(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163005
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20241114BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241114BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241114BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241114BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20241114BHJP
C12R 1/01 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A23L33/135
A61K35/744
A61P1/00
A61P25/28
A23K10/18
C12R1:01
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012979
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】112117251
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】112143096
(32)【優先日】2023-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】511227222
【氏名又は名称】晨暉生物科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】潘子明
(72)【発明者】
【氏名】施宗偉
(72)【発明者】
【氏名】徐▲うぇい▼萱
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB03
2B150AC05
4B018MD86
4B018ME11
4B018ME14
4B065AA39X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA16
4C087ZA66
(57)【要約】
【課題】乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途を提供する。
【解決手段】本発明の主な目的は、乳酸菌及び腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供することであり、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する。本発明の別の目的は、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途、並びに前記乳酸菌の製品を提供することである。このほか、本発明の組成物は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及びバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長に影響を及ぼす能力を有することから、腸内微生物菌種組成が改善される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、乳酸菌。
【請求項2】
有効量の細胞外小胞を包含し、前記細胞外小胞は、乳酸菌から分泌され得るものであり、かつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物。
【請求項3】
前記有効量は、粒子個数濃度が少なくとも108個/ミリリットルの前記細胞外小胞であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞外小胞は、エクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、エクトソーム(ectosome)及びアポトーシス小体(apoptotic body)からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease,AD)の臨床経過に影響可能な腸内微生物菌種組成を改善する能力を有することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞外小胞は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及び/又はバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長への影響が可能となることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌綱の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌綱は、バクテロイディア綱(Bacteroidia)、クロストリジア綱(Clostridia)及びバシラス綱(Bacilli)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌科の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌科は、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、ムリバキュラ科(Muribaculaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジア科(Clostridiaceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、エガセラ科(Eggerthellaceae)、アッケルマンシア科(Akkermansiaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)及びユーバクテリア科(Eubacteriaceae)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞外小胞は、ムリバクルム属(Muribaculum)及び/又はラクノスピラ属(Lachnospira)の成長への影響が可能となることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外小胞は、好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)の成長を促進可能であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、栄養サプリメント。
【請求項12】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、食品製品。
【請求項13】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、ダイエタリーサプリメント。
