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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163029
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】機能要素
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/08 20060101AFI20241114BHJP
   B21J 15/00 20060101ALI20241114BHJP
   F16B 37/06 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
F16B19/08 A
B21J15/00 U
F16B37/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024066491
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】10 2023 112 483.8
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】308017504
【氏名又は名称】プロフィル フェルビンドゥングステヒニック ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ディール
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ジーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ゾーヴァ
(72)【発明者】
【氏名】アメル マールメ
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA04
3J036EA05
3J036EA06
(57)【要約】
【課題】 ワークピース、特に板金部品に取り付けるための機能要素を提供する。
【解決手段】 本発明は、ワークピース、特に板金部品に取り付けるように構成された機能要素に関し、前記機能要素は、
機能要素が締結された状態においてワークピースに接触する接触面を有するヘッド部と、
機能要素をワークピースに固定するための、ヘッド部から軸方向に延びる締結部、特にリベット部と、を備えており、締結部は、周方向に中空空間と境界を接し、かつヘッド部とは反対側を向く側に自由端を有する壁を備え、自由端および壁の少なくとも一方が、周方向に凹状および凸状に湾曲した部分を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース、特に板金部品に取り付けるための機能要素であって、
前記機能要素が締結された状態において前記ワークピースに接触する接触面(14)を有するヘッド部(12)と、
前記機能要素を前記ワークピースに固定するための、前記ヘッド部から軸方向(A)に延びる締結部(20)、特にリベット部と、
を備え、
前記締結部が、周方向に中空空間(23)と境界を接し、かつ前記ヘッド部とは反対側を向く側に自由端(22)を有する壁(21)を備え、
前記自由端および前記壁の少なくとも一方が、周方向に凹状および凸状に湾曲した部分(34,36)を備えた、機能要素。
【請求項2】
前記自由端(22)および前記壁(21)の少なくとも一方が、周方向に波形および鋸歯状の少なくとも一方として設計される、請求項1に記載の機能要素。
【請求項3】
前記自由端(22)および前記壁(21)の少なくとも一方が、前記機能要素の中心軸に対して回転対称に設計される、請求項1または2に記載の機能要素。
【請求項4】
前記ヘッド部からの前記自由端(22)の間隔が、周方向において一定ではない、または、周方向から見た前記自由端が、長手方向軸(A)または前記機能要素の設置方向に対して垂直に配置された平面内に完全には位置しない、
うちの少なくとも一方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項5】
前記自由端(22)が、軸方向(A)に湾曲した部分(22’,22’’)、および軸方向に対して傾斜した部分(22’,22’’)のうち少なくとも一方を含む、請求項4に記載の機能要素。
【請求項6】
前記自由端(22)が、軸方向(A)に垂直な側面から見たときに波形または鋸歯状の経路を有する、請求項4または5に記載の機能要素。
【請求項7】
