(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163008
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】計時器用の潤滑剤を包装するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
B65D 83/76 20060101AFI20241114BHJP
B65B 3/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B65D83/76
B65B3/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023584
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】23172343.8
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ボスコ タン カイ・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアン・モステイロ バスケス
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・デプラン
【テーマコード(参考)】
3E014
3E118
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC03
3E014PD11
3E014PE14
3E014PE21
3E118AA20
3E118AB15
3E118BB16
(57)【要約】
【課題】 時間の経過に伴う潤滑剤の劣化を最小限に抑えつつ、きれいなオイルを安全に担持し、混乱してしまうことなく容易に識別可能であることを可能にするような、潤滑剤を包装するためのデバイスを提供する。
【解決手段】 本発明は、潤滑剤(2)を収容するように意図された中空の毛細管(1)を備える、潤滑剤を包装するための包装デバイスに関し、毛細管には、一方において、毛細管(1)内において長手方向に運動可能な可動ロッド(4)と連係するように構成しているピストン(3)によって閉じられる第1の開口(10)があり、他方において、可動ロッド(4)を利用してピストン(3)に圧力が与えられたときに潤滑剤(2)が中を流れる自由な第2の開口(11)とがある。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤(2)を収容するように意図された中空の毛細管(1)を備える、潤滑剤を包装するための包装デバイスであって、
前記毛細管には、一方において、前記毛細管(1)内において長手方向に運動可能な可動ロッド(4)と連係するように構成しているピストン(3)によって閉じられる第1の開口(10)があり、他方において、前記可動ロッド(4)を利用して前記ピストン(3)に圧力が与えられたときに潤滑剤(2)が中を流れる自由な第2の開口(11)とがある
ことを特徴とする包装デバイス。
【請求項2】
前記毛細管(1)は、ガラスによって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項3】
前記ピストン(3)は、ワックス又はポリマー材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項4】
前記可動ロッド(4)は、プラスチック材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項5】
前記毛細管(1)の長さは、20mm~150mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項6】
前記毛細管(1)の内径は、0.6mm~2mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項7】
前記毛細管(1)には、色づけされたロケーター(5)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項8】
前記毛細管(1)の長さ(L)は、前記可動ロッド(4)の長さ(lt)と前記ピストン(3)の長さ(lp)の和よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の包装デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の包装デバイスと、
輸送中に前記毛細管(1)をシールしておくために前記毛細管(1)の前記開口(10、11)それぞれに配置されるプラグ(6)とを備える
ことを特徴とする包装キット。
【請求項10】
請求項1に記載の包装デバイスの毛細管(1)に充填する方法であって、
第1の開口(10)と第2の開口(11)がある毛細管(1)を用意するステップと、
色づけされたロケーター(5)を前記第1の開口(10)の近くに形成するステップと、
前記第1の開口(10)を介して前記毛細管(1)内にて0.02ml~0.1mlの潤滑剤(2)を入れるステップと、
