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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163009
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20241114BHJP
   H04B 10/54 20130101ALI20241114BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04B10/70
H04B10/54
G02F1/01 B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024024845
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】2307031.1
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】タオフィク パライソ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA20
2K102AA21
2K102BA08
2K102BA21
2K102BB01
2K102BC04
2K102BD04
2K102DA04
2K102DB04
2K102DB08
2K102DD03
2K102EA25
2K102EB02
2K102EB20
2K102EB28
5K102AA51
5K102AB11
5K102AH02
5K102AH26
5K102PB03
5K102PB14
5K102PH02
5K102PH03
5K102PH15
5K102PH49
5K102RB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザの性能および安定性を高めた光デバイスを提供する。
【解決手段】光デバイス1において、フォトニック集積回路(PIC)3は、光源7、オン状態とオフ状態とで調整可能な強度変調器9、光チャネル8、10および光学部品11を備える。光源は、強度変調器に光パルスを供給し、強度変調器は、受信したパルスの強度を変調し、変調したパルスを光チャネル10に提供する。変調されたパルスの強度は、強度変調器がオフ状態のときよりもオン状態のときのほうが高い。光学部品は、変調されたパルスをチ光ャネル10から受信する。強度変調器は、オン状態のときにパルスの少なくとも一部分を変調し、該一部分のリーディングエッジが第1の時間に強度変調器を出て、第1の時間から測定された伝搬時間の2倍である第2の時間にオフ状態である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
オン状態とオフ状態とで調整可能な強度制御素子と、
第1のポートおよび第2のポートを備える光チャネルと、ここで、前記光チャネルは、前記第1のポートから前記第2のポートまでの光伝搬時間によって特徴付けられており、
光学部品と、
を備え、
前記光源は、光パルスを前記強度制御素子に供給するように構成され、前記強度制御素子は、受信された光パルスの強度を変調し、かつ前記変調された光パルスを前記光チャネルの前記第1のポートに提供するように構成され、ここで、前記変調された光パルスの強度は、前記強度制御素子が前記オフ状態のときよりも前記オン状態のときのほうが高く、前記光学部品は、前記変調された光パルスを前記光チャネルの前記第2のポートから受信するように構成され、
前記強度制御素子は、前記オン状態のときに前記光パルスの少なくとも一部分が変調されるように構成され、前記少なくとも一部分のリーディングエッジが第1の時間に前記強度制御素子を出て、前記強度制御素子は、前記第1の時間から測定された前記光伝搬時間の2倍である第2の時間に前記オフ状態である、光デバイス。
【請求項2】
半導体基板をさらに備え、前記光源、前記強度制御素子、前記光チャネル、および前記光学部品は、前記半導体基板上に集積されている、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記変調された光パルスの前記強度は、前記強度制御素子が前記オフ状態のときよりも前記オン状態のときのほうが少なくとも2倍高い、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記オン状態は、第1の持続時間にわたり保持され、前記第1の持続時間は、前記光チャネルを通る前記光伝搬時間の2倍に等しいか、またはそれよりも短い、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記オフ状態は、前記光チャネルを通る前記光伝搬時間の2倍に等しいか、またはそれよりも長い第2の持続時間にわたり保持される、請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第2の持続時間は、前記第1の持続時間に等しく、前記第1の持続時間は、前記光チャネルを通る前記光伝搬時間の2倍に等しい、請求項5に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光パルスは、前記第1の持続時間よりも長いパルス持続時間を有する、請求項4に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記光源を制御するように構成された光源コントローラと、
前記強度制御素子を前記オン状態と前記オフ状態とで切り替えるように前記強度制御素子を制御するように構成された強度制御素子コントローラと、
をさらに備える、請求項5に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記光デバイスは、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間を特定する情報を受信するようにさらに構成され、前記強度制御素子コントローラは、前記受信された情報に基づいて前記強度制御素子の状態を保持および切り替えるようにさらに構成される、請求項8に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記光学部品は、少なくとも部分的に反射する、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記光源は、コヒーレント光を前記強度制御素子に供給するように構成される、請求項5に記載の光デバイス。
【請求項12】
前記光源は、前記第1の持続時間と前記第2の持続時間の合計に等しいパルス繰り返し周期で複数の光パルスを前記強度制御素子に供給するように構成され、各パルスについて、前記オン状態は前記第1の持続時間にわたり保持され、前記オフ状態は前記第2の持続時間にわたり保持される、請求項11に記載の光デバイス。
【請求項13】
連続する複数のパルス間の位相差はランダムである、請求項12に記載の光デバイス。
【請求項14】
前記光源は第1の光源であり、前記光学部品は、光増幅をもたらすように構成された第2の光源であり、前記光デバイスは、前記第1の持続時間中に前記強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される時間期間中に固定位相関係を有する複数の光パルスが前記第2の光源から放出されるように、時変信号を前記第2の光源に印加するように構成された第2の光源コントローラをさらに備える、請求項11に記載の光デバイス。
【請求項15】
前記第1の持続時間中に前記強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される前記時間期間中に前記第2の光源から放出された前記複数の光パルスの放出時間で情報を符号化するように構成されたエンコーダをさらに備える、請求項14に記載の光デバイス。
【請求項16】
前記第1の持続時間中に前記強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される前記時間期間中に前記第2の光源から放出された前記複数の光パルス間の位相差で情報を符号化するように構成されたエンコーダをさらに備える、請求項14に記載の光デバイス。
【請求項17】
前記第2の光源は、光利得媒質、レーザキャビティ、および光共振器のうちの少なくとも1つを備える、請求項14に記載の光デバイス。
【請求項18】
前記強度制御素子は、電界吸収変調器、マッハツェンダ変調器、半導体光増幅器、または光スイッチのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項19】