【請求項14】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、食品添加剤。
【請求項15】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項16】
英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含することを特徴とする、飼料。
【請求項17】
乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であることを特徴とする、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内微生物菌種組成を改善する技術分野に係り、特に、新規な乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する腸内微生物菌種組成の改善のための組成物の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腸内微生物の組成及び変化は、人体の健康に関連し、腸管において複雑な神経系が分布しており、腸管と脳との間は、腸脳軸(Gut-brain axis)を介して相互に情報を伝えたり、影響したりしており、腸内微生物は、代謝物とその他の脳神経伝達物質(Neurotransmitters)を産生し、腸管細胞及び免疫細胞に影響を与えることから、宿主の胃腸機能に影響し、ひいては行為と感情表現に影響を及ぼす。
【0003】
腸内微生物は、各種の共生微生物を包含し、それは、主に細菌から構成されており、その大半が絶対嫌気性菌(Obligate anaerobes)であり、かつ主にバクテロイデス門(Bacteroidetes)、ファーミキューテス門(Firmicutes)、アクチノバクテリア門(Actinobacteria)及びプロテオバクテリア門(Proteobacteria)の4門に大別されている。このほか、研究によれば、バクテロイデス門とファーミキューテス門との構成比率は、疾患に応じて変動することを発見し、健康なヒトの腸内菌群においては、大量のバクテロイデス門を含有する一方で、疾病を患っている患者の腸内菌群においては、大量のファーミキューテス門を含有する。肥満(Obesity)患者の腸管において、バクテロイデス門の菌群が大量に減少してしまい、その内、多種の腸内プロバイオティクスの減少を含み、肥満患者の腸管において、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)は、数量が比較的低く、かつ肥満関連の代謝物とホルモン変化との関連性が示唆されており、疾患に関連するキー微生物を同定すると共に、それを標的治療として用いるには、高度の実行可能性が見込まれる。同時に、腸内微生物は、腸管の安定状態及び粘膜免疫系の完全性を維持する重要な役割を担っており、腸内微生物は、腸管の健全維持及び腸管のバリア透過性調節の手助けをすると考えられている。なおかつ、既に微生物菌群の多様性低下及び変化は、数多くの疾患及び機能障害に関連していることを証明する証拠が確認されており、その例として、肥満(Obesity)、炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:IBD)、自閉症(Autism)及び神経退行性疾患などが挙げられ、特定の腸内微生物は、疾患が異なる程度に進行するにつれて、それに伴って変動する場合がある(非特許文献1~非特許文献4を参照)。
【0004】
昨今、胃腸内菌相の調節制御は、大抵の場合、プロバイオティクスを直接服用することにより行われており、プロバイオティクスのコロニー形成による善玉菌(有益菌)の増加かつ悪玉菌(有害菌)の抑制という積極的な効果が奏され、現在でも糞便細菌叢移植(faecal microbiota transplant:FMT)の方式により、正常菌群を宿主の消化器系中に移植することがある。
【0005】
しかしながら、プロバイオティクスでは、コロニー形成ができないという問題が普遍的に存在することで、菌群に対する影響が限定的である。なおかつ、FMT治療には、未だ数多くの欠点があり、及び安全性については議論の余地が残されている。目下のところ、糞便細菌叢を入れる移植の取り組みは、主に上部消化管経由、中部消化管経由及び下部消化管経由を含み、その内、上部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植は、糞便細菌叢を経口投与することにより行われているが、その欠点は、微生物は、胆汁酸塩による影響を受けやすい点であり、その内、中部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植では、鼻腔チューブや経皮内視鏡胃管などの方式により操作し得るが、その欠点は、不適切な操作の場合、誤吸引及び逆流を発生するおそれがあり、かつ微生物も胆汁酸塩による影響を受けることになる点であり、その内、下部消化管経由の糞便細菌叢を入れる移植では、大腸内視鏡、浣腸や経内視鏡経腸チューブ留置術などの方式により操作を行い、その欠点は、糞便細菌叢は、S状結腸部位しか被覆されておらず、かつ糞便細菌叢移植を多数回行う必要がある点である。過去、FMTが安全な治療法の一つとして認知され、しかしながら、最新の臨床報告及び通達のあった米国食品医薬品局の症例によると、1名の病者が健康な提供者の糞便細菌叢を受け取るものの、しかし、その糞便細菌叢における大腸菌は、既に多種類の薬剤耐性遺伝子を有していることから、FMTのレシピエントを死に至らしめる危険が報告されている。このほか、現行の技術は、まだFMTの健康な細菌ドナーのその菌相における薬剤耐性遺伝子を有効に評価・判定することができないゆえに、FMTには、依然として潜在的なリスクを有している。
【0006】
本願の発明者は、現今の胃腸内菌相の調整制御方式の制限と欠点に鑑み、かつ腸内微生物の組成及び変化は、人体の健康及び数多くの疾患に密接に関連しているので、本願の発明者は、ナノ程度の球形脂質二重膜(Lipid bilayer)の使用、かつ核酸及びタンパク質などの成分構造を内包する細胞外小胞(Extracellular vesicles:EV)の使用ができるように切望されており、それが近隣細菌と交互に作用することにより、腸内微生物の組成及び変化を安全かつ有効に調節制御することが可能になる。これに鑑みて、本願の発明者は、鋭意に研究・発明した結果、遂に本発明の新規な乳酸菌、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物、並びに前記乳酸菌の製品及び用途を研究・開発して完成するに至り、微量の微生物から分泌された細胞外小胞により腸管の健康を有効に改善する効能を達成することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liu et al. Nature Medicine 2017,23,859-868.
【非特許文献2】Hall et al. Genome Medicine 2017,9,103.
【非特許文献3】Finegold et al. Anaerobe 2010,16,444-453.