前記自由端(22)は、軸方向および周方向の少なくとも一方に不連続部がない、請求項1~6のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項8】
前記自由端(22)は、湾曲した外側の移行部(30)を介して前記壁(21)の外側に合流する、または、前記自由端(22)は、直線であるが軸方向に対して傾斜している内側の移行部(32)を介して前記中空空間(23)に面する前記壁の内側に合流する、
のうち少なくとも一方を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項9】
前記壁(21)は、周方向に実質的に一定の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項10】
前記接触面(14)がリング形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項11】
前記接触面(14)には、回転を防止する少なくとも1つの特徴部(26)が設けられ、特に、回転を防止する複数の特徴部が、周方向に規則的に配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項12】
前記接触面(14)が、周方向に延びる溝(24)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項13】
前記接触面(14)が円錐状に傾斜するように設計され、特に前記締結部に向かって収束する、請求項1~12のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項14】
前記ヘッド部(12)が、機能部(16)を備える、または、
前記ヘッド部の、前記締結部(20)とは反対側の側面から機能部が延在する、
のうち少なくとも一方を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の機能要素。
【請求項15】
前記自由端(22)は、前記機能要素をセルフパンチングするためのパンチング端である、請求項1~14のいずれか一項に記載の機能要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースに取り付けるための機能要素に関する。
【背景技術】
【0002】
機能要素は、さまざまな用途、特に自動車工学で使用される。例えば、それらの機能要素は、例えば板金部品などのワークピースに他のワークピースを固定するための選択肢を形成する役割を果たす、または、ワークピース自体では簡単に開発できない、または多大な労力を費やさなければ開発できない他の機能を提供する役割を果たす。この点で、要素をそれぞれのワークピースに効率的に接続できることが当然重要である。接続には弾力性と信頼性も必要である。
【0003】
機能要素は、例えば、シャフトにねじを設けることができるボルト要素、または例えば雌ねじを有することができるナット要素とすることができる。他のデザインも考えられる。例えば、機能要素には、スナップインまたはプラグイン接続を目的としたコンポーネントまたはセクションを含めることもできる。
【0004】
機能要素はさまざまなデザインで知られている。例えば、板金部品への取り付け時にリベット部が変形してリベットビード部(rivet bead)を形成し、ヘッド部とともに板金部材の穴の縁のリング状受け部を形成するリベット要素がある。したがって、そのようなリベット要素を使用すると、機能要素は板金部品への取り付け時に変形する。多くの場合、リベット部の変形はかなり大きくなる可能性がある。このような再成形(reshaping)プロセス中に、リベット部にかなりのせん断力が発生し、それが脆弱化を引き起こす可能性があり、ひいては要素とワークピースとの間の接続に悪影響を与える可能性がある。したがって、リベット部には、この再成形を吸収するのに十分な材料が含まれている必要がある。
【0005】
リベット要素はセルフパンチングすることができる。これは、リベット部が導入されるワークピースに下穴がある必要はなく、率直に言えば、リベット部が自身の穴を開けることを意味する。ワークピースに予め穴を開ける必要がないため、作業工程が1つ削減でき、コストメリットが得られる。しかしながら、セルフパンチリベット要素のリベット部は、ワークピースにパンチングされて、パンチング片が除去されるときに望ましくない形で変形しないように、十分に安定していなければならない。
【0006】
