IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 晨暉生物科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特開2024-163005乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163005
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241114BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241114BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20241114BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241114BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20241114BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A23L33/135
A61K35/744
A61P1/00
A61P25/28
A23K10/18
C12R1:01
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012979
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】112117251
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】112143096
(32)【優先日】2023-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】511227222
【氏名又は名称】晨暉生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】潘子明
(72)【発明者】
【氏名】施宗偉
(72)【発明者】
【氏名】徐▲うぇい▼萱
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB03
2B150AC05
4B018MD86
4B018ME11
4B018ME14
4B065AA39X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA16
4C087ZA66
(57)【要約】
【課題】乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途を提供する。
【解決手段】本発明の主な目的は、乳酸菌及び腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供することであり、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する。本発明の別の目的は、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途、並びに前記乳酸菌の製品を提供することである。このほか、本発明の組成物は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及びバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長に影響を及ぼす能力を有することから、腸内微生物菌種組成が改善される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、乳酸菌。
【請求項2】
有効量の細胞外小胞を包含し、前記細胞外小胞は、乳酸菌から分泌され得るものであり、かつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物。
【請求項3】
前記有効量は、粒子個数濃度が少なくとも10個/ミリリットルの前記細胞外小胞であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞外小胞は、エクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、エクトソーム(ectosome)及びアポトーシス小体(apoptotic body)からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease,AD)の臨床経過に影響可能な腸内微生物菌種組成を改善する能力を有することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞外小胞は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及び/又はバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長への影響が可能となることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌綱の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌綱は、バクテロイディア綱(Bacteroidia)、クロストリジア綱(Clostridia)及びバシラス綱(Bacilli)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌科の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌科は、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、ムリバキュラ科(Muribaculaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジア科(Clostridiaceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、エガセラ科(Eggerthellaceae)、アッケルマンシア科(Akkermansiaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)及びユーバクテリア科(Eubacteriaceae)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞外小胞は、ムリバクルム属(Muribaculum)及び/又はラクノスピラ属(Lachnospira)の成長への影響が可能となることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外小胞は、好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)の成長を促進可能であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、栄養サプリメント。
【請求項12】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、食品製品。
【請求項13】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、ダイエタリーサプリメント。
