(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163021
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】表示部材を保持し、制動デバイスが設けられたホイールセットを備えている機械式時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
G04B 35/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G04B35/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063871
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】23172657.1
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23174095.2
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・ウィスブロー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・フィリポン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表示部材を保持し、制動デバイスが設けられたホイールセットを備えている機械式時計ムーブメントを提供する。
【解決手段】機械式時計ムーブメントは、表示部材、特にクロノグラフ針48を保持し、香箱によって回転駆動されるように意図された表示ホイールセット30と、表示部材の振動を防止するために、表示ホイールセット30が回転駆動トルクにさらされた際に表示ホイールセット30上に制動トルクを生成するように配置された制動バネ10と、を備え、制動バネ10と、表示ホイールセット30の心棒36との間に位置する介在部品、特にワッシャ8をさらに備え、介在部品8は、心棒36上で自在に回転するように取り付けられ、介在部品8と制動バネ10とは、通常動作において介在部品8が静止し、回転しないままであるように配置され、制動バネ10は全体として、制動トルクを生成するように、心棒36の方向に、介在部品8上に押圧力を発揮する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香箱と、機械式共振器に関連するがんぎ車セット(58)と、表示部材(48)を保持ことが意図された心棒(36)を備えている表示ホイールセット(30)と、前記表示ホイールセットに関連するとともに、制動バネ(10、10A、10B、11)、および、前記制動バネと、前記表示ホイールセットの前記心棒との間に配置された介在部品(8、68、78)を備えた制動デバイス(6)と、を備え、前記表示ホイールセットは、前記香箱によって回転駆動されることが可能であるが、前記香箱から前記がんぎ車セットへの歯車列の一部を形成せず、前記制動バネは、前記表示ホイールセットが回転駆動トルクにさらされるとすぐに、この制動バネが押圧する前記介在部品を介して、前記表示ホイールセット上の制動トルクを生成することが可能であるように配置されている、機械式時計ムーブメント(2)であって、前記介在部品と前記制動バネとが、通常動作において前記介在部品が静止し、回転しないままであるように配置されていることと、前記介在部品が、前記心棒の回転表面(35)に対して押圧する横方向表面(9)と、前記制動トルクを生成する、前記横方向表面と前記回転表面との間の摩擦力を生成するために、前記心棒に向けて全体の押圧力を前記制動バネが発揮する支え面(25)と、を有することと、を特徴とする、機械式時計ムーブメント(2)。
【請求項2】
前記介在部品(8、68、78)は、前記表示ホイールセット(30)の前記心棒(36)に排他的に径方向の圧力を発揮することを特徴とする、請求項1に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項3】
前記心棒は中心軸(42)を規定し、前記回転表面(35)は筒状および軸方向であり、前記横方向表面(9)は軸方向であることを特徴とする、請求項2に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項4】
前記制動バネ(10、10A、10B、11)は、ワイヤーバネまたはストリップバネであって、前記ワイヤーバネまたはストリップバネの長手軸は前記ムーブメントの全体的な平面(50)に対して平行な幾何学的平面に位置する、ワイヤーバネまたはストリップバネであることを特徴とする、請求項2に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項5】
前記制動バネ(10、10A、10B、11)は、前記制動バネの中間部が前記押圧力を前記介在部品(8、68、78)の前記支え面に発揮するように配置されていることと、前記中間部のいずれかの側にそれぞれ位置する、前記制動バネの2つの端部は、前記中間部が前記押圧力を前記支え面に発揮するように、前記時計ムーブメントの2つの遠隔パーツ(16、20)によって応力がかけられることと、を特徴とする、請求項4に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項6】
前記制動バネ(10、10A、10B)は、前記時計ムーブメントによって締結されていないが、前記幾何学的平面内で2つの方向に前記制動バネの2つの前記端部が押圧する前記時計ムーブメントの前記遠隔パーツ(16、20)によるテンションの下で保持されることを特徴とする、請求項5に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項7】