したがって、締結プロセス中に大幅に形状が再成形されるリベット部および/またはセルフパンチのリベット部は高度な安定性を備える。これは、リベット部の形状を確実に再成形するために、対応する要素を締結するときにかなりの力(設定力、setting forces)を加える必要があることを意味する。したがって、使用する設定装置は適切な性能を有するように設計する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、接続要素とワークピースの接続の信頼性を損なうことなく、より小さな力でワークピースに固定できる、最初に説明した種類の機能要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する機能要素によって充足される。
【0009】
本発明による機能要素は、ワークピース、特に板金部品に取り付けるために提供される。それは、機能要素が締結された状態においてワークピースに接触する接触面を有するヘッド部を備える。さらに、機能要素をワークピースに固定するための、ヘッド部から軸方向に延びる締結部、特にリベット部が設けられる。締結部は、周方向(peripheral direction)に中空空間と境界を接し、かつヘッド部とは反対側を向く側に自由端を有する壁を備え、自由端および/または壁が、周方向に凹状および凸状に湾曲した部分を備える。軸方向から見ると、一般に直線部分も存在する。
【0010】
「ヘッド部から軸方向に延びる締結部」という表現は、特に、軸方向と平行に延びる締結部の壁として理解されるべきである。
【0011】
一方、この設計は回転に対する防止を提供する。一方で、これはリベット要素にとって特に重要であるが、壁を再成形(reshaping)する際に発生する応力をよりよく吸収できるように、例えば(同等の壁厚を想定したときに)円形設計の壁を有するものよりも多くの材料が利用可能になる。したがって、同じ耐荷重能力を備えた壁をより薄く設計することができる。
【0012】
さらに、締結部は、例えば円形の形状を有する金型によって全体として同時に再成形されることはない。ワークピースへの要素の侵入深さが増加するにつれて、セクションの形状が徐々に再成形される。したがって、締結部が金型と協働するときに、設定装置によって加えられる力は均一に分散されず、締結プロセス中に、最初に金型と協働する湾曲部の半径方向内側に配置された端部から半径方向外側に「移動(migrates)」する。湾曲部の半径方向外側の端部は最後に再成形(reshaped)される。
【0013】
したがって、湾曲部の形状によって、再成形プロセス中に再成形力が時間的および空間的にどのように分散されるかが決定される。換言すれば、パンチングおよび/または再成形プロセスは、パンチングエッジおよび/または壁の形状を適切に選択することによって最適化することができる。再成形力を集中させることにより、設定装置によって加えられる力を最適に利用することも可能になる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、明細書、および添付の図面に記載されている。
【0015】
一実施形態によれば、自由端は、軸方向に垂直な側面から見たときに波形または鋸歯状の形状を有する。
【0016】
自由端および/または壁は、機能要素の中心軸に関して回転対称となるように設計されることが好ましい。これは、中心軸を中心に360°/X(Xは自然数)の角度で締結部を回転させることにより、締結部の輪郭が自身にマッピングされることを意味する。
【0017】
さらなる実施形態によれば、ヘッド部からの自由端の間隔は、周方向(peripheral direction)において一定ではなく、および/または、周方向から見た自由端は、長手方向軸すなわち機能要素の設定方向に対して垂直に配置される平面内に完全に位置しない。
【0018】
この設計は、自由端がパンチングエッジであり、機能要素がセルフパンチングである場合に特に有利である。パンチングエッジの特殊な設計により、少なくともパンチングプロセスの開始時にその全周がワークピースの表面に接触することはない。これは、加えられるパンチ力が、パンチングエッジ全体が同時に接触する場合よりも小さな接触領域に集中することを意味する。これは、同じパンチ力でも、従来の要素よりも強い力がパンチングエッジとワークピースの間に作用することを意味する。
【0019】