【請求項14】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、食品添加剤。
【請求項15】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項16】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、飼料。
【請求項17】
乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内微生物菌種組成を改善する技術分野に係り、特に、新規な乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する腸内微生物菌種組成の改善のための組成物の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腸内微生物の組成及び変化は、人体の健康に関連し、腸管において複雑な神経系が分布しており、腸管と脳との間は、腸脳軸(Gut-brain axis)を介して相互に情報を伝えたり、影響したりしており、腸内微生物は、代謝物とその他の脳神経伝達物質(Neurotransmitters)を産生し、腸管細胞及び免疫細胞に影響を与えることから、宿主の胃腸機能に影響し、ひいては行為と感情表現に影響を及ぼす。
【0003】
腸内微生物は、各種の共生微生物を包含し、それは、主に細菌から構成されており、その大半が絶対嫌気性菌(Obligate anaerobes)であり、かつ主にバクテロイデス門(Bacteroidetes)、ファーミキューテス門(Firmicutes)、アクチノバクテリア門(Actinobacteria)及びプロテオバクテリア門(Proteobacteria)の4門に大別されている。このほか、研究によれば、バクテロイデス門とファーミキューテス門との構成比率は、疾患に応じて変動することを発見し、健康なヒトの腸内菌群においては、大量のバクテロイデス門を含有する一方で、疾病を患っている患者の腸内菌群においては、大量のファーミキューテス門を含有する。肥満(Obesity)患者の腸管において、バクテロイデス門の菌群が大量に減少してしまい、その内、多種の腸内プロバイオティクスの減少を含み、肥満患者の腸管において、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)は、数量が比較的低く、かつ肥満関連の代謝物とホルモン変化との関連性が示唆されており、疾患に関連するキー微生物を同定すると共に、それを標的治療として用いるには、高度の実行可能性が見込まれる。同時に、腸内微生物は、腸管の安定状態及び粘膜免疫系の完全性を維持する重要な役割を担っており、腸内微生物は、腸管の健全維持及び腸管のバリア透過性調節の手助けをすると考えられている。なおかつ、既に微生物菌群の多様性低下及び変化は、数多くの疾患及び機能障害に関連していることを証明する証拠が確認されており、その例として、肥満(Obesity)、炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:IBD)、自閉症(Autism)及び神経退行性疾患などが挙げられ、特定の腸内微生物は、疾患が異なる程度に進行するにつれて、それに伴って変動する場合がある(非特許文献1~非特許文献4を参照)。
【0004】
昨今、胃腸内菌相の調節制御は、大抵の場合、プロバイオティクスを直接服用することにより行われており、プロバイオティクスのコロニー形成による善玉菌(有益菌)の増加かつ悪玉菌(有害菌)の抑制という積極的な効果が奏され、現在でも糞便細菌叢移植(faecal microbiota transplant:FMT)の方式により、正常菌群を宿主の消化器系中に移植することがある。
【0005】
しかしながら、プロバイオティクスでは、コロニー形成ができないという問題が普遍的に存在することで、菌群に対する影響が限定的である。なおかつ、FMT治療には、未だ数多くの欠点があり、及び安全性については議論の余地が残されている。目下のところ、糞便細菌叢を入れる移植の取り組みは、主に上部消化管経由、中部消化管経由及び下部消化管経由を含み、その内、上部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植は、糞便細菌叢を経口投与することにより行われているが、その欠点は、微生物は、胆汁酸塩による影響を受けやすい点であり、その内、中部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植では、鼻腔チューブや経皮内視鏡胃管などの方式により操作し得るが、その欠点は、不適切な操作の場合、誤吸引及び逆流を発生するおそれがあり、かつ微生物も胆汁酸塩による影響を受けることになる点であり、その内、下部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植では、大腸内視鏡、浣腸や経内視鏡経腸チューブ留置術などの方式により操作を行い、その欠点は、糞便細菌叢は、S状結腸部位しか被覆されておらず、かつ糞便細菌叢移植を多数回行う必要がある点である。過去、FMTが安全な治療法の一つとして認知され、しかしながら、最新の臨床報告及び通達のあった米国食品医薬品局の症例によると、1名の病者が健康な提供者の糞便細菌叢を受け取るものの、しかし、その糞便細菌叢における大腸菌は、既に多種類の薬剤耐性遺伝子を有していることから、FMTのレシピエントを死に至らしめる危険が報告されている。このほか、現行の技術は、まだFMTの健康な細菌ドナーのその菌相における薬剤耐性遺伝子を有効に評価・判定することができないゆえに、FMTには、依然として潜在的なリスクを有している。
【0006】
本願の発明者は、現今の胃腸内菌相の調整制御方式の制限と欠点に鑑み、かつ腸内微生物の組成及び変化は、人体の健康及び数多くの疾患に密接に関連しているので、本願の発明者は、ナノ程度の球形脂質二重膜(Lipid bilayer)の使用、かつ核酸及びタンパク質などの成分構造を内包する細胞外小胞(Extracellular vesicles:EV)の使用ができるように切望されており、それが近隣細菌と交互に作用することにより、腸内微生物の組成及び変化を安全かつ有効に調節制御することが可能になる。これに鑑みて、本願の発明者は、鋭意に研究・発明した結果、遂に本発明の新規な乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途を研究・開発して完成するに至り、微量の微生物から分泌された細胞外小胞により腸管の健康を有効に改善する効能を達成することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liu et al. Nature Medicine 2017,23,859-868.
【非特許文献2】Hall et al. Genome Medicine 2017,9,103.
【非特許文献3】Finegold et al. Anaerobe 2010,16,444-453.
