(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163006
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】不活性化システムを有する燃料電池システム及び航空機
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241114BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20241114BHJP
B64D 37/30 20060101ALI20241114BHJP
B64D 37/32 20060101ALI20241114BHJP
B64D 27/33 20240101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04791
H01M8/04 J
H01M8/04 H
B64D37/30
B64D37/32
B64D27/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017990
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】23172692
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504154506
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ベックス
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA22
5H127BA39
5H127BB02
5H127BB07
5H127DC35
(57)【要約】
【課題】 不活性化システムを有する燃料電池システム及び航空機を提供する。
【解決手段】 本開示は、燃料電池(110)と、燃料タンク(130)と、燃料タンク(130)を燃料電池(110)の燃料入口(116)と流体接続する燃料分配管(135)と、燃料分配管(135)の少なくとも一部を囲むシュラウド(137)と、窒素富化空気(NEA)及び酸素富化空気(OEA)を生成するように構成された不活性化システム(120)と、シュラウド(137)に窒素富化空気を導くNEA管(124)とを備える燃料電池システム(100)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(110)と、
燃料タンク(130)と、
前記燃料タンク(130)を前記燃料電池(110)の燃料入口(116)と流体接続する燃料分配管(135)と、
前記燃料分配管(135)の少なくとも一部を囲むシュラウド(137)と、
窒素富化空気(NEA)及び酸素富化空気(OEA)を生成するように構成された不活性化システム(120)と、
前記シュラウド(137)に前記窒素富化空気を導くNEA管(124)と
を備える、
燃料電池システム(100)。
【請求項2】
前記燃料電池(110)の酸化剤入口(114)に前記酸素富化空気を導くOEA管(122)
をさらに備える、
請求項1に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項3】
前記不活性化システム(120)に加圧空気(121)が供給される、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項4】
前記燃料タンク(130)が水素を貯蔵する、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム(100)。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の燃料電池システム(100)を少なくとも1つ備える、
航空機(1)。
【請求項6】
前記燃料電池(110)によって生成されたエネルギーが供給されるエンジン(50)
をさらに備える、
請求項5に記載の航空機(1)。
【請求項7】
液体燃料タンク(60)と、
前記液体燃料タンク(60)から液体燃料が供給されるエンジン(50)と
をさらに備え、
前記燃料電池システム(100)の前記不活性化システム(120)が、前記液体燃料タンク(60)に前記窒素富化空気を導くさらなるNEA管(139)をさらに備える、