前記介在部品と前記制動バネとは、前記ムーブメントがその全体的な平面においてさらされる加速度の結果として、前記制動バネの可能性のある長手方向の変位の事象においてさえも、前記介在部品と前記制動バネとの相対的配置が経時的に実質的に変化しないような方法で構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項8】
前記ムーブメントは、偏心器(20)であって、前記偏心器(20)の回転軸は前記幾何学的平面に対して垂直であり、かつ、前記偏心器(20)は、その回転軸の回転により、前記介在部品(8、68、78)の前記制動バネによって発揮される前記押圧力を変化させることを可能にするために、前記制動バネ(10、10A、10B、11)に対して押圧するように配置されていることを特徴とする、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項9】
前記介在部品は、前記表示ホイールセットの前記心棒(36)が中を通過する中心開口を有するワッシャ(8)であり、前記ワッシャの前記横方向表面(9)はその中心開口の筒状表面によって規定されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項10】
前記介在部品は、前記表示ホイールセットの前記心棒(36)が中を通過する中心開口を有するワッシャ(8)であり、前記ワッシャの前記横方向表面(9)がその中心開口の筒状表面によって規定されることを特徴とする、請求項8に記載の機械式測時器ムーブメント。
【請求項11】
前記ワッシャ(8)は、その周囲に、前記支え面(25)を規定する溝(24)を有し、前記制動バネ(10)の一部が少なくとも部分的に挿入され、前記心棒の方向に前記押圧力を発揮することを特徴とする、請求項9に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項12】
前記ワッシャ(8)は、その周囲に、前記支え面(25)を規定する溝(24)を有し、前記制動バネ(10)の一部が少なくとも部分的に挿入され、前記心棒の方向に前記押圧力を発揮することを特徴とする、請求項10に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項13】
前記介在部品(8)は、前記介在部品に水平方向に面するとともに、前記支え面(25)の正反対に位置する当接表面(26)を、前記介在部品の外周において有するサポート(4)上に配置されており、それにより、前記介在部品と前記制動バネとは、前記当接表面に対して前記介在部品が支持された状態で、前記表示ホイールセット(30)を組み立てる前に、前記機械式時計ムーブメントにおいて前もって組み立てることができるようになっていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項14】
前記当接表面(26)は、前記介在部品(8)および前記制動バネ(10)の前もっての組み立てに続いて、前記介在部品の前記中心筒状開口は、回転可能であるか固定されており、前記表示ホイールセット(30)の前記心棒(36)の一部が内部に挿入されるパイプ(44)またはチューブ内で前記中心筒状開口と重ねられる少なくとも1つのゾーンを有し、それにより、前記表示ホイールセットが前記機械式時計ムーブメント内に取り付けられる際に、前記心棒が、前記介在部品に径方向の力を最初に発揮する必要なしに、2つの中心円形開口を飛び出ることができるような方法で配置されることを特徴とする、請求項13に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項15】
前記回転表面(35)を規定する前記心棒(36)の少なくとも一部は、スチールで形成されているか、銅合金で構成されており、前記横方向表面(9)を規定する前記介在部品(8)の少なくとも一部はそれぞれ銅合金またはスチールで構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項16】
前記回転表面(35)を規定する前記心棒(36)の少なくとも一部は、スチールで形成されているか、銅合金で構成されており、前記横方向表面(9)を規定する前記介在部品(8)の少なくとも一部はポリマーで構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【請求項17】
前記回転表面(35)を規定する前記心棒(36)の少なくとも一部は、スチールで形成されているか、銅合金で構成されており、前記横方向表面(9)を規定する前記介在部品(8)の少なくとも一部はセラミック、特にルビーもしくはジルコニア、または、金もしくはニッケルを含み、前記介在部品を少なくとも部分的にカバーする外側層を形成する材料で構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の機械式時計ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部材、具体的には針を保持するホイールセットを備え、回転する際に表示部材が振動することを防止し、静止している際に、必要に応じて浮き上がることをも防止するように、ホイールセットに作用する制動デバイスによって形成される、振動防止デバイスとも称される防振デバイスを備えている、機械式時計ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ピニオンにフィットした心棒を備えている、特にクロノグラフホイールセットであり、以下で「クロノホイールセット」としても称される時計のホイールセットのための防振デバイスを開示している。