【非特許文献4】Scheperjans et al. Movement Disorders 2015,30,350-358.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、乳酸菌と、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物とを提供することを主な目的とし、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する。このほか、前記腸内微生物菌種組成の改善のための組成物は、経口摂取して使用するためのものとして提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、新規な乳酸菌を提案し、それは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【0010】
さらに、本発明は、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供し、それは、有効量の細胞外小胞を包含し、その内、前記細胞外小胞は、乳酸菌から分泌され得るものであり、かつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【0011】
上記の本発明の組成物中の前記有効量は、粒子個数濃度が少なくとも10個/ミリリットル(particles/ml)の前記細胞外小胞であり、なおかつかかる細胞外小胞は、エクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、エクトソーム(ectosome)及びアポトーシス小体(apoptotic body)からなる群より選択されるいずれか1つである。
【0012】
このほか、上記の本発明の組成物は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease,AD)の臨床経過に影響可能な腸内微生物菌種組成を改善する能力を有する。
【0013】
さらに、上記の本発明の組成物中のかかる細胞外小胞は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及び/又はバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長への影響が可能となる。
【0014】
同時に、かかる細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌綱の成長への影響も可能となり、かつ当該細菌綱は、バクテロイディア綱(Bacteroidia)、クロストリジア綱(Clostridia)及びバシラス綱(Bacilli)からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0015】
また、かかる細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌科の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌科は、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、ムリバキュラ科(Muribaculaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジア科(Clostridiaceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、エガセラ科(Eggerthellaceae)、アッケルマンシア科(Akkermansiaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)及びユーバクテリア科(Eubacteriaceae)からなる群より選択される少なくとも1つである。このほか、かかる細胞外小胞は、ムリバクルム属(Muribaculum)及び/又はラクノスピラ属(Lachnospira)の成長への影響も可能となる。
【0016】
さらに、上記のような本発明の組成物において、かかる細胞外小胞は、好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)の成長を促進可能である。
【0017】
一実施例において、本発明は、栄養サプリメントを提供し、前記栄養サプリメントは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0018】
一実施例において、本発明は、食品製品を提供し、前記食品製品は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0019】
一実施例において、本発明は、ダイエタリーサプリメントを提供し、前記ダイエタリーサプリメントは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0020】
一実施例において、本発明は、食品添加剤を提供し、前記食品添加剤は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0021】
一実施例において、本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0022】
一実施例において、本発明は、飼料を提供し、前記飼料は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0023】
本発明は、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途を提供することを別の目的とし、その内、前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。このほか、本発明は、腸内微生物菌種組成を改善する用途のための新規な乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞をも提供し、その内、前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物の応用を提供することをさらに別の目的とし、この種の応用は、食品、飲料品、健康食品、添加物、医療組成物などの日常生活において使いやすい製品形式を包含し、一般人に提供して服用してもらい、日常的に腸内の健康維持が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope:TEM)による観察で得られた本発明の乳酸菌の細胞外小胞の写真画像である。
図1B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞の平均粒径分布図である。
図2】本発明の乳酸菌の細胞外小胞をAPPNL-G-F/NL-G-Fトランスジェニックマウスに経口投与した後のマウスの腸内微生物物種の相対的豊富さを示す棒グラフである。
図3A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)との共培養の成長を示す折れ線グラフである。
図3B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と好酸性乳酸桿菌との共培養の成長を示す棒グラフである。
図4A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ラクノスピラ)との共同培養の成長を示す折れ線グラフである。
図4B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ラクノスピラ)との共同培養の成長を示す棒グラフである。