または、換言すれば、周方向(peripheral direction)から見て、要素の長手方向軸またはパンチ方向に対して垂直に配置された平面内に完全には位置しないパンチングエッジを備えた機能要素の設計により、最終的には、使用するパンチング装置によって大きなパンチ力を加える必要がなく、より堅いワークピースへの固定が簡単な方法で可能になる。比喩的に言えば、これはパンチングエッジの特定の領域に力を集中させることによって達成される。パンチングエッジの形状、つまり周方向から見たときの軸方向の範囲の変化によって、パンチングプロセス中にパンチングエッジのどの部分がワークピースの入口側と接触し、出口側で再び離れるかを定義する。ここではワークピースの厚さも影響する。パンチングエッジの形状を選択することにより、パンチングプロセスに意図的に影響を与えて最適な結果を得ることができる。
【0020】
したがって、パンチングプロセスは、パンチングエッジの周方向のどこでも同時に開始されるわけではない。
【0021】
締結部が(セルフパンチングまたは非セルフパンチング)リベット部として構成されている場合、同じことが、締結部の再成形プロセスの開始にも当てはまる。ヘッド部から軸方向に最も遠い自由端の部分は、例えば円形の金型と最初に協働する。言い換えれば、リベット部分の再成形は、周方向のどこでも同時に開始されるのではなく、作用力の大幅かつやや突然の増加を伴うが、選択された自由端の形状に応じて「移動」する。これにより、金型との相互作用によって増加する力が空間と時間に分散されるという結果となる。したがって、発生し、加えなければならない最大の力と荷重が減少する。
【0022】
一実施形態によれば、自由端は、軸方向に湾曲した部分および/または軸方向に対して傾斜した部分を含む。要素の長手方向軸または固定方向に対して垂直に延びるセクションを設けることもできる。
【0023】
例えば、自由端は、軸方向に垂直な側面から見たときに、波形または鋸歯状の経路(course)を有する。
【0024】
多くの用途において、壁を弱める開始点を避けるために、自由端には、軸方向および/または周方向に不連続部(discontinuities)がないことが有利である。
【0025】
自由端は、湾曲した外側の移行部、または直線であるが軸方向に対して傾斜した(円錐形の)移行部(例えば、面取り)を介して壁の外側に合流することができる。代替的または付加的に、自由端は、直線であるが軸方向に対して傾斜している内側の移行部を介して、中空空間に面する壁の内側に合流することができる。これらの手段は、予め製造された穴への要素の挿入を簡素化したり、パンチングプロセスを改善したりするのに役立つ。
【0026】
構造的に単純で効率的な実施形態によれば、壁は周方向に実質的に一定の厚さを有する。
【0027】
接触面はリング状であってもよい。これには、回転を防止する少なくとも1つの特徴部、特に、好ましくは周方向に規則的に分布した、複数の回転を防止する特徴部を設けることができる。この種の特徴部の例としては、溝、ノッチ、リブ、突起または先端が挙げられる。必要に応じて相互に組み合わせることができる。
【0028】
接触面は、周方向に延びる溝を有することができる。また、接触面を円錐状に傾斜させるように設計することもでき、その接触面は、エッジの方向に収束または発散することができる。
【0029】
一実施形態によれば、ヘッド部は機能部を備える。代替的または付加的に、機能部は、ヘッド部の、締結部とは反対側の側面から延在することができる。
【0030】
機能要素は、ナット要素またはボルト要素である。
【0031】
既に述べたように、機能要素がセルフパンチングするように、自由端がパンチングエッジであってもよい。
【0032】
本発明を、有利な実施形態および添付の図面を参照しながら、単に例示として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】軸方向に波形のパンチングエッジを備えたナット要素の斜視図である。
図2図1による要素の部分側面断面図である。
図3図2の一部の拡大図である。
図4図1による要素の部分軸方向図である。
図5】周方向に波形の締結部を有するナット要素の部分断面斜視図である。
図6図5による要素の部分側面断面図である。
図7図5による要素の軸方向の図である。
図8】周方向に波形であり、軸方向に波形のパンチングエッジを有するリベット部を備えたボルト要素の部分断面斜視図である。
図9図8による要素の軸方向の図である。
図10図8による要素の部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、固定された状態においてワークピース(図示せず)に接触する接触面14を有するヘッド部12を備えた機能要素10Aを示す。
【0035】
この例では、雌ねじ18を支持する機能部16(図2参照)が、ヘッド部12の、接触面14とは反対側から(要素10Aの中心軸が描かれている)軸方向Aに延在している。