このピニオンは、クロノグラフ機構のための結合デバイスを形成する、以下で「駆動ホイール」と称されるクラッチホイールと噛み合う。ピボットの回転を案内するようにピボットにフィットする心棒が、時計製造において「シャフト」とも称されることに留意されたい。クロノグラフ機能の秒針のための防振デバイスは、前述の心棒に対して斜めに抗して支えるワイヤーバネを備えた摩擦デバイスによって形成されている。前述の心棒は、この目的のために円錐台状の肩部を有している。ワイヤーバネは、この肩部と、その直径が肩部の最小の直径に対応している円形筒状部とによって形成された角度での支持点を有し、このポイントにおいて、前述の心棒に斜めの力を及ぼす。それにより、ピニオンの噛合が駆動ホイールを押圧し、また、前述の肩部に対向するとともに心棒によって規定された軸に対して直交する心棒の下方環状表面が、クロノグラフホイールセットが旋回するベアリングに対して軸方向に押圧する。バネは、応力が無ければ直線を成すように設計されている。このバネは、第1の端部の側でムーブメントのフレームに締結されており、一方、第2の端の側の部分がテンション下にあり、上で説明したように、心棒に対して押圧される。
【0003】
多くの理由のために、この防振デバイスが、クロノグラフホイールセットに適用される摩擦力のモーメントの制御に関する問題を有する。さらに、摩擦力のこのモーメントを調整する方法は存在しない。次いで、クロノグラフ針(クロノ針)が除去されると、バネに軸方向の力がかけられ、この力が、このバネを損傷させ得る。
【0004】
特許文献2は、秒ホイールセットに印加される摩擦力のモーメントの制御を向上させるための解決策を記載している。この文献の教示によれば、ワイヤーバネまたはストリップバネが、その第1の端部において、プレートへのリベット留め技術によって締結される。プレートは、プレートが位置する側とは反対側の、バーの一方側に配置された、ねじ状のスロットを伴うヘッドを有するリベットによって浮いた状態に保持される。リベットは、摩擦フィットによってバーの穴内に挿入される介在筒状部品を有している。摩擦フィットは、リベット、そしてひいてはプレート、そしてひいてはバネの第1の端部が、ツールの助けによって特定の回転を経ることを可能にする。摩擦バネの第2の端部はフリーであり、秒ホイールセットの心棒上に圧入(force-fitted)/圧入(press-fitted)されるプラスチックワッシャに対して径方向に支持する。このワッシャは、バネの第2の端部が配置される横方向の溝を有している。このシステムは、時計ムーブメントにおいて組み立てるには非常に困難である。第1に、摩擦バネは、その第1の端部をスロット内に挿入し、次いで、このスロットの2つのエッジ上に材料を押しつけて、第1のリベット留め操作を実施することにより、プレートに締結しなければならない。次いで、摩擦バネを伴うプレートを、他方側からバーの穴内にリベットを挿入した後に、バーの内側に運ばなければならない。次いで、リベットの端部を押しつぶさなければならず、第2のリベット留め操作を実施して、プレートをリベットに締結しなければならない。摩擦バネをプレート、次いでバーに、2つの連続したリベット留め操作を介して組み立てる各段階において、摩擦バネを損傷させる高いリスクが存在することがわかる。最後に、バー、プレート、および摩擦バネの組み立ては、関連するバー内に配置されたベアリング内に、溝付きワッシャを保持する秒ホイールセットの心棒のピボットを挿入することと先天的に同時に、時計ムーブメント内で組み立てられる。そのような組み立ては、バネが、溝付きワッシャの頂部にスタックされていないことを必要とする。この理由は、バネがバーにしっかりと接続され、また、テンション下でバネの自由端を受領するように設計された溝付きワッシャが、心棒にしっかりと接続されているためである。このため、バネのための第1の組み立て/分解位置と、バネの自由端がワッシャの溝内に運ばれ、バネにテンションがかけられる第2の作動位置とが存在する。一方の位置から他方の位置に移動するために、時計メーカーは、リベットヘッドに作用するツールを使用しなければならない。このツールは、バネがメンテナンスのために取り外される際に、バネに、セットされたテンションを失わせる。結果として、秒ホイールセットが組み立てられる毎に、制動力のモーメントを再調整しなければならない。ここで記載した組み立て方法は、実施するには困難であるとともに時間がかかる。
【0005】
さらに、この防振デバイスは、秒ホイールセットが振動することを防止するために秒ホイールセットに印加される力のモーメントを調整することの問題に対する完全な解決策を提供しない。この理由は、摩擦力が、特に、プラスチックワッシャの横方向の溝のプロファイル、および、この溝内に挿入され、ワッシャに対して径方向に押圧するバネの端の形状によって規定されるためである。そのような摩擦力は、制御および再現が困難である。この理由は、この摩擦力が、バネおよび溝の寸法、それらのそれぞれの構成、ならびにそれらのそれぞれの表面仕上げに高度に依存するためである。別の問題が、秒ホイールセットの心棒上に介在部品を組み立てることが、ホイールセットの径方向の振動を増大させ、ひいては、そのような介在部品がない場合、特に、より少ない径方向の振動で慣習的な心棒上でバネが直接支持している場合よりも大きい変化を生じるという事実から生じる。さらに、時計に対する振動または衝撃の事象において、バネの第2の自由端が、溝付きワッシャから外れることになり得、もはや一定の制動トルクを保証しなくなる。さらに悪いことに、激しい衝撃の事象においては、もっぱら摩擦によって定位置に保持されるバネ締結プレートが、軸方向に移動し、ブレーキ設定を変更し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スイス国特許発明第580301号明細書