前記光チャネルはビームスプリッタを備え、前記ビームスプリッタは、前記強度制御素子を通して伝送された前記コヒーレント光を前記ビームスプリッタの第1のポートで受信し、前記ビームスプリッタの第2のポートで、前記受信されたコヒーレント光の少なくとも一部分を前記第2の光源に提供するように構成され、前記第2の光源は、前記コヒーレント光の前記少なくとも一部分を前記ビームスプリッタの前記第2のポートから受信し、複数の生成された光パルスを前記ビームスプリッタの前記第2のポートに提供するように構成され、前記光デバイスは、前記ビームスプリッタの第3のポートから受信された前記複数の生成された光パルスの少なくとも一部分を出力として提供するように構成された出力ポートをさらに備える、請求項14に記載の光デバイス。
【請求項20】
請求項14に記載の光デバイスを備える、量子通信システムのための送信機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信においては、レーザなどの光源を後方反射から保護することが多くの場合必要である。例えば、レーザによって放出されたビームは、光学システムの他の光学部品によってレーザに部分的に反射されて戻り得る。後方反射により、レーザによって放出された光の周波数またはパワーの変化を生じさせる可能性があるか、または他の場合にはレーザを損傷させる可能性があるので、これらの後方反射は、レーザの性能および安定性を減少させる可能性がある。自由空間光学システムの場合、一般に光アイソレータと呼ばれる特定の光学部品が、望ましくない後方反射からレーザを保護するために使用され得る。これらの光アイソレータは、非相反(non-reciprocal)光学素子に基づいており、一般に、一方の方向への光伝搬を許容するが、他方の方向への光伝搬をブロックする(または強力に減衰させる)ことができる。
【0003】
安定性が高いレーザが用いられる用途の1つに量子通信システムがある。量子通信システムでは、情報が、単一光子など符号化された単一量子によって送信機と受信機との間で送られる。各光子は、その偏光、位相、またはエネルギー/時間などの光子の特性上に符号化された1ビットの情報を運ぶ。量子通信システムは、多くの場合「アリス」と呼ばれる送信者と多くの場合「ボブ」と呼ばれる受信者の二者間で暗号鍵を共有するための技法である量子鍵配送(QKD)を実装するために使用され得る。この技法の魅力は、多くの場合「イブ」と呼ばれる承認されていない盗聴者に、鍵の任意の一部が知られた可能性があるかどうかのテストを提供するということである。
【0004】
量子通信システムでは、送信者「アリス」は、「ボブ」に送信されることになる光の所望の量子状態を生成するために2つのカスケード接続されたレーザを用い、すなわち、第1のレーザによって放出された光が第2のレーザに注入されて第2のレーザの放出を制御する配置を用い得る。この場合、第1のレーザを、第2のレーザの後方反射した光から、および第2のレーザによって第1のレーザに向かって放出された光から保護することが多くの場合必要である。スケーラビリティおよびコスト効率を向上させ、そのような量子通信送信機の全体寸法を減少させるために、このデバイスを小型フォトニック集積回路として実装することが望ましい。しかしながら、従来の光アイソレータは、これらのアイソレータが基づいている非相反光学素子がフォトニック集積回路のために一般に使用される製作技法に適合しないので、フォトニック集積回路には利用可能でない。
【0005】
次に、実施形態について以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一実施形態に係る例示的な光デバイスの概略図である。
図2図2は、図1の光デバイスの動作を例示する5つのグラフを示す。
図3図3Aは、一次レーザおよび二次レーザ配置の概略図である。図3Bは、持続時間tの制御利得の微小摂動下での一次レーザの光周波数のプロットである。図3Cは、一次レーザの摂動ありと摂動なしの光位相軌道のプロットである。図3Dは、二次レーザの出力パルスのプロットである。
図4図4は、利得スイッチレーザを備える、一実施形態に係る例示的な光デバイスの概略図である。
図5図5は、図4の光デバイスの動作を例示する6つのグラフを示す。
図6図6は、利得スイッチレーザおよびビームスプリッタを備える、一実施形態に係る例示的な光デバイスの概略図である。
図7図7は、図6の光デバイスの動作を例示する6つのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態では、光デバイスが提供される。本光デバイスは、光源、オン状態とオフ状態とで調整可能な強度制御素子、第1のポートと第2のポートとを備える光チャネル、および光学部品を備える。光チャネルは、光チャネルを通る(すなわち、第1のポートから第2のポートまでの)光伝搬時間によって特徴付けられる。光源は、光パルスを強度制御素子に供給するように構成される。強度制御素子は、受信された光パルスの強度を変調し、かつ変調された光パルスを光チャネルの第1のポートに提供するように構成される。変調された光パルスの強度は、強度制御素子がオフ状態のときよりもオン状態のときのほうが高い。光学部品は、変調された光パルスを光チャネルの第2のポートから受信するように構成される。強度制御素子は、オン状態のときに光パルスの少なくとも一部分が変調されるように構成され、少なくとも一部分のリーディングエッジが第1の時間に強度制御素子を出て、強度制御素子は、第1の時間から測定された光伝搬時間の2倍である第2の時間にオフ状態である。
【0008】
開示されるシステムは、デバイスの光源を、光チャネルの第2のポートからの後方伝搬光(例えば、レーザによって放出された光から生じる望ましくない後方反射)から保護することによって光デバイスを改善する。具体的には、開示されるシステムは、光源と光学部品との間を伝搬する光の光強度を(周期的に)変調する強度制御素子(例えば、強度変調器)を提供する(光学部品は、部分的に反射し得て、例えば受動素子または光を放出/増幅する能動素子である)。例えば、強度制御素子は、光源と光学部品との間の光伝搬を許容/ブロックする(または強度制御素子が光増幅器または同様のものである場合は、増幅する/増幅しない)「オン」状態と「オフ」状態とで交互する。さらに、開示されるシステムは、光学部品によって後方反射された(または放出された)任意の光の到着時間を十分に遅延させる遅延線のように作用する、強度制御素子と光学部品との間の光チャネルを提供する。したがって、強度制御素子は、後方伝搬光の強度を変調して、この光が光源を妨害することを防止することができる。例えば、強度制御素子は、光学部品からの反射が強度制御素子に戻って衝突している時間期間中、強度制御素子が「オフ」に設定され、すなわち、強度制御素子を通る伝送をブロックまたは(少なくとも)強力に減衰させる(または、強度制御素子が光増幅器である場合、増幅しない)ように動作され得る。このようにして、反射光は、光源に伝搬して戻ることを完全に防止されるか、または光源の性能が実質的には影響を受けないように少なくとも強度が十分に低くなる。
【0009】
これを実装する1つの方法は、開示されるシステムが、「オン」と「オフ」の期間のタイミングが光源と光学部品との間の往復時間(すなわち、光源から放出された光が、強度制御素子から光学部品に伝搬し、強度制御素子に戻ってくるのに必要な時間)に応じて設定されるように構成されることである。開示されるシステムでは、往復時間は、強度制御素子を光学部品に接続する光チャネルを通る伝搬時間の2倍に相当する。例えば、光パルスが第1の時間に「オン」状態の強度制御素子を出ると、次いで強度制御素子は、往復時間だけ第1の時間よりも遅い第2の時間に「オフ」状態になるように切り替えられ得る(こうして、変調されたパルスを受信することに応答して光学部品によって反射または生成された光は、強度制御素子によってブロックされる)。開示されるシステムは、光源の安定性を高めることができ、例えば、コヒーレント光通信または量子通信で使用するための完全集積型(fully integrated)の小型の光トランシーバを可能にすることによって、幅広い用途に有用であり得る。そのような完全集積型の小型の光トランシーバは、個別のオフチップ構成部品から構成される従来のシステムよりも好ましい。これは、完全集積型のトランシーバは、フットプリントがはるかに小さくなり、コストが下がり、製造歩留まりを高くすることができるからである。
【0010】