【0036】
ヘッド部12の反対側から、本例ではリベット部(rivet section)として構成される締結部20が延在している。締結部20は、中空空間23と周方向に境界を接する壁21によって形成されている。
【0037】
壁21または締結部20の自由端には、パンチングエッジ22が形成されている。これにより、要素10Aをワークピース(図示せず)に打ち込むことができる。これは、要素10Aが挿入される前に予め作製された穴が存在する必要がないことを意味する。要素10Aは、そのセルフパンチング特性により、部品片(slug)を切り出すことによってそれ自身の穴を形成する。パンチングプロセス中、締結部20はまた、それ自体公知の方法で適切な金型によって少なくとも部分的にビード加工され、それにより要素10Aがワークピースに固定されるアンダーカットが形成される。
【0038】
ワークピースへの要素10Aの固定を改善するために、接触面14には、締結部20の周りを走る溝24が設けられている。半径方向に延びるリブ26が溝24内に配置されている。要素10Aの締結プロセス中に、ワークピースの材料が溝24に圧入され、そこでリブ26が材料に食い込む。それにより、ワークピースに対する回転に対して要素10Aが確実に固定される。回転を防止する追加または代替の特徴を提供しうることを理解されたい。この点において、さまざまなタイプの機能、例えば、任意の形状の隆起部および/または窪み部を組み合わせることができる。接触面14は、必ずしも周縁溝24を有する必要はない。例えば、実質的に平面状または円錐状に設計することもできる。
【0039】
回転を防止する機構を、例えば、軸方向に延びるリブおよび/または溝(図示せず)の形態で、締結部20の外側に設けることもできる。
【0040】
従来の機能要素とは異なり、パンチングエッジ22は、軸方向Aに対して垂直に配置された平面内にない。要素10Aを側面から見ると、パンチングエッジ22が波形(図2も参照)を有することが分かる。これは、ヘッド部12からのパンチングエッジ22の間隔が一定ではなく、周方向に変化することを意味する。本実施形態では、これにより、3つの最低点(minima)22’’によって互いに分離された3つの最高点(maxima)22’が得られる。最高点22’および最低点22’’の数は必要に応じて選択できることが理解される。その数は偶数であっても奇数であってもよい。均一なまたは回転対称な配置の代わりに、最高点22’および/または最低点22’’の不規則な配置および/または設計も選択することができる。例えば、周方向に見て最高点22’(または最高点22’の1つまたは最高点22’のいくつか)を最低点22’’(または最低点22’’の1つまたは最低点22’’のいくつか)よりも長く設計することも、その逆にすることも可能である。
【0041】
セッティングプロセスにおいて、最高点22’がワークピースの表面と最初に接触する。したがって、対応する設定装置(図示せず)によって加えられる設定力全体が、最初はこれらの最高点22’に集中する。一方、従来の要素では、設定力はパンチングエッジ全体に均一に分散される。これは、特に、多くの場合に特に重要となる設定プロセスの開始時に、機能要素10Aをより容易にワークピースに挿入できることを意味する。
【0042】
セッティングプロセス中に、パンチングエッジ22のさらなる部分がワークピースと接触する。最高点22’および最低点22’’の適切な振幅と、対応するワークピースの厚さとにより、最低点22’’の最も深い領域がワークピースに入る前に、最高点22’がすでにワークピースから再び出るという状況が生じる可能性がある。このような場合、パンチングエッジ22全体は、設定プロセス中のどの時点においてもパンチングに関与せず、その一部のセクションのみがパンチングに関与する。しかしながら、パンチングエッジ22全体がセッティングプロセスのある時点から部品片の分離に関与するようにすることもできる。
【0043】
この状況は、パンチングエッジ22が金型(図示せず、例えば円形の幾何学的形状を有する従来の金型)と協働し始めて締結部20の再成形が始まるときと非常に似ている。最高点22’は最初に金型と協働する。換言すれば、締結部20の再成形は、作用力の実質的かつやや突然の増加を伴い、周方向のどこでも同時に開始するのではなく、最低点22’’に「移行(migrate)」する。その結果、金型との協働により増加する力が空間的・時間的に分散され、全体として発生する負荷の軽減につながる。
【0044】
