波成分を含む変調磁界を発生させ、前記変調磁界と前記第2コイル配線とを電磁気的に結合させて使用され、
前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期と不等であることを特徴とする変位検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の変位検出装置であって、
前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期の1.5倍であることを特徴とする変位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対変位量を計測する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのミアンダコイルを向かい合わせて、ミアンダコイルの間の相対変位量を検出する電磁誘導式位置検出装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-192293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミアンダコイルに電流を流すことで生ずる磁界の空間的な周期は、当該ミアンダコイルのピッチに等しく、またその磁界の周期が相対変位量の分解能に直結している。そのため、従来技術においては、磁界の周期を細かくするためにミアンダコイルの配線幅を狭くすることによってピッチも狭くする方法が採用されていた。
【0005】
しかしながら、ミアンダコイル間における磁界の検出感度を維持するためには磁界を発生させるために必要な電流量は低減できないため、配線幅を狭くすることによって配線の断面積が減少すると、配線の電気抵抗が増大し、ミアンダコイルにおける発熱が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、蛇行する第1コイル配線を有するステータと、蛇行する第2コイル配線を有するスライダと、を前記第1コイル配線と前記第2コイル配線を平行に向かい合わせるように配置し、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との間に、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置した変調子を設け、前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測する変位検出装置である。
【0007】
ここで、前記変調子における前記磁性の異なる部材の配置のピッチは、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行のピッチと異なることが好適である。
【0008】
また、前記変調子における前記磁性の異なる部材は、非磁性体と磁性体であることが好適である。
【0009】
また、前記第1コイル配線の励磁電流を流したときに生ずる磁界が前記変調子を透過して前記第2コイル配線と電磁的に結合し、前記ステータと前記スライダが相対移動したときの位置関係の変化に応じて、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との電磁結合度が周期的に変化することで前記第2コイル配線に周期的に変化する誘起電圧を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測することが好適である。
【0010】
また、前記誘起電圧において前記励磁電流の基本周波数とは異なる周波数成分を発生させ、当該周波数成分を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測することが好適である。
【0011】
また、前記第1コイル配線に励磁電流を流したときに生ずる磁界を前記変調子によって変調させて前記第1コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数と異なる高調波成分を含む変調磁界を発生させ、前記変調磁界と前記第2コイル配線とを電磁気的に結合させて使用され、前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期と不等であることが好適である。
【0012】
また、前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期の1.5倍であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発熱を抑制しつつ、相対変位量の空間的な分解能を高めた変位検出装置を提供することができる。また、変位検出の感度も高めた変位検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における変位検出装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるステータ、スライダ及び変調子の形状及び配置を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態におけるステータ、スライダ及び変調子の形状を示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施の形態における変調子の構成の例を示す図である。
図5】変調子を設けていない場合の磁場を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における変位検出の方法を説明する図である。
図7】変調子を設けた場合の磁場を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における磁場強度及びコイル電圧の例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態におけるコイル電圧の基本波成分及び高調波成分を示す図である。