図4C】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ルミノコッカス)との共同培養の成長を示す折れ線グラフである。
図4D】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ルミノコッカス)との共同培養の成長を示す棒グラフである。
図5】本発明の乳酸菌の細胞外小胞とマウスの糞便微生物との反応を示す蛍光染色画像である。
図6A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞未添加のマウスの腸内微生物のフローセルソーターによる分析結果を示す図である。
図6B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞添加のマウスの腸内微生物のフローセルソーターによる分析結果を示す図である。
図7】本発明の乳酸菌の細胞外小胞を摂取したマウスの腸内微生物の種類の相対的豊富さを示す棒グラフである。
図8】ペディオコッカス・アシディラクティシを含む系統樹図である。
図9】CGPA01_1590-F/Rプライマー増幅生成物の電気泳動図である。
図10】MA18/5M_850-F/Rプライマー増幅生成物の電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般に理解している用語と同一の意味を有する。以下、実施例を用いて本発明の詳細について明示的に説明するが、これらの実施例は、あくまでも例示であって制限的なものではなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特段の説明がない限り、本発明に用いられる材料としては、全て入手が容易な市販のものが好ましく、以下に示す入手可能なルートは、単に例として示したものに過ぎない。
【0027】
本発明は、新規な乳酸菌及び腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供し、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含し、なおかつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。本願の発明者は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウス動物モデル(アミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子(Amyloid beta precursor protein gene:APP gene)のノックイン)を用いて実験を実施したところ、前記ペディオコッカス・アシディラクティシから分泌された細胞外小胞は、腸内微生物菌種組成を改善する新規な用途や機能を有することが分かった。
【0028】
このほか、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)は、本願の発明者が実験室においてニワトリの腸管から選別されて得られた新規な乳酸菌分離株である。
【0029】
本発明のペディオコッカス・アシディラクティシから分泌された細胞外小胞は、マウス動物モデルの分析により、マウスの腸内微生物の豊富さを有効に改善できることを発見し、即ち、前記細胞外小胞は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成を有効に改善することができ、前記トランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成を健康状態下と同様の微生物菌種組成に回復させることができる。
【0030】
前述の乳酸菌分離株は、その継代培養の後代又は突然変異株をも含むが、依然として本発明と同様のかかる菌種特性、ゲノム(genomic)又は用途(腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる)を有するものである。
【0031】
本文にかかる組成物は、栄養サプリメント、食品製品、ダイエタリーサプリメント、食品添加剤、動物用医薬組成物及びヒト用医薬組成物、飼料、飲料品、健康食品、動物飲用水添加物、動物飼料添加物、飲料添加物などの本発明に適用される製品の応用形式を包含してもよいが、それに限らない。
【0032】
用語「改善」とは、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞未使用の組成物よりも、前記ペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞を含む組成物は、腸内微生物菌種組成を有効に改善できることを意味する。
【0033】
用語「有効量」とは、疾患を有効に改善、治療又は恢復できるのに1個又は多個の腸内微生物菌種の活性成分の有効量を意味し、また「治療有効量」又は「改善有効量」とも称される。而して、用語「薬学的に許容可能」とは、物質又は組成物と、調合配合物のその他の成分との相容性が必要となり、かつ患者に対し無害であることを意味する。
【0034】
本発明の組成物は、この技芸を熟知する者が詳しく知っている技術を利用して、上記のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞を、薬学的又は食品的に許容可能な担体と共に本発明の組成物に適用される剤形に調製され得るものを指し、その内、前記剤形は、溶液(solution)、乳剤(emulsion)、懸濁液(suspension)、粉末(powder)、錠剤(tablet)、丸剤(pill)、口腔内崩壊錠(lozenge)、トローチ剤(troche)、カプセル(capsule)及びその他の本発明に類似又は適用の剤形を含むが、これらに限定されない。
【0035】
上記の組成物中には、製剤分野において通常使用される1種又は多種以上の溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、着色剤、香料、風味剤、賦形剤などを必要に応じて適宜に添加することもできる。
【0036】
別の好適な実施例において、本発明が提供する前述の組成物は、さらに可食性材料中に添加することができ、食品製品又は保健製品として調製され得るものであり、その内、前記可食性材料は、水(water)、液体乳製品(fluid milk product)、牛乳(milk)、濃縮牛乳(concentrated milk)、例えば、ヨーグルト(yogurt)、フローズンヨーグルト(frozen yogurt)、酸乳(sour milk)や乳酸菌発酵飲料(lactic fermenting beverage)などのような発酵乳(fermented milk)、粉乳(milk powder)、アイスクリーム(ice cream)、クリームチーズ(cream cheese)、ドライチーズ(dry cheese)、豆乳(soybean milk)、発酵豆乳(fermented soybean milk)、果物・野菜ジュース(fruit and vegetable juice)、ジュース(juice)、スポーツ飲料(sports drink)、砂糖菓子(confectionery)、ゼリー(jelly)、乳児用食品(baby food)、健康食品(health food)、動物飼料(animal feed)、ハーブ薬草(herbal medicine)、ダイエタリー補給剤(dietary supplement)などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