【特許文献2】西独国実用新案公開第6800934(U)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の上述の問題を解決すること、および、同様に、香箱からがんぎ車セットまでの歯車列の外に配置された、表示ホイールセットのための防振デバイスであって、この防振デバイスが、取り付けが容易であり、好ましい代替的実施形態では、問題のホイールセットの取り付けの前の準備段階において取り付けることができる、防振デバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、香箱と、機械式共振器に関連するがんぎ車セットと、表示部材を保持ことが意図された心棒を備えている表示ホイールセットと、表示ホイールセットに関連するとともに、制動バネ、および、制動バネと表示ホイールセットの心棒との間に配置された介在部品を備えた制動デバイスと、を備え、表示ホイールセットは、香箱によって回転駆動されることが可能であるが、香箱からがんぎ車セットへの歯ホイール列の一部を形成しない、機械式時計ムーブメントに関する。制動バネは、表示ホイールセットが回転駆動トルクにさらされるとすぐに、この制動バネが押圧する介在部品を介して、表示ホイールセット上の制動トルクを生成することが可能であるように配置されている。介在部品と制動バネとは、通常動作において介在部品が静止し、回転しないままであるように配置されている。介在部品は、心棒の回転表面に対して押圧する横方向表面と、制動トルクを生成する、横方向表面と回転表面との間の摩擦力を生成するために、心棒に向けて全体の押圧力を制動バネが印加する支え面と、を有する。
【0009】
第1の有利な代替的実施形態によれば、介在部品および制動バネは、表示ホイールセットがムーブメント内で組み立てられ、制動デバイスが完全に組み立てられるとともに調整されると、前述の押圧力が一定のままであるような方法で構成される。
【0010】
好ましい概略的な代替的実施形態では、介在部品は、表示ホイールセットの心棒に排他的に径方向圧力を発揮する。
【0011】
主要な実施形態では、制動バネは、ワイヤーバネまたはストリップバネであり、ワイヤーバネまたはストリップバネの長手軸が、ムーブメントの全体的な平面に対して平行な幾何学的平面に位置する。
【0012】
1つの主要な実施形態では、このムーブメントは、偏心器であって、偏心器の回転軸が幾何学的平面に対して垂直であり、かつ、偏心器が制動バネに対して径方向に押圧するように配置されており、それにより、その回転軸周りの回転により、介在部品上に制動バネによって印加される前述の径方向の全体の押圧力を変化させることを可能にする、偏心器を備えている。
【0013】
本発明は、添付図面を参照して、以下により詳細に記載される。図面は、非限定的な例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る機械式時計ムーブメントの主要な実施形態の部分斜視図であり、制動デバイスが意図されるクロノグラフホイールセットの組み立ての前の準備段階において予め取り付けられた、本発明に係る制動デバイスを示している。
【
図2】
図1に示した機械式時計ムーブメントの一部の平面図である。
【
図3】
図2の切断面III-IIIに沿う、クロノグラフホイールセットの心棒の一部を受領するように設計されたチューブの中心軸を通過する断面図である。
【
図4】クロノグラフホイールセットがフィットされた際の、主要な実施形態における機械式時計ムーブメントの底面図である。
【
図5】
図4の切断面V-Vに沿う機械式時計ムーブメントの部分断面図である。
【
図6】主要な実施形態の特定の代替的実施形態の部分図を概略的に示す図である。
【
図7A】主要な実施形態の1つの有利な代替的実施形態の部分図を概略的に示す図である。
【
図7B】主要な実施形態の1つの有利な代替的実施形態の部分図を概略的に示す図である。
【
図8】本発明の主要な実施形態の特定の代替的実施形態の部分図を概略的に示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態の部分図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る機械式時計ムーブメント2の主要な実施形態が、
図1から
図5を参照して以下に記載される。
【0016】
機械式時計ムーブメント2は、
香箱と、
機械式共振器(図示せず)と関連するがんぎ車セット58と、
表示部材、具体的にはクロノグラフ機能秒表示の針48を保持するように意図され、香箱からがんぎ車セットまでの歯車列に組み込まれた第2のホイールセット52によって回転駆動される表示ホイールセットを形成する第1のホイールセット30であって、この第1のホイールセットがこの歯ホイール列に含まれていない、第1のホイールセット30と、
この第1のホイールセットに回転駆動トルクが及ぼされるとすぐに、表示部材48が振動することを防止することが意図された制動トルクと、表示部材が静止している際に表示部材を静止位置に維持する恒久的な径方向の力と、を第1のホイールセット30上に生成することが可能であるように配置された制動バネ10と、を備えている。
【0017】