請求項5に記載の航空機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、不活性化システムを有する燃料電池システム、及びそのような燃料電池システムを備える航空機に関する。特に、本開示は、燃料電池システムに関し、シュラウドは燃料分配管を囲み、不活性化システムはシュラウドに導かれる窒素富化空気を生成する。さらにまた、そのような燃料電池システムを有する航空機も開示される。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、水素を導く1つ又は複数の管などの、水素分配を備える。水素分配から水素が漏出又浸透することがあるので、水素分配のベントが必要である。いくつかのシステムは、漏出又は浸透した水素を収集するために、シュラウド管を提供する。
【0003】
しかしながら、シュラウド内の水素レベルを検出するために、シュラウド管のセンサシステムが必要である。そうしなければ、水素の蓄積により、爆発性混合物及び/又は水素の非制御燃焼のリスクが増加することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本開示の目的は、改良された燃料電池システム、特に、より安全な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項で定義されるように、本発明によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項によって定義される。
【0006】
本開示をよりよく理解する第1の態様によると、燃料電池システムは、燃料電池と、燃料タンクと、燃料タンクを燃料電池の燃料入口と流体接続する燃料分配管と、燃料分配管の少なくとも一部を囲むシュラウドとを備える。よって、シュラウドは、燃料分配管を包み(すなわち、燃料分配のためのシュラウド管を形成し)、燃料分配管から漏出又は浸透する水素の捕捉又は収集を可能にする。
【0007】
燃料電池システムは、1つより多い燃料タンク及び/又は1つより多い燃料電池を備えてもよく、そのため、1つより多い燃料分配管がシステムに存在し、燃料分配を一緒に形成することが理解されるべきである。燃料分配の任意の部分、又は、燃料分配全体(すべての燃料分配管)は、そのようなシュラウドを備えることができる。
【0008】
さらにまた、燃料電池システムは、窒素富化空気(NEA)及び酸素富化空気(OEA)を生成するように構成された不活性化システムを備える。そのような不活性化システムは、気流を受け入れて、受け入れた気流よりも多くの窒素を含有する第1の部分と、受け入れた気流よりも多くの酸素を含有する第2の部分とに気流を分割する任意のシステムとすることができる。
【0009】
燃料電池システムは、シュラウドへ窒素富化空気を導くNEA管も備える。よって、燃料分配管は、窒素富化空気によって囲まれる。換言すれば、より少ない酸素を含有する又は酸素を含有しないガスで実際の燃料管を囲む、燃料分配のためのシュラウド管が形成される。燃料分配管から漏出又は浸透する、水素、メタン、又は燃料電池の他の燃料などの任意の燃料は、酸素と接触しない。したがって、(最終的に燃焼又は爆発の燃焼につながる)燃料及び酸素の危険な混合物を有するリスクは、大きく減少する。
【0010】
さらにまた、不活性化システムが窒素富化空気を連続的に生成することができるので、シュラウドを通るNEAの流れを実現することができる。NEAのこの流れは、燃料分配の外側に燃料分配管から漏出又は浸透する任意の燃料を、NEA流れによって排出又は輸送している。よって、シュラウドの内側に燃料検出システムは必要ない。
【0011】
実施態様の変形において、燃料電池システムは、燃料電池の酸化剤入口へ(不活性化システムからの)酸素富化空気を導くOEA管をさらに備えることができる。よって、酸素富化空気は、燃料電池の酸化剤入口に通常の空気を提供することと比較して、燃料電池の性能向上を可能にする。よって、燃料電池システムを、より効率的に且つより安全に作動させることができる。同時に、燃料電池システムの全体重量は、わずかにのみ増加することがある。すなわち、不活性化システムは、全体重量を増加させることがあり、その一方で、燃料電池自体は、より高い効率のために、より小さく、よって、より軽く設計することができる。
【0012】
別の実施態様の変形において、燃料電池システムは、燃料分配管に圧力センサを備えることができる。圧力センサが圧力低下を示す場合、燃料分配管からの燃料の漏出を検出することができる。そのような圧力センサは、たとえば、燃料電池の燃料入口における燃料圧力を検知するために、従来の燃料電池システムにすでに含まれていることがある。
【0013】
さらなる実施態様の変形において、不活性化システムは、加圧空気を供給することができる。これにより、NEA及びOEAのより高い効率及びより大きな出力流れで、不活性化システムを作動させることができる。
【0014】
さらに別の実施態様の変形において、燃料タンクは水素を貯蔵することができる。水素は、非常に揮発性のガスであり、他のガスと比較して、燃料分配管からより簡単に漏出又は浸透することができる。よって、開示される燃料電池システムは、水素作動式燃料電池に関して、特に安全である。