前記毛細管(1)の前記第1の開口(10)を通してピストン(3)を挿入するステップとを備え、
場合に応じて、前記毛細管(1)の前記第1及び第2の開口(10、11)を塞ぐようにプラグ(6)を配置するステップを備える
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用の潤滑剤を包装するためのデバイスに関する。
【0002】
本発明は、ファインメカニクスのための道具、特に、時計技師のための道具、より具体的には、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)又は計時器の潤滑のための道具の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
計時器の潤滑は、必要不可欠な操作であり、そのための道具は、自動給油器とオイル容器、そして、使用する様々なオイルを包装する手段を除けばほとんどない。しかし、包装手段のような一部の道具は、特に包装ボトルの量と時計技師が使用する量の観点から、時計技師のニーズに合っていない。
【0004】
従来技術において使用される包装方法は、一般的には、操作者にとって多すぎる量の潤滑剤を使用して、その潤滑剤がボトル内に長期間残ることになる。これによって、ボトルが開いた後には、時間の経過とともに潤滑剤の保管が最適ではなくなって潤滑剤の性質が劣化してしまい、このことは、ボトルに残る潤滑剤を使用することができなくなって廃棄しなければならなくなれば損失が発生してしまうことを暗に意味する。また、ボトルから少量を取り出すために時計技師がねじ回しを使用することがあり、このことによって、ボトル内の潤滑剤が汚染してしまい、潤滑剤の劣化を早くしてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に、上記のような従来技術の様々な課題を解決することを目的とする。
【0006】
具体的には、本発明は、時間の経過に伴う潤滑剤の劣化を最小限に抑えつつ、きれいなオイルを安全に担持し、混乱してしまうことなく容易に識別可能であることを可能にするような、時計技師の介入のための、潤滑剤を包装するためのデバイスを提供することを目的とする。現状はそのための良好なコンパクトな手法がない。
【0007】
本発明は、さらに、非常に少量の潤滑剤を包装するためのデバイスを時計技師に与える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、潤滑剤を収容するように意図された中空の毛細管を備える、潤滑剤を包装するための包装デバイスに関し、前記毛細管には、一方において、前記毛細管内において長手方向に運動可能な可動ロッドと連係するように構成しているピストンによって閉じられる第1の開口があり、他方において、前記可動ロッドを利用して前記ピストンに圧力が与えられたときに潤滑剤が中を流れる自由な第2の開口とがある。
【0009】
本発明の他の好ましい変異形態は、以下の特徴を有する。
- 前記毛細管は、ガラスによって作られている。
- 前記ピストンは、ワックス又はポリマー材料によって作られている。
- 前記可動ロッドは、プラスチック材料によって作られている。
- 前記毛細管の長さは、20mm~150mmの範囲内である。
- 前記毛細管の内径は、0.6mm~2mmの範囲内である。
- 前記毛細管には、色づけされたロケーターがある。
- 前記毛細管の長さは、前記可動ロッドの長さと前記ピストンの長さの和よりも大きい。
【0010】
本発明は、さらに、本発明に係る潤滑剤を包装するためのデバイスと、輸送中に毛細管をシール状態に保つために毛細管の各開口に配置されるプラグとを備える潤滑キットに関する。
【0011】
本発明は、さらに、本発明に係る潤滑剤を包装するための包装デバイスの毛細管を充填する方法に関し、この方法は、
- 第1の開口と第2の開口がある毛細管を用意するステップと、
- 色づけされたロケーターを前記第1の開口の近くに形成するステップと、
- 前記第1の開口を介して前記毛細管内にて0.02ml~0.1mlの潤滑剤を入れるステップと、
- 前記毛細管の前記第1の開口を通してピストンを挿入するステップとを備え、
- 場合に応じて、前記毛細管の前記第1及び第2の開口を塞ぐようにプラグを配置するステップを備える。
【0012】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る包装デバイスの毛細管を上から見た図である。
【
図2】本発明に従って使用される包装デバイスを上から見た図である。
【
図3】本発明に係る包装デバイスの毛細管の断面図である。
【
図4】本発明に係るデバイスの包装キットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係る包装デバイスを上から見た概略図である。
【0015】