本発明によれば、機械式時計ムーブメント2は、表示ホイールセットに作用するとともに、制動バネ10、および、制動バネと、第1のホイールセット30の心棒36との間に配置された介在部品8を備えた制動デバイス6を備えている。制動バネは、表示ホイールセットが回転駆動トルクにさらされるとすぐに、この制動バネが押圧する介在部品を介して、表示ホイールセット上に制動トルクを生成することが可能であるように配置されている。この目的のために、介在部品が、心棒の回転表面35に対して押圧する横方向表面9と、横方向表面と回転表面との間の摩擦力を生成するために、心棒の方向に全体の押圧力を制動バネが印加する支え面25と、を有する。この摩擦力は制動トルクを生成する。このため、制動トルクが、制動バネが押圧する介在部品を介して制動バネによって第1のホイールセット/表示ホイールセットに発揮される。介在部品8と制動バネ10とは、通常動作において介在部品が静止し、回転しないままであるように配置されている。第1のホイールセットの心棒36および介在部品は、制動トルクを生成する動摩擦力がかけられている間に、心棒の回転表面35が横方向表面9上でスライドできるように構成されている。回転表面が横方向表面上をスライドする前は、静摩擦力が制動トルクを生成し、こうして心棒を静止した状態に維持する。
【0018】
好ましくは、介在部品8は、第1のホイールセット30の心棒36に排他的に径方向圧力を発揮する。有利な特徴によれば、制動バネ10は、排他的に径方向の全体の押圧力を介在部品に発揮する。支え面25は横方向表面9の反対側にある。すなわち、支え面は、横方向表面9を規定する介在部品の別の側とは反対である、介在部品8の一方側に位置している。この代替的実施形態は有利である。この理由は、制動デバイスが切込み部に対して支持され、切込み部の径方向の振動がわずかに変化し、このため、回転表面35と横方向表面9との間の所与の摩擦力に関する一定の制動トルクを与えるためである。図に示される有利な代替的実施形態では、心棒36の回転表面35は筒状であり、軸方向であり、介在部品の横方向表面9は軸方向である。すなわち、筒状回転表面35および横方向表面9は、第1のホイールセット30の回転軸42に沿って向けられている。第1のホイールセット30の回転軸42は、心棒36の中心軸に一致しており、このため、横方向表面9および筒状回転表面35がこの回転軸42に平行である。好ましい代替的実施形態によれば、介在部品8および制動バネ10は、表示ホイールセットがムーブメント内で組み立てられ、制動デバイスが完全に組み立てられるとともに調整されると、前述の押圧力が一定のままであるように構成される。
【0019】
主要な代替的実施形態によれば、制動バネ10は、ワイヤーバネまたはストリップバネであり、ワイヤーバネまたはストリップバネの長手軸が機械式時計ムーブメント2の全体的な平面50に対して平行な幾何学的平面に位置する。
【0020】
図示の代替的実施形態によれば、介在部品8は、中心筒状開口を有するワッシャであり、ここで、制動バネ10からのあらゆる相互作用を伴わずに、第1のホイールセット30の心棒36がスライドし、自在に回転し、このワッシャ8の前述の横方向表面9が、その中心筒状開口の、好ましくは円形である(すなわち、回転の)筒状表面によって規定されている。
【0021】
特定の代替的実施形態によれば、ワッシャ8は、その外周に、支え面25を規定する円形溝24を有し、この円形溝24内に制動バネ10の一部が少なくとも部分的に挿入され、これにより、径方向の押圧力を発揮する。具体的には、
図3および
図5に示すように、溝24はV形状の断面を有し、制動バネ10は、円形断面を有するワイヤーバネである。この配置により、制動バネが、ワッシャと接触してその中間部において軸方向に配置されることを可能にする。このため、バネは軸方向の移動が自在ではない。
【0022】
非限定的な例として、第1の代替的実施形態では、回転表面35を規定する心棒の少なくとも一部がスチールで形成されている場合、その中心筒状開口を規定するワッシャ8の少なくとも一部が、ベリリウム銅(CuBe)合金で形成されており、この逆もある。この第1の代替的実施形態により、良好な摩擦の結果が与えられる。心棒の前述の部分がスチールまたはCuBeで形成されている第2の代替的実施形態では、その中心筒状開口を規定するワッシャの少なくとも一部は、ポリマーで形成されている。好ましくは、ワッシャ全体がポリマーで形成されている。この第2の代替的実施形態は、自滑に特に有利である。心棒がスチールまたは銅合金(たとえば、CuBeまたは真鍮)で形成されている他の代替的実施形態では、その中心筒状開口を規定するワッシャの少なくとも一部がブロンズ、ニッケル、または金、特に、ニッケルもしくは金、または、より一般的には金もしくはニッケルを含む合金のケースにおいて、別の材料のベース上に堆積された薄い層の形態で形成されている。他の代替的実施形態では、その中心筒状開口を規定するワッシャの少なくとも一部が、セラミック、特にルビーまたはジルコニアで形成されている。
【0023】
制動バネの材料は、ワッシャ、およびより一般的には介在部品が、機械式時計ムーブメントの通常動作の間に静止している、すなわち静的かつ回転しないことが意図されている場合、摩擦および摩耗の問題を心配する必要なしに、このバネの弾性的性質、およびその製造をも最適化させるような方法で、選択することができることに留意されたい。ワッシャのケースでは、ワッシャが回転することを防止するために、以下により詳細に説明するように介在部品の形状、および/または制動バネの形状のいずれかに変更がされ得るか、特にワッシャのケースにおいて、バネを形成するために使用される材料、および、バネと接触している介在部品の少なくとも外側部に対して、かつ/または、制動バネと介在部品との間の高い摩擦力を得るために、これら部品に適用される表面処理に対して、変更がされ得る。
【0024】
別の好ましい代替的実施形態によれば、制動バネ10は、その2つの端部間の中間部が介在部品/ワッシャ8の支え面25に対して径方向に押圧するような方法で、機械式時計ムーブメント2に配置されている。より具体的には、制動バネの中間部が介在部品/ワッシャ8の支え面25に前述の押圧力を発揮するように制動バネ10が配置されている。このため、中間部のいずれかの側にそれぞれ位置する、制動バネの2つの端部が、中間部が押圧力を介在部品/ワッシャの支え面に印加するように、時計ムーブメントの2つの遠隔パーツ16および20によって応力がかけられる。制動デバイスのこの構成は、この構成により、制動バネが介在部品/ワッシャの支え面に対して常に押圧されるために、有利である。さらに、この構成は、制動バネが、その端の1つに係留ポイントを有し、その他方の端に接触ポイントを有する場合よりも振動および衝撃に対して敏感ではない。