さらに、本発明は、腸内微生物菌種組成を改善するための方法をも提供し、それは、有効量の前述の組成物を腸疾病を患っている患者又はアルツハイマー病の患者の使用に供しており、その腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる。
【0038】
このほか、本発明は、前述のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその分泌された細胞外小胞の腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するために用いられる方法又は用途をも提供する。
【0039】
本発明が提供する組成物及びその腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる方法としては、その投与経路は、要求に応じて適当に調整されるものであれば、特に制限されるものではなく、そして好適な投与経路としては、適当な剤形に適する経口投与などが挙げられる。
【0040】
<菌株の由来>
本発明の以下の実施例で使用される好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)は、台湾新竹の財団法人食品工業発展研究所(Bioresource Collection and Research Center:BCRC)より購入した標準菌株:Lactobacillus acidophilus BCRC 14079である。本発明で使用されるラクノスピラ(Lachnospiraceae sp.)及びルミノコッカス(Ruminococcaceae sp.)は、それぞれアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)より購入した標準菌株:Lachnospiraceae sp. TSD-26及びRuminococcaceae sp. TSD-27である。本発明の新規な乳酸菌は、実験室においてニワトリの腸管から選別されて得られたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であり、なおかつ英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたものである。
【0041】
<動物の品種系統>
本発明の以下の実施例で使用される動物の品種系統は、アミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子のノックイン(knock-in)を使用したADモデルのAPPNL-G-F/NL-G-Fトランスジェニックマウス(Transgenic:TG)であり、そのAβ配列にスウェーデン型突然変異遺伝子(KM670/671NL)及びイベリア型突然変異遺伝子(I716F)を導入し、Aβ産生量を増加させ、及びAβ42/40比率を向上させるようにし、前記トランスジェニックマウスでは、記憶障害は6ヶ月齢で初めて現れ、統制群では、C57BL/6(非トランスジェニックマウス:non-TG)マウスを対照として使用した(参考文献1:Nilsson et al. ACS Chemical Neuroscience 2014,5,499-502)。
【0042】
<細胞外小胞の調製>
まず、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシを、MRS培地を用いて、37℃で24時間培養し、10,000×g、30分間遠心分離することで菌体を除去し、上清液を濾過した後、得られた濾液を247,537×g、4℃で超高速遠心分離を行ってから、上清液を除去した後、次に沈殿物をダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco’s phosphate buffered saline:DPBS)で洗浄し、得られた洗液を0.22μmの除菌膜で濾過したのち、再度247,537×g、4℃で超高速遠心分離を行ってから、上清液を除去し、沈殿物をDPBSに再溶解した後、細胞外小胞を得て-80℃保存した(参考文献2:Choi et al. Experimental Neurobiology 2019,28,158-171)。
【実施例0043】
<実施例1:本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)から分泌された細胞外小胞の形態特徴>
本実施において、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ培養液を超高速遠心分離方式で遠心分離することにより、その細胞外小胞(extracellular vesicles derived from lactic acid bacteria,以下、LAB-EVと略称)を純化すると共に、透過型顕微鏡を介して純化により取得された細胞外小胞(LAB-EV)の形態特徴を観察する。図1Aに示すように、前記細胞外小胞は、ナノ程度の球形脂質二重膜構造である。このほか、前記LAB-EVは、ダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco’s phosphate buffered saline:DPBS)による適当な希釈を経た後、さらにナノ粒子追跡分析器を用いて分析を行うことができ、希釈後の液体にレーザー光源を利用して照射すると共に、顕微鏡を介して散乱光ナノ粒子のブラウン運動が観察されることから、前記LAB-EVサンプルの平均粒子径と粒子個数(定量)を計算する。図1Bには、前記LAB-EVの平均粒径分布が示されており、かつ前記LAB-EVの平均粒子径が約125ナノ(nm)である。
【実施例0044】
<実施例2:本発明のペディオコッカス・アシディラクティシの細胞外小胞を経口投与した後、トランスジェニックマウスの腸内微生物物種の相対的豊富さ>
本実施例において、経口投与方式で1日当たり1回の投与量をマウス細胞外小胞(LAB-EV)に供与すると共に、マウスLAB-EVに4週間(weeks)供与した後、マウスを犠牲にしてから、マウスの腸内微生物物種の相対的豊富さを分析した。
【0045】
図2には、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシの細胞外小胞(LAB-EV)を経口投与した後のマウスの腸内微生物物種の相対的豊富さが示されており、その内、non-TG Veh:非トランスジェニックマウス(n=6)に溶剤を経口投与することを表し、TG Veh:トランスジェニックマウス(アミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子(Amyloid beta precursor protein gene:APP gene)のノックイン)(n=6)に溶剤を経口投与することを表し、TG LAB-EV:トランスジェニックマウス(APP遺伝子のノックイン)(n=6)にLAB-EVを経口投与することを表す。ここで、Veh(Vehicle)は、DPBSであり、LAB-EVの溶剤である。
【0046】