【非特許文献4】Scheperjans et al. Movement Disorders 2015,30,350-358.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、乳酸菌と、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物とを提供することを主な目的とし、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含する。このほか、前記腸内微生物菌種組成の改善のための組成物は、経口摂取して使用するためのものとして提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、新規な乳酸菌を提案し、それは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【0010】
さらに、本発明は、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供し、それは、有効量の細胞外小胞を包含し、その内、前記細胞外小胞は、乳酸菌から分泌され得るものであり、かつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【0011】
上記の本発明の組成物中の前記有効量は、粒子個数濃度が少なくとも108個/ミリリットル(particles/ml)の前記細胞外小胞であり、なおかつかかる細胞外小胞は、エクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、エクトソーム(ectosome)及びアポトーシス小体(apoptotic body)からなる群より選択されるいずれか1つである。
【0012】
このほか、上記の本発明の組成物は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease,AD)の臨床経過に影響可能な腸内微生物菌種組成を改善する能力を有する。
【0013】
さらに、上記の本発明の組成物中のかかる細胞外小胞は、ファーミキューテス門(Firmicutes)及び/又はバクテロイデス門(Bacteroidetes)の成長への影響が可能となる。
【0014】
同時に、かかる細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌綱の成長への影響も可能となり、かつ当該細菌綱は、バクテロイディア綱(Bacteroidia)、クロストリジア綱(Clostridia)及びバシラス綱(Bacilli)からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0015】
また、かかる細胞外小胞は、少なくとも1つの細菌科の成長への影響が可能となり、かつ当該細菌科は、乳酸桿菌科(Lactobacillaceae)、ムリバキュラ科(Muribaculaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、クロストリジア科(Clostridiaceae)、デスルフォビブリオ科(Desulfovibrionaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、エガセラ科(Eggerthellaceae)、アッケルマンシア科(Akkermansiaceae)、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)及びユーバクテリア科(Eubacteriaceae)からなる群より選択される少なくとも1つである。このほか、かかる細胞外小胞は、ムリバクルム属(Muribaculum)及び/又はラクノスピラ属(Lachnospira)の成長への影響も可能となる。
【0016】
さらに、上記のような本発明の組成物において、かかる細胞外小胞は、好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)の成長を促進可能である。
【0017】
一実施例において、本発明は、栄養サプリメントを提供し、前記栄養サプリメントは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0018】
一実施例において、本発明は、食品製品を提供し、前記食品製品は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0019】
一実施例において、本発明は、ダイエタリーサプリメントを提供し、前記ダイエタリーサプリメントは、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0020】
一実施例において、本発明は、食品添加剤を提供し、前記食品添加剤は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0021】
一実施例において、本発明は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0022】
一実施例において、本発明は、飼料を提供し、前記飼料は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)を包含する。
【0023】
本発明は、腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するための乳酸菌の用途を提供することを別の目的とし、その内、前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。このほか、本発明は、腸内微生物菌種組成を改善する用途のための新規な乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞をも提供し、その内、前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、腸内微生物菌種組成の改善のための組成物の応用を提供することをさらに別の目的とし、この種の応用は、食品、飲料品、健康食品、添加物、医療組成物などの日常生活において使いやすい製品形式を包含し、一般人に提供して服用してもらい、日常的に腸内の健康維持が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope:TEM)による観察で得られた本発明の乳酸菌の細胞外小胞の写真画像である。
【
図1B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞の平均粒径分布図である。
【
図2】本発明の乳酸菌の細胞外小胞をAPP