一実施形態では、本光デバイスはさらに半導体基板を備え得る。光源、強度制御素子、光チャネル、および光学部品は、半導体基板上に集積され得る。
【0011】
一実施形態では、変調された光パルスの強度は、強度制御素子がオフ状態のときよりもオン状態のときのほうが少なくとも2倍高くてよい。
【0012】
一実施形態では、オン状態は、光チャネルを通る光伝搬時間の2倍に等しいか、またはそれよりも短い第1の持続時間にわたり保持され得る。さらに、オフ状態は第2の持続時間にわたり保持され得る。第2の持続時間は、光チャネルを通る光伝搬時間の2倍に等しいか、またはそれよりも長くてよい。さらに、この実施形態では、第2の持続時間は、第1の持続時間に等しくてよく、第1の持続時間は、光チャネルを通る光伝搬時間の2倍に等しくてよい。さらにまたは代替として、光パルスは、第1の持続時間よりも長いパルス持続時間を有し得る。
【0013】
一実施形態では、本光デバイスは、光源を制御するように構成された光源コントローラと、強度制御素子をオン状態とオフ状態とで切り替えるように強度制御素子を制御するように構成された強度制御素子コントローラと、をさらに備え得る。さらに、本光デバイスは、第1の持続時間および第2の持続時間を特定する情報を受信するようにさらに構成されてよく、強度制御素子コントローラは、受信された情報に基づいて強度制御素子の状態を保持および切り替えるようにさらに構成され得る。
【0014】
一実施形態では、光学部品は、少なくとも部分的に反射し得る。
【0015】
一実施形態では、光学部品は、光回折格子、マルチモード干渉計、ミラー、散乱素子、またはフォトニックナノ構造であり得る。
【0016】
一実施形態では、光源は、コヒーレント光を強度制御素子に供給するように構成され得る。さらに、この実施形態では、光源は、第1の持続時間と第2の持続時間の合計に等しいパルス繰り返し周期で複数の光パルスを強度制御素子に供給するように構成され得る。各パルスについて、オン状態は第1の持続時間にわたり保持されてよく、オフ状態は第2の持続時間にわたり保持されてよい。連続する複数のパルス間の位相差はランダムであり得る。
【0017】
一実施形態では、光源は第1の光源であってよく、光学部品は、光増幅をもたらすように構成された第2の光源であってよい。本光デバイスは、第1の持続時間中に強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される時間期間中に固定位相関係を有する複数の光パルスが第2の光源から放出されるように、時変信号を第2の光源に印加するように構成された第2の光源コントローラをさらに備え得る。
【0018】
上記において、本光デバイスは、第1の持続時間中に強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される時間期間中に第2の光源から放出された複数の光パルスの放出時間で情報を符号化するように構成されたエンコーダをさらに備え得る。代替として、本光デバイスは、第1の持続時間中に強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光が受信される時間期間中に第2の光源から放出された複数の光パルス間の位相差で情報を符号化するように構成されたエンコーダをさらに備え得る。
【0019】
一実施形態では、第2の光源は、光利得媒質、レーザキャビティ、および光共振器のうちの少なくとも1つを備え得る。
【0020】
一実施形態では、強度制御素子は、電界吸収変調器、マッハツェンダ変調器、半導体光増幅器、または光スイッチのうちの少なくとも1つを備え得る。
【0021】
一実施形態では、第1の光源は、半導体レーザダイオードを備え得る。
【0022】
一実施形態では、半導体レーザダイオードは、分布帰還型レーザ(distributed feedback laser)であり得る。
【0023】
一実施形態では、半導体レーザダイオードは、ストライプレーザ(stripe laser)であり得る。
【0024】
一実施形態では、半導体レーザダイオードは、垂直共振器型面発光レーザ(vertical cavity surface emitting laser)であり得る。
【0025】
一実施形態では、光チャネルはビームスプリッタを備え得る。ビームスプリッタは、強度制御素子を通して伝送されたコヒーレント光をビームスプリッタの第1のポートで受信し、ビームスプリッタの第2のポートで、受信されたコヒーレント光の少なくとも一部分を第2の光源に提供するように構成され得る。第2の光源は、コヒーレント光の少なくとも一部分をビームスプリッタの第2のポートから受信し、複数の生成された光パルスをビームスプリッタの第2のポートに提供するように構成され得る。光デバイスは、ビームスプリッタの第3のポートから受信された複数の生成された光パルスの少なくとも一部分を出力として提供するように構成された出力ポートをさらに備え得る。
【0026】
一実施形態では、量子通信システムのための送信機が提供される。本送信機は、光デバイスを備え得る。
【0027】
次にさらなる実施形態について例として説明する。例示的な光デバイス1が図1に例示されている。光デバイス1は、フォトニック集積回路(PIC)3およびコントローラ5を備える。PIC3は、半導体基板を備えてよく、PIC3に含まれる構成部品は、半導体基板上に集積されてよい。
【0028】
一実施形態では、PIC3はInPから形成され得る。以下で詳述するPIC3に含まれる構成部品、および光信号を提供するためのポートは、共に形成され得る。このために、パターンがフォトリソグラフィおよび/またはEビームリソグラフィによって規定されてよく、対応する構造体が、プラズマドライエッチング法によって形成されてよい。例えば、誘導結合プラズマ(ICP)反応性イオンエッチング(RIE)および深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)などのRIE法が、構造体を形成するために使用され得る。PIC3に集積された構成部品を接続するための光導波路が、(光および/または電子)リソグラフィ、(プラズマおよび/または化学)エッチング、直接レーザ書き込み、イオン交換、およびナノインプリントなどを使用して形成され得る。他の実施形態では、PIC3は、例えば、Si、SOI、SiN、SiO2、SiON、またはGaAsといった別の好適な半導体材料系で形成され得る。代替として、PIC3は、ガラスまたはポリマーで形成されてもよい。材料系のうちの2つ以上を使用してPIC3を形成するために、ハイブリッド集積(hybrid integration)および異種集積(heterogeneous integration)の技法を使用することができる。
【0029】
PIC3は、光源7、強度変調器9、および光学部品11を備える。一般に、光源7は、コヒーレント光源または非コヒーレント光源であり得る。コヒーレント光源は、コヒーレントであり得る(ある時間期間にわたり固定の予測可能な位相関係を維持する波を有する)光を放出する。非コヒーレント光源は、非コヒーレントであり得る(空間および時間においてランダムに変動する振幅および/または位相特性を有する)光を放出する。
【0030】
一実施形態では、光源7は、コヒーレント光を生成し、生成したコヒーレント光を強度変調器9に供給するように構成され得る。例えば、光源7は、光源7と強度変調器9との間の光伝搬を可能にする光チャネル8(導波路など)にコヒーレント光を提供し得る。光源7は、連続波を放出するように、または所定の持続時間の光パルスを放出するように動作され得る。
【0031】
一実施形態では、光源7は、(利得スイッチ)半導体レーザダイオードである。半導体レーザダイオードは、分布帰還型(DFB)レーザ、垂直共振器型面発光レーザ、またはリッジレーザであり得る。リッジレーザは、ストライプレーザとも呼ばれる。ファブリペローレーザは、リッジレーザまたはストライプレーザの一種である。ストライプおよびリッジという用語は、レーザ導波路の形態を指す。ファブリペローとは、レーザキャビティ、すなわち、導波路の端面によって構成された2つの平行ミラーの形態を指す。一実施形態では、光源7は、電気通信波長でコヒーレント光を放出し得る。
【0032】