図2中からは、マウスの腸内菌相中の菌科の相対的豊かさのランキング上位10位の菌科の結果が示されており、そしてランキングでの上位10位以外のものをその他(others)として分類し、その内、ランキング上位10位の菌科は、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、ムリバキュラ科(Muribaculaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジア科(Clostridiaceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、エガセラ科(Eggerthellaceae)、アッケルマンシア科(Akkermansiaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ユーバクテリア科(Eubacteriaceae)を含む。このほか、図2の結果から見て分かるように、non-TG Vehマウス及びTG Vehマウスの腸管において、科階級の微生物の間に差異性を持ち、そしてTG LAB-EVマウスの腸内微生物組成は、non-TG Vehマウスと比較的に近似しており、つまり、トランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成は、LAB-EVの供与後にある程度改善されることが分かり、このこともまた、トランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成を一般のマウスの腸内菌と互いに類似するように回復させ得ることを表し、従って、LAB-EVは、トランスジェニックマウスの腸内微生物菌種を有効に改善することができ、マウスの腸内微生物菌種組成を健康状態下と同様の微生物菌種組成に回復させることができる。
【実施例0047】
<実施例3:本発明のペディオコッカス・アシディラクティシの細胞外小胞と好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)との共培養>
本実施例において、インビトロ試験を行うように、LAB-EVを好酸性乳酸桿菌と共培養を行うことにより、本発明のLAB-EVが好酸性乳酸桿菌の成長を促進する潜在能力を有するか否かを分析した。LAB-EVと好酸性乳酸桿菌とを共培養してから、波長600nmでの吸光度値を異なる時点で測定し、最後にそれぞれ図3A及び図3Bに示すような折れ線グラフ及び棒グラフが得られ、その内、3回繰り返したデータを平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で表し、統計解析を、一元配置分散分析を使用し、次いでテューキーの検定(Tukey’s test)での多重比較(Multiple group comparison)検定を使用して行い、顕着な差異には異なる英語アルファベットで標示が付けられている。
【0048】
図3A及び図3Bに示される結果から分かるように、LAB-EVは、好酸性乳酸桿菌の成長を促進し、かつ比較的高濃度のLAB-EVでは、好酸性乳酸桿菌の成長を促進する効果がより好ましく発揮され得ることが分かり、つまり、前記LAB-EVの好酸性乳酸桿菌の成長を促進する効果は、投与量に依存する効果を確認した。例えば、粒子個数濃度が1010個/ミリリットル(particles/mL)のLAB-EVと好酸性乳酸桿菌との共培養を行うときには、好酸性乳酸桿菌の成長を著しく増大させることができ、そして粒子個数濃度が10個/ミリリットルのLAB-EVと好酸性乳酸桿菌との共培養を行うときには、好酸性乳酸桿菌の成長を促進する効果は、それに次ぐものである。
【実施例0049】
<実施例4:本発明のペディオコッカス・アシディラクティシの細胞外小胞と腸内菌との共培養>
本実施例において、LAB-EVをそれぞれ腸内菌のラクノスピラ(Lachnospiraceae sp.)及びルミノコッカス(Ruminococcaceae sp.)と共培養を行ってから、波長600nmでの吸光度値を異なる時点で測定し、最後にそれぞれ図4A及び図4Cに示すような折れ線グラフが得られ、異なる時点で平板計数法を用いて菌数(Log CFU/mL)を求め、最後にそれぞれ図4B及び図4Dに示すような棒グラフが得られ、その内、3回繰り返したデータを平均値(Mean)±標準誤差(SEM)で表すと共に、顕着性のある差異(p<0.05)は、異なる英語アルファベットで表記されている。
【0050】
図4A図4B図4C及び図4Dに示される結果から分かるように、LAB-EVは、腸内細菌のラクノスピラ及びルミノコッカス両者の成長に対してなんらの影響を及ぼしておらず、なおかつ比較的高濃度のLAB-EVも比較的低濃度のLAB-EVも、腸内細菌のラクノスピラ及びルミノコッカス両者の成長に対してなんらの影響を及ぼしていないことが分かった。
【実施例0051】
<実施例5:LAB-EVとマウスの糞便微生物との反応による蛍光染色>
腸内微生物がLAB-EVを摂取するか否かを解明すると共に、LAB-EVを摂取可能な腸内細菌の種類を検討するために、本実施例において、10particles/mlのLAB-EVを(緑色)する一方で、マウスの糞便細菌をDRAQ5で染色(赤色)した後、マイクロウェルプレートに加え、その内、CFSEは、励起光の波長が492nmであり、発射光の波長が517nmであり、及びDRAQ5は、励起光の波長が647nmであり、発射光の波長が665nmであり、そしてCFSEは、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル染色試薬(Carboxyfluorescein succinimidyl ester)であり、及びDRAQ5は、アブカム(Abcam,Bristol,UK)より購入したものである。
【0052】
図5に示される結果を参照し、その内、赤色蛍光は、DRAQ5染色のマウスの糞便中の細菌菌体を標識し、かつ菌体は、桿状分布又は球状分布を有し、及び緑色蛍光は、CFSE染色のLAB-EVを標識し、そして両者の重合領域を黄色で標識する。前記試験結果から示すように、LAB-EVは、腸内微生物によって菌体内に摂取され、そして腸内微生物は、多種の細菌から構成されており、いくつかの菌体位置には緑色蛍光が重合しない場合があり、全て種類の細菌は、必ずしもLAB-EVを摂取するとは限らず、特定の菌群微生物のみが細胞外小胞を摂取することを表す。
【実施例0053】
<実施例6:LAB-EVのマウスの腸内細菌に摂取される可能性>
本実施例において、それぞれLAB-EV未添加のマウスの腸内微生物(図6A)及びLAB-EV添加のマウスの腸内微生物(図6B)をフローセルソーターに送り込んで分析を行い、その内、LAB-EV添加のマウスの腸内微生物とは、粒子個数(particles)が1010個のLAB-EVをCFSEで染色すると共に、37℃の嫌気性環境においてマウスの腸内菌(n=6)と反応することを指す。CFSEは、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル染色試薬(Carboxyfluorescein succinimidyl ester)である。
【0054】
図6Aに示される結果を参照し、その内、LAB-EV未添加のマウスの腸内微生物をフローセルソーターに送り込んで分析を行った後、菌群を選び出すと共に、この特定領域に対して分析を行い、選抜範囲は、1μm、2μm及び10μm大きさの細胞を包含しており、そして象限図中の腸内微生物の大多数がR8象限に入り、なおかつ菌群総体の約98.58%を占めることを見出した。
【0055】