換言すれば、機能要素10Aは、適用される設定力を増大させることなく、より堅いワークピースに挿入することができる。
【0045】
図2は機能要素10Aの側面図を示しており、要素10Aの左側が断面で示されている。この図では、ヘッド部12が一種のフランジを形成しており、そこから機能部16と締結部20が異なる方向に延びていることが分かる。すでに説明したように、機能部16には、図示の例ではヘッド部12の領域まで延びる雌ねじ18が設けられている。雌ねじ18の代わりに、例えばラッチ部または異なる機能を備えたセクションを設けてもよい。軸方向の通路開口部を有する機能部16の代わりに、例えばねじなど、外周に機能性を与えるボルト部を設けることも考えられる。
【0046】
パンチングエッジ22の波形の特徴もはっきりと見える。
【0047】
図3は、パンチングエッジ22の設計をより詳細に説明するための図2の断面図を示す。これは、締結部20の半径方向外面からエッジライン28への移行部に湾曲移行部30を有する。エッジライン28から締結部20の半径方向内面まで、傾斜または円錐形の移行部34が設けられている。移行部32,34の設計は、個々に、特に相互に組み合わせて、パンチングエッジ22のパンチング効果を向上させる。
【0048】
図4は、締結部20および接触面14を示す機能要素10Aの軸方向図の一部を示す。溝24が締結部20を取り囲み、その溝底には回転防止を実現するためのリブ26が設けられているのがはっきりと見える。
【0049】
図5には、ナット要素として構成され、周方向に波状の締結部20を有する機能要素10Bの部分断面斜視図が示される。パンチングエッジ22の波形は壁21の波形に対応しており、比喩的に言えば「花の形」を形成している。
【0050】
この実施形態では、ヘッド部12は、雌ねじ18が設けられた機能部16を備える。ねじ18の一端は依然として締結部20内にわずかに突出している。すなわち、ねじ18の小さな部分は、壁21のヘッド側端部によって形成されている。
【0051】
接触面14は、機能要素10Aの接触面とは異なり、溝を有していない。接触面は、湾曲部(curvature)14Aを介して締結部20へと合流する。さらに、要素10Bが固定されるときにパンチング穴の側壁に食い込み、回転を防止する傾斜または斜めのリブ26が設けられている。
【0052】
円形の締結部20を有する機能要素10Aとは異なり、締結部20は周方向に波状となっている。これは、図7でも容易に見ることができる。周方向から見て、比較的大きく湾曲した膨張部(bulges)34とそれほど強く湾曲していない窪み部(indentations)36が交互に配置されていることを示している。リブ26は、それぞれの場合において、窪み部36の中心に配置されている。
【0053】
締結部20の選択された設計により、同等の壁厚を有する円形の締結部よりも多くの材料が締結プロセス中にその形状を再成形(reshaping)するために利用することができる。したがって、再成形中に締結部20の材料に生じる応力をよりよく吸収することができ、最終的には、対応するワークピースに対する要素10Bの接続の信頼性の向上につながる。換言すれば、追加の材料により、締結部20にかかる負荷が再成形によって軽減され、あるいは締結部20を同じ耐荷重能力でより薄肉に設計することができる。
【0054】
さらに、リベット部として構成される締結部20は、例えば円形状の金型により全体が同時に再成形されることはない。要素10Bの侵入深さが増加するにつれて、締結部20の再成形が徐々に行われる。これは、締結部20を再成形するために必要な力が集中することを意味する。したがって、設定装置によって加えられる力は、締結部20が金型と協働するときに均一に分散されず、締結プロセス中に最初にダイと協働する窪み部36の半径方向内側に配置された端部から半径方向外側に「移動」する。膨張部34の半径方向外側の端部は、最後に再成形される。
【0055】
したがって、窪み部34および膨張部36の幾何学的形状は、再成形プロセス中に再成形力が時間的および空間的にどのように分配されるかを決定する。換言すれば、パンチングおよび/または再成形プロセスは、パンチングエッジおよび/または壁の形状を適切に選択することによって最適化することができる。再成形力を集中させることにより、設定装置によって加えられる力を最適に利用することも可能になる。
【0056】
非常に一般的に言えば、周方向に波形を付けた締結部の上述の概念は、セルフパンチング要素のみに使用されるものではない。予め製造された穴に挿入される要素についても考慮することができる。それにより、エッジ22をパンチングエッジとして設計する必要はないであろう。しかしながら、例えば、予め製造された穴への挿入を容易にするために、(例えば、外周面取りを有する)挿入補助を設けることもできる。