【0015】
本開示をよりよく理解する第2の態様によると、航空機は、第1の態様又はその変形の1つによる少なくとも1つの燃料電池システムを備える。単なる例として、航空機は、航空機の特定の制御構成要素を作動させるための電気を発生させるために、燃料電池を採用してもよい。
【0016】
実施態様の変形において、航空機は、燃料電池によって生成されたエネルギーが供給されるエンジンをさらに備えることができる。たとえば、燃料電池は、電気を発生させることができ、それは、航空機を推進する電気モータを駆動するために使用される。
【0017】
別の実施態様の変形において、航空機は、液体燃料タンクと、液体燃料タンクから液体燃料が供給されるエンジンとをさらに備えることができる。液体燃料タンク内の液体燃料は、灯油、ガソリン、ディーゼル油、又は同様のものとすることができる。よって、航空機のエンジンは、航空機の従来のモータ及び/又はジェットエンジンとすることができる。単なる例として、液体燃料タンクは、航空機の翼内に配置することができる。
【0018】
さらにまた、燃料電池システムは、液体燃料タンクに不活性化システムからの窒素富化空気を導くさらなるNEA管をさらに備えることができる。よって、さらなるNEA管は、シュラウドに窒素富化空気を導くNEA管とは異なる。
【0019】
いかなる場合でも、不活性化システムは、航空機の従来の不活性化システムとすることができ、それは、液体燃料タンクにNEAを充填するために設置される。よって、不活性化システムは、燃料電池システムのためにさらに使用することができ、そのため、航空機の効率的な作動が可能である。同様に、不活性化システムからのOEAは、より高いレベルの酸素によるより効率的な方法で燃料電池を作動させるために採用することができる。
【0020】
本開示は、記載された形態及び順序の態様及び変形に限定されない。特に、態様及び変形の説明は、特定の限定的なグループの特徴として理解されるべきではない。本開示が態様及び変形の組合せも包含することが理解されるべきである。よって、各変形の特徴又は任意選択の特徴は、任意の他の態様、変形、任意選択の特徴、又はさらにその組合せと組み合わせることができる。
【0021】
以下において、本開示は、図に示される例示的な実施態様に関してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】燃料電池システムを有する航空機を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明において、限定目的ではなく説明目的のために、特定の詳細が、本開示の詳細な理解を提供するために示される。本開示がこれらの特定の詳細から離れる他の実施態様で実施されてもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0024】
図1は、燃料電池110を備える燃料電池システム100を概略的に示す。燃料電池110は、燃料及び酸化剤が反応する、電気化学反応を行うように構成され、たとえば、水素及び酸素、或いは、メタン、プロパン、又は他の液体若しくは気体燃料が、酸化剤からの酸素と反応し、電気エネルギーは、燃料電池110によって生成されて、供給される。たとえば、燃料電池110は、酸化剤入口114と燃料入口116とを有する。さらにまた、燃料電池110は、エネルギー端子112及び/又は(増加する重力のための1つの出口として示される)水出口113を有する。
【0025】
さらにまた、燃料電池システム100は、図示される水素タンク130などの、燃料タンク130を備える。燃料タンク130は、燃料分配管135を介して、燃料電池110、特に、燃料入口116に流体接続される。ことに留意されたい。燃料分配管135は、単に説明目的のためであるその図示されたサイズに関係なく、燃料タンク130から燃料電池110の燃料入口116まで延在することができる。
【0026】
燃料電池システム100は、燃料分配管135の少なくとも一部を囲むシュラウド137を備える。換言すれば、燃料タンク130からの燃料は、シュラウド管135/137を通って、燃料電池110の燃料入口116まで流れている。シュラウド137は、燃料分配管135とシュラウド137との間に内部空間を形成し、燃料分配管135を通して漏出又は浸透する任意の燃料を、収集及び蓄積することができる。
【0027】
さらに、燃料電池システム100は、窒素富化空気(NEA)及び酸素富化空気(OEA)を生成するように構成された不活性化システム120を備える。そのような不活性化システム120は、任意の従来の不活性化システム120とすることができる。単なる例として、入口121において、不活性化システム120には、空気(たとえば、加圧空気)が提供される。不活性化システム120は、NEA及びOEAのためのそれぞれの出口を備える。