図6Bに示される結果を参照し、その内、LAB-EV添加のマウスの腸内微生物をフローセルソーターに送り込んで分析を行った後、菌群の存在範囲を選び出し、それは同様に1μm、2μm及び10μm大きさの細胞を包含しており、そして象限図中では、前記複数の細胞は、大多数がR8
象限に入る以外にも、32.31%の細胞がR9象限内に入ることを見出した。
【0056】
以上の結果からは、その選抜範囲の細胞の大きさは、1μm、2μm及び10μmであり、かつこれらの長さは細菌の大きさと一致することを見出し、そしてLAB-EV未添加のマウスの腸内微生物を対照群として分析すれば、マウスの腸内菌群の介在範囲を知ることが可能となり、かつさらに蛍光染色のLAB-EVを加えた腸内微生物中に蛍光反応が観察され、マウスの腸管において一部の微生物がLAB-EVを摂取し、なおかつマウスの腸内微生物のうち、約32.31%の細菌がLAB-EVを摂取することを示す。
【実施例0057】
<実施例7:LAB-EVを摂取するマウスの腸内微生物の種類の解明>
本実施例においては、実施例6中のLAB-EVを摂取する腸内微生物を抽出して分取すると共に、塩基配列決定を行う。図7に示される結果を参照し、LAB-EVと反応する腸内微生物は、塩基配列決定を経由した後、前記複数の腸内微生物は、合計1つの界、9つの門、14つの綱。19つの目、37つの科、74つの属及び87つの種を含むことを見出した。相対的豊富さを示す棒グラフである図7中に示されるのは、異なる分類グループの細菌が全体に占める割合であり、そのうちのいずれも真正細菌であり、かつ大部分は、ファーミキューテス門及びバクテロイデス門であり、それぞれ各々約49%及び47%を占め、菌綱について、その内訳はバクテロイディア綱(Bacteroidia)で47%、クロストリジア綱(Clostridia)で44%、バシラス綱(Bacilli)で4%を占め、菌科については、33%を占めるラクノスピラ科(Lachnospiraceae)が最も多く、菌属及び菌種について、いずれもムリバクルム属(種)(Muribaculum / Muribaculum sp.)の22%及びラクノスピラ属(種)(Lachnospira / Lachnospira sp.)の19%は、上位2位を占めている。
【0058】
対照チェックを簡便に行えるために、相対的豊富さを示す棒グラフである図7においては、順次に下記の各分類の各種の微生物を含み、つまり、真正細菌界(Bacteria)と、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)及びファーミキューテス門(Firmicutes)と、バシラス綱(Bacilli)、クロストリジア綱(Clostridia)及びバクテロイディア綱(Bacteroidia)と、乳酸桿菌目(Lactobacillales)、クロストリジア目(Clostridiales)及びバクテロイデス目(Bacteroidales)と、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、リケネラ科(Rikenellaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)及びラクノスピラ科(Lachnospiraceae)と、アロプレボテラ属(Alloprevotella)、リケネラ属(Rikenella)、ブチリシコッカス属(Butyricicoccus)、 (ASF356)、ルミニクロストリジウム属(Ruminiclostridium)、アリスティペス属(Alistipes)、ラクノクロストリジウム属(Lachnoclostridium)、ロセブリア属(Roseburia)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、プレボテラ属(Prevotella)、ラクノスピラ属(Lachnospira)及びムリバクルム属(Muribaculaceae)と、アロプレボテラ(alloprevotella sp.)、リケネラ(Rikenellaceae sp.)、ブチリシコッカス(Butyricicoccus sp.)、芽胞形成クロストリジウム(ASF356 sp.)、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium sp.)、乳酸桿菌(Lactobacillus sp.)、アリスティペス(Alistipes sp.)、ラクノクロストリジウム(Lachnoclostridium sp.)、ロセブリア(Roseburia sp.)、バクテロイデス(Bacteroides sp.)、プレボテラ(Prevotella sp.)、ラクノスピラ(Lachnospiraceae sp.)及びムリバクラセアエ(Muribaculaceae sp.)とを含む。
【0059】
このほか、上記のような前記複数の実施例において、LAB-EVと好酸性乳酸桿菌との共培養及びLAB-EVと腸内微生物との蛍光染色試験において、LAB-EVは、特定の菌群微生物によって摂食されることを示し、かつフローセルソーター実験においても、約32.31%の腸内微生物は、LAB-EVを利用することを発見し、同時にさらなるシークエンシングにおいては、ムリバキュラ属(Muribaculaceae)及びラクノスピラ属(Lachnospiraceae)という2種の菌属は、LAB-EVを摂食する微生物のうち、豊かさが最も高いものであることをも発見し、それぞれ22%及び19%である。
【実施例0060】
<実施例8:本発明の新規なペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)菌株の同定・識別>
本実施例は、次世代のMiSeq(Illumina,Inc.,USA)及び次次世代のMinION(Oxford Nanopore Technologies,Inc.,UK)のシーケンサーのプラットホームを用いて、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)の完全なゲノム配列を解析し、ゲノムデータベース(例えば、GenBank、Ensembl、BioCycやRefSeqなど)の対比により、差異性を見つけ出す。GenBank中に登録されているペディオコッカス・アシディラクティシ種と同種のものを完全に組み立てる27個のゲノムと、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシとの同一性を分析した。下記表1に示すように、それは、FastANI v1.33を使用して本発明のペディオコッカス・アシディラクティシとの平均ヌクレオチド同一性(Average nucleotide identity:ANI)を計算する。而して、図8は、Roary v 3.11.2及びFastTree 2.1を用いて計算すると共に、描画された系統樹を示しており、それは、異株のペディオコッカス・アシディラクティシの間の遺伝的関係を表現する図である。ペディオコッカス・アシディラクティシのPB22は、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシと最も類似する菌株(ANI:99.16%)であり、なおかつ本発明のペディオコッカス・アシディラクティシと完全に相同のゲノムを有するペディオコッカス・アシディラクティシ株を発見することはなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