図10】変位検出装置の課題を説明する図である。
図11】本発明の変形例における変位検出の方法を説明する図である。
図12】本発明の変形例におけるスライダでの発生電圧を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[基本構成]
本発明の実施の形態における変位検出装置100は、図1に示すように、ステータ10、スライダ12、変調子14、電源16、フィルタ18及び信号処理部20を含んで構成される。
【0016】
変位検出装置100は、電源16からステータ10へ供給される電流によって磁界を発生させ、当該磁界を変調子14によって変調させたうえでスライダ12に作用させることによってステータ10に対するスライダ12の相対的な変位量を検出する。
【0017】
図2は、ステータ10、スライダ12及び変調子14の形状及び配置の1例を示す斜視図である。また、図3は、ステータ10、スライダ12及び変調子14の形状を明確にしめすための分解斜視図である。
【0018】
ステータ10は、変位検出装置100において、磁界を発生させるための第1コイル配線を含んで構成される。第1コイル配線は、導体を波形に蛇行する形状に形成したミアンダコイルとすることが好適である。ステータ10の第1コイル配線に対して励磁電流Iを流すことによって磁界を発生させることができる。
【0019】
ステータ10は、図2に示すように、第1コイル配線が蛇行する方向(X方向)に沿って、第1コイル配線の線幅W1、配線間ギャップG1及びピッチPstを有する。ピッチPstは、蛇行する方向(X方向)に沿った第1コイル配線の1周期分の幅である。
【0020】
スライダ12は、変位検出装置100において、ステータ10によって発生させた磁界を受けて電圧を発生させる第2コイル配線を含んで構成される。第2コイル配線は、導体を波形に蛇行する形状に形成したミアンダコイルとすることが好適である。
【0021】
スライダ12は、図2に示すように、第2コイル配線が蛇行する方向(X方向)に沿って、第2コイル配線の線幅W2、配線間ギャップG2及びピッチPslを有する。ピッチPslは、蛇行する方向(X方向)に沿った第2コイル配線の1周期分の幅である。
【0022】
変調子14は、変位検出装置100において、ステータ10によって発生させた磁界を空間的な周期を変調させる部材である。変調子14は、ステータ10を構成する第1コイル配線とスライダ12を構成する第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置して構成される。変調子14において、図3に示すように、ステータ10の第1コイル配線及びスライダ12の第2コイル配線が蛇行する方向(X方向)に対して交差している領域が変調子有効領域L3である。変調子14の変調子有効領域L3は、ステータ10及びスライダ12の少なくとも一部と重なり合うように配置される。
【0023】
図4は、変調子14の形状の例を示す。図4(a)に示すように、変調子14は、梯子形状の磁性体14aとすることができる。この場合、変調子14は、ステータ10を構成する第1コイル配線とスライダ12を構成する第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って、梯子形状の磁性体14aと間隙部分の空気とが交互に配置された構成となっている。磁性体14aを空気と透磁率の異なる材料とすることによって、磁性体14aが配置された領域と間隙の空気の領域との磁性が異なるものとなってステータ10によって発生させた磁界を空間的に変調させることができる。
【0024】
また、図4(b)に示すように、変調子14は、蛇行形状の磁性体14aとすることができる。すなわち、変調子14は、ステータ10を構成する第1コイル配線とスライダ12を構成する第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って、蛇行形状の磁性体14aと間隙部分の空気とが交互に配置された構成となっている。当該構成においても、磁性体14aを空気と透磁率の異なる材料とすることによって、磁性体14aが配置された領域と間隙の空気の領域との磁性が異なるものとなってステータ10によって発生させた磁界を空間的に変調させることができる。
【0025】
また、図4(c)に示すように、変調子14は、棒状の第1の磁性体14aを平板状の第2の磁性体14bに埋め込んだ構成とすることができる。すなわち、変調子14は、ステータ10を構成する第1コイル配線とスライダ12を構成する第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って、第1の磁性体14aと第2の磁性体14bとが交互に配置された構成となっている。第1の磁性体14aを第2の磁性体14bと透磁率の異なる材料とすることによって、第1の磁性体14aが配置された領域と第2の磁性体14bが配置された領域との磁性が異なるものとなってステータ10によって発生させた磁界を空間的に変調させることができる。
【0026】
なお、変調子14の形状は、上記例に限定されるものではなく、ステータ10を構成する第1コイル配線とスライダ12を構成する第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置したものであればよい。
【0027】
変調子14は、図2に示すように、ステータ10及びスライダ12が蛇行する方向(X方向)に沿って、磁性体14a(第1の磁性体14a)の線幅W3、磁性体14aのギャップG3(第2の磁性体14b)及びピッチPmを有する。ピッチPmは、ステータ10及びスライダ12が蛇行する方向(X方向)に沿った変調子14の1周期分の幅である。変調子14の線幅W3、ギャップG3及びピッチPmは、ステータ10の第1コイル配線の線幅W1、配線間ギャップG1及びピッチPstと異ならせる。
【0028】