強度変調器9は、光源7と光学部品11との間を伝搬する光の強度を変調(または制御)するように構成される。一般に、強度変調器9は、高強度状態(「オン」状態と呼ぶ)と低強度状態(「オフ」状態と呼ぶ)という少なくとも2つの状態間で調整可能であるように構成される。例えば、「オン」状態の強度変調器9を通過した光パルスの強度は、「オフ」状態の強度変調器9を通過した後の対応する強度の少なくとも2倍高くてよい。強度変調器9はさらに、「オン」と「オフ」の状態が(例えばコントローラ5によって)周期的に切り替えられるように構成され得る。一実施形態では、「オン」と「オフ」の持続時間(または切り替えタイミング)は、デバイス1の製造プロセス中に設定され得る(例えば、コントローラ5の回路にハードワイヤードされ得る)。代替として、「オン」と「オフ」の持続時間(または切り替えタイミング)は調整可能であってもよい(例えば、それらを特定の用途の要件に基づいて変更することができる)。例えば、デバイス1は、「オン」と「オフ」の持続時間(または切り替えタイミング)を特定する情報を受信するように構成されてよく、コントローラ5は、受信された命令に基づいて強度変調器9を制御するように構成されてよい。
【0033】
強度変調器9は、典型的には双方向であり、すなわち、所与の状態(例えば「オン」または「オフ」)にあり、光が光源7から受信されるか光学部品から受信されるかにかかわらず、光は強度変調器9によって同じ方法で変調される。一実施形態では、強度変調器9によって行われる強度変調は、連続的に調節可能であり得る。
【0034】
強度変調器9は、いくつかの方法で実装され得る。例えば、強度変調器9は、状態依存の光減衰(すなわち、「オン」状態のときよりも「オフ」状態のときのほうが強力な減衰)を適用し得る。代替として、強度変調器9は、状態依存の光増幅(すなわち、「オフ」状態のときよりも「オン」状態のときのほうが強力な光増幅)を適用してもよい。強度変調器9は、例えば、電界吸収変調器、マッハツェンダ変調器、半導体光増幅器、または光スイッチのうちの1つまたは複数を備え得る。電界吸収変調器は、フォトニック集積回路上への集積に特に好適であり得る。マッハツェンダ変調器は、高速用途で特に好適であり得る。(例えばMEMS技術に基づく)光スイッチは、「オフ」状態のときに光源7と光学部品11との間の光路を完全にブロックするために使用され得る。
【0035】
光学部品11は、強度変調器9を通して伝送されたコヒーレント光を受信するように構成される。例えば、強度変調器9と光学部品11との間の光チャネル10(導波路など)が、これらの2つの構成部品間の光伝搬を可能にする。一実施形態では、光学部品11は、少なくとも部分的に反射してよく、すなわち、光学部品11は、強度変調器9から受信されたコヒーレント光(の一部分)を反射してよく、それにより反射光が強度変調器9に向かって伝搬して戻る。光学部品11は、光回折格子、マルチモード干渉計、ミラー、散乱素子、またはフォトニックナノ構造であり得る。
【0036】
光源7によって放出された光が、光チャネル10を通って、すなわち、強度変調器9から光学部品11に伝搬するのに必要な時間期間を、光伝搬時間tと呼ぶ。同様に、光源7によって放出された光が、強度変調器9から光学部品11に伝搬して強度変調器9に戻ってくるのに必要な時間期間を、光往復時間trtと呼ぶ。往復時間trtは、伝搬時間tの2倍であり得る。実施形態では、光伝搬時間tは500ps以下、250ps以下、または100ps以下である。大きく見ると、光チャネル10は、強度変調器が、後方伝搬光の強度を変調して、この光が光源7に悪影響を引き起こすのを防止することができるように、光学部品11によって後方反射された光の到着時間を十分に遅延させる遅延線のように作用する。
【0037】
光デバイス1のコントローラ5は、光源7および強度変調器9(の動作)を制御するように構成される。このために、コントローラ5は、光源7が、例えば図2を参照して以下で説明するように、光学部品11によって引き起こされる後方反射から保護されるように、(時変)電気信号を光源7および強度変調器9に印加し得る。コントローラ5は、光源7および強度変調器9を制御するための適切な電気信号を生成および印加するための電気回路を備え得る。一実施形態では、コントローラ5は、PIC3に完全にまたは部分的に集積され得る。
【0038】
図2を参照して、図1の光デバイス1の例示的な動作について説明する。簡潔にするために、光源7から光学素子11に向かって光伝搬することに「前方伝搬」という用語を使用し、光学素子11から光源7に向かって光伝搬することに「後方伝搬」という用語を使用する。この例では、光源7は、連続波動作で動作されてよく、すなわち、光源7は、図2のグラフ20で例示するように、一定の強度を有するコヒーレント光を放出してよい。強度変調器9は、「オン」と「オフ」の状態が周期的に切り替えられ得る。この例では、強度変調器9は、「オフ」状態では光伝搬を完全にブロックし、「オン」状態では光伝送を許容すると想定される。グラフ21は、その状態を制御するために強度変調器9に印加される信号を示す。最初に、強度変調器9は、ある時間期間tonにわたり「オン」状態に設定される。次いで、強度変調器9は、ある時間期間toffにわたり「オフ」状態に設定されてから、別の期間tonにわたり「オン」状態に切り替えられて戻り、以後同様である。グラフ23は、強度変調器9によって変調された後の前方伝搬光の強度を示す。強度変調器9の状態の切り替えに起因して、光源の一定の強度出力は、強度変調器によって、図2に示す例示的なパルス24などの、パルス長tonを有するパルスへと修正される。
【0039】
図2のグラフ25は、光学部品11によって受信されたコヒーレント光の強度を示す。グラフ25に示すように、光学部品11によって受信された強度は、伝搬時間tに等しい最初の時間期間の間低いが、これは、光が光チャネル10を通って、すなわち、強度変調器9から光学部品11に進むのにこの時間が必要であるからである。時間t=tから、例示的なパルス24は、期間tonにわたり光学部品11に衝突する。この時間中、光学部品は、入来パルス24を強度変調器(および光源7)に向かって(部分的に)反射して戻し得る。グラフ27は、光学部品11から強度変調器9によって受信された後方伝搬光の強度を示す。グラフ27では、パルス24の(部分的な)反射が反射パルス28として示されている。グラフ27に示すように、時間t=trtから、後方伝搬パルス28は、期間tonにわたり強度変調器に衝突する。図2の例では、光デバイス1は、「オン」状態、「オフ」状態、および往復時間trtの期間が等しくなる(ton=toff=trt)ように構成および動作される。これは、強度変調器9がオフ状態であるときにのみ、光学部品11によって反射された光(例えば、反射パルス28)が強度変調器9に衝突することを意味する。これは、反射光が強度変調器9によってブロック(または強力に減衰)され、コヒーレント光源7に伝搬して戻るのを効果的に防止されることを意味する。
【0040】
図2の例では、「オン」状態、「オフ」状態、および往復時間trtの期間がすべて等しい(ton=toff=trt)。他の実施形態では、「オン」状態の期間は、往復時間に等しいかまたはそれよりも短くてよく(すなわち、ton≦trt)、「オフ」状態の期間は、往復時間に等しいかまたはそれよりも長くてよい(すなわち、trt≦toff)。
【0041】
したがって、大きく見ると、光デバイス1は、コヒーレント光源7を望ましくない後方反射から保護するために、能動的な時間依存の伝送変調を用いる。後方反射をブロックする(または減衰させる)ことによって、光源7と光学素子11との間の有効キャビティの形成が抑制され、そのようなキャビティに関連する望ましくないサイドモードの発生が防止され、光源7の動作の改善がもたらされる。この能動的な時間依存の伝送変調は、光集積に適合し、したがって、完全集積型デバイスにおける反射・保護を可能にする。
【0042】
各対における光パルス間に制御された時間遅延を伴って放出される複数対の(またはそれより多い数の)短いレーザパルスを生成および出力するために、例えば、特定のQKDプロトコルを実装することが多くの場合望ましい。さらにパルス対のうちのパルス間の位相差を制御することが望ましい。このために、位相シーディング(phase-seeding)技法が使用され得る。一般に、位相シーディングとは、任意の位相状態を符号化するために、2つのカスケード接続されたレーザ間での利得スイッチ、直接変調、および光注入同期(optical injection locking)を用いる情報符号化技法である。位相シーディング技法について図3A図3Dを参照して以下で説明する。
【0043】