【0025】
特定の代替的実施形態では、制動バネ10は、その中間部で湾曲しており、介在部品/ワッシャ8の支え面25が、第1のホイールセット30の心棒36に対して、前述の幾何学的平面に凸状の湾曲を有し、具体的には、ワッシャのケースにおける円形の湾曲を有し、これには、第1の代替的実施形態では、支え面に沿って制動バネの中間部が追従する。第2の代替的実施形態では、中間部の曲率半径は、支え面の平均の曲率半径よりも小さく、それにより、制動バネが、支え面の「2つのポイント」において、すなわち、2つの別々の位置において、介在部品/ワッシャに対して押圧される。実質的にV形状の溝を伴い、円形断面を有するバネが、軸方向に整列されたポイントの対において局所的に押圧することに留意されたい。このため、溝および制動バネのそのような構成において、制動バネが、ポイントの各対が軸方向に整列した状態で、互いから角度方向に離間したポイントの2つの対において押圧し、このため、「2つのポイント」において、ムーブメントの全体的な平面50に平行である、バネの全体的な平面において突出する。最後に、これら代替的実施形態は、中間部の平均の曲率半径が支え面の曲率半径より大であり、結果として径方向圧力が「1つのポイント」に発揮される、他の有利な代替的実施形態を排除しない(すなわち、バネの全体的な平面/ムーブメントの全体的な平面50において突出する単一のポイントではなく、軸方向に整列した一対のポイントにおいて)。
【0026】
有利な代替的実施形態によれば、
図2に示すように、制動バネ10は、特定の部分によってムーブメントに締結されないが、テンション下でこのムーブメントの2つの部分16および20によって保持され、この2つの部分に対し、具体的にはワッシャ8である、介在部品に対して径方向に支持するこの制動バネの中間部分のいずれかの側部にそれぞれ位置する制動バネの2つの端部が押圧される。バネ上の2つの部分16および20によって印加される力の方向は、バネの中間部上の介在部品/ワッシャ8の反力の方向とは逆である。その長手軸が位置する幾何学的平面(その中心軸に一致する心棒36の回転軸42に対して垂直な水平面)において制動バネに発揮されるこれら力が、制動バネを定位置に保持する応力を発生させる。このため、バネが軸方向/垂直に移動することを防止するために、特に、その中間部が溝24から出ることを防止するために、サポート4の2つの部分がそれぞれ、2つの前述の側部の各々の上に設けられ、これらの部分は、制動バネに関する下側の軸方向の止め部を規定する。第1の側では、溝14は、制動デバイスのサポート4(バレルバー)に設けられ、特にバネを設置する前にワッシャを組み立てる際に、このサポートが、ワッシャ8を支持することが可能である。薄い水平方向の壁を形成するこの溝の底部が、この側部に位置するバネの部分のあらゆる可能である変位に関する下限を提供する。第2の側では、制動バネは、小さい突出部18の上に部分的に位置している。
【0027】
様々な他の有利な代替的実施形態が、
図6、
図7A、および
図7Bに概略的に示されている。
図6に示される代替的実施形態は、2つの曲げ部71および72を有する中間部を伴う制動バネ10Aによって特徴付けられる。この2つの曲げ部71および72は、円形ワッシャ8に対し、実質的にその中間部において支持する直線セクション70(応力が与えられていない場合)によって分割されている。これにより、制動バネ10Aが常にワッシャ8に対し「1つのポイント」で支持することが確実になる。
図7Aおよび
図7Bの代替的実施形態は、円形ではないが、直線ゾーン80を有する先端が切られたワッシャによって形成された介在部品68によって特徴付けられている。
図7Aに示される代替的実施形態では、制動バネ10は、その中間部において、先端が切られたワッシャ68の直線ゾーン80に面して配置された曲げ部74を有している。
図7Bに示される代替的実施形態では、バネ11が、応力が無い状態では直線状/矩形であり、介在部品に対して押圧されるようにバネ11にテンションがかけられる場合、バネ11がわずかに湾曲し(介在部品から見て凹状の湾曲)、これにより、バネ11が、この介在部品の直線ゾーン80の2つの端部において押圧するようになる。このため、
図7Aおよび
図7Bの代替的実施形態では、それぞれ制動バネ10または11が、直線ゾーン80の2つの端部においてそれぞれ2つの力F1およびF2を発揮する。2つの力F1およびF2は、全体としては径方向である。すなわち、中間ポイントにおけるそれらの合計が径方向である。しかし、2つの力の各々が介在部品68に力のモーメントを発揮し、それにより、バネが長手方向に移動し、2つの力F1およびF2の一方が他方に比べて減少する場合、介在部品68が自動的にわずかに回転し、それにより、介在部品68に発揮される2つの反対の力のモーメントの間のバランスを再確立するようになる。
図7Bに示される代替的実施形態は、先端が切られたワッシャの回転にリスクが少ないことから、好ましい。さらに、この代替的実施形態は、衝撃または急激な加速の事象において制動バネが一定の長手方向の変位を経る場合であっても、所望の制動トルクを維持することを可能にする。しかし、
図7Aに示す代替的実施形態では、曲げられたバネにより、衝撃の事象において長手方向の変位にさらされる可能性が低い。先端が切られたワッシャを有する代替的実施形態は、介在部品が通常動作の間に回転することを防止するために有利である。このことは、一定の制動トルクが設定されたものであることを確実にするために重要である。