電源16は、ステータ10を構成する第1コイル配線に接続され、ステータ10に交流の励磁電流Iを供給する。電源16からステータ10の第1コイル配線に励磁電流Iが供給されると磁場が発生する。スライダ12の第2コイル配線には、当該磁場に応じて電磁誘導によって電圧Vが誘起される。
【0029】
フィルタ18は、スライダ12に発生する電圧に対して所定の周波数成分のみを透過させるフィルタである。フィルタ18が透過する所定の周波数は、ステータ10からの磁場によってスライダ12に励起された電圧の周波数とすることが好適である。
【0030】
信号処理部20は、フィルタ18を介して得られたスライダ12に励起された電圧の変動からステータ10とスライダ12との相対的な位置変化を検出する。
【0031】
ステータ10とスライダ12との間に変調子14が設けられていない場合、励磁電流Iによって励起される磁場は、図5に示すように、ステータ10の第1コイル配線が蛇行する方向(X方向)に沿って、ステータ10のピッチPstの周期で変化する。このような磁場中において、図6に示すように、スライダ12が位置Aにある場合、ステータ10とスライダ12のパターンが一致するのでステータ10とスライダ12との電磁結合は正方向に最大になる。ステータ10及びスライダ12が蛇行する方向(X方向)に沿ってスライダ12を位置Aからスライダ12のピッチPslの1/4ずれた位置Bに移動させた場合、スライダ12の第2コイル配線がステータ10の第1コイル配線の中間に位置するのでステータ10とスライダ12との電磁結合は0になる。さらに、スライダ12を位置Aからスライダ12のピッチPslの1/2ずれた位置Cに移動させた場合、スライダ12の第2コイル配線は位置Aとは逆方向の関係になるのでステータ10とスライダ12との電磁結合は負方向に最大になる。さらに、スライダ12を位置Aからスライダ12のピッチPslの3/4ずれた位置Dに移動させた場合、スライダ12の第2コイル配線がステータ10の第1コイル配線の中間に位置するのでステータ10とスライダ12との電磁結合は0になる。第1コイル配線のピッチPstと第2コイル配線スライダのピッチPslが異なる場合は、互いの配線が重なる面積が最大である場合、ステータ10とスライダ12との電磁結合は正方向に最大になる。また、前述面積が最小である場合、ステータ10とスライダ12との電磁結合は負方向に最大になる。
【0032】
したがって、蛇行する方向(X方向)に沿ってステータ10に対してスライダ12が相対的に移動させられた場合、スライダ12に生ずる電圧の変動をカウントすることによって相対的な位置変化を検出することができる。
【0033】
ステータ10とスライダ12との間に変調子14が設けられている場合、励磁電流Iによって励起される磁場は、図7に示すように、ステータ10の第1コイル配線が蛇行する方向(X方向)に沿って変調子14によって変調される。
【0034】
変調子14によって変調された磁場は、数式(1)及び数式(2)の2つの高調波成分を持った磁界となる。ここで、Pstは、単位距離当たりのステータ10側の第1コイル配線の極数(ピッチ数)である。また、Pmは、単位距離当たりの変調子14の極数(ピッチ数)である。また、Pvは、単位距離当たりのスライダ12側の第2コイル配線に発生する電圧の周期である。
(数1)
|Pst+Pm|=Pv・・・(1)
(数2)
|Pst-Pm|=Pv・・・(2)
【0035】
図8は、ステータ10から生じ、変調子14を透過した後の磁場強度(太実線)と、スライダ12に生じた電圧の基本波(太破線)と高調波(細一点鎖線)について示す。図8では、1例として、ステータ10の極数が10、変調子14の極数が12の場合について示している。図9は、図8に示した磁場強度を高速フーリエ変換したときの周波数成分を示す。図9に示すように、ステータ10の極数が10、変調子14の極数が12の場合、極数10に基本波成分が表れ、極数22に数式(1)で示される高調波成分が表れる。
【0036】
信号処理部20は、蛇行する方向(X方向)に沿ってステータ10に対してスライダ12が相対的に移動させられた場合、スライダ12に生ずる電圧における当該高調波成分の変動をカウントすることによって相対的な位置変化を検出する。このようにスライダ12に生じた電圧に含まれる当該高調波成分を用いることによって、ステータ10とスライダ12との相対的な位置変化の空間的な分解能を高めることができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態における変位検出装置100によれば、相対変位量の空間的な分解能を高めた変位検出装置を提供することができる。また、ステータ10を構成する第1コイル配線及びスライダ12を構成する第2コイル配線の配線幅を狭くする必要がなく、相対変位量の空間的な分解能を高めると同時に発熱を抑えることができる。
【0038】
[変形例]
ステータ側ミアンダコイルとスライダ側ミアンダコイルとの間に変調子を配置することによって、図10に示すように、ステータ側ミアンダコイルによって生成される磁界が変調されて基本波に高調波が重畳された磁界が生成される。このような磁界に対して当該高調波と同周期で蛇行したスライダ側ミアンダコイルを配置した場合、発生する電圧が打ち消し合って当該周期の電圧が減少してしまう。したがって、変位検出装置として使用した際にノイズの影響が大きくなるという技術的な課題があった。
【0039】
本変形例では、スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslは、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pvと等しくならない(不等となる)ように設定する。特に、スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslは、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pvの1.5倍となるように設定することが好適である。
【0040】