図3Aを参照すると、一次レーザ29からのパルスが、パルスされた二次レーザ30に注入されて、光注入同期に基づいて、二次レーザの出力パルス間の位相が定義される。一次レーザ29が位相準備のタスクを行うのに対して、二次レーザ30はパルス生成のタスクを行う。図3Aに概略的に示すように、一次レーザダイオード29は、光サーキュレータ31を介して二次レーザダイオード30に接続される。一次レーザダイオード29および二次レーザダイオード30は同一であってよく、単に明確にするために「一次」および「二次」という用語を使用しているにすぎず、一次レーザダイオード29と二次レーザダイオード30との物理的相違を含意するものではないことに留意されたい。
【0044】
一次レーザ29は、位相準備のために使用され、準定常状態放出から長パルスを生成するように直接変調される。これらのパルスの各々は、二次またはパルス生成レーザ30を利得スイッチすることによって放出される2つ以上の短い二次光パルスのブロックをコヒーレントにシードする。位相準備レーザ29は、これもまた光位相を修正する浅い強度変調を伴うナノ秒単位またはさらにはそれ以下の準定常状態の光パルスを生成するようにバイアスされる。1GHzを超えるクロックレートの場合、パルス幅は1ns未満である。利得スイッチパルス生成レーザ30は、位相準備レーザによって準備された光位相を引き継ぐ短い光パルスを放出する。各位相準備レーザパルスの持続時間は、異なる長さのパルス列をシードするために変えられ得る。
【0045】
二次パルス間の相対位相は、一次パルスの位相展開(phase evolution)に依存し、一次または位相準備レーザ29に印加される駆動電流を直接変調することによって任意の値に設定され得る。
【0046】
例えば、位相準備レーザ29の駆動信号に微小摂動を導入することによって、2つの二次パルス間の相対位相φを取得することができる。同様に、一次レーザ29の駆動信号に2つの微小摂動を加えることによって、3つの二次パルス間の相対位相をφおよびφに設定することができる。
【0047】
原理上、駆動信号におけるこのような摂動により、一次パルスの強度および周波数に有害な変動が生じることになる。しかしながら、摂動信号に対応して二次レーザ30の利得をオフに切り替えることによって、これを回避することができる。効果的に、二次レーザ30は、残留変調を拒絶するフィルタとしても作用する。
【0048】
位相準備レーザに印加される駆動信号に摂動を生じさせることによって光位相がどのように設定されるかを理解するために、中央周波数υで放出するしきい値を上回る連続波レーザを考慮することが有用である。
【0049】
図3Bは、持続時間tの微小摂動下での位相準備レーザの光周波数のプロットである。図3Cは、位相準備レーザの摂動ありと摂動なしの光位相軌道のプロットである。
【0050】
微小摂動が駆動信号に適用されると、光周波数が量Δυだけシフトし、位相展開の過程が変化する。摂動がオフに切り替えられると、周波数は初期値υに戻る。この摂動は以下の位相差を生じさせることになり、
Δφ=2πΔυt
ここで、tは摂動の持続時間である。光注入により、この位相差は、図3Dに示すパルス生成レーザによって放出される対の二次パルスに移行される。
【0051】
ここで摂動信号は、位相準備レーザに適用される電圧変調である。一次レーザダイオード29内のレーザ活性媒体の屈折率に対するキャリア密度の影響から光周波数変化が生じる。レーザキャビティの閉じ込め(confinement)により、光場がキャビティ内で前後に振動し、摂動の持続時間全体にわたり屈折率変化を受けることが可能になる。レーザキャビティに起因する改良により、位相変調を1V未満の半波長電圧に保つことが可能になる。従来の位相変調器にはこのキャビティ特徴がなく、従来の位相変調器では、光が電気光学媒体を1回しか通過せず、よって相互作用距離をデバイス長に制限している。
【0052】
(従来のニオブ酸リチウム位相変調器が必要とするよりもはるかに少ない1ボルト未満の)一次光源の電気コントローラ信号の小さい変化は、一次光源の出力の出力周波数に一時的変化を生じさせることができ、これは次いで、二次レーザの光出力の出力位相を変化させる。
【0053】
本実施形態では、一次レーザ29は、複数対のシーケンスを備える光パルスのシーケンスを出力するように構成される。一次レーザによって出力されるパルスの位相は、同じ対におけるパルス間の位相が、位相差のセットのうちの1つからランダムに選択され、異なる対からのパルス間にランダムな位相差ができるように制御される。一実施形態では、位相差のセットは、0、π/2、-π/2、およびπのうちの1つから選択され得る。
【0054】
一次レーザ29によってシードされる二次レーザ30は、一次レーザ29によって出力されたパルスのシーケンスと同じ位相差を有する複数対のパルスのシーケンスを出力することになる。
【0055】
パルス注入シーディングは、二次レーザ30がレージングしきい値を上回るように切り替えられるたびに生じる。この場合、生成されたスレーブ光パルスは、注入されたマスタ光パルスに対して固定位相関係を有する。注入された各マスタ光パルスについて1つのみの二次光パルスが生成されるとき、二次レーザ30によって出力されるパルス間の位相関係は、二次レーザ30内に注入されるパルス間の関係と同じである。
【0056】
二次レーザ30は、典型的には、複数対のシーケンスを備えるパルスの新たなシーケンスを生成するように動作される。同じ対におけるパルス間の位相は位相差のセットのうちの1つからランダムに選択され、異なる対からのパルス間にランダムな位相差がある。これらのパルスはまた、一次レーザ29によって出力されたパルスに対してより小さい時間ジッタτ’<τを有することになる。このジッタ時間の低減により、二次光パルスの低時間ジッタに起因して干渉可視度が改善する。
【0057】
パルス注入シーディングが生じるためには、一次レーザ29からの光パルスの周波数は、特定の範囲内で二次レーザ30の周波数に一致する必要がある。1つの実施形態では、一次レーザ29によって供給される光の周波数と二次レーザ30の周波数との差は、30GHz未満である。いくつかの実施形態では、二次レーザ30が分布帰還型(DFB)レーザダイオードである場合、周波数の差は100GHz未満である。
【0058】
パルス注入シーディングの成功のためには、二次レーザ30の光キャビティに入る一次レーザ29の出力光パルスの相対パワーが、使用される光源のタイプに依存する特定の限界内にある必要がある。1つの実施形態では、注入された光パルスの光パワーは、二次レーザ30の光出力パワーの少なくとも1000分の1である。1つの実施形態では、注入された光パルスの光パワーは、二次レーザ30の光出力パワーの少なくとも100分の1である。
【0059】
1つの実施形態では、二次レーザ30および一次レーザ29は、電気的に駆動される利得スイッチ半導体レーザダイオードである。1つの実施形態では、スレーブ光源およびマスタ光源は、同じ帯域幅を有する。1つの実施形態では、両方の光源は、10GHzの帯域幅を有する。1つの実施形態では、両方の光源は、2.5GHzの帯域幅を有する。ここで、帯域幅とは、直接変調されている利得スイッチレーザダイオードを用いて達成可能な最も高いビットレートを意味する。特定の帯域幅のレーザは、より低いクロックレートで動作することができる。
【0060】
図4は、上述したもののような位相シーディング技法を実装するのに好適な図1の光デバイスの変形例を示す(不要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号を使用する)。
【0061】
大きく見ると、図4の光デバイス32は、例えば、コヒーレント光通信および量子通信システムにおける幅広い用途のための完全集積型の光トランシーバである。特に、光デバイス32は、QKDプロトコルを実装するために使用され得る。以下で説明するように、光デバイス32は、各対における光パルス間に制御された時間遅延を伴って放出される複数対の短いレーザパルス(またはトリプレットもしくは他のグループのパルス)を出力することができる。さらに、光デバイス32は、上述の位相シーディング技法を用いることによって、パルス対(またはトリプレットもしくは他のグループのパルス)のうちのパルス間の位相差を制御する。
【0062】
光デバイス32は、図1を参照して説明したように、光源7(以下、第1の光源と呼ぶ)および強度変調器9を有するPIC3を備える。図4の第1の光源7はコヒーレント光源である。さらに、光デバイス32は、(図1の光学部品11の一実施形態として)第2の光源33を備える。第1の光源7は、長いコヒーレント光パルスを生成するように構成される。時間期間trepは、生成された長い光パルスのパルス繰り返し周期を表す。第1の光源7が半導体利得スイッチレーザである場合、光デバイス32のコントローラ37は、第1の光源7がレージングしきい値を上回るように周期的に切り替えられ、長い光パルスを生成するように時変電流を印加する回路を含む。第1の光源7に印加される電流は、一連の電流変調パルスの形態を有する。電流は、電流変調パルス間で0に低減されず、バイアス値に低減されるだけであり得る。