図1に示しているように、潤滑剤2を包装するためのデバイスは、潤滑剤2を収容するように意図された中空の毛細管1を備える。毛細管1には、一方では、ピストン3によって閉じられた第1の開口10があり、他方では、潤滑剤2が流れる自由な第2の開口11がある。ピストン3は、毛細管1内において長手方向に運動可能なロッド4と連係して、ロッド4を利用してピストン3に圧力が与えられたときに潤滑剤2が自由な第2の開口11を通って排出されることを可能にするように構成している。
【0016】
包装デバイスに収容される潤滑剤2は、油又はグリースのいずれかであることができる。
【0017】
潤滑剤2を受ける毛細管1は、ガラスによって作られている。この材料は、毛細管1に収容される潤滑剤2に対して不活性な包装デバイスを与える。
【0018】
ピストン3は、合成ワックス又は天然ワックス、又はポリマー材料によって作られている。ピストン3は、圧力が与えられたときに潤滑剤2がピストン3の裏側まで通過することを防ぐように、配置された毛細管の容積を占めなければならない。また、このようなピストンは、毛細管が一度だけ開かれて一度だけ使用されることを確実にする。
【0019】
本発明によると、ロッド4は、プラスチック材料によって作られている。そのプラスチック材料は、ピストン3に十分な圧力を与えることができるように十分に堅固でなければならない。ロッド4を扱いやすくするために、頭部40の幅は、ロッド4の幅よりも広い。ロッド4は、使用された後で、毛細管1とは異なり、他の毛細管にて再利用することができる。
【0020】
毛細管1の長さは20mm~150mmの範囲内であり、毛細管1の内径は0.6mm~2mmの範囲内である。このような寸法のおかげで、毛細管1内に0.02ml~0.1mlの潤滑剤を収容することができる。これは、2mlを収容する通常使用されるボトルよりもはるかに少ない量である。したがって、毛細管1内に存在する体積が非常に小さいことのおかげで、現状使用されているすべての潤滑剤を、その品質/性質を劣化させることなく、比較的短い期間で使用することができることを理解することは容易である。
【0021】
本発明によると、毛細管には、第1の開口10の近くに、色づけされたロケーター5がある。ロケーター5は、ピストン3がどこに位置しているかを操作者が迅速に識別し、したがって、毛細管1を正しい方向に直接配置することを可能にする。
【0022】
潤滑剤2も、使用するべき正しい潤滑剤を操作者が識別することを助けるために色づけすることができる。実際に、計時器の組み付けとメンテナンス中に、計時器のどこに入れられるかに応じてそれぞれ特定の性質を有する多くの潤滑油又はグリースが時計技師又は操作者によって使用される。したがって、時計技師又は操作者は、使用する潤滑剤のカテゴリーを色コードを用いてすばやく識別できると便利である。したがって、使用する潤滑剤のカテゴリーを迅速かつ視覚的に識別するために、潤滑剤に対して緑色、青色、紫色、又は赤色に色づけすることができる。
【0023】
本発明の特に有利な態様によると、毛細管1の長さLは、ロッド4の長さLtとピストン3の長さLpとの和よりも大きい。このような構成は、潤滑剤2が毛細管1のほぼ全長にわたって排出されることを確実にし、ワックス製のピストンによって汚染されている可能性がある潤滑剤を使用することを避けるために、毛細管1の最後の1ミリメートルほどに潤滑剤2のごく一部を残す。
【0024】
これらの特徴によって、体積が非常に小さく、省空間構造であり、オイルを比較的短期間で使用して劣化を防ぐことができるような、潤滑剤2のための包装デバイスを得ることができる。
【0025】
本発明は、さらに、本発明に係る包装デバイスと、輸送中に毛細管をシール状態に保つために毛細管1の各開口に配置されるプラグ6とを備える包装キットに関する。
【0026】
この結果、本包装デバイスは、10個以上の包装デバイスのパックの単位で販売することができる。このように潤滑剤を少量に分けることによって、オイル容器に潤滑剤を入れやすくなり、汚染(例えば、ねじ回しを使用してボトルから潤滑剤を取り出すことによるもの)を避け、潤滑剤を新鮮に保つことができる(数年前に開けられたボトルを保持することを避ける)。
【0027】
このようなデバイスによって、時計技師は、毛細管が開かれるごとにオイル容器内のすべての潤滑剤を排出し、この量をオイルピックを用いて1週間のうちに使用する。そして、時計技師は毎週新しい毛細管を使用して、あらゆる品質を維持した潤滑剤を用いて作業することができる。
【0028】
本発明は、さらに、本発明に係る包装デバイスの毛細管1を充填する方法に関し、この方法は、
- 第1の開口10と第2の開口11がある毛細管1を用意するステップと、
- 色づけされたロケーター5を第1の開口10の近くに形成するステップと、
- 第1の開口を通して毛細管1内に0.02ml~0.1mlの範囲内の量を入れるステップと、
- 毛細管1の第1の開口10を通してピストン3を挿入するステップとを備え、
- 場合に応じて、第1及び第2の開口10、11を塞ぐようにプラグ6を配置するステップとを備える。
【符号の説明】
【0029】
1 毛細管
2 潤滑剤
3 ピストン
4 ロッド
5 ロケーター
6 プラグ
10 第1の開口
11 第2の開口
40 頭部
【外国語明細書】