【0028】
燃料電池システム100は、不活性化システム120によって生成される酸素富化空気及び窒素富化空気をそれぞれ導くOEA管122及びNEA管124を備える。たとえば、NEA管124は、シュラウド137に窒素富化空気(NEA)を導く。これにより、窒素富化空気、すなわち、酸素貧化空気で、燃料分配管135を囲むことができ、燃料分配管135を通して燃料が漏出又は浸透した場合の、燃料及び酸素の爆発性混合物のリスクが大きく減少する。
【0029】
燃料分配管135からの漏出又は燃料の浸透を検出するために、たとえば、燃料電池110の燃料入口116に、圧力センサ(明示的に図示されていない)を設けることができる。そのような圧力センサは、燃料電池110の作動状態に応じて、十分な量の燃料を提供するために、燃料電池110の通常作動のために、いずれにしても、必要とされることがある。
【0030】
さらに、燃料電池システム100は、燃料分配管135から漏出又は浸透した燃料の(小さい)一部を含んでもよい、周囲環境又はNEAに対処することができる別の構成要素に、シュラウド137からNEAを導くNEA排出管138を含むことができる。不活性化システム120は、シュラウド137を通して且つNEA排出管138を通して案内されるNEAを連続的に生成することができるので、燃料分配管135から離れるように、漏出又は浸透された燃料を搬送するNEAの連続流れを実現することができる。これは、燃料電池システム100の安全性をさらに向上させる。
【0031】
図2は、そのような燃料電池システム100を備える航空機1を概略的に示す。航空機1は、燃料電池110によって生成されたエネルギーが加えられるエンジン50を備えることができる。
図2は、単一のラインによるエンジン50と燃料電池システム100との間の接続を示し、それは、燃料電池端子112とエンジン50との間の電気的接続を表すことができる。
【0032】
代替的に又は付加的に、航空機1は、エンジン50及び液体燃料タンク60を備えることができ、エンジン50は、液体燃料タンク60から液体燃料を供給される(そのような液体燃料管は簡潔さのために
図2には示されていない)。1つより多い液体燃料タンク60を設けることができることが理解されるべきである。
図2は、簡潔さのために、1つの液体燃料タンク60のみ示す。よって、従来のプロペラ及び/又はジェットエンジン50を、航空機1で採用することができる。燃料電池システム100の不活性化システム120は、液体燃料タンク60に導かれるNEAを生成するために使用することができる。そのような不活性化システム120は、液体燃料タンク60を有する航空機1の大部分で一般的である。
【0033】
さらにまた、不活性化システム120には、ジェットエンジン50からの抽気などの、エンジン50からの加圧空気を提供することができる。そのような加圧空気は、不活性化システム120によってNEA及びOEAに分離される。
【0034】
液体燃料タンク60に導かれるNEAは、シュラウド137とは別に、たとえば、さらなるNEA管139(
図1)を介して、不活性化システム120のNEA出口124から直接、提供されてもよい。
図2は、簡潔さのために、液体燃料タンク60と燃料電池システム100との間に1つの管のみ示すが、より多くの管及びラインが設けられてもよい。
【0035】
よって、重量、エネルギー、及び資源の相乗効果を、航空機1で活用することができる。たとえば、液体燃料で推進される航空機1の場合、燃料電池システム100のために追加の不活性化システム120は必要ない。さらに、電気エネルギーは、より安全な方法で航空機1の燃料電池110で発生させることができる。
【0036】
本明細書に示される技術の利点は前述の説明から完全に理解されると信じられ、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、又は、その有利な効果のすべてを犠牲にすることなく、その例示的な態様の形態、構造、及び配置においてさまざまな変更が行われてもよいことは明らかであろう。本明細書に示される技術が多くの方法で変化させることができるので、本開示は後に続く特許請求の範囲によってのみ限定されるべきであることは認識されるであろう。
【符号の説明】
【0037】
1 航空機
50 エンジン
60 液体燃料タンク
100 燃料電池システム
110 燃料電池
112 エネルギー端子
113 水出口
114 酸化剤入口
116 燃料入口
120 不活性化システム
121 加圧空気
122 OEA管
124 NEA管
130 燃料タンク
135 燃料分配管
137 シュラウド
138 NEA排出管
139 NEA管