【0063】
実施形態では、長い光パルスの各々の持続時間tlongは、600ps以上、300ps以上、200ps以上、または100ps以上である。
【0064】
第1の光源7から放出された長い光パルスは、光チャネル8を介して強度変調器9に提供され、強度変調器9は、第1の光源7と第2の光源33との間の光伝送を制御するように構成される。図1を参照して説明したように、強度変調器9は、「オン」状態と「オフ」状態とが(例えばコントローラ37によって)周期的に切り替えられるように構成される。強度変調器9の切り替えは、長い光パルスの到着と同期され得る。例えば、長い光パルスを生成するために第1の光源7に印加される時変信号と、「オン」状態と「オフ」状態とを切り替えるために強度変調器9に印加される時変信号とが、マスタクロックに同期され得る。実施形態では、光デバイス32はマスタクロックを備え得る。他の実施形態では、光デバイス32は、外部のマスタクロックからクロック信号を受信するように構成される。
【0065】
一実施形態では、強度変調器9の切り替えは、(i)各長パルスの少なくとも一部分が「オン」状態の強度変調器9を通して伝送され、(ii)「オン」と「オフ」の状態の期間の合計が長パルスの繰り返し周期に等しくなる、すなわち、ton+toff=trepになるように、長い光パルスの生成に同期される。
【0066】
図4の実施形態では、第2の光源33は、利得スイッチレーザであり、第1の光源7から伝送されたコヒーレント光を強度変調器9を通して受信するように構成される。例えば、強度変調器9および第2の光源33は、導波路を介して接続され得る。
【0067】
他の実施形態では、第2の光源33は、光増幅をもたらすように構成された任意の好適なタイプの光源であり得る。例えば、これらの実施形態では、第2の光源33は、光利得媒質、レーザキャビティ、および光共振器のうちの少なくとも1つを備え得る。
【0068】
再び図4を参照すると、(光チャネル10を介して)第2の光源33によって受信されたコヒーレント光の一部分は、第2の光源33に注入され、すなわち、受信されたコヒーレント光の一部分は、第2の光源33の(光キャビティ)に入り、第2の光源33のコヒーレンスシーディング(coherence seeding)を生じさせる。
【0069】
図4の実施形態では、コントローラ37は、(第1の光源7によって放出された)長い光パルスが第2の光源33に入射する時間中にこの利得スイッチレーザが2回レージングしきい値を上回るように切り替えられ、2つの短い光パルスを生成するように、時変電流を第2の光源33に印加するように構成される。第2の光源33の切り替えは、長い光パルスの到着と同期され得る。例えば、長い光パルスを生成するために第1の光源7に印加される時変信号と、短い光パルスを生成するために第2の光源33に印加される時変信号とが、マスタクロックに同期され得る。
【0070】
一実施形態では、第2の光源33は、(第1の光源7によって放出された)長い光パルスが第2の光源33に入射する時間中に2回より多くレージングしきい値を上回るように切り替えられ、したがって2つより多くの短い光パルス(例えば、トリプレットの短パルス)を生成する。
【0071】
一実施形態では、コントローラ37(または光デバイス32に含まれるエンコーダ)はさらに、第1の時間期間中に強度変調器9を通して伝送されたコヒーレント光が受信される時間期間中に第2の光源から放出された2つ(またはそれ以上)の短パルスの放出時間で情報を符号化するように構成され得る。
【0072】
第2の光源33をレージングしきい値を上回るように切り替えるために、コントローラ37は、第2の光源33に接続されたバイアスTのAC入力に時変電流を供給し得る。DCバイアス電流がDC入力に供給され得る。1つの実施形態では、時変電流は、例えば、2GHzの周波数を有する矩形型波形を有する。代替の実施形態では、時変電流は、周波数合成器によって生成された電気正弦波である。時変電流は、任意のパルス形状を有する信号を備え得る。
【0073】
第2の光源33はさらに、(第1の光源7からの長い光パルスが第2の光源33に入射する時間中に生成された)短パルスを光デバイス32の出力ポート35に提供するように構成され得る。例えば、光デバイス32は、第2の光源33の出力が、スポットサイズ変換器を使用してテーパ状レンズファイバ内に結合され得るように構成され得る。例えば、出力ポート35において提供された短パルスは、光(量子)チャネルを介して受信機に提供され得る。
【0074】
一般に、第2の光源33は、超短パルスを生成するために使用され得る。1つの実施形態では、短い光パルスの各々の持続時間は200ps未満である。1つの実施形態では、短い光パルスの各々の持続時間は50ps未満である。1つの実施形態では、短い光パルスの各々の持続時間は10ps未満である。1つの実施形態では、時変電流が2GHzの周波数を有する矩形波電流である場合、短い光パルスは500ps離れている。
【0075】
一般に、第1の光源7からの光の注入のない(すなわち、コヒーレンスシーディングのない)第2の光源33の動作中に、第2の光源33がレージングしきい値を上回るように切り替えられると、光パルスが自然放出によって開始され、生成された光パルス間の位相差はランダムである。第1の光源7からの光が第2の光源33に注入され、第2の光源33がレージングしきい値を上回るように切り替えられると、注入されたコヒーレント光によって引き起こされた刺激された放出によってパルスが開始される。これをコヒーレンスシーディングと呼ぶ。コヒーレンスシーディングが生じるためには、注入された光の周波数が、特定の範囲内で第2の光源33の周波数と一致する必要がある。1つの実施形態では、第1の光源7によって供給される光の周波数と第2の光源33の周波数との差は、30GHz未満である。いくつかの実施形態では、第2の光源33が分布帰還型(DFB)レーザダイオードである場合、周波数の差は100GHz未満である。他の実施形態では、第2の光源33がファブリペローレーザダイオードである場合、周波数の差は3テラヘルツ未満である。
【0076】
一実施形態では、第1および第2の光源7、33の周波数は、PIC3上に集積されたヒータ素子を使用して、共振するように(または十分近くに)調節され得る。コントローラ37は、適宜ヒータ素子を制御し得る。
【0077】
以下で説明するように、光デバイス32は、(第1の光源7からの長い光パルスが第2の光源33に入射する時間中に生成された)短パルス間の位相差を制御するように動作され得る。さらに、光デバイスは、異なる長パルス中に生成された短パルスの位相差がランダムになるように動作され得る。
【0078】
コヒーレンスシーディングが生じるとき、第2の光源33がレージングしきい値を上回るように切り替えられるたびに、生成された光パルスは、注入されたコヒーレント光に対して固定位相関係を有する。1つの実施形態では、第2の光源33は、各長い光パルスが入射する時間中に2回レージングしきい値を上回るように切り替えられ、そのため、長い光パルスが入射するたびに、各パルスの放出時間の間で同じ差を有する2つのコヒーレントな短い光パルスが生成される。2つの短い光パルスをまとめてコヒーレント二重パルスと呼ぶことができる。例えば、第1の対の光パルス(パルス1およびパルス2)が、第1の長い光パルスが入射する期間中に生成される。1つの長い光パルスが入射する期間中に生成されるパルスをイントラ期間(intra-period)と呼ぶ。第2の対の光パルス(パルス3およびパルス4)が、第2の長い光パルスが入射したときに生成され、第3の対のパルス(パルス5およびパルス6)が、第3の長い光パルスが入射したときに生成される。パルス1およびパルス2はイントラ期間である。パルス3およびパルス4はイントラ期間である。パルス5およびパルス6はイントラ期間である。第1の対のパルス、第2の対のパルス、および第3の対のパルスは、固定位相関係を有し、換言すれば、それら対の相対位相は各対で同じである。パルス1とパルス2との間の位相差は、パルス3とパルス4との間の位相差およびパルス5とパルス6との間の位相差と同じである。換言すれば、任意の2つの連続するイントラ期間パルス間の位相差は、すべての期間で同じである。
【0079】