NL-G-F/NL-G-Fトランスジェニックマウスに経口投与した後のマウスの腸内微生物物種の相対的豊富さを示す棒グラフである。
【
図3A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)との共培養の成長を示す折れ線グラフである。
【
図3B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と好酸性乳酸桿菌との共培養の成長を示す棒グラフである。
【
図4A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ラクノスピラ)との共同培養の成長を示す折れ線グラフである。
【
図4B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ラクノスピラ)との共同培養の成長を示す棒グラフである。
【
図4C】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ルミノコッカス)との共同培養の成長を示す折れ線グラフである。
【
図4D】本発明の乳酸菌の細胞外小胞と腸内菌(例えば、ルミノコッカス)との共同培養の成長を示す棒グラフである。
【
図5】本発明の乳酸菌の細胞外小胞とマウスの糞便微生物との反応を示す蛍光染色画像である。
【
図6A】本発明の乳酸菌の細胞外小胞未添加のマウスの腸内微生物のフローセルソーターによる分析結果を示す図である。
【
図6B】本発明の乳酸菌の細胞外小胞添加のマウスの腸内微生物のフローセルソーターによる分析結果を示す図である。
【
図7】本発明の乳酸菌の細胞外小胞を摂取したマウスの腸内微生物の種類の相対的豊富さを示す棒グラフである。
【
図8】ペディオコッカス・アシディラクティシを含む系統樹図である。
【
図9】CGPA01_1590-F/Rプライマー増幅生成物の電気泳動図である。
【
図10】MA18/5M_850-F/Rプライマー増幅生成物の電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般に理解している用語と同一の意味を有する。以下、実施例を用いて本発明の詳細について明示的に説明するが、これらの実施例は、あくまでも例示であって制限的なものではなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特段の説明がない限り、本発明に用いられる材料としては、全て入手が容易な市販のものが好ましく、以下に示す入手可能なルートは、単に例として示したものに過ぎない。
【0027】
本発明は、新規な乳酸菌及び腸内微生物菌種組成の改善のための組成物を提供し、その内、前記組成物は、前記乳酸菌及び/又はその分泌された細胞外小胞を包含し、なおかつ前記乳酸菌は、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)である。本願の発明者は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウス動物モデル(アミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子(Amyloid beta precursor protein gene:APP gene)のノックイン)を用いて実験を実施したところ、前記ペディオコッカス・アシディラクティシから分泌された細胞外小胞は、腸内微生物菌種組成を改善する新規な用途や機能を有することが分かった。
【0028】
このほか、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)は、本願の発明者が実験室においてニワトリの腸管から選別されて得られた新規な乳酸菌分離株である。
【0029】
本発明のペディオコッカス・アシディラクティシから分泌された細胞外小胞は、マウス動物モデルの分析により、マウスの腸内微生物の豊富さを有効に改善できることを発見し、即ち、前記細胞外小胞は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成を有効に改善することができ、前記トランスジェニックマウスの腸内微生物菌種組成を健康状態下と同様の微生物菌種組成に回復させることができる。
【0030】
前述の乳酸菌分離株は、その継代培養の後代又は突然変異株をも含むが、依然として本発明と同様のかかる菌種特性、ゲノム(genomic)又は用途(腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる)を有するものである。
【0031】
本文にかかる組成物は、栄養サプリメント、食品製品、ダイエタリーサプリメント、食品添加剤、動物用医薬組成物及びヒト用医薬組成物、飼料、飲料品、健康食品、動物飲用水添加物、動物飼料添加物、飲料添加物などの本発明に適用される製品の応用形式を包含してもよいが、それに限らない。
【0032】
用語「改善」とは、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞未使用の組成物よりも、前記ペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞を含む組成物は、腸内微生物菌種組成を有効に改善できることを意味する。
【0033】
用語「有効量」とは、疾患を有効に改善、治療又は恢復できるのに1個又は多個の腸内微生物菌種の活性成分の有効量を意味し、また「治療有効量」又は「改善有効量」とも称される。而して、用語「薬学的に許容可能」とは、物質又は組成物と、調合配合物のその他の成分との相容性が必要となり、かつ患者に対し無害であることを意味する。
【0034】
本発明の組成物は、この技芸を熟知する者が詳しく知っている技術を利用して、上記のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその細胞外小胞を、薬学的又は食品的に許容可能な担体と共に本発明の組成物に適用される剤形に調製され得るものを指し、その内、前記剤形は、溶液(solution)、乳剤(emulsion)、懸濁液(suspension)、粉末(powder)、錠剤(tablet)、丸剤(pill)、口腔内崩壊錠(lozenge)、トローチ剤(troche)、カプセル(capsule)及びその他の本発明に類似又は適用の剤形を含むが、これらに限定されない。
【0035】
上記の組成物中には、製剤分野において通常使用される1種又は多種以上の溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、着色剤、香料、風味剤、賦形剤などを必要に応じて適宜に添加することもできる。
【0036】