図7Aおよび
図7Bに示される代替的実施形態は、バネの幾何学的平面において突出する「2つのポイント」において、常にサポートを提供する。
【0028】
特定の代替的実施形態が
図8に概略的に示されている。この代替的実施形態は、
図6の代替的実施形態と同様に、制動バネ10Bが常に介在部品78の「1つのポイント」で押圧されることを確実にするように設計されている。介在部品78は、角が丸くなった、全体が正方形の形状を有している。制動バネ10Bは、曲げ部76を有しており、曲げ部の各側のこのバネの2つの直線部が、互いに対して90度より大である角度であるが、この値に比較的近く、たとえば110度の等しい角度であるようになっている。介在部品の丸い角の1つがバネの曲げ部76に位置しており、バネは、このバネおよび介在部品78が静止している場合、実質的に径方向の力Fを介在部品に発揮する。特に衝撃の結果としてバネ10Bが移動する場合、力の方向は、介在部品がひいては、介在部品の回転を引き起こす力のモーメントにさらされることになるように、変化する。このことは、正方形の介在部品の同じ角が、常に制動バネの曲げ部76内にあるままであること、および、圧力が「1つのポイント」において印加されることを確実にする。さらに、通常動作において(制動バネが静止している場合)は、この代替的実施形態により、介在部品が静止した状態(回転していない)に維持され、こうして、ホイールセットの心棒上の、一定の、良好に規定された制動トルクを確実にする。
【0029】
本発明の好ましい代替的実施形態によれば、制動デバイス6は、偏心器20を備えている。この偏心器20の回転軸は、全体的な平面50に対して垂直であり、このため、中心軸/ホイールセット30の回転軸42に対して平行である。また、偏心器20は、その回転軸周りの回転により、制動バネによって介在部品/ワッシャに発揮される前述の径方向の押圧力を変化させることを可能にするために、制動バネに対して径方向に押圧するように配置されている。
図1および
図2に示す有利な代替的実施形態では、偏心器20は、制動バネをテンション下に維持する2つの部品の一方を構成する。このため、偏心器20を回転させることにより、このバネ上の応力が変化し、第1のホイールセットが回転駆動トルクにさらされた際に、第1のホイールセット30(クロノグラフホイールセット)に印加される制動トルクを調整することを可能にする。この構成は、振動および衝撃に対して敏感ではないことから、有利である。別の代替的実施形態では、径方向の力を調整するための別のデバイス、具体的には、線形移動可能である押圧部材にフィットするデバイスが提供される。
【0030】
図9は、制動バネ11が(応力なしで)直線状/矩形である、本発明の別の実施形態を示している。このバネは、その2つの端の一方において、固定部82に堅く締結され、幾何学的平面内にあるその角度位置を変化させることができず、このため、あらゆる意図されない変位または衝撃に起因する変位を防止する。バネ11の端が挿入される部分82の溝が、バネの中間ゾーンが径方向の押圧力Fをワッシャ8上に発揮するように向けられ、これにより、このバネが、締結部82と、ワッシャ上のバネの支持点との間に(ワッシャから見て)第1の凸状の湾曲を有するようになっている。好ましくは、バネの他方の端において径方向の力Fを調整するために、偏心器が設けられ、この偏心器は、この実施形態では、ワッシャ8と同じ制動バネの側に位置しており、ワッシャ8が、制動バネと、関係するホイールセットの心棒との間に介在部品を形成する。このため、制動バネ11は、前述の支持点と偏心器20との間に第2の凸状の湾曲をも有し、この第2の湾曲は、径方向の力Fがゼロではないために、第1の湾曲より小さい。
図9に示す代替的実施形態が、単一の支持点を有するタイプの構成、すなわち、上で与えられた規定によれば、「1つのポイント」においてワッシャを支持する制動バネを伴う構成を規定することに留意されたい。「2つのポイント」タイプの別の代替的実施形態では、星形の介在部品、たとえば、各々が小さい丸まった部分を有する4から6の頂点を有する介在部品が提供される。わずかに凸状の制動バネが、星形の介在部品の2つの頂点を常に支持し、このため、それらの中心ポイントにおいて、径方向の全体の押圧力を形成する2つの力を発揮する。換言すると、2つの力が、等しい強度である、介在部品上の2つの反対側の力のモーメントを生成する。衝撃の事象において、制動デバイスの規制を解除することができないことにも留意されたい。
【0031】
図1から
図3は、第1のホイールセット30の組み立ての前に準備段階で制動デバイス6が前もって組み立てられた機械式時計ムーブメント2を示している。この制動デバイス6の前もっての組み立ては有利である。これは、制動バネによって発揮される力が径方向である事実と、ワッシャ8が、第1のホイールセットを形成するピニオンおよびホイール32と、第1のホイールセットがクロノグラフホイールセットである場合の図示の実施例では、リセットハートピース34との上に設けられる事実とにより、特に可能にされる。
図4および
図5は、第1のホイールセット30がこのムーブメントに取り付けられ、制動デバイスが動作状態にされた後の機械式時計ムーブメント2を示している。
【0032】
制動デバイス6の前もっての組み立てを可能にするために、ワッシャ8は、ワッシャに水平方向に面し、前述の支え面25の正反対に位置する当接表面26をこのワッシャの外周に有するサポート4(バレルバー)上に配置されており、それにより、ワッシャ8と制動バネ10とが、
図1から
図3に示すように、当接表面26に対してワッシャが支持された状態で、第1のホイールセット30を組み立てる前に、機械式時計ムーブメント2において前もって組み立てることができるようになっている。当接表面26は、サポート4に機械加工されたキャビティ12の横方向表面によって規定され、ワッシャは、ムーブメントの下方側に開いているこのキャビティ12内に配置されている(規定では、アナログ表示が上側にある)。