図11は、スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslを、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pvの1.5倍となるように設定した例を示す。図に示すように、スライダ12の第2コイル配線において時計回り巻きのコイルとみなされる部分と鎖交する磁束は強め合い、第2コイル配線における電圧の打ち消し合いを抑制することができる。
【0041】
特に、スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslを、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pvの1.5倍となるように設定することによって、スライダ12に発生する電圧の高調波成分を増幅させる効果が高くなる。
【0042】
例えば、単位距離当たりのステータ10の第1コイル配線の極数(ピッチ数)Pstが10、単位距離当たりの変調子14の極数(ピッチ数)Pmが26である場合、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の基本波の周期は10になる。そして、|Pst+Pm|=|10+26|=36次と|Pst-Pm|=|10-26|=16次とが単位距離当たりのスライダ12側の第2コイル配線に発生する電圧の高調波の周期となる。
【0043】
スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslを、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pv(=36)に設定すると、図12において破線で示すように、スライダ12の第2コイル配線に発生する電圧において36次の高調波成分が打ち消し合わされて小さくなる。
【0044】
これに対して、スライダ12の第2コイル配線の極数(ピッチ数)Pslを、単位距離当たりのスライダ12の第2コイル配線に発生する電圧の周期Pv(=16)の1.5倍である24に設定すると、図12において実線で示すように、スライダ12の第2コイル配線に発生する電圧において16次及び36次の高調波成分が打ち消されず、スライダ12に発生する電圧を増幅させることができる。これによって、ステータ10とスライダ12との相対的な位置変化の検出感度を高めることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態における変位検出装置100によれば、相対変位量の空間的な分解能を高めつつ、変位検出の感度も高めることができる。
【0046】
[本願発明の構成]
[構成1]
蛇行する第1コイル配線を有するステータと、蛇行する第2コイル配線を有するスライダと、を前記第1コイル配線と前記第2コイル配線を平行に向かい合わせるように配置し、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との間に、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行形状が連続する方向に沿って磁性の異なる部材を交互に配置した変調子を設け、
前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測する変位検出装置。
[構成2]
構成1に記載の変位検出装置であって、
前記変調子における前記磁性の異なる部材の配置のピッチは、前記第1コイル配線及び前記第2コイル配線の蛇行のピッチと異なることを特徴とする変位検出装置。
[構成3]
構成1又は2に記載の変位検出装置であって、
前記変調子における前記磁性の異なる部材は、非磁性体と磁性体であることを特徴とする変位検出装置。
[構成4]
構成1~3のいずれか1項に記載の変位検出装置であって、
前記第1コイル配線の励磁電流を流したときに生ずる磁界が前記変調子を透過して前記第2コイル配線と電磁的に結合し、
前記ステータと前記スライダが相対移動したときの位置関係の変化に応じて、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線との電磁結合度が周期的に変化することで前記第2コイル配線に周期的に変化する誘起電圧を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測する変位検出装置。
[構成5]
構成4に記載の変位検出装置であって、
前記誘起電圧において前記励磁電流の基本周波数とは異なる周波数成分を発生させ、当該周波数成分を用いて前記ステータと前記スライダとの相対変位量を計測する変位検出装置。
[構成6]
構成1~5のいずれか1項に記載の変位検出装置であって、
前記第1コイル配線に励磁電流を流したときに生ずる磁界を前記変調子によって変調させて前記第1コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数と異なる高調波成分を含む変調磁界を発生させ、前記変調磁界と前記第2コイル配線とを電磁気的に結合させて使用され、
前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期と不等であることを特徴とする変位検出装置。
[構成7]
構成6に記載の変位検出装置であって、
前記第2コイル配線の前記蛇行方向に沿った単位距離当たりの極数は、前記変調磁界の前記高調波成分の前記蛇行方向に沿った周期の1.5倍であることを特徴とする変位検出装置。
【符号の説明】
【0047】
10 ステータ、12 スライダ、14 変調子、14a 第1の磁性体、14b 第2の磁性体、16 電源、18 フィルタ、20 信号処理部、100 変位検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
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図12