別の好適な実施例において、本発明が提供する前述の組成物は、さらに可食性材料中に添加することができ、食品製品又は保健製品として調製され得るものであり、その内、前記可食性材料は、水(water)、液体乳製品(fluid milk product)、牛乳(milk)、濃縮牛乳(concentrated milk)、例えば、ヨーグルト(yogurt)、フローズンヨーグルト(frozen yogurt)、酸乳(sour milk)や乳酸菌発酵飲料(lactic fermenting beverage)などのような発酵乳(fermented milk)、粉乳(milk powder)、アイスクリーム(ice cream)、クリームチーズ(cream cheese)、ドライチーズ(dry cheese)、豆乳(soybean milk)、発酵豆乳(fermented soybean milk)、果物・野菜ジュース(fruit and vegetable juice)、ジュース(juice)、スポーツ飲料(sports drink)、砂糖菓子(confectionery)、ゼリー(jelly)、乳児用食品(baby food)、健康食品(health food)、動物飼料(animal feed)、ハーブ薬草(herbal medicine)、ダイエタリー補給剤(dietary supplement)などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
さらに、本発明は、腸内微生物菌種組成を改善するための方法をも提供し、それは、有効量の前述の組成物を腸疾病を患っている患者又はアルツハイマー病の患者の使用に供しており、その腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる。
【0038】
このほか、本発明は、前述のペディオコッカス・アシディラクティシ及び/又はその分泌された細胞外小胞の腸内微生物菌種組成改善用組成物を調製するために用いられる方法又は用途をも提供する。
【0039】
本発明が提供する組成物及びその腸内微生物菌種組成を改善するために用いられる方法としては、その投与経路は、要求に応じて適当に調整されるものであれば、特に制限されるものではなく、そして好適な投与経路としては、適当な剤形に適する経口投与などが挙げられる。
【0040】
<菌株の由来>
本発明の以下の実施例で使用される好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)は、台湾新竹の財団法人食品工業発展研究所(Bioresource Collection and Research Center:BCRC)より購入した標準菌株:Lactobacillus acidophilus BCRC 14079である。本発明で使用されるラクノスピラ(Lachnospiraceae sp.)及びルミノコッカス(Ruminococcaceae sp.)は、それぞれアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)より購入した標準菌株:Lachnospiraceae sp. TSD-26及びRuminococcaceae sp. TSD-27である。本発明の新規な乳酸菌は、実験室においてニワトリの腸管から選別されて得られたペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)であり、なおかつ英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に受託番号NCIMB 44102として寄託されたものである。
【0041】
<動物の品種系統>
本発明の以下の実施例で使用される動物の品種系統は、アミロイドβ前駆体タンパク質遺伝子のノックイン(knock-in)を使用したADモデルのAPPNL-G-F/NL-G-Fトランスジェニックマウス(Transgenic:TG)であり、そのAβ配列にスウェーデン型突然変異遺伝子(KM670/671NL)及びイベリア型突然変異遺伝子(I716F)を導入し、Aβ産生量を増加させ、及びAβ42/40比率を向上させるようにし、前記トランスジェニックマウスでは、記憶障害は6ヶ月齢で初めて現れ、統制群では、C57BL/6(非トランスジェニックマウス:non-TG)マウスを対照として使用した(参考文献1:Nilsson et al. ACS Chemical Neuroscience 2014,5,499-502)。
【0042】
<細胞外小胞の調製>
まず、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシを、MRS培地を用いて、37℃で24時間培養し、10,000×g、30分間遠心分離することで菌体を除去し、上清液を濾過した後、得られた濾液を247,537×g、4℃で超高速遠心分離を行ってから、上清液を除去した後、次に沈殿物をダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco’s phosphate buffered saline:DPBS)で洗浄し、得られた洗液を0.22μmの除菌膜で濾過したのち、再度247,537×g、4℃で超高速遠心分離を行ってから、上清液を除去し、沈殿物をDPBSに再溶解した後、細胞外小胞を得て-80℃保存した(参考文献2:Choi et al. Experimental Neurobiology 2019,28,158-171)。
【実施例0043】
<実施例1:本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)から分泌された細胞外小胞の形態特徴>
本実施において、本発明のペディオコッカス・アシディラクティシ培養液を超高速遠心分離方式で遠心分離することにより、その細胞外小胞(extracellular vesicles derived from lactic acid bacteria,以下、LAB-EVと略称)を純化すると共に、透過型顕微鏡を介して純化により取得された細胞外小胞(LAB-EV)の形態特徴を観察する。
図1Aに示すように、前記細胞外小胞は、ナノ程度の球形脂質二重膜構造である。このほか、前記LAB-EVは、ダルベッコリン酸緩衝溶液(Dulbecco’s phosphate buffered saline:DPBS)による適当な希釈を経た後、さらにナノ粒子追跡分析器を用いて分析を行うことができ、希釈後の液体にレーザー光源を利用して照射すると共に、顕微鏡を介して散乱光ナノ粒子のブラウン運動が観察されることから、前記LAB-EVサンプルの平均粒子径と粒子個数(定量)を計算する。
図1Bには、前記LAB-EVの平均粒径分布が示されており、かつ前記LAB-EVの平均粒子径が約125ナノ(nm)である。