【0057】
膨張部34および窪み部36の数は必要に応じて選択できることが理解される。その数は偶数であっても奇数であってもよい。均一なまたは回転対称な配置の代わりに、膨張部34および/または窪み部36の不規則な配置および/または設計を選択することもできる。例えば、周方向に見て膨張部34(または1つの膨張部34またはいくつかの膨張部34)を窪み部36(または1つの窪み部36またはいくつかの窪み部36)よりも長く設計することも可能であり、あるいはその逆も可能である。
【0058】
図6から分かるように、この実施形態では、パンチングエッジ22の湾曲移行部30は、要素10Aの対応するセクション30よりも強く湾曲していない。傾斜または円錐形の移行部32も、要素10Aとは異なる方法で形成され、それほど急ではない。このことは、最適なパンチング結果を達成するために、移行部30,32の設計をそれぞれの要件に必要に応じて適合させることができることを明らかにしている。とりわけ、ワークピースの特性(例えば、材料特性や板金の厚さなど)も考慮する必要がある。
【0059】
図8は、ボルト要素として構成された断面要素10Cを示す。要素10Cのヘッド部12からは、雄ねじ38が設けられた機能部16が延在している。接触面14が、ヘッド部12の、機能部16とは反対側に設けられる。その接触面は、比較的大きな湾曲部14Aとともに締結部20に合流する。接触面14から周方向に均一に分布したリブ26が延設されているが、要素10Bのリブとは異なり、軸方向Aに対して垂直に配向された自由端を有する。接触面14はさらに円錐状に設計されている。換言すれば、接触面14は、ヘッド部12からパンチングエッジ22へと見る方向に収束している(図10も参照)。発散設計(おそらく溝の形成を伴う)も同様に考えられる。接触面14は、断面において(周方向および/または半径方向に)のみ円錐形であってもよいことを付け加えるべきである。
【0060】
締結部20は、接触面14から軸方向Aに延在し、要素10A,10Bの締結部20のいくつかの特徴を組み合わせている。一方、締結部は、周方向に波形が付けられている。その一方、そのパンチングエッジ22も軸方向に波形の形状を有する。
【0061】
ヘッド部12と締結部20とによって境界付けられた中空空間23が、分離後の部品片(slug)を受け入れることができる。すなわち、特定の用途では、部品片が中空空間23内に残る可能性がある。機能要素10Cは、軸方向の通路開口部を持たないボルト要素であり、ナット要素の場合のように金属片によってブロックされないことが多いため、金属片を除去することが絶対に必要というわけではない。
【0062】
図9は、締結部20および接触面14を見た機能要素10Cの軸方向の図の一部を示す。湾曲した膨張部34および湾曲した窪み部36(それぞれ6つ)が再び見られ、それらの曲率は異なり、要素10Bよりも小さい(図7を参照)。リブ26は、窪み部36の中央に配置されている。
【0063】
図10は、機能要素10Cの部分側面断面図を示す。とりわけ、パンチングエッジ22の軸方向の波形の振幅が要素10A(例えば図2を参照)よりも顕著であることが分かる。このことは、それぞれの要素を具体的に現在の条件またはワークピースに適合させるために、この点に関してかなりの設計の自由度があることを明らかにしている。
【0064】
接触面14の円錐形の設計も図10で明確に見ることができる。要素10Cのパンチングエッジ22も、その特定の設計の点で要素10Aおよび10Bの対応する設計とは異なる。湾曲した移行部30は、半径方向内側に向かって平坦になる。さらに、半径方向内側に配置された移行部32は、ここでは非常に薄く形成されるだけである。
【0065】
本発明を、3つの有利な実施形態を参照しながら単に例示として説明した。しかしながら、パンチングエッジ22の設計は、移行部30および32に関して自由に選択できることが理解される。また、両方の移行部30,32が湾曲または傾斜していてもよく、あるいは移行部30が傾斜を形成しているのに対して、移行部32が湾曲していてもよい。
【0066】
パンチングエッジ22の軸方向の波形も同様に、必要に応じて選択することができる。回転対称の設計も、非対称の設計と同様に考えられる。「波」の数も同様に、それぞれの現在の状況に簡単に適合させることができる。実際に、パンチングエッジ22が軸方向に波やジャンプを持たないことが好ましい。一方、特定の用途では、そのような設計も有利な場合がある。