続いて、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシのDNA配列を有効に同定・識別するために、本実施例は、ゲノム変異区域を識別可能なプライマー(Primer)を設計することにより、同種異株のペディオコッカス・アシディラクティシを区別し、前記複数のプライマーを下記表2にまとめて示す。表3には、プライマー組合せの方式及び標的菌株の増幅配列が示され、RefSeqデータベース(データベースは、完全なゲノム、足場(scaffold)配列及びコンティグ(contig)配列を含む)の対比を経て、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシを識別するためのプライマー組合せCGPA01_1590-F/Rの増幅配列は、ペディオコッカス・アシディラクティシのMA18/5Mゲノムだけが同じ断片を有する一方で、MA18/5M_850-F/Rのプライマー組合せの増幅配列は、ペディオコッカス・アシディラクティシのMA18/5Mだけがこの断片を有し、しかもこの断片は、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシのゲノムに存在しない。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
継続的に、上記表2のプライマー組合せに対してポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)を行う。その内、PCRの反応総体積を20μlとし、0.1ngの菌株DNA、500nMのプライマー及び10μlのTaq DNA Polymerase Master Mix RED(Ampliqon A/S,DK)を内含する。PCRの反応条件としては、95℃で2分間(2 min)加熱した後、再び95℃で20秒間(20 sec)加熱し、60℃で30秒間(30 sec)を結合させてから、72℃で30秒間(30 sec)伸長させることであり、この条件でサイクルを30回繰り返して行う。最後に、72℃で5分間(5 min)を伸長させる。上記のPCR反応を完成した後には、PCR生成物を取り出すことができると共に、1.8%のアガロース(agarose)ゲルを用いて、1XTAE緩衝溶液中に、100Vの電圧で電気泳動を40分間行い、続いて、電気泳動ゲルシートをSYBR Safe染色試薬(Thermo Fisher Scientific,USA)で染色し、染色した前記電気泳動ゲルシートを青色光(470nm)のライトボックス内に置いて観察すると共に、画像を撮像してファイルに保存する。
【0066】
表4には、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ菌株の独特な配列を確認するための菌株が示される。本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ及びMA18/5Mを除き、表4に列記される菌株は、いずれも財団法人食品工業発展研究所の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center,Food Industry Research and Development Institute,,Hsinchu,Taiwan)より購入したものであり、なおかつ前記複数の菌株は、いずれもペディオコッカス属(Pediococcus)に属し、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・パルブルス(Pediococcus parvulus)及び同種異株のペディオコッカス・アシディラクティシを含む。ペディオコッカス・アシディラクティシのMA18/5M(別名:R1001)は、ジャロドフィルスEPS(Jarro-Dophilus EPS)(Jarrow Formulas,Inc.)製品中から分離することで得られたものである。
【0067】
【表4】
【0068】
図9を参照し、それは、CGPA01_1590-F/Rプライマー及びペディオコッカス属菌株DNAのPCR反応後の電気泳動図である。図9に示すように、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ及びMA18/5Mだけが115bpに明帯が出現する。図10を参照し、それは、MA18/5M_850-F/Rプライマーを使用して増幅することで得られた本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ株及びMA18/5MのDNAのPCR反応後の電気泳動図であり、図10に示すように、ペディオコッカス・アシディラクティシ株のMA18/5Mだけが505bpに明帯が出現する。
【0069】
上記を総合すると、ゲノム分析により、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシとペディオコッカス・アシディラクティシ株との間の差異性が掲示されており、その内、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシは、PB22ゲノムとの同一性が最高である。PCR及び特異性プライマーを用いて本発明のペディオコッカス・アシディラクティシとその他の公開のペディオコッカス属菌株とを区別し、プライマー組合せは、それぞれCGPA01_1590-F/R及びMA18/5M_850-F/Rである。CGPA01_1590-F/Rは、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ及びMA18/5Mだけを増幅し、しかもその他のペディオコッカス属菌株を増幅しない。このため、MA18/5M_850-F/Rプライマーに合わせて使用することを必要とし、これにより本発明のペディオコッカス・アシディラクティシとMA18/5Mとをさらに区別する。本発明のペディオコッカス・アシディラクティシには、CGPA01_1590-F/Rプライマー増幅明帯のみが出現し、ペディオコッカス・アシディラクティシのMA18/5Mには、CGPA01_1590-F/Rプライマー及びMA18/5M_850-F/Rプライマー増幅明帯が出現する。このほか、上記のゲノム分析及びPCR結果から分かるように、本発明が提供するペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)SWP-CGPA01は、新規な乳酸菌分離株であることが分かった。
【0070】
上記のように、本発明の新規な乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途を既に十分かつ明瞭に説明してきた。強調すべき点は、上記の詳細な説明は、本発明の実施可能な実施例を具体的に説明したものであり、本発明の特許範囲はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技芸精神を逸脱しない限り、その等効果実施又は変更は、なお、本願の特許請求の範囲内に含まれる点である。
【0071】
本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に2023年1月12日(受託日)付けて寄託されており、その受託番号はNCIMB 44102である。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024163005000001.xml