異なる長い光パルスが入射した期間中に生成されるパルスをインター期間(inter-period)と呼ぶ。例えば、パルス1およびパルス3はインター期間であり、パルス2およびパルス3はインター期間であり、パルス4およびパルス5はインター期間であり、パルス1およびパルス6はインター期間である。2つのインター期間パルス(例えばパルス2とパルス3)間の位相差は固定ではなく、ランダムである。例えば、パルス2とパルス3との間の位相差は、パルス4とパルス5との間の位相差に対してランダム関係を有する。量子通信システムにおいて、これは、承認されていない盗聴者イブが、彼女の測定装置をこの位相にロックできず、したがってアリスのパルスのより良好な測定を行うことができないことを意味する。
【0080】
2つの連続するインター期間パルス間の位相差は、第1の光源7によって生成された連続する長い光パルス間に位相コヒーレンスがない場合、ただ真にランダムである。半導体利得スイッチレーザなどの第1の光源7の場合、レーザ放出は自然放出によって開始される。これはランダムなプロセスであり、これは、生成された長い光パルスの位相がランダムになることを意味する。自然放出のランダムなプロセスがすべての長い光パルスのためのレーザ放出の開始の原因となるようにするために、レーザキャビティは、各長い光パルスが生成される前に完全に空になる必要があり、すなわち、印加される電流は、長パルスと長パルスとの間で十分長い時間にわたりしきい値電流を下回る必要がある。
【0081】
コヒーレンスシーディングの成功のためには、第2の光源33に注入されるコヒーレント光の小部分が、使用される利得スイッチレーザのタイプに依存する特定の限界内にある必要がある。強度変調器9は、「オン」状態中の伝送により、第2の光源33のコヒーレンスシーディングの成功を可能にする長パルスの強度がもたらされるように構成され得る。1つの実施形態では、注入されたコヒーレント光の光パワーは、第2の光源33の光出力パワーの少なくとも1000分の1である。1つの実施形態では、注入されたコヒーレント光の光パワーは、第2の光源33の光出力パワーの少なくとも100分の1である。
【0082】
イントラ期間パルス間の位相差は、第1の光源7によって生成される光の位相を制御することによって制御することができる。第1の光源7によって生成される任意の特定の長い光パルスについて、コヒーレント光が生成される時間中に(例えば、コントローラ37、または光デバイス32に任意選択で含まれるエンコーダを使用して)第1の光源7に短い電流パルスを印加することによって、この光パルスの第2の部分の位相が、光パルスの第1の部分に対して変調され得る。したがって、コントローラ37(またはエンコーダ)は、第1の光源7からのコヒーレント光が受信される時間期間中に第2の光源から放出された短い光パルス間の位相差で情報を符号化するために第1の光源7を変調するように構成され得る。
【0083】
コヒーレント光パルスの隣接する部分間の位相変化は、急激な遷移でなくてよく、光の一部分にわたって生じ得る。第2の光源33は、長い光パルスの遷移部分が第2の光源33に存在するときには短い光パルスが生成されないように制御される。例えば、第2の光源33が入来する長パルスごとに複数対の短パルスを生成するように構成される場合、第1の短パルスは長パルスの第1の部分中に生成されてよく、第2の短パルスは長パルスの第2の部分で生成されてよい(しかし、短い電流パルスが印加される遷移期間中には短パルスは生成されない)。
【0084】
図5を参照して、光デバイス32の例示的な動作について説明する。この例では、第1の光源7は、いくつかの長パルスを放出するように動作される。図5のグラフ40は、強度変調器によって受信されたとき(ただし変調が適用される前)の、第1の光源7によって放出された長パルスの強度を例示する。グラフ40には、2つの例示的なパルス41、42が示されている。例示的なパルス41は、そのパルス持続時間全体にわたって一定の強度を有する。例示的なパルス42は、より低い強度の部分43を有する。この部分43は、パルス42が第2の光源33に注入される時間中に第2の光源33によって生成される一対の短パルス間の位相差を合わせるための短い電流パルスの印加に対応する。上述のように、強度変調器9は、「オン」と「オフ」の状態が周期的に切り替えられる。グラフ44は、その状態を制御するために強度変調器9に印加される信号を示す。最初に、強度変調器9は、ある時間期間tonにわたり「オン」状態に設定される。次いで、強度変調器9は、ある時間期間toffにわたり「オフ」状態に設定されてから、別の期間tonにわたり「オン」状態に切り替えられて戻り、以後同様である。第1の光源7および強度変調器9は、長パルスの各々のかなりの部分が、「オン」期間中に強度変調器9を通して伝送されるように同期される。グラフ45は、強度変調器9によって変調された後の前方伝搬光パルスの強度を示す。この例では、長い光パルスの各々の持続時間tlongは、強度変調器9の「オン」期間よりも長い。図5の例では、各長パルスの前部および最終部分は第2の光源33に伝搬するのがブロックされる(例えば、グラフ45の例示的なパルス42を参照)。一実施形態では、各長パルスが、変化するキャリア密度に関連するレーザキャビティ内部の屈折率の変化に起因してパルスの前部で周波数チャープを示し得るので、長パルスの前部分をブロックすることにより、第2の光源33のコヒーレンスシーディングが改善し得る。
【0085】
図5のグラフ46は、第2の光源33によって受信されたコヒーレント光の強度を示す。グラフ46に示すように、長パルス41、42は、伝搬時間tに等しい遅延を伴って第2の光源33に到着するが、これは、光が強度変調器9から第2の光源33に進むのにこの時間が必要であるからである。例えば、時間t=tから、例示的なパルス41は、期間tonにわたり第2の光源33に衝突する。この時間中、受信された光の一部分は、第2の光源33に注入されてよく、第2の光源33の位相シーディングを生じさせてよい。受信された光の別の部分は、強度変調器(および第1の光源7)に向かって反射されて戻り得る。長パルス(例えばパルス41、42)が第2の光源33に注入される時間中、コントローラ37は、この利得スイッチレーザが2回レージングしきい値を上回るように切り替えられ、2つの短い光パルスを生成するように、時変電流を第2の光源33に印加し得る。
【0086】
グラフ47は、第2の光源33によって出力ポート35に放出された短パルスを示す。(パルス41が第2の光源33に衝突する時間中に生成された)パルス対48の2つのパルスは、イントラ期間であり、明確に定義された位相差φを有する。(パルス42が第2の光源33に衝突する時間中に生成された)パルス対49の2つのパルスは、イントラ期間であり、明確に定義された位相差φを有する。パルス対48および49のイントラ期間パルス間の位相差は異なるが、これは、生成中に短い電流パルスが第1の光源に印加された(部分43における強度変化も生じさせた)からである。インター期間パルス(例えば、パルス対48の第1のパルスとパルス対49の第1のパルス)間の位相差はランダムであるが、これは、第1の光源が、パルス持続期間とパルス繰り返し周期の差、すなわちtlong-trepによって与えられる、十分に長いオフ期間(またはしきい値を下回る期間)を伴って動作されるからである。
【0087】
グラフ50は、第2の光源33から強度変調器9によって受信された後方伝搬光の強度を示す。グラフ50では、パルス41、42の(部分的な)反射が反射パルス51、52として示されている。グラフ50に示すように、時間t=trtから、後方伝搬パルス51は、期間tonにわたり強度変調器に衝突する。図5の例では、光デバイス32は、「オン」状態、「オフ」状態、および往復時間trtの期間が等しくなる(ton=toff=trt)ように構成および動作される。これは、強度変調器9がオフ状態であるときにのみ、第2の光源33によって反射された光が強度変調器9に衝突することを意味する。これは、反射光が強度変調器9によってブロック(または強力に減衰)され、第1の光源7に伝搬して戻るのを効果的に防止されることを意味する。
【0088】
図6は、図4の光デバイスの変形例を示す(不要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号を使用する)。光デバイス55は、PIC3およびコントローラ37を備える。PIC3は、第1の光源7、強度変調器9、および第2の光源33を備える。第1の光源7による長パルスの生成および強度変調器9による伝送変調は、図4を参照して説明した通りである。