【0067】
パンチングエッジ22の軸方向の波形に関する上記の記載は、パンチングエッジ22および/またはその周方向における締結部20の壁の波形の設計にも同様に当てはまる。
【0068】
移行部、軸方向の波形、周方向の波形、接触面、回転を防止する特徴部、ヘッド部、および機能部の上記の実施形態は、それぞれの用途に最適化されたセルフパンチング機能要素を作成するように、互いに自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
10A,10B,10C…機能要素
12…ヘッド部
14…接触面
14A…湾曲部(curvature)
16…機能部
18…雌ねじ
20…締結部
21…壁
22…パンチングエッジ
23…中空空間
22’,22’’…最高点(maximum)/最低点(minimum)
24…溝
26…リブ
28…エッジライン
30,32…移行部
34…膨張部
36…窪み部
38…雄ねじ
A…軸方向、中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース、特に板金部品に取り付けるための機能要素であって、
前記機能要素が締結された状態において前記ワークピースに接触する接触面(14)を有するヘッド部(12)と、
前記機能要素を前記ワークピースに固定するための、前記ヘッド部から軸方向(A)に延びる締結部(20)、特にリベット部と、
を備え、
前記締結部が、周方向に中空空間(23)と境界を接し、かつ前記ヘッド部とは反対側を向く側に自由端(22)を有する壁(21)を備え、
前記自由端および前記壁の少なくとも一方が、周方向に凹状および凸状に湾曲した部分(34,36)を備えた、機能要素。
【請求項2】
前記自由端(22)および前記壁(21)の少なくとも一方が、周方向に波形および鋸歯状の少なくとも一方として設計される、請求項1に記載の機能要素。
【請求項3】
前記自由端(22)および前記壁(21)の少なくとも一方が、前記機能要素の中心軸に対して回転対称に設計される、請求項1に記載の機能要素。
【請求項4】
前記ヘッド部からの前記自由端(22)の間隔が、周方向において一定ではない、または、周方向から見た前記自由端が、長手方向軸(A)または前記機能要素の設置方向に対して垂直に配置された平面内に完全には位置しない、
うちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の機能要素。
【請求項5】
前記自由端(22)が、軸方向(A)に湾曲した部分(22’,22’’)、および軸方向に対して傾斜した部分(22’,22’’)のうち少なくとも一方を含む、請求項4に記載の機能要素。
【請求項6】
前記自由端(22)が、軸方向(A)に垂直な側面から見たときに波形または鋸歯状の経路を有する、請求項4に記載の機能要素。
【請求項7】
前記自由端(22)は、軸方向および周方向の少なくとも一方に不連続部がない、請求項1に記載の機能要素。
【請求項8】
前記自由端(22)は、湾曲した外側の移行部(30)を介して前記壁(21)の外側に合流する、または、前記自由端(22)は、直線であるが軸方向に対して傾斜している内側の移行部(32)を介して前記中空空間(23)に面する前記壁の内側に合流する、
のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の機能要素。
【請求項9】
前記壁(21)は、周方向に実質的に一定の厚さを有する、請求項1に記載の機能要素。
【請求項10】
前記接触面(14)がリング形状である、請求項1に記載の機能要素。
【請求項11】
前記接触面(14)には、回転を防止する少なくとも1つの特徴部(26)が設けられ、特に、回転を防止する複数の特徴部が、周方向に規則的に配置されている、請求項1に記載の機能要素。
【請求項12】
前記接触面(14)が、周方向に延びる溝(24)を有する、請求項1に記載の機能要素。
【請求項13】
前記接触面(14)が円錐状に傾斜するように設計され、特に前記締結部に向かって収束する、請求項1に記載の機能要素。
【請求項14】
前記ヘッド部(12)が、機能部(16)を備える、または、
前記ヘッド部の、前記締結部(20)とは反対側の側面から機能部が延在する、
のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の機能要素。
【請求項15】
前記自由端(22)は、前記機能要素をセルフパンチングするためのパンチング端である、請求項1に記載の機能要素。
【外国語明細書】