【0033】
好ましい代替的実施形態では、当接表面26は、ワッシャ8および制動バネ10の前もっての組み立てに続いて、ワッシャの中心筒状開口が、回転可能であるか固定されており、第1のホイールセット30(クロノホイールセット)の心棒36の一部が次いで内部に挿入されるパイプまたはチューブ44内で中心円形開口と重ねられる少なくとも1つのゾーンを有するように配置されており、それにより、第1のホイールセットが機械式時計ムーブメント2内に取り付けられる際に、心棒が、ワッシャに径方向の力を最初に印加する必要なしに、2つの中心円形開口を突き抜けることができるようになっている。
図3に見ることができるように、図示の代替的実施形態では、ワッシャ8の中心筒状開口は、全体がパイプ44内の中心円形開口上に重ねられている。図示の実施例では、第1のホイールセット30の心棒36が、パイプ44内に挿入され、このパイプ44は、表示針を保持し、このため、回転可能であり、このパイプが、プレート60および香箱バー4内で旋回されていることに留意されたい。内部ベアリング46がパイプの中心開口の内側に配置されており、パイプ内で、内部ベアリングが、上にクロノ針48が取り付けられた心棒36の端部37を旋回させる。この端部は、回転表面35の直径より小である最大直径を有し、この回転表面35は、具体的には筒状かつ軸方向であり、最終的には、ワッシャ内で中心筒状開口9の内側に位置する。具体的には、このことは、このクロノホイールセットの組み立ての前の、2つの中心円形開口の最初の重ね合わせが部分的のみである場合、クロノホイールセットが組み立てられる際の2つの中心円形開口内への心棒36の挿入を容易にする。
【0034】
取り付けられると、図示の実施形態ではクロノグラフホイールセットを形成する第1のホイールセット30が、上側ベアリング46によって、かつ、バー40の開口内に配置された下側ベアリング38によって旋回され、ワッシャ8がもはやサポート4のキャビティ12の側壁26に対して支持されないが、その中心筒状開口を介して、第1のホイールセットの心棒36に対して支持される。より正確には、この心棒の、有利には筒状かつ軸方向である回転表面35に対して支持される。図示の代替的実施形態では、ワッシャ8の支持部を形成するバレルバー4とプレート60との間で香箱
が旋回されることに留意されたい。第1のホイールセットは、指示の上で、第2のホイールセット52により、レバー56上に取り付けられたクラッチホイール54を介して、時には回転駆動される。レバー56は、コラムホイールまたはカムによって慣習的に制御される(係合解除が
図4に矢印によって示されている)。第2のホイールセット52は、香箱からがんぎ車58までの歯車列に組み込まれた駆動ホイールを備えている。この駆動ホイールは、ここでは、機械式時計ムーブメント2を受領する時計の時間表示の小さい秒ホイールを形成する。
【0035】
本発明が、クロノグラフホイールセット30に関して詳細に記載されてきたが、本発明の制動デバイスは、機械式時計ムーブメントの他のホイールセット、具体的には、このホイールセットが、香箱からがんぎホイール58までの歯ホイール列に含まれない場合の小さい秒ホイールセットに関して提供することができる。
【0036】
本発明は、いくつかの利点を有しており、これらのいくつかは既に記載されている。制動デバイス6は、制動バネによって介在部品/ワッシャ8に発揮される径方向の押圧力、そして、これを介した、第1のホイールセット30の心棒36に適用される径方向の力を調整すること、そして、この第1のホイールセットに印加される摩擦力のモーメントを調整することを容易にする偏心器20を備えている。偏心器20は、制動デバイスが機械式時計ムーブメントに完全に取り付けられると、その最初の形状をわずかに変更するために、制動バネを除去する必要なしに、制動トルクを調整することを可能にする。制動バネ10と心棒36との間にワッシャ8が存在する場合、また、関連する力が径方向であることが意図されている事実に加えて、第1のホイールセット30上のクロノ針48のフィッティング、そして特に、例えばこの針48を変更する場合または機械式時計ムーブメントを洗浄する場合におけるその除去が、制動デバイス6のデリケートな要素である制動バネに損傷を与え得ず、ワッシャ8がかなり強固であり、サポート4に対する一定量の軸方向の圧力に耐えることができる。
【0037】
制動デバイス6は、機械式時計ムーブメントの他の部品の組み立ての間、特に、クロノホイールセット30の組み立ての間に、制動デバイス6に損傷を与え得る応力に対して制動デバイス6が保護されるようになっている。時計ムーブメントが除去される場合、特に第1のホイールセット30が除去される場合、制動デバイス6が、その設定を変えることなく、定位置にあるままとすることができる。
【0038】
本発明に係る制動デバイスは、摩擦力のモーメントを比較的正確に前もって判定することを可能にする。この理由は、介在部品の横方向表面9、具体的にはワッシャ8の横方向表面9が、制動バネの高さよりも概してかなり大きい高さを有するため、介在部品/ワッシャ8の材料を選択することができるため、および、介在部品/ワッシャ8が支持する心棒36の、筒状及び軸方向の表面を規定する回転表面の直径が、正確に判定されるためである。
【符号の説明】
【0039】
2 機械式時計ムーブメント
4 サポート
6 制動デバイス
8 介在部品、ワッシャ
9 横方向表面
10、10A、10B、11 制動バネ
20 偏心器
24 溝
25 支え面
26 当接表面
30 表示ホイールセット
35 回転表面
36 心棒
【外国語明細書】