【0089】
図6の実施形態では、強度変調器9と第2の光源33との間の光チャネルはビームスプリッタ59を備える。ビームスプリッタ59は、半導体基板上に集積される。ビームスプリッタ59は、図6に示すように、4つのポートA、B、C、Dを有し得る。ビームスプリッタ59のポートAは、(例えば、導波路を介して)強度変調器9に接続され得る。ポートAに入る光は、ポートCおよびDに伝送され得る。ビームスプリッタ59は、ビームスプリッタ率によって特徴付けられ得る。一実施形態では、ビームスプリッタ率は50/50であってよく、すなわち、ポートA(またはB)における入来光の場合、50%の強度がポートCでビームスプリッタ59を出て、50%の強度がポートDでビームスプリッタ59を出る。代替の実施形態では、ビームスプリッタ率は10/90であってもよく、すなわち、ポートAにおける入来光の場合、10%の強度がポートCでビームスプリッタ59を出て、90%の強度がポートDでビームスプリッタ59を出る。この場合、ポートCにおける入来光の場合、10%の強度がポートAでビームスプリッタ59を出て、90%の強度がポートBでビームスプリッタ59を出る。
【0090】
ビームスプリッタ59のポートCは、第2の光源33に接続され得る。したがって、光デバイス55において、第2の光源33は、第1の光源によって放出された(および強度変調器9によって変調された)コヒーレント光を、ビームスプリッタ59のポートCから受信する。図6の実施形態の第2の光源33は、図4を参照して説明したように短パルスを生成するように構成される。しかしながら、図6の実施形態の第2の光源33は、生成されたパルスを、(図4の出力ポート35に代わり)ビームスプリッタ59のポートCに出力するように構成される。したがって、第2の光源33によって生成された短パルスが放出され、第1の光源7に向かって伝搬する。短パルスは、ポートAおよびBにおけるビームスプリッタ率に依存してビームスプリッタ59を出る。ポートBは、光出力ポート57に接続され得る。例えば、出力ポート57において提供された短パルスは、光(量子)チャネルを介して受信機に提供され得る。
【0091】
一実施形態では、ビームスプリッタ59のポートDは、第1の光源7によって放出されたパルスの強度をモニタリングするために集積型フォトダイオードに接続され得る。
【0092】
図7を参照して、光デバイス55の例示的な動作について説明する。この例では、図5を参照して説明した例にもあるように、第1の光源7は、いくつかの長パルスを放出するように動作される。図7のグラフ60は、強度変調器によって受信されたとき(ただし変調が適用される前)の、第1の光源7によって放出された長パルスの強度を例示する。グラフ60には、例示的なパルス61が示されている。上述のように、強度変調器9は、「オン」と「オフ」の状態が周期的に切り替えられる。グラフ62は、その状態を制御するために強度変調器9に印加される信号を示す。最初に、強度変調器9は、ある時間期間tonにわたり「オン」状態に設定される。次いで、強度変調器9は、ある時間期間toffにわたり「オフ」状態に設定されてから、別の期間tonにわたり「オン」状態に切り替えられて戻り、以後同様である。第1の光源7および強度変調器9は、長パルスの各々のかなりの部分が、「オン」期間中に強度変調器9を通して伝送されるように同期される。グラフ63は、強度変調器9によって変調された後の前方伝搬光パルスの強度を示す。この例では、長い光パルスの各々の持続時間tlongは、強度変調器9の「オン」期間よりも長い。
【0093】
図7のグラフ65は、第2の光源33によって受信されたコヒーレント光の強度を示す。グラフ65に示すように、長パルス61が、伝搬時間tに等しい遅延を伴って第2の光源33に到着するが、これは、光が強度変調器9から第2の光源33に進むのこの時間が必要であるからである。例えば、時間t=tから、例示的なパルス61は、期間tonにわたり第2の光源33に衝突する。この時間中、受信された光の一部分は、第2の光源33に注入されてよく、第2の光源33の位相シーディングを生じさせ得る。受信された光の別の部分は、ビームスプリッタ59のポートCに向かって(したがって、強度変調器および第1の光源7に向かって)反射されて戻り得る。長パルス(例えばパルス61)が第2の光源33に注入される時間中、コントローラ37は、この利得スイッチレーザが2回レージングしきい値を上回るように切り替えられ、2つの短い光パルスを生成するように、時変電流を第2の光源33に印加し得る。
【0094】
グラフ67は、第2の光源33によって放出される短パルスを示す。図5を参照して上述したように、(パルス61が第2の光源33に衝突する時間中に生成された)パルス対68の2つのパルスは、イントラ期間であり、明確に定義された位相差を有する。図5の例とは対照的に、図7のグラフ67に示す短パルスは、ビームスプリッタ59のポートCに向かって放出され、すなわち、放出された短パルスは後方伝搬する。
【0095】
グラフ69は、ビームスプリッタ59のポートAから強度変調器9によって受信された後方伝搬光の強度を示す。グラフ69は、(ビームスプリッタ率によって与えられる相対強度係数次第の)出力ポート57における強度にも対応する。後方伝搬光は、長パルスの(部分的な)反射の一部分および短パルスの一部分を備える。グラフ69では、パルス61の(部分的な)反射が反射パルス70として示されている。グラフ69には、反射された長パルスおよび放出された短パルスは、例示の目的で同様の強度で示されているが、典型的には、短パルスの強度のほうが反射よりも数桁高いことを理解されたい。図7の例では、光デバイス55は、「オン」状態、「オフ」状態、および往復時間trtの期間が等しくなる(ton=toff=trt)ように構成および動作される。これは、強度変調器9がオフ状態であるときにのみ、後方伝搬光が強度変調器9に衝突することを意味する。これは、後方伝搬光が強度変調器9によってブロック(または強力に減衰)され、第1の光源7に伝搬するのを効果的に防止されることを意味する。したがって、光デバイス55により、第1の光源7を、第1の光源7によって放出された光の望ましくない反射と、第2の光源33によって放出された光とから保護することが可能になる。したがって、光デバイス55は、生成された短パルスの有用性に害を及ぼす相反シーディング効果(すなわち、第2の光源33によって放出された光によって引き起こされる第1の光源7の強い摂動)を防止または抑制することができる。
【0096】
図2図5、および図7の例では、「オン」持続時間と「オフ」持続時間が等しい長さ(ton=toff)であるが、他の実施形態では、異なる切り替えタイミングが使用されてもよいことを理解されたい。一般に、光学部品11(または第2の光源33)によって反射(または放出)された光がレーザ7に伝搬することをブロックするために、強度変調器は、この光が変調器9に衝突すると予想される時間中「オフ」状態に保持される。この時間は、パルスが「オン」状態の変調器9を出始めたときから往復時間だけ離れた(すなわち、それだけ遅い)時点で開始する。いくつかの用途では、反射パルス全体ではなく反射パルスのリーディング部分のみをブロックすれば十分である場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、「オフ」期間は、反射パルス(または第2の光源33によって放出されたパルス)の持続時間よりも短い場合がある。
【0097】
図1図4、および図6の光デバイスの実施形態は、フォトニック集積回路上に集積された構成部品を備えるが、光デバイスの変形例は、(完全な)フォトニック集積を用いなくてもよい。そのような実施形態では、光源7、強度変調器9、および光学部品11の少なくとも1つが、オフチップで(すなわち、PIC上に集積された構成部品としてではなく)提供される。
【0098】
特定の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載の新規のデバイスおよび方法は、その他の様々な形態で具現化することができ、さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、本明細書に記載のデバイス、方法、および製品の形態の様々な省略、置き換え、および変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲とそれらの均等物は、本発明の範囲および要旨に含まれる形態または変形を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】